説明

電子求引性置換基を含むフォトクロミック材料

第1電子求引置換基と、特定の非限定的な実施形態では第2電子求引置換基とを有するインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料を開示する。様々な実施形態によれば、このフォトクロミック材料は、電子求引置換基を有さない類似のインデノ縮合ナフトピランと比較して、より速い退色速度、深色シフト、およびより高い性能等級を示し得る。前記フォトクロミック材料を組み込んでいる、フォトクロミック組成物および光学素子などの物品もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本開示の様々な非限定的な実施形態は、1つ以上の電子求引基を含む置換基を備えるインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料に関する。特定の非限定的な実施形態によると、このインデノ縮合ナフトピランは、インデノ縮合ナフトピランの3位に結合したフェニル環のパラ位に位置する電子供与基および/または電子求引基を含む置換基をさらに含むことができる。本開示の様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料はさらに、電子求引置換基を有さない類似のインデノ縮合ナフトピランと比較して、より速い退色速度を示し得る。本明細書に開示した他の非限定的な実施形態は、例えばフォトクロミック組成物およびこのフォトクロミック組成物を組み込む光学素子などの物品に関する。
【0002】
例えば、フォトクロミックナフトピランなどの多くの従来型フォトクロミック材料は、電磁放射線の吸収に応答して、第1の形態または状態から第2の形態または状態へ変換することができる。例えば、多くの従来型の熱可逆性フォトクロミック材料は、特定波長の電磁放射線(または「化学線」)の吸収に応答して、第1の「透明」または「脱色」基底状態形と第2の「着色」活性化状態形との間で変換することができる。フォトクロミック材料、物品および組成物に関連して本明細書で使用する用語「透明」および「脱色」は、フォトクロミック材料、物品、または組成物が実質的に色を有さない、すなわち、電磁波スペクトルの可視領域(420nm〜700nm)内の電磁放射線の吸収を実質的に全く有していないことを意味する。本明細書で使用する用語「化学線」は、フォトクロミック材料が、第1の形態または状態から第2の形態または状態へ変換することを誘発できる電磁放射線を意味する。フォトクロミック材料は、次に化学線の不在下では、熱エネルギーに応答して透明基底状態形に復帰することができる。1つ以上のフォトクロミック材料を含有するフォトクロミック物品および組成物、例えば、アイウェア用途のためのフォトクロミックレンズは、それらが含有するフォトクロミック材料に対応する光学的に透明な状態および光学的に着色した状態を一般に提示する。そこで、例えば、フォトクロミック材料を含有するアイウェアのレンズは、太陽光線において見いだされる特定の波長などの化学線へ暴露されると透明状態から着色状態へ変換することができ、熱エネルギーを吸収すると、そのような放射線の不在下では透明状態に復帰することができる。
【0003】
フォトクロミック物品および組成物中で利用される場合は、従来型フォトクロミック材料は、典型的には吸収させること、混合すること、および/または結合することの1つによってホストポリマーマトリックス中へ組み込まれる。または、前記フォトクロミック材料は、事前に形成された物品またはコーティング中に吸収され得る。本明細書で使用する用語「フォトクロミック組成物」は、相違するフォトクロミック材料であってもなくてもよい1つ以上の他の材料と組み合わせたフォトクロミック材料を意味する。
【0004】
多くのフォトクロミック用途において、一般には、着色された活性化状態形から透明な基底状態形へ迅速に戻ることができ、同時に色濃度などの容認できる特性を維持しているフォトクロミック材料を有するのが望ましい。例えば、フォトクロミックアイウェア用途では、フォトクロミック材料を含む光学レンズは、装着者が室内などの低化学線領域から直射日光の中などの高化学線領域へ移動すると、光学的透明状態から着色状態へ変換する。レンズが着色されるにつれて、電磁スペクトルの可視および/または紫外領域からの少ない電磁線が、レンズを通して装着者の眼へ透過させられる。これを言い換えると、着色状態では光学的透明状態と比較して、より多くの電磁線がレンズによって吸収される。装着者が引き続いて高化学線領域から低化学線領域に戻ると、アイウェア中のフォトクロミック材料は、熱エネルギーに応答して、着色された活性化状態形から透明な基底状態形へ戻る。着色から透明へのこの変換に数分間以上がかかる場合、この時間中の装着者の視覚は、着色レンズを通しての低い周辺光と可視光線の低い透過の組み合わせの作用のために、最適未満となり得る。
【0005】
したがって、特定の用途については、従来型フォトクロミック材料と比較して、着色形から透明形へより迅速に移行できるフォトクロミック材料を開発することが有益であり得る。本明細書で使用する用語「退色速度」は、活性化着色状態から非活性化透明状態へフォトクロミック材料が変換する速度の尺度である。フォトクロミック材料についての退色速度は、例えば、特定のマトリックス内で制御された条件下でフォトクロミック材料を飽和へ活性化する工程と、その活性化定常状態吸光度(すなわち、飽和光学密度)を測定する工程と、その後にフォトクロミック材料の吸光度が活性化定常状態の吸光度値の半分へ減少するために要する時間の長さを決定する工程とによって測定することができる。この方法で測定する場合、退色速度は、秒の単位を用いるT1/2と指定されている。
【0006】
さらに、上述したように、典型的には基底状態形と活性化状態形との間の変換は、フォトクロミック材料を特定波長の化学線に暴露させることを必要とする。多くの従来型フォトクロミック材料については、この変換を引き起こせる化学線の波長は、典型的には320ナノメートル(nm)〜390nmの範囲に及ぶ。したがって、従来型フォトクロミック材料は、320nm〜390nmの範囲内にあるかなりの量の化学線から遮蔽される用途に使用するためには最適ではないことがある。このため、一部の用途については、深色シフトした電磁放射線に対して基底状態形吸収スペクトルを有することのできるフォトクロミック材料を開発することは有益であり得る。本明細書で使用する用語「深色シフトする」は、より長い波長値へシフトした電磁放射線に対する吸収スペクトルを有することを意味する。そこで、深色シフトした基底状態形吸収スペクトルを有するフォトクロミック材料は、基底状態形から活性化状態形へ移行するためにより長い波長を有する化学線の吸収を必要とする。
【背景技術】
【0007】
例えば、従来型フォトクロミック材料を用いて製造されるアイウェア用途のレンズは、自動車内で使用された場合はそれらの完全に着色された活性化状態形に達しないかもしれない。これは、320nm〜390nmの範囲内の大部分の電磁放射線は、レンズ内のフォトクロミック材料が吸収できる前に自動車のフロントガラスによって吸収され得るからである。フロントガラスの後方でのフォトクロミック材料の使用を含んでいる用途などの特定の用途では、フォトクロミック材料が基底状態形から活性化状態形へ変換するのを許容するために390nmより大きい波長を有する十分な電磁放射線をフォトクロミック材料が吸収できるように、フォトクロミック材料の基底状態形吸収スペクトルが深色シフトすれば有益であり得る。
【0008】
活性化状態形におけるフォトクロミック材料の吸収スペクトルは、化学線に暴露させた場合に、フォトクロミック材料を含有する媒質または物品の色、例えば、アイウェアレンズの色に対応する。電磁放射線の可視領域内の特定波長が活性化状態形にあるフォトクロミック材料によって吸収されるので、透過される(すなわち、吸収されない)可視領域内の波長は、活性化状態形にあるフォトクロミック材料の色に対応する。例えば、電磁線スペクトルの可視領域内の約500nm〜約520nmの周囲の光の波長の吸収は、「赤みがかった」色を示すフォトクロミック材料を生じる。すなわち、それは可視スペクトルの短波長または青系統の色域(blue end)からの可視放射線を吸収し、可視スペクトルのより長い波長または赤系統の色域(red end)からの放射線を透過させる。逆に、電磁線スペクトルの可視領域内の約580nm〜約610nmの周囲の光の波長の吸収は、「青みがかった」色を示すフォトクロミック材料を生じる。すなわち、それは可視スペクトルの長波長または赤系統の色域からの可視放射線を吸収し、可視スペクトルのより短い波長または青系統の色域からの放射線を透過させる。
【0009】
現在の多くのフォトクロミック化合物は、可視スペクトルの青系統の色域に向かう可視光を吸収し、活性化形では赤みがかった色を示す活性化状態吸収スペクトルを有している。フォトクロミック材料が深色シフトする、すなわちより長い波長を有する光を吸収するようにシフトする活性化状態吸収スペクトルを有する場合は、このフォトクロミック材料は、現在のフォトクロミック材料より青い色を示す。特定の用途のためには、化学線に対して深色シフトした活性化形吸収スペクトルを有し、したがって、より青い色を示し得るフォトクロミック材料を有することが望ましくあり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(簡単な概要)
本明細書に開示する様々な非限定的な実施形態は、1つ以上の電子求引置換基を有するフォトクロミック材料に関する。特定の非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、より速い退色速度ならびに/または深色シフトした活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを有することができる。
【0011】
1つの非限定的な実施形態では、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランおよびインデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基を含み得るが、このときインデノ縮合ナフトピランの13位での置換はヒドロキシルを含まない。特定の非限定的な実施形態では、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基をさらに含み得る。第1電子求引基および第2電子求引基は、同一であっても異なってもよい。
【0012】
また別の非限定的な実施形態では、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランと;インデノ縮合ナフトピランのC環上の炭素に結合した第1電子求引基と;インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基とを含み得るが、このときインデノ縮合ナフトピランの13位での置換はヒドロキシルを含まない。
【0013】
さらにまた別の非限定的な実施形態では、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランと;インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基と;インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基と;インデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジアルキル置換とを含み得る。第1電子求引基および第2電子求引基は、同一であっても異なってもよい。
【0014】
本開示のさらにまた別の非限定的な実施形態では、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランと;インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基と;インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基とを含み得るが、ただし第1電子求引基がフルオロ基である場合は、第2電子求引基はフルオロ基ではない。
【0015】
本開示のさらにまた別の非限定的な実施形態は、図III:
【0016】
【化12】

(式中、R16、R17、R18、R19、R20、BおよびB’は、本明細書中で以下に記載され、請求項で記述されるような基を表す)に記載した構造を有するフォトクロミック材料に関する。
【0017】
さらに他の非限定的な実施形態は、フォトクロミック組成物、光学素子などのフォトクロミック物品、およびこれらを製造する方法に関するが、このときフォトクロミック組成物およびフォトクロミック物品は、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態は、以下の図面と結び付けて読むとより明確に理解できる。
【0019】
(詳細な説明)
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する冠詞「a」、「an」および「the」には、明示的かつ明白に1つの指示物に限定されない限り複数の指示物が含まれる。
【0020】
さらに、本明細書のためには、他に特に指示しない限り、本明細書で使用する成分の量、反応条件、およびその他の特性またはパラメーターを表すすべての数字は、用語「約」によってあらゆる場合に修飾されると理解されるべきである。したがって、他に特に指示しない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で記述される数的パラメーターは近似値であると理解されるべきである。少なくとも、特許請求の範囲の範囲への均等論の適用を限定しようとするものではなく、数的パラメーターは、報告された有効数字の数および通常の丸め法の適用を参考にして読み取るべきである。
【0021】
さらに、本発明の広い範囲を記載している数的範囲およびパラメーターは上記で考察したように近似値であるが、実施例のセクションに記載した数値はできる限り正確に報告されている。しかし、そのような数値は、測定装置および/または測定技術の結果として生じる特定の誤差を本質的に含有していることが理解されるべきである。
【0022】
以下では、本発明の様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック化合物および材料について考察する。本明細書で使用する用語「フォトクロミック」は、少なくとも化学線の吸収に応答して変化する、少なくとも可視線に対する吸収スペクトルを有することを意味する。本明細書で使用する用語「化学線」は、フォトクロミック材料が第1の形態または状態から第2の形態または状態へ変換することを誘発できる電磁放射線を意味する。さらに、本明細書で使用する用語「フォトクロミック材料」は、フォトクロミック特性を示すように適合される、すなわち少なくとも化学線の吸収に応答して変化する少なくとも可視線に対する吸収スペクトルを有するために適合する任意の物質を意味する。本明細書で使用する用語「フォトクロミック組成物」は、フォトクロミック材料であってもなくてもよい1つ以上の他の材料と組み合わされたフォトクロミック材料を意味する。
【0023】
本明細書で使用する用語「インデノ縮合ナフトピラン」は、以下の(I)に示すようなインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含む環骨格を有するフォトクロミック化合物であると定義される。インデノ縮合ナフトピランは、フォトクロミックナフトピランの例である。本明細書で使用する用語「フォトクロミックナフトピラン」は、化学線の吸収に応答して第1「閉環体」と第2「開環体」との間で変換できるナフトピランを意味する。本明細書で使用する用語「閉環体」は、インデノ縮合ナフトピランの非活性化基底状態形に対応しており、用語「開環体」は、インデノ縮合ナフトピランの活性化状態形に対応する。
【0024】
本明細書で使用する用語「3位」、「6位」、「11位」、「13位」などは、以下の(I)の番号付けされた位置によって例示されるように、各々インデノ縮合ナフトピラン核の環原子の3位、6位、11位および13位を意味している。さらに、インデノ縮合ナフトピラン骨格の環は、各環をその対応する文字によって言及することができるように、A〜Eの文字で表示することができる。そこで例えば、本明細書で使用する場合、用語「C環」または「インデノ縮合ナフトピランのC環」は、以下の構造(I)において「C」と表示した環によって示されるように、インデノ縮合ナフトピランのナフチル部分構造の下の環に対応する。本明細書で使用する場合、用語「C環の炭素に結合した」は、構造(I)に記載した番号付けにしたがって、5位、6位、7位、または8位のうちの少なくとも1つにおける炭素に結合していることを意味する。
【0025】
【化13】

本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、インデノ縮合ナフトピランの3位の炭素に結合した基BおよびB’は、上記の(I)に例示したフォトクロミックインデノ縮合ナフトピランコアの一部である。いずれ特定の理論によって限定されることを意図しないが、B基およびB’基は、インデノ縮合ナフトピラン構造の開環体のπ系と共役していることによってインデノ縮合ナフトピラン構造の活性化開環体を安定化させるために役立ち得ると考えられる。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、基BおよびB’は、例えば、置換または非置換アリール環(例えば、置換または非置換のフェニル環またはナフチル環)、置換または非置換ヘテロ芳香族環構造、または本明細書において以下で記載する他の構造を含むがそれらに限定されない、コアインデノ縮合ナフトピラン構造の開環体のπ系と共役することのできる少なくとも1つのπ結合を有する任意の構造であり得る。以下でより詳細に記載するように、B基および/またはB’基が置換フェニルを含む特定の非限定的な実施形態によると、B基および/またはB’基のフェニル環のオルト位、メタ位および/またはパラ位は、例えばフルオロ基および/または電子供与基などの基で置換され得る。
【0026】
本開示の様々な非限定的な実施形態は、インデノ縮合ナフトピランと、およびインデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基とを含んでいるフォトクロミック材料を提供するが、このときインデノ縮合ナフトピランの13位での置換はヒドロキシルを含まない。特定の非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基を有さない類似のフォトクロミック材料より速い退色速度を有する。本明細書で使用する用語「基」は、1つ以上の原子の配列を意味する。本明細書で使用する用語「電子求引基」は、例えば、インデノ縮合ナフトピランコア構造のπ系などの、π系から電子密度を求引する基であると定義できる。さらに、本明細書で使用する「電子求引基」は、その基がインデノ縮合ナフトピランコアの芳香族π系などの芳香族π系に加わっている炭素に結合している場合、正のハメットσ値を有する基であると定義できる。本明細書で使用する用語「ハメットσ値」は、例えば芳香族π系などの分極性π電子系を通して伝わる、芳香族π系に関係する炭素に結合した置換基の電子供与的影響または電子求引的影響のいずれかとしての、電子的影響の尺度である。ハメットσ値は、フェニル環のパラ位における置換基の電子的影響をパラ位で置換された水素の電子的影響と比較した相対尺度である。一般に芳香族の置換基について典型的には、負のハメットσ値はπ電子系へ電子供与的影響を及ぼす基または置換基(すなわち、電子供与基)の指標であり、正のハメットσ値はπ電子系への電子求引的影響を及ぼす基または置換基(すなわち、電子求引基)の指標である。
【0027】
本明細書で使用する用語「電子供与基」は、例えば、インデノ縮合ナフトピランのコア構造などの、π系内へ電子密度を供与する基であると定義できる。「電子供与基」の例にはフォトクロミック材料のπ系に直接的に結合した原子を含むことができるが、このときこの原子は、芳香族環構造のπ系内へ非局在化することのできる少なくとも1つの孤立電子対を有し、そして/またはこの基は誘起効果によってπ系内へ電子密度を供与することができる(例えばアルキル置換基など)。さらに、本明細書で使用する「電子供与基」は、その基が芳香族π系に加わっている炭素に結合している場合、負のハメットσ値を有する基であると定義できる。
【0028】
本明細書に記載したフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態と結び付けて使用するために適切な電子求引基は、約0.05〜約0.75の範囲内のハメットσ値を有し得る。適切な電子求引基は、例えば、限定されないが:フルオロ(σ=0.06)、クロロ(σ=0.23)、およびブロモ(σ=0.23)などのハロゲン;パーフルオロアルキル(例えば、−CF、σ=0.54)またはパーフルオロアルコキシ(例えば、−OCF、σ=0.35)であって、このときパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシのいずれかのパーフルオロアルキル部分は、例えば、トリフルオロメチルまたは式C2n+1(式中、「n」は1〜10の整数である)を有する他のパーフルオロアルキル部分を含み得るパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシ;シアノ(σ=0.66);−OC(=O)R(例えば、−OC(=O)CH、σ=0.31);−SOX(例えば、−SOCH、σ=0.68);または−C(=O)−X(式中、Xは水素(−CHO、σ=0.22)、C〜Cアルキル(例えば、−C(=O)CH、σ=0.50)、−OR(σ≒0.4)、または−NR(例えば、−C(=O)NH、σ=0.36)(式中、R、R、R、およびRの各々は、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり得るが、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり得る))を含み得る。約0.05〜約0.75の範囲内のハメットσ値を有するさらに適切な電子求引置換基は、その開示が参照して本明細書に組み込まれる「Section 9 Physicochemical Relationships」Lange’s Handbook of Chemistry,第15版.J.A.Dean編,McGraw Hill,1999,9.1−9.8頁に記載されている。当業者には、下付き文字「p」がハメットσ値と結び付けて使用される場合は、その基がパラ置換安息香酸モデル系などのモデル系のフェニル環のパラ位に位置する場合に測定されるハメットσ値を意味することは理解される。
【0029】
本明細書で使用する用語「ポリアルキレングリコール」は、−[O−(C2a)]−OR’’(式中、「a」および「b」は各々独立して1〜10の整数であり、R’’はH、アルキル、反応性置換基、または第2フォトクロミック材料であり得る)の一般構造を有する置換基を意味する。適切なポリアルキレングリコールの非限定的な例は、その開示が参照して本明細書に組み込まれる米国特許第6,113,814号第3欄第30〜64行に見いだすことができる。反応性置換基の非限定的な例は、その開示が参照して本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/102,280号第[0033]〜[0040]段落に見いだすことができる。
【0030】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基は、上記に説明かつ記載した電子求引基であり得る。
【0031】
本発明者らによって、13位での特定の置換は、フォトクロミック材料の疲労に影響を及ぼし得ることが認識されている。本明細書で使用する用語「疲労」は、フォトクロミック材料のフォトクロミック特性の経時的劣化を意味する。例えば、フォトクロミック材料の飽和光学密度および/または性能等級(performance rating)は、疲労に起因して経時的に劣化し得る。本明細書で使用する用語「飽和光学密度」、略語「Sat’d OD」は、実施例のセクションにおいて定義する標準条件下でのフォトクロミック材料の定常状態吸光度(すなわち、光学密度)の尺度である。本明細書で使用する用語「性能等級」または「PR」は、フォトクロミック材料の性能の尺度であり、方程式:
性能等級=((Sat’d OD)/T1/2)×10,000
によって計算される。一般に、フォトクロミック材料が疲労するにつれて、フォトクロミック材料は、基底状態形において色、例えば黄色を発生することがある。フォトクロミック材料のそのような疲労は、フォトクロミック材料を組み込んでいるフォトクロミック物品が、フォトクロミック材料が「透明」な基底状態形にある場合に望ましくない黄色を発生することを引き起こすことがある;そして/または着色した活性化状態形でより弱い(すなわち、低強度)色を有するフォトクロミック物品を生じさせることがある。本発明者らによって、特定の置換パターンは、フォトクロミック材料において疲労の増加をもたらし得ること、すなわち、その材料のフォトクロミック特性または寿命が減少して黄変が発生し得ることが観察されている。例えば、本発明者らは、特定のインデノ縮合ナフトピランの13位でのヒドロキシル基の置換は疲労の増加をもたらし得ることを観察した。いずれの特定の理論によっても束縛されることを意図しないが、本発明者らは、フォトクロミック材料のこの疲労の増加は脱離、酸化、または他の分解経路に起因し得ることを企図している。
【0032】
このため、様々な非限定的な実施形態によると、本明細書に開示されるフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランを含み得、このとき13位での置換はヒドロキシルを含まない。さらに、様々な非限定的な実施形態によると、インデノ縮合ナフトピランの13位での置換は、例えば、しかし本明細書中で限定的ではなくジェミナルジメチル置換などのジェミナルジアルキル置換を含み得る。本明細書で使用する用語「ジェミナル置換」は、同一であっても異なってもよい2つの基が、構造の同一炭素原子で、例えばインデノ縮合ナフトピランの13位で置換されることを意味する。例えば、ジェミナルジアルキル置換とは、例えば1〜6個の炭素原子を有するアルキル基などの2つのアルキル基が同一炭素原子で置換されることを意味する。
【0033】
本開示全体を通して、用語「退色速度」は、フォトクロミック材料のT1/2値を測定することによって表示できる運動速度値を表す。本明細書で使用する用語「退色速度」は、活性化着色状態から非活性化透明状態へフォトクロミック材料が変換する速度の尺度である。フォトクロミック材料についての退色速度は、例えば、特定のマトリックス内で制御された条件下でフォトクロミック材料を飽和へ活性化する工程と、その活性化定常状態吸光度(すなわち、飽和光学密度)を測定する工程と、その後にフォトクロミック材料の吸光度が活性化定常状態の吸光度値の半分へ減少するために要する時間の長さを決定する工程とによって測定することができる。この方法で測定する場合、退色速度は、秒の単位でT1/2と指定される。そこで、退色速度が「より速い」と言われる場合は、そのフォトクロミック化合物は、着色した活性化状態形から透明な基底状態へより速い速度で変化する。より速い退色速度は、例えば、フォトクロミック材料についてのT1/2測定値の数値の減少によって表示することができる。すなわち、退色速度がより速くなるにつれて、吸光度が初期活性化吸光度値の1/2へ減少するための時間の長さはより短くなる。本明細書に開示されたフォトクロミック材料についてのT1/2値を決定するためのより詳細な測定方法は、以下の実施例に記載されている。
【0034】
当業者には、フォトクロミック材料の退色速度が、その中にフォトクロミック材料が組み込まれる媒質に依存し得ることは理解される。本明細書で使用する用語「組み込まれる」は、媒質中のフォトクロミック材料に関連して使用される場合は、物理的および/または化学的に結合していることを意味する。本開示では、本明細書に開示したT1/2値によって表示される退色速度値および深色シフト値を含むすべてのフォトクロミック性能データは、他に詳細に言及しない限り、メタクリレートポリマーを含むポリマー試験チップ中へのフォトクロミック材料の組み込みを含む標準プロトコールを用いて測定される。フォトクロミック性能試験、および本開示の様々な非限定的な実施形態のフォトクロミック材料を組み込んでいるポリマー試験チップを形成するための標準プロトコールは、本開示の実施例のセクションにおいてより詳細に開示する。当業者は、退色速度および例えば深色シフトデータなどの他のフォトクロミック性能データについての正確な数値は組み込みの媒質に依存して変動し得るが、本明細書に開示したフォトクロミック性能データは、他の媒質中に組み込まれた場合にフォトクロミック材料について予測される相対速度およびシフトの例示となり得ることを認識する。
【0035】
【化14】

構造(A)に関連して、本明細書に開示した特定の非限定的な実施形態によると、インデノ縮合ナフトピランの6位にある電子求引基を有するフォトクロミック材料は、6位に電子求引基を有さない類似のインデノ縮合ナフトピランより速い退色速度を有し得る。例えば、構造(A)の化合物1aに関連して、フォトクロミック材料の1つの特定の非限定的な実施形態では、R’はメトキシカルボニル基(すなわち、−C(=O)−X(式中、Xは−ORであり、R=CHである))を含むインデノ縮合ナフトピランの6位にある電子求引基であり、このフォトクロミック材料は130秒間の退色速度T1/2を有する。構造(A)に関連してそれとは対照的に、6位に水素としてのR’を有するインデノ縮合ナフトピランを含む(すなわち、6位に電子求引基を有さない)類似のフォトクロミック材料である化合物1bは、395秒間の退色速度T1/2を有する。さらに、この特定の非限定的な例のインデノ縮合ナフトピランはさらに、各々が4−フルオロフェニルを含んでいるB基およびB’基を3位で有しており、インデノ縮合ナフトピランの13位での置換はジェミナルジメチルである。
【0036】
次に、構造(A)について参照すると、また別の特定の非限定的な例では、6位でシアノ基としてR’を有するインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料である化合物2は、395秒間のT1/2を有する6位で電子求引基が欠如する類似のインデノ縮合ナフトピラン(すなわち、構造(A)、化合物1b)とは対照的に、52秒間の退色速度T1/2を有する。さらに、この特定の非限定的な例のインデノ縮合ナフトピランはさらに、各々が4−フルオロフェニルを含んでいるB基およびB’基を3位で有しており、インデノ縮合ナフトピランの13位での置換はジェミナルジメチルである。
【0037】
より速い退色速度に加えて、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランおよび第1電子求引基と、特定の実施形態では本明細書に記載した第2電子求引基とを含む類似のフォトクロミック材料と比較して増加している性能等級を有し得る。性能等級は、典型的には1〜100の範囲内であり、より高い性能等級が一般に好ましい。再び構造(A)におけるフォトクロミック材料を参照すると、6位に結合したメトキシカルボニル(化合物1a)またはシアノ基(化合物2)を有するインデノ縮合ナフトピランである化合物1aおよび化合物2は、各々62および94の性能等級を有するが、類似の6−非置換インデノ縮合ナフトピラン(すなわち、構造(A)の化合物1b)についての性能等級は28である。
【0038】
さらに、6位に電子求引基を有するインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料は、6位で電子求引基を有さない類似のインデノ縮合ナフトピランの極大吸収波長と比較して少なくとも10nm深色シフトした極大吸収波長を有し得る。例えば、構造(A)を参照すると、化合物1aおよび2は、各々543nmおよび551nmの極大吸収波長を有するが、類似の6−非置換インデノ縮合ナフトピラン(構造(A)の化合物1b)についての極大吸収波長は533nmである。
【0039】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基に加えて、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基をさらに含み得るが、このとき13位での置換はヒドロキシルを含まない。様々な非限定的な実施形態によると、第2電子求引基は、例えば、限定されないが:フルオロ、クロロ、およびブロモなどのハロゲン;パーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシであって、このときパーフルオロアルキル部分は、例えばトリフルオロメチル、および式C2n+1を有するその他のパーフルオロアルキル置換基を有し得るパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシ;シアノ;−OC(=O)R;−SOX;または−C(=O)−X(式中、Xは、水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR(式中、R、R、R、およびRの各々は独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である)を含み得る。第1電子求引基および第2電子求引基は、同一であっても異なってもよい。
【0040】
本明細書に開示した特定の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料の第1電子求引基および第2電子求引基は、各々独立して:フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、または−C(=O)−OR(式中、Rは、C〜Cアルキル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールである)であり得る。
【0041】
【化15】

本明細書に開示した特定の非限定的な実施形態によると、本明細書で記載され、特許請求される第1電子求引基および第2電子求引基を有するインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料は、第1および第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランより速い退色速度を有することができる。例えば、構造(B)を参照すると、フォトクロミック材料の1つの特定の非限定的な実施形態における化合物3aでは、R’は第1電子求引フルオロ基であり、R’’は第2電子求引フルオロ基であり、このフォトクロミック材料は、199秒間の退色速度T1/2値を有する。構造(B)に関連してそれとは対照的に、水素としてのR’および水素としてのR’’を有するインデノ縮合ナフトピランを含む(すなわち、第1電子求引基および第2電子求引基を備えていない)類似のフォトクロミック材料である化合物1bは、395秒間の退色速度T1/2値を有する。さらに構造(B)を参照すると、またはフォトクロミック材料の他の非限定的な実施形態による、クロロ基、シアノ基、およびメトキシカルボニル基を各々含む第1および第2電子求引基を有するインデノ縮合ナフトピランに対応する化合物3b、3c、および3dは、各々121秒間、30秒間および71秒間の退色速度T1/2値を各々有する。
【0042】
さらに、本明細書で記載され、特許請求される第1電子求引基および第2電子求引基を有するインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料は、第1および第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランと比較して、増加した性能等級および深色シフトした極大吸収波長を有することができる。例えば、構造(B)を参照すると、化合物3a、3b、3c、および3dは、各々45、54、76、および66の性能等級、ならびに各々545nm、547nm、545nm、および541nmの極大吸収波長値を有している。構造(B)に関連してそれとは対照的に、水素としてのR’および水素としてのR’’を有するインデノ縮合ナフトピランを含む(すなわち、第1電子求引基および第2電子求引基を備えていない)類似のフォトクロミック材料である化合物1bは、28の性能等級および533nmの極大吸収波長値を有する。
【0043】
他の非限定的な実施形態によると、本開示は、インデノ縮合ナフトピランと;インデノ縮合ナフトピランのC環上の炭素に結合した第1電子求引基と;インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基とを含むフォトクロミック材料を提供するが、このときインデノ縮合ナフトピランの13位での置換はヒドロキシル基を含まない。これらの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料上の第1電子求引基および第2電子求引基は、同一であっても異なってもよい。さらに、フォトクロミック材料がC環の炭素に結合した第1電子求引基および11位に結合した第2電子求引基を含んでいる、13位での置換はヒドロキシルを含まない特定の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、C環の炭素に結合した第1電子求引基およびその11位に結合した第2電子求引基を備えていない類似のフォトクロミック材料より速い退色速度を有することができる。
【0044】
本明細書に開示した他の非限定的な実施形態は、インデノ縮合ナフトピランと;インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基と;インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基と;インデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジアルキル置換とを含むフォトクロミック材料を提供するが、このとき第1電子求引基および第2電子求引基は同一であっても異なってもよい。特定の非限定的な実施形態によると、6位に結合した第1電子求引基と、11位に結合した第2電子求引基と、インデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジアルキル置換とを有するフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基と、およびインデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基とを備えていないインデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジアルキル置換を有する類似のフォトクロミック材料より速い退色速度および高い性能等級を有することができる。
【0045】
本明細書に開示したさらにまた別の非限定的な実施形態は、インデノ縮合ナフトピランと;インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基と;インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基とを含むが、ただし第1電子求引基がフルオロ基である場合は、第2電子求引基はフルオロ基ではない、フォトクロミック材料を提供する。特定の非限定的な実施形態によると、インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基と、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基とを有し、このとき第1電子求引基および第2電子求引基の両方はフルオロ基ではないフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基と、およびインデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基とを備えていないが、このとき第1電子求引基および第2電子求引基の両方はフルオロ基ではない類似のフォトクロミック材料より速い退色速度を有することができる。
【0046】
上述したフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態のいずれかによると、第1電子求引基は、例えば、フルオロ、クロロ、およびブロモなどのハロゲン;パーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシであって、このときパーフルオロアルキル部分は、例えばトリフルオロメチル、および式C2n+1を有するその他のパーフルオロアルキル部分を含み得るパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシ;シアノ;−OC(=O)R;−SOX;または−C(=O)−X(式中、Xは、水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR(式中、R、R、R、およびRの各々は独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である)であり得る。
【0047】
さらに、上述した第1および第2電子求引基を含むフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態のいずれかによると、例えば、第1電子求引基と同一であっても異なってもよい第2電子求引基は、フルオロ、クロロ、およびブロモなどのハロゲン;パーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシであって、このときパーフルオロアルキル部分は、例えばトリフルオロメチル、および式C2n+1を有するその他のパーフルオロアルキル部分を含み得るパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシ;シアノ;−OC(=O)R;−SOX;または−C(=O)−X(式中、Xは、水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR(式中、R、R、R、およびRの各々は独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である)であり得る。他の非限定的な実施形態では、第1電子求引基および第2電子求引基は、各々独立して、同一または相違する、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、または−C(=O)−OR(式中、Rは、C〜Cアルキル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールである)である。
【0048】
インデノ縮合ナフトピランおよび第1電子求引基と、特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基とを含む本明細書に記載した非限定的な実施形態のいずれかによるフォトクロミック材料は、(i)第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射線の閉環体の吸光度スペクトルと比較して、吸光度の最長波長が深色シフトした、電磁放射線に対する閉環体吸収スペクトル;ならびに(ii)電磁放射線に対する開環体吸収スペクトルまたは第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料と比較して深色シフトした電磁放射線の開環体吸収スペクトルのうちの少なくとも1つを有し得る。本明細書で使用する用語「深色シフトする」は、より長い波長値へシフトする電磁放射線に対する吸収スペクトルを有することを意味する。
【0049】
例えば、図1A〜1Fを参照すると、吸収スペクトルは、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による、6位に第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では11位に第2電子求引基を有するインデノ縮合ナフトピランについての、電磁線スペクトルの可視領域内での不活性化および活性化両方の吸収スペクトルを示す。図1Gの吸収スペクトルは、第1電子求引基および第2電子求引基を備えていないインデノ縮合ナフトピランを含む類似のフォトクロミック材料についての可視領域内の吸収スペクトルを示している。図1A〜1Fの吸収スペクトルに見ることができるように、本開示の特定の非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料についての活性化開環体の吸収スペクトルは、図1Gにおける活性化吸収スペクトルと比較して、深色シフトしている。すなわち、活性化形の吸収スペクトルは、より長い波長に向かって移動している。
【0050】
上記で考察したように、本開示のフォトクロミック材料についての可視光線についての活性化形吸収スペクトルの深色シフトは、従来型フォトクロミック材料と比較してより青い色を有するフォトクロミック材料(およびその結果としてフォトクロミック物品およびデバイスなど)を提供する(すなわち、フォトクロミック材料は、より長い「より赤い」波長の可視光線を吸収し、より短い「より青い」波長の光を透過させる)。そこで、結果として生じる本開示のフォトクロミック材料を含む処方物は、このために活性化形においてより中間色を有し得る。
【0051】
さらに、ここで、図2A〜2Fを参照すると、吸収スペクトルは、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による、6位に第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では11位に第2電子求引基を有するインデノ縮合ナフトピランについての電磁線スペクトルの紫外線領域内での不活性化および活性化両方の吸収スペクトルを示す。図2Gの吸収スペクトルは、第1電子求引基および第2電子求引基を備えていないインデノ縮合ナフトピランを含む類似のフォトクロミック材料についての紫外線領域内の吸収スペクトルを示している。図2A〜2Fの吸収スペクトルに見ることができるように、本開示の特定の非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料についての非活性化閉環体の吸収スペクトルは、図2Gにおける活性化吸収スペクトルと比較して、深色シフトしている。すなわち、非活性化形の吸収スペクトルは、より長い波長に向かって移動している。
【0052】
図2A〜2Fにおける非活性化形についての吸収スペクトルは、図2Gにおける類似のフォトクロミック材料の非活性化形の吸収スペクトルと比較して390nm〜420nmの範囲内で増加した吸収を有するので、図2A〜2Fに示した吸収スペクトルが得られたフォトクロミック材料は、かなりの量の390nm〜420nmの範囲内にある電磁放射線が遮蔽または遮断される用途において(例えばフロントガラスの後方での使用を含む用途において)有益にも使用できることが企図されている。
【0053】
本明細書に記載した非限定的な実施形態のいずれかによる、インデノ縮合ナフトピランおよび第1電子求引基と、特定の実施形態では第2電子求引基とを含むフォトクロミック材料は、第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基とを備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射線についての開環体吸収スペクトルと比較して、少なくとも約8nm深色シフトする電磁放射線についての開環体吸収スペクトルを有することができる。本明細書に開示したフォトクロミック材料の特定の非限定的な実施形態によると、電磁放射線についての開環体吸収スペクトルは、類似のフォトクロミック材料と比較して約8nm〜約35nm深色シフトする。
【0054】
さらにまた、本明細書に開示した非限定的な実施形態のいずれかによる、インデノ縮合ナフトピランおよび第1電子求引基と、特定の実施形態では第2電子求引基とを含むフォトクロミック材料は、第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射線についての閉環体吸収スペクトルと比較して少なくとも約5nm深色シフトした電磁放射線についての閉環体吸収スペクトルを有することができる。
【0055】
上記で考察したように、インデノ縮合ナフトピランおよび第1電子求引基と、特定の実施形態では、さらに第2電子求引基とを含むインデノ縮合ナフトピラン(例えば、6位に結合した第1電子求引基と、特定の非限定的な実施形態では11位に結合した第2電子求引基とを含むインデノ縮合ナフトピランであって、このとき13位での置換はヒドロキシルを含まないインデノ縮合ナフトピラン;C環の炭素に結合した第1電子求引基とおよび11位に結合した第2電子求引基とを含むインデノ縮合ナフトピランであって、このとき13位での置換はヒドロキシルを含まないインデノ縮合ナフトピラン;6位へ結合した第1電子求引基と、11位に結合した第2電子求引基と、13位でのジェミナルジアルキル置換とを含むインデノ縮合ナフトピラン;または6位へ結合した第1電子求引基と、11位に結合した第2電子求引基とを含むインデノ縮合ナフトピランであって、このとき電子求引基および電子求引基の両方はフルオロ基ではないインデノ縮合ナフトピラン)を含む本発明の様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料の退色速度は、第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基を備えていないインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料と比較して、ポリメタクリレート製チップで測定したT1/2と表示される、より速い退色速度を有することができる。さらに、フォトクロミック材料が第1電子求引基と、特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基とを含む本明細書に開示した特定の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料の退色速度は、第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基を備えていない類似のフォトクロミック材料より少なくとも45秒速くあり得る。他の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料の退色速度は、第1電子求引基、および特定の非限定的な実施形態では、第2電子求引基を備えていない類似のフォトクロミック材料より約45秒〜約675秒速くあり得る。
【0056】
本開示の様々な非限定的な実施形態による、インデノ縮合ナフトピランと、第1電子求引基と、特定の実施形態では第2電子求引基とを含むフォトクロミック材料は、本明細書中で定義されるような容認できる性能等級を依然として示しながら、より速い退色速度を有することができる。特定の非限定的な実施形態によると、本開示によるフォトクロミック材料は、約45より大きい性能等級を有することができる。他の非限定的な実施形態によると、本開示によるフォトクロミック材料の性能等級は、約45〜約95であり得る。
【0057】
本明細書に記載したフォトクロミック材料の非限定的な実施形態のいずれかによると、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの3位に結合したB基およびB’基をさらに含み得、このときB基およびB’基は各々独立して、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、フェニル上の置換基は独立して電子供与基または第3電子求引基である。
【0058】
他の非限定的な実施形態によると、B基およびB’基は各々、独立してフェニルまたは4位が置換されたフェニルであり得るが、このとき4位が置換されたフェニルの4位の置換基は、電子供与基、フルオロ基、または以下に定義される第3電子求引基であり得る。例えば、フォトクロミック材料が、B基およびB’基のうちの少なくとも一方のフェニルの4位の置換基がフルオロ基または電子供与基であるB基および/またはB’基を含み得る様々な非限定的な実施形態によると、電子供与基は、C〜Cアルキル、−OR、および−NR1011(式中、R、R10、およびR11は、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)のうちの少なくとも1つであり得る。または、あるいは加えて、フォトクロミック材料は、B基および/またはB’基を含み得るが、このときB基およびB’基のうちの少なくとも一方のフェニルの4位の置換基は、第3電子求引基である。例えば、特定の非限定的な実施形態によると、第3電子求引基は、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、ニトロ、−OC(=O)Z’、−SOX’、または−C(=O)−X’(式中、Z’およびX’は、各々独立して水素、C〜Cアルキル、−OR12、または−NR1314(式中、R12、R13、およびR14は各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)であり得る)から選択することができる。
【0059】
上記で考察したように、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、4位が置換されたフェニルであるB基および/またはB’基を含み得る。例えば、様々な非限定的な実施形態によると、B基は置換基が電子供与基を含む4位が置換されたフェニルを含み得、B’基は置換基が第3電子求引基を含む4位が置換されたフェニルを含み得る。他の実施形態によると、本明細書では非限定的であるが、B基は4−フルオロフェニル基であり得、B’基は4位が置換されたフェニルであり得るが、このとき4位における置換基は−NR1011である。これらの非限定的な実施形態によると、R10およびR11は、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR10およびR11は窒素原子と一緒になって以下の構造式II:
【0060】
【化16】

(式中、各−Y−は、独立して各存在について−CH−、−CH(R15)−、−C(R15、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R15)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R15)−、または−N(アリール)−であるが、このとき各R15は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、「m」は1、2または3の整数であり、「p」は0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環を形成する。
【0061】
他の非限定的な実施形態によると、B基は4−フルオロフェニル基であり、B’基は4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルであり得るが、このとき置換は(C〜C)アルキル、またはヒドロキシメチルなどであるがそれには限定されないヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る。B基が4−フルオロフェニル基であり得、B’基が4位が置換されたフェニルであり得、このとき4位における置換基は−NR1011である他の実施形態および開示は、その開示が全体として参照して本明細書に組み込まれる、本開示と同時に出願された、発明の名称「Photochromic Indeno−fused Naphthopyrans」の米国非仮特許出願第11/_____号に記載されている。
【0062】
以前に考察したように、インデノ縮合ナフトピラン、(例えば6位に結合した第1電子求引基と、特定の非限定的な実施形態では11位に結合した第2電子求引基とを含み、このとき13位での置換はヒドロキシルを含まないインデノ縮合ナフトピラン;またはC環の炭素に結合した第1電子求引基および11位に結合した第2電子求引基を含み、このとき13位での置換はヒドロキシルを含まないインデノ縮合ナフトピラン)を含むフォトクロミック材料の特定の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジアルキル置換をさらに含み得る。特定の非限定的な実施形態では、13位でのジェミナルジアルキル置換は、インデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジメチル置換を含み得る。
【0063】
フォトクロミック材料がインデノ縮合ナフトピランと、その6位における第1電子求引基と、その11位における第2電子求引基とを含み、このときインデノ縮合ナフトピランの13位での置換はヒドロキシルを含まない本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、6位に結合した第1電子求引基および11位に結合した第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料と比較して少なくとも50秒速い、ポリメタクリレート製チップで測定した退色速度T1/2を有することができる。他の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、第1電子求引基および第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料と比較して約50秒〜約200秒速い、ポリメタクリレート製チップで測定した退色速度T1/2を有することができる。
【0064】
特定の非限定的な実施形態によると、インデノ縮合ナフトピランと、第1電子求引基と、特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基(例えば、6位に結合した第1電子求引基と、特定の非限定的な実施形態では11位に結合した第2電子求引基とを含み、このとき13位での置換はヒドロキシルを含まないインデノ縮合ナフトピラン;C環の炭素に結合した第1電子求引基および11位に結合した第2電子求引基を含み、このとき13位での置換はヒドロキシルを含まないインデノ縮合ナフトピラン;または6位に結合した第1電子求引基と、11位に結合した第2電子求引基と、13位でのジェミナルジアルキル置換とを含むインデノ縮合ナフトピラン)を含む本開示のフォトクロミック材料では、第1電子求引基はインデノ縮合ナフトピランの6位に位置するフルオロであり得、第2電子求引基はフルオロ基であり得る。フォトクロミック材料がインデノ縮合ナフトピランと、その6位に結合した第1電子求引基と、およびその11位に結合した第2電子求引基とを含む他の非限定的な実施形態によると、第1電子求引基がフルオロ基である場合は、第2電子求引基はフルオロ基ではない。
【0065】
本明細書に開示したさらに他の非限定的な実施形態は、以下の構造IIIによって概略的に表される構造を有するフォトクロミック材料を提供する。
【0066】
【化17】

構造IIIを参照すると、R16は、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R21、−SOX、または−C(=O)−X(式中、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR22、または−NR2324(式中、R21、R22、R23、およびR24は、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である)であり得る。
【0067】
17は、例えば、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R25、−SOX、または−C(=O)−X(式中、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR26、または−NR2728(式中、R25、R26、R27、およびR28は、各々が各存在に対して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールから独立して選択され得、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である)であり得る。
【0068】
さらに、構造IIIによると、「s」は0〜3の範囲内の整数であり得、「q」は0〜3の範囲内の整数であり得、および各R18は、各存在について、独立して水素;フルオロ;クロロ;C〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル;置換または非置換フェニル;−OR29または−OC(=O)R29(式中、R29は、例えば、水素、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、またはモノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキルであり得るが、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである);一置換フェニルであって、フェニルはパラ位に位置する置換基を有しており、このとき置換基はジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH、または−[O−(CH−(式中、「t」は2、3、4、5または6の整数であり、「k」は1〜50の整数であり、置換基は、他のフォトクロミック材料のアリール基に結合している)であり得る一置換フェニル;−N(R30)R31(式中、R30およびR31は、各々独立して、例えば、水素、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ジベンゾピリジル、フルオレニル、C〜Cアルキルアリール、C〜C20シクロアルキル、C〜C20ビシクロアルキル、C〜C20トリシクロアルキルまたは(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキルであり得、このときアリール基はフェニルまたはナフチルであり得る、またはR30およびR31は共に窒素と結合してC〜C20ヘテロ−ビシクロアルキル環またはC〜C20ヘテロ−トリシクロアルキル環を形成し得る);以下の構造式IVA:
【0069】
【化18】

(式中、各−Y−は、各存在について各々独立して−CH−、−CH(R32)−、−C(R32、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R32)(アリール)−から選択され得、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R32)−、または−N(アリール)−であり得るが、このとき各R32は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり得、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり得、「m」は1、2または3の整数であり、「p」は0、1、2、または3の整数である(但し、pが0の場合、Zは−Y−である))によって表される窒素含有環;以下の構造式IVBまたはIVC:
【0070】
【化19】

(式中、R34、R35、およびR35は、各々独立して、例えば、水素、C〜Cアルキル、フェニル、またはナフチルであり得る、または基R34およびR35は共に5〜8個の炭素原子の環を形成し得、各R33は、各存在について独立してC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フルオロまたはクロロから選択され得、「r」は、0、1、2、または3の整数である)によって表される基;ならびに非置換、一置換、または二置換C〜C18スピロ二環式アミン、または非置換、一置換、および二置換C〜C18スピロ三環式アミン(式中、置換基は独立して、例えば、アリール、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはフェニル(C〜C)アルキルであり得る)であり得る;またはインデノ縮合ナフトピランの6位にあるR18基およびインデノ縮合ナフトピランの7位にあるR18基は共にIVDまたはIVE:
【0071】
【化20】

(式中、TおよびT’は、各々独立して、例えば酸素または基−NR30−であり得、R30、R34、およびR35は上記に記述されたとおりであり得る)によって表される基を形成することができる。
【0072】
さらにまた、構造IIIを参照すると、R19およびR20は、各々独立して、例えば、水素;C〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル;アリル;置換または非置換フェニル;置換または非置換ベンジル;クロロ;フルオロ;基−C(=O)W(式中、Wは、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換、一置換または二置換のアリール基であるフェニルまたはナフチル、フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノまたはジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノであり得る);−OR37(式中、R37は、例えば、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリル、または基−CH(R38)Y’’(式中、R38は、例えば、水素またはC〜Cアルキルであり得、Y’’は、CN、CF、またはCOOR39(式中、R39は、例えば、水素またはC〜Cアルキルであり得る)であり得る)であり得る、またはR37は、基−C(=O)W’(式中、W’は、例えば、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換、一置換または二置換のアリール基であるフェニルまたはナフチル、フェノキシ、モノ(C〜C)アルキル置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルキル置換フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノまたはジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノであり得るが、このときフェニル基またはナフチル基の置換基の各々は独立してC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり得る);または一置換フェニルであり得るが、このときフェニルはパラ位に位置する置換基を有しており、このとき置換基は、例えば、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−、または−[O−(CH−(式中、「t」は、整数2、3、4、5または6であり、「k」は1〜50の整数である)であり、この置換基は他のフォトクロミック材料のアリール基に結合しているか;またはR19およびR20は、共にオキソ基、3〜6個の炭素原子を含有するスピロ−カルボン酸基、または1〜2個の酸素原子およびスピロ炭素原子を含めて3〜6個の炭素原子を含有するスピロ−複素環基を形成することができるが、このときスピロ−カルボン酸基およびスピロ−複素環基は0、1または2個のベンゼン環を用いて環形成されている。
【0073】
さらになお構造IIIを参照すると、BおよびB’は、各々独立して、例えば、非置換、一置換、二置換、または三置換のフェニル基またはアリール基;9−ユロリジニル;またはピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾリル、ベンゾピリジル、インドリニル、またはフルオレニルから選択される非置換、一置換または二置換のヘテロ芳香族基であって、このときフェニル、アリールおよびヘテロ芳香族の置換基の各々は、独立して例えば、ヒドロキシル、基−C(=O)R40(式中、R40は、例えば−OR41、−N(R42)R43、ピペリジノ、またはモルホリノであり得、このときR41は、例えば、アリル、C〜Cアルキル、フェニル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキルまたはC〜Cハロアルキルであり得、ハロ置換基はクロロまたはフルオロであり得、R42およびR43は、各々独立して、例えば、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニルまたは置換フェニルであり得、フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)であり得る、フェニル、アリールおよびヘテロ芳香族基;ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニル、およびアクリジニルから選択される非置換または一置換の基であって、置換基の各々はC〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、フェニル、またはハロゲンである非置換または一置換の基;一置換フェニルであって、フェニルはパラ位に位置する置換基を有しており、このとき置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−、または−[O−(CH−(式中、「t」は、整数2、3、4、5または6であり、「k」は、1〜50の整数であり、置換基は他のフォトクロミック材料のアリール基に結合されている)である一置換フェニル;以下の:
【0074】
【化21】

(式中、Kは、−CH−または−O−であり得、Mは、−O−または置換窒素であり得(但し、Mが置換窒素である場合、Kは−CH−であり、置換窒素の置換基は水素、C〜C12アルキル、またはC〜C12アシルであり得る)、各R44は独立して、各存在について、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、ヒドロキシ、およびハロゲンから選択され得、R45およびR46は、各々独立して、例えば、水素またはC〜C12アルキルであり得、および「u」は0〜2の範囲内の整数である)の1つによって表される基;または:
【0075】
【化22】

(式中、R47は、例えば、水素またはC〜C12アルキルであり得、R48は、例えば、ナフチル、フェニル、フラニル、およびチエニルから選択される非置換、一置換、または二置換の基であり得るが、このとき置換基はC〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、またはハロゲンである)によって表される基であり得る;またはBおよびB’は共にフルオレン−9−イリデン、一置換または二置換フルオレン−9−イリデンのうちの1つを形成し得るが、このときフルオレン−9−イリデンの置換基の各々は、独立してC〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、およびハロゲンから選択され得る。
【0076】
特定の非限定的な実施形態によると、構造IIIのフォトクロミック材料は、その6位に結合した基R16を備えていない類似のフォトクロミック材料より速い退色速度を示す。
【0077】
構造IIIの特定の非限定的な実施形態では、Bは4−フルオロフェニルであり、B’は4位が置換されたフェニルを含むが、このとき4位における置換基は−NR1011であり得、式中、R10およびR11は、各々独立して、例えば、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり得、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR10およびR11は窒素原子と一緒になって構造式II:
【0078】
【化23】

(式中、各−Y−は、各存在について、独立して−CH−、−CH(R15)−、C(R15−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R15)(アリール)−から選択され得、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R15)−、または−N(アリール)−であり得、このとき各R15は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり得、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり得、「m」は1、2または3の整数であり、「p」は0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環を形成することができる。フォトクロミック材料の他の非限定的な実施形態によると、B’は、4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルを含んでおり、このとき置換基は(C〜C)アルキル、またはヒドロキシメチルなどであるがそれには限定されないヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る。
【0079】
フォトクロミック材料が構造IIIによって表される特定の非限定的な実施形態によると、R16はフルオロであり得、R17はフルオロであり得、R19およびR20は各々独立してC〜Cアルキルであり得る。特定の非限定的な実施形態では、Bは4−フルオロフェニルであり得、B’は4位が置換されたフェニルを含み得るが、このとき4位における置換基は−NR1011(式中、R10およびR11は、各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり得、このときフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR10およびR11は窒素原子と一緒になって構造式II:
【0080】
【化24】

(式中、各−Y−は、各存在について、独立して−CH−、−CH(R15)−、C(R15−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R15)(アリール)−から選択され得、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R15)−、または−N(アリール)−であり得、このとき各R15は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり得、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり得、「m」は1、2または3の整数であり、「p」は0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環を形成することができる)である。フォトクロミック材料の他の非限定的な実施形態によると、B’は、4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルを含んでおり、このとき置換は(C〜C)アルキル、またはヒドロキシメチルなどであるがそれには限定されないヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る。
【0081】
本開示のフォトクロミック材料の特定の他の非限定的な実施形態は、少なくとも一部には、IUPAC命名法体系によって決定されるそれらの化学名によって表すことができる。本開示によって企図されるフォトクロミック材料には:
(a)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(b)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(c)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(d)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(e)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(f)3−(4−メチルフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(g)3−フェニル−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(h)3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(i)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(j)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(k)3−フェニル−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(l)3−(4−メトキシフェニル)−3−(5−メチルチオフェン−2−イル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(m)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(n)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6−シアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(o)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジシアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(p)3,3−ジフェニル−6,11−ジシアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(q)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6−メトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(r)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−メトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(s)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジ(メトキシカルボニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(t)3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6−ブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(u)3−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−6−ブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;および
(v)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
が含まれる。
【0082】
以下では、図3および4を参照して、本開示の様々な非限定的な実施形態のフォトクロミック材料を作製する非限定的な方法について考察する。図3は、置換された電子求引基を有する7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を作製するための反応スキームを例示している。置換7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物は、次にさらに図4に描出したようにさらに反応させると、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含むフォトクロミック材料を形成することができるが、このときインデノ縮合ナフトピランは、その6位に結合した第1電子求引基、および図に描出したように、その11位に結合した第2電子求引基を有している。これらの反応スキームは、例示する目的でのみ提示されており、本明細書に限定することは企図されていないことは理解される。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を作製するための方法の追加の例は、実施例に記載されている。
【0083】
今度は図3を参照すると、第1フェニル環の4位で第1電子求引基(「EWG」)で置換され、そして第2フェニル環の4’位で第2電子求引基(「EWG」)で置換されたベンゾフェノン4は、コハク酸ジメチルとのStobbe縮合を受けると、(EWGはEWGと同一ではない場合)二重結合異性体の混合物としてのカルボン酸5が得られる。ベンゾフェノン4の第1電子求引基および第2電子求引基は、同一であっても相違していてもよく、本明細書の上記および特許請求の範囲に記載した構造を有することができる。カルボン酸5を高温で無水酢酸と反応させると、置換ナフタレン6が生成する(式中、Rは酢酸エステルである)。この酢酸エステルを加水分解するとナフトール7が得られる(R=H)。ナフトール7のエステルを、過剰のメチルマグネシウムブロミドと反応させ、水でワークアップすると、ジオール8が得られる。ジオール8を、例えば、メタンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸(「DBSA」)などのスルホン酸を用いて環化すると、置換7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール9が得られる。
【0084】
今度は図4を参照すると、置換7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール9を2−プロピン−1−オール10と反応させることができるが、このとき2−プロピン−1−オールの1位は本明細書に記載したようなB基およびB’基で置換される。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態の合成において使用するために適する置換2−プロピン−1−オールを合成する非限定的な方法は、例えば、それらの開示が参照して本明細書に組み込まれる、米国特許第5,458,814号の第4欄第11行〜第5欄第9行および実施例1の工程1、4、6、11、12、および13ならびに米国特許第5,645,767号の第5欄第12行〜第6欄第30行に記載されている。9および10の縮合は、例えば、DBSAなどのスルホン酸で触媒され、本開示の特定の非限定的な実施形態による、6位に結合した第1電子求引基および11位に結合した第2電子求引基を有する、3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン11を生成する。当業者は、図3および4に記載した反応スキームには、本明細書中で記載され、特許請求される置換インデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態を生成するために試薬および/または反応条件を様々に改変できること、ならびにそのような改変は本開示の本発明の範囲内に含まれることを認識する。
【0085】
本開示のフォトクロミック材料、例えば本明細書に記載されるようなインデノ縮合ナフトピランおよび第1電子求引基、ならびに特定の非限定的な実施形態では第2電子求引基を含むフォトクロミック材料は、フォトクロミック材料を使用できる用途(例えば光学素子、例えば眼科用素子、ディスプレイ素子、窓、鏡、能動性液晶セル素子、または受動性液晶セル素子など)において使用することができる。本明細書で使用する用語「光学(的)」は、光および/または視覚に関係または関連することを意味する。本明細書で使用する用語「眼(科)」は、眼および/または視覚に関係または関連することを意味する。本明細書で使用する用語「ディスプレイ」は、用語、数、記号、図案または図面における可視的または機械読み取り可能な情報の提示を意味する。ディスプレイ素子の非限定的な例には、スクリーン、モニター、およびセキュリティ・マークなどのセキュリティ素子が含まれる。本明細書で使用する用語「窓」は、それを貫通する放射線の透過を許容するように適合される開口部を意味する。窓の非限定的な例には、航空機および自動車のフロントガラス、自動車および航空機の透明部品(例えばT−ルーフ、サイドライトおよびバックライト)、フィルター、シャッター、および光スイッチが含まれる。本明細書で使用する用語「鏡」は、入射光の大部分を正反射性で反射する表面を意味する。本明細書で使用する用語「液晶セル」は、整列させることのできる液晶材料を含有する構造体を意味する。液晶セル素子の1つの非限定的な例は、液晶ディスプレイである。
【0086】
特定の非限定的な実施形態では、本開示のフォトクロミック材料は、眼科用素子(例えば、単焦点または多視レンズ(分割式であっても非分割式であってもよい多視レンズ(二焦点レンズ、三焦点レンズおよび累進多焦点レンズなどであるがそれらに限定されない))を含む矯正レンズ、非矯正レンズ、拡大鏡、保護レンズ、サンバイザー、ゴーグル)、ならびにカメラまたは望遠鏡のレンズなどの光学機器用のレンズにおいて使用できる。他の非限定的な実施形態では、本開示のフォトクロミック材料は、プラスチックフィルムおよびシート、繊維物品、およびコーティングにおいて使用できる。
【0087】
さらに、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、各々単独で使用されても、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による他のフォトクロミック材料と組み合わせて使用されても、適切な補完的な従来型フォトクロミック材料と組み合わせて使用されてもよいことが企図される。例えば、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、約400〜約800nmの範囲内にある活性化吸収極大を有する従来型フォトクロミック材料と併用して使用できる。さらに、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、例えば、その開示がこれにより本明細書に参照して詳細に組み込まれる、米国特許第6,113,814号(第2欄第39行〜第8欄第41行)、および第6,555,028号(第2欄第65行〜第12欄第56行)に開示されたフォトクロミック材料などの補完的な従来型の重合可能な、または適合化された(compatiblized)フォトクロミック材料と組み合わせて使用できる。
【0088】
上記で考察したように、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物は、フォトクロミック材料の混合物を含有し得る。例えば、本明細書では限定しないが、フォトクロミック材料の混合物は、ニアニュートラルグレーまたはニアニュートラルブラウンなどの特定の活性化された色を達成するために使用できる。例えば、ニュートラルグレーおよびブラウンの色を定義するパラメーターについて記載している、その開示が本明細書に参照して詳細に組み込まれる米国特許第5,645,767号第12欄第66行〜第13欄第19行を参照されたい。
【0089】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態は、有機材料(この有機材料は、ポリマー材料、オリゴマー材料およびモノマー材料のうちの少なくとも1つである)ならびにこの有機材料の少なくとも一部分に組み込まれた上記に記載した非限定的な実施形態のいずれかによるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック材料を提供する。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、フォトクロミック材料と有機材料またはその前駆体とを混合することおよび結合することのうちの少なくとも1つによって有機材料の一部分に組み込むことができる。有機材料にフォトクロミック材料を組み込むことに関連して本明細書で使用する用語「混合」および「混合した」は、フォトクロミック材料が、有機材料の少なくとも一部分と混ぜられるかまたは混ぜ合わされるが、有機材料に結合はさせられないことを意味している。さらに、フォトクロミック材料の有機材料に組み込むことに関連して本明細書で使用する用語「結合」または「結合した」は、フォトクロミック材料が有機材料またはその前駆体の一部分に連結させられることを意味している。
【0090】
上記で考察したように、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック組成物は、ポリマー材料、オリゴマー材料および/またはモノマー材料から選択される有機材料を含み得る。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態と結び付けて使用できるポリマー材料の例には、限定されないが:ビス(アリルカーボネート)モノマー;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;エトキシ化フェノールビスメタクリレートモノマー;例えばエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーなどのアルコキシ化多価アルコールアクリレートモノマー;ウレタンアクリレートモノマー;ビニルベンゼンモノマー;およびスチレンのポリマーが含まれる。適切なポリマー材料のその他の非限定的な例には、多官能性(例えば一官能性、二官能性または多官能性)のアクリレートモノマーおよび/またはメタクリレートモノマーのポリマー;ポリ(C〜C12アルキルメタクリレート)(例えばポリ(メチルメタクリレート));ポリ(オキシアルキレン)ジメタクリレート;ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート);酢酸セルロース;三酢酸セルロース;酢酸プロピオン酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリウレタン;ポリチオウレタン;熱可塑性ポリカーボネート;ポリエステル;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリスチレン;ポリ(α−メチルスチレン);スチレンおよびメチルメタクリレートのコポリマー;スチレンおよびアクリロニトリルのコポリマー;ポリビニルブチラール;ならびにジアリリデンペンタエリトリトールのポリマー、特にポリオール(アリルカーボネート)モノマー(例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))、およびアクリレートモノマー(例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート)とのコポリマーが含まれる。同様に、上記のモノマーのコポリマー、組み合わせ、および上記のポリマーおよびコポリマーと他のポリマーとのコポリマーの混合物(例えば、相互侵入網目構造物品を形成するため)もまた企図されている。
【0091】
さらに、フォトクロミック組成物の透明性が所望である様々な非限定的な実施形態によると、有機材料は透明なポリマー材料であり得る。例えば、様々な非限定的な実施形態によると、ポリマー材料は、例えば、商標LEXAN(登録商標)の下で販売されているビスフェノールAおよびホスゲンに由来する樹脂などの熱可塑性ポリカーボネート樹脂;商標MYLAR(登録商標)の下で販売される材料などのポリエステル;商標PLEXIGLAS(登録商標)の下で販売される材料などのポリ(メチルメタクリレート);およびポリオール(アリルカーボネート)モノマー、詳細にはジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(このモノマーは、商標CR−39(登録商標)の下で販売されている)の重合物;および例えばポリウレタンオリゴマーと、ジアミン硬化剤との反応によって調製されるポリウレア−ポリウレタン(ポリウレアウレタン)ポリマーから調製された光学的に透明なポリマー材料であり得る。1つのそのようなポリマーのための組成物は、PPG Industries社によって商標TRIVEX(登録商標)の下で販売されている。その他の適切なポリマー材料の他の非限定的な例には、ポリオール(アリルカーボネート)(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))のコポリマーと、他の共重合可能なモノマー材料とのコポリマーの重合物(酢酸ビニルとのコポリマー、末端ジアクリレート官能基を有するポリウレタンとのコポリマー、および末端部分がアリル官能基またはアクリリル官能基を含有する脂肪族ウレタンとのコポリマーなどであるがそれらに限定されない)が含まれる。さらにその他の適切なポリマー材料には、限定されないが、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリチオウレタン;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシ化フェノールビスメタクリレートモノマーおよびエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーから選択されたポリマー;酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリスチレンおよびスチレンとメチルメタクリレート、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルとのコポリマーが含まれる。1つの非限定的な実施形態によると、ポリマー材料は、例えば、CR−307、CR−407、およびCR−607などのCR記号表示の下でPPG Industries社によって販売される光学樹脂であり得る。
【0092】
特定の特定の非限定的な実施形態によると、有機材料は、ポリ(カーボネート)、エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマー;エチレンおよびビニルアルコールのコポリマー;エチレン、酢酸ビニル、およびビニルアルコールのコポリマー(エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマーの部分鹸化の結果として生じるコポリマーなど);酢酸酪酸セルロース;ポリ(ウレタン);ポリ(アクリレート);ポリ(メタクリレート);エポキシド;アミノプラスト官能性ポリマー;ポリ(酸無水物);ポリ(ウレアウレタン);N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド官能性ポリマー;ポリ(シロキサン);ポリ(シラン);ならびにそれらの組み合わせおよび混合物から選択されたポリマー材料であり得る。
【0093】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態は、基材および基材の一部分に結合した、または組み込まれた上記で考察した非限定的な実施形態のいずれかによるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック物品を提供する。本明細書で使用する用語「結合した」は、直接的にか、あるいは別の材料または構造を通して間接的にかのいずれかで結び付いていることを意味している。1つの非限定的な実施形態では、本開示のフォトクロミック物品は、例えば眼科用素子、ディスプレイ素子、窓、鏡、能動性液晶セル素子、および受動性液晶セル素子などであるがそれらに限定されない光学素子であり得る。特定の非限定的な実施形態では、フォトクロミック物品は、例えば、眼科用素子(例えば、単焦点または多視レンズ(分割式であっても非分割式であってもよい多視レンズ(二焦点レンズ、三焦点レンズおよび累進多焦点レンズなどであるがそれらに限定されない))を含む矯正レンズ、非矯正レンズ、拡大鏡、保護レンズ、サンバイザー、ゴーグル)、ならびに光学機器用のレンズである。
【0094】
フォトクロミック物品の基材がポリマー材料を含む本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、フォトクロミック材料を基材のポリマー部分の少なくとも1部分に組み込むこと、または基材が形成されるオリゴマーまたはモノマー材料の少なくとも一部分に組み込むことによって、基材の少なくとも一部分に結合させることができる。例えば、1つの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、現場流延(cast−in−place)法によって基材のポリマー材料内に組み込むことができる。さらに、または代わりに、フォトクロミック材料は、吸収(imbibition)法によって基材のポリマー材料の少なくとも一部分に組み込むことができる。吸収法および現場流延法については、以下で考察する。
【0095】
本発明の他の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、基材の少なくとも一部分に結合している少なくとも部分的なコーティングの一部としてフォトクロミック物品の基材の少なくとも一部分へ結合させることができる。この非限定的な実施形態によると、基材は、ポリマー基材または無機基材(ガラス基材などであるがそれらに限定されない)であり得る。さらに、フォトクロミック材料は、基材にコーティング組成物を塗布する前にコーティング組成物の少なくとも一部分に組み込むことができるか、または、コーティング組成物は、基板に塗布され、少なくとも部分的に固化され、その後にフォトクロミック材料をコーティングの少なくとも一部分に吸収させることができる。本明細書で使用する用語「固化した」および「固化する」には、限定されないが、硬化、重合、架橋結合、冷却、および乾燥が含まれる。
【0096】
例えば、本開示の1つの非限定的な実施形態では、フォトクロミック物品は、その表面の少なくとも一部分に結合したポリマー材料の少なくとも部分的なコーティングを含むことができる。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、少なくとも部分的なコーティングのポリマー材料の少なくとも一部分と混合および/または接着することができる。
【0097】
フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的なコーティングは、例えば、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物を基材の表面の少なくとも一部分へ直接的に塗布し、このコーティング組成物を少なくとも部分的に固化させることによって、基材へ直接的に結合させることができる。さらに、または代わりに、フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的なコーティングは、例えば、1つ以上の追加のコーティングを通して、基材に結合させることができる。例えば、本明細書で限定しないが、様々な非限定的な実施形態によると、追加のコーティング組成物を基材の表面の少なくとも一部分に塗布し、少なくとも部分的に固化させ、その後に、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物を追加のコーティングの上方に塗布し、少なくとも部分的に固化させることができる。以下では、基材へコーティング組成物を塗布する非限定的な方法について考察する。
【0098】
本明細書に開示したフォトクロミック物品と結び付けて使用できる追加のコーティングおよびフィルムの非限定的な例には、プライマーまたは適合化(compatiblizing)コーティング;遷移性コーティング、耐摩耗性コーティングならびにその他の重合反応化学物質の作用に対して保護する、および/または水分、熱、紫外線、酸素などの環境条件に起因する劣化に対して保護するその他のコーティング(例えば、UV遮蔽コーティングおよび酸素障壁コーティング)を含む保護コーティング;反射防止コーティング;従来型フォトクロミックコーティング;偏光コーティングおよび偏光延伸フィルム;ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0099】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態と結び付けて使用できるプライマーまたは適合化コーティングの非限定的な例には、結合剤、結合剤の少なくとも部分的な加水分解物、およびそれらの混合物を含むコーティングが含まれる。本明細書で使用する「結合剤」は、表面上の基と反応する、結合する、および/または会合することのできる基を有する材料を意味する。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による結合剤は、シラン、チタネート、ジルコネート、アルミネート、アルミン酸ジルコニウム、それらの加水分解物およびそれらの混合物などの有機金属を含むことができる。本明細書で使用する語句「結合剤の少なくとも部分的な加水分解物」は、結合剤の加水分解可能な基の一部から全部が加水分解されていることを意味している。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態と結び付けて使用するために適合するプライマーコーティングの他の非限定的な例には、それらの開示がこれにより詳細に参照して組み込まれる米国特許第6,025,026号第3欄第3行〜第11欄第40行および米国特許第6,150,430号第2欄第39行〜第7欄第58行に記載されたプライマーコーティングが含まれる。
【0100】
本明細書で使用する用語「遷移性コーティング」は、2種のコーティング間の特性に勾配を作り出すのに役立つコーティングを意味する。例えば、本明細書では非限定的であるが、遷移性コーティングは、相対的に硬質のコーティング(耐摩耗性コーティングなど)および相対的に軟質のコーティング(フォトクロミックコーティングなど)の間の硬さにおける勾配を作製することに役立つことができる。遷移性コーティングの非限定的な例には、これにより参照して詳細に本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0165686号の第[0079]〜[0173]段落に記載されている放射線硬化性アクリレートをベースとする薄膜が含まれる。
【0101】
本明細書で使用する用語「耐摩耗性コーティング」は、ASTM F−735「振動サンド法を用いた透明なプラスチックおよびコーティングの耐摩耗性についての標準試験方法」に類似の方法で試験される場合に、標準参照材料、例えば、PPG Industries社から入手できるCR−39(登録商標)モノマーから作製されたポリマーより大きな耐摩耗性を示す保護ポリマー材料を意味する。耐摩耗性コーティングの非限定的な例には、オルガノシラン、オルガノシロキサンを含む耐摩耗性コーティング、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニアなどの無機材料をベースとする耐摩耗性コーティング、ならびに紫外線硬化性であるタイプの有機耐摩耗性コーティングが含まれる。
【0102】
反射防止性コーティングの非限定的な例には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法を通して、本明細書に開示した物品上(または物品に塗布される自立フィルム上)に沈着させることのできる、金属酸化物、金属フッ化物、または他のそのような材料の単層コーティング、多層コーティングが含まれる。
【0103】
従来型フォトクロミックコーティングの非限定的な例には、従来型フォトクロミック材料を含むコーティングが含まれるが、それには限定されない。
【0104】
偏光コーティングおよび偏光延伸フィルムの非限定的な例には、当技術分野において知られている二色性化合物を含むコーティング(米国特許出願公開第2005/0151926号に記載されたコーティングなど)および延伸フィルムが含まれるが、それらに限定されない。
【0105】
本明細書で考察するように、様々な非限定的な実施形態によると、追加の少なくとも部分的なコーティングまたはフィルムは、基材上の本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を含むコーティングを形成する前に基材上に形成することができる。例えば、特定の非限定的な実施形態によると、プライマーまたは適合化コーティングは、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物を塗布する前に基材上に形成することができる。さらに、または代わりに、追加の少なくとも部分的なコーティングは、例えば、フォトクロミックコーティング上の保護膜として、基材上に本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を含むコーティングを形成した後に基材上に形成することができる。例えば、特定の非限定的な実施形態によると、遷移性コーティングは、フォトクロミック材料を含むコーティングの上方に形成することができ、耐摩耗性コーティングを遷移性コーティングの上方に形成することができる。
【0106】
例えば、1つの非限定的な実施形態によると、その表面の少なくとも一部分上に耐摩耗性コーティングを含む基材(平凹または平凸眼科用レンズ基材などであるがそれらに限定されない);耐摩耗性コーティングの少なくとも一部分上のプライマーまたは適合化コーティング;プライマーまたは適合化コーティングの少なくとも一部分上の本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を含むフォトクロミックコーティング;フォトクロミックコーティングの少なくとも一部分の上の遷移性コーティング;および遷移性コーティングの少なくとも一部分の上の耐摩耗性コーティングを含むフォトクロミック物品が提供される。さらに、この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック物品は、例えば基材の表面に結合している反射防止性コーティングおよび/または基材の表面に結合している偏光コーティングまたはフィルムをさらに含み得る。
【0107】
以下では、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による、フォトクロミック組成物および光学素子などのフォトクロミック物品を作製する非限定的な方法について考察する。1つの非限定的な実施形態は、フォトクロミック組成物を作製する方法であって、有機材料の少なくとも一部分にフォトクロミック材料を組み込む工程を含む方法を提供する。有機材料内にフォトクロミック材料を組み込む非限定的な方法には、例えば、ポリマー材料、オリゴマー材料、またはモノマー材料の溶液または溶解物中にフォトクロミック材料を混合し、その後にポリマー、オリゴマー、またはモノマー材料を(フォトクロミック材料を有機材料に結合させる工程を伴う、または伴わずに)少なくとも部分的に固化させること;ならびにフォトクロミック材料を(フォトクロミック材料を有機材料に結合させる工程を伴って、または伴わずに)有機材料に吸収させることとが含まれる。
【0108】
また別の非限定的な実施形態は、上記で考察した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を、基材の少なくとも一部分に結合させる工程を含む、フォトクロミック物品を作製する方法を提供する。例えば、基材がポリマー材料を含む場合は、現場流延法および吸収法のうちの少なくとも1つによって、フォトクロミック材料を基材の少なくとも一部分に結合させることができる。例えば、現場流延法では、フォトクロミック材料は、ポリマー溶液または溶解物と、または他のオリゴマーおよび/またはモノマーの溶液または混合物と混合することができ、それらを引き続いて所望の形状を有する鋳型内に流し込み、少なくとも部分的に固化させて基材を形成することができる。任意で、この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、基材のポリマー材料の一部分へ、例えば、このポリマー材料のモノマー前駆体との共重合によって接着させることができる。吸収法では、フォトクロミック材料は、例えば、加熱を伴って、または伴わずに、フォトクロミック材料を含有する溶液中に基材を浸漬することによって、基材が形成された後にそれのポリマー材料内に拡散させることができる。その後、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック材料は、ポリマー材料と結合させることができる。
【0109】
本明細書に開示した他の非限定的な実施形態は、インモールドキャスティング法、コーティング法、および積層法のうちの少なくとも1つによって、フォトクロミック材料を基材の少なくとも一部分へ結合させる工程を含む光学素子を作製する方法を提供する。例えば、基材がポリマー材料を含む1つの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、インモールドキャスティング法によって基材の少なくとも一部分に結合させることができる。この非限定的な実施形態によると、液体コーティング組成物または粉末コーティング組成物であり得るフォトクロミック材料を含むコーティング組成物は、鋳型の表面に塗布され、少なくとも部分的に固化させられる。その後、ポリマー溶液または溶解物、あるいはオリゴマーまたはモノマーの溶液または混合物は、コーティングの上方にキャスティングされ、少なくとも部分的に固化させられる。固化後、コーティングされた基材は、鋳型から取り外される。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を使用できる粉末コーティイングの非限定的な例については、その開示がこれにより詳細に参照して組み込まれる米国特許第6,068,797号第7欄第50行〜第19欄第42行に記載されている。
【0110】
基材がポリマー材料、またはガラスなどの無機材料を含むさらに別の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、コーティング法によって基材の少なくとも一部分に結合させることができる。適切なコーティング法の非限定的な例には、スピンコーティング法、スプレーコーティング法(例えば、液体または粉末のコーティイング剤を使用する)、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、スピンおよびスプレーコーティング法、オーバーモールド法、およびそれらの組み合わせが含まれる。例えば、1つの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、オーバーモールド法によって基材へ結合させることができる。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物(上記で考察した液体コーティング組成物であっても粉末コーティング組成物であってもよい)は、鋳型に塗布され得、次に基材がコーティングに接触してこのコーティングが基材の表面の少なくとも一部分の上方に広がることを引き起こすように基材を鋳型内に配置することができる。その後、コーティング組成物は、少なくとも部分的に固化させることができ、コーティングされた基材は鋳型から取り外すことができる。または、オーバーモールド法は、開口領域が基材と鋳型の間に規定されるように基材を鋳型内に配置する工程と、その後にフォトクロミック材料を含むコーティング組成物を開口領域内に射出する工程とによって実施できる。その後、コーティング組成物は、少なくとも部分的に固化させることができ、コーティングされた基材は鋳型から取り外すことができる。
【0111】
さらに、または代わりに、コーティング組成物(フォトクロミック材料を含む、または含まない)は、(例えば、上記の方法のいずれかによって)基材に塗布することができ、コーティング組成物を、少なくとも部分的に固化させ、その後に、フォトクロミック材料をコーティング組成物中に(上記で考察したように)吸収させることができる。
【0112】
基材がポリマー材料、またはガラスなどの無機材料を含むさらに別の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、積層法によって基材の少なくとも一部分に結合され得る。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料を含むフィルムは、接着剤ならびに/または熱および圧力の適用を用いて、または用いずに、基材の一部分に付着させるか、他の様式で結合させることができる。その後、所望であれば、第2基材を第1基材の上方に適用し、これら2つの基材を相互に積層させて(すなわち、熱および圧力の適用によって)1つの要素を形成することができるが、このときフォトクロミック材料を含むフィルムは、2つの基材間に挟まれている。フォトクロミック材料を含むフィルムを形成する方法は、例えば、限定されないが、フォトクロミック材料をポリマー溶液またはオリゴマー溶液または混合物と合わせる工程と、それからフィルムをキャスティングまたは押出し成型する工程と、所望であれば、フィルムを少なくとも部分的に固化させる工程とを含むことができる。さらに、または代わりに、(フォトクロミック材料を用いて、または用いずに)フィルムを形成し、(上記で考察したように)フォトクロミック材料を吸収させることができる。
【0113】
さらに、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態は、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック物品を形成するために上記の方法の様々な組み合わせの使用を企図している。例えば、本明細書では限定されないが、1つの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、基材が(例えば、現場流延法および/または吸収法を用いて)形成される有機材料中に組み込むことによって基材に結合することができ、その後フォトクロミック材料(上述したフォトクロミック材料と同一であっても異なってもよい)は、上記で考察したインモールドキャスティング法、コーティング法および/または積層法を使用して基材の一部分に結合させることができる。
【0114】
さらに、当業者には、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック組成物および物品が組成物または物品の加工処理および/または性能に役立つ他の添加物をさらに含み得ることは理解される。そのような添加物の非限定的な例には、光開始剤、熱開始剤、重合防止剤、溶媒、光安定剤(例えばヒンダードアミン光安定剤(HALS)などの紫外線吸収剤および光安定剤などであるがそれらに限定されない)、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤(界面活性剤などであるがそれには限定されない)、フリーラジカル捕捉剤、接着促進剤(ヘキサンジオールジアクリレートおよび結合剤など)、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物が含まれる。
【0115】
様々な非限定的な実施形態によると、本明細書に記載したフォトクロミック材料は、中にフォトクロミック材料が組み込まれるか、他の様式で結合される有機材料または基材が所望の光学特性を示すような量(または比率)で使用できる。例えば、フォトクロミック材料の量およびタイプは、フォトクロミック材料が閉環体にある場合(すなわち、脱色または非活性化状態にある場合)は有機材料または基材が透明または無色であり得、フォトクロミック材料が開環体にある場合(すなわち、化学線によって活性化された場合)は結果として生じる所望の色を示すことができるように選択することができる。本明細書に記載した様々なフォトクロミック組成物および物品に利用すべきフォトクロミック材料の正確な量は、所望の作用を生成するために十分な量が使用されることを前提にするとそれほど重要ではない。使用されるフォトクロミック材料の特定の量は、例えば、フォトクロミック材料の吸収特性、活性化の際の所望の色および色の強度、ならびにフォトクロミック材料を基材に組み込むか、または結合させるために使用される方法などであるがそれらに限定されない様々な因子に依存し得ることが理解されるべきである。本明細書において限定しないが、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、有機材料中に組み込まれるフォトクロミック材料の量は、有機材料の重量に基づいて0.01〜40重量%の範囲に及び得る。
【0116】
以下では、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態を非限定的な実施例において例示される。
【実施例】
【0117】
実施例の第I部では、実施例1〜13において、本明細書に開示した特定の非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を作製するために使用する合成手順について記載する。第II部では、比較用フォトクロミック材料と共に、本明細書に記載した特定のフォトクロミック材料を組み込んでいるメタクリレート製試験チップの形成、ならびに退色速度(T1/2)および飽和光学密度を決定する試験手順について記載する。
【0118】
(第I部:合成手順)
(実施例1)
(工程1)
カリウムt−ブトキシド(68.8g)を、機械的攪拌機を装備した反応フラスコ内に測り入れ、窒素雰囲気下に置き、700ミリリットル(mL)のトルエン、次に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(100g)を加えた。この反応混合物を機械的に攪拌し、70℃へ加熱した。100mLのトルエン中のコハク酸ジメチル(80g)の溶液をこの反応混合物に60分間かけて加えた。この反応混合物を70℃で4時間にわたり加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を500mLの水に注ぎ入れ、トルエン層を廃棄した。水層をジエチルエーテル(1×400mL)により抽出して中性生成物を除去し、次に濃HClを用いて水層を酸性化した。水層から茶色がかった黄色の油性固体が得られ、これを3×300mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和NaCl溶液(1×500mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。回転蒸発によって溶媒を除去すると、茶色がかった油性固体として122gの4,4−ジ(4−フルオロフェニル)−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸が生成した。この材料をそれ以上精製せずに、次の工程において直接使用した。
【0119】
(工程2)
工程1の生成物(4,4−ジ(4−フルオロフェニル)−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸、122g)および無水酢酸(250mL)を反応フラスコに加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で5時間にわたり還流させながら加熱した。反応混合物を室温に冷却し、引き続き1,200mLの水の中に注入した。生じた沈降物を真空濾過によって収集し、冷水で洗浄すると110gの1−(4−フルオロフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−フルオロナフタレンが生成した。この生成物を、それ以上精製せずに次の反応に使用した。
【0120】
(工程3)
工程2からの1−(4−フルオロフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−フルオロナフタレン(110g)および400mLのメタノールを反応フラスコ内で混ぜ合わせた。反応フラスコに5mLの濃HClを加え、窒素雰囲気下で4時間にわたり還流させながら加熱した。反応混合物を室温に、次に0℃に冷却した。所望の生成物(1−(4−フルオロフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−6−フルオロナフタレン、65g)の白色結晶が得られ、引き続いて濾過し、真空下で乾燥させた。この材料をそれ以上精製せずに、次の工程において直接使用した。
【0121】
(工程4)
工程3の生成物(1−(4−フルオロフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−6−フルオロナフタレン、39.4g)を、300mLのテトラヒドロフランを含有する反応フラスコに加えた。生じた混合物を氷水浴中で冷却し、窒素雰囲気下で攪拌した。167mLのメチルマグネシウムブロミド溶液(ジエチルエーテル中3M)を30分間かけて滴下した。生じた黄色反応混合物を室温に加温し、一晩攪拌した。反応混合物を400mLの水の中に注入し、酸性になるまで濃HClを用いて中和した。混合物を300mL量のエーテルを用いて3回抽出し、有機部分を合わせ、1Lの飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮した。生じた褐色油(37.8g)を300mLのキシレンを含有する反応容器(Dean−Starkトラップを装備)内に移し、それに5滴のドデシルベンゼンスルホン酸を加えた。この反応混合物を3時間にわたり還流させながら加熱し、冷却した。キシレンを回転蒸発によって除去すると、淡褐色の油として35gの3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンが生成した。この材料をそれ以上精製せずに、次の工程において直接使用した。
【0122】
(工程5)
工程4の生成物(3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、7.55g)、1,1−ジ(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(6.84g、その実施例がこれにより参照して詳細に本明細書に組み込まれる米国特許第5,458,814号の実施例1工程1の生成物)、5滴のメタンスルホン酸および200mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。2時間後、100mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と100mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると褐色の固体が得られた。この褐色の固体をエーテルからの結晶化によって精製すると、7.1gの黄白色の固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0123】
(実施例2)
(工程1)
アニソール(27.5g)、4−フルオロベンゾイルクロリド(35g)およびジクロロメタン(250mL)を反応フラスコ内で混ぜ合わせた。塩化アルミニウム(30.8g)を反応混合物へ20分間かけてゆっくりと加えた。この反応混合物を2時間にわたり室温で攪拌し、70mLの濃HClおよび500mLの水の混合物中に注入した。層を相分離させ、水層を2回分のジクロロメタン(各300mL)を用いて抽出した。有機部分を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(400mL)を用いて洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させると、白色固体として48.0gの4−フルオロ−4’−メトキシ−ベンゾフェノンが生成した。この材料をそれ以上精製せずに、次の工程において直接使用した。
【0124】
(工程2)
工程1からの4−フルオロ−4’−メトキシ−ベンゾフェノン(126.7g)およびアセチレン飽和N,N−ジメチルホルムアミド(380mL)を反応フラスコ内で混ぜ合わせた。アセチリドナトリウム溶液(トルエン中9重量%、343g)を45分間かけて反応混合物に滴下した。反応混合物を室温で1時間攪拌し、次に氷水(600mL)中に注入した。層を相分離させ、水層を3回分のジエチルエーテル(各200mL)を用いて抽出した。有機層を合わせ、飽和NHCl水溶液(200mL)、飽和NaCl水溶液(200mL)、および飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)を用いて洗浄した。有機層は無水硫酸ナトリウムで乾燥させてエバポレートすると、琥珀色の油として136.6gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オールが生成した。この材料をそれ以上精製せずに、次の工程において直接使用した。
【0125】
(工程3)
工程2の生成物(1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール、5.8g)、実施例1工程4の生成物(3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、6.7g)、7滴のメタンスルホン酸および250mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。2時間後、追加の0.7gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび3滴のメタンスルホン酸を反応混合物に加えた。この反応混合物を室温で1時間攪拌した。引き続き、250mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と250mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると、茶色がかった赤色油が得られた。この茶色がかった赤色油をエーテルからの結晶化によって精製すると、8.4gの黄白色の固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0126】
(実施例3)
実施例1工程4の生成物(3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、5.7g)、1−フェニル−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オール(5.7g)、4滴のドデシルベンゼンスルホン酸および250mLのクロロホルムを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、還流温度の窒素雰囲気下で攪拌した。1時間後、追加の0.5gの1−フェニル−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび1滴のドデシルベンゼンスルホン酸を反応混合物に加えた。この反応混合物を還流させながらさらに2時間加熱し、その後室温へ冷却した。100mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と100mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮した。その残渣を、溶出液としてヘキサン、塩化メチレンおよび酢酸エチル(50/45/5)の混合物を用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけた。フォトクロミック画分を収集し、回転蒸発によって濃縮すると、青色がかった固体(7.5g)が得られた。青色固体をエーテルからの結晶化によってさらに精製すると、5.7gの白色固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0127】
(実施例4)
実施例1工程4の生成物(3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、5.7g)、1−フェニル−1−(4−ピペリジノフェニル)−2−プロピン−1−オール(5.6g)、8滴のメタンスルホン酸および200mLのクロロホルムを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、還流温度の窒素雰囲気下で攪拌した。2時間後、追加の0.6gの1−フェニル−1−(4−ピペリジノフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび6滴のドデシルベンゼンスルホン酸を反応混合物に加えた。この反応混合物を還流させながらさらに2時間加熱し、その後室温へ冷却した。100mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と100mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮した。その残渣を、溶出液としてヘキサンおよび酢酸エチル(95/5)の混合物を用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけた。フォトクロミック画分を収集し、回転蒸発によって濃縮すると青色がかった白色泡状物(5.9g)が得られた。青色がかった白色泡状物をエーテルからの結晶化によってさらに精製すると、2.25gの白色固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3−フェニル−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0128】
(実施例5)
実施例1工程4の生成物(3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、7.0g)、1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール(5.7g)、10滴のメタンスルホン酸、20滴のトリフルオロ酢酸および400mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。2時間後、追加の1.5gの1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび10滴のメタンスルホン酸を反応混合物に加えた。この反応混合物を室温でさらに6時間にわたり攪拌した。引き続き、250mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と250mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると赤色油が得られた。この赤色油をエーテルからの結晶化によって精製すると、6.0gの黄白色の固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0129】
(実施例6)
(工程1)
4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの代わりに4,4’−ジクロロベンゾフェノン(112g)を使用した以外は実施例1の工程1〜4の手順にしたがい、3,9−ジクロロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンが生成した。
【0130】
(工程2)
工程1の生成物(3,9−ジクロロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、8.45g)、1,1−ジ(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(6.84g)、5滴のメタンスルホン酸および200mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。2時間後、100mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と100mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると褐色の固体が得られた。この褐色の固体をエーテルからの結晶化によって精製すると、7.4gの黄白色の固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0131】
(実施例7)
実施例2工程2の生成物(1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール、3.4g)、実施例6工程1の生成物(3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、4.0g)、8滴のメタンスルホン酸および250mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で2時間にわたり攪拌した。引き続き、250mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と250mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると茶色がかった赤色の油が得られた。この茶色がかった赤色の油をエーテルおよびヘキサン混合物(1:1)からの結晶化によって精製すると、4.6gの黄白色の固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0132】
(実施例8)
実施例6工程1の生成物(3,9−ジクロロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、3.0g)、1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール(3.8g)、7滴のメタンスルホン酸、20滴のトリフルオロ酢酸および250mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。4時間後、追加の2.0gの1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび7滴のメタンスルホン酸を反応混合物に加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。引き続き、200mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と200mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると赤色油が得られた。この赤色油をエーテルからの結晶化によって精製すると、1.6gの黄白色の固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0133】
(実施例9)
(工程1)
実施例6工程1の生成物(3,9−ジクロロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、10.0g)を窒素雰囲気下の反応フラスコ内に入れ、この反応混合物に100mLの無水1−メチル−2−ピロリジノンおよびCuCN(4.5g)を加えた。この反応混合物を還流させながら24時間にわたり加熱し、その後室温へ冷却した。生じた混合物に100mLの6M HClを加え、混合物を10分間にわたり攪拌した。混合物を150mL量の酢酸エチルを用いて3回洗浄した。有機抽出物を合わせ、溶媒を回転蒸発によって除去すると7.2gの灰色の固体が得られた。NMRスペクトルは、この生成物が3,9−ジシアノ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンに一致する構造を有することを示した。
【0134】
(工程2)
工程1の生成物(3,9−ジシアノ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、1.5g)、1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール(2.0g)、5滴のメタンスルホン酸、40滴のトリフルオロ酢酸および250mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。2時間後、追加の2.0gの1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび4滴のメタンスルホン酸を反応混合物に加えた。この反応混合物を室温で4時間にわたり攪拌した。引き続き、250mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と250mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると褐色の固体が得られた。この褐色の固体をエーテルからの結晶化によって精製すると、1.7gの白色の固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジシアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0135】
(実施例10)
(工程1)
実施例9工程1からの3,9−ジシアノ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン(5.0g)、1.0mLのHCl水溶液および100mLのメタノールをフラスコ内で合わせ、24時間にわたり還流させながら加熱した。この反応混合物を冷却し、生じた沈降物を真空濾過によって収集し、冷メタノールを用いて洗浄すると4.9gの白色固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,9−ジカルボキシ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンに一致する構造を有することを示した。
【0136】
(工程2)
工程1からの3,9−ジカルボキシ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン(4.9g)、1.0mLのHCl水溶液および100mLのメタノールをフラスコ内で合わせ、24時間にわたり還流させながら加熱した。この反応混合物を冷却し、生じた沈降物を真空濾過によって収集し、冷メタノールを用いて洗浄すると4.8gの白色固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,9−ジメトキシカルボニル−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンに一致する構造を有することを示した。
【0137】
(工程3)
3,9−ジクロロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンの代わりに3,9−ジメトキシカルボニル−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンを使用した以外は実施例6工程2の方法にしたがい、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジ(メトキシカルボニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランが生成した。
【0138】
(実施例11)
実施例10工程2の生成物(3,9−ジメトキシカルボニル−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、1.6g)、1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール(2.1g)、5滴のメタンスルホン酸、20滴のトリフルオロ酢酸および250mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。2時間後、追加の1.1gの1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび10滴のトリフルオロ酢酸を反応混合物に加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。引き続き、250mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と250mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると褐色の固体が得られた。この褐色固体を、溶出液としてヘキサンおよび酢酸エチル(85/15)の混合物を用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけた。フォトクロミック画分を収集し、回転蒸発によって濃縮すると赤色の泡状物が得られた。この赤色の泡状物をエーテルからの結晶化によってさらに精製すると、0.44gの白色固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジ(メトキシカルボニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0139】
(実施例12)
(工程1)
カリウムt−ブトキシド(50.1g)および100.0gの4−ブロモベンゾフェノンを、500mLのトルエンを含有する反応フラスコ内に窒素雰囲気下で加えた。この混合物にコハク酸ジメチル(110.1g)を1時間かけて滴下した。この混合物を室温で5時間にわたり攪拌した。生じた混合物を300mLの水の中に注入し、20分間にわたり激しく攪拌した。水相および有機相を分離し、有機相を100mL量の水を用いて3回抽出した。合わせた水層を150mL量のクロロホルムを用いて3回洗浄した。水層を6N HClでpH2へ酸性化すると、沈降物が形成された。水層を100mL量のクロロホルムを用いて3回抽出した。有機抽出物を合わせ、回転蒸発によって濃縮した。生じた油のNMRスペクトルは、この生成物が4−フェニル−4−(4−ブロモフェニル)−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸の混合物(EおよびZ)と一致する構造を有することを示した。
【0140】
(工程2)
工程1からの粗半エステル(100.0g)、60mLの無水酢酸、および300mLのトルエンを窒素雰囲気下の反応フラスコに加えた。反応混合物を6時間にわたり110℃へ加熱し、室温へ冷却し、溶媒(トルエンおよび無水酢酸)を回転蒸発によって除去した。その残渣を300mLの塩化メチレンおよび200mLの水に溶解させた。発泡が収まるまで、固体炭酸ナトリウムを二層性混合物に加えた。層を分離し、水層を50mL量の塩化メチレンを用いて抽出した。有機抽出物を合わせ、溶媒を回転蒸発によって除去すると粘性の赤色油が得られた。油を温メタノール中に溶解させ、2時間にわたり0℃で冷却した。生じた結晶を真空濾過によって収集し、冷メタノールを用いて洗浄すると、1−(4−ブロモフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−ナフタレンおよび1−フェニル−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−ブロモナフタレンの混合物が生成した。この混合物をそれ以上精製せずに次の反応に使用した。
【0141】
(工程3)
工程2からの混合物(50g)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内に測り入れ、300mLの無水テトラヒドロフラン(THF)を加えた。反応混合物に1時間かけてメチルマグネシウムクロリド(THF中3.0Mを180mL)を加えた。この反応混合物を一晩攪拌し、次に氷と1N HClの300mLの1:1混合物中に注入した。混合物をクロロホルム(300mLで3回)を用いて抽出した。有機抽出物を合わせ、飽和NaCl水溶液(400mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。回転蒸発によって溶媒を除去すると、42.0gの1−(4−ブロモフェニル)−2−(1−メチル−1−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−ナフタレンおよび1−フェニル−2−(1−メチル−1−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−6−ブロモナフタレンの混合物が生成した。
【0142】
(工程4)
工程3からの混合物(30.0g)を、Dean−Starkトラップを装備した反応フラスコ内に入れ、150mLのトルエンを加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で攪拌し、ドデシルベンゼンスルホン酸(約0.5mL)を加えた。この反応混合物を還流させながら2時間にわたり加熱し、その後室温へ冷却した。溶媒を回転蒸発によって除去すると、7,7−ジメチル−9−ブロモ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールおよび3−ブロモ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの混合物が生成した。この生成物混合物をそれ以上精製せずに次の反応に使用した。
【0143】
(工程5)
工程4からの混合物(10.0g)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内に入れ、100mLの無水1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えた。CuCN(4.5g)を反応混合物に加えた。この反応混合物を還流温度で4時間にわたり加熱し、その後室温へ冷却した。生じた混合物に100mLの6M HClを加え、混合物を10分間にわたり攪拌した。混合物を150mL量の酢酸エチルを用いて3回洗浄した。有機抽出物を合わせ、溶媒を回転蒸発によって除去すると8.2gの灰色の固体が得られた。NMRスペクトルは、この生成物が7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールおよび3−シアノ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの混合物に一致する構造を有することを示した。この生成物混合物をそれ以上精製せずに次の反応に使用した。
【0144】
(工程6)
工程5の生成物(3−シアノ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンおよび9−シアノ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンの混合物、5.0g)、1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール(7.3g)、15滴のメタンスルホン酸、40滴のトリフルオロ酢酸および500mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。4時間後、500mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と500mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると赤色油が得られた。この赤色油を、溶出液としてヘキサン、塩化メチレンおよび酢酸エチル(80/17/3)の混合物を用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけた。フォトクロミック画分(溶出液がヘキサン/塩化メチレン/酢酸エチル(80/17/3)である場合、R=0.42)を収集し、回転蒸発によって濃縮すると赤色固体(0.54g)が得られた。この赤色固体をエーテルからの結晶化によってさらに精製すると、0.4gの白色固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6−シアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0145】
(実施例13)
(工程1)
実施例12工程5の混合物である(7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールおよび3−シアノ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール、30.0g)を窒素雰囲気下の反応フラスコ内に入れ、NaOH(20g)を加えた。この混合物にエタノール(100mL)および水(100mL)を加えた。この反応混合物を還流させながら24時間にわたり加熱し、その後室温へ冷却した。生じた混合物を氷と6N HClの200mLの混合物(1:1)中に注入し、15分間にわたり激しく攪拌した。この混合物を150mL量の酢酸エチルを用いて3回洗浄した。有機抽出物を合わせ、溶媒を回転蒸発によって除去すると9.2gの白色固体が得られた。NMRスペクトルは、この生成物が5−ヒドロキシ−7,7−ジメチル−7H−9−カルボキシ−ベンゾ[C]−フルオレンおよび3−カルボキシ−5−ヒドロキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]−フルオレンの混合物を有することを示した。この生成物混合物をそれ以上精製せずに次の反応に使用した。
【0146】
(工程2)
工程1からの混合物(20.0g)、1.0mLのHCl水溶液、および100mLのメタノールをフラスコ内で混ぜ合わせ、24時間にわたり還流温度で加熱した。この反応混合物を冷却し、生じた沈降物を真空濾過によって収集し、冷メタノールを用いて洗浄すると4.9gの白色固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が5−ヒドロキシ−7,7−ジメチル−7H−9−メトキシカルボニル−ベンゾ[C]−フルオレンおよび3−メトキシカルボニル−5−ヒドロキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]−フルオレンの混合物を有することを示した。この生成物混合物をそれ以上精製せずに次の反応に使用した。
【0147】
(工程3)
工程2の生成物(3−カルボメトキシ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンおよび9−カルボメトキシ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンの混合物、3.0g)、1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール(2.3g)、8滴のメタンスルホン酸および300mLの塩化メチレンを反応フラスコ内で混ぜ合わせ、室温の窒素雰囲気下で攪拌した。4時間後、追加の2.0gの1,1−ジ(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび4滴のメタンスルホン酸を反応混合物に加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。引き続き、200mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液と200mLの水の混合物を用いて反応混合物を注意深く洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発によって濃縮すると、赤色油を得、これは、乾燥させると発泡した。この赤色固体を、溶出液としてヘキサンおよび酢酸エチル(85/15)の混合物を用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけた。フォトクロミック画分(溶出液がヘキサン/酢酸エチル(80/20)である場合、R=0.60)を収集し、回転蒸発によって濃縮すると赤色固体が得られた。この赤色固体をエーテルからの結晶化によってさらに精製すると、0.48gの白色固体が生成した。NMRスペクトルは、この生成物が3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6−メトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランに一致する構造を有することを示した。
【0148】
(第II部:試験)
実施例1〜13、比較実施例CE1〜CE12のフォトクロミック材料、および本開示による追加のフォトクロミック材料を含む実施例14〜22のフォトクロミック材料のフォトクロミック性能を、以下のオプティカルベンチ装置を用いて試験した。当業者には、実施例14〜22および比較実施例CE1〜CE12のフォトクロミック材料は、本開示を読むと当業者には容易に明白になる適切な改変を加えて、本明細書に開示した教示および実施例にしたがえば作製できることは理解される。さらに、当業者は、本明細書に開示した方法の様々な改変、ならびに他の方法が、本明細書および特許請求の範囲に記載した本開示の範囲から逸脱せずに実施例1〜13に記載のフォトクロミック材料を作製する際に使用できることを認識する。
【0149】
(メタクリレートチップの手順)
1.5×10−3M溶液(実施例9〜11のスペクトル分析において、半分の濃度、すなわち、7.5×10−4M溶液のフォトクロミック材料溶液を使用した)を生成するために計算された量の試験対象のフォトクロミック材料を、4部のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPA 2EO DMA)、1部のポリ(エチレングリコール)600ジメタクリレート、および0.033重量%の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(「AIBN」)のモノマー混合物50gを含有するフラスコに加えた。このフォトクロミック材料を攪拌かつ穏やかに加熱することによってモノマー混合物中に溶解させた。透明な溶液が得られた後、真空脱気させ、その後に2.2mm×6インチ(15.24cm)×6インチ(15.24cm)の内部寸法を有するフラットシート鋳型に注入した。鋳型を密封し、温度を5分間隔で40℃から95℃まで上昇させ、3時間にわたり温度を95℃で維持し、次に少なくとも2時間にわたり60℃へ温度を低下させるようにプログラミングした水平気流中のプログラム可能なオーブン中に入れた。鋳型を開いた後、そのポリマーシートを、ダイアモンドブレードののこぎりを用いて2インチ(5.1cm)の正方形試験片に切断した。
【0150】
上述したように調製したフォトクロミック材料を組み込んでいる正方形試験片をオプティカルベンチでのフォトクロミック反応について試験した。オプティカルベンチで試験を行う前に、フォトクロミック正方形試験片を、その中のフォトクロミック材料が不活性化基底(または脱色)状態から活性化(または着色)状態へ変換することを引き起こすために約15分間にわたり365nmの紫外線に暴露し、次にフォトクロミック材料が不活性化状態へ逆戻りできるように約15分間にわたり75℃のオーブン中に入れた。正方形試験片を次に室温に冷却し、少なくとも2時間にわたり蛍光室内照明に暴露し、少なくとも2時間にわたり被覆したまま(すなわち、暗環境内で)維持し、その後に23℃で維持したオプティカルベンチで試験した。ベンチには300ワットのキセノンアークランプ、遠隔制御シャッター、UVおよびIR波長を修正してヒートシンクとして機能するMelles Griot KG2フィルター、中性フィルター、ならびにサンプルホルダーを装備し、23℃の水浴中に配置し、その中に試験対象のスクエアを浸漬した。タングステンランプからの光線の平行ビームをスクエアに対して小角度(およそ30°)の法線でスクエアに通過させた。スクエアを通過した後、タングステンランプからの光線は集光球に方向付けられ、そこで光はブレンドされ、Ocean Optics S2000分光計で測定用ビームのスペクトルが収集かつ分析された。λmax−visは、正方形試験片中のフォトクロミック材料の活性化(着色)形の吸収極大が発生する可視スペクトル内の波長である。λmax−vis波長は、Varian Cary 4000 UV−可視分光光度計においてフォトクロミック正方形試験片を試験することによって決定した。検出器からの出力信号を、放射計によって処理した。
【0151】
各正方形試験片についての飽和光学密度(「Sat’d OD」)を、キセノンランプからのシャッターを開き、30分間にわたりUV放射線に試験チップを暴露させた後に透過率を測定することによって決定した。Sat’d ODでのλmax−visを、オプティカルベンチでS2000分光計によって測定した活性化データから計算した。退色半減期(すなわち、T1/2)によって測定される退色速度は、正方形試験片内のフォトクロミック材料の活性化形の吸光度が、活性化光源を取り外した後に、室温(23℃)でSat’d OD吸光度値の2分の1値に到達するための時間間隔(秒)である。性能等級(「TR」)を、Sat’d ODおよびT1/2から方程式:
PR=((Sat’d OD)/T1/2)×10,000
によって計算する。本開示のフォトクロミック材料のフォトクロミックデータを、以下の表1に列挙する。比較用フォトクロミック材料(すなわち、6位で第1電子求引基および11位で第2電子求引基を備えていないフォトクロミックインデノ縮合ナフトピラン)についてのフォトクロミックデータを、以下の表2に提示する。
【0152】
【表1−1】

【0153】
【表1−2】

【0154】
【表2−1】

【0155】
【表2−2】

本明細書は、本発明についての明白な理解に関連する本発明の態様を例示することが理解されるべきである。当業者には明白であり、したがって本発明のより明確な理解を促進しない本発明の特定の態様は、本明細書を単純化するために提示されていない。本発明を特定の実施形態と結び付けて記載してきたが、本発明は本明細書に開示した特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の精神および範囲内に含まれる改変を含むことが企図されている。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1A】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの可視領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図1Eおよび1F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図1B】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの可視領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図1Eおよび1F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図1C】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの可視領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図1Eおよび1F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図1D】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの可視領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図1Eおよび1F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図1E】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの可視領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図1Eおよび1F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図1F】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの可視領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図1Eおよび1F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図1G】図1Gは、従来型フォトクロミック化合物の可視領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを例示している。
【図2A】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの紫外線領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図2Eおよび2F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図2B】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの紫外線領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図2Eおよび2F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図2C】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの紫外線領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図2Eおよび2F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図2D】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの紫外線領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図2Eおよび2F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図2E】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの紫外線領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図2Eおよび2F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図2F】本開示のフォトクロミック材料の様々な非限定的な実施形態についての、電磁スペクトルの紫外線領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを示す(図2Eおよび2F内のスペクトルは、半分の濃度で記録されている)。
【図2G】図2Gは、従来型フォトクロミック化合物の紫外線領域内の活性化吸収スペクトルおよび非活性化吸収スペクトルを例示している。
【図3】本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料の合成において、中間体を製造するための反応スキームの概略図を示す。
【図4】本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による、フォトクロミック材料を製造するための反応スキームの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)インデノ縮合ナフトピラン;および
(b)前記インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基を含み、
前記インデノ縮合ナフトピランの13位での置換はヒドロキシルを含まないフォトクロミック材料。
【請求項2】
前記第1電子求引基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R、−SOX、または−C(=O)−Xであり、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR(式中、R、R、R、およびRは、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項3】
前記インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基をさらに含み、前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は同一であるか、または異なる、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項4】
前記第2電子求引基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R、−SOX、または−C(=O)−Xであり、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR(式中、R、R、R、およびRは、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である、請求項3に記載のフォトクロミック材料。
【請求項5】
前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は、各々独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、または−C(=O)−OR(式中、Rは、C〜Cアルキル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールである)である、請求項3に記載のフォトクロミック材料。
【請求項6】
前記フォトクロミック材料は、(i)最長吸光度波長が、6位に結合した第1電子求引基および11位に結合した第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射線に対する閉環体吸収スペクトルと比較して深色シフトする、電磁放射線についての閉環体吸収スペクトル;および(ii)6位に結合した第1電子求引基および11位に結合した第2電子求引基を備えていない類似のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射線に対する開環体吸収スペクトルと比較して深色シフトする、電磁放射線についての開環体吸収スペクトルのうちの少なくとも1つを有する、請求項3に記載のフォトクロミック材料。
【請求項7】
前記インデノ縮合ナフトピランの3位に結合したB基およびB’基をさらに含み、前記B基およびB’基は各々独立して、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニル上の置換基は独立して電子供与基または第3電子求引基である、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項8】
B基およびB’基は、各々独立してフェニルまたは4位が置換されたフェニルであり、前記フェニルの4位の置換基は電子供与基または第3電子求引基である、請求項7に記載のフォトクロミック材料。
【請求項9】
B基およびB’基のうちの少なくとも1つは4位が置換されたフェニルであり、前記フェニルの4位の置換基はフルオロ、またはC〜Cアルキル、−OR、および−NR1011(式中、R、R10、およびR11は、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)からなる群から選択される電子供与基である、請求項8に記載のフォトクロミック材料。
【請求項10】
B基およびB’基のうちの少なくとも1つは4位が置換されたフェニルであり、前記フェニルの4位の置換基はクロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)Z’、−SOX’、または−C(=O)−X’(式中、Z’およびX’は、各々独立して水素、C〜Cアルキル、−OR12、または−NR1314(式中、R12、R13、およびR14は各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である)から選択される第3電子求引基である、請求項8に記載のフォトクロミック材料。
【請求項11】
前記B基は4−フルオロフェニルであり、前記B’基は4位が置換されたフェニルを含んでおり、4位における置換基は−NR1011(式中、R10およびR11は、各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR10およびR11は窒素原子と一緒になって構造式II:
【化1】

(式中、各−Y−は、独立して各存在について−CH−、−CH(R15)−、−C(R15、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R15)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R15)−、または−N(アリール)−であるが、各R15は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、mは1、2または3の整数であり、pは0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環を形成することができる)である、請求項8に記載のフォトクロミック材料。
【請求項12】
B’は、4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルを含んでおり、前記置換はヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る、請求項11に記載のフォトクロミック材料。
【請求項13】
前記インデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジアルキル置換をさらに含む、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項14】
前記第1電子求引基はフルオロ基であり、前記第2電子求引基はフルオロ基である、請求項13に記載のフォトクロミック材料。
【請求項15】
(a)インデノ縮合ナフトピラン;
(b)前記インデノ縮合ナフトピランのC環上の炭素に結合した第1電子求引基;および
(c)前記インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基を含み、
前記インデノ縮合ナフトピランの13位での置換はヒドロキシルを含まないフォトクロミック材料。
【請求項16】
前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は、各々独立してフルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R、−SOX、または−C(=O)−Xであり、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR(式中、R、R、R、およびRは、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である、請求項15に記載のフォトクロミック材料。
【請求項17】
前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は、各々独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、または−C(=O)−OR(式中、Rは、C〜Cアルキル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールである)である、請求項15に記載のフォトクロミック材料。
【請求項18】
前記インデノ縮合ナフトピランの3位に結合したB基およびB’基をさらに含み、前記B基およびB’基は各々独立して、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニル上の置換基は独立して電子供与基または第3電子求引基である、請求項15に記載のフォトクロミック材料。
【請求項19】
前記B基は4−フルオロフェニルであり、前記B’基は4位が置換されたフェニルを含んでおり、4位における置換基は−NR1011(式中、R10およびR11は、各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR10およびR11は窒素原子と一緒になって構造式II:
【化2】

(式中、各−Y−は、独立して各存在について−CH−、−CH(R15)−、−C(R15、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R15)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R15)−、または−N(アリール)−であるが、各R15は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、mは1、2または3の整数であり、pは0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環を形成する)である、請求項18に記載のフォトクロミック材料。
【請求項20】
B’は、4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルを含んでおり、前記置換はヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る、請求項19に記載のフォトクロミック材料。
【請求項21】
(a)インデノ縮合ナフトピラン;
(b)前記インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基;
(c)前記インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基;および
(d)前記インデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジアルキル置換を含み、
前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は同一であるかまたは異なるフォトクロミック材料。
【請求項22】
前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は、各々独立してフルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R、−SOX、または−C(=O)−Xであり、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR(式中、R、R、R、およびRは、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である、請求項21に記載のフォトクロミック材料。
【請求項23】
前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は、各々独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、または−C(=O)−OR(式中、Rは、C〜Cアルキル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールである)である、請求項21に記載のフォトクロミック材料。
【請求項24】
前記インデノ縮合ナフトピランの3位に結合したB基およびB’基をさらに含み、前記B基およびB’基は各々独立して、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニル上の置換基は独立して電子供与基または第3電子求引基である、請求項21に記載のフォトクロミック材料。
【請求項25】
前記B基は4−フルオロフェニルであり、前記B’基は4位が置換されたフェニルを含んでおり、4位における置換基は−NR1011(式中、R10およびR11は、各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR10およびR11は窒素原子と一緒になって構造式II:
【化3】

(式中、各−Y−は、独立して各存在について−CH−、−CH(R15)−、−C(R15、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R15)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R15)−、または−N(アリール)−であるが、各R15は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、mは1、2または3の整数であり、pは0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環を形成する)である、請求項24に記載のフォトクロミック材料。
【請求項26】
B’は、4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルを含んでおり、前記置換はヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る、請求項25に記載のフォトクロミック材料。
【請求項27】
(a)インデノ縮合ナフトピラン;
(b)前記インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第1電子求引基;および
(c)前記インデノ縮合ナフトピランの11位に結合した第2電子求引基を含むが、ただし前記第1電子求引基がフルオロ基である場合は、前記第2電子求引基はフルオロ基ではない、フォトクロミック材料。
【請求項28】
前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は、各々独立してフルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R、−SOX、または−C(=O)−Xであり、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR(式中、R、R、R、およびRは、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である、請求項27に記載のフォトクロミック材料。
【請求項29】
前記第1電子求引基および前記第2電子求引基は、各々独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、または−C(=O)−OR(式中、Rは、C〜Cアルキル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールである)である、請求項27に記載のフォトクロミック材料。
【請求項30】
前記インデノ縮合ナフトピランの3位に結合したB基およびB’基をさらに含み、前記B基およびB’基は各々独立して、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニル上の置換基は独立して電子供与基または第3電子求引基である、請求項27に記載のフォトクロミック材料。
【請求項31】
前記B基は4−フルオロフェニルであり、前記B’基は4位が置換されたフェニルを含んでおり、4位における置換基は−NR1011(式中、R10およびR11は、各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR10およびR11は窒素原子と一緒になって構造式II:
【化4】

(式中、各−Y−は、独立して各存在について−CH−、−CH(R15)−、−C(R15、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R15)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R15)−、または−N(アリール)−であるが、各R15は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、mは1、2または3の整数であり、pは0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環を形成することができる)である、請求項30に記載のフォトクロミック材料。
【請求項32】
B’は、4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルを含んでおり、前記置換はヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る、請求項31に記載のフォトクロミック材料。
【請求項33】
前記インデノ縮合ナフトピランの13位でのジェミナルジアルキル置換をさらに含む、請求項27に記載のフォトクロミック材料。
【請求項34】
構造III:
【化5】

(式中、
16は、フルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R21、−SOX、または−C(=O)−X(式中、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR22、または−NR2324(式中、R21、R22、R23、およびR24は、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である)である;
17は、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R25、−SOX、または−C(=O)−X(式中、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR26、または−NR2728(式中、R25、R26、R27、およびR28は、各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である)である;
qは0〜3の範囲内の整数であり、sは0〜3の範囲内の整数であり、そして各R18は、各存在について、独立して水素;フルオロ;クロロ;C〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル;置換または非置換フェニル;−OR29または−OC(=O)R29(式中、R29は、水素、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、またはモノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキルであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである);一置換フェニルであって、前記フェニルはパラ位に位置する置換基を有しており、前記置換基はジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH、または−[O−(CH−(式中、tは2、3、4、5または6の整数であり、kは1〜50の整数であり、前記置換基は他のフォトクロミック材料のアリール基に結合している一置換フェニル;−N(R30)R31(式中、R30およびR31は、各々独立して、水素、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ジベンゾピリジル、フルオレニル、C〜Cアルキルアリール、C〜C20シクロアルキル、C〜C20ビシクロアルキル、C〜C20トリシクロアルキルまたは(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキルであり、前記アリール基はフェニルまたはナフチルであるか、またはR30およびR31は共に窒素と結合してC〜C20ヘテロ−ビシクロアルキル環またはC〜C20ヘテロ−トリシクロアルキル環を形成する);以下の構造式IVA:
【化6】

(式中、各−Y−は、独立して各存在について−CH−、−CH(R32)−、−C(R32、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R32)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R32)−、または−N(アリール)−であるが、各R32は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、mは1、2または3の整数であり、pは0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環;以下の構造式IVBまたはIVC:
【化7】

(式中、R34、R35、およびR36は、各々独立して、水素、C〜Cアルキル、フェニル、またはナフチルであるか、または基R34およびR35は共に5〜8炭素原子の環を形成しており、各R33は、各存在について独立してC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フルオロまたはクロロから選択され、pは、0、1、2、または3の整数である)のうちの1つによって表される基;ならびに非置換、一置換、または二置換のC〜C18スピロ二環式アミン、または非置換、一置換、および二置換のC〜C18スピロ三環式アミン(式中、前記置換基は、独立して、アリール、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはフェニル(C〜C)アルキルである)である;または
6位にあるR18基および7位にあるR18基は共にIVDまたはIVE:
【化8】

(式中、TおよびT’は、各々独立して、酸素または基−NR30−(式中、R30、R34、およびR35は上記に記載されたとおりである)である)の一方によって表される基を形成する;
19およびR20は、各々独立して、水素;C〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル;アリル;置換または非置換フェニル;置換または非置換ベンジル;クロロ;フルオロ;基−C(=O)W(式中、Wは、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換、一置換または二置換のアリール基であるフェニルまたはナフチル、フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ−(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、またはモノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノまたはジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノである);−OR37(式中、R37は、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリル、または基−CH(R38)Y’’(式中、R38は、水素またはC〜Cアルキルであり、Y’’は、CN、CF、またはCOOR39(式中、R39は、水素またはC〜Cアルキルである)である)であるか、またはR37は、基−C(=O)W’(式中、W’は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換、一置換または二置換のアリール基であるフェニルまたはナフチル、フェノキシ、モノ(C〜C)アルキル置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルキル置換フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、またはモノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノまたはジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノであるが、前記フェニル基またはナフチル基の置換基の各々は独立してC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)である);または一置換フェニルであって、前記フェニルはパラ位に位置する置換基を有しており、前記置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−、または−[O−(CH−(式中、tは、整数2、3、4、5または6であり、kは1〜50の整数である)であり、前記置換基は他のフォトクロミック材料のアリール基に結合している一置換フェニルであるか;あるいはR19およびR20は、共にオキソ基、3〜6個の炭素原子を含有するスピロ−カルボン酸基、または1〜2個の酸素原子およびスピロ炭素原子を含めて3〜6個の炭素原子を含有するスピロ−複素環基を形成し、前記スピロ−カルボン酸基およびスピロ−複素環基は0、1または2個のベンゼン環を用いて環形成されている;
BおよびB’は、各々独立して:非置換、一置換、二置換、または三置換のフェニル基またはアリール基;9−ユロリジニル;またはピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾリル、ベンゾピリジル、インドリニル、およびフルオレニルから選択される非置換、一置換または二置換のヘテロ芳香族基であって、前記フェニル、アリールおよびヘテロ芳香族の置換基の各々は、独立して:ヒドロキシル、基−C(=O)R40(式中、R40は、−OR41、−N(R42)R43(式中、R41は、アリル、C〜Cアルキル、フェニル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキルまたはC〜Cハロアルキルであり、前記ハロ置換基はクロロまたはフルオロであり、R42およびR43は、各々独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニルまたは置換フェニルであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)、ピペリジノ、またはモルホリノである、フェニル、アリールおよびヘテロ芳香族基;ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニル、およびアクリジニルから選択される非置換または一置換の基であって、前記置換基の各々はC〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、フェニル、またはハロゲンである基;一置換フェニルであって、前記フェニルはパラ位に位置する置換基を有しており、前記置換基は:ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−、または−[O−(CH−(式中、tは、整数2、3、4、5または6であり、kは、1〜50の整数であり、前記置換基は他のフォトクロミック材料のアリール基に結合されている)である一置換フェニル;以下の:
【化9】

(式中、Kは、−CH−または−O−であり、Mは、−O−または置換窒素であるが、ただしMが置換窒素である場合はKは−CH−であり、置換窒素の置換基は水素、C〜C12アルキル、またはC〜C12アシルであることを前提とし、各R44は独立して、各存在について、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、ヒドロキシ、およびハロゲンから選択され、R45およびR46は、各々独立して、水素またはC〜C12アルキルであり、uは0〜2の範囲内の整数である)の1つによって表される基;または:
【化10】

(式中、R47は、水素またはC〜C12アルキルであり、R48は、ナフチル、フェニル、フラニル、およびチエニルから選択される非置換、一置換、または二置換の基であり、前記置換基はC〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、またはハロゲンである)によって表される基;または
BおよびB’は、共になってフルオレン−9−イリデン、一置換、または二置換フルオレン−9−イリデンのうちの1つを形成するが、前記フルオレン−9−イリデンの置換基の各々は独立してC〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、およびハロゲンから独立して選択される)を有するフォトクロミック材料。
【請求項35】
16はフルオロであり;R17はフルオロであり;そしてR19およびR20は各々独立してC〜Cアルキルである、請求項34に記載のフォトクロミック材料。
【請求項36】
Bは4−フルオロフェニルであり、B’は4位が置換されたフェニルを含んでおり、このとき4位における置換基は−NR1011(式中、R10およびR11は、各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、前記フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR10およびR11は窒素原子と一緒になって構造式II:
【化11】

(式中、各−Y−は、独立して各存在について−CH−、−CH(R15)−、−C(R15、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R15)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R15)−、または−N(アリール)−であるが、各R15は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各アリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、mは1、2または3の整数であり、pは0、1、2、または3の整数であり、pが0の場合、Zは−Y−である)によって表される窒素含有環を形成する)である、請求項34に記載のフォトクロミック材料。
【請求項37】
B’は、4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルを含んでおり、前記置換基はヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る、請求項36に記載のフォトクロミック材料。
【請求項38】
(a)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(b)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(c)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(d)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(e)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(f)3−(4−メチルフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(g)3−フェニル−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(h)3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(i)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(j)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(k)3−フェニル−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(l)3−(4−メトキシフェニル)−3−(5−メチルチオフェン−2−イル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(m)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(n)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6−シアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(o)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジシアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(p)3,3−ジフェニル−6,11−ジシアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(q)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6−メトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(r)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−メトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(s)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジ(メトキシカルボニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(t)3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6−ブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(u)3−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−6−ブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(v)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
から選択される、請求項34に記載のフォトクロミック材料。
【請求項39】
基材;および
前記基材の少なくとも一部分に結合した請求項1に記載のフォトクロミック材料、
を含むフォトクロミック物品。
【請求項40】
前記基材はポリマー材料を含み、前記フォトクロミック材料は、前記ポリマー材料の少なくとも一部分と混合すること、前記ポリマー材料の少なくとも一部分に結合させること、および前記ポリマー材料の少なくとも一部分に吸収させることのうちの少なくとも1つによって前記ポリマー材料の少なくとも一部分に組み込まれている、請求項39に記載のフォトクロミック物品。
【請求項41】
前記フォトクロミック物品は、前記基材の少なくとも一部分に結合した少なくとも部分的なコーティングを含み、前記少なくとも部分的なコーティングは前記フォトクロミック材料を含む、請求項39に記載のフォトクロミック物品。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−521542(P2009−521542A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547261(P2008−547261)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/046270
【国際公開番号】WO2007/073462
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】