説明

電子機器

【課題】第三者に知られることなく操作者のみが認証情報となる文字を確認できるようにする。
【解決手段】文字を表示する表示部と、接触を検出する接触検出部と、前記接触検出部に接触している接触物に触感を呈示する触感呈示部と、所定の文字を伏字にして前記表示部に表示するように制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記接触検出部により、前記表示部に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出されると、前記伏字に対応する文字に関連付けられた触感を前記接触物に呈示するように前記触感呈示部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触検出部を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の携帯端末において、タッチセンサ等の接触検出部を備えた電子機器が増えてきた。操作者による接触の検出方式は、抵抗膜方式、静電容量方式等、種々の検出方式が知られている。いずれの方式も操作者の指やスタイラスペン等による接触物の接触を検出する。
【0003】
接触検出部を備えた電子機器として、接触検出部と表示部とが重畳され形成されるタッチパネルが知られている。タッチパネルは、接触検出部の裏面に配置された表示部に、文字やボタン等の画像(オブジェクトという)が表示される。表示部に表示されたオブジェクトを操作者が押圧すると、接触検出部は、押圧位置における接触を検出するようになっている。また、所定の押圧荷重異常で押圧された場合に、操作者に触感応答を行う技術も知られている。
【0004】
ところで、ユーザ認証の際に、操作者によって入力された暗証情報が伏字として表示される電子機器がある。この場合、認証情報となる文字が伏字で表示されることにより第三者にその文字を知られることが無いため、セキュリティの面で役にたっている。なお、従来、認証情報となる文字を第三者に知られないようにするために覗き見防止用シールを表示部に貼付することが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−293644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、認証情報となる文字が伏字として表示部に表示された場合、操作者自身もその文字を確認することができない。このため、操作者が意図する文字が制御部に認識されているか否かを確認することができる電子機器の出現が望まれていた。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するためになされたもので、第三者に知られることなく操作者のみが認証情報となる文字を確認できる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために本発明の電子機器は、文字を表示する表示部と、接触を検出する接触検出部と、前記接触検出部に接触している接触物に触感を呈示する触感呈示部と、所定の文字を伏字にして前記表示部に表示するように制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記接触検出部により、前記表示部に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出されると、前記伏字に対応する文字に関連付けられた触感を前記接触物に呈示するように前記触感呈示部を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記制御部は、触感呈示部を駆動する駆動信号の振動振幅の大きさを制御することにより、接触検出部に接触している接触物に呈示される触感の大きさを制御し、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を接触物に呈示するように触感呈示部を制御する場合における駆動信号の振動振幅の大きさを、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を接触物に呈示する処理と異なる処理に関連して接触物に触感を呈示するように触感呈示部を制御する場合における駆動信号の振動振幅の大きさと比較して小さくするように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第三者に知られることなく操作者のみが認証情報となる文字を確認できる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子機器の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子機器の動作を画面上に展開して示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
【0013】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る電子機器の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る電子機器10は、接触検出部11と、表示部12と、触感呈示部13と、記憶部14と、制御部15と、により構成される。
【0014】
接触検出部11は、通常は表示部12の前面に配置され、表示部12に表示された文字等のオブジェクトに対する操作者の指やスライラスペン等の接触物による接触、または接触の解除を接触検出部11の入力面において検出する。また、接触検出部11は、入力面に対する接触位置を検出し、検出した接触位置を制御部15へ出力する。
【0015】
接触検出部11による接触位置の検出は、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式等、光学式等、周知の方式で実現される。なお、光学式の場合、接触検出部11は、赤外線等が接触物により遮られた位置を検出するため、接触検出部11が接触を検出するためには、接触物の物理的な接触は不要である。つまり、接触検出部11が検出する接触は、物理的な接触に限定されない。
【0016】
表示部12は、文字等のオブジェクトを画像で表示する。表示部12は、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や、有機ELパネル(OELD:Organic Electroluminescence Display)等を用いて構成される。
【0017】
なお、接触検出部11と表示部12とは一体化されていてもよい。接触検出部11と表示部12の両機能を一体化した装置の構成としては、LCDパネルが有するマトリクス状配列の画素電極群に、フォトダイオード等の複数の光電変換素子を規則的に混在させたものがある。この装置は、LCDパネル構造によって画像を表示する一方で、パネル表面の所望の位置に接触するペンの先端で液晶表示用のバックライトの光を反射し、この反射光を周辺に配置された光電変換素子が受光することにより接触位置を検出することができる。
【0018】
触感呈示部13は、例えば、振動モータ(偏心モータ)等に基づき、接触検出部11の入力面を間接的に振動させることにより、入力面に接触している操作者の指等の接触物に対して触感を呈示する。また、入力面に圧電素子を配設することで入力面を直接的に振動させるように構成しても良い。また、触感呈示部13は、接触検出部11の入力面に貼ったフィルムの電荷を制御する等により、機械的な振動を伴わずに接触物に対して触感を呈示してもよい。
【0019】
なお、触感呈示部13を偏心モータにより構成し、入力面を間接的に振動させると、電子機器全体が振動するため、例えば、机の上などで偏心モータが振動すると、机に振動が伝わり、周囲の人に振動したことが気づかれてしまう場合がある。一方、触感呈示部13を圧電素子により構成し、入力面を直接的に振動させると、電子機器全体が振動することがないため(または、たとえ、振動したとしても、触感呈示部13を偏心モータにより構成した場合と比較して、電子機器全体が振動する量が小さいため)、周囲の人に入力面が振動したことが気づかれるおそれが低減する。
【0020】
本実施形態では、接触物に対して呈示する触感として、触感Aと、触感Bの2種類の振動パターンが用意される。ここで、触感Aとは、操作者が、表示部12に表示された伏字に振れたことを示す振動パターンであり、触感Bとは、伏字に対応する文字に関連付けられた振動パターンである。なお、触感Bとして、数字であればその数字回数分振動させ、文字であればモールス信号等に変換する等が考えられる。これら振動パターンは、後述する記憶部14の所定の領域に記憶されているものとする。
【0021】
記憶部14は、半導体メモリ等で構成することが出来、各種情報や電子機器10を動作させるためのプログラム等を記憶するとともに、ワークメモリとしても機能する。特に、本実施形態では、予め登録される、例えば、5桁の文字からなる暗証情報と、触感A、触感Bの2種類の振動パターンが記憶されている。
【0022】
制御部15は、所定の文字を伏字にして表示部12に表示するように制御する機能を有する。制御部15はまた、接触検出部11により、表示部12に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出されると、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を接触物に呈示するように触感呈示部13を制御する機能を有する。制御部15は、例えば、マイクロプロセッサを用いて構成され、この場合、マイクロプロセッサは、記憶部14のプログラム領域に記憶されたプログラムを逐次読み出して実行することにより上記した機能を実現する。
【0023】
(実施形態の動作)
図2は、本実施形態に係る電子機器10の動作を示すフローチャートであり、図3は、その動作を画面上に展開して示した模式図である。以下、図2、図3を参照しながら本実施形態に係る電子機器10の動作について詳細に説明する。
【0024】
表示部12には、例えば、図3(a)に5桁の*マークで示す伏字が表示されているものとする。図2において、制御部15は、まず、操作者による伏字に対応する位置への接触を検出すると(ステップS101“YES”)、触感呈示部13を制御して触感Aを呈示する。ここでいう触感Aとは、操作者に対し、伏字への接触があったことを通知する振動パターンに基づく触感である。図3(b)に、表示部12に表示された伏字へ操作者による接触があった場合に、電子機器10が触感Aを呈示している様子が示されている。
【0025】
続いて制御部15は、マルチタッチ等、表示部12に表示された伏字に対応する位置への操作者による特定の操作があったことを検出すると(ステップS103“YES”)、触感呈示部13を制御して、それら伏字に対応する文字に該当する触感Bを呈示する(ステップS104)。ここでいう触感Bとは、あらかじめ記憶部14に記憶されている、文字毎に対応して用意された振動パターンである。制御部15は、記憶部14から、認識した文字に対応する振動パターンを読み込み、触感呈示部13によりその文字に対応する、例えばモールス信号等を出力する。図3(c)に、表示部12に表示された伏字へ操作者によるマルチタッチがあった場合に、電子機器10が触感Bを呈示している様子が示されている。
【0026】
なお、ステップS101において、表示部12に表示された伏字に対応する位置への接触が検出されなかった場合(ステップS101“NO”)、あるいは、ステップ104において、所定の操作が検出されなかった場合に(ステップS103“NO”)、制御部15は処理を終了する。
【0027】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る電子機器10によれば、制御部15は、接触検出部11により、表示部12に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出されると、伏字に対応する文字に関連付けられた触感(触感B)を接触物に呈示するように触感呈示部13を制御する。このように、操作者が伏字に接触することにより、伏字として表示された文字に対応する触感を呈示するため、操作者のみが第三者に知られること無く暗証情報を確認することができる。暗証情報が確認出来ることにより利便性が向上すると共に操作者による誤入力を低減することが出来る。特に、複数回の認証が失敗して認証にロックが掛った場合等における操作者の負担を軽減できる。
【0028】
なお、本実施形態に係る電子機器10は、暗証情報に限らず、アドレス帳等の個人情報を通知する場合にも同様に適用可能である。また、これら情報を制御部15が認識するために取り込む場合の他に、例えば、ブラウザにおいて、伏字で示された個所に対応する文字を確認する場合にも同様に適用が可能である。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0030】
本発明は、電子機器の筐体に振動モータ(偏心モータ)を配設し、かつ、入力面に圧電素子を配設している場合、制御部は、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を接触物に呈示するように圧電素子を制御してもよい。このように、制御部が、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を接触物に呈示する際に、振動モータ(偏心モータ)ではなく、圧電素子を制御して接触物に触感を呈示することにより、電子機器全体が振動することがないため、たとえ、机の上などにおいて電子機器を操作していた場合であっても、振動が机に伝わることがなく、結果、振動音などが周りに知れ渡ってしまうというおそれを防止することができる。
【0031】
本発明においては、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を接触物に呈示するため、触感呈示に際して振動音が発生すると、振動音により第三者に伏字に対応する文字が知られてしまうおそれがある。たとえば、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を呈示するに際して3回振動音が発生した場合、3回の振動音を聞いた第三者が、認証情報に「3」に関連する文字が用いられているということを知ってしまうことになる。したがって、本発明においては、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を接触物に呈示するに際して発生する振動音を小さくすると好適である。ここで、振動音を小さくするために、触感呈示部が振動する大きさを全ての処理において一様に小さくした場合、マナーモード時の着信通知に係る触感呈示など、ユーザに触感呈示が確実に行われるべき処理において問題が生じることになる。
【0032】
したがって、本発明は、接触検出部により表示部に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出された場合において触感呈示部が触感を呈示するために振動する振動の大きさが、接触検出部により表示部に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出された場合を除く他の場合において触感呈示部が触感を呈示するために振動する振動の大きさと比較して、小さくなるようにしてもよい。ここで、接触検出部により表示部に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出された場合を除く他の場合とは、たとえば上述したマナーモード時の着信通知の場合である。なお、本発明は、触感呈示部が触感を呈示するために振動する振動の大きさを制御するために、触感呈示部を駆動する駆動信号の振動振幅の大きさを制御してもよい。
【0033】
本実施の形態においては、伏字に対応する位置の接触を検出すると、触感Aを呈示し、その後、所定の操作を検出すると、伏字に対応する文字に関連する触感Bを呈示するが、本発明は、触感呈示部が伏字に対応する文字に関連する触感Bを呈示するために振動する振動の大きさが、触感呈示部が触感Aを呈示するために振動する振動の大きさと比較して小さくなるようにしてもよい。
【0034】
また、本発明は、伏字に対応する文字に関連付けられた触感を接触物に呈示する場合、英字などを、携帯電話(テンキー)による入力方式に沿った振動パターンで呈示してもよい。例えば、携帯電話(テンキー)による入力方式で「e」を表示する場合は、テンキーの「3」を2回押下することにより表示されるので、伏字に対応する文字が「e」である場合、電子機器は、最初に3回振動し、一拍置いて2回振動する振動パターンで、接触物に触感を呈示してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 電子機器
11 接触検出部
12 表示部
13 触感呈示部
14 記憶部
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字を表示する表示部と、
接触を検出する接触検出部と、
前記接触検出部に接触している接触物に触感を呈示する触感呈示部と、
所定の文字を伏字にして前記表示部に表示するように制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記接触検出部により、前記表示部に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出されると、前記伏字に対応する文字に関連付けられた触感を前記接触物に呈示するように前記触感呈示部を制御することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記接触検出部により前記表示部に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出された場合において前記触感呈示部が触感を呈示するために振動する振動の大きさが、前記接触検出部により前記表示部に表示された伏字の位置に対応する位置の接触が検出された場合を除く他の場合において前記触感呈示部が触感を呈示するために振動する振動の大きさと比較して、小さくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−11923(P2013−11923A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142483(P2011−142483)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】