説明

電子機器

【課題】第1の筐体を第2の筐体に対して高い頻度で回動させても、接続配線の断線などが生じにくい構成を備えた電子機器を得ること。
【解決手段】第1の電気回路を備えた第1の筐体1と、第2の電気回路を備えた第2の筐体2とが、ヒンジ機構6、9によって回動可能な状態で一体化されていて、前記第1の電気回路と前記第2の電気回路とを接続する接続配線5が、前記第2の筐体2内部から前記ヒンジ機構6,9が収納されたヒンジ部内に導入され、前記ヒンジ部内において、前記ヒンジ機構6,9の回動軸xに平行な第1の方向へ向かう第1の方向成分11aと、前記回動軸xに平行であって前記第1の方向とは逆向きの第2の方向へと向かう第2の方向成分11bとを有する迂回部11を形成した後、前記ヒンジ部内から前記第1の筐体1内へと導出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の筐体が、ヒンジ機構によって第2の筐体に対して回動可能な状態で取り付けられている電子機器に関し、特に、ヒンジ機構により第2の筐体に対して第1の筐体を回動させたときに、第1の筐体内部の電気回路と第2の筐体内部の電気回路とを接続する接続配線に損傷が生じにくい構造を有した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンやPDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話や携帯型のゲーム機器など、いわゆるモバイルユースの電子機器の普及が進んでいる。このようなモバイルユースの電子機器においては、本体部と表示部とが別々の筐体として構成され、表示部が本体部の蓋部としてヒンジ機構によって回動可能な状態で取り付けられていることが多い。このような構成とすることで、表示部の表示面積を本体部の表面積とほぼ同等レベルまで広げることができると共に、電子機器を使用しないときには表示部が本体部の蓋部となるため、本体部表面に形成されたキーボードや入力ボタンなどの情報入出力端末機構と、表示パネルの表示面とを同時に保護することができる。
【0003】
一方で、表示部と本体部とを別々の筐体として電子機器を構成した場合には、表示部で表示を行うために必要な表示信号や、表示素子と共にモジュール化されている表示用駆動回路の駆動電圧などを、本体部から表示部へと接続配線を用いて伝達する必要がある。
【0004】
ヒンジ機構によって表示部が本体部に対して回動可能とされている場合に、本体部と表示部とを接続する接続配線にヒンジ機構の回動によって大きな負荷が掛かることを防止する技術として、図5に示す構成が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
図5に示す、従来の電子機器である情報機器500は、表示パネル504を有する表示部501と、図示しないキーボードなどが配置された本体部502とが、ヒンジ機構509により回動軸X’に対して回動可能な状態で一体化されている。そして、表示部501内の表示パネル504の図示しない駆動回路基板と、本体部502内の図示しないメイン回路基板とを接続するために、表示部501から導出されるフレキシブルケーブル505は、ヒンジ機構509の中空部を経由して、本体部502の表面に設けられた本体部502内のメイン回路基板への接続端子508に接続されている。フレキシブルケーブル505は、図5に示すように、ヒンジ機構509の中空部から引き出された後、屈曲部によってその方向が曲げられて接続端子508に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−116211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に記載の技術では、表示部と本体部との2つの筐体で構成される情報機器において、接続配線であるフレキシブルケーブル505を、ヒンジ機構509の回動軸方向となるように屈曲部でほぼ直角に折り曲げ、ヒンジ機構509内の中空部を介して本体部から表示部内に引き込んでいる。このようにすることで、フレキシブルケーブル505のねじれが表示部の回動よりも緩やかになって、フレキシブルケーブル505の耐久力が向上する。
【0008】
しかし、図5に示す従来の情報機器では、情報機器が使用されるたびに行われる表示部の回動によって接続配線に無理な負荷が加わり、長期間の使用や高い頻度での使用によって接続配線の断線などの不都合が生じることを、十分に回避できる構成を実現するものではなかった。
【0009】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するものであり、第1の筐体を第2の筐体に対して高い頻度で回動させても、接続配線の断線などが生じにくい構成を備えた電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電子機器は、第1の電気回路を備えた第1の筐体と、第2の電気回路を備えた第2の筐体とが、ヒンジ機構によって回動可能な状態で一体化され、前記第1の電気回路と前記第2の電気回路とを接続する接続配線を備え、 前記接続配線は、前記第2の筐体内部から前記ヒンジ機構が収納されたヒンジ部内に導入され、前記ヒンジ機構の回動軸に平行な第1の方向へ向かう第1の方向成分と、前記回動軸に平行であって前記第1の方向とは逆向きの第2の方向へと向かう第2の方向成分とを有する迂回部を前記ヒンジ部内に備え、前記迂回部を経由して前記ヒンジ部内から前記第1の筐体内へと導出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子機器は、第1の筐体と第2の筐体とを接続するヒンジ機構が収納されたヒンジ部内部で、接続配線が迂回部を形成した後に第1の筐体内へと導出されるため、第1の筐体が回動しても接続配線に大きなねじれの力が加わりにくい。このため、第1の筐体を高い頻度で回動させても、接続配線の断線などが生じにくい電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかるノートパソコンの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるノートパソコンにおける、ヒンジ機構が収容されたヒンジ部の構成例を示す要部拡大斜視図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるノートパソコンにおける、接続配線が形成する迂回部の形状を説明するための図である。図3(a)は、迂回部がU字状である場合、図3(b)は、迂回部が馬蹄形状である場合、図3(c)は、迂回部が水平面内で形成されている場合、図3(d)は、迂回部が立体的な曲線で形成されている場合、図3(e)は、迂回部が螺旋形状である場合を示す。
【図4】本発明の実施形態にかかるノートパソコンにおける、ヒンジ機構が収容されたヒンジ部の別の構成例を示す要部拡大斜視図である。
【図5】従来の情報機器におけるヒンジ機構部分の構成を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電子機器は、第1の電気回路を備えた第1の筐体と、第2の電気回路を備えた第2の筐体とが、ヒンジ機構によって回動可能な状態で一体化され、前記第1の電気回路と前記第2の電気回路とを接続する接続配線を備え、前記接続配線は、前記第2の筐体内部から前記ヒンジ機構が収納されたヒンジ部内に導入され、前記ヒンジ機構の回動軸に平行な第1の方向へ向かう第1の方向成分と、前記回動軸に平行であって前記第1の方向とは逆向きの第2の方向へと向かう第2の方向成分とを有する迂回部を前記ヒンジ部内に備え、前記迂回部を経由して前記ヒンジ部内から前記第1の筐体内へと導出される。
【0014】
このようにすることで、ヒンジ機構の回動軸に平行な第1の方向へ向かう第1の方向成分と、回動軸に平行であって第1の方向とは逆向きの第2の方向へと向かう第2の方向成分とを有する迂回部で、第1の筐体が第2の筐体に対して回動することによる接続配線のねじれが吸収されて、接続配線に直接大きなねじれの力が加わりにくい。また、接続配線が、第2の筐体から第1の筐体内に導入される課程で迂回部を経るために、第1の筐体と第2の筐体とのそれぞれで接続配線を固着する固着部間の間隔が拡がり、同じ角度のねじれが生じた場合に接続配線に作用する力そのものが小さくなる。このため、第2の筐体に対して第1の筐体を繰り返し回動させても接続配線に断線などの不都合が生じにくい電子機器を得ることができる。
【0015】
なお、以下本明細書での説明において、接続配線が第2の筐体からヒンジ部内に導入され、また、ヒンジ部から第1の筐体内へと導出されるというように、ヒンジ部を中心として接続配線の方向を説明する。しかし、これはあくまで説明の便宜上の表現であり、たとえば、電子機器の製造方法における接続配線の配置手順や、接続配線内を流れる電気信号の方向など、実際の接続配線に特定の向きがあることを規定するものと理解してはならない。
【0016】
上記本発明の電子機器では、前記接続配線は、前記第2の方向に沿って前記ヒンジ部から前記第1の筐体へと導出されていることが好ましい。第1の筐体を回動させた場合に接続配線に大きなねじれが加わる形態において、接続配線に加わるねじれの影響を効果的に低減することができる。
【0017】
また、前記接続配線の、前記第1の筐体から前記ヒンジ部内への導入方向と、前記ヒンジ部から前記第1の筐体への導出方向が直交していることが好ましい。第1の筐体を第2の筐体に重ね合わせることができ、電子機器をコンパクトに折り畳むことができる。
【0018】
さらに、前記ヒンジ軸が前記第2の筐体の上面上に位置し、前記接続配線が前記第2の筐体の前記上面に対して鉛直方向に延出して前記ヒンジ部に導入されることが好ましい。このようにすることで、第1の筐体内の第1の電気回路と第2の筐体内の第2の電気回路とを最短の接続配線で接続することができる。
【0019】
さらにまた、前記迂回部が、直線状の前記第1の方向成分と、直線状の前記第2の方向成分とが曲線部で接続されたU字状部であることが好ましい。このようにすることで、ヒンジ部内で迂回部が形成されるスペースを小さくすることかでき、ヒンジ部の大型を招くことなく信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【0020】
また、前記接続配線が、前記迂回部を形成した後、前記ヒンジ機構の回動軸の延長線上を通って前記ヒンジ部から前記第1の筐体内へと導出されていることが好ましい。接続配線がヒンジ機構の回動軸の延長線上を通ることで、接続配線の配置位置が回動軸を中心として移動してしまうことを回避でき、接続配線に加わる変形を最も小さくすることができる。
【0021】
さらに、前記第1の筐体が表示パネルを有する表示部であって、前記第1の電気回路が前記表示パネルを駆動する駆動回路であることが好ましい。このようにすることで、表示部の表示面積を大きくした電子機器を得ることができる。
【0022】
また、前記第2の筐体が、データ入力のためのキーボードと中央集積処理回路とを備えたパソコン本体部であるようにすることで、表示部の開閉を繰り返しても接続配線の断線が生じにくいノートパソコンを得ることができる。
【0023】
以下、本発明にかかる電子機器の実施形態として、第1の筐体に表示パネルとしての液晶パネルを備え、第2の筐体が、キーボードが配置されたパソコン本体であるノートパソコンを例示して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態のノートパソコンの全体構成を示す斜視図である。
【0025】
本実施形態のノートパソコン100は、第1の筐体である表示部1が、ヒンジ部カバー3内に収容されたヒンジ機構によって回動可能な状態で、第2の筐体であるパソコン本体部2に取り付けられている。
【0026】
本実施形態のノートパソコン100においてヒンジ機構は、その回動軸がパソコン本体部2上面の少し上方側に位置するように、パソコン本体部2の内部から上方に突出して設けられている。また、本実施形態のノートパソコン100では、パソコン本体部2の左右両側に2つのヒンジ機構が配置されている。なお、本実施形態のノートパソコンにおいて、ヒンジ機構の配置位置やヒンジ機構の数に制約はなく、ヒンジ機構が1つの場合または3つ以上の場合、ヒンジ機構の回動軸が本体内部に埋め込まれた状態や、本体部の上方ではなく後方側に突出した状態など、さまざまな形態とすることができる。
【0027】
表示部1は、表示パネルとしての液晶パネル4を収納していて、ノートパソコン100の不使用時にはパソコン本体部2の蓋部となる。表示部1に収納された液晶パネル4としては、一例として通常のアクティブマトリクスタイプの液晶パネルを用いることができ、液晶パネル4は、液晶パネル4で画像表示を行うためのバックライトや駆動回路とともに一体化されて液晶モジュールを構成している。このように表示パネルとしては、現在周知の液晶パネルの構成をそのまま使用することができるため、液晶パネル4を含めた表示部1の構成についての詳細な説明は省略する。
【0028】
パソコン本体部2の表面には、ノートパソコンとしての通常の構成として、キーボード7やタッチパッド8、図示しないディスクドライブ装置の蓋部などが設けられている。また、パソコン本体部2の内部には、CPUやメモリなどの回路構成や、充電式電池、各種ドライブ装置などが収納されている。これら、パソコン本体部2の構成も、従来周知のノートパソコンの構成をそのまま適用できるものであることから、その詳細の説明は省略する。
【0029】
図1では、パソコン本体部2の後方左右に配置されたヒンジ機構の内、右側に位置するヒンジ機構のカバーが外された状態となっていて、ヒンジ機構を構成するヒンジ軸6やパソコン本体部2からヒンジ部内部に導入された後、表示部1内へと導出される接続配線5が見えている。この接続配線5は、例えば、パソコン本体部2の内部に備えられた第2の電気回路である表示信号生成回路と、表示部1内部に備えられた第1の電気回路である液晶パネル4の駆動回路とを接続している。なお、これら表示信号生成回路と駆動回路は、それぞれ回路基板上に形成されていて、接続配線5の端部は、コネクタなどによって回路基板に着脱自在に取り付けられている。
【0030】
図2は、本実施形態のノートパソコン100における、表示部1とパソコン本体部2とを接続するヒンジ部の構成を示す部分拡大斜視図である。なお、図2においても、ヒンジ部の構成を説明しやすくするために、ヒンジ部カバー3は取り除かれた状態で示されている。
【0031】
本実施形態のノートパソコン100のヒンジ部には、パソコン本体部2に形成されたヒンジ軸支持機構9と表示部1に形成されたヒンジ軸6が収容されていて、これらヒンジ軸6とヒンジ軸支持機構9とでヒンジ機構が形成されている。表示部1はヒンジ軸6の中心を回動軸xとして、パソコン本体部2に対して回動可能に取り付けられている。ヒンジ部のヒンジ軸6が形成されていない側、すなわち、図2における左側の部分は空洞部10になっていて、パソコン本体部2からその上面に鉛直方向に延出してヒンジ部に導入された接続配線5が、この空洞部10を通って導入方向に対して略直交する方向に向きを変えられて、回動軸xの延長線上を通って表示部1内へと導出されている。
【0032】
接続配線5は、パソコン本体部2からヒンジ部内に導入される導入部5aの後、すぐに表示部1内へと導出される導出部5bに接続されるのではなく、ヒンジ部内で、回動軸xに平行で表示部1内に導入されるための空洞部10とは反対の方向、すなわち、ヒンジ軸6が形成された側である図2における右側の方向に一旦曲げられた後、改めて回動軸xに沿って表示部1内部へと導出される方向、すなわち、図2における左側の空洞部10の方向に曲げられ、そのままの方向に沿って表示部1内に導出されている。このようにして、接続配線5は、ヒンジ部内において回動軸xに平行な軸を縦軸とするU字状の迂回部11を形成している。
【0033】
本実施形態のノートパソコン100では、接続配線5がヒンジ部内で迂回部11を形成していることにより、表示部1がヒンジ機構(6、9)により回動された場合に接続配線5に加わるねじれの力が、迂回部11の形状が変形することによって吸収される。また、途中に迂回部11を介するため、迂回部11を形成していない場合に比べて、表示部1内で接続配線5の位置決めをしている図示しない固着部と、パソコン本体部2内部で接続配線5を固定するホルダ12までとの間の接続配線5の長さが長くなる。このように、接続配線5を固定している部材間の長さが長くなるため、表示部1が回動することによって接続配線5にねじれが加わった場合、接続配線5の単位長さあたりのねじれ量が小さくなる。このため、表示部1が回動することにより接続配線5に加わる力が小さくなり、高い頻度で表示部1が回動しても接続配線5に断線などが生じにくく、信頼性の高いノートパソコン100を得ることができる。
【0034】
なお、接続配線5が形成する迂回部11の大きさは、接続配線5の太さや材質、また、迂回部11が接続されるヒンジ部内の空間の大きさなどを考慮して適宜定められるべきである。本実施形態として示したノートパソコン100の場合は、たとえば、図2中にaとして示す迂回部11の回動軸x方向の長さを2〜3cm、U字状に折り折り返された接続配線5同士の間隔を5〜10mmとすることができる。
【0035】
ここで、図3を用いて、迂回部11として取り得る各種の形状について詳述する。
【0036】
図3は、本実施形態のノートパソコン100の、パソコン本体部2の内部の第2の電気回路と表示部1内部に備えられた第1の電気回路とを接続する接続配線5の、ヒンジ部内での形状を説明する図である。なお、図3の各図では、図面の煩雑化を避けるため、接続配線5のみを取り出してその形状を示している。また、図3の各図中に示したX、Y、Zの方向軸は、Xがヒンジ機構の回動軸xと平行な方向の軸を表し、YがXと垂直な方向軸、すなわち、ノートパソコン100の使用時の水平軸であるパソコン本体部2の表面に平行な方向の軸、ZがXおよびYと垂直な方向の軸、すなわち、ノートパソコン100の使用時の鉛直軸であるパソコン本体部2の表面に垂直な方向の軸を表す。
【0037】
図3(a)は、図2で説明した接続配線5がヒンジ部内でU字状の迂回部11を形成している状態を示す。本実施形態のノートパソコン100の接続配線5は、第2の筐体であるパソコン本体部2からヒンジ部へ導入される導入部5aと、ヒンジ部から第1の筐体である表示部1内へと導出される導出部5bとの間を、図3(a)に点線で示すように直接結ぶのではない。本実施形態のノートパソコン100の接続配線5は、導入部5aと導出部5bとの間を、導入部5aからヒンジ軸と平行なX軸方向の成分であって、導出部5bから遠ざかる第1の方向へと向かう第1の方向成分11aと、X軸と平行な成分であって、第1の方向成分11aとは反対向きの第2の方向成分11bを有する迂回部11を形成している。なお、図3(a)に示す接続配線5の迂回部11は、第1の方向成分11aと第2の方向成分11bが所定の長さの略直線状であり、かつ、第1の方向成分11aと第2の方向成分11bとの間を曲線で結んでいて、全体として図3(a)における左方向に90度倒れたU字状となっている。
【0038】
なお、図3(a)では、第1の方向成分11aと第2の方向成分11bとが正確に平行になっている状態を図示したが、U字状の迂回部11とはこの形状に限られず、略直線状の第1の方向成分と第2の方向成分とがX軸の方向に向いた互いに逆向きの方向成分であればよく、U字の先端部が開くような形状であってもよい。また、図3(a)では、U字状の迂回部11がZ軸を含む面内で形成された例を示しているが、本実施形態におけるU字状の迂回部11は、このようにZ軸を含む平面内に形成されているもののみに限られず、例えばZ軸に対して所定の角度傾斜した面内でU字状になっていればよい。
【0039】
迂回部11が、図3(a)に示すU字状である場合は、迂回部11を収容するために必要とされるスペースが最も小さくなり、ヒンジ部を含めた機器全体の小型化が要求されるポータブル機器に用いられる迂回部11として特に好ましい。
【0040】
次に、図3(b)は、図3(a)に示したU字状の迂回部11と同じく、Z軸方向を向いた面内に形成された迂回部11の別の形状例を示す。図3(b)では、迂回部11は、第1の方向成分11aと第2の方向成分11bとが、いずれも直線ではなく曲線で形成された馬蹄形状となっている。このように、本実施形態の迂回部11では、第1の方向成分11aおよび第2の方向成分11bは、全体としてその方向に向かっていればよく、図3(a)に示すU字状の迂回部11のように、直線的に向かう部分を有している必要はない。
【0041】
図3(b)に示す馬蹄形状の迂回部11の場合も、馬蹄形の形状そのものよりも、導入部5aと導出部5bとを直接結ぶのではなく一旦逆方向の第1の方向成分を有する迂回部11であることが重要である。特に、接続配線5として用いられる配線部材が柔らかい材質である場合や、第1の方向成分11aを形成できる距離が短い迂回部11の場合には、U字状の迂回部11のような直線状の第1の方向成分11aと第2の方向成分11bとを形成できずに、必然的に馬蹄形状の迂回部11となってしまう場合も考えられる。なお、馬蹄形状の迂回部11においても、その形成方向がZ軸を含む面内に限られることはなく、全体としてZ軸方向に迂回部11が形成されていればよいことは、図3(a)で示したU字状の迂回部11と同じである。
【0042】
図3(c)は、迂回部11がY軸方向に形成された例を示す。ヒンジ部内の、ヒンジ機構配置上の制約などから、ヒンジ部内で迂回路を配置できるスペースとしてX軸方向の第1の方向成分11aを十分な長さ得ることができない場合には、図3(c)に示すように、迂回部11を水平軸Y方向に形成することが好ましい場合がある。
【0043】
なお、図3(c)に示す水平方向に形成された迂回部11において、迂回部11は厳密な水平面内に形成されている必要はなく、全体として水平方向であればY軸と所定の角度を有して交差する面内で形成されていてもよい。
【0044】
図3(d)と図3(e)は、迂回部11が、立体的な曲線で形成されている場合であり、X軸と平行な第1の方向成分11aと反対の第2の方向成分11bを有する迂回部11全体として、X、Y、Z方向の成分を有する三次元形状で形成されている場合である。
【0045】
図3(d)が、迂回部11がその径が略等しい複数の曲線で形成されている場合であり、図3(e)が、迂回部11が導入部5aに近い側の曲線の径が小さくなる螺旋形状となっている場合である。
【0046】
図3(d)および図3(e)に示すように、三次元形状の迂回部11となる場合には、迂回部11は第1の方向成分11aと第2の方向成分11bとを複数有することになる。そして、このように三次元形状の迂回部11においても、第1の方向成分11aと第2の方向成分11bとを有していることで、表示部1がパソコン本体部2に対して繰り返し回動された場合でも、接続配線5に大きなストレスが加わることを防止できる。
【0047】
以上、図3に迂回部11の各種の形状例を示したが、迂回部11の形状はこれらに限られず、導入部5aと導出部5bとの間に、第1の方向成分と第2の方向成分とを有していればどのような形とすることができる。そして、迂回部11がいずれの形状であっても、ヒンジ部内で導入部5aと導出部5bとを直接結ぶのではなく、ヒンジ機構の回動軸に平行で互いに逆向きの第1の方向成分11aと第2の方向成分11bとを有する迂回部11を設けることで、第1の筐体である表示部1が回動した場合に接続配線5に加わる外力の影響を低減することができ、接続配線5に断線などの不具合が生じることを効果的に回避することができる。
【0048】
図4は、ヒンジ部内でのヒンジ機構の構成が異なるために接続配線5の配置位置が異なる、本実施形態のノートパソコン100における別の構成例を示すための要部拡大斜視図である。
【0049】
図4に示す別の構成例のヒンジ部は、図2に示した構成と異なり、パソコン本体部2に2つのヒンジ軸支持機構9a、9bが形成され、表示部1にも2つのヒンジ軸6a、6bが形成されて、2組のヒンジ機構(6a、9a)(6b、9b)を有している。このため、パソコン本体部2からヒンジ部内に導入された接続配線5を、回動軸xの延長線上を経由して表示部1内へと導出することはできない。そこで、図4に示すように、表示部1の中心側から突出したヒンジ軸6b側の開口13が、上方に広がった長円形状となっていて、開口13の広がった部分から接続配線5を表示部1内へと導出している。
【0050】
このように、本実施形態のノートパソコンにおいて、表示部1への接続配線5の導出を必ずしもヒンジ軸6(6a、6b)の回動軸x上で行わなくても、接続配線5に迂回部11を形成することで、接続配線5に大きな負荷がかかって断線などが生じることを防止することができる。なお、回動軸x上から接続配線5を導入できない場合に、開口13をどちらの方向に広げて接続配線5の導入部とするかに制約はなく、ヒンジ部内の空洞の位置や大きさ、表示部1の筐体の形状などにより適宜選択することができる。
【0051】
また、図4に示す別の構成例では、ヒンジ部内に2つのヒンジ機構(6a、9a)と(6b、9b)が形成されているために、パソコン本体部2内で接続配線を固定するホルダ12がヒンジ軸(6a、6b)の直下になく、パソコン本体部2のキーボードが形成されている側に少しずれて配置されている。このように、ホルダ12の位置がずれることで、図2に示したようにヒンジ軸6aの直下にホルダ12がある場合と比較して、パソコン本体部2からヒンジ部内に導入される接続配線5が本体部2の表面に鉛直な軸に対して少し傾斜する場合がある。このような場合には、例えば迂回部11全体を少し傾けて形成することもできる。
【0052】
このように、例えばヒンジ機構としての強度を向上させるために2個ずつのヒンジ軸とヒンジ軸支持機構とを有している場合など、ヒンジ部から表示部内への接続配線の導入を回動軸上で行うことができない場合であっても、ヒンジ部内で接続配線にU字状部を設けることで、表示部の回動による接続配線の断線などが生じにくいノートパソコンを得ることができる。
【0053】
以上、本実施形態にかかる電子装置として、第1の筐体が表示パネルとしての液晶パネルを備えた表示部であり、第2の筐体がパソコン本体部であるノートパソコンについて説明したが、これはあくまで例示に過ぎず、その適用対象を限定するものではない。
【0054】
本実施形態のノートパソコンにおいて、表示パネルは液晶パネルに限られるものではなく、有機ELパネルなど各種の表示デバイスを用いることができる。また、本実施形態の電子装置としては、本体部に対して表示部が回動可能に取り付けられたポータブル端末として、ノートパソコン以外にも、PDAや携帯電話、携帯用ゲーム端末などの各種の機器に適用することができる。
【0055】
さらに、本実施形態の電子装置としては、表示部と本体部とから構成されるものにも限られず、ヒンジ機構により第2の筐体に対して第1の筐体が回動可能に接続され、第1の筐体内の第1の電気回路と第2の筐体内の第2の電気回路とが接続配線で接続されている各種の機器に適用することができる。たとえば、携帯用に折りたたみが可能なデータ入力用のキーボードや、折りたたみ可能な電子ピアノの鍵盤などに用いることもできる。
【0056】
また、三つ折り可能な鍵盤の場合など、第1の筐体もしくは第2の筐体の少なくともいずれか一方に、さらにヒンジ機構により回動可能な状態で別の筐体が接続される電子機器にも適用することができる。この場合、電子機器の形態によって、第1の筐体および第2の筐体に対して、さまざまな方向にヒンジ部が配置される形態が考えられ、上記ノートパソコンでの例示のように、接続配線が第2の筐体からヒンジ部に導入される方向と、ヒンジ部から第1の筐体に導出される方向とが直交しない場合も考えられる。しかし、上記のように、ヒンジ部内で接続配線に迂回部を形成することで、第1の筐体を第2の筐体に対して回動する際に接続配線に加わるねじれによる弊害を効果的に低減することができる。
【0057】
また、上記実施形態の説明において、接続配線を断面が略円形の接続ケーブルとして図示および説明を行ったが、接続配線として、複数本の接続ケーブルが直線状に並べられた平行ケーブル線を用いることができ、また、樹脂製の基材上に銅線などの金属配線パターンが形成されたフレキシブルケーブルを用いることができる。
【0058】
以上、本発明の電子機器は、第2の筐体にヒンジ機構により回動可能に取り付けられた第1の筐体を有し、第1の筐体内の電気回路と第2の筐体内の電気回路とが接続配線で接続された電子機器として、ヒンジ機構の回動を繰り返しても接続配線の断線などが生じにくい、信頼性の高いものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の電子機器は、ポータブルユースを中心として、各種の電子機器に使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 表示部(第1の筐体)
2 パソコン本体部(第2の筐体)
3 ヒンジ部カバー
4 液晶パネル(表示パネル)
5 接続配線
6、6a、6b ヒンジ軸
9、9a、9b ヒンジ軸支持機構
11 迂回部
11a 第1の方向成分
11b 第2の方向成分
100 ノートパソコン(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気回路を備えた第1の筐体と、第2の電気回路を備えた第2の筐体とが、ヒンジ機構によって回動可能な状態で一体化され、
前記第1の電気回路と前記第2の電気回路とを接続する接続配線を備え、
前記接続配線は、
前記第2の筐体内部から前記ヒンジ機構が収納されたヒンジ部内に導入され、
前記ヒンジ機構の回動軸に平行な第1の方向へ向かう第1の方向成分と、前記回動軸に平行であって前記第1の方向とは逆向きの第2の方向へと向かう第2の方向成分とを有する迂回部を前記ヒンジ部内に備え、
前記迂回部を経由して前記ヒンジ部内から前記第1の筐体内へと導出されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記接続配線は、前記第2の方向に沿って前記ヒンジ部から前記第1の筐体へと導出されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記接続配線の、前記第1の筐体から前記ヒンジ部内への導入方向と、前記ヒンジ部から前記第1の筐体への導出方向が直交している請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記ヒンジ軸が前記第2の筐体の上面上に位置し、前記接続配線が前記第2の筐体の前記上面に対して鉛直方向に延出して前記ヒンジ部に導入される請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記迂回部が、直線状の前記第1の方向成分と、直線状の前記第2の方向成分とが曲線部で接続されたU字状部である請求項1〜4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記接続配線が、前記迂回部を形成した後、前記ヒンジ機構の回動軸の延長線上を通って前記ヒンジ部から前記第1の筐体内へと導出されている請求項1〜5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1の筐体が表示パネルを有する表示部であって、前記第1の電気回路が前記表示パネルを駆動する駆動回路である請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記第2の筐体が、データ入力のためのキーボードと中央集積処理回路とを備えたパソコン本体部である請求項7に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211188(P2011−211188A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50420(P2011−50420)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】