説明

電子眼鏡

【課題】可変焦点レンズが動作していないときの消費電力を大幅に削減し、電池寿命を大幅に向上する電子眼鏡を提供する。
【解決手段】電力供給の開始又は遮断ができる電源と、人体への接触の有無を検知し人体装着信号を出力するための検知スイッチと、レンズ駆動電圧に応じて複数の焦点距離を持つ可変焦点レンズと、前記可変焦点レンズの焦点距離を切り替えるための指令を出す焦点切替スイッチと、前記焦点切替スイッチにより指令された焦点切替信号に応じてレンズ駆動電圧を前記可変焦点レンズに印加するためのレンズ駆動回路と、前記人体装着信号と前記焦点切替信号とを用いて前記電源の電力供給を遮断するための電源遮断判断回路とを備えた電子眼鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に焦点距離の切り替えを行う電子眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気的に焦点距離を可変させる電子眼鏡として、レンズの中に液晶などの誘電体材料を封入し、これに電圧をかけて誘電率を変化させることで屈折率を制御する可変焦点レンズを用いた方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、電子眼鏡のスイッチング制御方法として、使用者が電子眼鏡を装着したとき、左右の鼻パッドにそれぞれ設けた電極が皮膚に接触し、電極間の電圧が所定レベルで所定時間維持されたことが検知されると制御回路を起動し、さらに鼻パッドを手で押さえてパッドの電極と皮膚との接触面積を変えて、電極間の電圧が所定レベルで所定時間維持されたことが検知されると焦点切替えを行う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−352445号公報
【特許文献2】特開2007−212501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、電子眼鏡の装着を検知して電子回路を起動するため、可変焦点レンズの視野状態によらず電子眼鏡を装着している間は、常に電子回路の動作電力が消費されている。ところが、可変焦点レンズは、常に電圧を印加する必要は無く、焦点距離が最大になる遠方視野では電圧を印加していない。そのため、遠方視野を見ているときでも電子回路が動作するため電力が消費されているという課題を有していた。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、可変焦点レンズが動作していないときの消費電力を大幅に削減し、電池寿命を大幅に向上する電子眼鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電子眼鏡は、電力供給の開始又は遮断ができる電源と、人体への接触の有無を検知し人体装着信号を出力するための検知スイッチと、レンズ駆動電圧に応じて複数の焦点距離を持つ可変焦点レンズと、前記可変焦点レンズの焦点距離を切り替えるための指令を出す焦点切替スイッチと、前記焦点切替スイッチにより指令された焦点切替信号に応じてレンズ駆動電圧を前記可変焦点レンズに印加するためのレンズ駆動回路と、前記人体装着信号と前記焦点切替信号とを用いて前記電源の電力供給を遮断するための電源遮断判断回路とを備えたことを特徴としたものである。
【0006】
さらに、本発明の電子眼鏡は、電力供給の開始又は遮断ができる電源と、人体への接触の有無を検知し人体装着信号を出力するための検知スイッチと、レンズ駆動電圧に応じて複数の焦点距離を持つ可変焦点レンズと、前記可変焦点レンズの焦点距離を切り替えるための指令を出す焦点切替スイッチと、前記焦点切替スイッチにより指令された焦点切替信号に応じてレンズ駆動電圧を前記可変焦点レンズに印加するためのレンズ駆動回路と、前記人体装着信号が入力された後に前記人体装着信号が入力されない非入力期間を計算し、そのい非入力期間の長さに応じて前記レンズ駆動回路と前記電源の制御を行う電源遮断判断回路とを備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子眼鏡によれば、電子眼鏡の消費電力が削減され電池寿命を大幅に向上し、電池の交換回数又は充電回数を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の電子眼鏡のスイッチング制御方法の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0009】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について、図1から図5を用いて説明する。図1は本発明の電子眼鏡の構成を示す図である。図1に示す3L及び3Rは、電子眼鏡特有の可変焦点レンズである。これらのレンズをフレーム(4L、5L及び4R、5R)とで固定している。このフレームは、可変焦点レンズの外周を取り巻くように構成されている。フレームの構成は、通常の眼鏡と同様に耳掛け(図示せず)の付いたテンプル(7L、7R)とフレームとを連携する丁番(8L、8R)と、フレーム同士を接続するブリッジ6と、各フレームに設けられた蝶足(10L、10R)と、これらの蝶足の先端に設けられた鼻パッド(9L、9R)から成る。この可変焦点レンズを駆動するための電子回路が納められた制御ブロック13が、フレーム5Rに取り付けられている。
【0010】
可変焦点レンズ(3L、3R)は、乱視及び遠方視における度数が処方された固体レンズ(1L、1R)と液晶レンズ(2L、2R)とを貼り合わせて製作されている。液晶レンズ(2L、2R)は、液晶が封入されているため、液晶に電圧を印加するとその屈折力が変化する。そのため、液晶レンズに電圧を印加していないときは、液晶レンズ(2L、2R)は屈折しないので、可変焦点レンズは、予め処方されたマイナス度数の固体レンズ(1L、1R)のみの度数となる。本実施例では、遠方視野レンズとなるように設定した。
【0011】
また、液晶レンズに電圧を印加したときは、液晶レンズ(2L、2R)が屈折してプラス度数の凸レンズになる。その結果、固体レンズの度数との組み合わせで、使用者が本を読むとき等に適した度数の近方視野レンズに設定した。
【0012】
左右の鼻パッド(9L、9R)には、それぞれセンサ(11L、11R)が鼻と接触する面に取り付けられている。このセンサ(11L、11R)は、後述する制御ブロック13に接続されており、この2つのセンサからの検知信号を利用した検知スイッチ12が構成されている。
【0013】
一方、フレーム5Rには、液晶レンズの屈折力を切り替えるための焦点切替スイッチ14が設けられている。この焦点切替スイッチ14は、後述の制御ブロック13に接続されている。
【0014】
本実施例では、検知スイッチ12の位置を鼻パッドにしたが、人体の皮膚に接触する部位であれば良い。また、人体に直接接触するものに限らず、人体に装着したことを検知し得る振動センサでも、同様に使用出来る。
【0015】
図2は、制御ブロック13内部の電子眼鏡の回路構成を示す図である。ここで、制御ブロック13は、電池15と、電源遮断判断回路16と、可変焦点レンズ(3L、3R)にレンズ駆動パルスを印加するレンズ駆動回路17とリレー18から構成されている。また、リレー18が電池15と電源遮断判断回路16との間に配置され、この電池15とリレー18とで電源を構成している。この電源は、制御信号(b、c、d)に応じて電源遮断判断回路16へ電力供給のON・OFFを行う。
【0016】
電池15に接続された制御信号aは、焦点切替スイッチ14を介して、制御信号bとcとに別れ、それぞれ図3に示すリレー18のコイル1の開放端子と電源遮断判断回路16に接続されている。また、電源遮断判断回路16からの制御信号dは、図3に示すリレー18のコイル2の開放端子に接続されている。
【0017】
レンズ駆動回路17は、例えば、昇圧回路とレンズ駆動パルス生成回路とで構成出来、電源遮断判断回路16からの指令信号でレンズ駆動パルスを出力される。このレンズ駆動パルス信号により可変焦点レンズ(3L、3R)の焦点距離が変化する。本実施例では、電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17のように電源からの電力供給を受けて動作する回路や素子を電子回路と呼ぶ。
【0018】
焦点切替スイッチ14は、遠方視野と近方視野とを切り替えるスイッチであり、本実施例では、スイッチを押している間のみ接点が導通し、スイッチを放すと接点が断線されて、スイッチの位置も元に戻るモーメンタリ動作のスイッチを使用している。
【0019】
検知スイッチ12のセンサ(11L、11R)は電源遮断判断回路16にそれぞれ配線されている。検知スイッチ12のセンサ(11L、11R)は、眼鏡の装着、非装着を検出する。例えば、センサ(11L、11R)を電極で構成し、これらの電極間に電圧を印加してその抵抗値を測定することで、人体への接触状態が検知できる。すなわち、本発明の電子メガネを顔にかけていない時は電極間が高抵抗となり断線状態となるので、すなわちOFF状態(非装着)と判断できる。一方、本発明の電子メガネを顔にかけると両方の電極が鼻の皮膚に接触するため、電極間の抵抗値が下がる。従って、この抵抗値の低下でON状態(装着)と判断することが出来る。なお、このような電極の代わりに温度センサ等の人体を検出するセンサを用いても良い。
【0020】
また、リレー18には、入力信号により2接点が切り替えられるラッチングリレーを使用する。ラッチングリレーは、パルス状の信号をコイルに与えるとその状態を保持し続けるため、コイルに電力をかけ続ける必要がないので低消費電力である。本実施例では、巻線型のラッチングリレーを使用する。特に、小型軽量なラッチングリレーとしては、機械接点が用いられた電磁式のMEMSリレーが好適である。
【0021】
図3に、本実施例で使用したリレーの等価回路を示す。リレーは、電池15に接続されたON接点と、開放されたOFF接点とを切り替えるためのプランジャと、プランジャをON接点側に切替えるためのコイル1と、プランジャをOFF接点側に切替えるためのコイル2と、これらのコイルの間に設けられた永久磁石とから成る。この永久磁石により、ON又はOFF接点にプランジャが接触した後、コイルの電力を遮断しても接触状態が保持出来る。すなわち、ラッチングリレーとして機能する。
【0022】
図4は、本発明の第1の実施の形態における電源遮断判断回路16の詳細なブロック図を示す。各ブロックの動作を、図3と図4を用いて説明する。
【0023】
初期状態は、電源遮断判断回路16に電力が供給されていない。このときは、リレー18のプランジャがOFF接点側に接触しているため、リレー18の出力端子には電池15の電圧は現れない。すなわち、電池15と電源遮断判断回路16とが遮断された状態にある。
【0024】
この状態で、焦点切替スイッチ14が押されると、制御信号bを通してコイル1の開放端子に電圧が印加されるため、プランジャはコイル1側へ切り替わる。そのため、ブランジャを経由してON接点から出力端子へ電圧が供給される。その結果、電源遮断判断回路16に電力が供給される。
【0025】
同時に、電源遮断判断回路16へも制御信号cを通して焦点切替スイッチ14の信号が印加されるが、電源遮断判断回路16はリレー18の接点が切り替わるまでは電力が供給されないため、制御信号dは出力されない。従って、初期状態では、リレー18の制御は、制御信号bのみによって行われる。
【0026】
電源遮断判断回路16は、A/Dコンバータ19と比較回路20とリレー制御信号生成回路21とで構成されている。電源遮断判断回路16に電力が供給されている間は、焦点切替スイッチ14と検知スイッチ12の入力信号をそれぞれリレー制御信号生成回路21と比較回路20とが監視し、入力信号の状態に応じてリレー18の接点の切り替えをおこなう。
【0027】
例えば、検知スイッチ12の入力信号監視は、次のようにして行う。電源遮断判断回路16内部の図示していない電圧印加回路から検知スイッチ12に電圧を印加し、その出力電圧をA/Dコンバータ19で変換する。変換された出力電圧を比較回路20で予め定めた閾値電圧と比較し、閾値電圧を越えた検知信号をリレー制御信号生成回路21に送る。リレー制御信号生成回路21は、検知信号がなければ、電子眼鏡が人体に装着されていないと判断し、制御信号dを介してリレー18の第2のコイルの開放端子に電圧を与える。その結果、電池15から電源遮断判断回路16への電力が遮断される。
【0028】
また、焦点切替スイッチ14が押されたときは、制御信号cを介してリレー制御信号生成回路21に電圧が入力される。その結果、リレー制御信号生成回路21から制御信号dを介してリレー18のコイル2の開放端に電圧が印加される。その結果、コイル2側へプランジャが引きつけられ、プランジャが切り替わり、電池15と電源遮断判断回路16とが遮断される。
【0029】
図5は、本発明の第1の実施の形態における電子眼鏡の動作フローチャートを示す図である。初期状態は、電池15から電源遮断判断回路16を含む電子回路に電力が遮断されている状態である。
【0030】
この状態から、焦点切替スイッチ14が押されると、制御信号bを経由してリレー18のコイル1の開放端子に電池15の電圧が印加され、ブランジャはON接点側に切り替わる。そのため、電池15と電源遮断判断回路16とがリレー18を経由して接続され、電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17に電力が供給される。
【0031】
電源遮断判断回路16が起動すると、検知スイッチ12のセンサ(11L、11R)へ電圧が供給され、一定時間間隔で検知スイッチ12の入力信号が監視される。同時に、レンズ駆動回路17からは、使用者の処方にあった屈折力が得られる駆動電圧及び駆動周波数のレンズ駆動パルスが液晶レンズ(2Lと2R)へ印加され、電子眼鏡は近方視野モードへ移行する。
【0032】
検知スイッチ12がON状態の時は、装着と判断されるため、そのまま電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17へ電力が供給され続ける(近方視野モード維持)。しかし、検知スイッチ12がOFF状態の時は、非装着と判断されるため、リレー制御信号生成回路21からリレー18のコイル2の開放端子にパルスが印加される。印加されると、リレー18のプランジャはOFF接点側に切り替わるので、電池15からの電子回路への電力供給は遮断される。
【0033】
そのため、電源遮断判断回路16による検知スイッチ12の入力信号監視は停止し、同時にレンズ駆動回路17からの液晶レンズ(2Lと2R)へのレンズ駆動パルスの出力が停止し、電子眼鏡は遠方視野モードへ移行する。
【0034】
一方、電源遮断判断回路16が起動している時に、焦点切替スイッチ14が押されると、焦点の切替と判断し、リレー制御信号生成回路21からリレー18のコイル2の開放端子にパルスが印加される。そのため、リレー18内部のプランジャがOFF接点側に切り替わり、電池15からの電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17への電力供給が遮断される。その結果、液晶レンズ(2Lと2R)へのレンズ駆動パルスの出力が停止するため、電子眼鏡は遠方視野モードに切り替わる。
【0035】
また、液晶レンズ2L、2Rへレンズ駆動パルスが印加されている時に電子眼鏡が取り外されると、検知スイッチ12がOFF状態になり、非装着と判断される。よって、リレー制御信号生成回路21がリレー18のコイル2の開放端子にパルスを印加し、リレー18内部のプランジャがOFF接点側に切り替わる。そのため、電池15から電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17への電力供給が停止し、電子眼鏡は遠方視野モードに切り替わる。
【0036】
以上のように、電子眼鏡の装着を検知する検知スイッチ12がON状態においても、焦点切替スイッチ14を押さない限り、電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17はリレー18により電池15と遮断されているため、電子回路の待機電力による電池の消耗がない。また、駆動中に電子眼鏡を外した状態においても、電源遮断判断回路16が検知スイッチ12のOFF状態を検知し、電池15から電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17を遮断するので電子回路の待機電力による電池の消耗を削減できる構成となっている。
【0037】
次に、使用状況別に本願発明の電子眼鏡の動作の説明を行う。
【0038】
(1)電子眼鏡が保管してあるとき
検知スイッチ12は、センサ(11L、11R)が開放されているためOFF状態となり、焦点切替スイッチ14も開放でOFF状態である。よって、リレー18は、開放状態にあり電子回路と電池15とは遮断されている。電圧が印加されていない液晶レンズ(2L、2R)は、屈折力の無い平レンズ状態にあり、遠方視野に処方された固体レンズ1L、1Rとの合成レンズすなわち可変焦点レンズ(3L、3R)は、遠方視野状態にある。この時、電力の消費は無い。
【0039】
(2)電子眼鏡を装着するとき
上記(1)の状態から電子眼鏡を顔に装着すると、検知スイッチ12のセンサ(11L、11R)が鼻の皮膚に接触してON状態になるが、焦点切替スイッチ14が押されていないので、電源遮断判断回路16に電力が供給されていないので動作しない。電圧が印加されていない液晶レンズ(2L、2R)は、屈折力の無い平レンズ状態にあり、遠方視野に処方された固体レンズ(1L、1R)との合成レンズすなわち可変焦点レンズ(3L、3R)は、遠方視野状態にある。装着した後も、電力の消費は無い。
【0040】
(3)電子眼鏡を装着した状態で、遠方視野から近方視野に切り替えるとき
上記(2)の状態から近方視野に切り替えるときは、焦点切替スイッチ14を押す。するとリレー18の接点が切り替わり、電池15から電力が電子回路に供給される。そのため、電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17が起動し、液晶レンズ(2L、2R)に所定のレンズ駆動パルスを印加する。液晶レンズ(2L、2R)はレンズ駆動パルス印加により凸レンズ機能が働き固体レンズ(1L、1R)との合成により、可変焦点レンズ(3L、3R)が近方向視野に切り替わる。切り替わった後は、電力が消費される。
【0041】
(4)電子眼鏡を装着した状態で、近方視野から遠方視野に切り替えるとき
上記(3)の状態から再び遠方視野に切り替えるときは、焦点切替スイッチ14を押す。すると制御信号cを介して電源遮断判断回路16に信号が入り、電源遮断判断回路16から制御信号dを通してリレー18の接点を切り替える。このとき、電子回路と電池15との接続が遮断される。そのため、レンズ駆動回路17から供給していた液晶レンズ(2L、2R)へのレンズ駆動パルスも停止されるので、可変焦点レンズ(3L、3R)は遠方視野に切り替わる。遠方視野に切り替わった後は、電力の消費は無い。
【0042】
(5)近方視野で使用中に電子眼鏡を取り外すとき
上記(3)の近方視野状態で、電子眼鏡を顔から外すと、検知スイッチ12のセンサ(11Lと11R)が鼻の皮膚から外れOFF状態となる。次に、OFF状態を検知した電源遮断判断回路16がリレー18の接点を切り替えて、電池15との接続を遮断する。レンズ駆動回路17から供給されていた液晶レンズ(2L、2R)へのレンズ駆動パルスも停止されるので、可変焦点レンズ(3L、3R)は遠方視野に切り替わる。遠方視野に切り替わった後は、電力の消費は無い。ここで、電子眼鏡は、上記(1)の状態に戻る。
【0043】
以上のように、本発明によれば、電子眼鏡を装着した状態においても遠方視野での使用中は電池が消耗されない。また、電子眼鏡を顔から外した非装着状態においても、スイッチを動作させるために電子回路に電池から電力を供給しておく必要がなく、電池を電子回路から遮断しておくことができるので、電池の消費電力を大幅に削減することができる。したがって、電池寿命が長く、電池の交換又は充電回数のすくない電子眼鏡を提供することができる。
【0044】
本実施例では、2焦点の切り替えについて説明をおこなったが、多焦点切り替えの場合も同様の動作で電池の消費電力を削減することができる。2焦点との違いは、焦点切替スイッチ14を押すごとに、遠方視野→中間視野→近方視野→遠方視野の順番にモードが切り替えることである。また、焦点距離によって自動で焦点距離を切り替える場合は、焦点切替スイッチ14は主電源スイッチとして利用される。
【0045】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について、図6と図7を用いて説明する。実施の形態1の構成と異なるところは電源遮断判断回路16にタイマー回路22を設け、制御信号eでレンズ駆動回路17を制御できる点である。これにより、電子眼鏡を少しの間、人体から外して再装着したときの、電子眼鏡の操作時間(起動時間)を早めつつ、電池の不要な消耗を抑えることが出来る。
【0046】
図6に、本発明の第2の実施の形態における電源遮断判断回路16のブロック図を示す。電源遮断判断回路16は、A/Dコンバータ19と比較回路20とタイマー回路22とリレー制御信号生成回路21から構成されている。さらに、タイマー回路22は、カウンタ23と遮断時間判断回路24とで構成されている。遮断時間判断回路24の出力は、リレー制御信号生成回路21とレンズ駆動回路17とに接続されており、後述するカウンタ23の値に応じて、これらの出力を制御する。本実施例の電子回路とは、電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17とを指す。
【0047】
検知スイッチ12には、実施の形態1と同様に、電源遮断判断回路16から電圧が印加される。検出スイッチ12からは、電子眼鏡と人体との装着・非装着を検出するための信号が出力され、A/Dコンバータ19にて変換される。変換された検出信号は、比較回路20で予め定めた閾値電圧と比較され、閾値電圧を越えた検知信号のみが、タイマー回路22内部の遮断時間判断回路24に送る。
【0048】
遮断時間判断回路24は、常に検知信号を監視しており、検知信号が送られていないと判断したときは、カウンタ制御信号gを出力してカウンタ23を起動し、非装着時間のカウントを開始する。カウンタ23は、そのカウント値を遮断時間判断回路に24に送る。遮断時間判断回路24は、その内部に複数のカウント閾値を持ち、これらの閾値とカウンタ23から送られてくるカウント値とを比較する。遮断時間判断回路24は、このカウント値と複数の閾値との比較結果に応じて、レンズ駆動回路17へレンズ駆動制御信号eとリレー制御信号生成回路21への電源遮断信号fの出力を行う(これらの詳細は、後述する。)。
【0049】
レンズ駆動回路17の詳細は図示しないが、実施の形態1と同様に昇圧回路とレンズ駆動パルス生成回路とで構成できる。遮断時間判断回路24からのレンズ駆動制御信号eにより可変焦点レンズ(3L、3R)へレンズ駆動パルスの停止/供給を行う。また、リレー制御信号生成回路21は、実施の形態1と同様に、焦点切替スイッチ14の入力信号により、リレー18の切替信号を出力する。
【0050】
図7は、本発明の第2の実施の形態における電子眼鏡の動作フローチャートを示す図である。図7を利用して、本実施例での電子眼鏡の動作をさらに詳しく説明する。
【0051】
初期状態は、電池15から電源遮断判断回路16を含む電子回路に電力が遮断されている状態である。この状態から、焦点切替スイッチ14が押されると、制御信号線bを経由してリレー18のコイル1の開放端子に電池15の電圧が印加され、ブランジャはON接点側に切り替わる。そのため、電池15と電源遮断判断回路16とがリレー18を経由して接続され、電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17に電力が供給される。
【0052】
電源遮断判断回路16が起動すると、検知スイッチ12のセンサ(11L、11R)へ電圧が供給され、一定時間間隔(本実施例では1/10秒間隔)で検知スイッチ12の入力信号が監視され、遮断時間判断回路24にて人体への装着状態を判断する。この時、レンズ駆動回路17にも電力が供給されるが、遮断時間判断回路24からレンズ駆動回路17へ液晶レンズ(2L、2R)にレンズ駆動パルスは出力されない。従って、電子眼鏡は遠方視野モードになる。
【0053】
焦点切替スイッチ14が押されたとき、遮断時間判断回路24が人体に電子眼鏡が装着されていると判断した場合は、レンズ駆動回路17から可変焦点レンズ(3L、3R)にレンズ駆動パルスが供給され、近方視野モードへ移行する。次に、焦点切替スイッチ14が押されると、リレー制御信号生成回路21は、遠方視野モードへ切替と判断し、リレー18に制御信号dを通してリレー18を遮断するためのパルスを印加する。リレー18が遮断状態(OFF接点)に切り替えられて電池15との接続が遮断されるため、電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17への電力供給が停止し、遠方視野モードに切り替わる。
【0054】
焦点切替スイッチ14が押されたとき、一定時間(本実施例では、1/2秒とした。)を越えて検知スイッチ12からの入力信号が遮断時間判断回路24に入力されないときは、遮断時間判断回路24はカウンタ23を起動させる。また、遮断時間判断回路24は、検知スイッチ12からの入力信号が入力されたときに、カウンタ23をリセット、すなわちカウント動作を停止させ、そのカウント値(非装着時間T)を0とする。
【0055】
遮断時間判断回路24は、カウンタ23のカウント値の閾値を二つ備えており、それぞれの閾値を最小設定値(Tmin)、最大設定値(Tmax)であり、Tmin<Tmaxの関係にある。カウンタ23は、検知スイッチ12からの入力信号が、途絶えている間は、カウントを行い、そのカウント値を遮断時間判断回路24に送る。
【0056】
遮断時間判断回路24は、カウンタ23から送られてくるカウント値が最小設定値(Tmin)を越えたとき、レンズ駆動回路17へ可変焦点レンズ(3L、3R)へのレンズ駆動パルスを停止する指令するレンズ駆動制御信号eを出力する。従って、電子眼鏡は、自動的に遠方視野モードに入る。このとき、遮断時間判断回路24はレンズ駆動回路17への電力を停止させない。
【0057】
カウント値が、最大設定値(Tmax)に達する前に、検知スイッチ12からの入力信号が遮断時間判断回路24に送られたときは、遮断時間判断回路24は、カウンタ23をリセットするとともに、遮断時間判断回路24は、レンズ駆動回路17に対し可変焦点レンズ(3L、3R)へのレンズ駆動パルスを送るように指令するレンズ駆動制御信号eを出力する。このため、電子眼鏡は、近方視野モードになる。
【0058】
カウント値が、Tmaxを越えると、遮断時間判断回路24は、リレー制御信号生成回路21に対して電源OFFの指令を行う電源遮断信号fを出力する。このとき、リレー制御信号生成回路21は、リレー18に制御信号dを通してパルスを送り、リレー18を遮断状態(OFF接点)にする。このとき、電池15と電子回路との接続が遮断されるので、電源遮断判断回路16とレンズ駆動回路17への電力供給が停止する。可変焦点レンズ3L、3Rへのレンズ駆動パルスが停止するので、電子眼鏡は遠方視野モードへ移行する。
【0059】
以上のように、本発明の第2の実施の形態によれば、使用中に眼鏡が外されても設定時間内(Tmax)であれば、全ての電源が切れることがないのですぐに使用を再開することができる。さらに、電子眼鏡の装着時および非装着時における電池電力の削減を行うことが出来る。
【0060】
本実施例ではカウンタ23のカウント値の2つの異なる閾値を用意し、電子回路の消費電力を制御した。しかし、カウント値の閾値をさらに多く数設けることにより、電子回路への電力供給をより細かく制御することが出来る。このように細かい制御を行うことで、電池の消費電力をさらに削減することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明にかかる電子眼鏡は、消費電力を大幅に削減し電池寿命を大幅に向上する効果があるので、電子遠近両用眼鏡等として有用である。また、レンズが液晶等の誘電体によって構成され、電圧印加によって屈折率を変化させる遠近両用機能を有する電子眼鏡等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明における電子眼鏡の構成を示す図
【図2】本発明の第1の実施の形態における電子眼鏡の回路構成を示す図
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるリレーの回路構成を示す図
【図4】本発明の第1の実施の形態における電源遮断判断回路のブロック図
【図5】本発明の第1の実施の形態における電子眼鏡の動作フローチャート
【図6】本発明の第2の実施の形態における電源遮断判断回路のブロック図
【図7】本発明の第2の実施の形態における電子眼鏡の動作フローチャート
【符号の説明】
【0063】
1L、1R 固体レンズ
2L、2R 液晶レンズ
3L、3R 可変焦点レンズ
4L、4R、5L、5R フレーム
6 ブリッジ
7L、7R テンプル
8L、8R 丁番
9L、9R 鼻パッド
10L、10R 喋足
11L、11R 電極
12 検知スイッチ
13 制御ブロック
14 焦点切替スイッチ
15 電池
16 電源遮断判断回路
17 レンズ駆動回路
18 リレー
19 A/Dコンバータ
20 比較回路
21 リレー制御信号生成回路
22 タイマー回路
23 カウンタ
24 遮断時間判断回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給の開始又は遮断ができる電源と、
人体への接触の有無を検知し人体装着信号を出力するための検知スイッチと、
レンズ駆動電圧に応じて複数の焦点距離を持つ可変焦点レンズと、
前記可変焦点レンズの焦点距離を切り替えるための指令を出す焦点切替スイッチと、
前記焦点切替スイッチにより指令された焦点切替信号に応じてレンズ駆動電圧を前記可変焦点レンズに印加するためのレンズ駆動回路と、
前記人体装着信号と前記焦点切替信号とを用いて前記電源の電力供給を遮断するための電源遮断判断回路とを備えた電子眼鏡。
【請求項2】
電力供給の開始又は遮断ができる電源と、
人体への接触の有無を検知し人体装着信号を出力するための検知スイッチと、
レンズ駆動電圧に応じて複数の焦点距離を持つ可変焦点レンズと、
前記可変焦点レンズの焦点距離を切り替えるための指令を出す焦点切替スイッチと、
前記焦点切替スイッチにより指令された焦点切替信号に応じてレンズ駆動電圧を前記可変焦点レンズに印加するためのレンズ駆動回路と、
前記人体装着信号が入力された後に前記人体装着信号が入力されない非入力期間を計算し、そのい非入力期間の長さに応じて前記レンズ駆動回路と前記電源の制御を行う電源遮断判断回路とを備えた電子眼鏡。
【請求項3】
前記可変焦点レンズは、前記レンズ駆動電圧が印加されないときには、前記複数の焦点距離のうちの最大の焦点距離を持つ請求項1または2に記載の電子眼鏡。
【請求項4】
前記焦点切替スイッチは、モーメンタリ動作をおこなう請求項1または2に記載の電子眼鏡。
【請求項5】
前記電源遮断判断回路は、さらにリレー制御信号生成回路を備え、
前記リレー制御信号生成回路は、前記人体装着信号が無い時、又は前記焦点切替スイッチからの前記焦点切替信号が前記可変焦点レンズの最大焦点距離を指令する時は、前記電源の遮断を判断し、前記電源に遮断信号を送る請求項1に記載の電子眼鏡。
【請求項6】
前記電源は、電池の出力側に遮断器が設けられており、
前記遮断器は、前記電源遮断回路又は前記焦点切替スイッチの指令に応じて、前記電池からの電力供給の開閉を行う請求項1または2に記載の電子眼鏡。
【請求項7】
前記遮断器は、ラッチングリレーとして機能する請求項6に記載の電子眼鏡。
【請求項8】
前記電源遮断判断回路は、さらにカウンタと遮断時間判断回路とリレー制御信号生成回路とを備え、
前記遮断時間判断回路は、前記人体装着信号が入力された後に前記人体装着信号が途絶えたときに前記カウンタを起動して前記非入力期間を計算して、前記非入力期間が予め設定した第1の期間を越えて第2の期間までの間であれば前記レンズ駆動回路に前記レンズ駆動電圧を停止する指令を出し、前記第2の期間を越えて前記人体装着信号が途絶えたときに前記リレー制御信号生成回路に前記電源の電力供給を遮断するための指令を前記電源に送る請求項2に記載の電子眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−98649(P2009−98649A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231731(P2008−231731)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】