説明

電子機器

【課題】 近距離無線通信を利用したデータ通信の高速性を損なうことなく、関連のある複数のファイルを簡単に送信する。
【解決手段】 外部デバイスと近接されることで無線通信を実行する無線通信デバイスを有する電子機器であって、複数のファイルを含むグループを選択する選択手段と、前記無線通信デバイスにより前記外部デバイスと無線通信が可能な状態となった時、前記選択手段により選択されたグループに対応する識別情報を前記外部デバイスに送信する第1の送信手段と、前記識別情報が送信された後、前記グループに含まれる複数のファイルのそれぞれを前記外部デバイスへ送信する第2の送信手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接無線通信を実行する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近接無線通信を利用して電子機器間でファイルの送受信が行われている。特許文献1に記載された通信システムでは、サーバ装置(例えばDVDレコーダやハードディスクレコーダ)から携帯端末に向けて近距離通信によりコンテンツのデータを転送する。通信システムでは、サーバ装置と携帯端末との距離が所定以下の場合に通信が可能となり、通信可能範囲を外れると通信が不可能な状態になる。したがって、例えばサーバ装置の位置が固定されている場合には、ユーザが携帯端末を手で持ち、携帯端末をサーバ装置に所定以上近づけることにより近距離通信が可能な状態にし、また携帯端末をサーバ装置から遠ざけると近距離通信ができない状態にすることができる。
【0003】
そこで、特許文献1に記載された通信システムでは、ユーザが、携帯端末をサーバ装置の通信領域内に存在させ続けることにより継続して複数のファイルを受信させ、携帯端末をサーバ装置の通信領域外に出すことによりファイルの受信を中断させることにより、煩わしい操作なしで、簡単に、必要な数のファイル(コンテンツのデータなど)だけをサーバ装置から携帯端末に取り込むことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−027669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された通信システムでは、ユーザがサーバ装置と携帯端末との距離を変える操作をすることによって、ファイルの受信と中断とを制御して、必要な数のファイルだけをサーバ装置から携帯端末に送信することができる。
【0006】
しかしながら、従来技術においては、複数のファイルをサーバ装置から携帯端末に対して送信する場合、単に連続してファイルを送信して携帯端末において記憶させているに過ぎない。
【0007】
従って、例えば複数のファイルによって1つの意味あるデータ、例えば複数のファイルから構成される動画コンテンツなどを送信する場合に、単純に複数のファイルを送信してしまうと、受信側の端末において複数のファイルの関連が不明となり意味をなさなくなってしまう。
【0008】
また、複数のファイルを送信する前に、複数のファイルを関連付けるための操作をユーザがすることも可能であるが、近距離無線通信を利用することによる高速性や簡易性が失われてしまう。
【0009】
本発明は上述の事情を考慮してなされたものであり、近距離無線通信を利用したデータ通信の高速性を損なうことなく、関連のある複数のファイルを簡単に送信することが可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば電子機器は、外部デバイスと近接されることで前記外部デバイスとピアツーピア形式により無線通信を実行する無線通信デバイスを有する電子機器であって、表示を制御する表示手段と、ユーザ操作に応じた入力を制御する入力手段と、前記入力に基づいて、複数のファイルを含むグループを選択する選択手段と、前記無線通信デバイスによる前記外部デバイスとの無線通信の開始後、前記外部デバイスからファイルの論理的な記録場所を示すデータを取得せずに、前記選択手段により選択されたグループに対応する識別情報を、プッシュプロトコルを用いて前記外部デバイスに送信する第1の送信手段と、前記識別情報を送信した後、前記グループに含まれる複数のファイルのそれぞれを、前記プッシュプロトコルを用いて前記外部デバイスへ送信する第2の送信手段とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、近距離無線通信を利用したデータ通信の高速性を損なうことなく、関連のある複数のファイルを簡単に送信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電子機器の外観構成を示す図。
【図2】本実施形態における電子機器の機能構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態における近接無線通信を制御するためのソフトウェアアーキテクチャを示す図。
【図4】本実施形態におけるCONNECT OperationのCONNECT Requestにおいて使用されるField及びHeaderを示す図。
【図5】本実施形態におけるCONNECT OperationのCONNECT Responseにおいて使用されるField及びHeaderを示。
【図6】本実施形態におけるDISCONNECT OperationのDISCONNECT Requestで使用されるField及びHeaderを示す図。
【図7】本実施形態におけるDISCONNECT OperationのDISCONNECT Responseで使用されるField及びHeaderを示す図。
【図8】本実施形態におけるPUT OperationのPUT Requestで使用するField及びHeaderを示す図。
【図9】本実施形態におけるPUT OperationのPUT Responseで使用するField及びHeaderを示す図。
【図10】本実施形態におけるGET OperationのGET Requestで使用するField及びHeaderを示す図。
【図11】本実施形態におけるGET OperationのGET Responseで使用するField及びHeaderを示す図。
【図12】本実施形態におけるABORT OperationのABORT Requestで使用するField及びHeaderを示す図。
【図13】本実施形態におけるABORT OperationのABORT Responseで使用するField及びHeaderを示す図。
【図14】本実施形態におけるSETPATH OperationのSETPATH Requestで使用するField及びHeaderを示す図。
【図15】本実施形態におけるSETPATH OperationのSETPATH Responseで使用するField及びHeaderを示す図。
【図16】本実施形態における近距離無線通信によりデータ通信を行うクライアントとサーバのそれぞれにおいて、プッシュプロトコルクラスで使用されるオペレーションを示す図。
【図17】本実施形態におけるプッシュプロトコルクラスで使用されるHeader IDを示す図。
【図18】本実施形態におけるプッシュプロトコルクラスによりサービスを提供する手続きを示す図。
【図19】本実施形態におけるプッシュプロトコルクラスの「Connect」手続きを示す図。
【図20】本実施形態におけるプッシュプロトコルクラスの「Get Capabilities」手続きを示す図。
【図21】本実施形態におけるプッシュプロトコルクラスの「Set Path」手続きを示す図。
【図22】本実施形態におけるプッシュプロトコルクラスの「Push Object」手続きを示す図。
【図23】本実施形態におけるプッシュプロトコルクラスの「Get Default Object」手続きを示す図。
【図24】本実施形態におけるプッシュプロトコルクラスの「Disconnect」手続きを示す図。
【図25】本実施形態における近距離無線通信によりデータ通信を行うクライアントとサーバのそれぞれにおいて、ファイルトランスファープロトコルクラスで使用されるオペレーションを示す図。
【図26】本実施形態におけるファイルトランスファープロトコルクラスで使用されるHeader IDを示す図。
【図27】本実施形態におけるファイルトランスファープロトコルクラスによりサービスを提供する手続きを示す図。
【図28】本実施形態におけるファイルトランスファープロトコルクラスの「Connect」手続きを示す図。
【図29】本実施形態におけるファイルトランスファープロトコルクラスの「Get Folder Listing」手続きを示す図。
【図30】本実施形態におけるファイルトランスファープロトコルクラスの「Set Path」手続きを示す図。
【図31】本実施形態におけるファイルトランスファープロトコルクラスの「Put Object」手続きを示す図。
【図32】本実施形態におけるファイルトランスファープロトコルクラスの「Get Object」手続きを示す図。
【図33】本実施形態におけるファイルトランスファープロトコルクラスの「Disconnect」手続きを示す図。
【図34】本実施形態におけるファイルの送受信を行うクライアントとサーバとの間で実行されるシーケンスを示す図。
【図35】本実施形態におけるアプリケーション/OBEXサーバの動作を示すフローチャート。
【図36】本実施形態におけるデジタルカメラからパーソナルコンピュータに対して複数のファイルを送信した場合のファイルのグループ化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器の外観構成を示す図である。図1に示す電子機器は、例えばノートブック型のパーソナルコンピュータ10、デジタルカメラ25として実現されている。なお、本実施形態における電子機器としては、例えばデジタルビデオカメラ、携帯電話機、PDA(personal digital assistant)、オーディオ/ビデオプレーヤ、カーナビゲーション装置、テレビ、ビデオレコーダ等として実現される。すなわち、本実施形態における電子機器は、プログラムを実行するプロセッサが搭載された機器であれば良い。
【0014】
本実施形態における電子機器(パーソナルコンピュータ10、デジタルカメラ25)には近接無線通信機能が搭載されており、他の電子機器と近接されることによりデータ通信を実行することができる。本実施形態では、近距離無線通信によるファイル転送において、送信側の通信コマンドが特定のフォルダ指定コマンドであった場合、受信側はそれ以降に送信される送信コマンドにより添付されてくるファイルに特定の識別するための属性情報を生成し、送信側からのファイル送信コマンドを受信した場合、先に生成した属性情報と共にファイルを格納する。
【0015】
図1において、パーソナルコンピュータ10のディスプレイユニットを開いた状態を示している。パーソナルコンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成されている。ディスプレイユニット12には、LCD(Liquid Crystal Display)17から構成される表示装置が組み込まれている。
【0016】
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に対し、コンピュータ本体11の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体11の上面を覆う閉塞位置との間を回動自在に取り付けられている。コンピュータ本体11は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード13、パワーオン/パワーオフするためのパワーボタン14、入力操作パネル15、タッチパッド16、およびスピーカ18A,18Bなどが配置されている。
【0017】
入力操作パネル15は、押されたボタンに対応するイベントを入力する入力装置であり、複数の機能をそれぞれ起動するための複数のボタンを備えている。
【0018】
さらに、コンピュータ本体11の上面部には、近接無線通信用アンテナ21が配設されている。パーソナルコンピュータ10には、他の電子機器と近接させた状態で無線通信を行う近接無線通信機能が搭載されており、近接無線通信用アンテナ21を通じて他の電子機器とデータ通信を実行する。
【0019】
一方、図1に示すデジタルカメラ25は、パーソナルコンピュータ10と近接させた状態で無線通信を行う近接無線通信機能が搭載されている。デジタルカメラ25には、例えば裏面側筐体に操作ボタン27、ディスプレイ28の他に、近接無線通信用アンテナ26が配設されている。
【0020】
パーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25は、ユーザによってデジタルカメラ25の近接無線通信用アンテナ26がパーソナルコンピュータ10の近接無線通信用アンテナ21に近接させるという操作(タッチ操作とも云う)が行われると、近接無線通信機能によってデータ通信を開始することができる。
【0021】
図2は、本実施形態における電子機器の機能構成を示すブロック図である。図2に示す電子機器は、例えばパーソナルコンピュータ10であり、システム制御部101、ROM102、RAM103、近接無線通信デバイス104、電源制御部105、ACアダプタ106、バッテリ107、入力部108、表示部109、及び記録部110を有している。
【0022】
システム制御部101は、電子機器10内の各部の動作を制御する。システム制御部101は、CPU101aを備え、ROM102、RAM103、近接無線通信デバイス104、電源制御部105、入力部108、表示部109、及び記録部110と接続される。
【0023】
CPU101aは、ROM102に格納された命令群およびデータをRAM103へロードし、必要な処理を実行するプロセッサである。RAM103には、各種のユーザアプリケーションプログラム103aや近接無線通信を制御するための近接無線通信制御プログラム103bがロードされる。CPU101aは、RAM103にロードされた近接無線通信制御プログラム103bを実行することにより、外部デバイスとのファイル伝送を行うファイル伝送モジュールとして機能し、近接無線通信デバイス104を制御する。
【0024】
近接無線通信デバイス104は、近接無線通信を実行する通信モジュールである。近接無線通信デバイス104は、近接無線通信デバイス104から所定の距離内に存在する、近接無線通信機能を有する他のデバイス(外部デバイス)との無線接続を確立し、そしてファイルのようなデータの伝送を開始する。近接無線通信デバイス104と外部デバイスとの間の近接無線通信は、ピアツーピア形式で実行される。通信可能距離は例えば3cmである。近接無線通信デバイス104と外部デバイスとの間の無線接続は、近接無線通信デバイス104と外部デバイスとが近接状態である場合、つまり近接無線通信デバイス104と外部デバイスとの間の距離が通信可能距離(例えば3cm)以内に接近した場合にのみ可能となる。近接無線通信デバイス104と外部デバイスとが通信可能距離以内に接近した時、近接無線通信デバイス104と外部デバイスとの間の無線接続が確立される。そして、例えば、ユーザによって明示的に指定されたデータファイル、または予め決められた同期対象データファイル等のデータの伝送が近接無線通信デバイス104と外部デバイスとの間で実行される。
【0025】
近接無線通信においては、誘導電界が用いられる。近接無線通信方式としては、例えばTransferJetを使用し得る。TransferJetは、超広帯域無線(UWB(Ultra Wideband)を利用した近接無線通信方式であり、高速データ転送を実現することができる。
【0026】
近接無線通信デバイス104はアンテナ104b(近接無線通信用アンテナ21)に接続されている。アンテナ104bはカプラと称される電極であり、誘導電界を用いた無線信号により、外部デバイスに対するデータの送受信を行う。外部デバイスがアンテナ104bから通信可能距離(例えば3cm)以内の範囲内に接近した場合、近接無線通信デバイス104および外部デバイスそれぞれのアンテナ(カプラ)間が誘導電界によって結合され、これによって近接無線通信デバイス104と外部デバイスとの間の無線通信が実行可能となる。なお、近接無線通信デバイス104およびアンテナ104bは、一つのモジュールとして実現し得る。
【0027】
電源制御部105は、ACアダプタ106を介して外部から供給される電力、またはバッテリ107から供給される電力を用いて、電子機器10内の各部に電力を供給する。換言すれば、電子機器10は、AC商用電源のような外部電源、またはバッテリ107によって駆動される。ACアダプタ106は電子機器10内に設けることも出来る。
【0028】
入力部108は、キーボード13やタッチパッド16、その他のボタンなど入力デバイスからの入力を制御する。
【0029】
表示部109は、LCD17における表示を制御する。
【0030】
記録部110は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記録メディアによりデータを記録する。記録部110には、アプリケーションプログラムの実行により各種のファイルが記録される。記録部110に記録されたファイルは、他の電子機器との近接無線通信による送受信の対象となる。記録部110では、例えば論理的に構成されたフォルダに分類されてファイルが記録される。
【0031】
なお、デジタルカメラ25等の他の電子機器においても、図2に示すブロック図と同等のモジュールを有し、近接無線通信制御プログラム103bをCPU101aによって実行することによって近接無線通信(外部デバイスとのファイル伝送を行うファイル伝送モジュールとして機能)を実現するものとして詳細な説明を省略する。
【0032】
次に、図3を参照して、本実施形態における近接無線通信を制御するためのソフトウェアアーキテクチャ(ファイル伝送モジュール)について説明する。
図3に示すソフトウェアアーキテクチャは、近接無線通信を制御するためのプロトコルスタックの階層構造を示している。プロトコルスタックは、物理層(PHY224)、コネクション層(CNL223)、プロトコル変換層(PCL(Protocol Conversion Layer) OBEX(object Exchange)アダプタ220、PCLコントローラ221)、アプリケーション層(アプリケーション201,202、OBEXプロトコル203、アプリケーションマネージャ204)から構成されている。例えば、コネクション層(CNL)、プロトコル変換層(PCL)、アプリケーション層は、通信制御プログラム103bによって実現し得る。
【0033】
物理層(PHY224)は、物理的なデータ転送を制御する層であり、OSI参照モデル内の物理層に対応する。物理層(PHY224)の一部の機能または全ての機能は、近接無線通信デバイス104内のハードウェアを用いて実現することもできる。
【0034】
物理層(PHY224)は、コネクション層(CNL223)からのデータを無線信号に変換する。コネクション層(CNL223)は、OSI参照モデル内のデータリンク層およびトランスポート層に対応しており、物理層(PHY224)を制御してデータ通信を実行する。コネクション層(CNL223)は、プロトコル変換層(PCL OBEX アダプタ220)から接続要求、または外部デバイスからの接続要求に応じて、近接状態に設定されている近接無線通信デバイス104と外部デバイスとの間の接続(CNL接続)を確立する処理を実行する。
【0035】
プロトコル変換層(PCL OBEXアダプタ220)は、OSI参照モデル内のセッション層およびプレゼンテーション層に対応しており、アプリケーション層と、電子機器間の接続の確立および解除を制御するためのコネクション層(CNL223)との間に位置する。プロトコル変換層(PCL OBEXアダプタ220)は、アプリケーション層内の各アプリケーション(通信プログラム)の制御とコネクション層(CNL223)の制御を行う。
【0036】
より具体的には、プロトコル変換層(PCL OBEXアダプタ220)は、アプリケーション層の各通信プログラムが扱うアプリケーションプロトコル(例えば、OBEXプロトコル203、SCSI、他の汎用プロトコル等)に対応したデータ(ユーザデータ)を特定の伝送用データ形式に変換するための変換処理を実行する。この変換処理により、どの通信プログラムによって送受信されるデータも、コネクション層(CNL223)が扱うことが可能なパケット(特定の伝送用データ形式のデータ)に変換される。このプロトコル変換層(PCL OBEXアダプタ220)は、様々なアプリケーションプロトコルを近接無線通信で利用することを可能にする。
【0037】
また、プロトコル変換層(PCL)は、通信相手のデバイスとの間でサービス情報(各デバイスが提供可能なサービスを示す情報)およびセッション情報(確立/切断対象のセッションに関する情報)を交換する処理、さらに、アプリケーションの起動、コネクションの管理、およびセッションの管理等を行う。
【0038】
ユーザアプリケーション層は、OBEXプロトコル203、SCSI、他の汎用プロトコル等の幾つかのアプリケーションプロトコルにそれぞれ対応した複数の通信プログラムを含んでいる。本実施形態においては、図3に示すOBEXプロトコル203によりデータを送受信する場合について説明する。
【0039】
OBEXプロトコル203は、アプリケーションマネージャ204で制御されるPCLコントローラ221により、CNL接続確立を行い、PCL OBEXアダプタ220を通して通信を行う。OBEXプロトコル203では、OBEXアプリケーションが相互にデータの送受信を実行可能とするためのアプリケーション規定(以下、プロトコルクラスと称する)が定義されている。各アプリケーション201,202は、プロトコルクラスに従ったOBEXプロトコル手順を利用することで、データファイル等のオブジェクトの送受信を行うことができる。本実施形態におけるOBEXプロトコル203では、基本プロトコルクラスとして、ファイルトランスファープロトコルクラス206とプッシュプロトコルクラス212とが定義されている。
【0040】
プッシュプロトコルクラス212は、クライアントからサーバへ1つまたは複数のファイルを送信するために使用される。プッシュプロトコルクラス212では、クライアント(例えばデジタルカメラ25)が任意のファイルをPUTして、サーバ(例えばパーソナルコンピュータ10)に渡すための手続き(機能)が定義されている。プッシュプロトコルクラス212では、近接無線通信(TransferJet)によってファイルを送信する前に必要な手続きを簡略化して、ユーザによる操作負担を軽減すると共に、高速なデータ通信を実現することができる。プッシュプロトコルクラス212におけるINBOXサービス214は、既知の「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」の仕様書に記載のINBOXサービス(INBOX Service)をベースにした手続きを実行するものとして詳細な説明を省略する。キャパビリティサービス216は、サーバ側の能力を示すデータを取得するために使用される。
【0041】
また、ファイルトランスファープロトコルクラス206は、クライアントとサーバとの間で1つまたは複数のファイルの送信/受信を行うために使用される。ファイルトランスファープロトコルクラス206は、FTP(File Transfer Protocol)相当のファイル転送およびファイル・フォルダ操作をサポートするための手続きが定義されている。
【0042】
ファイルトランスファープロトコルクラス206では、プッシュプロトコルクラス212を利用したファイルの転送とは異なり、ファイルを送信する前にファイルの送信先(サーバ)のフォルダ及びファイルを示すデータ(フォルダ情報)を、フォルダブラウジングサービス210によりサーバから取得する。そして、フォルダ情報に基づいてファイルの送信先に対してフォルダの移動(作成)を行って、ファイルを送信することができる。ファイルトランスファープロトコルクラス206は、既知の「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」に記載のフォルダブラウジングサービス(Folder Browsing Service)をベースにした手続きであり、サーバに対して、SETPATHオペレーションにより、操作対象フォルダを指定する、また、操作対象フォルダ内に含まれるファイル及びフォルダ情報をFolder Listing Objectという形式でサーバから取得し、操作する対象ファイルまたはフォルダを指定することを可能とする。フォルダブラウジングサービス210は、既知資料に準拠した動作のため詳細な説明を省略する。
【0043】
なお、ファイルトランスファープロトコルクラス206は、図3に示すように、プッシュプロトコルクラス212を包含する関係にあり、ファイルトランスファープロトコルクラス206を利用したファイルの送信時においても、INBOXサービス214及びキャパビリティサービス216を使用することが可能である。
【0044】
図3におけるアプリケーション201,202は、OBEXプロトコル203に対応している。各アプリケーション201,202は、OBEXプロトコル203を通じて、プロトコル変換層(PCL)に対してセッションの開始/終了を要求する処理、およびプロトコル変換層(PCL)を介してデータを送受信する処理を実行する。
【0045】
アプリケーション201は、OBEXプロトコル203のプッシュプロトコル212を利用して、1つまたは複数のファイルをサーバに転送する。アプリケーション202は、OBEXプロトコル203を利用して、1つまたは複数のファイルをサーバとの間で送信/受信する。
【0046】
以下、OBEXプロトコル203の詳細について説明する。ここでは、PCL OBEXアダプタ220を介した通信におけるOBEXオブジェクト及びプロトコルについて説明する。
【0047】
(1)OBEXオブジェクト
OBEXプロトコル203において取り扱うオブジェクト(データ)は、「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」の仕様書内で定義される「OBEX Object Model」に準拠するものとする。ここでは、「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」で定義されるオブジェクト形式の内、以下の3つのオブジェクト(a)(b)(c)を扱うものとする。
【0048】
(a)「Folder Listing Object」
「Folder Listing Object」は、フォルダブラウジングサービス210の実行時に、サーバ側フォルダ及びファイルの詳細を得るために使用される。基本形式は「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」に準拠する。
【0049】
(b)「Generic File Object」
「Generic File Object」は、汎用的なファイルオブジェクト交換を行うために使用される。基本形式は「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」に準拠する。このオブジェクトに付随するTYPEヘッダには、メディアの種類により「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」 に準拠した値を指定する。
【0050】
(c)「Capability Object」
「Capability Object」は、サーバ側能力を取得するために使用される。基本形式は「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」に準拠する。
【0051】
(2)プロトコル
OBEXプロトコル203は、「PCL OBEX Adapter Specification」で定義されるControl primitiveを用いて、PCLセッションを確立し、そのセッション上をPCL OBEX Service Primitiveを用いて、「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」で定義されるOBEXオペレーションを行う。
【0052】
OBEX Application プロトコルクラスにおいては、以下に説明する範囲のオペレーション(a)(b)(c)(d)(e)(f)を用いて通信を行う。なお、ファイルトランスファープロトコルクラス206とプッシュプロトコルクラス212のそれぞれにおいて使用するオペレーション(コマンド)については後述する(図16、図25)。
【0053】
(a)CONNECT Operation
図4は、CONNECT OperationのCONNECT Requestにおいて使用されるField及びHeaderを示している。また、図5は、CONNECT OperationのCONNECT Responseにおいて使用されるField及びHeaderを示している。図4及び図5に示すHeaderについては、後述するファイルトランスファープロトコルクラス206とプッシュプロトコルクラス212で定義される記述に従うものとする。
【0054】
(b)DISCONNECT Operation
図6は、DISCONNECT OperationのDISCONNECT Requestで使用されるField及びHeaderを示している。図7は、DISCONNECT OperationのDISCONNECT Responseで使用されるField及びHeaderを示している。図6及び図7に示すHeaderについては、後述するファイルトランスファープロトコルクラス206とプッシュプロトコルクラス212で定義される記述に従うものとする。
【0055】
(c)PUT Operation
図8は、PUT OperationのPUT Requestで使用するField及びHeaderを示している。図9は、PUT OperationのPUT Responseで使用するField及びHeaderを示している。図8及び図9に示すHeaderについては、後述するファイルトランスファープロトコルクラス206とプッシュプロトコルクラス212で定義される記述に従うものとする。
【0056】
(d)GET Operation
図10は、GET OperationのGET Requestで使用するField及びHeaderを示している。図11は、GET OperationのGET Responseで使用するField及びHeaderを示している。図10及び図11に示すHeaderについては、後述するファイルトランスファープロトコルクラス206とプッシュプロトコルクラス212で定義される記述に従うものとする。
【0057】
(e)ABORT Operation
図12は、ABORT OperationのABORT Requestで使用するField及びHeaderを示している。図13は、ABORT OperationのABORT Responseで使用するField及びHeaderを示している。図12及び図13に示すHeaderについては、後述するファイルトランスファープロトコルクラス206とプッシュプロトコルクラス212で定義される記述に従うものとする。
【0058】
(f)SETPATH Operation
図14は、SETPATH OperationのSETPATH Requestで使用するField及びHeaderを示している。図15は、SETPATH OperationのSETPATH Responseで使用するField及びHeaderを示している。図14及び図15に示すHeaderについては、後述するファイルトランスファープロトコルクラス206とプッシュプロトコルクラス212で定義される記述に従うものとする。
【0059】
次に、プッシュプロトコルクラス212の詳細について説明する。
プッシュプロトコルクラス212は、クライアントからサーバへ1つまたは複数のファイルを送信するために、例えばアプリケーション201により使用される。プッシュプロトコルクラス212により送信されるオブジェクトの形式(Contents Format)は、「Generic File Object」により定義される。
【0060】
図16には、近距離無線通信によりデータ通信を行うクライアントとサーバのそれぞれにおいて、プッシュプロトコルクラス212で使用されるオペレーションを示し、また図17にはプッシュプロトコルクラス212で使用されるHeader IDを示している。
【0061】
図18は、プッシュプロトコルクラス212によりサービスを提供する手続きを示している。また、図19〜図24には、図18に示す各手続きにおけるシーケンス例を示している。
クライアントにおいて、プッシュプロトコルクラス212は、例えばアプリケーション201によりファイルの送信要求があった場合に、ユーザによるタッチ操作に応じて、CNL223及びPCL OBEXアダプタ220を通じて近距離無線通信が可能な状態となると、図19に示すCONNECTオペレーションによる「Connect」手続きにより、サーバのアプリケーションとの接続を行う。プッシュプロトコルクラス212は、サーバのアプリケーションと接続されると、ファイルの送信に先立ち、図20に示すGETオペレーションによる「Get Capabilities」手続きによりサーバ能力の取得を行う。なお、「Get Capabilities」手続きは、任意に実行されるものとする。
【0062】
次に、プッシュプロトコルクラス212は、送信しようとするファイル(オブジェクト)を識別するためのデータをサーバに送信するために、図21に示すSETPATHオペレーションによる「Set Path」手続きを行う。SETPATHオペレーションでは、ファイル(オブジェクト)を識別するためのデータとして、例えば図21に示すように、ヘッダデータとして「フォルダネーム」をサーバに通知する。なお、本実施形態においては、SETPATHオペレーションは、サーバに対してフォルダ作成を強制するものではないものとする。
【0063】
プッシュプロトコルクラス212は、SETPATHオペレーションの後、サーバに通知した「フォルダネーム」に対応する共通グループ(フォルダ)のファイルを、図22に示すPUTオペレーションによる「Push Object」手続きにより送信する。ここで、共通グループに複数のファイルが存在する場合には、各ファイルに対するPUTオペレーション(ファイル送信)を繰り返して実行する。
【0064】
また、複数のグループ(フォルダ)が送信対象として選択されている場合には、各グループのそれぞれに対して、「Set Path」手続きと「Push Object」手続きを繰り返して実行する。
【0065】
また、プッシュプロトコルクラス212は、必要に応じて、図23に示すGETオペレーションにより「Get Default Object」手続きを実行する。プッシュプロトコルクラス212は、GETオペレーションのタイプヘッダにより、取得要求の対象とするデータ(オブジェクト)を指定する。これにより、サーバは、指定されたタイプヘッダに応じて適切なオブジェクトを決定して、クライアントに対して送信する。例えば、サーバ側が提供するイメージデータ(例えば、サーバにおいて画面キャプチャされたイメージデータ)を受信することができる。
【0066】
プッシュプロトコルクラス212は、ファイル(オブジェクト)の送信が完了すると、図24に示すDISCONNECTオペレーションにより「Disconnect」手続きを実行する。
【0067】
本実施形態におけるプッシュプロトコルクラス212では、クライアントからサーバに対して、複数のファイルを送信する場合において、ユーザが煩わしい操作をすることなく、「Set Path」と「Push Object」の手続きにより複数のファイルをサーバに送信して、サーバにおいて複数のファイルをグループ化させることができる。なお、複数のファイルをクライアントからサーバに送信する具体的な動作については後述する(図34、図35、図36)。
【0068】
次に、ファイルトランスファープロトコルクラス206の詳細について説明する。
ファイルトランスファープロトコルクラス206は、クライアントとサーバへとの間において、1つまたは複数のファイルを送信/受信を行うために、例えばアプリケーション202により使用される。ファイルトランスファープロトコルクラス206により送信されるオブジェクトの形式(Contents Format)は、「Generic File Object」により定義される。
【0069】
図25には、近距離無線通信によりデータ通信を行うクライアントとサーバのそれぞれにおいて、ファイルトランスファープロトコルクラス206で使用されるオペレーションを示し、また図26にはファイルトランスファープロトコルクラス206で使用されるHeader IDを示している。
【0070】
図27は、ファイルトランスファープロトコルクラス206によりサービスを提供する手続きを示している。また、図28〜図33には、図27に示す各手続きにおけるシーケンス例を示している。
クライアントにおいて、ファイルトランスファープロトコルクラス206は、例えばアプリケーション202によりファイルの送信要求があった場合に、ユーザによるタッチ操作に応じて、CNL223及びPCL OBEXアダプタ220を通じて近距離無線通信が可能な状態となると、図28に示すCONNECTオペレーションによる「Connect」手続きにより、サーバのアプリケーションとの接続を行う。ファイルトランスファープロトコルクラス206は、サーバと接続されると、ファイルの送信に先立ち、図29に示すGETオペレーションによる「Get Folder Listing」手続きにより、サーバにおけるファイルの送信先のフォルダ及びファイルを示すデータ(フォルダ情報)を取得する。
【0071】
次に、ファイルトランスファープロトコルクラス206は、フォルダの移動(作成)を行うために、図30に示すSETPATHオペレーションによる「Set Path」手続きを行う。SETPATHオペレーションでは、「Get Folder Listing」手続きにより取得したフォルダ情報に基づき、例えば図30に示すように、ヘッダデータとして「フォルダネーム」をサーバに通知する。ファイルトランスファープロトコルクラス206によるSETPATHオペレーションでは、プッシュプロトコルクラス212とは異なり、フォルダブラウジングサービス210に準拠した動作を行う。
【0072】
すなわち、プッシュプロトコルクラス212では、クライアントからの一方向の送信処理行うことに対して、ファイルトランスファープロトコルクラス206では、任意のフォルダに対してファイルを送信可能な反面、サーバから情報を取得しつつ、ファイル送信を行うため、処理が煩雑になり、高速なファイル転送には不向きである。
【0073】
ファイルトランスファープロトコルクラス206は、SETPATHオペレーションの後、図31に示す、PUTオペレーションによる「Put Object」手続きにより送信する(または削除)。ここで、送信対象とする複数のファイルが存在する場合には、各ファイルに対するPUTオペレーション(ファイル送信)を繰り返して実行する。
【0074】
また、ファイルトランスファープロトコルクラス206は、必要に応じて、図32に示すGETオペレーションにより「Get Object」手続きを実行する。ファイルトランスファープロトコルクラス206は、GETオペレーションのタイプヘッダにより、取得要求の対象とするデータ(オブジェクト)のファイルネームを指定する。
【0075】
ファイルトランスファープロトコルクラス206は、ファイル(オブジェクト)の送信が完了すると、図33に示すDISCONNECTオペレーションにより「Disconnect」手続きを実行する。
【0076】
次に、本実施形態における電子機器のファイル送信の動作について説明する。ここでは、アプリケーション201がプッシュプロトコルクラス212を用いて複数のファイルをサーバに送信する具体的な動作について説明する。
【0077】
図34は、ファイルの送受信を行うクライアントとサーバとの間で実行されるシーケンスを示す図である。ここでは、例えば、ファイルを送信するクライアントをデジタルカメラ25、ファイルを受信するサーバをパーソナルコンピュータ10として説明する。デジタルカメラ25においては、例えば動画の撮影が行われて、動画タイトルが記録されているものとする。この動画タイトルは、例えば複数のファイルから構成されている。従って、この動画タイトルをパーソナルコンピュータ10に送信する場合に、動画タイトルに含まれる複数のファイルを関連付ける必要がある。
【0078】
本実施形態におけるOBEXプロトコル203のプッシュプロトコルクラス212は、デジタルカメラ25からパーソナルコンピュータ10に送信する複数のファイルをグループ化するための特別な手続きを事前に行うことなく、図18に示す手続きによって複数のファイルをグループ化する。
【0079】
図34において、アプリケーション/OBEXクライアント300は、デジタルカメラ25におけるアプリケーション201及びOBEXプロトコル203に相当し、PCL−CTL301は、PCLコントローラ221に相当し、PCL−OBEX302は、PCL OBEXアダプタ220に相当するものとする。同様に、アプリケーション/OBEXサーバ400は、パーソナルコンピュータ10におけるアプリケーション201及びOBEXプロトコル203に相当し、PCL−CTL401は、PCLコントローラ221に相当し、PCL−OBEX402は、PCL OBEXアダプタ220に相当するものとする。
【0080】
まず、デジタルカメラ25では、アプリケーションによる処理によって、パーソナルコンピュータ10への送信対象とするファイルの選択と送信要求がユーザ操作に応じて実行される(S1)。例えば、デジタルカメラ25に記録された複数の動画タイトルから、パーソナルコンピュータ10への送信対象とするファイルがユーザ操作によって選択されたものとする。ここでは、動画ファイルが記録されたフォルダの選択、あるいは複数のファイルから構成された動画タイトルが指定されることにより、複数のファイルが送信対象として選択されたものとする。なお、ここでは動画ファイルを例にしているが、その他のファイル(オブジェクト)が送信対象として選択されても良い。
【0081】
アプリケーション/OBEXクライアント300は、PCL−CTL301(PCLコントローラ221)に対して、プッシュプロトコルクラス212によるファイルの送信を要求する(S2)。
【0082】
ここで、デジタルカメラ25は、ファイルの送信先とする電子機器(パーソナルコンピュータ10)と近接無線通信が可能となるまで接続待機状態となる。また、パーソナルコンピュータ10においても、近接無線通信による接続待機状態にあるものとする。
【0083】
ここで、ユーザによって、デジタルカメラ25をパーソナルコンピュータ10に近接させるタッチ操作が行われたものとする(S3)。すなわち、デジタルカメラ25の近接無線通信用アンテナ26とパーソナルコンピュータ10の近接無線通信用アンテナ21との距離が近接無線通信が可能となるまで近接されたものとする(例えば3cm程度)。
【0084】
近接無線通信が可能な状態になると、デジタルカメラ25のPCL−CTL301とパーソナルコンピュータ10のPCL−CTL401との間で、物理的な接続の確立と、アプリケーションのプロトコルに対応したPCLアダプタ(通信アダプタ)の種類の調整を行う(S4)。
【0085】
すなわち、デジタルカメラ25のPCL−CTL301(PCLコントローラ221)は、CNL223を用いて、近接状態にあるパーソナルコンピュータ10(近接無線通信デバイス104)との間の(物理的な)接続を確立する処理を実行する。同様にして、パーソナルコンピュータ10のPCL−CTL401もデジタルカメラ25との間の(物理的な)接続を確立する処理を実行する。
【0086】
また、PCL−CTL301(PCLコントローラ221)は、ネゴシエーション処理を実行して、確立すべきセッションに関するセッション情報、例えば、使用される通信アダプタを示す情報、アプリケーションが伝送するデータの種類を示す情報、およびアプリケーションを識別する情報等を含むセッション情報をPCL−CTL401に送信する。PCL−CTL401(PCLコントローラ221)は、PCL−CTL301からのセッション情報に基づいて、新規セッション開始要求を送信したアプリケーション201のプロトコルに対応した通信アダプタ、ここではPCL OBEXアダプタ220を起動して、アプリケーション201が近接無線通信デバイス104を介して外部デバイスのアプリケーションと通信するために使用されるセッションを確立する。さらに、PCL−CTL401は、アプリケーションを識別する情報に応じて、デジタルカメラ25のアプリケーション201と同一のOBEXプロトコル203に対応したアプリケーションを起動する。
【0087】
パーソナルコンピュータ10のPCL−CTL401は、セッションが確立されると、アプリケーション/OBEXサーバ400に対してプッシュプロトコルクラス212によるファイルの送信を要求する(S5)。また、PCL−CTL401は、PCL−OBEX402(PCL OBEXアダプタ220)に対して、OBEXプロトコル203による通信開始を要求する(S6)。同様に、デジタルカメラ25においても、また、PCL−CTL301は、PCL−OBEX302(PCL OBEXアダプタ220)に対して、OBEXプロトコル203による通信開始を要求する(S7)。
【0088】
アプリケーション/OBEXクライアント300とアプリケーション/OBEXサーバ400(プッシュプロトコルクラス212)は、PCL−OBEX302,402を介して、図19に示すCONNECTオペレーションによる「Connect」手続きを実行する(S8〜S11)。
【0089】
以下、アプリケーション/OBEXクライアント300とアプリケーション/OBEXサーバ400は、図18に示すプッシュプロトコルクラス212によるサービスを提供する手続きに従って動作する。
【0090】
すなわち、アプリケーション/OBEXクライアント300は、アプリケーション/OBEXサーバ400から、図20に示すGETオペレーションによる「Get Capabilities」手続きによりサーバ能力の取得を行う(S12)。
【0091】
その後、アプリケーション/OBEXクライアント300(プッシュプロトコルクラス212)は、送信しようとするファイルを識別するためのデータをサーバに送信するために、図21に示すSETPATHオペレーションによる「Set Path」手続きを行う(S13)。SETPATHオペレーションでは、ファイル(オブジェクト)を識別するためのデータとして、例えば図21に示すように、ヘッダデータとして「フォルダネーム」をサーバに通知する。アプリケーション/OBEXサーバ400(プッシュプロトコルクラス212)は、SETPATHオペレーションに対して、常にSUCCESSオペレーションにより応答する。
【0092】
アプリケーション/OBEXクライアント300は、SETPATHオペレーションの後、アプリケーション/OBEXサーバ400に通知した「フォルダネーム」に対応する共通グループ(フォルダ)のファイルを、図22に示す、PUTオペレーションによる「Push Object」手続きにより送信する(S14)。ここで、共通グループに複数のファイルが存在する場合には、各ファイルに対するPUTオペレーション(ファイル送信)を繰り返して実行する(S15)。また、複数のグループについてファイルを送信する場合など、必要に応じて、SETPATHオペレーションとPUTオペレーション(ファイル送信)を繰り返して実行する。
【0093】
サーバ側のアプリケーション/OBEXサーバ400は、アプリケーション/OBEXクライアント300から送信された複数のファイルをグループ化して格納する。以下、サーバ側におけるクライアントから受信した複数のファイルをグループ化して格納する手順について説明する。
【0094】
図35は、アプリケーション/OBEXサーバ400の動作を示すフローチャートである。
アプリケーション/OBEXサーバ400は、クライアント(アプリケーション/OBEXクライアント300)からSETPATHオペレーション(フォルダ指定コマンド)により、送信対象とするファイルに対応するフォルダネームが受信されると(ステップA1,A2)、SETPATHオペレーションの後のPUTオペレーション(ファイル送信コマンド)により送信されてくるファイルを識別するための属性情報を、SETPATHオペレーションにより受信したフォルダネームに基づいて生成する(ステップA3)。
【0095】
アプリケーション/OBEXサーバ400は、PUTオペレーション(ファイル送信コマンド)によりファイルが受信されると(ステップA4、Yes)、ステップA3において生成した現在の属性情報と共に、送付されてきたファイルを格納する(ステップA5)。その後、共通グループに複数のファイルが存在する場合には、アプリケーション/OBEXサーバ400は、PUTオペレーション(ファイル送信コマンド)によってクライアントから送信される複数のファイルをそれぞれ受信して、共通する属性情報と共に格納する(ステップA4,A5)。
【0096】
さらに、別グループに含まれる複数のファイルがクライアントから送信される場合には、アプリケーション/OBEXサーバ400は、新たにSETPATHオペレーション(フォルダ指定コマンド)により別グループのファイルを識別するための「フォルダネーム」を受信し、前述と同様にして属性情報を生成する(ステップA2,A3)。そして、属性情報と共に、その後、PUTオペレーション(ファイル送信コマンド)により送信されてきたファイルとを格納する。
【0097】
なお、アプリケーション/OBEXサーバ400は、その他のコマンド(例えば、図18、図23に示すGETオペレーションによる「Get Default Object」手続き)が受信された場合には、そのコマンドに応じた処理を実行する(ステップA6)。
【0098】
図36は、デジタルカメラ25からパーソナルコンピュータ10に対して複数のファイルを送信した場合のファイルのグループ化を示す図である。
【0099】
例えば、デジタルカメラ25では、フォルダA,B,C(あるいは動画タイトルなど)が送信対象としてユーザにより選択されたものとする。フォルダAには、図36に示すように、複数のファイルA1,A2,…,Akが含まれている。同様にして、フォルダBには、複数のファイルB1,B2,…,Bmが含まれ、フォルダCには、複数のファイルC1,C2,…,Cnが含まれている。
【0100】
デジタルカメラ25からプッシュプロトコルクラス212による手続きによりファイルが送信される場合、SETPATHオペレーション(フォルダ指定コマンド)によりフォルダAに対応するフォルダネームをサーバに通知する。
【0101】
パーソナルコンピュータ10では、アプリケーション/OBEXサーバ400は、フォルダAに対応するフォルダネームに基づいて、例えば属性情報「IDA」を生成し、この属性情報「IDA」と共に、PUTオペレーション(ファイル送信コマンド)により送信されてきたファイルA1,A2,…,Akを格納する。これにより、パーソナルコンピュータ10では、属性情報「IDA」により複数のファイルA1,A2,…,Akをグループ化して、関連するファイルとして意味づけて管理することができる。
【0102】
同様にして、パーソナルコンピュータ10では、属性情報「IDB」により複数のファイルB1,B2,…,Bmをグループ化した格納し、属性情報「IDC」により複数のファイルC1,C2,…,Cnをグループ化して格納することができる。
【0103】
こうして、デジタルカメラ25からパーソナルコンピュータ10へのファイルの送信が完了すると、アプリケーション/OBEXクライアント300とアプリケーション/OBEXサーバ400(プッシュプロトコルクラス212)は、PCL−OBEX302,402を介して、図24に示すDISCONNECTオペレーションによる「Disconnect」手続きを実行する(S16〜S20)。
【0104】
また、PCL−CTL301は、PCL−OBEX302(PCL OBEXアダプタ220)に対して、OBEXプロトコル203による通信終了を要求する(S21)。同様に、パーソナルコンピュータ10においても、また、PCL−CTL401は、PCL−OBEX402(PCL OBEXアダプタ220)に対して、OBEXプロトコル203による通信終了を要求する(S22)。
【0105】
そして、デジタルカメラ25のPCL−CTL301とパーソナルコンピュータ10のPCL−CTL401との間で、アプリケーションのプロトコルに対応したPCLアダプタ(通信アダプタ)を停止させ、近距離無線通信を切断する(S23)。
【0106】
このようにして、クライアント(デジタルカメラ25)からサーバ(パーソナルコンピュータ10)に対して複数のファイルを送信する場合に、OBEXプロトコル203のプッシュプロトコルクラス212による手続きを実行することで、ユーザによる複数のファイルを関連付ける操作やファイルの送信先(サーバ)に対するファイルの格納先の指定、あるいはファイルの構成が記録されたリストを予め作成するといったことを行うことなく、サーバにおいて複数のファイルをグループ化して格納させることができる。すなわち、複数のファイルを関連付けるための煩雑なユーザ操作をすることなく、機器間を近接させるタッチ操作だけで高速な近距離無線通信による複数のファイルの転送を実現することができる。また、サーバ(パーソナルコンピュータ10)では、各ファイルと共に記録された属性情報を参照することにより、共通グループに属する複数のファイルを識別することができ、例えば1つの意味あるデータ(例えば動画コンテンツ)として処理することが可能となる。
【0107】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0108】
また、前述した実施の形態において記載した処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリなどの記録媒体に書き込んで各種装置に提供することができる。また、通信媒体により伝送して各種装置に提供することも可能である。コンピュータは、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、または通信媒体を介してプログラムを受信し、このプログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行する。
【符号の説明】
【0109】
10…パーソナルコンピュータ、25…デジタルカメラ、21,26…近接無線通信用アンテナ、101a…CPU、104…近接無線通信デバイス、201,202…アプリケーション、203…OBEXプロトコル、204…アプリケーションマネージャ、206…ファイルトランスファープロトコルクラス、210…フォルダブラウジングサービス、214…INBOXサービス、216…キャパビリティサービス、220…PCL OBEXアダプタ、221…PCLコントローラ、223…CNL、224…PHY。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部デバイスと近接されることで前記外部デバイスとピアツーピア形式により無線通信を実行する無線通信デバイスを有する電子機器であって、
表示を制御する表示手段と、
ユーザ操作に応じた入力を制御する入力手段と、
前記入力に基づいて、複数のファイルを含むグループを選択する選択手段と、
前記無線通信デバイスによる前記外部デバイスとの無線通信の開始後、前記外部デバイスからファイルの論理的な記録場所を示すデータを取得せずに、前記選択手段により選択されたグループに対応する識別情報を、プッシュプロトコルを用いて前記外部デバイスに送信する第1の送信手段と、
前記識別情報を送信した後、前記グループに含まれる複数のファイルのそれぞれを、前記プッシュプロトコルを用いて前記外部デバイスへ送信する第2の送信手段と
を有する電子機器。
【請求項2】
前記選択手段は、前記入力に基づいて、複数のグループを選択し、
前記第1の送信手段は、複数のグループのそれぞれについて前記識別情報を送信し、
前記第2の送信手段は、前記第1の送信手段により前記識別情報が送信される毎に、送信された識別情報に対応するグループに含まれる複数のファイルを送信する請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記識別情報は、前記複数のファイルを格納するフォルダのフォルダ名とする請求項1記載または請求項2記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−93057(P2013−93057A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−20406(P2013−20406)
【出願日】平成25年2月5日(2013.2.5)
【分割の表示】特願2011−48606(P2011−48606)の分割
【原出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】