説明

電子機器

【課題】蓋部材の第1の開位置を維持しつつ開方向への外力が加わるとその開移動を許容し、蓋部材が全開位置にあるとき開方向へのさらなる過負荷が加わった場合には蓋部材や軸受部等の破損を抑止する。
【解決手段】電子機器1において、機器に回動可能に設けられ、該回動が限界となる全開位置において、外力が開方向に加えられたときに弾性変形し、回動移動する先端部のみが機器の外装面に当接して該回動が停止する蓋部材13と、蓋部材を、全閉位置と全開位置との間に設定される第1の開位置を維持する開状態維持手段(13a,22)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器、詳しくは外装部材の一部を開閉可能とする蓋部材を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器は、機器本体と、この機器本体を覆う外装部材とによって構成されており、必要に応じて外装部材の一部を開閉可能とする蓋部材が設けられている。
【0003】
上記蓋部材は、機器本体側に設けられる電池室や記録媒体収納室,外部機器接続用コネクタ配設部等を、外部に露呈する位置と、外部から遮蔽する閉位置とに移動するように形成されている。そして、機器の通常使用時等には蓋部材を閉位置に配置して、機器本体側の電池室,記憶媒体収納室,外部機器接続用コネクタ配設部等を外部から遮蔽する一方、例えば電池や記録媒体の着脱時や、外部機器接続用コネクタに接続ケーブルを装着して外部機器とのケーブル接続を行う等の場合には、蓋部材を開位置に移動させることができるようになっている。
【0004】
従来の電子機器における蓋部材は、例えば機器本体側に固定配置された軸部材を回動中心として回動可能に形成され、蓋部材が閉位置にあるときには、その閉位置を維持するロック機構を有し、蓋部材が開位置にあるときには、その開位置より開方向へ移動するのを規制する機構を有している。このような構成の蓋部材では、例えば開位置にある蓋部材の先端側に対して、さらに開方向へ向けた意図しない外力(過負荷という)が加わった場合には、機器と蓋部材との連結部分、特に蓋部材の軸受部等が破損してしまうといった問題点があった。
【0005】
そこで、上述のような問題点を解決するために、例えば特開2009−58820号公報,特開2005−79154号公報等によって種々の手段が提案されている。
【0006】
上記特開2009−58820号公報によって開示される手段は、蓋部材の形状を工夫して、蓋部材が全開位置に配置されたとき、その全開位置で蓋部材が確実に係止されるように構成することで、蓋部材の破損を抑止し得るというものである。
【0007】
上記特開2005−79154号公報によって開示される手段は、蓋部材が下方位置にされたとき、さらなる過負荷が加わると、蓋部材の軸受部が軸部材から容易に離脱することにより、軸部材や軸受部の破損を抑止し得るというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−58820号公報
【特許文献2】特開2005−79154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、従来の電子機器において、携帯して使用される機器、例えばカメラ等においては、常に携帯性が重視されており、薄型化,小型化,軽量化の要望が常にある。したがって、近年のカメラ等においては、特にカメラ本体の薄型化が進んでいる。例えば、薄型化された筐体を有するカメラ等においては、上記蓋部材が側面に配設されることになるが、この場合においては、蓋部材を開位置に配置したとき、開放角度がより大きくなってしまい、実用上使い難くなってしまうと共に、蓋部材が細長い形状になる傾向がある。蓋部材が細長い形状になると、蓋部材が全開位置にある時の過負荷に対する耐性が低下する傾向がある。
【0010】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、蓋部材が所定の開位置(第1の開位置)に配置されたとき、その位置を維持し得ると共に、この状態にあるとき、蓋部材に対して開方向への外力が加わったときには、蓋部材の開方向への移動を許容し、蓋部材が全開位置にあるとき、蓋部材の開方向へのさらなる過負荷が加わった場合には、蓋部材や軸受部等の破損を抑止し得る構成を備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による電子機器は、上記機器に回動可能に設けられ、該回動が限界となる全開位置において、外力が開方向に加えられたときに弾性変形し、回動移動する先端部のみが上記機器の外装面に当接して該回動が停止する蓋部材と、上記蓋部材を、全閉位置と全開位置との間に設定される第1の開位置を維持する開状態維持手段と、を具備して構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓋部材が所定の開位置(第1の開位置)に配置されたとき、その位置を維持し得ると共に、この状態にあるとき、蓋部材に対して開方向への外力が加わったときには、蓋部材の開方向への移動を許容し、蓋部材が全開位置にあるとき、蓋部材の開方向へのさらなる過負荷が加わった場合には、蓋部材や軸受部等の破損を抑止し得る構成を備えた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した電子機器(カメラ)の一形態の外観斜視図
【図2】図1の電子機器において蓋部材が第1の開位置にある状態を示す外観斜視図
【図3】図1の電子機器において蓋部材が第2の開位置(全開位置)にある状態を示す外観斜視図
【図4】図1の電子機器において蓋部材への過負荷により蓋部材が機器から離脱した状態を示す外観斜視図
【図5】本発明を適用した電子機器の別の形態を示し、蓋部材への過負荷により蓋部材が弾性変形した状態を示す外観斜視図
【図6】本発明の第1の実施形態の電子機器において蓋部材が全閉位置にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大側断面図
【図7】本発明の第1の実施形態の電子機器における蓋部材のみを取り出して示す外観斜視図
【図8】本発明の第1の実施形態の電子機器における軸受部のみを取り出して示す外観斜視図
【図9】本発明の第1の実施形態の電子機器において蓋部材が第1の開位置にある状態を示す側断面図
【図10】本発明の第1の実施形態の電子機器において蓋部材が第2の開位置(全開位置)にある状態を示す側断面図であって、この状態から過負荷によって蓋部材が機器から離脱する際のメカニズムを説明する図
【図11】本発明の第2の実施形態の電子機器において蓋部材が第2の開位置(全開位置)にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大斜視図
【図12】図11の状態から過負荷によって蓋部材が機器から離脱する際のメカニズムを説明する図
【図13】本発明の第3の実施形態の電子機器における蓋部材のみを取り出して示す外観斜視図
【図14】本発明の第3の実施形態の電子機器における軸受部のみを取り出して示す外観斜視図
【図15】本発明の第4の実施形態の電子機器において蓋部材が全閉位置にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大側断面図
【図16】本発明の第4の実施形態の電子機器における軸受部のみを取り出して示す外観斜視図
【図17】本発明の第4の実施形態の電子機器において蓋部材が第1の開位置にある状態を示す側断面図
【図18】本発明の第5の実施形態の電子機器において蓋部材が開位置にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大斜視図
【図19】図18の蓋部材と軸受部の内部構成を簡略に示す要部拡大断面図
【図20】図18の蓋部材が過負荷により軸受部から離脱する際のメカニズムを説明する図
【図21】本発明の第6の実施形態の電子機器において蓋部材が開位置にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大斜視図
【図22】図21の蓋部材と軸受部の内部構成を簡略に示す要部拡大断面図
【図23】図21の蓋部材が過負荷により軸受部から離脱する際のメカニズムを説明する図
【図24】本発明の第7の実施形態の電子機器において蓋部材のみを取り出して示す外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。◎
まず、本発明の要旨を、図1〜図4を用いて以下に簡単に説明する。なお、以下の説明においては、本発明を適用する電子機器として、例えばカメラを例に挙げて示している。
【0015】
なお、以下の説明に用いる各図面においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、これらの図面に記載された構成要素の数量,構成要素の形状,構成要素の大きさの比率及び各構成要素の相対的な位置関係は、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0016】
[本発明の要旨]
図1〜図4は、本発明を適用した電子機器であるカメラの一形態の外観を示す図である。このうち、図1は、本発明を適用した電子機器において、蓋部材が全閉位置にある状態を示している。図2は、図1の電子機器において、蓋部材が第1の開位置にある状態を示している。図3は、図1の電子機器において、蓋部材が第2の開位置(全開位置)にある状態を示している。図4は、図1の電子機器において、蓋部材に対して過負荷が加わったことにより蓋部材が機器から離脱した状態を示している。
【0017】
また、図5は、本発明を適用した電子機器の別の形態の外観を示し、蓋部材に対して過負荷が加わったことにより蓋部材が弾性変形した状態を示している。
【0018】
図1に示すように、本発明を適用した電子機器の一形態のカメラ1は、前後方向に薄型の箱形状に形成される本体と、この本体を覆う外装部材とによって全体が形成されている。カメラ1において、当該カメラ1の使用時に被写体に対向する前面側には、撮影レンズ鏡筒12,閃光発光装置15等が前面に向けて配設されている。カメラ1の上面には、操作部材のうちシャッターレリーズボタン16,電源ボタン17等が配設されている。カメラ1の側面、即ちカメラ1の通常の使用状態で両側に配置される面(左側面,右側面)のうち、例えば被写体側からカメラ1の前面に向かって見たときに左側の左側面には、該左側面の略全面を覆う蓋部材13が配設されている。カメラ1の上面に対向する底面側であって、カメラ1の正面に向かって左下隅部には、蓋部材13の回動軸21(後述する。図4のみに図示)を受ける軸受部14が配設されている。なお、図示されていないが、カメラ1の使用時に使用者が対面する背面側には、複数の操作部材や表示装置の表示画面が背面に向けて配設されている。また、蓋部材13の配置については、右側面であってもよいし、底面であってもよい。
【0019】
上記蓋部材13は、カメラ1の本体内に設けられる電池室,記録媒体収納室等の開口部若しくは外部機器接続用コネクタ配設部等に対向する部位に設けられ、これらを外部に対して露呈する開位置と、外部から遮蔽する閉位置とに移動し得るように形成されている。
【0020】
即ち、蓋部材13は、左側面の略全面を覆い得るように細長形状を有しており、その長手方向の一端に回動軸21(図1〜3では不図示。図4参照)を備えている。この回動軸21は上記軸受部14に対して回動自在に軸支されている。このような構成により、蓋部材13は、カメラ1の本体に対して回動軸21を中心として図2の矢印R方向に回動して、上記電池室,記録媒体収納室等の開口部若しくは外部機器接続用コネクタ配設部等を開閉するように構成されている。
【0021】
つまり、蓋部材13は、図1に示す全閉位置にある状態と、この全閉位置から開方向に回動させ移動させた図2に示す第1の開位置にある状態と、この第1の開位置よりさらに開方向へ回動させ該回動が限界となる位置であり図3に示す第2の開位置(全開位置;開動作終端位置)にある状態との間で変位し得るようになっている。この場合において、蓋部材13は、図1に示す全閉位置を維持する蓋ロック機構を有している。なお、この蓋ロック機構は、従来の電子機器における蓋部材において一般に適用されるものが適用されているものとし、その詳細説明は省略する。
【0022】
また、蓋部材13は、図2に示す第1の開位置において、その位置より開方向への移動を規制する機構(詳細は後述する各実施形態を参照)を有している。そして、蓋部材13が図2に示す第1の開位置にあるときに、蓋部材13をさらに開方向へ移動させる意図しない不要な外力F(以下、過負荷という;(図2参照)が加わると、上記移動規制機構(開状態維持手段)による回動規制状態が解除されて、蓋部材13の図3の矢印R1方向への回動が許容される。このようにして、蓋部材13は、図3に示す全開位置への移動が許容されている。そして、蓋部材13が全開位置に至ってなお蓋部材13の先端側に過負荷Fが加わると、回動軸21と軸受部14との係合状態が解除されて、蓋部材13はカメラ1から離脱するように構成されている。したがって、この構成により、蓋部材13,軸受部14等の破損を防ぐことができる(詳細構成は後述の第1〜第6の各実施形態の説明を参照)。
【0023】
一方、図5に示すカメラ1Fは、本発明を適用した電子機器の別の形態であって、後述する本発明の第7の実施形態に対応する。当該カメラ1Fの基本的な構成は、上述の図1〜図4に示すカメラ1と略同様であり、蓋部材13Fの構成が異なるのみである。即ち、図5に示す別形態のカメラ1Fにおいては、蓋部材13Fが全開位置にあるときに過負荷が加わると、蓋部材13Fが弾性変形するように形成されている。したがって、この別形態においては、過負荷が加わったとき、蓋部材13Fがカメラ1から離脱することなく蓋部材13F,軸受部14Fの破損を防ぐことができるように構成されている(詳細構成は後述の第7の実施形態の説明を参照)。
【0024】
上述したような本発明の構成を実現するための具体的な例示を、以下の各実施形態によって詳述する。
【0025】
[第1の実施形態]
図6〜図10は、本発明の第1の実施形態を示す図である。このうち、図6は、本発明の第1の実施形態の電子機器であるカメラにおいて蓋部材が全閉位置にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大側断面図である。図7は、図6の蓋部材のみを取り出して示す外観斜視図である。図8は、図6の軸受部のみを取り出して示す外観斜視図である。図9は、本実施形態の電子機器において蓋部材が第1の開位置にある状態を示す側断面図である。図10は、本実施形態の電子機器において蓋部材が第2の開位置(全開位置)にある状態を示す側断面図である。図10においては、蓋部材が第2の開位置(全開位置)にあるときに加わる過負荷によって、該蓋部材が機器から離脱する際のメカニズムを説明図である。
【0026】
本実施形態の電子機器であるカメラ1の全体構成は、図1〜図4によって上述した通りである。
【0027】
本実施形態のカメラ1における蓋部材13は、図6,図7に示すように、例えばカメラ1の左側面若しくは右側面のいずれか一方の略全面を覆い得るような細長形状を有して形成され、その長手方向の一端である基端部13bに回動軸21を備えて構成されている(ただし図7では回動軸21の図示を省略している)。そのために、蓋部材13の基端部13bには、回動軸21を挿通配置する貫通孔13c(図7参照)が、当該蓋部材13の長辺方向に対して直交する方向に蓋部材13の短辺に沿うように形成されている。この貫通孔13cには、上述したように回動軸21が挿通配置されるようになっている。そして、貫通孔13cに回動軸21が挿通配置された状態において、該回動軸21の両端は、軸受部14に対し回動自在に軸支されている。また、蓋部材13の基端部13bの最端部には、外方に向けて突出するように形成され、後述する係止ばね22(開状態維持手段)に作用する係止凸部13aが形成されている。この係止凸部13aは、蓋部材13が回動軸21を回転中心として開方向に回動移動したときに、蓋部材13が所定の開位置である第1の開位置において回動移動を係止して、その第1の開位置より開方向への移動を規制する移動規制機構の一部を構成する部位である。また、回動軸21は、例えば金属部材等若しくは硬質な樹脂成型部材等によって形成される。
【0028】
軸受部14は、上述したようにカメラ1の隅部(本実施形態ではカメラ1の正面に向かって左下隅部)に配設され、上記蓋部材13の回動軸21を受けて蓋部材13をカメラ1に対して回動自在に軸支する部材である。そのために、軸受部14には、図8に示すように、回動軸21の両端がそれぞれ回動自在に軸支される軸受孔14bが二箇所形成されている。各軸受孔14bには、一部が切り欠かれた切欠14aが形成されている。この切欠14aの幅寸法は、回動軸21の直径よりも若干小となるように形成される。また、軸受孔14bの内部には、切欠14aに連接する部位に段差部14cが形成されている。そして、軸受部14も弾性を有する部材によって形成されている。
【0029】
したがって、蓋部材13を軸受部14に対して取り付けるためには、まず蓋部材13の基端部13bを二箇所の軸受孔14bの間に配置し、貫通孔13cと軸受孔14bとを一致させる。この状態で、回動軸21を挿通させる。これにより、蓋部材13は、軸受部14に対して回動自在に配設される。この状態において、回動軸21は、軸受孔14b内の段差部14cにおいて係止された状態となっており、回動軸21が切欠14aから抜け落ちてしまうことはない。一方、回動軸21に過負荷が加わったときには、回動軸21は、
軸受部14の弾性に抗して軸受孔14bの内部の段差部14cを乗り越え、切欠14aを通って離脱するようになっている。ここで、軸受孔14bの内部の段差部14c及び切欠14aの構成及び軸受部14が弾性を有する構成によって嵌合解除手段を構成している。
【0030】
このような構成によって、蓋部材13は、軸受部14に対して回動軸21を回動中心として図6の矢印R方向に回動し、上記電池室,記録媒体収納室等の開口部若しくは外部機器接続用コネクタ配設部等を開閉自在としている。
【0031】
さらに、カメラ1の機器内部において、蓋部材13及び軸受部14が配設されている近傍には、開状態維持手段の一部を構成するである係止ばね22が配設されている。この係止ばね22は、例えば弾性を有する平板状ばね部材が適用されており、その一端(固定端という)は、カメラ1の機器内部に固定されている。また、係止ばね22の他端(自由端という)は、蓋部材13の基端部13bの近傍に配置されている。この場合において、係止ばね22の自由端の先端部近傍は、蓋部材13が回動したときに、所定の回動位置において蓋部材13の係止凸部13aに当接し、該蓋部材13の回動を係止し得る位置に配置される(図9参照)。ここで、係止凸部13aが蓋部材13の回動を係止する所定の回動位置が第1の開位置となる。なお、蓋部材13の第1の開位置とは、例えば蓋部材13によって遮蔽されていた電池室,記録媒体収納室等の開口部若しくは外部機器接続用コネクタ配設部等が、外部に露呈され、かつ電池,記録媒体の着脱若しくは外部機器接続用コネクタの挿抜を行うのに充分な空間を確保し得る蓋部材13の位置である。
【0032】
つまり、蓋部材13が開方向に回動されると、やがて、係止ばね22の自由端が蓋部材13の係止凸部13aに当接する。これによって、蓋部材13の回動は係止され、この第1の開位置より開方向への蓋部材13の移動が規制される。このときの状態が図9に示す状態である。このように、上記係止ばね22と上記係止凸部13aとは、協働して蓋部材13を第1の開位置で係止し、その位置(第1の開位置)を維持しつつ、開方向への移動を規制する移動規制機構であり、蓋部材13の第1の開位置を維持する開状態維持手段を構成しているものである。
【0033】
上述のように構成された本実施形態のカメラ1における蓋部材13を閉位置から開方向へと移動させる際の作用を、以下に説明する。
【0034】
図9に示す状態、即ち蓋部材13が第1の開位置にある状態において、さらに、同図矢印F方向への過負荷が蓋部材13の先端側に加わった場合には、蓋部材13の係止凸部13aが係止ばね22を弾性力に抗して押圧する。やがて、係止ばね22が係止凸部13aを乗り越えることによって、回動規制状態が解除され、蓋部材13のさらなる開方向(図9の矢印R1方向)への回動移動が許容される。やがて、蓋部材13は、図10に示す第2の開位置(全開位置)に到達する。図10に示すように、この状態においては、蓋部材13の基端部13bの一部(図10の符号Cで示す部位)が軸受部14の回動規制部14eに当接している。したがって、蓋部材13は、回動規制部14eによって、これ以上の開方向(矢印R1方向)への回動が規制されている。なお、この状態においても、係止ばね22は、その自由端先端が蓋部材13の基端部13bに当接し続けていることにより、蓋部材13の回動を規制する役目を担っている。
【0035】
図10に示す状態、即ち蓋部材13が全開位置にある状態において、さらなる過負荷Fが蓋部材13の先端側に加わった場合には、蓋部材13は過負荷Fに沿う方向に押されて、図10の符号Cで示す部位近傍を支点として回動する。すると、回動軸21には、図10の矢印B方向へ移動させる力量が作用する。これにより、回動軸21は、軸受部14の弾性に抗して切欠14aの一部を図10の矢印D方向に押し上げて、軸受孔14b内部から段差部14cを乗り越え、さらに切欠14aの隙間より外部へと離脱する。こうして、回動軸21と軸受部14との係合状態が解除され、よって、蓋部材13はカメラ1から離脱する。
【0036】
以上説明したように上記第1の実施形態によれば、蓋部材13に係止凸部13aを設けると共に、これに作用する係止ばね22をカメラ1の内部に固定配置して、蓋部材13の第1の開位置における移動規制機構(開状態維持手段)を構成している。これにより、蓋部材13が必要以上に開方向に移動してしまうのを係止することができる。
【0037】
また、蓋部材13が第1の開位置にあるときに、蓋部材13に対して意図しない過負荷が加わった場合には、蓋部材13の第1の開位置における係止状態を解除して、蓋部材13の開方向へのさらなる回動を許容する。このとき係止ばね22は、蓋部材13の基端部13bに当接し続け、蓋部材13の回動規制を継続している。これと同時に、蓋部材13は軸受部14の回動規制部14eに当接することによって、この第2の開位置(全開位置)以上の回動が規制される。これによって、蓋部材13が破損する程、開き過ぎてしまうことを抑止することができる。
【0038】
さらに、蓋部材13が第2の開位置にあるときに、蓋部材13に対してさらなる過負荷が加わると、回動軸21が切欠14aより離脱し、回動軸21と軸受部14との係合状態が解除されて、蓋部材13がカメラ1から離脱するようにしている。これにより、蓋部材13,軸受部14等が破損することを防止することができる。
【0039】
[第2の実施形態]
図11,図12は、本発明の第2の実施形態を示す図である。このうち、図11は、本発明の第2の実施形態の電子機器であるカメラにおいて蓋部材が第2の開位置(全開位置)にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大斜視図である。図12は、図11の状態から過負荷によって蓋部材が機器から離脱する際のメカニズムを説明する図である。
【0040】
本実施形態の電子機器であるカメラ1の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様であり、蓋部材及び軸受部の構成が異なるのみである。したがって、カメラ1の全体構成については図1〜図4を参照し、同様の部材については同じ符号を付して説明する。
【0041】
本実施形態のカメラ1における蓋部材13Aは、図11,図12に示すように、また上記第1の実施形態と略同様に細長形状を有して形成されている。蓋部材13Aの長手方向の一端である基端部13Abには、回動軸21Aの両端が該蓋部材13Aの長辺方向に対して直交する方向に、かつ該蓋部材13Aの短辺方向に沿って外部に向けて突出するように固定されている。そして、この回動軸21Aの両端は、軸受部14Aに対して回動自在に軸支されている。回動軸21Aの両端は、周面の一部が平坦面で形成した軸断面が略小判状のDカット部を対向させた形態に形成されている。
【0042】
軸受部14Aは、上記蓋部材13Aの回動軸21Aを受けて蓋部材13Aをカメラ1に対して回動自在に軸支する部材である。そのために、軸受部14Aには、図11,図12に示すように、回動軸21Aの両端がそれぞれ回動自在に軸支される軸受孔14Abが二箇所形成されている。各軸受孔14Abの形状は、上述の第1の実施形態の軸受孔14bと略同様であり、切欠14Aa,段差部(14c)を有して形成されている。なお、切欠14Aaの幅寸法は、回動軸21Aの直径よりも若干小となるように、かつ回動軸21Aの二つの平坦面間の幅寸法(軸方向に直交する断面における)と略同寸法か若干大となるように形成されている。
【0043】
したがって、蓋部材13Aを軸受部14Aに対して取り付けるためには、まず蓋部材13Aの基端部13Abに固定された回動軸21Aの両端部の二つの平坦面が、軸受部14Aの切欠14Aaの開口方向に沿うようにして該切欠14Aaへと挿入する。そして、回動軸21Aの両端が各軸受孔14Abに嵌入した状態で、蓋部材13Aを、回動軸21Aを中心とする開閉方向(図6の矢印R方向)に回動させる。これにより、蓋部材13Aは、軸受孔14Abから抜け落ちない状態となり、かつ軸受部14Aに対して回動自在に配設される。このような構成によって、蓋部材13Aは、軸受部14Aに対して回動軸21Aを回動中心として回動し、上記電池室,記録媒体収納室等の開口部若しくは外部機器接続用コネクタ配設部等を開閉自在としている。
【0044】
なお、本実施形態のカメラ1においても、係止凸部(13a),係止ばね(22)からなる第1の開位置における移動規制機構を有するものであるが、図面の煩雑化を避けるために図11,図12においてはその図示を省略している。したがって、その詳細構成は上述の第1の実施形態を参照するものとする。
【0045】
上述のように構成された本実施形態のカメラ1における蓋部材13Aを閉位置から開方向へと移動させる際の作用を、以下に説明する。
【0046】
本実施形態において、蓋部材13Aが閉位置にある状態(図6参照)から蓋部材13Aが開方向に回動されて、上記移動規制機構の作用によって蓋部材13Aの回動が第1の開位置において係止されるまでの作用と、これに続く作用、即ち蓋部材13Aが第1の開位置にあるとき蓋部材13Aに過負荷(F)が加わって(図9参照)、蓋部材13Aの回動規制状態が解除され、蓋部材13Aの開方向(図9矢印R1)への回動移動が許容され、図12に示す第2の開位置(全開位置)に到達して回動規制されるまでの作用は、上述の第1の実施形態と全く同様である。
【0047】
次に、蓋部材13Aが、図12の第2の開位置(全開位置)に到達して蓋部材13Aが回動規制されている状態において、さらなる過負荷Fが蓋部材13Aの先端側に加わった場合には、蓋部材13Aは過負荷Fに沿う方向に押されて、図12の符号Cで示す部位近傍を支点として回動する。すると、回動軸21Aには図12の矢印B方向へ移動させる力量が作用する。このとき回動軸21Aの両端部の二つの平坦面は、軸受部14Aの切欠14Aaの開口方向と平行な状態にある。したがって、回動軸21Aは、軸受孔14Ab内部から軸受部14の切欠14Aaの隙間を通って外部へと離脱する。こうして、回動軸21Aと軸受部14Aとの係合状態が解除され、よって、蓋部材13Aはカメラ1から離脱する。
【0048】
以上説明したように上記第2の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
[第3の実施形態]
図13,図14は、本発明の第3の実施形態を示す図である。このうち、図13は、本発明の第3の実施形態の電子機器であるカメラにおける蓋部材のみを取り出して示す外観斜視図である。図14は、本実施形態の電子機器における軸受部のみを取り出して示す外観斜視図である。
【0050】
本実施形態の電子機器であるカメラ1の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様であり、蓋部材及び軸受部の構成が異なるのみである。したがって、カメラ1の全体構成については図1〜図4を参照し、同様の部材については同じ符号を付して説明する。
【0051】
本実施形態のカメラ1における蓋部材13Bは、図13に示すように、また上記第1の実施形態と略同様に細長形状を有して形成されている。また、蓋部材13Bの長手方向の一端である基端部13Bbには、上述の第1の実施形態における回動軸21に代えて外部に向けて先細となるテーパー形状に形成されたテーパー凸部13Bcが基端部13Bbの両側面のそれぞれに設けられている。このテーパー凸部13Bcは、蓋部材13Bの長辺方向に対して直交する方向に基端部13Bbの両側面より外部に向けて突設されている。そして、蓋部材13Bを軸受部14Bに組み付けた際には、各テーパー凸部13Bcは、軸受部14Bに設けられるテーパー凹部14Bb(図14参照)に対して回動自在に嵌合する。そのために、軸受部14Bのテーパー凹部14Bbは、各テーパー凸部13Bcに対向する部位に配置されている。
【0052】
テーパー凹部14Bbは、内部に向けて先細となるテーパー形状に形成される有底孔部である。このテーパー凹部14Bbの形状は、上記テーパー凸部13Bcの形状に合わせて形成され、テーパー凸部13Bcと嵌合し得るように形成されている。
【0053】
また、蓋部材13Bの基端部13Bbには、上記テーパー凸部13Bcの周縁部から放射状に延びる複数のクリック溝23aが形成されている。これに対応させて軸受部14Bには、テーパー凹部14Bbの周縁部から放射状に延びるクリック凸部23bが設けられている。このクリック凸部23bは、蓋部材13Bを軸受部14Bに取り付けたときに、上記クリック溝23aが対向する部位に設けられる。これらクリック溝23a,クリック凸部23bは、蓋部材13Bの第1の開位置の移動規制機構を構成すると共に、第2の開位置の回動を規制する手段として機能するようになっている。したがって、クリック溝23aとクリック凸部23bとのそれぞれの配置は、蓋部材13Bにおいて設定される第1の開位置,第2の開位置に合わせて、適宜所定の位置に形成されることになる。本発明においては、蓋部材13Bの回動を規制する位置として、第1の開位置に設定するようにしている。
【0054】
なお、本実施形態における軸受部14Bは、上述の第1の実施形態の軸受部14における切欠14a,段差部14cに相当する部位は設けられていない。
【0055】
その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。また、上述のように構成された本実施形態のカメラ1における蓋部材13Bを閉位置から開方向へと移動させる際の作用も、上述の第1の実施形態と略同様である。
【0056】
なお、本実施形態においては、蓋部材13Bを軸受部14Bに軸支する部位として、第1,第2の実施形態における回動軸21,21Aに代えて、テーパー凸部13Bcを設けている。そして、本実施形態において、軸受部14は弾性を有する部材によって形成されている。
【0057】
したがって、本実施形態の構成においては、蓋部材13Bが第2の開位置(全開位置)にあるときに、蓋部材13Bに対して過負荷が加わった場合には、テーパー凸部13Bcがテーパー凹部14Bbとのテーパー嵌合に沿って離脱する方向へと移動を始める。すると、これに伴って、軸受部14は、テーパー凹部14Bb近傍の部位において該二つのテーパー凹部14Bbの間隔が開く方向に弾性変形する。これにより、テーパー凸部13Bcはテーパー凹部14Bbから離脱する。
【0058】
以上説明したように上記第3の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、上述したように第1の実施形態における回動軸21に代えて蓋部材13Bにテーパー凸部13Bcを設け、軸受部14Bの弾性変形によって蓋部材13Bが軸受部14Bから離脱し得るように構成している。したがって、本実施形態における軸受部14Bは、上述の第1の実施形態の軸受部14における切欠14aに相当する部位を不要としている。これにより、第1の実施形態における回動軸21等の部材を削減することができると共に、軸受部14Bの形状を単純化することができる。よって、製造コストの低減化に寄与することができる。
【0060】
また、本実施形態においては、テーパー凸部13Bcを蓋部材13C側に設け、テーパー凹部14Bbを軸受部14側に設けるような構成を示したが、この構成に限られることはなく、軸受部14B側に軸受としてのテーパー凸部を設け、蓋部材13B側に軸としてのテーパー凹部を設けて構成してもよい。このような構成とした場合にも、全く同様の作用及び効果を得ることができる。
【0061】
[第4の実施形態]
図15〜図17は、本発明の第4の実施形態を示す図である。このうち、図15は、本発明の第4の実施形態の電子機器であるカメラにおいて蓋部材が全閉位置にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大側断面図である。図16は、本実施形態の電子機器における軸受部のみを取り出して示す外観斜視図である。図17は、本実施形態の電子機器において蓋部材が第1の開位置にある状態を示す側断面図である。
【0062】
本実施形態の電子機器であるカメラ1の基本的な構成は、上述の第1,第2の実施形態と略同様であり、蓋部材及び軸受部の構成が異なるのみである。したがって、カメラ1の全体構成については図1〜図4を参照し、同様の部材については同じ符号を付して説明する。
【0063】
本実施形態のカメラ1における蓋部材13Cは、図15に示すように、また上記各実施形態と略同様に細長形状を有して形成されている。そして、蓋部材13Cの長手方向の一端である基端部13Cbには、上述の第2の実施形態と同様の構成(周面の一部が平坦面で形成したDカット部を対向させた形態:断面が略小判状の形態)の回動軸21Aが配設されている。
【0064】
この回動軸21Aは、蓋部材13Cの基端部13Cbに設けられた貫通孔13Ccに挿通固定配置、若しくは一体に形成されている。そして、貫通孔13Ccに回動軸21Aが挿通配置された状態において、該回動軸21Aの両端が軸受部14Cの軸受孔14Cbに対し回動自在に軸支されている。
【0065】
また、蓋部材13Cの基端部13Cbには、外周縁の一部に凹形状のクリック凹部13Caが形成されている。これに対応させて軸受部14Cには、蓋部材13Bを取り付けてかつ蓋部材13Bを第1の開位置に配置したときに、上記クリック凹部13Caが対向する部位に、ボール24a,付勢部材24b等からなる移動規制機構が配設されている。
【0066】
軸受部14Cには、図16に示すように、上記移動規制機構を構成する各部材を収納する収納凹部14Cdが形成されている。収納凹部14Cdには、例えば伸長性のコイルばね等からなる付勢部材24bと、蓋部材13Cの基端部13Cbの外周面に当接するように設けられるボール24aとが収納されている。そして、付勢部材24bは圧縮状態で収納凹部14Cd内に収納されている。つまり、付勢部材24bは、ボール24aを外部に向けて押圧する状態で収納凹部14Cd内に収納されている。これにより、ボール24aは、軸受部14Cに組み付けられた蓋部材13Cの基端部13Cbによって常に押圧された状態にある。したがって、ボール24aは付勢部材24bの付勢力によっても外部に飛び出さないように配置されている。
【0067】
本実施形態においては、蓋部材13Cの第1の開位置の移動規制機構がこのように構成されている。そして、蓋部材13Cが閉位置から開位置へと移動する際には、ボール24aは基端部13Cbの外周面に当接しながら転がって、やがて、図17に示すように、ボール24aはクリック凹部23Caに落ち込む。これにより蓋部材13Cの回動移動は係止される。このときの蓋部材13の位置が第1の開位置である(図17に示す状態参照)。
【0068】
その他の構成は、上述の各実施形態と略同様である。また、本実施形態のカメラ1における蓋部材13Cを閉位置から開方向へと移動させる際の作用も、上述の各実施形態と略同様である。
【0069】
以上説明したように上記第4の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
[第5の実施形態]
図18〜図20は、本発明の第5の実施形態を示す図である。このうち、図18は、本発明の第5の実施形態の電子機器であるカメラにおいて蓋部材が開位置にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大斜視図である。図19は、図18の蓋部材と軸受部の内部構成を簡略に示す要部拡大断面図である。図20は、図18の蓋部材が過負荷により軸受部から離脱する際のメカニズムを説明する図である。
【0071】
なお、図18において、後述するテーパー凹部13Dc,テーパー軸21Da等の主要構成部は、実際には蓋部材13D,軸受部14D等の内部に配設されているものであるので、図面としては点線を用いて示すべきところであるが、これら主要構成部を説明するのに際して図面を参照する際の煩雑化を避けるために、図18においては、これらの要部構成部を実線で示すものとする。
【0072】
本実施形態の電子機器であるカメラ1の基本的な構成は、上述の各実施形態と略同様であり、蓋部材及び軸受部の構成が異なるのみである。したがって、カメラ1の全体構成については図1〜図4を参照し、同様の部材については同じ符号を付して説明する。
【0073】
本実施形態のカメラ1における蓋部材13Dは、図18に示すように、また上記各実施形態と略同様に細長形状を有して形成されている。蓋部材13Dの長手方向の一端である基端部13Dbには、上述の第1の実施形態における回動軸21に代えて内部に向けて先細となるテーパー形状に形成されたテーパー凹部13Dcが基端部13Dbの両側面のそれぞれに設けられている。つまり、テーパー凹部13Dcは、蓋部材13Dの長辺方向に対して直交する方向、かつ蓋部材13Dの短辺に沿う方向に基端部13Dbの両側面より内部に向けて穿設されている。
【0074】
そして、蓋部材13Dを軸受部14Dに組み付けた際には、各テーパー凹部13Dcが、後述する軸受部14Dに設けられる各テーパー軸21Daに対して回動自在に嵌合する。そのために、各テーパー凹部13Dcは、各テーパー軸21Daに対向する部位に配置されている。また、テーパー凹部13Dcの形状に合わせて、テーパー軸21Daの先端形状は、外部に向けて先細となるテーパー形状に形成されている。
【0075】
軸受部14Dには、図18に示すように、上記蓋部材13Dを軸支するテーパー軸21Daと、このテーパー軸21Daを蓋部材13Dの方向に押圧する付勢部材21Dbが、収納凹部14Dd内に収納されている。テーパー軸21Daは、上述したように先端が外部に向けて先細となるテーパー形状に形成された軸部材であり、基端側が先端部に比べて大径に形成されている。なお、テーパー軸21Daの基端側の直径は、収納凹部14Ddの口元部分の内径よりも大となるように形成されている。
【0076】
付勢部材21Dbは、例えば伸長性のコイルばね等からなり、圧縮された状態で収納凹部14Dd内に収納されている。これにより、付勢部材21Dbは、テーパー軸21Daの基端面を収納凹部14Dd内から外部に向けて押圧している。これにより、テーパー軸21Daの先端が、蓋部材13Dのテーパー凹部13Dcに対して両側面より嵌合した状態となったとき、蓋部材13Dは回動自在に軸支されることになる。なお、付勢部材21Dbは、収納凹部14Ddの側方から、図示していない孔より収納凹部14Ddに収納されている。
【0077】
このように、本実施形態においては、上述の第3の実施形態と同様に、回動軸(21)に代えてテーパー凹部13Dcとテーパー軸21Daの嵌合により、蓋部材13Dの軸支を行うように構成している。したがって、本実施形態における軸受部14Dにおいても、上述の第3の実施形態と同様に、第1の実施形態の軸受部14における切欠14aに相当する部位を不要としている。
【0078】
また、本実施形態においても、蓋部材13Dの開方向への移動を規制する移動規制機構を有しているが、図面の煩雑化を避けるために図18においては、その図示を省略している。本実施形態においても、例えば上述の第1の実施形態と略同様のものを備えているものとし、その詳細説明は省略する。その他の構成は、上述の各実施形態と略同様である。
【0079】
上述のように構成された本実施形態のカメラ1における蓋部材13Dを閉位置から開方向へと移動させる際の作用を、図19,図20を用いて簡単に説明する。
【0080】
まず、蓋部材13Dが軸受部14Dに取り付けられた状態では、図19に示すように、蓋部材13Dのテーパー凹部13Dcには、軸受部14D側のテーパー軸21Daの先端が嵌合した状態にある。このとき、テーパー軸21Daは、それぞれが付勢部材21Dbによって図19の矢印E1方向に押圧されている。したがって、蓋部材13Dは、閉位置から第1の開位置を介して第2の開位置(全開位置)との間において、テーパー軸21Daによって回動自在に軸支されている。
【0081】
蓋部材13Dが第2の位置(全開位置:不図示;上述の各実施形態参照)にあるとき、さらなる過負荷が蓋部材13Dに付与された場合を考える。蓋部材13Dに対する過負荷は、図20において矢印Fで示す方向に働く(図10等を参照)。すると、蓋部材13Dは、矢印F方向に移動することになる。このとき、テーパー軸21Daの先端は、テーパー凹部13Dcのテーパー面に押されつつ、付勢部材21Dbの付勢力に抗して該付勢部材21Dbを圧縮する方向(図21の矢印E2方向)へと移動する。これにより、テーパー凹部13Dcとテーパー軸21Daとの嵌合状態は徐々に外れる。やがて、蓋部材13Dは軸受部14Dから離脱する。
【0082】
以上説明したように上記第5の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
[第6の実施形態]
図21〜図23は、本発明の第6の実施形態を示す図である。このうち、図21は、本発明の第6の実施形態の電子機器であるカメラにおいて蓋部材が開位置にあるときの蓋部材とその軸受部近傍を示す要部拡大斜視図である。図22は、図21の蓋部材と軸受部の内部構成を簡略に示す要部拡大断面図である。図23は、図21の蓋部材が過負荷により軸受部から離脱する際のメカニズムを説明する図である。
【0084】
なお、図21においても、上述の図18と同様に、後述するテーパー軸21Ea,テーパー状軸受穴14Eb等の主要構成部は、実際には蓋部材13E,軸受部14Eの内部に配設されているものであるので、図面としては点線を用いて示すべきところであるが、これら主要構成部を説明するのに際して図面を参照する際の煩雑化を避けるために、図21においては、これらの要部構成部を実線で示すものとする。
【0085】
本実施形態の電子機器であるカメラ1の基本的な構成は、上述の第5の実施形態と略同様であり、蓋部材及び軸受部の構成が異なるのみである。つまり、上述の第5の実施形態の構成とは逆に、蓋部材13E側にテーパー軸21Ea,付勢部材21Ebを設け、軸受部14E側にテーパー状軸受穴14Ebを設けた点が異なる。したがって、カメラ1の全体構成については図1〜図4を参照し、同様の部材については同じ符号を付して説明する。
【0086】
本実施形態のカメラ1における蓋部材13Eは、図21に示すように、また上記各実施形態と略同様に細長形状を有して形成されている。蓋部材13Eの長手方向の一端である基端部13Ebには、上述の第1の実施形態における回動軸21に代わる一対のテーパー軸21Eaと、これを付勢する付勢部材21Ebを、蓋部材13Eの基端部13Ebに形成される円筒形状の内部空間13Ee内に有している。
【0087】
上記一対のテーパー軸21Eaは、基端部13Ebの両側面から蓋部材13Eの長手方向に対して直交する方向であって外部に向けてそれぞれ突出するように設けられている。テーパー軸21Eaは、先端が外部に向けて先細となるテーパー形状に形成された軸部材であり、基端側が先端部に比べて大径に形成されている。なお、テーパー軸21Eaの基端側の直径は、蓋部材13Eの内部空間13Eeの口元内径よりも大径となるように形成されている。また、テーパー軸21Eaの先端側の直径は、内部空間13Eeの開口部よりも小径となるように形成されている。
【0088】
また、内部空間13Ee内には、一対のテーパー軸21Eaを外部に向けて押圧する付勢部材21Dbが収納されている。付勢部材21Ebは、例えば伸長性のコイルばね等からなり、一対のテーパー軸21Eaの間に挟持されるように配置されている。なお、付勢部材21Ebは、基端部13Ebの側方に設けた穴13Efから圧縮挿入され、2つのテーパ軸21Eaの間に収納される。これにより、付勢部材21Dbは、内部空間13Ee内から一対のテーパー軸21Eaのそれぞれを外部に向けて押圧している。このとき、上述したように、テーパー軸21Eaの基端直径が内部空間13Eeの口元内径よりも大径となるように、かつ同テーパー軸21Eaの先端直径が内部空間13Eeの開口部よりも小径となるように形成されているので、テーパー軸21Eaは、付勢部材21Ebの付勢力により先端が蓋部材13Eの基端部13Ebの両側面より外部に突出した形態で、かつ外部に飛び出さないように配置されている。
【0089】
一方、軸受部14Eには、蓋部材13Eを軸受部14Eに組み付けたときに、一対のテーパー軸21Eaの各先端が対向する部位に、テーパー状軸受穴14Ebが形成されている。このテーパー状軸受穴14Ebは、軸受部14Eの壁面より内部に向けて先細となるテーパー形状に形成され、上記テーパー軸21Eaの先端形状と略同形状に形成されている。これにより、テーパー軸21Eaの先端が、軸受部14Eのテーパー状軸受穴14Ebに対して回動自在に嵌合した状態となったとき、蓋部材13Eは軸受部14Eに対して回動自在に軸支されることになる。その他の構成は、上述の第5の実施形態と略同様である。
【0090】
このように構成された本実施形態における蓋部材13Eを閉位置から開方向へと移動させる際の作用は、上述の第5の実施形態と略同様である。
【0091】
即ち、蓋部材13Eが閉位置にある状態から、第1の開位置を経て第2の開位置(全開位置)へと移動する際には、図22に示す状態で、蓋部材13Eは軸受部14Eに回動自在に軸支されている。
【0092】
即ち、この状態においては、蓋部材13Eに設けられた一対のテーパー軸21Eaは、付勢部材21Ebの付勢力によって、その先端が蓋部材13Eの基端部13Ebの両側面より突出した状態で、それぞれ対応するテーパー状軸受穴14Ebに嵌合した状態にある。このとき、テーパー軸21Eaは、それぞれが付勢部材21Ebによって図22の矢印E1方向に押圧されている。したがって、蓋部材13Eは、閉位置から第1の開位置を経て第2の開位置(全開位置)との間において、テーパー軸21Eaにより回動自在に軸支されている。
【0093】
蓋部材13Eが第2の位置(全開位置:不図示;上述の各実施形態参照)にあるとき、さらなる過負荷が蓋部材13Eに付与されると、蓋部材13Eに対する過負荷は、図23において矢印Fで示す方向に働く。すると、蓋部材13Eは、矢印F方向に移動する。このとき、テーパー軸21Eaの先端は、テーパー状軸受穴14Ebのテーパー面に押されつつ、付勢部材21Ebの付勢力に抗して該付勢部材21Ebを圧縮する方向(図23の矢印E2方向)へと移動する。これにより、テーパー軸21Eaとテーパー状軸受穴14Ebとの嵌合状態は徐々に外れる。やがて、蓋部材13Eは軸受部14Eから離脱する。
【0094】
以上説明したように上記第6の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
[第7の実施形態]
図24は、本発明の第7の実施形態の電子機器であるカメラにおける蓋部材のみを取り出して示す外観斜視図である。
【0096】
本実施形態の電子機器であるカメラ1の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様であり、蓋部材の構成が異なるのみである。つまり、本実施形態における蓋部材13Fは、少なくとも基端部13Fbの部位の材質を柔軟で弾性を有する材質によって構成した点が異なる。そして、この構成とすることにより、本実施形態の蓋部材13Fは、第2の位置(全開位置)にあるときに過負荷が加わった場合には、上述の各実施形態における蓋部材とは異なり、軸受部から離脱することなく蓋部材13Fが柔軟に弾性変形し、図5に示すように、蓋部材13Fの先端部近傍の部位がカメラ1の外装面に当接することで、蓋部材13Fの開方向への回動が停止する。この状態においても、蓋部材13Fは、軸受部から離脱することなく、また破損するようなこともなく、当該過負荷を自身の柔軟性によって吸収するし、よって、過負荷による破損を防いでいる。その他の構成は、上述の各実施形態の構成と略同様に構成し得る。
【0097】
以上説明したように上記第7の実施形態によれば、蓋部材13Fの少なくとも基端部13Fbの材質を柔軟で弾性を有するものとしたことによって、蓋部材13Fが離脱することなく、蓋部材13F,軸受部等の破損を防止することができる。
【0098】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、デジタルカメラ等の撮影機能に特化した電子機器である撮影機器に限られることはなく、撮影機能を備えた他の形態の電子機器、例えば携帯電話,録音機器,電子手帳,パーソナルコンピュータ,ゲーム機器,テレビ,時計,GPS(Global Positioning System)を利用したナビゲーション機器等、各種の撮影機能付き電子機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,1F……カメラ(電子機器)
13,13A,13B,13C,13D,13E,13F……蓋部材
13a……係止凸部
13Ca……クリック凹部
13b,13Ab,13Bb,13Cb,13Db,13Eb,13Fb……基端部
13c……貫通孔
13Bc……テーパー凸部
13Cc……貫通孔
13Dc……テーパー凹部
13Ee……内部空間
14,14A,14B,14C,14D,14E,14F……軸受部
14a,14Aa……切欠
14b,14Ab,14Cb……軸受孔
14Bb……テーパー凹部
14Eb……テーパー状軸受穴
14c……段差部
14Cd,14Dd……収納凹部
14e,14Ee……回動規制部
21,21A 回動軸
21Da,21Ea……テーパー軸
21Db,21Eb……付勢部材
22……係止ばね
23a……クリック溝
23Ca……クリック凹部
23b……クリック凸部
24a……ボール
24b……付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器において、
上記機器に回動可能に設けられ、該回動が限界となる全開位置において、外力が開方向に加えられたときに弾性変形し、回動移動する先端部のみが上記機器の外装面に当接して該回動が停止する蓋部材と、
上記蓋部材を、全閉位置と全開位置との間に設定される第1の開位置を維持する開状態維持手段と、
を具備して構成されたことを特徴とした電子機器。
【請求項2】
上記蓋部材は、開方向への外力が加わったときに変形可能となるように一部が凹状に形成されていることを特徴とした請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
上記蓋部材の上記全閉位置における上記蓋部材に覆われる機器本体側の部位は、電池室,記憶媒体収納室又は外部機器接続用コネクタの少なくともいずれか一つであることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
開閉可能な蓋部材を有する電子機器において、
上記蓋部材を回動させるための軸部と、
上記蓋部材を回動させるため、上記軸部と嵌合している軸受部と、
上記蓋部材を、上記全閉位置と全開位置との間での第1の開位置を維持させる開状態維持手段と、
上記蓋部材の全開位置において、上記蓋部材に開方向への外力がさらに加えられたときに上記軸部と上記軸受部との嵌合状態を解除する嵌合解除手段と、
を具備したことを特徴とした電子機器。
【請求項5】
上記軸部は上記蓋部材に設けられ、上記軸受部は上記機器の本体側に設けられていることを特徴とした請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
上記軸部は上記機器の本体側に設けられ、上記軸受部は上記蓋部材に設けられていることを特徴とした請求項4記載の電子機器。
【請求項7】
上記蓋部材の上記全閉位置における上記蓋部材に覆われる機器本体側の部位は、電池室記憶媒体収納室又は外部機器接続用コネクタの少なくともいずれか一つであることを特徴とした請求項4,5,6のうちのいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2012−83494(P2012−83494A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228971(P2010−228971)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】