説明

電子素子、導電性高分子組成物およびその製造方法

【課題】電子素子、導電性高分子組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性高分子組成物は、有機ポリマー、ポリスチレンスルホン酸およびリグニンスルホン酸を含む。有機ポリマーは、式(I):


[式中、XおよびXは、それぞれ独立して、OまたはS、YはC1−4アルキレン基またはC2−4アルキリデン基、RはHまたはC1−18アルキル基、C5−12シクロアルキル基またはアリール基である]で示される繰り返し単位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子、導電性高分子組成物およびその製造方法に関するものであって、特に、優れた電気的性質を有する電子素子、導電性高分子組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子(例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン)は、導電性と塗布可能な性質を有するので、幅広く、静電気防止コーティング、電界コンデンサ、太陽電池および電界発光ディスプレイ等の領域に応用されている。例えば、特許文献1には、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)の分散体およびその製造方法、それを用いた静電防止コーティングなどが記載されている。一方、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)は、現在、導電性高分子のうちで導電性が高い導電性高分子の一つである。高導電度、高熱安定性、薄膜時の透明性がよいので、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンは最も注目されている導電性高分子である。
【0003】
ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンを製造する際には、一般に、スルホン酸化分子ドーパントを加えて、分散性を増加させている。ドーパントは、低分子ドーパントと高分子ドーパントに分けられる。低分子ドーパントは、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸等である。高分子ドーパントは、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸等である。ポリスチレンスルホン酸を例とすると、ドイツのバイエル社(Bayer)が、まず、1991年に、ポリスチレンスルホン酸をポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン中にドープしている。ポリスチレンスルホン酸は、この導電性高分子中で二種の作用があり、一つは、電荷平衡のドーパントとなること、もう一つは、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンの分散を助けることである。バイエル社が開発したポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸は、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンの分散性を高め、加工性が増加する。しかし、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸を固体電界コンデンサの電極とする場合、得られた固体電界コンデンサのキャパシタンスは低く、高いキャパシタンスを有するコンデンサを製造することができない。
【0004】
よって、新規の導電性高分子組成物を提供し、従来の技術による問題を解決することが、現在、導電性高分子技術研究における重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−90060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子素子、導電性高分子組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、導電性高分子組成物を提供する。導電性高分子組成物は、有機ポリマー、ポリスチレンスルホン酸およびリグニンスルホン酸を含む。有機ポリマーは、式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、XおよびXは、それぞれ独立して、OまたはS、YはC1−4アルキレン基またはC2−4アルキリデン基、RはHまたはC1−18アルキル基、C5−12シクロアルキル基またはアリール基である]
で示される繰り返し単位を有する。
【0010】
本発明は、上記導電性高分子組成物の製造方法をも提供する。導電性高分子組成物の製造方法は、以下の工程を含む:(a)リグニンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、水および酸化剤の存在下で、モノマーに重合反応を実行する。モノマーは、式(II):
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、XおよびXは、それぞれ独立して、OまたはS、YはC1−4アルキレン基またはC2−4アルキリデン基、RはHまたはC1−18アルキル基、C5−12シクロアルキル基またはアリール基である]で示される構造を有する;(b)純化工程を実行して、酸化剤(さらに、未反応のモノマー、モノマーの二量体、モノマーの三量体、またはモノマーのオリゴマー)を除去して、導電性高分子組成物を得る。
【0013】
本発明のある態様によると、本発明は、基板および基板上に形成された導電層を含む電子素子を提供する。導電層は、上記導電性高分子組成物を基板上に塗布して得られる。本発明の別の態様によると、電子素子は、静電気防止塗膜、電界コンデンサ、太陽電池または電界発光ディスプレイである。
【発明の効果】
【0014】
本発明による導電性高分子組成物は、リグニンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸を導電性高分子のドーパントとし、導電性高分子組成物の電荷平衡およびチオフェン高分子分散を促進する以外に、導電性高分子組成物は、固体電界コンデンサへの応用に非常に適し、キャパシタンスを増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい例による電界コンデンサ10の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、導電性高分子組成物、その製造方法およびその応用を提供する。導電性高分子組成物の特徴は、リグニンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸を、導電性高分子のドーパントとし、導電性高分子組成物の電荷平衡およびチオフェン高分子分散を促進する以外に、導電性高分子組成物は、固体電界コンデンサへの応用に非常に適し、キャパシタンスを増加させる。
【0017】
本発明の導電性高分子組成物は、有機ポリマー、ポリスチレンスルホン酸およびリグニンスルホン酸を含む。本発明のある態様によると、有機ポリマーは、式(I):
【0018】
【化3】

【0019】
[式中、XおよびXは、それぞれ独立して、OまたはS、YはC1−4アルキレン基またはC2−4アルキリデン基、RはHまたはC1−18アルキル基、C5−12シクロアルキル基またはアリール基である]で示される繰り返し単位を有する。本発明の別の態様によると、Yはメチレン基、エチリデン基、プロピリデン基またはブチリデン基である。リグニンスルホン酸は、木材を処理した後(例えば、硝酸やアルカリ)、外皮物質を除去して、分離したリグニンを、さらに、亜硫酸塩でスルホン酸化して得られるものである。本発明のある態様によると、使用するリグニンスルホン酸の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜1,000,000(より好ましくは2,000〜25,000、さらに好ましくは2,500〜20,000、さらにより好ましくは5,000〜15,000)である。リグニンスルホン酸の硫黄含量は、好ましくは1%〜20%である。本発明の導電性高分子組成物において、ポリスチレンスルホン酸と有機ポリマーとの質量比は、好ましくは0.6〜13である。リグニンスルホン酸と有機ポリマーとの質量比は、好ましくは0.1〜17である。
【0020】
本発明の別の態様では、本発明による導電性高分子組成物の製造方法は、以下の工程を含む。リグニンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、水(または、さらに、その他の水溶性溶剤(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、アセトン、テトラヒドロフランまたは混合溶剤)を含む)、および酸化剤の存在下で、モノマーに重合反応を実行し、モノマーを有機ポリマーに合成する。モノマーは、式(II):
【0021】
【化4】

【0022】
[式中、XおよびXは、それぞれ独立して、OまたはS、YはC1−4アルキレン基またはC2−4アルキリデン基、RはHまたはC1−18アルキル基、C5−12シクロアルキル基またはアリール基である]で示される。続いて、得られた反応液に純化工程を実行して、酸化剤、未反応のモノマー、モノマーの二量体、モノマーの三量体、またはモノマーのオリゴマーを除去して、導電性高分子組成物を得る。モノマーとリグニンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸との当量比は、好ましくは1:0.5〜1:10である。モノマーと酸化剤との当量比は、好ましくは1:0.5〜1:5である。重合反応の温度は、好ましくは−5℃〜70℃である。使用する酸化剤は、例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウム)、三価鉄塩(例えば、p−トルエンスルホン酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)または硝酸鉄(III))、二価銅塩(例えば、p−トルエンスルホン酸銅)またはそれらの組み合わせ(例えば、過硫酸ナトリウムとp−トルエンスルホン酸鉄(III)との混合物または過硫酸アンモニウムと硫酸鉄(III)との混合物)である。純化工程は、イオン交換樹脂、遠心分離法、透析法、限外ろ過、ろ過、またはこれらの組み合わせで実行する。このほか、重合反応実行時、同時に、分散工程を実行してもよく、例えば、従来の攪拌機、乳化機、ホモジナイザー、超音波または高圧ホモジナイザーにより実行する。
【0023】
このほか、本発明は、基板および基板上に形成された導電層を含む電子素子をも提供する。導電層は、本発明の導電性高分子組成物を基板上に塗布して得られる。電子素子は、例えば、静電気防止塗膜、電界コンデンサ、太陽電池または電界発光ディスプレイである。例えば、図1を参照すると、電子素子は電界コンデンサ10であり、基板は金属酸化物層14である。電界コンデンサ10は、第一金属電極(例えば、アルミニウム)12と、導電層16(本発明の導電性高分子組成物を塗布して得られる)上に設置された第二金属電極(例えば、アルミニウム)18とを含む。第一金属電極12は、その上に金属酸化物層14(例えば、酸化アルミニウム(Al))が形成されている。金属酸化物層14は、複数の凹部20を含んでもよい。金属酸化物層14は、金属電極12に酸化工程を実行して得られる。このほか、導電層16を金属酸化物層14上に形成すると共に、複数の凹部20を充填してもよい。
【0024】
本発明の上記説明およびその他の目的、特徴、長所を理解しやすくするため、以下で幾つかの実施例により、本発明の導電性高分子組成物、その製造方法、およびそれを含む電子装置を説明する。
【実施例】
【0025】
実施例1
3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)14.2g(0.1mol)を準備し、1,362.25mLの脱イオン水、ポリスチレンスルホン酸(PSS)102.24g(0.1mol、分子量約75,000、18%水溶液)、および12.07gのリグニンスルホン酸(製品番号BG−NH4、Borregaardにより製造販売、スルホン酸形式はSONH、重量平均分子量は23,281、硫黄含量は5.19%)を加えた。続いて、上記溶液を20℃下で均一に攪拌後、窒素を溶液中に送り、少なくとも30分攪拌し続けた。ここで、溶液中に、過硫酸アンモニウム18.247g(0.08mol)および硫酸鉄0.568g(0.002mol)を加え、20℃下で、16時間反応させた。
【0026】
反応後の溶液は、透析膜(MWCO:12,000〜14,000)により、透析純化を実行し、未反応のモノマー、二量体、三量体、オリゴマーおよび酸化剤を除去した。純化後の溶液を、さらに、ホモジナイザーで処理し、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS−LGN)溶液(1)を得た。
【0027】
続いて、3個のコンデンサを用意し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(1)に5分間浸漬した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)。測定結果を表1に示す。
【0028】
実施例2
リグニンスルホン酸をBG−NH4からBG−Ca(Borregaardにより製造販売、スルホン酸形式はSOCa、重量平均分子量は13,647、硫黄含量は4.66%)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造工程を実行し、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS−LGN)溶液(2)を得た。
【0029】
3個のコンデンサを用意し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(2)に5分間浸漬した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)た。測定結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
リグニンスルホン酸をBG−NH4からBG−Na(Borregaardにより製造販売、そのスルホン酸形式はSONa、重量平均分子量は12,151、硫黄含量は4.70%)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造工程を実行し、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS−LGN)溶液(3)を得た。
【0031】
3個のコンデンサを用意し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(3)に5分間浸漬した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)。測定結果を表1に示す。
【0032】
実施例4
リグニンスルホン酸をBG−NH4からMCL−H(ITRIにより製造、そのスルホン酸形式はSOH、重量平均分子量は2,071、硫黄含量は6.12%、リグニンスルホン酸MCL−Hの製造方法は:リグニンスルホン酸100質量部を準備し、30質量部のNaSO、および100質量部の1N NaOHを加えると共に、オートクレーブに入れて、150℃下で4時間反応させた。反応完成後、20質量部の硫酸を加え、イオン交換樹脂により、溶液中のイオンを除去する)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造工程を実行し、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS−LGN)溶液(4)を得た。
【0033】
3個のコンデンサを用意し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(4)に5分間浸漬した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)。測定結果を表1に示す。
【0034】
実施例5
リグニンスルホン酸を12.07gから1.207gに変更したこと以外は、実施例4と同様の製造工程を実行し、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS−LGN)溶液(5)を得た。
【0035】
3個のコンデンサ(コンデンサはコンデンサメーカーから用意し、陽極電蝕アルミ箔、隔離紙および陰極アルミ箔を含み、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔は、それぞれ、導電用のピンを接続している)を準備し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(5)に5分間浸漬した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)。測定結果を表1に示す。
【0036】
実施例6
リグニンスルホン酸を12.07gから60gに変更したこと以外は、実施例4と同様の製造工程を実行し、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS−LGN)溶液(6)を得た。
【0037】
3個のコンデンサを用意し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(6)に5分間浸した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)。測定結果を表1に示す。
【0038】
実施例7
リグニンスルホン酸を12.07gから120gに変更したこと以外は、実施例4と同様の製造工程を実行し、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS−LGN)溶液(7)を得た。
【0039】
3個のコンデンサを用意し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(7)に5分間浸漬した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)。測定結果を表1に示す。
【0040】
実施例8
リグニンスルホン酸を12.07gから240gに変更したこと以外は、実施例4と同様の製造工程を実行し、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS−LGN)溶液(8)を得た。
【0041】
3個のコンデンサを用意し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(8)に5分間浸漬した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)。測定結果を表1に示す。
【0042】
比較例1
3,4−エチレンジオキシチオフェン14.2g(0.1mol)を準備し、2,200mLの脱イオン水、ポリスチレンスルホン酸36.7g(0.2mol、分子量約75,000)を加え、この溶液を20℃で均一に攪拌後、窒素を溶液中に送り、少なくとも30分攪拌し続けた。この溶液中に、過硫酸アンモニウム22.8g(0.1mol)および硫酸鉄2g(0.005mol)を加え、20℃で16時間反応させた。
【0043】
反応後の溶液は、透析膜(MWCO:12,000〜14,000)により透析純化し、未反応のモノマー、二量体、三量体、オリゴマーおよび酸化剤を除去した。純化後の溶液を、さらに、ホモジナイザーで処理して、導電性高分子組成物(PEDOT−PSS)溶液(9)を得た。
【0044】
3個のコンデンサを用意し、上記で得られた導電性高分子組成物溶液(9)に5分間浸漬した。取り出した後、110℃で60分間乾燥させた。得られたコンデンサは、それぞれ、LCRメータ(Agilent 4263B)で測定した(測定条件:電圧1,000mV、周波数120Hz)。測定結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から分かるように、本発明による導電性高分子組成物(リグニンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸を含む)溶液(1)〜(8)で製造されるコンデンサのキャパシタンスは、比較例で得られる導電性高分子組成物(PEDOT−PSS)溶液(9)で製造されるコンデンサのキャパシタンス(0.17〜0.22μF)の2倍以上(本発明の実施例6で得られるコンデンサは15〜17倍に達するものもある)である。
【0047】
総合すると、本発明による導電性高分子組成物は、リグニンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸を導電性高分子のドーパントとし、導電性高分子組成物の電荷平衡およびチオフェン高分子分散を促進する以外に、導電性高分子組成物は、固体電界コンデンサへの応用に非常に適し、キャパシタンスを増加させる。
【0048】
本発明では、好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは例示として、および好ましい実施形態という観点から開示されたものであり、決して開示された実施例に限定するものではない。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲で示されるものであり、当業者にとっては、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、記載された実施形態に様々な変更や修正を行うことができることは明らかである。
【符号の説明】
【0049】
10:電界コンデンサ
12:第一金属電極
14:金属酸化物層
16:導電層
18:第二金属電極
20:凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に導電性高分子組成物を塗布して形成された導電層とを有する電子素子であって、
前記導電性高分子組成物が、有機ポリマーと、ポリスチレンスルホン酸と、リグニンスルホン酸とを含み、
前記有機ポリマーが、式(I):
【化1】

[式中、XおよびXは、それぞれ独立して、OまたはS、YはC1−4アルキレン基またはC2−4アルキリデン基、RはHまたはC1−18アルキル基、C5−12シクロアルキル基またはアリール基である]
で示される繰り返し単位を有することを特徴とする電子素子。
【請求項2】
前記Yが、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基またはブチリデン基である請求項1に記載の電子素子。
【請求項3】
前記ポリスチレンスルホン酸と前記有機ポリマーとの質量比が0.6〜13である請求項1または2に記載の電子素子。
【請求項4】
前記リグニンスルホン酸と前記有機ポリマーとの質量比が0.1〜17である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子素子。
【請求項5】
前記リグニンスルホン酸の重量平均分子量が1,000〜1,000,000である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子素子。
【請求項6】
前記リグニンスルホン酸の硫黄含量が1%〜20%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子素子。
【請求項7】
前記電子素子が、静電気防止塗膜、電界コンデンサ、太陽電池または電界発光ディスプレイである請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子素子。
【請求項8】
前記電子素子が電界コンデンサであり、前記基板が金属酸化物層である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子素子。
【請求項9】
有機ポリマーと、ポリスチレンスルホン酸と、リグニンスルホン酸とを含み、
前記有機ポリマーが、式(I):
【化2】

[式中、XおよびXは、それぞれ独立して、OまたはS、YはC1−4アルキレン基またはC2−4アルキリデン基、RはHまたはC1−18アルキル基、C5−12シクロアルキル基またはアリール基である]
で示される繰り返し単位を有することを特徴とする導電性高分子組成物。
【請求項10】
前記Yが、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基またはブチリデン基である請求項9に記載の導電性高分子組成物。
【請求項11】
前記ポリスチレンスルホン酸と前記有機ポリマーとの質量比が0.6〜13である請求項9または10に記載の導電性高分子組成物。
【請求項12】
前記リグニンスルホン酸と前記有機ポリマーとの質量比が0.1〜17である請求項9〜11のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物。
【請求項13】
前記リグニンスルホン酸の重量平均分子量が1,000〜1,000,000である請求項9〜12のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物。
【請求項14】
前記リグニンスルホン酸の硫黄含量が1%〜20%である請求項9〜13のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物。
【請求項15】
リグニンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、水および酸化剤の存在下で、モノマーに重合反応を実行する工程と、
純化工程を実行して、前記酸化剤を除去し、前記導電性高分子組成物を得る工程と、
を含み、
前記モノマーが、式(II):
【化3】

[式中、XおよびXは、それぞれ独立して、OまたはS、YはC1−4アルキレン基またはC2−4アルキリデン基、RはHまたはC1−18アルキル基、C5−12シクロアルキル基またはアリール基である]
で示される構造を有することを特徴とする導電性高分子組成物の製造方法。
【請求項16】
前記Yが、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基またはブチリデン基である請求項15に記載の導電性高分子組成物の製造方法。
【請求項17】
前記リグニンスルホン酸の重量平均分子量が1,000〜1,000,000である請求項15または16に記載の導電性高分子組成物の製造方法。
【請求項18】
前記リグニンスルホン酸の硫黄含量が1%〜20%である請求項15〜17のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物の製造方法。
【請求項19】
前記酸化剤が、過硫酸塩、三価鉄塩、二価銅塩またはその組み合わせである請求項15〜18のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物の製造方法。
【請求項20】
前記モノマーと前記リグニンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸との当量比が1:0.5〜1:10である請求項15〜19のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物の製造方法。
【請求項21】
前記モノマーと前記酸化剤との当量比が1:0.5〜1:5である請求項15〜20のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物の製造方法。
【請求項22】
前記重合反応の温度が−5℃〜70℃である請求項15〜21のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−20943(P2013−20943A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101424(P2012−101424)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(390023582)財團法人工業技術研究院 (524)
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】