説明

電子機器

【課題】板金部材の強度不足を回避するとともに、筐体の厚みを抑えられる電子機器を提供する。
【解決手段】第1筐体20内部の厚み方向中央部には板金部材28が配置されている。板金部材28には第1回路基板31が積層され、第2筐体40には第2回路基板43が設けられている。第1回路基板31と第2回路基板43は、接続ケーブル11により接続されている。接続ケーブル11は、第1筐体20のヒンジ側の側部222に設けられた挿通孔36を貫通して第1筐体20の内部に入り、板金部材28に設けられた切欠部283を通って第1回路基板31に至る。挿通孔36の内面に係合する固定部材70により、板金部材28に対する接続ケーブル11の相対位置を固定するので、板金部材の強度を確保しつつヒンジ近傍の厚みを押さえられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1筐体と第2筐体とを、2軸により開閉可能且つ回動可能に連結した電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器には、インサート板金によって筐体の強度を確保するものがある(例えば特許文献1参照)。このような電子機器においては、第1筐体と第2筐体を電気的に接続する接続ケーブルは、筐体の内部にインサート板金と重ねられて配策される。
また、従来の電子機器には、表示部を有する第1筐体と、操作部を有する第2筐体とを、開閉可能且つ相対的に回動可能に接続したものがある。このような構造の電子機器では、ヒンジ部分が複数の回動軸を中心に回動されるため、第1筐体と第2筐体とを接続する接続線に対して捻る力が働く。そのため、筐体間の接続線としてフレキシブル基板を用いると断線が発生し易い。そこで、このような構造の電子機器では、筐体間の接続線として同軸ケーブル等の可撓性を有する接続ケーブルを用いる(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−088131号公報(第3図)
【特許文献2】特開2008−263285号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献2のように接続ケーブルを用いて第1筐体と第2筐体との間を接続する構成で、特許文献1のようなインサート板金を用いて筐体を補強する構成を考える。この場合、接続ケーブルとインサート板金とが積層されるため、ヒンジ部付近が非常に分厚くなってしまう。特に、ヒンジ部を防水化することを考える場合、ヒンジ部を止水する部材を嵌合させることができるよう、接続ケーブルの挿通孔は筐体の側壁に開けた穴の形で構成する必要がある。したがって、この場合、筐体は、十分な広さの穴を確保するためだけでも厚みが必要であるにも関わらず、更に、インサート板金及び接続ケーブルを収容できるだけの厚みが必要になる。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、筐体側壁に接続ケーブルの挿通孔を設ける構成において、強度を確保しつつも筐体の薄型化を図ることのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る電子機器は、枠状の側部を有する第1筐体と、前記第1筐体とヒンジ部を介して開閉可能に接続された第2筐体と、前記第1筐体の内側に配置された板金部材と、前記第1筐体の内側において前記板金部材に積層された第1回路基板と、前記第2筐体内に配置された第2回路基板と、前記第1回路基板と前記第2回路基板とを電気的に接続し、可撓性を有する接続ケーブルと、前記ヒンジ部側の前記側部に設けられ、前記接続ケーブルを挿通可能な挿通孔と、前記板金部材における前記挿通孔と干渉する位置に設けられた切欠部と、前記板金部材に固定される固定部と、前記挿通孔の内面に係合する係合突起とを有する固定部材と、を有するものである。
【0007】
また、本発明の第2の態様に係る電子機器は、前記第1回路基板は、前記挿通孔から離れた位置に配置されており、前記固定部材の前記第1回路基板側の端部は、前記挿通孔の位置と前記第1基盤の位置との間のうち、前記第1回路基板に干渉しない位置に配置されるものである。
【0008】
さらに、本発明の第3の態様に係る電子機器は、記固定部材は、前記板金部材に対する前記接続ケーブルの相対位置を固定するものである。
【0009】
さらに、本発明の第4の態様に係る電子機器は、前記固定部材が、前記接続ケーブルを覆うトンネル部を有するものである。
【0010】
さらに、本発明の第5の態様に係る電子機器は、前記トンネル部が、前記第1回路基板の近傍まで延伸されているものである。
【0011】
さらに、本発明の第6の態様に係る電子機器は、前記トンネル部の内面に突部が設けられたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の態様に係る電子機器によれば、板金部材における挿通孔と干渉する位置に切欠部を設けたので、接続ケーブルと板金がヒンジ部付近で積層されることによる厚みの増加を防ぐことができる。また、切欠部を設けることによって失われた強度は固定部材で補っている。固定部材は、板金に固定され、かつ、挿通孔と係合するため、板金にかかった力が、切欠部付近に集中するのではなく、挿通孔にも分散される。これによって、筐体全体の厚みを押さえつつ、強度を確保することができる。
【0013】
また、本発明の第2の態様に係る電子機器によれば、固定部材が第1回路基板と干渉しないため、筐体全体の厚みを押さえることができる。
【0014】
また、本発明の第3の態様に係る電子機器によれば、固定部材によって接続ケーブルが固定されるので、ヒンジ部を中心として第1筐体と第2筐体とを相対的に開閉しても、第1筐体の内部で接続ケーブルが移動するのを防止して、接続ケーブルの断線や回路基板の破損を防止できる。
【0015】
また、本発明の第4の態様に係る電子機器によれば、固定部材が、接続ケーブルを覆うトンネル部を有するため、良好なシールド性(ノイズ対策)が得られる。
【0016】
また、本発明の第5の態様に係る電子機器によれば、トンネル部が第1回路基板付近まで延伸されているので、より良好なシールド性が得られる。
【0017】
さらに、本発明の第6の態様に係る電子機器によれば、トンネル部の内面に突部が設けられているため、トンネル部内部において接続ケーブルを確実に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施形態の携帯端末を開いた状態の斜視図
【図2】本発明に係る実施形態の携帯端末を開いて回動させた状態の斜視図
【図3】(A)は閉じた状態の携帯端末の平面図、(B)は上筐体とヒンジ部の境界部分の拡大平面図、(C)は上筐体とヒンジ部の境界部分の変形例を示す平面図
【図4】上筐体の外面側から見た分解斜視図
【図5】上筐体の内面側から見た分解斜視図
【図6】上筐体のFPCの配策を示す断面図
【図7】上筐体のFPCの配策を示す斜視図
【図8】緩衝部材の取付けを示す平面図
【図9】緩衝部材の取付けを示す分解斜視図
【図10】緩衝部材とFPCとの取付けを示す斜視図
【図11】上筐体のインサート板金における外面側面の斜視図
【図12】接続ケーブルを上筐体内部に導入する部分の拡大断面図
【図13】固定部材を外面側から見た斜視図
【図14】固定部材を内面側から見た斜視図
【図15】固定部材の変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の電子機器について、図面を用いて説明する。
図1および図2に示すように、本発明に係る実施形態の電子機器としての携帯端末10は、一方の面に表示部21を有する第1筐体である上筐体20と、一方の面に多数のキー42から構成される操作部41を有する第2筐体である下筐体40と、上筐体20および下筐体40を開閉可能に連結するヒンジ部50を有する。
なお、以下の説明において、上筐体20と下筐体40とを閉じたときに重なる面すなわち表示部21および操作部41をともに内面(内面側)といい、外側になる面を外面(外面側)ということとする。
【0020】
ヒンジ部50は、下筐体40に接続され、かつ、下筐体40の幅方向に沿って配置された第1回動軸51と、上筐体20に接続され、かつ、第1回動軸51に対して直交する第2回動軸52とを有する。
従って、第1回動軸51回り(図1および図2において矢印A方向)に上筐体20と下筐体40を相対的に回動させることにより、図1に示すように、開閉できる。また、第2回動軸52回り(図1および図2において矢印B方向)に上筐体20を回動させることにより、図2に示すように、上筐体20をねじることができる。
【0021】
図4および図5に示すように、上筐体20は、矩形枠状の側部22および側部22の一端側(外面側)である平坦部228を密閉して覆う底部23を有しており、側部22における他端側(内面側)である平坦部221には表示部21が取り付けられる。
従って、上筐体20における底部23と表示部21との間には、内部空間24が形成される。表示部21は、内部空間24に収容される液晶表示板25を有し、液晶表示板25の内面側に感圧式のタッチパネル26が取り付けられる。
【0022】
なお、上筐体20におけるヒンジ部50と反対側の側部22(上辺側部224)の外側(先端側)には、通話時に耳に当てて音声を発するレシーバ34が設けられており、レシーバカバー341で覆われている。また、上筐体20におけるヒンジ部50側の下辺側部222の外側には、アッパーカバー225が設けられている。
【0023】
また、図3(A)および図3(B)に示すように、ヒンジ部50は、上筐体20の幅方向端部から上筐体20に向かう凸部53を有する。また、上筐体20は、ヒンジ部50の凸部53に対応する凹部226を有し、この凹部226に後述する緩衝部材60が取り付けられる。すなわち、上筐体20の側部22は、ヒンジ部50側の角部においてヒンジ部50から遠ざかるように形成されている。
なお、上筐体20の凹部226およびヒンジ部50の凸部53の形状は、図3(A)および図3(B)に示すような円弧状に限らず、図3(C)に示すように、矩形状の凹部227および凸部54でもよい。
【0024】
図6に示すように、タッチパネル26は、側部22の他端側を覆う板状に形成され端面261Aが側部22よりも外側に位置する透明回路基板であるガラス基板261と、ガラス基板261の上(内面側)に積層される導電膜262およびカバー263を有する。ガラス基板261の外面側における外周縁部は、矩形枠状の両面テープ27(図4参照)により、側部22の内側に突出して額縁状に設けられている平坦部221(図5参照)に密着して取り付けられる。
従って、上筐体20は、底部23、側部22、両面テープ27およびタッチパネル26、後述するグロメット33、および、ヒンジ部に設けられたOリング(図示せず)によって、内部空間24の防水性を保持している。
【0025】
図4および図6に示すように、上筐体20の内部空間24には、厚さ方向の中央に板金部材であるインサート板金28が取り付けられており、剛性を確保して上筐体20の薄型化を図っている。インサート板金28の内面側面281には、液晶表示板25を背後から照らすバックライトユニット29を介して液晶表示板25が設けられており、液晶表示板25の内面側にはタッチパネル26が取り付けられている。また、インサート板金28の外面側面282には、種々の電子部品を実装した第1回路基板31が取り付けられている。
【0026】
図6および図7に示すように、タッチパネル26と、タッチパネル26を駆動する第1回路基板31とは、接続線であるフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:以後,「FPC」と示す。)32で接続される。
FPC32のタッチパネル26側は、ガラス基板261の端部(端面261A)に接続されており、上筐体20の大型化を回避するために、接続部321は上筐体20の側部22のヒンジ部50側の下辺側部222から外側へ突出している。この部分は、ヒンジ部50との境界部分であり、FPC32のためにスペースを設けることなくスペースが確保できる。このため、FPC32は、防水領域である内部空間24から、一旦非防水領域であるヒンジ部50の空間に配策(折り返し部322)された後、再度上筐体20の内部空間24に引き込まれる。
なお、本実施の形態では、FPC32は防水加工されたものを用いる。これによって、非防水領域に配策したFPC32の配線自体が故障してしまうことを防止している。
【0027】
上筐体20の下辺側部222には、上筐体20の内外を連通させる例えば矩形断面のFPC用挿通孔223が設けられており、FPC32はFPC用挿通孔223から内部空間24に引き込まれる。このとき、内部空間24の防水性を保持するため、FPC用挿通孔223にはグロメット33が取り付けられる。
グロメット33は、樹脂やゴム等の弾性部材で形成されており、矩形のFPC用挿通孔223の高さおよび幅よりも大きな厚さおよび幅を有し、FPC用挿通孔223に圧入されて止水する矩形断面の止水部331と、止水部331から外側に鍔状に突出して、グロメット33の位置決めをする鍔部332と、鍔部332からヒンジ部50側に突出するガイド部333を有する。グロメット33の中心には、FPC32を挿通させるために扁平矩形状でFPC32の断面より小さな断面の貫通穴334が、止水部331,鍔部332,およびガイド部333を貫通して形成されており、FPC32を圧入して貫通させる。
【0028】
なお、FPC32が湾曲することにより、グロメット33の貫通穴334を湾曲させて防水性を損なわないように、例えば金属製等の剛性の高い平板状の支持板323をFPC32に添えて、貫通穴334を真っ直ぐに貫通させるようにしている。
【0029】
図8乃至図10に示すように、上筐体20におけるヒンジ部50側の角部には、樹脂やゴム等の柔軟な材料からなる緩衝部材60が設けられている。緩衝部材60は、上筐体20のヒンジ部50側端面および側面の角部を保護する緩衝部61と、緩衝部材60を上筐体20に取り付ける取付部62を有する。
緩衝部61にはヒンジ部50側に突出する突起611が設けられている。従って、緩衝部材60がヒンジ部50に当接する際には、緩衝部61の突起611が最初に当接し、ヒンジ部50および上筐体20の傷つきを防止する。
【0030】
また、取付部62は、上筐体20側に突出する天板621と、上筐体20の厚み方向の縦壁622とを有し、断面L字形状を呈している。縦壁622の内面には、上筐体20側に突出する複数個のリブ623,624をしており、上筐体20に設けられている取付け凹部35に嵌合して緩衝部材60を上筐体20に取り付ける。
【0031】
すなわち、リブ623は、第2回動軸52側における上筐体20の厚み方向中央部から緩衝部材60の取付方向に沿って設けられており、リブ623と、上筐体20の取付け凹部35に設けられているリブ351が嵌合する。また、緩衝部材60の端部から上筐体20側へ突出して設けられているリブ624が、取付け凹部35の隙間352に嵌合する。
【0032】
さらに、緩衝部材60の凹部630(図10参照)と上筐体20のリブ631(図9参照)とが嵌合し、緩衝部材60の爪632,633が上筐体20の爪嵌合部634と嵌合する。これにより、緩衝部材60は上筐体20に取り付けられる。
なお、上筐体20に対する緩衝部材60の取付方向に沿って凹部630,リブ631,爪632,633および爪嵌合部634が設けられているので、凹部630,リブ631,爪632,633および爪嵌合部634は上筐体20に対する緩衝部材60の取り付け時の位置決めにも用いることができる。
【0033】
また、天板621,縦壁622,およびリブ623,624によって、FPC32の折り返し部322を、後述する折り返し軸線641,642の径方向から囲む包囲部63が形成されている。
なお、天板621とリブ623との間の隙間625は、リブ351よりも広めに空けられている。これは、隙間625を狭くすると、隙間625もリブ351と嵌合してしまい、緩衝部材60を押し込む際に大きな力が必要になるためである。
【0034】
図6に示すように、FPC32の折り返し部322は、FPC32を配策した時には半円形状に屈曲している(図6中破線で表示)。そして、緩衝部材60を下筐体40に対してヒンジ部50側から取り付けて(図6中矢印C方向)、折り返し部322を緩衝部材60の包囲部63に収容することにより、折り返し部322は緩衝部材60の縦壁622により押圧される。
これにより、折り返し部322は、上筐体20の幅方向に沿った線を折り返し軸線641,642(図9参照)として折り返されて、一部直線状になる。なお、緩衝部材60の縦壁622は、必ずしも常時FPC32の折り返し部322を押圧するものでなくてもよい。
【0035】
また、緩衝部材60の包囲部63には、グロメット33のガイド部333が収容されており、包囲部63を形成する天板621がグロメット33の鍔部332の高さ位置に配置されている。これにより、グロメット33がFPC用挿通孔223から脱落する際には、グロメット33の鍔部332が天板621に当接するので、グロメット33の脱落を防止する。
また、包囲部63には、グロメット33を貫通して取り付けられている支持板323も収容されており、支持板323の先端は緩衝部材60の縦壁622の内面近傍まで伸びている。これにより、グロメット33がFPC用挿通孔223から脱落する際には、支持板323の先端が緩衝部材60に当接するので、支持板323を介して間接的にグロメット33の脱落を防止する。
また、緩衝部材60には、グロメット33へ向かって突出するリブ635が設けられている。これにより、天板621に加えて、グロメット33の脱落をより確実に防止することができる。
【0036】
次に、FPC32の配策および緩衝部材60の取付けについて説明する。
一端がタッチパネル26のガラス基板261に接続されているFPC32を、他端を先頭にしてグロメット33の貫通穴334に挿入する。このとき、グロメット33のガイド部333側から挿入し、支持板323も一緒に挿入する。次いで、FPC32の他端側から支持板323とともに、上筐体20の側部22の挿通孔223に挿入し(図4中矢印D照)、グロメット33の止水部331を挿通孔223に圧入する。その後、FPC32の湾曲している折り返し部322を押しながら、ヒンジ部50側から緩衝部材60を上筐体20の取付け凹部35に押し込んで取り付ける。
この際、上筐体20に対する緩衝部材60の取付方向に沿って凹部630,リブ631,爪632,633および爪嵌合部634が設けられているので、凹部630,リブ631,爪632,633および爪嵌合部634は上筐体20に対して緩衝部材60が位置決めされる。
【0037】
図11および図12に示すように、インサート板金28の外面側面282における上筐体20の幅方向中央には、一端111が上筐体20の第1回路基板31に接続され、他端112が下筐体40の第2回路基板43に接続される接続ケーブル11が配策されている。接続ケーブル11は複数本の細い電線を円形断面状に束ねて形成されて可撓性を有しており、上筐体20と下筐体40とを回動可能に接続する第2回動軸52の内部を通って、上筐体20と下筐体40との間に配策される。
【0038】
接続ケーブル11は第2回動軸52の内部を通って上筐体20の内部に引き込まれるため、上筐体20の厚さ方向中央部から上筐体20に導入されることになる。従って、下辺側部222において第2回動軸52に対応する位置には、接続ケーブル11を通すケーブル用挿通孔(挿通孔)36が形成されている。
【0039】
一方、上筐体20の厚さ方向中央にはインサート板金28が取り付けられているので、ケーブル用挿通孔36から上筐体20に導入された接続ケーブル11は、インサート板金28と干渉する。また、接続ケーブル11の一端111を接続する第1回路基板31はインサート板金28の外面側面282に取り付けられている。
このため、インサート板金28のヒンジ側端部においてケーブル用挿通孔36に対応する位置に切欠き283を設けて、接続ケーブル11を上筐体20の内部に導入している。
【0040】
これによって、インサート板金による筐体の補強を行いつつも、筐体の厚みを抑えることができる。ただし、この場合、インサート板金にかかった応力は、強度の低い切欠き283付近に集中してしまい、切欠き283付近が破損し易くなる。そこで、後述するとおり、固定部材70によって切欠き283付近にかかる力を分散する。
さらに、接続ケーブル11は、切欠き283で外面側へ屈曲されて、インサート板金28の外面側面282に設けられている第1回路基板31に接続される。
【0041】
図4に示すように、ケーブル用挿通孔36から上筐体20に導入され、インサート板金28の切欠き283からインサート板金28の外面側に屈曲して配線された接続ケーブル11は、固定部材70によりインサート板金28の所定位置に取り付けられる。
【0042】
図12乃至図14に示すように、固定部材70は、接続ケーブル11が収容される直線状のトンネル部71と、トンネル部71の両側に設けられてインサート板金28の外面側面282に当接する当接部72と、当接部72の外側に設けられて固定部材70をインサート板金28に固定する固定部73を有する。トンネル部71の対向する内面には、接続ケーブル11をトンネル部71に固定する突部であるケーブル押さえ711が複数個内側に突出して設けられている。また、固定部73には、インサート板金28に固定するネジ732(図4参照)ためのネジ穴731が設けられている。
【0043】
固定部材70のヒンジ部50側端部には、インサート板金28の切欠き283を覆う左右一対の平板状の被覆部74と、ケーブル用挿通孔36の内面に係合する左右一対の係合突起75を有する。係合突起75はケーブル用挿通孔36に挿入されると、頂部がケーブル用挿通孔36の上面に当接し、固定部材70の上方(外面側)への移動を規制しており、接続ケーブル11の跳ね上がりを防止している。
【0044】
従って、接続ケーブル11を配策する際には、接続ケーブル11の一端111(図4参照)を第2回動軸52に通して上筐体20のケーブル用挿通孔36から上筐体20内部に挿入し、インサート板金28の切欠き283からインサート板金28の外面側面282に屈曲させて配策する。あるいは、接続ケーブル11の他端112を、インサート板金28の切欠き283からケーブル用挿通孔36に通し、第2回動軸52を通って下筐体40側に配策することもできる。
【0045】
そして、接続ケーブル11を配策した後、接続ケーブル11の先端を第1回路基板31に接続し、接続ケーブル11を固定部材70のトンネル部71内に収容するように固定部材70を被せる。このとき、係合突起75の先端をケーブル用挿通孔36に挿入して係合するとともに、被覆部74によってインサート板金28の切欠き283を覆い、ネジ732によりインサート板金28に固定する。
【0046】
なお、図15に示すように、固定部材70Bは、トンネル部71の頂部712において母線に沿って分割された半固定部材701,702を組み合わせて構成してもよい。この場合、左右の半固定部材701,702を各々ネジ732でインサート板金28に固定することにより一体化されるので、別体で用いることができる。
【0047】
以上、説明した本発明に係る実施形態の携帯端末10によれば、枠状の側部22を有する上筐体20は、ヒンジ部50を介して下筐体40と開閉可能に接続されており、上筐体20内部の厚み方向中央部にはインサート板金28が配置されている。インサート板金28には第1回路基板31が積層されており、下筐体40の内部には第2回路基板43が設けられている。
第1回路基板31と第2回路基板43は、可撓性を有する接続ケーブル11により電気的に接続されている。接続ケーブル11は、上筐体20のヒンジ側の側部22の厚み方向中央部に設けられたケーブル用挿通孔36を貫通して上筐体20の内部に入り、インサート板金28に設けられた切欠き283を通ってから、外面側面282の第1回路基板31に至る。
【0048】
ケーブル用挿通孔36の内面に係合する係合突起75を有する固定部材70により、インサート板金28に対する接続ケーブル11の相対位置を固定するので、ヒンジ部50を中心として上筐体20と下筐体40とを相対的に開閉したり回動しても、固定部材70は移動しない。このため、上筐体20の内部で接続ケーブル11が移動するのを防止して、接続ケーブル11の断線や第1回路基板31の破損を防止できる。また、固定部材70は、その一端が挿通孔36内面に係合し、他端がインサート板金28に固定される。したがって、インサート板金28にかかった力は、切欠き283付近に集中するのではなく、挿通孔36にも分散される。したがって、切欠き283付近の強度を増すことができる。
【0049】
なお、固定部材70を取り付けることで、その分だけ固定部材70付近を収容するために必要な厚みは増す。しかし、本実施の形態では、筐体の側壁のうち、挿通孔36を設ける必要のある箇所が厚くなるよう構成される。そのため、挿通孔36と離れた部分の厚みが増したとしても、挿通孔36付近の厚みが増すよりは筐体全体の厚みに対する影響は小さい。なお、本実施形態では、固定部材70の一端は挿通孔36まで延伸し、挿通孔36の内面に係合している。そのため、固定部材70が挿通孔36付近の厚みに影響を与えることはない。
【0050】
また、本実施形態では、第1回路基板31は挿通孔36から離れた位置に配置されているため、挿通孔36と第1回路基板31の間では、厚み方向のスペースに余裕がある。したがって、固定部材70をこの空間に配置することによって、筐体全体の厚みを抑えることができる。
【0051】
また、固定部材70が、接続ケーブル11を覆うトンネル部71を有するので、トンネル部71で接続ケーブル11を完全に被覆することにより良好なシールド性(ノイズ対策)が得られる。
なお、切欠き283付近の補強を目的とするのであれであれば、固定部材70はインサート板金28に固定できるだけの長さ(例えば、ネジ穴732付近まで)があれば十分である。しかし、本実施形態では、接続ケーブル11のシールド性を確保するため、固定部材70のトンネル部71を第1回路基板の近傍まで延伸している。なお、トンネル部71の長さがより短い場合であっても多少のシールド性は得ることができる。
【0052】
さらに、トンネル部71の内面に突出するケーブル押さえ711を設けたので、トンネル部71内部において接続ケーブル11を確実に固定できる。
【0053】
また、上筐体20は、矩形枠状の側部22、側部22の一端側の平坦部228に設けられた底部23、側部22の他端側の平坦部221に設けられたタッチパネル26により密閉箱状に形成されており、内部空間24に収容された第1回路基板31と、内部空間24の外側のタッチパネル26のガラス基板261とをFPC32により接続する。
ガラス基板261の端面261Aは上筐体20よりも外側に位置しており、ガラス基板261の端面261Aから引き出されたFPC32は上筐体20の外側を通り、上筐体20の内外を連通するFPC用挿通孔223を通って上筐体20内の第1回路基板31と接続される。このとき、FPC32に設けられたグロメット33がFPC用挿通孔223に圧入・嵌合するため、FPC32が上筐体20の外部から内部に配索されていても確実な防水性が得られる。
【0054】
また、上筐体20のヒンジ部50側は、ヒンジ部50を上筐体20に取り付けるためのネジに対する逃げ部等のデッドスペースがあるため、矩形状の第1回路基板31が逃げ部に干渉しない位置に配置される。逃げ部自体は小さなスペースだが、矩形状の第1回路基板31が後退した位置に配置されるため、結果的にデッドスペースが生じている。この箇所にFPC32の折り返し部322を配置するので、新たなスペースを必要とせず、上筐体20の大型化、厚型化を回避できる。
【0055】
また、ガラス基板261におけるFPC32が引き出された側とは反対側に側部22の他端側を覆うレシーバカバー341が設けられているので、ガラス基板261にレシーバ34用の孔を設ける必要がない
【0056】
また、上筐体20と下筐体40は、上筐体20の幅方向に沿って配置された第1回同軸51と、上筐体20に接続され且つ第1回同軸51に対して直交する第2回同軸52を有するヒンジ部50により、開閉可能且つ回動可能に接続される。また、両端が上筐体20内側に接続された接続線32は、折り返し部322が上筐体20の外部に配策される。
そして、上筐体20におけるヒンジ部50側の角部には緩衝部材60が設けられており、緩衝部材60はFPC32の折り返し部322の少なくとも一部に接触可能となっているので、FPC32が伸びようとする変形を制限して所定位置に配策することができる。
従って、上筐体20を第2回動軸52を中心として下筐体40に対して回動させる際に、同じ緩衝部材60により、上筐体20の角部が下筐体40を傷つけるのを防止するとともに、FPC32の変形を規制するので、部品点数を減少させることができる。
【0057】
また、FPC32は帯状をしており、その両端部は上筐体20に固定されるが、途中、一旦上筐体20の側部22の外側に配策される。FPC32は、上筐体20の外側において、上筐体20の幅方向に沿った線を折り返し軸641,642として折り返し部322が形成され、緩衝部材60の包囲部63が折り返し軸641,642の径方向から折り返し部322を囲むので、FPC32の配策位置がずれるのを防止できる。
【0058】
また、緩衝部材60は、上筐体20に対してヒンジ部50側から取り付けられるので、緩衝部材60は取付時にFPC32をFPC32の配策軸方向と平行に押すことになり、配策位置をずらすことなく緩衝部材60を取り付けることができる。
【0059】
緩衝部材60には、上筐体20に向かって突出するリブ623,624が設けられており、このリブ623,624が、第2回動軸52側における上筐体20の厚み方向中央部から緩衝部材60の取付方向に沿って設けられているので、FPC32の配策位置をずらすことなく緩衝部材60を位置決めして取り付けることができる。
【0060】
ヒンジ部50における上筐体20の幅方向端部から上筐体20に向かう凸部53,54を有し、上筐体20は凸部53,54に対応する凹部226,227を有するので、上筐体20がヒンジ部50に対してがたつくのを防止できる。
【0061】
上述した実施形態では、防水構造、かつ、接続ケーブルで筐体間を接続する構成について説明してきたが、これに限られるものではない。本実施の形態に示された技術的思想は、筐体内にインサート板金を設ける構成について広く適用することができる。
なお、挿通孔36が筐体20の側壁に開けられた穴として構成されているのは、防水を行う際に挿通孔36を塞ぐためである。したがって、防水を考慮しない場合は、筐体20の側壁をより低くし、挿通孔36を単なる切欠きとして構成しても良い。その場合、固定部材70は挿通孔36の内壁へ係合する代わりに、上筐体20と嵌合するカバーに係合する構成となる。
なお、本発明の電子機器は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 携帯端末(電子機器)
11 接続ケーブル
20 上筐体(第1筐体)
22 側部
28 インサート板金(板金部材)
283 切欠き(切欠部)
31 第1回路基板
36 ケーブル用挿通孔(挿通孔)
40 下筐体(第2筐体)
43 第2回路基板
50 ヒンジ部
70 固定部材
71 トンネル部
711 ケーブル押さえ(突部)
74 被覆部
75 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の側部を有する第1筐体と、
前記第1筐体とヒンジ部を介して開閉可能に接続された第2筐体と、
前記第1筐体の内側に配置された板金部材と、
前記第1筐体の内側において前記板金部材に積層された第1回路基板と、
前記第2筐体内に配置された第2回路基板と、
前記第1回路基板と前記第2回路基板とを電気的に接続し、可撓性を有する接続ケーブルと、
前記ヒンジ部側の前記側部に設けられ、前記接続ケーブルを挿通可能な挿通孔と、
前記板金部材における前記挿通孔と干渉する位置に設けられた切欠部と、
前記板金部材に固定される固定部と、前記挿通孔の内面に係合する係合突起とを有する固定部材と、
を有する電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第1回路基板は、前記挿通孔から離れた位置に配置されており、
前記固定部材の前記第1回路基板側の端部は、前記挿通孔の位置と前記第1基盤の位置との間のうち、前記第1回路基板に干渉しない位置に配置される電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記固定部材は、前記板金部材に対する前記接続ケーブルの相対位置を固定する電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記固定部材が、前記接続ケーブルを覆うトンネル部を有する電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記トンネル部が、前記第1回路基板の近傍まで延伸されている電子機器。
【請求項6】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記トンネル部の内面に突部が設けられている電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−259081(P2011−259081A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130150(P2010−130150)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】