説明

電子機器

【課題】加飾パネルを備えた電子機器において、防水性を高める。
【解決手段】加飾パネル30を、透明樹脂基材40cの表面にハードコート層40bを形成しておき、このハードコート層40b上に、オフセット印刷用のUV硬化型インクにより印刷パターン層40eをオフセット印刷で印刷し、UV光を照射して硬化させるようにした。これにより、ハードコート層40bと印刷パターン層40eとの間にアンカー効果が発生し密着可能となるようにし、プライマ層の形成を不要とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末をはじめとする各種の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、携帯電話端末1をはじめとする各種の電子機器においては、デザイン性を高めるため、筐体2の表面を塗装するのではなく、透過性を有したパネルに色味や柄等を有したパターンを印刷し、そのパネル(以下、これを加飾パネル3と称する)を筐体2の一部に貼り付けたものがある。
さらに、加飾パネル3の一部に、EL(Electro Luminescence)やLCD(Liquid Crystal Display)等の表示パネル5を用いた表示部4を有し、各種の情報を表示できるようにしたものもある(図7参照)。
【0003】
その一方で、各種の電子機器1は、日常の様々なシチュエーションで用いられるようになっていることから防水性が求められることが多くなっている。
【0004】
特に表示部4を有する場合、図7に示すように、加飾パネル3の背面(筐体の内側)に、ELやLCDからなる表示パネル5を設ける。この表示パネル5および表示パネル5を駆動させる基板6は筐体2の内部に収容され、筐体2に形成された開口部7から表示パネル5を加飾パネル3の背面側に位置するよう露出させる。
このため、加飾パネル3は、開口部7を塞ぐように設けられ、防水性を確保するために、防水性材料からなる両面テープ8によって開口部7に接着される。
【0005】
ところで、加飾パネル3の印刷は、例えば特許文献1、2に示すように、スクリーン印刷、インクジェットによる印刷、シルク印刷、オフセット印刷等の印刷法により行われる。
図8に示すように、例えば、インクジェットによる加飾パネル3の印刷を行う場合、まず、透明樹脂基材11cの表面に、UVインクジェット印刷機を用い、インクジェット法によりUV硬化性のプライマインクを用いてプライマ層11dを印刷し、UV光を照射してこれを硬化させる。プライマ層11dは、この後に印刷するインクと透明樹脂基材11cとの密着性を高めるためのものである。
【0006】
次いで、加飾パネル3におけるデザインパターンを形成するため、UVインクジェット印刷機により、プライマ層11d上に、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のパターン印刷によるカラーインク層11e、11f、11g、11hを形成し、UV光の照射により各層のインクを硬化させる。
【0007】
この後、カラーインク層11h上に誘電体を蒸着することで、誘電体蒸着膜11iを形成する。この誘電体蒸着膜11iにより、表示パネル5に対応した範囲(表示窓部11b)に分光透過ミラー性能を付与する。
そして、表示窓部11b以外の部分には、インクジェット法によるカラーインク層11e、11f、11g、11hでは透けやすいため、透け防止のための第一透け防止パターン11jを、シルク印刷法により形成する。また、表示窓部11bには、スモーク色のインクでスモークパターン11kをシルク印刷法により形成する。これにより、表示窓部11bの透過度の調整を行う。
さらに表示パネル5に対応した範囲以外の部分に、黒色インクにより、第二透け防止パターン11lをシルク印刷法により形成する。
【0008】
このようにして透明樹脂基材11c上に、多層膜を形成することで、加飾パネル3のデザインパターンを形成する。
しかる後は、このようにして印刷形成された加飾パネル3を、両面テープ8を用い、筐体2の開口部7に貼り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−217879号公報
【特許文献2】特開2003−225984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図9に示すように、上記のようにして透明樹脂基材11c上に印刷により多層膜を形成した加飾パネル3においては、表示窓部11bの部分と、それ以外の部分とで、透明樹脂基材11c上に形成された印刷パターンP1、P2の膜厚が異なる。
例えば、インクジェット法によって形成されたプライマ層11d、カラーインク層11e、11f、11g、11hは各層5μmの膜厚を有する。誘電体蒸着膜11iは0.07μmの膜厚を有する。シルク印刷による第一透け防止パターン11j、スモークパターン11k、第二透け防止パターン11lは、各層5μmの膜厚を有する。
したがって、この場合、表示窓部11bの厚さは、プライマ層11d+誘電体蒸着膜11i+スモークパターン11kであるので、9.07μmとなる。
一方、表示窓部11b以外の部分の最大厚さは、プライマ層11d+カラーインク層11d、11e、11f、11g、11h+誘電体蒸着膜11i+第一透け防止パターン11j、スモークパターン11k、第二透け防止パターン11lであるので、40.07μmとなる。
【0011】
したがって、表示窓部11bと表示窓部11b以外の部分とでは、印刷パターンP11、P12の膜厚に31μmの差があり、この部分に印刷段差12が生じる。
すると、図9、図10に示すように、加飾パネル3の裏面側において、両面テープ8を貼り付けたときに、印刷段差12の部分において空隙15が生じることがある。
すると、加飾パネル3の外周部から、この空隙15を経る浸水ルート17が存在することになり、この浸水ルート17から浸水する可能性がある。
そこでなされた本発明の目的は、防水性を高めることのできる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の電子機器は、開口部を有した筐体と、筐体の開口部を塞ぐよう設けられた加飾パネルと、筐体の開口部の周囲と加飾パネルとの間に挟み込まれて加飾パネルを筐体に接着する接着材と、を備え、加飾パネルは、プレート状をなすとともに、少なくとも一面側にハードコート層が形成された樹脂基材と、樹脂基材のハードコート層上に形成され、UV硬化型インクにより印刷することで形成された印刷パターン層と、を含み、加飾パネルの一部の範囲と、当該加飾パネルの残部の範囲とで印刷パターン層の厚さが異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂基材の少なくとも一面側にハードコート層が形成され、このハードコート層上に印刷パターン層がUV硬化型インクにより印刷されるので、ハードコート層と印刷パターン層とが密着し、プライマ層が不要となる。これにより、加飾パネルの一部の範囲と、当該加飾パネルの残部の範囲とで、樹脂基材上の印刷パターンの膜厚の違いを小さくすることができる。その結果、加飾パネルを筐体の開口部の周囲に装着したときに、その周囲からの浸水を防ぐことができ、防水性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかる携帯電話端末の斜視図である。
【図2】図1の表示筐体のC−C断面図である。
【図3】加飾パネルの層構成を示す斜視展開図である。
【図4】図1の表示筐体のD−D断面図である。
【図5】加飾パネルを背面側からみた斜視図である。
【図6】従来の携帯電話端末の斜視図である。
【図7】図6の表示筐体のA−A断面図である。
【図8】加飾パネルの層構成を示す斜視展開図である。
【図9】図6の表示筐体のB−B断面図である。
【図10】加飾パネルを背面側からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明による電子機器を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
図1に本発明を適用した携帯電話端末(電子機器)20の構成を示す。
図1に示すように、携帯電話端末20は、画像や文字、映像等の各種情報を表示するモニター部を有した表示筐体(筐体)21Aと、ユーザが携帯電話端末20を操作するための操作キー等を備えた本体筐体21Bとを備えている。
これら表示筐体21Aと本体筐体21Bとは、それぞれの一辺側において、ヒンジにより回転可能に連結された折り畳み式とされている。ただし、これは一例に過ぎず、携帯電話端末20は、折り畳み式に限らず、表示筐体21Aと本体筐体21Bとが一体化されたものであっても良い。
【0016】
図2に示すように、表示筐体21Aは、表示筐体21Aと本体筐体21Bとを折り畳んだ状態で内側を向くフロントケース22と、その反対側を向くリヤケース23とが互いに嵌め合わされることで形成されている。リヤケース23には開口部23aが形成されており、開口部23aには、表示筐体21Aと本体筐体21Bとを折り畳んだ状態で外側を向く面に、色味や柄、写真、模様等が描かれた加飾パネル30が設けられている。
【0017】
加飾パネル30の一部には、透過性を有した表示窓部31が形成されている。そして、表示筐体21内には、表示窓部31に対向した位置に、ELやLCD等の発光表示パネル32が設けられている。また、表示筐体21A内には、発光表示パネル32を駆動する制御基板33が収容されている。
【0018】
加飾パネル30は、表示窓部31の範囲だけがハーフミラーのように半透過半反射とされ、他の部分は、例えば高品質な写真画質をカラー印刷してあるような加飾仕様であり、発光表示パネル32が発光したときには、表示窓部31において発光表示パネル32による表示が外から見え、省電力モード等において発光表示パネル32が発光しないときには、ミラーのように見えるものである。
【0019】
図3に示すようにこの加飾パネル30は、透明樹脂基材40c上に、印刷パターン層40e、40f、40g、40h、誘電体蒸着膜40i、第一透け防止パターン40j、スモークパターン40k、第二透け防止パターン40lが順次積層された構成を有している。
【0020】
透明樹脂基材40cは、ポリカーボネイト等の樹脂からなるパネル40aの一面上に、ハードコート処理がなされることでハードコート層40bが形成されている。
【0021】
CMYKの各色の印刷パターン層40e、40f、40g、40hは、オフセット印刷により形成され、オフセット印刷用のUV硬化型インクが用いられる。
また、誘電体蒸着膜40iは、誘電体を蒸着することにより形成され、表示窓部31に分光透過ミラー性能を付与する。
【0022】
第一透け防止パターン40j、スモークパターン40k、第二透け防止パターン40lは、シルク印刷により形成されている。
【0023】
そして、図2に示すように、このような加飾パネル30は、その外周部を、固定用の発泡アクリルフォーム基材の防水両面テープ(接着材)40mによりリヤケース23の開口部23aに貼り付けられている。
【0024】
このような加飾パネル30を形成するには、ハードコート層40bを有した透明樹脂基材40c上に、平台オフセット印刷機により、UV硬化型インクを用い、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色についてオフセット印刷を行う。CMYKの計4色で繰り返しオフセット印刷を行い、UV光を照射してUV硬化型インクを硬化させることで、印刷パターン層40e、40f、40g、40hがハードコート層40b上に順次積層して形成される。
このとき、透明樹脂基材40cの表面にはハードコート層40bが形成されているので、このハードコート層40b上に、オフセット印刷用のUV硬化型インクにより印刷パターン層40eを印刷し、UV光を照射して硬化させると、ハードコート層40bと印刷パターン層40eとの間にアンカー効果が発生し密着可能となる。
【0025】
次いで、印刷パターン層40h上に誘電体を蒸着することで、誘電体蒸着膜40iを形成する。この誘電体蒸着膜40iにより、表示窓部31に分光透過ミラー性能を付与する。
そして、表示窓部31以外の部分には、印刷パターン層40e、40f、40g、40hの透け防止のための第一透け防止パターン40jを、耐熱性を有した白インクを用い、シルク印刷法により形成する。また、表示窓部31には、スモーク色のインクでスモークパターン40kをシルク印刷法により形成する。これにより、表示窓部31の透過度の調整を行う。
さらに表示窓部31に対応した範囲以外の部分に、黒色インクにより、第二透け防止パターン40lをシルク印刷法により形成する。
【0026】
このようにして透明樹脂基材40c上に、多層膜を形成することで、加飾パネル30の印刷パターンを形成する。
【0027】
上述したような構成によれば、透明樹脂基材40cの表面にハードコート層40bを形成しておき、このハードコート層40b上に、オフセット印刷用のUV硬化型インクにより印刷パターン層40eをオフセット印刷で印刷し、UV光を照射して硬化させるようにした。これにより、ハードコート層40bと印刷パターン層40eとの間にアンカー効果が発生し密着可能となり、プライマ層の形成が不要となる。
【0028】
また、印刷パターン層40e、40f、40g、40hは、オフセット印刷によりパターン形成される。オフセット印刷では、インクジェット法等に比較して薄い膜厚で印刷パターンを形成できる。本実施形態では、印刷パターン層40e、40f、40g、40hは、例えば各層が0.5μmの膜厚を有する。
また、誘電体蒸着膜40iはの膜厚は0.07μm、第一透け防止パターン40j、スモークパターン40k、第二透け防止パターン40lは各層5μmの膜厚を有するものとする。
この場合、表示窓部31の範囲の膜厚は、誘電体蒸着膜40i+スモークパターン40k=0.07μm+5μm=5.07μmとなる。一方、表示窓部31以外の範囲において、最厚部の厚さ=0.5μm×4+0.07mμ+5mμ×3=17.07μmとなる。
このようにして、表示窓部31の範囲と、それ以外の範囲とで、印刷パターンP1、P2の膜厚の差は、17.07―5.07=12μmとなる。
【0029】
したがって、表示窓部31の範囲と、それ以外の範囲との印刷パターンP1、P2の段差42が大幅に小さくなる。したがって、図4、図5に示すように、加飾パネル30をリヤケース23の開口部23aに貼り付けるときには、防水両面テープ40mの柔軟性やクッション性により、段差42を吸収して、発生する空隙を小さくすることができる。その結果、加飾パネル30の周囲から表示筐体21Aの内部に浸水する可能性が小さくなる。また、多色多層刷りしても、印刷段差が他の印刷法よりも少なくできるので、加飾パネル30におけるデザイン等が制約を受けるのを防ぐことができる。
【0030】
また、印刷パターン層40e、40f、40g、40hの透け防止のための第一透け防止パターン40jを、耐熱性を有した白インクを用い、シルク印刷法により形成した。このように、耐熱性を有する白インクを用いることで、85℃といった高温環境でも写真画質の白色の高温変色を回避することができる。
【0031】
なお、本発明は、携帯電話端末20に限らず、PHS(Personal Handy−phone System)、トランシーバ、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯音楽プレーヤー等、RFID機能を有した各種電子機器にも上記実施形態で示した構成を同様に適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
20 携帯電話端末(電子機器)
21A 表示筐体(筐体)
21B 本体筐体
22 フロントケース
23 リヤケース
23a 開口部
30 加飾パネル
31 表示窓部
32 発光表示パネル
33 制御基板
40a パネル
40b ハードコート層
40c 透明樹脂基材
40e、40f、40g、40h 印刷パターン層
40i 誘電体蒸着膜
40j 第一透け防止パターン
40k スモークパターン
40l 第二透け防止パターン
40m 防水両面テープ(接着材)
42 段差
P1、P2 印刷パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有した筐体と、
前記筐体の前記開口部を塞ぐよう設けられた加飾パネルと、
前記筐体の前記開口部の周囲と前記加飾パネルとの間に挟み込まれて前記加飾パネルを前記筐体に接着する接着材と、を備え、
前記加飾パネルは、プレート状をなすとともに、
少なくとも一面側にハードコート層が形成された樹脂基材と、
前記樹脂基材の前記ハードコート層上に形成され、UV硬化型インクにより印刷することで形成された印刷パターン層と、を含み、
前記加飾パネルの一部の範囲と当該加飾パネルの残部の範囲とで前記印刷パターン層の厚さが異なることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記印刷パターン層は、オフセット印刷により形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記透け防止パターンを、耐熱インクを用いたシルク法により印刷形成することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−134277(P2012−134277A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284232(P2010−284232)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】