説明

電子機器

【課題】人体に帯びた静電気の放電によって及ぼす回路部への影響を防止できるようにする。
【解決手段】筐体側面に設けた開口部2から筐体内の電源部12にスライドさせることによって、円盤状電池12cの挿入又は取出しが可能な電池ホルダー32を有するカード型の電子キー10において、電池ホルダー32の挿入が行われた際、人体の指33と円盤状電池12cが接触可能な状態(102)においては、電源部12に設けられた負極端子12bの端部と円盤状電池12cの端部との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための3mm以上の間隔を筐体内に設け、負極端子12bと円盤状電池12cとが接触可能な状態においては、人体の指33と円盤状電池12cとの間に、空気の絶縁破壊を発生させないための3mm以上の間隔を筐体内に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電池を駆動電源として動作する電子機器に関し、特に薄型の形状を有するカード型やキーホルダー型のような携帯型の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の通信対象と、電波を送受信するアンテナを介して無線通信を行い、その通信対象に搭載された装置を操作することができる回路部を備えた電子キー(携帯用電子機器)が一般に知られている。さらにこのような電子キーとしては、携帯性を良くするため、厚みを薄くしたカード型電子キーも知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1のカード型電子キーは、スライド方式の電池ホルダーを有しており、電子キー本体の側面に設けられた開口部に、円盤状電池を脱着自在に挿入又は取出し可能に構成されている。また、その円盤状電池は電極端子を介して回路基板上に形成された回路部の駆動電力として供給している。
【0003】
ところで、この特許文献1の電子キーにおいては、電池交換の際の静電防止の対策については何ら記載されていない。そのため静電気を帯電した人体が、電池と直接触れながら電池交換する際に、その静電気が電子キーの電池及び電極端子を介して回路基板に放電され、それにより回路基板上にあるIC等の回路部の電子部品が誤動作を起こしたりするなどの悪影響を及ぼす恐れがある。
【0004】
このような電池交換時における静電防止の対策例として、例えば電池蓋をはめ込むか否かの状態を、回路基板へ電源を供給するか否かのスイッチとして利用することによって、電池交換時などにユーザーの帯びた静電気が電池収納部から電子機器本体内の回路の電源ラインに放電するのを防止できるようにしたものがある(例えば特許文献2参照)。つまりこのスイッチによって、電池蓋が正しく嵌め込まれていないときは、回路基板の電源配線と電池収納部内の電極端子を物理的に切り離し、電池蓋が正しく嵌め込まれたときは、回路基板の電源配線と電極端子が接触するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−134198号公報
【特許文献2】特開平4−372195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2のような電池蓋を電池のスイッチとして用いることによって静電防止の対策を行う技術は、電源ラインの端末の接点に人体が直接触れるときの静電防止対策である。しかし、静電気の問題は人体が直接触れること以外に、人体に帯びた静電気の放電も考慮する必要があるが、上記特許文献2では静電気の放電についての対策は何ら講じられておらず、またそのような課題もない。
【0007】
そのため、たとえ電池蓋が電子機器本体に挿入されておらず、回路基板へ電源を供給する電池のスイッチがオフの場合であっても、帯電した人体と電極間で静電破壊が起きる距離以下に近づくと、電極端子を経由して回路基板の電源配線への空気の絶縁破壊による放電が発生し、IC等の回路部に誤動作などの悪影響が発生する恐れがある。
【0008】
そして、この特許文献2に見られる静電防止対策を特許文献1に適用した場合を考慮しても、人体の指から直接電池に触れた場合に生じる静電対策は可能であっても、人体の指から直接触れない場合に発生する静電気の放電による問題に対しては、何ら解決するに至らない。
【0009】
そこで本発明は上記問題に鑑み、人体に帯びた静電気の放電によって及ぼす回路部への影響をより確実に防止できる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するために請求項1の電子機器は、電池を駆動電源として動作する回路部を有する回路基板に設けられ、回路部と配線を介して接続された電極端子を備え、回路基板と電極端子が筐体の内部に設けられた電子機器であって、
電極端子に対して、筐体の内部へ電池が挿入された際、
筐体の内部に挿入された電池と人体とが接触可能な状態においては、電極端子と電池との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための第1の所定値以上の間隔を筐体内に設け、
筐体の内部に挿入された電池と電極端子とが接触可能な状態においては、人体と電池との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための第2の所定値以上の間隔を筐体内に設けたことを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、人体を介して空気の絶縁破壊によって生じる静電気の放電を防止しながら、電池交換を行うことができる。つまり、空気が人体を介して絶縁破壊され、その人体に帯びた静電気の放電によって及ぼすIC等の回路部への誤動作などの悪影響をより確実に防止できる。
【0012】
請求項2の電子機器は、電池を駆動電源として動作する回路部を有する回路基板に設けられ、回路部と配線を介して接続された電極端子とを備え、回路基板と電極端子が筐体の内部に設けられた電子機器であって、
電極端子と電池を間接的に接触させることにより電気的に導通状態とすることができる補助的部材が電池と電極端子との間に設けられており、
電極端子に対して、筐体の内部へ電池が挿入された際、
筐体の内部に挿入された電池と人体とが接触可能な状態においては、電池と接する補助的部材と電極端子との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための第1の所定値以上の間隔を筐体内に設け、
筐体の内部に挿入された電池と接する補助的部材と電極端子とが接触可能な状態においては、人体と電池との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための第2の所定値以上の間隔を筐体内に設けたことを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、人体を介して空気の絶縁破壊によって生じる静電気の放電を防止しながら、電池交換を行うことができると共に、電池と直接触れる必要がなくなるため、補助的部材の形状の工夫によって、補助的部材と電極端子との接触位置を設計する自由度を向上させることができる。
【0014】
請求項3の電子機器では、第1の所定値及び第2の所定値は、3mmであることを特徴としている。
【0015】
この構成によれば、人体と電池が接触可能な状態においては、電極端子と電池とが3mm以上離れる間隔となるよう設計し、また電極端子と電池が接触可能な状態においては、人体と電池とが3mm以上離れる間隔となるよう設計する。3mm以上間隔を空けることにより空気の絶縁破壊電圧は、一般の人体の帯電電位(約10kV)よりも大きくなるため、絶縁破壊の発生を防止できる。
【0016】
請求項4の電子機器は、スライド方式で電池交換を行うカード型で構成されていることを特徴としている。
【0017】
この構成により、本体の強度が要求されるために、スライド方式で電池交換を行うようなカード型の電子機器で好適に静電防止対策を実施できる。
【0018】
請求項5及び請求項6の電子機器では、筐体には電池の挿入又は取出しが可能な開口部が設けられており、開口部に対して着脱自在に設けられると共に開口部を塞ぐことができ、かつ電池を搭載可能な電池ホルダーをさらに備え、電池が搭載された電池ホルダーが、電池が開口部から筐体の内部に挿入されて開口部が塞がれた場合に、電極端子と電池(請求項5)又は補助的部材(請求項6)が接触するよう構成されていることを特徴とする。
【0019】
この電池ホルダーを用いることで、電池をスムーズに筐体から挿入又は取出しが可能となる。また電池ホルダーが完全に筐体に挿入され、開口部が塞がれた場合は、人体(指など)と電池、又は補助的部材との直接的な接触を防止しながら回路部へ電源供給することができるため、好適に静電防止対策を実施できる。
【0020】
請求項7の電子機器では、回路部は、電波を送信又は受信するアンテナの電波の信号を制御するものであり、そのアンテナ及び接地電極は、筐体の内部で互いに重ならないように配置されていることを特徴としている。
【0021】
この構成によれば、電子キー全面に接地電極(GND)を配置することができず、負極端子での放電がICなどの回路部の誤動作などの原因となる場合でも、静電防止を図りながらアンテナ利得も確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における電子キーシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における電子キーの内部構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態における電子キーの内部構成を示す上面図である。
【図4】本発明の実施形態における電池ホルダーの構成を示す上面図である。
【図5】本発明の実施形態における円盤状電池が装着された電池ホルダーを、開口部からスライドさせることによって挿入又は取出しを行う図である。
【図6】本発明の実施形態における電池ホルダーの変形例の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の電子機器を電子キーシステムに具体化した一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0024】
図1は電子キーシステム1の構成を示すブロック図を示している。この電子キーシステム(リモート・ドア・ロック・システムとも言う)1は、電子キー10(本発明の電子機器に相当)の遠隔操作によって車両20のドアを施錠・開錠する機能であり、電子キー10に取り付けた送信機能と、車両内の受信機能で構成されている。
【0025】
電子キー10は、車両固有のIDコードを暗号通信IC11より送信部13に送信する。送信部13は送信アンテナ14から電波(300〜400MHz帯)を使用してそのIDコードの信号を車両20に送信する。尚、電子キーの各機能は電源部12からの電源供給を受けて動作している。
【0026】
車両20では、受信部23が受信アンテナ24を介して電子キー10から送信されたIDコードを受信・解読し、ボデーECU(ECU:Electronic Control Unit)21に送信する。そしてボデーECU21に備わるIDコード照合部22によってIDコードを照合する。このIDコードが正しいと判断すると、ドア25を施錠・開錠するように制御する。
【0027】
図2、図3では、電子キー10の内部構成を示す内面図を示す。図2は円盤状電池12cを収納したときの電子キー10を側面から見たときの断面図であり、図3は円盤状電池12cを収納しないときの電子キー10を上面から見たときの上面図である。この図3の上面図は、電源部12の電極端子(正極端子12a、負極端子12b)の配置が見やすくなるよう、円盤状電池12cや電池ホルダー32を外したときの図としている。尚、円盤状電池12cは、ボタン型電池又はボタン型電池よりも薄いコイン型電池を用いている。
【0028】
図2において、樹脂製(絶縁)で形成されたカード型の筐体30の中に、回路基板31が配置されている。この回路基板31上には、通信暗号IC11や送信部13からなる回路部(非図示)と、送信アンテナ14、電極端子(正極端子12a、負極端子12b)が形成されている。また、図示しないが電子キー10には車両のドアを開錠・施錠させるための操作ボタン機能も備わっており、筐体30の外側からその操作ボタンが押すことができるように構成されている。
【0029】
電源部12は、回路基板31の一端に設けられ、回路部と配線を介して接続された電極端子及びその電極端子の正負極にそれぞれ対応して同極で接触している円盤状電池12cを備えている。そしてこの回路部は、駆動電源となる円盤状電池12cから電源供給されることによって駆動する。
【0030】
また、図2の電源部12に配置された円盤状電池12cは、筐体30内の側面に設けられた開口部2からスライド方式によって電源部に収納可能な樹脂製(絶縁)の電池ホルダー32上に載せられ、電源部12に収納されている。このような円盤状電池12cを搭載可能な電池ホルダー32を用いることで、円盤状電池12cを着脱自在にスムーズに筐体30(電源部12)から挿入又は取出しが可能となる。
【0031】
また、この開口部2のサイズは円盤状電池12cを含む電池ホルダー32の収納が可能で、人体の指が開口部2から筐体30(電源部12)内に入り込まない(侵入できない)程度の大きさで形成されている(もし円盤状電池12cのサイズが20mm×3.2mmとすると、電池ホルダー32のサイズ及び人体の指が開口部に入り込まないサイズを考慮して開口部2は例えば30mm×5.0mmと設計する)。
【0032】
尚、このようなカード型の電子キー10では、本体の強度が要求されるために、円盤状電池12cの上部に電池蓋をかぶせて収納する据え置き方式よりも、開口部2近傍の強度が確保できるスライド方式で電池交換を行うことが好ましい。
【0033】
図3において、円盤状電池12cを電源部12に挿入した際は、負極端子12bが先に円盤状電池12cと接触し、次に正極端子12aが接触するよう電極端子が配置されている。尚、この負極端子12bは、バネ弾性を有するりん青銅などの材料を山形に成型し、その成型した頂点部分が円盤状電池12cの負極と接触できるよう構成されている。
【0034】
図4では、電池ホルダー32の上面図を示している。電池ホルダー32は電源部12に収納された際に、筐体30(ここでは開口部2の端に窪んで形成された係止部)としっかり嵌め合わせるために係合爪(32a、32b)が設けられている。このように電池ホルダー32は電池収納時に開口部2を塞ぐことのできる電池カバー(電池の蓋)としての役割も担っている。
【0035】
また、電池ホルダー32には、円盤状電池12cが電池ホルダー32から簡単に落下しないよう、また電源部12へ収納時に電極端子との接触の位置ずれが生じないように、円盤状電池12cの正極が嵌め込まれるサイズの円状の溝32cが形成されている。さらに電源部12へ収納時に円盤状電池12cの負極が負極端子12bと接触されるため、この円状の溝32cとほぼ中心が同じとなるような孔32dが設けられている。
【0036】
そして、この電池ホルダー32の電極端子と接触する側には、電源部12へ収納時に円盤状電池12cの正極及び負極が正極端子12a及び負極端子12bと直接接触することができるように、円状の溝32cと孔32dの一部を切り欠く切り欠き部32eが設けられている。
【0037】
このような電池ホルダー32を用いることで、円盤状電池12cの挿入又は取出しをスムーズに行えると共に、収納時に人体が直接触れることなく円盤状電池12cと電源端子とをより安全に接触させることができる。
【0038】
図5は、人体が開口部2から電池ホルダー32をスライドすることによって、円盤状電池12cを筐体30内の電源部12に挿入して収納する、又は円盤状電池12cを筐体30の外へ取出すときの説明図である。この円盤状電池12cが挿入又は取出される作業の状況をそれぞれ101〜104に分けて説明する。
【0039】
101は、電池ホルダー32の上面に円盤状電池12cが装着され、開口部2から筐体30内に電池ホルダー32が一部挿入された、又は筐体30外に大部分が取出されたときの状況である。また、円盤状電池12cの負極は、負極端子12bとまだ接触していない。
【0040】
この状況では人体の指33と円盤状電池12cとが直接接触できる状態になっている。また、この状況のときの負極端子12bの端部と円盤状電池12cの端部との(最短距離の)間隔3a1は、空気の絶縁破壊を気にしなくてよい程十分離れており、例えば10mmである。
【0041】
102は、電池ホルダー32に装着された円盤状電池12cが、筐体30の開口部2の切り口と丁度接する辺りまで、挿入された、又は取出されたときの状況である。この状況では電池ホルダー32上面で開口部2の切り口傍にある人体の指33と円盤状電池12cとが直接接触できる限界状態(つまり互いにぎりぎり接触できる状態)になっている。
【0042】
この状況のときの筐体30の内部(=筐体内)に設けた負極端子12bの端部と円盤状電池12cの端部との間にある(最短距離の)間隔3a2(本発明の空気の絶縁破壊を発生させないための第1の所定値以上の間隔に相当)は、3mmである。
【0043】
ここで間隔3a2を3mmとしている理由について説明する。冬季の乾燥期に人体に帯電する静電気電圧は10kV(キロボルト)以上に達することがあり、また、空気の絶縁破壊電界は35.5kV/cmである。そのため、例えばこの状態での間隔3a2を少なくとも3mmとなるように設計することにより、人体の帯電電位(10kV)よりも大きくなり(35.5kV/cm×0.3cm≒10.7kV)、静電気の放電が原因で回路部に電流が流れてしまうことで発生する絶縁破壊を防止できる。
【0044】
また、静電気の影響をさらに確実に受けないよう安全性に考慮するのであれば、この筐体内に設けた間隔3a2は3mm以上に設計することが好ましい。例えばその3mmを超える間隔は筐体30のサイズやデザイン、人体が使用する状況(帯電量を想定)などの理由によって決めても良い。
【0045】
また本実施形態において負極端子12bの端部と円盤状電池12cの端部との間にある間隔3a2を、空気の絶縁破壊を発生させないための間隔とした理由を以下説明する。本実施形態のようにアンテナ機能を用いて通信を行うような電子キー10ではこのアンテナ利得を確保する必要がある。もし、アンテナと重なるように接地電極(GND)が電子キー10全面に配置されるような構成とすると、接地電極の電位の安定に繋がるが、アンテナの利得を下げることとなり好ましくない。そのため、もし静電気により負極端子12b側に放電された場合、GND面積が小さいと帯電を小さくできず、電流の逃げ場がない。従って正極端子12a側に放電されたのと同じように、GND側からIC等の回路部へ電流が流れてしまう場合が発生する恐れがある。そのためアンテナと重なるように接地電極(GND)が電子キー10全面に配置されるような構成の場合は、例えば電池ホルダー32の挿入時に先に接触する負極端子12bと円盤状電池12cの間隔3a2を、3mm以上離れるように設計するとよい。このように負極端子12bからの放電によってIC等の回路部の誤動作が起きるような場合に対しても、静電防止対策を図ることができる。
【0046】
103は、電池ホルダー32に装着された円盤状電池12cが、筐体30の内部にほぼ収納されており、電池ホルダー32の大部分が筐体30の内部に挿入された、又は電池ホルダー32の一部が筐体30の外部に取出されたときの状況である。また、円盤状電池12cの正極は、正極端子12aとまだ接触していないが、接触円盤状電池12cの負極は、負極端子12bと接触している。
【0047】
この状況のときの円盤状電池12cの端部と人体の指33の先端部との間にある筐体30内に設けた(最短距離の)間隔3b1(本発明の空気の絶縁破壊を発生させないための第2の所定値以上の間隔に相当)は、3mmである。
【0048】
この間隔3b1が3mmとなるように設計されている理由は、上述した102の3a2の設計思想と同様である。つまり、間隔3b1を3mmとすることで、円盤状電池12cと人体の指33との間で発生した静電気の放電が原因で、円盤状電池12cと接触している電極端子を介して回路部に電流が流れてしまうことで発生する絶縁破壊を防止できる。
【0049】
また、静電気の影響をさらに確実に受けないよう安全性に考慮するのであれば、この筐体30内に設けた間隔3b1も3mm以上に設計することが好ましい。例えば間隔3b1は、筐体30のサイズやデザイン、人体が使用する状況(帯電量を想定)、又は電池ホルダー32に用いる材質の絶縁破壊電界の影響などの理由によって決めても良い。
【0050】
104は、電池ホルダー32に装着された円盤状電池12cが、筐体30の内部に完全に収納されたときの状況である。また、円盤状電池12cの正極及び負極は、対応する正極端子12a及び負極端子12bとそれぞれ接触している。
【0051】
この状況のときの円盤状電池12cと人体の指33との間にある筐体30内に設けた(最短距離の)間隔3b2は、3mm+α(負極端子12bと円盤状電池12cの負極が接触してから、さらに陽極端子12aと円盤状電池12cの陽極が接触するまでのスライド距離。例えば2mm)である。
【0052】
以上、説明した実施形態によれば、スライド方式で電池交換を行うカード型の電子キー10において、空気が人体を介して絶縁破壊され、IC等の回路部へ放電が発生することを防止できる。特に電子キー10のような、スライド方式で電池交換を行う電子機器で特に好適に静電防止対策を実施できる。
【0053】
(その他の実施形態)
以上、本発明の電子機器における実施形態を説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、本発明は特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り適用できる。
【0054】
例えば、ダイオード等を用いた静電破壊保護回路と併用してより静電防止対策を強化してもよい。
【0055】
また本発明は、筐体内へ電池の挿入又は筐体の外部(=筐体外)へ電池の取出しが行われる際、人体と電池が接触可能な状態又は電池と電極端子が接触可能な状態において、空気の絶縁破壊を発生させないための所定値(例えば3mm)以上の間隔を筐体内に設けてあればよいが、電池と電極端子又は人体と電池は必ずしも直接触れる構成でなくとも良く間接的な接触であってもよい。具体的には例えば図6に示すように、電池ホルダー32には導電性金属からなる電池用電極端子32f(正極用)及び32g(負極用)(本発明の補助的部材に相当)が配置されている。この電池ホルダー32は円盤状電池12cを搭載したときに、電池用電極端子32fと円盤状電池12cの正極部分、及び電池用電極端子32gと円盤状電池12cの負極部分が電気的に導通するように構成されている。そして、その電池用電極端子32gと(図6では図示しない)筐体内の電極端子(負極端子12b)とが、空気の絶縁破壊を発生させないための所定値(例えば3mm)以上の間隔を筐体内に設けてあればよい。またこの図6の電池ホルダー32のように、円状の溝32cが欠けないような円盤状電池12cを配置できるようにすることで、より安定してその電池を搭載することができる。
【0056】
また円盤状電池12cと電極端子(正極端子12a及び負極端子12b)とが間接的に電気的に導通することができるため、電池用電極端子32f及び32gの形状を工夫することによって、電池用電極端子32f及び32gと電極端子との接触位置を設計する自由度を向上させることができる。
【0057】
尚、上述した電池用電極端子32f及び32gは、電池ホルダー32側に設けられているが、これに限ることは無く、筐体内の電源部12側に設けてあってもよい。
【0058】
さらに、本発明の電子機器は、スライド方式で電池交換を行うものに限ることは無く、筐体内外へ電池の挿入又は取出しが行われる際、人体と電池が接触可能な状態又は電極端子と電池が接触可能な状態において、空気の絶縁破壊を発生させないための所定値以上の間隔を設けてあればよい。従って、例えば特許文献2のような電池蓋をはめ込むか否かの状態を、回路基板へ電源を供給するか否かのスイッチとして利用する据え置き方式で電池交換を行う構成であっても本発明を好適に実施できる。つまり特許文献2の構成を利用した場合、図示しないが、例えば回路基板に接続される正極端子及び負極端子と、電池と接触する正極及び負極のスイッチ端子とが、電池蓋をはめ込むときまでそれぞれ3mm以上の間隔を有するように構成してあればよい。さらに例えば特開2007−277928号公報などのように、電池を直接スライドさせて開口部から挿入し、電池カバーで蓋をするような、材料・加工等にコストメリットのあるシンプルな構成であってもよい。
【0059】
また、実施形態(図5)では、負極端子12bの端部と円盤状電池12cの端部との間隔を3a2(本発明の空気の絶縁破壊を発生させないための第1の所定値以上の間隔に相当)としているがこれに限ることは無い。例えば筐体30の電源部12内に円盤状電池12cを挿入する場合において、正極端子12aが負極端子12bよりも先に円盤状電池12cと接触するよう構成した場合や、正極端子12a及び負極端子12bが円盤状電池12cとほぼ同時に接触するよう構成した場合は、負極端子12bの代わりに、正極端子12aの端部と円盤状電池12cの端部との間隔を3a2(3mm以上離れた間隔)としてもよい。
【0060】
さらに上述のアンテナ機能を有する電子キー10のような構成は、電子キー10の機能が高性能化し、例えばスマートエントリーシステム(電子キーを取出さずに車両のドアの施錠・開錠ができるシステム)のように、電子キーに送信用及び受信用などの複数のアンテナが用いられる場合であっても、静電防止を図りながらアンテナ利得も確保することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 電子キーシステム
2 開口部
3a 正極端子と円盤状電池との距離
3b 人体(指)と円盤状電池との距離
10 電子キー
11 暗号通信IC
12 電源部
12a 正極端子
12b 負極端子
12c 円盤状電池
13 送信部
14 送信アンテナ
20 車両
21 ボデーECU
22 IDコード照合部
23 受信部
24 受信アンテナ
25 ドア施錠・開錠
30 筐体
31 回路基板
32 電池ホルダー
32a、32b 係合爪
32c 円状の溝
32d 孔
32e 切り欠き部
32f 電池用電極端子(正極用)
32g 電池用電極端子(負極用)
33 人体の指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を駆動電源として動作する回路部を有する回路基板と、
当該回路基板に設けられ、前記回路部と配線を介して接続された電極端子とを備え、
前記回路基板と前記電極端子が筐体の内部に設けられた電子機器であって、
前記電極端子に対して、前記筐体の内部へ前記電池が挿入された際、
前記筐体の内部に挿入された前記電池と人体とが接触可能な状態においては、前記電極端子と前記電池との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための第1の所定値以上の間隔を前記筐体の内部に設け、
前記筐体の内部に挿入された前記電池と前記電極端子とが接触可能な状態においては、前記人体と前記電池との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための第2の所定値以上の間隔を前記筐体の内部に設けたこと
を特徴とする電子機器。
【請求項2】
電池を駆動電源として動作する回路部を有する回路基板と、
当該回路基板に設けられ、前記回路部と配線を介して接続された電極端子とを備え、
前記回路基板と前記電極端子が筐体の内部に設けられた電子機器であって、
前記電極端子と前記電池を間接的に接触させることにより電気的に導通状態とすることができる補助的部材が前記電池と前記電極端子との間に設けられており、
前記電極端子に対して、前記筐体の内部へ前記電池が挿入された際、
前記筐体の内部に挿入された前記電池と人体とが接触可能な状態においては、前記電池と接する前記補助的部材と、前記電極端子との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための第1の所定値以上の間隔を前記筐体の内部に設け、
前記筐体の内部に挿入された前記電池と接する前記補助的部材と、前記電極端子とが接触可能な状態においては、前記人体と前記電池との間に、空気の絶縁破壊を発生させないための第2の所定値以上の間隔を前記筐体の内部に設けたこと
を特徴とする電子機器。
【請求項3】
前記第1の所定値及び前記第2の所定値は、3mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子機器はスライド方式で電池交換を行うカード型で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記筐体には前記電池の挿入又は取出しが可能な開口部が設けられており、
前記開口部に対して着脱自在に設けられると共に前記開口部を塞ぐことができ、かつ前記電池を搭載可能な電池ホルダーをさらに備え、
前記電池が搭載された前記電池ホルダーが、前記開口部から前記筐体の内部に挿入されて前記開口部が塞がれた場合、前記電池と前記電極端子とが接触するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記筐体には前記電池の挿入又は取出しが可能な開口部が設けられており、
前記開口部に対して着脱自在に設けられると共に前記開口部を塞ぐことができ、かつ前記電池を搭載可能な電池ホルダーをさらに備え、
前記電池が搭載された前記電池ホルダーが、前記開口部から前記筐体の内部に挿入されて前記開口部が塞がれた際、前記電池と接する前記補助的部材と前記電極端子とが接触するよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項7】
前記回路部は、電波を送信又は受信するアンテナの電波の信号を制御するものであり、前記アンテナ及び接地電極は、前記筐体内で互いに重ならないように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−84446(P2013−84446A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223565(P2011−223565)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】