説明

電子機器

【課題】複数の状態を取り得る携帯電話機において、状態検出に必要な磁石および磁気センサの数を削減する。
【解決手段】スライド動作や回動動作を行う携帯電話において、第2筐体3に磁石12を、第1筐体2にホール素子11およびホール素子11’を設ける。磁石12、ホール素子11およびホール素子11’の位置は第2筐体3の移動に応じた位置とする。ホール素子11およびホール素子11’が磁石12の近接に応じて発する電圧を制御部31が検出することで、第2筐体3が取り得る3つの状態うちいずれの状態にあるかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画面表示部がスライド可能あるいは回動可能に構成された電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・軽量化及び信号の送受信機能の高性能化に伴って、データ通信機能や動画像の視聴機能を備えた電子機器の普及が進んでいる。こうした機能を備えた電子機器の一例である携帯電話機は、無線通信機能を用いた音声通信やデータ通信を行うことができる。無線通信機能を利用した携帯電話機は、音声通話、電子メールの送受信、インターネット上のウェブサイトの閲覧、及びインターネットショッピングを利用した商品取引など、様々な用途に活用されている。こうした携帯電話機の用途の増大及び、携帯電話機が取り扱う情報量の増加を受けて、画面に表示される情報をより容易に把握できる携帯電話機の開発が期待されている。
【0003】
また、動画像の視聴機能の1つである、1セグメント部分受信サービスによるテレビ視聴機能を備えた携帯電話機も近年実用化されている。このようなテレビ画像を表示する携帯電話機においても、画面の視認し易いものが期待されている。
【0004】
ところで、従来の携帯電話機においては、使用者が把持しやすい様に筐体を縦長に構成し、筐体と同様の縦長に構成した表示画面が設けられている。しかし、表示画面を縦長に構成した携帯電話機は、文字情報を表示する際に1行に表示する文字数が少ないため文章が読みづらい。また、先に述べたテレビ視聴機能などを用いて動画像を画面に表示する際にも、横長の状態で配信される動画像を縦長の画面で表示するために画面が小さく表示されてしまい、視認性を損なっていた。
【0005】
これらの問題を解決するため、表示画面が設けられた筐体を携帯電話機本体に対して90度回動可能に構成した携帯電話機が実用化されている。携帯電話機を使用しない場合には表示画面が設けられた筐体を縦長の状態にし、例えば電子メール閲覧時や動画像の視聴時に表示画面の設けられた筐体を回動させる。これにより、携帯電話機本体は縦長形状であるため把持が容易であり、同時に文字情報や動画像の視認し易い横長形状に表示画面を回動させて携帯電話機を使用することができる。
【0006】
こうした携帯電話機において、表示画面が設けられた筐体を携帯電話機の表面方向に向けて構成し、画面が設けられた筐体を携帯電話機本体の長手方向にスライド可能な様に構成する。更に、表示画面が設けられた筐体をスライドさせた状態で携帯電話機本体に対して90度回動可能となる様に構成した携帯電話機が発明されている(例えば、特許文献1を参照)。また他の先行技術として、表示画面が設けられた筐体を携帯電話機本体に対して右方向に90度、あるいは左方向に90度回動可能に構成する。表示画面が設けられた筐体に磁石を配置し、表示画面が設けられた筐体が回動したときに磁石がとる位置に対向する位置へ磁気センサを配置する。磁気センサと磁石とが近接した際に発生する電圧あるいは電流を検出することで、表示画面が設けられた筐体の回動状態を検出する技術が発明されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−278226号公報
【特許文献2】特開2008−67335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に述べたような複数の形態を取り得る携帯電話機において、例えば表示画面が設けられた筐体をスライドさせ更に携帯電話機本体に対して90度回動させた構成を取る場合には、表示画面が設けられた筐体がスライドしていない閉状態、スライドした開状態、そしてスライドして90度回動したT字状態の3状態を取ることとなる。こうした複数の状態を検出するためには、各状態に対応した複数の磁石及び磁気センサを携帯電話機内部に設ける必要がある。しかし、多数の磁石や磁気センサを携帯電話機内に設けることは、部品点数や配線数の増加を招き、携帯電話機の小型化を妨げるという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、少数の磁石及び磁気センサで筐体の移動状態を検知しうる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、第1筐体と、第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを互いに重ね合わせたままスライド移動および回動移動を可能にするように連結する連結機構とから成り、前記第1筐体と前記第2筐体とを重ね合わせた第1形態と、前記第1筐体又は前記第2筐体をスライド移動させた第2形態と、前記第1筐体又は前記第2筐体を回動移動させた第3形態とを有する電子機器であって、前記第1筐体又は前記第2筐体に設けられる磁石と、前記第1形態にあるとき前記磁石と対向する位置の前記第2筐体又は前記第1筐体に設けられ、前記磁石の磁力によって磁気検出信号を出力する第1の磁気センサと、前記第3形態にあるとき前記磁石と対向する位置の前記第2筐体又は前記第1筐体に設けられ、前記磁石の磁力によって磁気検出信号を出力する第2の磁気センサとを有することを特徴とする
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筐体のスライド動作や回動動作によって複数の状態を取りうる電子機器において、少数の磁石及び磁気センサで電子機器の状態を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機の、閉状態の外観の構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機の、開状態の外観の構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機の、T字状態の外観の構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機の、第1筐体、第2筐体、及びスライド板金の表面矢視、裏面矢視、側面断面を示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機が、開状態からT字状態へ移行する際のスライド板金と第1筐体の位置関係を示す図。
【図6】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機が、閉状態、開状態、及びT字状態へ移行する際の、スライド板金と第2筐体の位置関係を示す図。
【図7】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機の内部の構成を示す図。
【図8】本発明の実施形態に係る磁石とホール素子を用いた状態検出方法を示す図。
【図9】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機の、第2筐体のスライド移動及び回動移動の検出動作を行う場合の、磁石及びホール素子の配置を示す図。
【図10】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機の、第2筐体のスライド移動及び回動移動の検出動作を行う場合の、磁石及びホール素子の他の配置を示す図。
【図11】本発明の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機の、第2筐体の第1のスライド移動及び第2のスライド移動の検出動作を行う場合の、磁石及びホール素子の配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(携帯電話機の構成)
図1は、本発明に係る携帯端末の一例である、スライド式携帯電話機1の外観の構造を示す図である。図1(a)は、携帯電話機1をスライドさせて開いた開状態を正面から見た外観の構成を示し、図1(b)は開状態にある携帯電話機1を側面から見た外観の構成を示している。また、図2(a)は、携帯電話機1をスライドさせて閉じた閉状態を正面からみた外観の構成を示し、図2(b)は閉状態にある携帯電話機1を側面から見た外観の構成を示している。図1(a)及び(b)に示すように、携帯電話機1は第1筐体2と第2筐体3とを重ね合わせて結合し、後述するスライド機構に基づいて第2筐体3を携帯電話機1の長手方向にスライド移動できる様に構成されている。
【0015】
図3は、第2筐体3が90度回動したときの外観の構成を示す図である。図3(a)は、第2筐体3が90度回動した状態(以下、単にT字状態と表記する)にあるときの正面から見た外観の構成を示し、図3(b)は、携帯電話機1がT時状態にあるときの側面から見た外観の構成を示している。図3(a)及び(b)に示すように、携帯電話機1はこれが開状態にあるときに、後述するスライド構造に基づいて第2筐体3が90度回動できる様に構成される。
【0016】
第1筐体2には、その表面に「0」から「9」までの数字キー、発信・着信キー、リダイヤルキー、終話・電源キー、クリアキー、及び第1のメニューキーなどから構成される操作キー4が設けられている。更に、第1筐体の側面にはマナーモードキー、第2のメニューキーなどから構成されるサイドキー5が設けられている。使用者は、操作キー4またはサイドキー5を用いて携帯電話機1へ各種指示やデータを入力する。なお、本実施例においては第1筐体2に操作キー4及びサイドキー5が設けられると述べたが、操作キー4やサイドキー5の一部あるいは全部が第2筐体3に設けられる構成を取っても構わない。
【0017】
第2筐体3の表面には、その正面にメインディスプレイ10が設けられており、例えば、携帯電話機1の設定画面やメール、ウェブサイト、あるいは動画像を表示する。また、携帯電話機1が受信している電波強度レベルを示すアンテナピクト、バッテリ9の残量を示す電池ピクトあるいは現在時刻などを表示する。なお、メインディスプレイ10は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)によって構成されるディスプレイである。
【0018】
第1筐体2には、操作キー4の下部にマイクロフォン7が設けられており、マイクロフォン7によって通話時の使用者が発する音声を集音する。また、第2筐体3の後述するメインディスプレイ10の上部にはスピーカ8が設けられており、通話時の通話相手の音声を出力する。また、第1筐体2には背面側にバッテリ9が取り付けられており、終話・電源キーが長押されて携帯電話機1がオン状態になると、バッテリ9は電源回路34を通じて後述する各回路に対して電源を供給する。
【0019】
携帯電話機1の内部の所定の位置には、送受信用のアンテナ(後述する図4のデータ送受信アンテナ20及びテレビ電波受信アンテナ21)が内蔵されており、この内蔵されたアンテナを介してデータ信号の送受信やテレビ電波の受信を行う。
【0020】
また、第1筐体2あるいは第2筐体3には、後述する所定の位置にホール素子11と磁石12が設けられる。ホール素子11及び磁石12は、携帯電話機1が閉状態、開状態、T字状態にあるとき対応する位置関係を保つよう設けられる。ホール素子11と磁石12とが近接することでホール素子11が発生する電圧によって、後述する制御部31は携帯電話機1が3つの状態のうちどの状態にあるかを検出することができる。
【0021】
(携帯電話機1の内部構成)
図7は、本実施形態における携帯電話機1の内部の構成を示すブロック図である。
【0022】
携帯電話機1の内部の所定の位置には、音声信号及びデータ信号を送受信するアンテナ20が設けられており、携帯電話機1は内蔵されたアンテナ20を介して電波基地局との間で電波を送受信する。携帯電話機1が送受信する電波には、電子メールなどのデータ通信を行うためのデータ信号や、マイクロフォン7あるいはスピーカ8を用いて音声通信を行うための音声信号が変調されている。また、携帯電話機1の内部の所定の位置には、1セグメントテレビ信号を受信するテレビアンテナ21が設けられている。テレビアンテナ21で受信したテレビ信号は制御部31で処理され、テレビ画像としてメインディスプレイ10へ出力される。電波通信を介したデータや音声信号の送受信、及びテレビ信号の受信について公知の技術であるので、本明細書においては説明を省略する。
【0023】
第1筐体2の内部には、制御部31が設けられている。制御部31は、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路から構成される。CPUは、後述するROMに記憶されているプログラム、または後述するRAMにロードされた各種のアプリケーションプログラムに従って処理を実行する。更にCPUは、上述した各回路部から供給される信号を処理し、また種々の制御信号を生成し、携帯電話機1を制御する各回路部へと供給する。これらの処理により、CPUは携帯電話機1を統括的に制御する。また、制御部31は更にビデオRAMを備えており、メインディスプレイ10に表示される映像に関する情報が記憶される。更に、制御部31はホール素子11から出力された電圧信号を受信することで、携帯電話機1が閉状態、開状態、あるいはT字状態のいずれの状態にあるかを把握し、状態遷移に応じた処理を実行する。
【0024】
記憶部32には、制御部31のCPUにより実行される種々のアプリケーションプログラムやデータ群が格納されている。記憶部32は、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などのメモリ素子や、HDD(Hard Disc Drive)などから構成される。
【0025】
(携帯電話機のスライド構造)
携帯電話機1は、第1筐体2と第2筐体3とがスライド移動および回動移動可能に構成するため、第1筐体2と第2筐体3との間にスライド板金100を挟んで結合されている。図4は、第1筐体2、スライド板金100、及び第2筐体3の構成を示している。図4(a)は第1筐体2、スライド板金100、及び第2筐体3を表面から見た矢視図、図4(b)は第1筐体2、スライド板金100、及び第2筐体3を裏面から見た矢視図、そして図4(c)は第1筐体2、スライド板金100、及び第2筐体3の、図中の点線の位置での断面図を示している。
【0026】
スライド板金100は、その両端が巻き込み形状に加工されており、巻き込み形状が表面に飛び出すように設けられている。スライド板金100の巻き込み形状は、第2筐体3の裏面に設けられたスライド凸部301および302と組み合わされる。これにより、スライド板金100はスライド凸部301および302に沿ってスライド移動する。
【0027】
スライド板金100には丸穴101が設けられ、この丸穴101に第1筐体2に設けられた回動凸部201が差し込まれる。回動凸部201はスライド板金100から突出する様な高さに構成され、更に回動凸部201の突出部(頭部)は丸穴101よりも大きくなるように構成される。回動凸部201の突出部はスライド凸部301と、第2筐体3の短軸方向に衝突しうる高さとなるよう構成される。回動凸部201によってスライド板金100は第1筐体2と組み合わされる。
【0028】
図5は、携帯電話機1が開状態からT字状態へ遷移する際の、第1筐体2とスライド板金100との位置の遷移を示している。図5(a)は開状態、図5(b)はT字状態をそれぞれ示している。図4(b)に示すようにスライド板金100には凸部(a)103が設けられており、これが第1筐体2に設けられたU字溝203に差し込まれる。ない、U字溝203の両端にはロック溝(外側に少し開く形状)が形成されている。また、図4(b)に示すように第1筐体2には凸部(b)202が設けられており、これがスライド板金100に設けられた円弧溝102に差し込まれる。2つの凸部(a)103および202が、図5(a)及び(b)に示すように溝に沿って移動することで、第2筐体3がスライド板金100に対して円周移動する。
【0029】
図6は、携帯電話機1が閉状態から開状態へ、更にT字状態へ遷移する際の、スライド板金100と第2筐体3との位置の遷移を示している。図6(a)は閉状態、図6(b)は開状態、そして図6(c)はT字状態をそれぞれ示している。回動凸部201の突出部は、円状の部分と直線の部分とを組み合わせた形状で構成されている。
【0030】
図6(a)に示すように、回動凸部201の外側直線部分をガイドとしてスライド凸部301の幅広部の直線部分が移動可能なように配置される。従って、閉状態で第2筐体3を回動動作させようとすると、回動凸部201の外側直線部分とスライド凸部301の厚肉部とが衝突し、回動させることができない。一方、第2筐体3がスライド移動して開状態となると、図6(b)に示すように回動凸部201にスライド凸部301の幅狭部が対向する位置まで第2筐体3を移動する。スライド凸部301の薄肉部は回動凸部201の回動を妨げないために、開状態にあるとき第2筐体3を、例えば時計方向に回動させることができる。
【0031】
第2筐体3の回動時には、回動凸部201を支点として、スライド板金100の円弧溝102が第1筐体2の凸部(b)202に沿ってスライドし、スライド板金100の凸部(a)103が第1筐体2のU字溝203に沿ってスライドする。
【0032】
(ホール素子による状態検出)
ホール素子11は、ローレンツ効果を利用してホール素子11へ入力された磁束に応じた電圧を発生する磁気センサの一種である。ホール素子11は通常InSbあるいはGaAs等の半導体を用いて構成され、一定量の電流をホール素子11へ印加した状態で用いる。ホール素子11に対して磁石12を近接させると、ホール素子11中を流れる電子に対して磁束が加わる。電子の流れる方向と、加えられた磁束の方向に応じて電磁力が発生し、電子が一方へ偏った状態となる。この電子の偏りが電界を生じさせるため、制御部31はこの電圧を検出することでホール素子11と磁石12の近接を検出する。
【0033】
図8は、ホール素子11を用いて携帯電話機1の閉状態と開状態の遷移を検出する例を示している。例えば、携帯電話機1の第1筐体2に磁石12が、第2筐体3にはホール素子11が設けられている。図8(a)は携帯電話機1を閉状態としたときのホール素子11と磁石12との位置関係を示し、図8(b)は携帯電話機1を開状態としたときの位置関係を示している。図8(a’)及び(b’)はそれぞれ図8(a)および(b)に対応した、携帯電話機1を横から見た場合のホール素子11と磁石12との位置関係を示している。
【0034】
携帯電話機1が閉状態にあるとき、図8(a)にあるように、ホール素子11と磁石12とは上面からみて重なり合うような位置に配置されている。そして、図8(a’)にあるように、ホール素子11と磁石12とが近接するために、ホール素子11は磁石12が発生する磁束を受けて電圧を発生する。
【0035】
一方、携帯電話機1が開状態にあるとき、図8(b’)にあるように、ホール素子11と磁石12とは引き離された位置に配置される。ホール素子11が磁石12から受ける磁束の密度は、磁石12から離れるに従い低くなる。そのため、携帯電話機1が開状態にあるとき、ホール素子11の発生する電圧は、閉状態のときの電圧に比べ低くなる。このホール素子11が出力する電圧を制御部31が検出することで、制御部31はホール素子11と磁石12との位置関係から携帯電話機1が閉状態であるか開状態であるかを判別することができる。
【0036】
(第1の実施形態)
図9は、閉状態(図9(a)を参照)にある携帯電話機1の第2筐体3が筐体長手方向にスライドして開状態(図9(b)を参照)に遷移し、更に第2筐体3が90度回動してT字状態(図9(c)を参照)に遷移した時の、2つのホール素子11、11’と磁石12の位置関係を示した図である。図9(d)は、携帯電話機1がT字状態にあるときの、2つのホール素子11、11’と磁石12の位置関係を座標値で示している。以降、説明の簡単のために、図9(d)における携帯電話機1の短手方向をX軸、長手方向をY軸とした座標を用いて、携帯電話機1の状態検出について述べる。
【0037】
携帯電話機1には、幅W、長さLの第1筐体2の左右の内表面にホール素子11およびホール素子11’が設けられている。また、幅W、長さLの第2筐体3の内表面に磁石12が設けられている。携帯電話機1が閉状態にあるとき、ホール素子11は座標値(A+B,C)、ホール素子11’は座標値(A,C)に、磁石12は座標値(A+B,C)に配置される。
【0038】
つまり、図9(a)に示すように、携帯電話機1が閉状態にあるとき、ホール素子11と磁石12とが座標値(A+B,C)で重なりあう位置に配置される。ホール素子11と磁石12とが重なることで、ホール素子11は電圧を発生する。制御部31はホール素子11から発生する電圧を検出することで、携帯電話機1が閉状態にあることを判別する。
【0039】
次に、閉状態にある携帯電話機1の第2筐体3がY軸方向に距離Sだけ上方向にスライドすると、図9(b)に示す開状態となる。すると、第2筐体3に設けられた磁石12もY軸方向に距離Sだけ移動し、磁石12の位置は座標値(A+B,C+S)となる。一方、固定側の第1筐体2のホール素子11およびホール素子11’は磁石12から離れた位置となるために、ホール素子11およびホール素子(b)11’から発生される電圧が閉状態の時より低い値となる。制御部31は、この低い値の電圧を検出して、携帯電話機1が開状態にあることを判別する。
【0040】
次に、開状態にある携帯電話機1の第2筐体3を座標値(A,C+S)に位置する回転軸13(回動凸部201)を支点として時計方向に回動すると、磁石12の位置は座標値(A,C)となる。つまり、移動後の磁石12は座標値(A,C)にあるホール素子11’と重なりあう。これにより、ホール素子11’から電圧が発生する。制御部31は、ホール素子11’から発生した電圧を検出することで、携帯電話機1がT字状態にあることを判別する。
【0041】
なお、ここでは第1筐体2にホール素子11,素子11’を設け、第2筐体3に磁石12を設ける構成としたが、第1筐体2に磁石12を設け、第2筐体3にホール素子11,素子11’を設ける構成として良い。これは、後述する他の実施形態でも同じである。
【0042】
(第2の実施形態)
図10は、閉状態(図10(a)を参照)にある携帯電話機1が開状態(図10(b)を参照)、T字状態(図10(c)を参照)と変化するときの、ホール素子11、ホール素子11’と磁石12との別の位置関係を示した図である。図10(d)は携帯電話機1がT字状態にあるときの、ホール素子11、ホール素子11’と磁石12の位置関係を座標値で示している。第1の実施形態と第2の実施形態との違いは、ホール素子11、11’が上下に離れた位置関係に配置されている点である。また、携帯電話機1が閉状態にあるとき、磁石12が座標値(A+B,D)の座標に配置される点である。以下に、携帯電話機1の状態検出について述べる。
【0043】
まず、図10(a)に示すように、携帯電話機1が閉状態にあるとき、ホール素子11と磁石12とが座標値(A+B,D)で重なり合うように配置されている。ホール素子11と磁石12とが重なることで、ホール素子11から電圧が発生する。制御部31は、ホール素子11から発生した電圧を検出することで、携帯電話機1が閉状態にあることを判別する。
【0044】
次に、閉状態にある携帯電話機1の第2筐体3をY軸方向に距離Sだけ上方向にスライドさせると、図10(b)に示す開状態となる。すると、第2筐体3に設けられた磁石12もY軸方向に距離Sだけ移動し、磁石12の位置は座標値(A+B,C)となる。つまり、移動後の磁石12は、座標値(A+B,C)にあるホール素子11’と重なり合う。
【0045】
これにより、ホール素子11’から電圧が発生する。制御部31は、ホール素子11’から発生する電圧を検出することで、携帯電話機1が開状態にあることを判別する。
【0046】
次に、開状態にある携帯電話機1の第2筐体3を座標値(A,C+S)に位置する回転軸13(回動凸部201)を支点として時計方向に90度回動させると、図10(c)に示すT字状態となる。すると、第2筐体3の磁石12は、回転軸13を支点とした時計方向に回動する。ここで、磁石12とY軸とが成す角度をθとすると、回動後の磁石12は、座標値(A−sin(90−θ),C+S−cos(90−θ))へ移動する。つまり、移動後の磁石12は、ホール素子11およびホール素子11’から離れた位置に移動するために、ホール素子11,11’から発する電圧値は低い値となる。したがって、制御部31は、ホール素子11およびホール素子11’から出力される電圧値が低いことを検出することで、携帯電話機1がT字状態にあることを判別する。
【0047】
(第3の実施形態)
図11は、閉状態(図11(a)を参照)にある携帯電話機1の第2筐体3を長手方向の第1位置にスライドさせると第1の開状態(図11(b)を参照)となり、更に第2筐体3を長手方向の第2位置にスライドさせると第2の開状態(図11(c)を参照)となるときの、ホール素子11、ホール素子11’、および磁石12の位置関係を示した図である。図11(d)は、携帯電話機1が第2の開状態にあるときの、ホール素子11、ホール素子11’、および磁石12の位置関係を座標値で示したものである。
【0048】
この第3の実施形態にあっては、携帯電話機1には、幅W、長さLの第1筐体2にホール素子11およびホール素子11’が上下に離れた位置に設けられる。また、同様に幅W、長さLの第2筐体3に磁石12が、図11(d)に示す位置に設けられる。そして、携帯電話機1が閉状態にあるとき、ホール素子11は座標値(A,B)、ホール素子11’は座標値(A,B+S)に、磁石12は座標値(A,B)に配置される。
【0049】
まず、図11(a)に示すように、携帯電話機1が閉状態にあるとき、ホール素子11と磁石12とが座標値(A,B)で重なり合うように配置されている。ホール素子11と磁石12とが重なることで、ホール素子11から電圧が発生する。制御部31は、ホール素子11から発生する電圧を検出することで、携帯電話機1が閉状態にあることを判別する。
【0050】
次に、閉状態にある携帯電話機1の第2筐体3をY軸方向に距離Sだけスライドさせると、図11(b)に示す第1の開状態となる。すると、第2筐体3に設けられた磁石12もY軸方向に距離Sだけ移動し、磁石12の位置は座標値(A,B+S)となる。つまり、移動後の磁石12は、座標値(A,B+S)にあるホール素子11’と重なり合う。これにより、ホール素子11’から電圧が発生する。制御部31は、ホール素子11’から発生する電圧を検出することで、携帯電話機1が第1の開状態にあることを判別する。
【0051】
次に、第1の開状態にある携帯電話機1の第2筐体3をY軸方向に更に距離S’だけスライドさせると、図11(c)に示す第2の開状態となる。すると、第2筐体3に設けられた磁石12もY軸方向に距離S’だけ移動し、磁石12の位置は座標値(A,B+S+S’)となる。つまり、移動後の磁石12は、ホール素子11およびホール素子11’から離れた位置に移動するために、ホール素子11,11’から発する電圧値は低い値となる。したがって、制御部31は、ホール素子11およびホール素子11’から出力される電圧値が低いことを検出することで、携帯電話機1が第2の開状態にあることを判別する。
【0052】
なお、本実施例では、例として長軸方向にスライドする場合を示したが、短軸方向やその他の方向へ第2筐体3がスライドする場合や、第1の開状態へ移行するスライド方向と第2の開状態へ移行するスライド方向とが異なる方向であっても構わない。また、本実施例では、閉状態からスライド移動して開状態となり、更に開状態から回転してT字状態となる場合を示した。しかし、同様のヒンジ構造によって閉状態からスライド移動して開状態となり、また閉状態から回転してT字状態となる構成をとっても構わない。
【0053】
以上の実施形態の動作によれば、第2筐体3がスライド動作や回動動作を行う携帯電話において、第2筐体3に磁石12を、第1筐体2にホール素子11およびホール素子11’を設ける構成としている。磁石12、ホール素子11およびホール素子11’の位置は、第2筐体3の移動に応じた位置とする。ホール素子11およびホール素子11’が磁石12の近接に応じて発する電圧を制御部31が検出することで、制御部31は第2筐体3が取り得る3つの状態うちいずれの状態にあるかを判別する。通常、第2筐体3が移動を行う電子機器においては、各移動パターンに応じて1組の磁石12およびホール素子11が必要となる。しかし、本発明によれば、1つの磁石12と2つのホール素子11によって3つの状態を検出することができる。これに伴って、携帯電話機1を構成する部品点数および配線数を削減することができる。なお、本実施例においては3つの状態を取りうる携帯電話機を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用範囲はこれに限られるものではなく、4つ以上の状態を取りうる携帯電話機に対して本発明を適用しても構わない。また、本実施例においては携帯電話機の状態を変化させる筐体の移動方法の例としてスライド移動と回動移動を挙げたが、例えば折畳回動などの他の移動方法を用いても構わない。
【0054】
なお、ここに述べた実施の形態において、磁気センサの例としてホール素子を挙げて説明を行った。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、磁気センサとして磁気抵抗効果素子や磁気インピーダンス素子によって構成しても構わない。また、ここに述べた実施の形態において、電子機器の例として携帯電話機を挙げて説明を行った。しかし、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、例えばPDA(Personal Digital Assistant)や有線端末、小型情報処理機器などにも適用できる。要するに本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、構成要素を変形して具体化しても良い。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宣な組み合わせにより、種々の発明を形成しても良い。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 携帯電話機
2 第1筐体
3 第2筐体
4 操作キー
5 サイドキー
7 マイクロフォン
8 スピーカ
9 バッテリ
10 メインディスプレイ
11、11’ ホール素子
12 磁石
20 アンテナ
21 テレビ用アンテナ
31 制御部
32 記憶部
100 スライド板金
101 丸穴
102 円弧溝
103 凸部(a)
201 回動凸部
202 凸部(b)
203 U字溝
301 スライド凸部(a)
302 スライド凸部(b)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを互いに重ね合わせたままスライド移動および回動移動を可能にするように連結する連結機構とから成り、
前記第1筐体と前記第2筐体とを重ね合わせた第1形態と、前記第1筐体又は前記第2筐体をスライド移動させた第2形態と、前記第1筐体又は前記第2筐体を回動移動させた第3形態とを有する電子機器であって、
前記第1筐体又は前記第2筐体に設けられる磁石と、
前記第1形態にあるとき前記磁石と対向する位置の前記第2筐体又は前記第1筐体に設けられ、前記磁石の磁力によって磁気検出信号を出力する第1の磁気センサと、
前記第3形態にあるとき前記磁石と対向する位置の前記第2筐体又は前記第1筐体に設けられ、前記磁石の磁力によって磁気検出信号を出力する第2の磁気センサと、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1の磁気センサは、前記第2形態へ移行する際の前記スライド移動における前記
磁石の移動軸と平行な軸線上に設けられ、
前記第2の磁気センサは、前記第3形態へ移行する際の前記回動移動における前記磁石の移動軸と平行な軸線上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを互いに重ね合わせたままスライド移動および回動移動を可能にするように連結する連結機構とから成り、
前記第1筐体と前記第2筐体とを重ね合わせた第1形態と、前記第1筐体又は前記第2筐体をスライド移動させた第2形態と、前記第1筐体又は前記第2筐体を回動移動させた第3形態とを有する電子機器であって、
前記第1筐体又は前記第2筐体に設けられる磁石と、
前記第1形態にあるとき前記磁石と対向する位置の前記第2筐体又は前記第1筐体に設けられ、前記磁石の磁力によって磁気検出信号を出力する第1の磁気センサと、
前記第2形態にあるとき前記磁石と対向する位置の前記第2筐体又は前記第1筐体に設けられ、前記磁石の磁力によって磁気検出信号を出力する第2の磁気センサと、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項4】
前記第1の磁気センサ及び第2の磁気センサは、前記第2形態へ移行する際の前記スラ
イド移動における前記磁石の移動軸と平行な軸線上に設けられることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを互いに重ね合わせたままスライド移動可能にするように連結する連結機構とから成り、
前記第1筐体と前記第2筐体とを重ね合わせた第1形態と、前記第1筐体又は前記第2筐体を第1位置へスライド移動した第2形態と、前記第1筐体又は前記第2筐体を第2位置へスライド移動へ移動した第3形態とを有する電子機器であって、
前記第1筐体又は前記第2筐体に設けられた磁石と、
前記第1形態にあるとき前記磁石と対向する位置の前記第2筐体又は前記第1筐体に設けられ、前記磁石の磁力によって磁気検出信号を出力する第1の磁気センサと、
前記第2形態にあるとき前記磁石と対向する位置の前記第2筐体又は前記第1筐体に設けられ、前記磁石の磁力によって磁気検出信号を出力する第2の磁気センサと、
を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−239574(P2010−239574A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87998(P2009−87998)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】