説明

電子素子の実装方法

【課題】100μm程度の微小な電子素子の接続、固定方法を提供する。
【解決手段】基板101上に形成された親水性の金属電極103上に電子素子100を配置した後に、撥水性領域102と電子素子100に囲まれた親水性の金属電極103上に、グリセリンなどの第2液体113を塗布により配置し、加熱によって電子素子100と親水性の金属電極103との接合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子素子を基板上に配置して電気的に接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ディジタルカメラ等の電子機器の高機能化、高性能化、小型化が急速に進展している。この進展は高密度実装技術の発展に支えられており、なかでも表面実装技術の進展が目覚ましい。電子機器の小型化、薄型化、高機能化が進むにつれて、それらに実装されるコンデンサ、抵抗、トランジスタ、発光素子等の電子素子や基板の小型化が必要となっている。このため、この数年間で電子素子の大きさは、3.2mm×1.6mmから0.4mm×0.2mmまで小さくなった。今後更なる電子素子の小型化が進むと、従来の実装技術でこれらを実装することが困難になると予想される。
【0003】
特許文献1には、従来の実装法では実装できないような微細な電子素子を実装する新しい方法が記述されている。特許文献1では、単結晶シリコンウェハ上に多数のトランジスタを予め作製した後、これらのトランジスタをシリコンウェハから切り出して液体に分散し、その液体を基板上に展開することによって、基板上にトランジスタに配置する方法を提案している。この方法を用いることで、結晶シリコンから構成される高性能なトランジスタをガラス基板上に形成できる。
【0004】
特許文献1に記載された方法は、図8および図9に示されている。
【0005】
図8(a)〜(d)は特許文献1に記載された方法を順に示している。図8(a')〜(d')は、それぞれ、図8(a)〜(d)のA−A、B―B、C−C、D−D線断面図である。なお、図8(c')と(c'')は、同じ領域における、時間経過を示した線断面図であり、図8(c')の状態が時間経過とともに(c'')の状態になることを示す。
【0006】
図9(a)は、配置されるトランジスタ710の模式図である。図9(b)は、図9(a)で示すトランジスタ710の裏側から見た模式図である。図9(c)は、親水性領域702の詳細模式図である。
【0007】
図8(a)および図8(a’)に示されるように、まず、基板701の表面に、撥水性領域703に囲まれた複数の親水性領域702がマトリクス状に形成される。撥水性領域703を形成するには、例えば、CF3(CF2724SiCl3のようなフッ化炭素鎖、またはCH3(CH217SiCl3のような炭化水素鎖を有するシランカップリング剤により、撥水性にしたい領域を化学修飾すればよい。特許文献1の記載事項により、当業者は、撥水性にしたい領域のみをシランカップリング剤で化学修飾することができる。
【0008】
図9(c)に示されるように、親水性領域702の内部およびその周辺には、第1電極806、第2電極807、および第3電極808が形成されている。第1電極806のうち、親水性領域702の内部に含まれる部分の表面は親水性である。この部分を、親水性第1電極806bと言う。第1電極806のうち、親水性領域702の周辺の部分の表面は撥水性である。この部分を、撥水性第1電極806aという。第2電極807および第3電極808に関しても、同様である。
【0009】
親水性領域702を形成するには、親水性の電極または親水性の基板を用いればよい。親水性の金属としては、ニッケル、アルミ、銅等を挙げることができる。親水性の基板としては、ガラス、表面に酸化膜が形成されたシリコン基板、ナイロン樹脂などを挙げることができる。また、金属または基板を酸素プラズマまたはオゾンに曝すことにより、これらの表面を親水性にすることができる。
【0010】
次に、図8(b)と(b')に示すように、第1スキージ704により水705を基板701上に塗布する。これにより、親水性領域702に水706が配置される。
【0011】
その後、図8(c)、(c')、(c'')で示すように、親水性領域702に配置された水706が揮発する前に、第2スキージ708でトランジスタ分散液709を塗布する。トランジスタ分散液709には、複数のトランジスタ710がジクロロブタン711に分散されている。
【0012】
ここで、トランジスタ710に関して詳細に説明する。
【0013】
図9(a)に示されるように、トランジスタ710は直方体である。最も面積が大きい面の1つにゲート電極802、ソース電極803とドレイン電極804が形成されている。これらの電極802〜804が形成された面を、電極面801と言う。なお、一般的なトランジスタと同様、ソース電極803とドレイン電極804は同一機能を有する。すなわち、ソース電極804がドレイン電極として、ドレイン電極805がソース電極として用いられても良い。
【0014】
電極面801の形状および大きさは、親水性領域702の形状および大きさと同一である。親水性第1電極806b、親水性第2電極807b、および親水性第3電極808bの形状および大きさは、それぞれ、ゲート電極802、ソース電極803、ドレイン電極804と同一である。なお、これらの電極の材料としては、パラジウムまたはニッケルが好ましい。最表面がパラジウムまたはニッケルである積層構造を有する電極も用いられ得る。
【0015】
トランジスタ710の表面は、1−クロロエチルトリクロロシランで予め化学修飾されている。
【0016】
このような複数のトランジスタ710がジクロロブタン711に分散されたトランジスタ分散液709を基板701上に塗布すると、図8(c’)および図8(c’’)に示されるように、トランジスタ710はジクロロブタン711から水706に移動する。これは、水705とジクロロブタン711は相溶性が無く、トランジスタ710表面が1−クロロエチルトリクロロシランで化学修飾されているためである。すなわち、この化学修飾により、水706に対するトランジスタ710の濡れ性は、ジクロロブタン711に対する濡れ性よりも高い。よって、トランジスタ710は、濡れ性が低いジクロロブタン711から濡れ性が高い水706に向けて移動する。なお、水705とジクロロブタン711は相溶性が無いため、水706上にジクロロブタン711が塗布されても、水706はそこに安定に留まる。
【0017】
トランジスタ710が水706へ移動する際には、電極面801が親水性領域702に向き合う場合と、電極面801の裏側の面805が親水性領域702に向き合う場合の2通りが存在する。電極面801が親水性領域702に向き合う場合は、ゲート電極802、ソース電極803、およびドレイン電極804は、それぞれ、親水性第1電極806b、親水性第2電極807b、および親水性第3電極808bと接触する。このようにして、トランジスタ701の電極802〜804は、基板側の親水性電極806b〜808bに物理的に接触することにより、電気的に接合される。
【0018】
その後、図8(d)および図8(d')で示すように、水706を揮発させる。
【特許文献1】特許第4149507号公報(特に図34、図36)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1に記載されている従来の方法では、トランジスタ701の電極802〜804と、基板側の親水性電極806b〜808bとの間の電気的な接合を、これらの電極間の物理的接触によって行っていた。
【0020】
しかし、この方法では、トランジスタ701の電極802〜804と、基板側の親水性電極806b〜808bとの間に少しでも隙間があると、これらの電極は電気的に接合されない。そのため、これらの電極の平滑度の管理や、これらの電極間にごみが入らないようにトランジスタ分散液中のゴミの管理などを厳重にする必要があり、歩留まり高くトランジスタを配置することが難しいという課題があった。
【0021】
本発明の目的は、トランジスタに代表される電子素子を基板上の電極上に配置して電気的に接合する際に、電子素子の電極と基板上の電極との間を確実に電気的に接合する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の電子素子の実装方法は、
少なくとも一つの面に電極が形成されている電子素子を基板上に配置して電気的に接合する方法であって、
(1)前記基板上の撥水性領域に囲まれた親水性の金属電極上に、水を含む液体を配置する工程と、
(2)前記電子素子複数個と第1液体を含む素子分散液を、前記親水性金属電極に配置された前記水を含む液体に接触させ、前記電子素子の電極が形成されている面を前記基板側に向けた状態で、前記電子素子を、前記水を含む液体に移動させる工程と、
(3)前記水を含む液体と第1液体を乾燥させ、前記電子素子を前記親水性の金属電極上に配置する工程と、
(4)第2液体を、前記親水性の金属電極上に配置する工程と、
(5)前記基板を加熱する工程を含み、
前記親水性の金属電極は、第1領域と第2領域から構成されており、
前記第1領域の形状と、前記電子素子の電極が形成されている面の形状は等しく、かつ、
前記第2領域は前記第1領域から延びており、前記工程(3)では、前記電子素子を前記第1領域に配置し、前記工程(4)では、前記第2液体を前記第2領域に配置することで、電子素子を基板上に配置して電気的に接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の方法によれば、基板面と向き合う側の電子素子の電極と基板上の電極間で電気的接合を確実に行うことができるので、複数個の電子素子を配置したデバイスを歩留まり高く作製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。もちろんこの発明は以下の例によって制限されるものではない。以下の説明で用いる図では、図面内の寸法、寸法比率及び位置関係は必ずしも正確ではない。さらに、見やすいようにハッチングを省略する場合がある。また、以下の説明では、同様の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
【0025】
図1は、本発明の方法によって基板上に電子素子を配置する工程1〜工程4を示した模式図である。
【0026】
図2は、本発明の方法により配置する電子素子の模式図である。
【0027】
図3は、親水性の金属電極を示す模式図である。
【0028】
図4は、本発明の方法によって、基板上に第2液体を配置する工程4の別の方法を示した模式図である。
【0029】
まず、配置する電子素子と基板の説明を行った後に、工程1〜工程5を詳細に説明する。
【0030】
図2は、本発明の方法により配置するイメージング用センサ素子100の模式図である。
【0031】
ここで、イメージング用センサ素子100に関して詳細に説明する。
【0032】
図2に示すように、イメージング用センサ素子100は直方体の形状をしている。
【0033】
イメージング用センサ素子100は例えば、シリコンフォトダイオードを用いることができる。イメージング用センサ素子100はシリコンn型層201とシリコンp型層202、SiO2からなる絶縁層203、カソード電極204、アノード電極205から構成されている。
【0034】
カソード電極204の材料としては金、銀、スズ、ニッケル、銅等の単一元素のものや、スズ−銀−銅、スズ−ビスマス、スズ−インジウム等の合金が好ましい。また、2種類以上の金属が積層した構造でも良い。例えば、銅の上にスズもしくはスズ−銀−銅合金が積層された構造でも良い。
【0035】
イメージング用センサ素子100の表面は、特許文献1と同じ方法で1−クロロエチルトリクロロシランで予め化学修飾することができる。
【0036】
図1(a)は、本実施の形態で用いる基板表面の模式図である。撥水性領域102に囲まれた親水性の金属電極103が基板101の表面に形成されている。
【0037】
図3(a)は親水性の金属電極103の詳細模式図、図3(b)は電子素子100の模式図である。
【0038】
図3(a)で示すように、基板101上に形成された親水性の金属電極103は、第1領域301と、第1領域301から延びた第2領域302とから構成されている。また、図3(a)で示すように、第1領域301を取り囲む長方形の長辺303の長さをAL、短辺304の長さをASとする。さらに、第1領域301の長辺303と第2領域302との境界線305の長さをBL、第1領域301の短辺304と第2領域302との境界線306の長さをBSとする。また、第1領域301の長辺303、第1領域301の短辺304、境界線305、境界線306の中点をそれぞれX1、X2、Y1、Y2とする。
【0039】
また、図3(b)で示すように、電極が形成されている電子素子100の面307を取り囲む長方形の長辺の長さPLを、短辺の長さをPSとする。
【0040】
このとき、AL、AS、BL、BS、PS、PL、X1、X2、Y1、Y2には以下の(1)〜(3)の関係がある。
【0041】
(1)PS=AS かつ PL=AL
(2)B1≦(1/2)AL かつ B2≦(1/2)AS
(3)X1とY1、X2とY2が同じ位置にある
また、本明細書において、表面が「撥水性」であるとは、この表面における純水の静的接触角が90度以上の場合をいう。また、表面が「親水性」であるとは、この表面における純水の静的接触角が90度未満である場合をいう。
【0042】
本実施の形態で用いる親水性の金属電極103としては、スズ、銅、ニッケル、アルミ等の単一元素のものや、スズ−銀−銅、スズ−ビスマス、スズ−インジウム等の合金等を挙げることができる。また、2種類以上の金属が積層した構造でも良い。例えば、銅の上にスズもしくはスズ−銀−銅合金が積層された構造でも良い。
【0043】
次に、本発明の工程1〜工程5を説明する。
【0044】
(工程1)
工程1では、図1(b)に示すように、第1スキージ104を矢印105の方向に動かすことで水106を基板101上に塗布する。これにより、親水性の金属電極103上に水106が配置される。
【0045】
(工程2)
工程2では、図1(c)に示すように親水性の金属電極103に配置された水106が揮発する前に、第2スキージ107を矢印108の方向に動かすことで電子素子分散液109を基板101上に塗布する。
【0046】
電子素子分散液109は、電子素子100および第1液体110から構成されている。ここで、第1液体110は、水106と相溶性の無い有機溶剤である。このような有機溶剤としては、塩素を含む有機溶剤が好ましい。塩素を含む有機溶剤としては、例えば、クロロホルム、クロロブタン、ジクロロブタン、クロロペンタン、ジクロロペンタン等を挙げることができる。
【0047】
電子素子分散液109は、特許文献1と同じ方法であらかじめ作製することができるが、図10を参照しながら説明する。
【0048】
図10(a)で示すように、基板1101上に、犠牲層1102を介して電子素子(ここでは、イメージング用センサ素子であるシリコンフォトダイオード)100を形成する。
【0049】
次に、図10(b)で示すように、犠牲層のエッチング液1103にこの基板1101を浸漬し、図10(c)のように犠牲層1102を除去することで、電子素子100がエッチング液1103内に分散する。
【0050】
続いて、基板1101をエッチング液1103から取り出す。これにより、図10(d)に示すように、電子素子100が分散したエッチング液1103ができる。次に、電子素子100が分散したエッチング液1103を孔径1μm程度のテフロン(登録商標)フィルターでろ過する。これにより、電子素子100をテフロン(登録商標)フィルターに捕捉する。
【0051】
次に、このテフロン(登録商標)フィルターを0.01〜0.1vol%の化学修飾剤が溶解した有機溶剤に浸漬した後、この有機溶剤に超音波を印加する。これにより、電子素子100がテフロン(登録商標)フィルターから外れて溶液に分散する。その後、この溶液を30分〜1時間程度放置する。これにより、電子素子100の表面が親水性になるように化学修飾される。この条件で化学修飾することによって、金属イオンが通過可能なピンホールが多数存在するシランカップリング剤の単分子膜またはポリマー膜が電子素子100の表面に形成される。化学修飾剤としては、1−クロロエチルトリクロロシラン、2−クロロエチルトリクロロシランを用いることができる。
【0052】
最後に、電子素子100が分散した有機溶剤を、例えば、孔径1μm程度のテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、表面が化学修飾された電子素子100を回収する。そして、回収した電子素子100を第1液体110に分散する。
【0053】
このようにして化学修飾された電子素子100の表面204は、第1液体110よりも水106に対して高い濡れ性を有する。
【0054】
この濡れ性が相違することにより、水106に近づいた電子素子100は第1液体110から水106に移動する。
【0055】
(工程3)
工程3では、塗布した水106と第1液体110を乾燥する。
【0056】
図1(d)と(e)は、それぞれ、水106と第1液体110が乾燥した後の基板101と、図1(d)のL1−L1‘において基板101を断面から見たときの模式図である。
【0057】
工程3では、水106と第1液体110を乾燥させて基板101上から除去する。これにより、電子素子100が親水性の金属電極103の第1領域301上に配置する。
【0058】
(工程4)
工程4では、第3スキージにより第2液体を基板に塗布し、親水性の金属電極103の第2領域302上に第2液体を配置する。
【0059】
図1(f)は第3スキージ111により第2液体113を基板101に塗布する工程を示す模式図、図1(g)は、第2液体の塗布後、第2液体113が第2領域302上に配置した様子を示す模式図である。
【0060】
工程4では、図1(f)のように、第3スキージ111を矢印112の方向に移動させることで第2液体113を基板101上に塗布する。第2液体113はヒドロキシル基を持つ溶媒と酸の少なくとも一つの溶媒で構成されている。ヒドロキシル基を持つ溶媒としては、水、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、リビトール等が挙げられる。酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グルコン酸や塩酸等が挙げられる。
【0061】
図1(g)で示すように、第2液体113の塗布により、第2液体113を親水性の金属電極103の第2領域302に配置することが可能である。
【0062】
図1(h)は、図1(g)のL2−L2‘において基板101を断面から見たときの模式図であり、第2液体113が親水性の金属電極103の第2領域302に配置している。
【0063】
親水性の金属電極103の第2領域302への第2液体113の配置は、ディップ法で行うことも可能である。図4は、ディップ法で第3液体113を配置する方法を示した模式図である。図4(a)と図4(b)で示すように、容器401に満たされた第2液体113中に、電子素子100が配置された基板101を浸漬した後、基板101を第2液体113から引き上げる。
【0064】
これにより、図4(c)に示すように親水性の金属電極103の第2領域302のみに第2液体113を配置できる。なおディップ法以外にも、スピンコート法を用いて、親水性の金属電極103の第2領域302のみに第2液体113を配置することも可能である。
【0065】
(工程5)
工程5では、基板101を加熱することで、親水性の金属電極103と電子素子100のカソード電極205とを接合する。基板の加熱は、電気炉、ホットプレート、赤外線照射、熱風の吹き付け、Nd:YAGレーザ等によるレーザ照射等によって行うことができる。加熱する温度は、少なくとも親水性の金属電極103の融点以上であればよい。
【0066】
本実施の形態では、電子素子としてイメージング用センサ素子を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、トランジスタ、発光素子、ダイオード、コンデンサ、抵抗、等、電気的な入出力信号を出す電子素子一般を用いることが可能であることはいうまでもない。
【0067】
また、本実施の形態では、配置する電子素子の電極が形成された面が長方形の場合を説明したが、これに限定されることは無く、素子の形状と親水性の金属電極103の第1領域302の形状が等しければ、どのような形状でも良いことはいうまでもない。
【0068】
以下、具体的な実施例を示す。この実施例は例示の目的にのみ用いられる。
【0069】
(実施例)
本実施例では、電子素子のモデルとして、ニッケルブロック(縦100μm×横100μm×高さ30μm)を基板に実装した。
【0070】
(ニッケルブロックの作製方法)
6インチのシリコンウェハに電子ビーム蒸着法により厚み200nmのアルミニウムを形成した。その上に、フォトリソグラフィー法により、一辺が100μmの正方形の孔が20μm間隔で格子状に配列した厚み50μmのレジスト膜からなるパターンを形成した。次に、電解めっき法により、正方形の孔をニッケルで埋めた。
【0071】
レジスト膜を剥離した後、シリコンウェハ上のニッケルめっき膜を機械研磨して、ニッケル膜の厚みを30μm、平均荒さを0.3μmにした。その後、シリコンウェハを、47℃のリン酸と硝酸の混合液(以下、熱リン酸と称する)が入った容器に入れ、アルミニウムをエッチングし、ニッケルブロックをシリコンウェハから取り外した。次に、ニッケルブロックが分散した熱リン酸液を孔径10μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、テフロン(登録商標)フィルター上にニッケルブロックを捕捉した。
【0072】
(ニッケルブロック分散液の作製方法)
ニッケルブロックを捕捉したフィルターを窒素雰囲気で一晩乾燥した。その後、1−クロルエチルトリクロロシランが0.01vol%溶解した1、4−ジクロロブタンが入った容器にテフロン(登録商標)フィルターを入れ、1時間放置した。容器には、ふた付の密閉式容器を用いた。ここまでの操作は乾燥窒素雰囲気で満たされたグローブボックス内で行った。
【0073】
次に、この容器をグローブボックスから取り出した後、超音波洗浄機に入れ、テフロン(登録商標)フィルターに超音波を当てた。これにより、1−クロロエチルトリクロロシランで化学修飾されたニッケルブロックがテフロン(登録商標)フィルターから外れて溶液内に分散した。
【0074】
次に、容器を再びグローブボックス内に入れ、テフロン(登録商標)フィルターを容器から取り出した。容器内の液体を孔径10μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過した後、このテフロン(登録商標)フィルターを1,4−ジクロロブタンで洗浄した。これにより、化学修飾されたニッケルブロックがテフロン(登録商標)フィルターに捕捉された。
【0075】
次に、テフロン(登録商標)フィルターを1、4−ジクロロブタン溶液が入った容器に入れた。そして、容器をグローブボックスから取り出し、容器を超音波洗浄機に入れてテフロン(登録商標)フィルターに超音波を当てた。これにより、テフロン(登録商標)フィルターに補足されていた化学修飾されたニッケルブロックは溶液内に分散した。
【0076】
(基板の作製方法)
図5および図6は、本実施例で用いる基板の作製工程を示した模式図である。
【0077】
図5(a)〜(c)および図6(d)〜(f)は平面模式図、(A)〜(F)は、それぞれ、(a)〜(f)をL3−L3‘〜L8−L8‘で切断したときの断面模式図である。
【0078】
基板500には50mm×50mmの合成石英を用いた。
【0079】
(レジストパターンの形成)
フォトリソグラフィー法によって、基板上にレジストパターンを形成した。
【0080】
図5(a)と(A)はそれぞれ、形成したレジストパターンの平面模式図と断面模式図である。
【0081】
レジスト膜504に開けられた穴503は、一辺が100μmの正方形状の孔501とそこから延びた一辺が40μmの正方形状の孔502からなる。レジスト膜内には、これらの穴503が400μm間隔で格子状に並んでいる。
【0082】
(電極の蒸着)
次に、電子ビーム蒸着法で、厚み20nmのチタン膜、厚み1μmの銅膜、および厚み3μmのスズ−銀−銅合金膜を順に積層した。図5(b)と(B)はそれぞれ、これらの膜を蒸着した後の平面模式図と断面模式図である。
【0083】
これらの図で示すように、厚み20nmのチタン膜505、厚み1μmの銅膜506、および厚み3μmのスズ−銀−銅合金膜507を順に、基板500上に積層されている。
【0084】
(電極パターンの形成)
その後、基板をアセトン中に浸漬した後、超音波を印加し、レジストを剥離した。
【0085】
図5(c)と(C)はそれぞれ、レジスト剥離後の基板の平面模式図と断面模式図である。これらの図で示すように、一辺が100μmの正方形のスズ−銀−銅合金からなる第1電極508と、そこから延びた4個の一辺が40μmの正方形のスズ−銀−銅合金からなる第2電極509が組み合わさった電極パターン510が、間隔400μmで格子状に形成された。
【0086】
(撥水膜の形成)
次に、基板500上に撥水膜を形成した。
【0087】
1vol%のパーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン(CF3(CF2724SiCl3)が溶解したパーフルオロオクタンに基板500を2時間浸漬後、取り出し、パーフルオロオクタン中で揺動しながら洗浄した。これらの操作は、乾燥窒素雰囲気で満たされたグローブボックス中で行った。
【0088】
図6(d)と(D)はそれぞれ、撥水膜形成後の基板の平面模式図と断面模式図である。これらの図で示すように、撥水膜511が基板500全体に形成された。
【0089】
(撥水膜のパターニング)
次に、電極パターン510上に形成された撥水膜を除去した。すなわち図6(e)と(E)で示すように、フォトマスク512を用いて電極パターン510のみに真空紫外光を照射した。電極パターン510のみに紫外光が照射されるように、フォトマスク512の開口部513と電極パターン510の形状は等しくした。
【0090】
図6(f)と(F)はそれぞれ、真空紫外光を照射した後の基板の平面模式図と断面模式図である。
【0091】
これらの図で示すように、親水性を有する電極パターン510とそれを取り囲む撥水領域511が基板500上に形成された。
【0092】
(ニッケルブロックの配置実験1)
ニッケルブロックは、実施の形態で示した方法で配置した。
【0093】
以下、具体的な配置方法を示す。
【0094】
図7(a)は、水とニッケルブロックの塗布方法を示した模式図である。
【0095】
第1スキージ601は、幅1mmのスリットを有した幅50mm、高さ20mm、厚み5mmのステンレスの板から形成されている。第2スキージ602は、幅50mm、高さ20mm、厚み1mmのガラス板を用いた。
【0096】
図7(b)は第1スキージ601の平面図であり、図7(c)は(b)で示したスキージをA方向から見た図である。
【0097】
第1スキージ601には、ステンレス板を貫通する幅1mmのスリット603が形成されている。
【0098】
図7(a)で示すように、第1スキージ601と第2スキージ602を1mmの間隔に保ち、基板から0.2mm上方に冶具(図示せず)を用いて配置した。
【0099】
第1スキージ601には水605をスリット603に入れ、第1スキージ601と基板500の間に水605の液膜を形成した。同様に、ピペットを用いて、第2スキージ602にはニッケルブロック分散液606を配置し、第2スキージと基板500の間にニッケルブロック分散液606の液膜を形成した。各スキージの移動速度を10mm/秒としてブレードを矢印604の方向に移動させた。
【0100】
以上により、水605が親水性の金属パターン510上に配置し、水605が蒸発する前にニッケルブロック分散液606中のニッケルブロック600が水605に接触して水605中に移動し、ニッケルブロック600が親水性の金属パターン510上に配置した。
【0101】
次に、ニッケルブロック600を配置後に水605と素子分散液606を乾燥させた。乾燥は、塗布後、基板を室温で5分放置することで行った。
【0102】
次に、図7(d)に示すように、第3スキージ607を用いてグリセリン(50wt%)とギ酸(50wt%)の混合溶液608を親水性の金属パターン510の内の第2電極509に配置した。
【0103】
第3スキージ607の形状は図7(b)、図7(c)にある第1スキージ601と同様である。
【0104】
第3スキージ607のエッジ面と基板500との間隔を1mm程度離すことで、第3スキージ607が基板500上を矢印609に示すように基板500の長手方向と平行に移動できるようにセットした。第3スキージ607には混合溶液608をスリット603に入れて第3スキージ607と基板500の間に混合溶液608の液膜を形成した。
【0105】
以上により、第2電極509上に混合溶液608を配置した。
【0106】
続いて、250℃にて40秒加熱することで合成石英基板500上の金属電極510とニッケルブロック700を接合した。
【0107】
最後に、水、エタノール、アセトン等を用いた超音波洗浄を10分程度行い、基板を乾燥させた。
【0108】
(ニッケルブロックの配置実験2)
比較例として、ニッケルブロックの配置実験1と同様の方法で第1電極508上にニッケルブロックを配置した。ただし、第2電極509上にグリセリン(50wt%)とギ酸(50wt%)の混合溶液を配置する工程を省いた。
【0109】
(ニッケルブロック配置後の基板と素子の評価法)
本実施例によって得られたニッケルブロックと基板上に形成した金属電極との間の電気抵抗をプローバによって測定した。2本のプローブの内、一方のプローブ先端をニッケルブロックに、もう一方のプローブの先端を第2電極509に当てて電気抵抗を測定した。
【0110】
また、基板500上の所定の5mm角の領域を選び、その領域内に配置されているニッケルブロックの数をN0とした。次に、基板500を超音波洗浄した後、洗浄前に測定した領域におけるニッケルブロックの数を数えた。この数をNとした。
【0111】
本実施例により、ニッケルブロックと基板上に形成した金属電極との間の電気抵抗は約0.02Ωであった。従って、ニッケルブロックは金属電極と電気的に接合されていると言える。
【0112】
また、N/N0は1であった。これは、超音波を印加しても、電極に一旦配置されたニッケルブロックは基板から脱離しないことを示している。従って、ニッケルブロックは金属電極と強固に固定されていると言える。
【0113】
以上の結果から、本実施例によってニッケルブロックが基板上の金属電極に強固に固定され、電気的に接合されることが示された。
【0114】
一方、比較例において、電気抵抗は約1000Ωであり、N/N0は0.1であった。これらの結果は、ニッケルブロックは、金属電極とは電気的接合がされておらず、また、電極との機械的な接合力も弱いものと予想される。
【0115】
以上の結果より、本発明の方法によって、ニッケルブロックが基板上の婉曲に強固に固定され、電気的にも接合できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明にかかる電子素子の実装方法は、100μm程度の微小なサイズを持つ電子素子を高歩留まりで大面積に実装し、接合する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の、電子素子の配置方法を示した模式図
【図2】本発明の方法で配置する電子素子の断面図
【図3】本発明の、撥水性領域に囲まれた金属電極の親水性領域の形状を示す模式図
【図4】本発明の、第2液体を配置する方法を示した模式図
【図5】本発明の実施例でニッケルブロックを配置する基板の作製方法を示した模式図
【図6】本発明の実施例でニッケルブロックを配置する基板の作製方法を示した模式図
【図7】本発明の実施例でニッケルブロックを配置する方法を示した模式図
【図8】従来の、トランジスタを配置する方法を示した模式図
【図9】従来の方法で配置するトランジスタの模式図と、親水性領域近傍を示した模式図
【図10】本発明で配置する電子素子の分散液の作製方法を示した模式図
【符号の説明】
【0118】
100 電子素子
101 基板
102 撥水性領域
103 金属電極の親水性領域
104 第1スキージ
105 第1スキージの移動方向
106 水
107 第2スキージ
108 第2スキージの移動方向
109 電子素子分散液
110 第1液体
111 第3スキージ
112 第3スキージの移動方向
113 第2液体
201 シリコンn型層
202 シリコンp型層
203 SiO2絶縁層
204 カソード電極
205 アノード電極
301 第1領域
302 第2領域
303 第1領域の長辺
304 第1領域の短辺
305 第1領域の長辺と第2領域との境界線
306 第1領域の短辺と第2領域との境界線
307 電子素子の面
401 容器
500 基板
501 レジスト膜の100μm×100μmの正方形状の孔
502 レジスト膜の40μm×40μmの正方形状の孔
503 レジスト膜に開けられた穴
504 レジスト膜
505 チタン膜
506 銅膜
507 スズ−銀−銅合金膜
508 第1電極
509 第2電極
510 電極パターン
511 撥水膜
512 フォトマスク
513 フォトマスクの開口部
600 ニッケルブロック
601 第1スキージ
602 第2スキージ
603 スリット
604 第1スキージおよび第2スキージの移動方向
605 水
606 ニッケルブロック分散液
607 第3スキージ
608 混合溶液
609 第3スキージの移動方向
701 基板
702 親水性領域
703 撥水性領域
704 第1スキージ
705 水
706 親水性領域に配置された水
707 第1ブレードの移動方向
708 第2ブレード
709 トランジスタ分散液
710 トランジスタ
711 ジクロロブタン
712 水に移動したトランジスタ
713 親水性領域に配置されたトランジスタ
801 トランジスタの面
802 ゲート電極
803 ソース電極
804 ドレイン電極
805 面901の裏側
806a 撥水性の電極
806b 親水性の電極
807a 撥水性の電極
807b 親水性の電極
808a 撥水性の電極
808b 親水性の電極
1101 基板
1102 犠牲層
1103 犠牲層のエッチング液
1104 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの面に電極が形成されている電子素子を基板上に配置して電気的に接合する方法であって、
(1)前記基板上の撥水性領域に囲まれた親水性の金属電極上に、水を含む液体を配置する工程と、
(2)前記電子素子複数個と第1液体を含む素子分散液を、前記親水性金属電極に配置された前記水を含む液体に接触させ、前記電子素子の電極が形成されている面を前記基板側に向けた状態で、前記電子素子を、前記水を含む液体に移動させる工程と、
(3)前記水を含む液体と第1液体を乾燥させ、前記電子素子を前記親水性の金属電極上に配置する工程と、
(4)第2液体を、前記親水性の金属電極上に配置する工程と、
(5)前記基板を加熱する工程を含み、
前記親水性の金属電極は、第1領域と第2領域から構成されており、
前記第1領域の形状と、前記電子素子の電極が形成されている面の形状は等しく、かつ、
前記第2領域は前記第1領域から延びており、前記工程(3)では、前記電子素子を前記第1領域に配置し、前記工程(4)では、前記第2液体を前記第2領域に配置することを特徴とする、電子素子を基板上に配置して電気的に接合する方法。
【請求項2】
前記第2液体は、ヒドロキシル基を持つ溶媒または酸を少なくとも含む請求項1に記載の、電子素子を基板上に配置して電気的に接合する方法。
【請求項3】
前記第1液体は水を含まない液体である、請求項1に記載の電子素子を基板上に配置して電気的に接合する方法。
【請求項4】
前記第1液体が塩素系溶媒である、請求項1に記載の電子素子を基板上に配置して電気的に接合する方法。
【請求項5】
前記電子素子の表面の水を含む液体に対するぬれ性は、前記第1液体に対するぬれ性よりも高い、請求項1に記載の電子素子を基板上に配置して電気的に接合する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−135667(P2010−135667A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311902(P2008−311902)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】