説明

電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料

【課題】 真空紫外領域用の電子線励起発光検出装置が正常であることを示すと共に、試料の発光強度の定量的な比較や発光に寄与する元素の定量に基準となる、校正用標準試料を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、バンドギャップエネルギーが6.2eV以上の酸化物結晶よりなる電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料、測定試料及び該校正用標準試料の電子励起真空紫外発光を同じ測定条件で測定し、測定試料と校正用標準試料の発光強度の比(測定試料の発光強度/校正用標準試料の発光強度)を求める電子線励起真空紫外発光強度の定量的測定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低エネルギーの電子線励起による真空紫外線発光測定装置の校正用標準試料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外光は一般に紫外線と称せられ、照明、害虫駆除、樹脂の硬化などに広く使用されている。昨今は、特にその波長が200〜350nmの深紫外線や、200nm以下の真空紫外線への関心が高まっている。深紫外線は、殺菌・浄水等の分野、各種医療分野、高密度記録分野、高演色発光ダイオード照明分野、光触媒と組み合わせた公害物質の分解分野での利用が期待され、既に一部は実用化されている。一方、真空紫外線は更に短い波長の光線であることから、次世代の半導体製造プロセスの中核をなすと言われるほか、発光材料としても期待されている。
【0003】
深紫外線を発光する材料としては、電子線励起により発光するダイヤモンド、六方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどが知られている。一方、真空紫外光を発光する材料としては、深紫外線のような固体発光材料は開発されておらず、重水素ランプやフッ素ガスによるレーザーなどが使用されている。しかしこの種の光源は、寿命や安定性、経済性の問題があり、可視光線において白熱電球から固体発光材料に変わってきたように、固体発光材料の開発が期待されていた。
【0004】
固体発光材料で真空紫外線を発光する代表的な方法は、非常に高いエネルギーをもつX線やγ線等の放射線で励起させる方法である。
【0005】
しかし、これまでの真空紫外線の固体発光材料による発光は、励起源として非常に高いエネルギーをもつX線やγ線等の放射線が必要であるため特定の設備に限定され、一般の研究施設ではなしえなかった。それに対し、本発明者らは、一般の研究施設で固体発光材料による真空紫外線の発光を測定可能な、励起源に走査電子顕微鏡の数〜数十kVの低エネルギーの電子線を用いた真空紫外領域の発光分光分析装置、すなわち真空紫外領域用SEM−CLを提案した(特願2009−208473)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空紫外領域用SEM−CLによる発光強度測定においては、発光した真空紫外線強度を再現良く測定することが、特に重要である。従来の紫外線から可視光線を対象とする電子線励起発光の測定装置においても同様であるが、実際の測定中には、試料のダメージが原因である発光強度の低下や、集光ミラー等が汚染されることによる発光光線の減衰、光学系のわずかな狂いによる検出光量の低下が発生する。これらに対しては、試料の代わりに試料の位置に、目的の波長に近い発光波長で且つ再現性の良い発光強度が得られ、酸化や分解などによる発光特性の変化が無い標準試料をおいて測定することで、正常な状態を確認し、必要に応じて校正等をする必要がある。外的影響による光学系の狂いが発生した場合、通常は測定条件と全く同じ条件で使用できる標準試料を用いて調整される。特に、真空紫外領域では、波長が短いことにより光学系の精度が要求されるためこのような標準試料が重要であるが、真空紫外線の波長近辺で発光する適当な物質は、今まで見出されていなかった。
【0007】
この標準試料には、次の特性が必要である。(1)試料の代わりにまたは試料と共に試料台に載せて使用できる。(2)発光波長が真空紫外領域である。(3)発光する条件が試料測定時のものとほぼ同じである。(4)物性が安定していて、発光波長や強度に変化がない。(5)発光スペクトルの立ち上がりが明瞭で発光量の積算が容易である。(6)発光光線のスペクトルの形状が鋭く、発光波長の特定が容易である。この中で特に、試料の代わりにまたは試料と共に試料台に載せて使用することは、発光した光が試料と全く同じ光学系を通過して検出されるため、光学系の調整のために必要である。また発光波長が真空紫外領域であることは、光学系に真空紫外領域に透明な窓材やレンズを用いた場合に、波長によって屈折率が異なるために必要である。
【0008】
本発明は、真空紫外領域用の電子線励起発光検出装置が正常であることを示すと共に、試料の発光強度の定量的な比較や発光に寄与する元素の定量に基準となる、校正用標準試料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような真空紫外領域用SEM−CLの校正に関する問題を解決すべく鋭意研究した。その結果、電子線励起によって真空紫外線を十分に発光し、電子線照射による変化や経時的な変化がないなど、電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料に要求される特性を満足する化合物を見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、バンドギャップエネルギーが6.2eV以上の酸化物結晶よりなる電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料、該校正用標準試料を用いた電子線励起真空紫外発光強度の定量的測定方法及び電子線励起真空紫外光測定装置の波長校正方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料は、電子線励起によって真空紫外線を十分に発光し、電子線照射による変化や経時的な変化がないので、本発明の電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料を用いることにより、電子線励起発光による真空紫外線スペクトルの測定や電子線励起発光画像の取得が安定的に再現良く且つ簡便な方法で可能となる。本発明の電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料は、真空紫外領域用SEM−CLに限らず、全ての電子線励起の真空紫外線発光の分光解析において、校正用標準試料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本図は、本発明を適用する真空紫外領域用SEM−CLの一例の概略図である。
【図2】本図は、本発明の校正用標準試料のCLスペクトル例である。
【図3】本図は、酸化マグネシウム結晶に電子線を照射し続けた時の発光強度の経時変化の例である。
【図4】本図は、酸化マグネシウム結晶の発光強度の日間変動の例である。
【図5】本図は、酸化アルミニウム結晶に電子線を照射し続けた時の発光強度の経時変化の例である。
【図6】本図は、酸化アルミニウム結晶の発光強度の日間変動の例である。
【図7】本図は、LaF結晶中のNdの添加量を変えて測定した、発光強度による検量線の例を示す。
【図8】本図は、二酸化ケイ素結晶に電子線を照射し続けた時の発光強度の経時変化の例である。
【図9】本図は、波長校正に用いる二酸化ケイ素結晶のピーク位置の取り方の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本発明の校正用標準試料を適用して校正する電子線励起真空紫外発光測定装置の1例として、真空紫外領域用SEM−CLの概略図を示す。
【0014】
真空紫外領域用SEM−CLは、走査電子顕微鏡部と分光器室からなっており、走査電子顕微鏡部には集光ミラーが設けられている。
【0015】
真空紫外発光試料を電子顕微鏡部において1〜300Paの低真空雰囲気中に保持し、該試料に1〜30kVの低エネルギーの電子線を照射し、該低エネルギーの電子線により励起して波長200nm以下の真空紫外線を含む光を発光させ、次いで該発光光を集光ミラーで分光器室に伝送する。分光器室に伝送された発光光は回折格子に集光され、回折格子で波長毎に分光される。回折格子で分光された真空紫外線を、CCDなどの検出器で検出する。走査電子顕微鏡部と分光器室とは、ピンホールやMgFなどの真空紫外線に透明な物質からなる窓材又は集光レンズで接続されている。図1において、もし電子線の収束不良や試料表面での焦点ぼけ、集光ミラーから検出器までの間の光学系の狂いが発生すると、試料で発生した真空紫外光は減衰する。また、フッ化物は電子線に弱いものがあり、電子線によって発生したフッ化水素などが、集光ミラーなどを腐食し、しだいに真空紫外光を弱める可能性がある。更に回折格子と検出器の関係が狂うと、発光波長が狂うことになる。
【0016】
本発明においては校正用標準試料としてバンドギャップエネルギーが6.2eV以上の酸化物結晶を用いる。酸化物結晶は、セラミックスであって安定な固体化合物であり、酸化や分解反応などによる保管中の変質がなく、電子線照射によりダメージを受けて、組成や結晶構造が変化し発光強度及び発光波長が変化することもない。また、発光スペクトルの立ち上がりが明瞭で発光量の積算が容易であり、発光光線のスペクトルの形状が鋭く、発光波長の特定も容易である。さらに、適当な形状に成形して、電子線励起真空紫外発光測定装置の試料台に載せることが容易で、発光した光が集光伝送部等を経て検出器に到達するまでの経路を、試料の場合と一致させることもできる。また、バンドギャップが6.2eV以上であるので、電子線励起による発光波長が真空紫外領域にあり、試料と同じ測定条件で使用可能である。
【0017】
このようなバンドギャップエネルギーが6.2eV以上の酸化物結晶としては酸化リチウム結晶、酸化ベリリウム結晶、酸化ホウ素結晶、酸化マグネシウム結晶、酸化アルミニウム結晶、二酸化ケイ素結晶、酸化カルシウム結晶、を挙げることができる。中でも酸化マグネシウム結晶、酸化アルミニウム結晶及び二酸化ケイ素結晶は、空気中で安定であること及び良質の単結晶が入手し易いため電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料に好適である。なお、これらの結晶は、使用において、形状や純度、結晶性に特に制限はないが、発光強度が強くて取扱いが容易なことなどから、高純度な単結晶であることが望ましい。
【0018】
本発明の校正用標準試料を用いて真空紫外発光光のスペクトルを測定することにより電子線励起真空紫外発光測定装置の状態をチェックすることができる。例えば回折格子と検出器の関係に狂いが生じて発光波長にずれが生じた場合、正常時に本発明の校正用標準試料を用いて測定した発光スペクトルとピーク波長がずれることで、異常を知ることができる。このように回折格子と検出器の関係に狂いが生じた場合は、回折格子と検出器の関係を調整することにより発光強度を校正することもできるが、正常時に測定した本発明の校正用標準試料の発光スペクトルのピーク波長を基準にして、電子線励起真空紫外発光測定装置の波長校正をすることができる。
【0019】
波長校正用の標準試料としては、バンドギャップエネルギーが6.2eV以上の酸化物結晶の中でも二酸化ケイ素が真空紫外線領域で2つのシャープなピークをもつため好適である。
【0020】
更に、本発明の校正用標準試料を用いることによって、電子線励起真空紫外発光測定装置の発光強度を校正することができる。例えば光学系に狂いが生じて感度が落ちた場合、正常時に本発明の校正用標準試料を用いて測定したのと同条件で測定した発光スペクトルの各波長の光子のカウント値が下がることで、異常を知ることができる。このように光学系に狂いが生じた場合は光学系を調整することにより発光強度を校正することができる。また、集光ミラーの腐食が原因である場合のように光学系の調整では簡単に解決できない場合には、正常時の本発明の校正用標準試料の発光強度を基準にして、装置の感度補正をすることもできる。
【0021】
本発明の校正用標準試料の、正常時の真空紫外発光スペクトルの各波長の発光強度Iと校正時の真空紫外発光スペクトルの各波長の発光強度Iの比I/Iを求め、これを補正係数として、測定試料の真空発光スペクトルの各波長の発光強度に各波長の補正係数を掛け合わせることにより測定試料の補正された発光強度を得ることができる。
【0022】
また、本発明の校正用標準試料を発光強度基準として用いることによって、測定条件の異なる試料間の電子線励起真空紫外発光強度の定量的測定を行うことができる。種々の試料の電子線励起真空紫外発光スペクトルを測定する上で、物質によって影響のある加速電圧などの測定条件を除く、電子線の電流値や測定時間などの測定条件を測定試料に合わせて変更する場合がある。このような場合、各試料間で測定条件が異なるため発光強度をそのまま比較することができない。しかし、本発明の校正用標準試料もそれぞれの測定試料の測定条件で測定し、測定試料と本発明の校正用標準試料の各波長との発光強度の比(測定試料の発光強度/校正用標準試料の発光強度)を求めることで、各試料間で比較のできる定量的測定をすることができる。このとき、本発明の校正用標準試料の発光波長領域は、試料の発光波長を包含していることが好ましい。また、校正用標準試料は、試料と共に試料台に搭載し、試料を測定する前後に同様の条件で測定するのが望ましい。
【0023】
更に、本発明の校正用標準試料を用いることにより、上記したように測定条件の異なる試料間の電子線励起真空紫外発光強度の定量的測定を行うことができるので、測定試料中に含有される添加物の定量を容易に行うことができる。
【0024】
例えば、添加された発光に寄与するための元素の添加量が異なる測定試料において、電子線励起真空紫外発光強度と電子線励起真空紫外発光に寄与するために添加された元素濃度が相関関係を持つことを利用して、試料中に添加された微量の発光に寄与する元素の量を定量することができる。通常、微量の発光に寄与する元素の量を定量するには、湿式分析−ICP−発光分析などの試料調製に手間の掛かる操作が必要になる。しかし、一度、測定試料と共にその測定前後に校正用標準試料を測定することにより定量的測定をして得られた、測定試料と校正用標準試料の電子線励起真空紫外発光強度の比(測定試料の発光強度/校正用標準試料の発光強度)と湿式分析−ICP−発光分析などで求めた発光に寄与するために添加された元素濃度との相関をとり、検量線を作れば、次回から試料の発光強度測定前後に校正用標準試料の発光強度を測定するだけで発光に寄与する元素濃度を容易に求めることが可能になる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、例示した真空紫外領域用SEM−CLの細部の構造や部品は、従来公知のものがそのまま採用される。
【0026】
実施例1
図1に示す真空紫外領域用SEM−CLを用いて測定した、酸化マグネシウム結晶の電子線励起による真空紫外線発光スペクトルを図2に示した。酸化マグネシウム結晶としては、電融法で育成した単結晶(MTI社製)を鏡面研磨したものを用いた。酸化マグネシウム結晶への導電コーティング処理は行っていない。真空紫外領域用SEM−CLとしては、走査電子顕微鏡本体は、日立ハイテクノロジーズ社製SU−6600型走査電子顕微鏡、CCDはAndor Technology社製DU420−BN型、回折格子は1200本/mmのものを使用した。測定条件は、加速電圧20kV、照射電流430pA、測定時間5秒、温度300K、試料室の真空度は80Paとした。
【0027】
上記真空紫外線発光スペクトル測定に用いたのと同じ酸化マグネシウム結晶を用い、測定時間以外は同じ測定条件で酸化マグネシウム結晶に電子線を20分間照射し続けた時の発光強度の経時変化を図3に示した。図3では、酸化マグネシウム結晶の発光強度が最大になるピーク波長170nm±1nmの光子のカウント数の積分値を発光強度とし、測定開始時の発光強度を基準とし、100%とした。また、上記真空紫外線発光スペクトル測定に用いたのと同じ酸化マグネシウム結晶を用い、上記真空紫外線発光スペクトル測定と同じ測定条件で1日1回、5日間測定したときの酸化マグネシウム結晶の発光強度の日間変動を図4に示した。図4では、酸化マグネシウム結晶の発光強度が最大になるピーク波長170nm±1nmの光子のカウント数の積分値を発光強度とし、1日目の発光強度を基準とし、100%とした。上記の実施例より、酸化マグネシウム結晶は、発光強度の変動が小さく、校正用標準試料として好適であることがいえる。酸化マグネシウム結晶は、170nm〜200nmの波長で発光しており、170nm〜200nmの発光強度の基準として用いることができる。
【0028】
実施例2
酸化物結晶としてチョクラルスキー法で育成した酸化アルミニウム単結晶(MTI社製)を用いた以外は実施例1と同様にして測定した、電子線励起による真空紫外線発光スペクトルを図2に、電子線を照射し続けた時の発光強度の経時変化を図5に、発光強度の日間変動を図6に示した。図5では、酸化アルミニウム結晶の発光強度が最大になるピーク波長170nm±1nmの光子のカウント数の積分値を発光強度として、測定開始時の発光強度を基準とし、100%とした。図5では、酸化アルミニウム結晶の発光強度が最大になるピーク波長170nm±1nmの光子のカウント数の積分値を発光強度として、1日目の発光強度を基準とし、100%とした。上記の実施例より、酸化アルミニウム結晶は、発光強度の変動が小さく、校正用標準試料として好適であることがいえる。酸化アルミニウム結晶は、150nm〜190nで発光しており、150nm〜190nmの発光強度の基準として用いることができる。
【0029】
実施例3
本願発明の校正用標準試料を用いた、LaF中のNd含有量の定量の例を示す。
【0030】
溶融固化法で作製した異なった濃度のNdを含むLaF結晶の測定前後に校正用標準試料の発光強度を測り定量的測定を行ない(n=3)、Ndを含むLaF結晶と校正用標準試料の電子線励起真空紫外発光強度の比(測定試料の発光強度/校正用標準試料の発光強度)を求めた。校正用標準試料には実施例1の酸化マグネシウム結晶を用いた。Ndを含むLaF結晶のNd濃度は、発光強度を測定したのと同一の試料をアルカリ溶融法で分解した後、湿式分析−ICP−発光分析法で検量線法を用いて定量をした。
【0031】
縦軸に、異なった濃度のNdを含むLaFの結晶と校正用標準試料との173nmの電子線励起真空紫外発光線の発光強度比を、横軸に各試料のNd濃度の定量値をプロットした検量線を図7に示した。つまり、校正用標準試料を用いて発光強度比を定量的に測定することで、一度、発光に寄与する元素濃度と発光強度比の相関を取れば、次からは発光強度比から容易に試料中のNd含有量を算出することができる。
【0032】
実施例4
酸化物結晶として水熱法で育成した二酸化ケイ素単結晶(MTI社製)を用い、測定条件として照射電流を2nA、測定時間15秒とした以外は実施例1と同様にして測定した、電子線励起による真空紫外線発光スペクトルを図2に示した。電子線を20分間照射し続けた時の発光強度の経時変化を図8に示した。図8では、二酸化ケイ素結晶の発光強度は、ピーク波長150nm±1nmの光子のカウント数の積分値及び、175nm±1nmの光子のカウント数の積分値を各波長の発光強度とし、測定開始時の発光強度を基準とし、100%とした。発光ピーク波長は、図9に示すように、それぞれのピークの2つの変曲点の波長の中心をピーク波長とした。
【0033】
真空紫外線発光スペクトルの測定に用いたのと同じ二酸化ケイ素結晶を用い、真空紫外線発光スペクトルの測定と同じ測定条件で1日1回、5日間測定したときの二酸化ケイ素結晶の発光ピーク位置の日間変動を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
図8、表1から、二酸化ケイ素は、発光ピーク波長の変動が小さく、波長校正用標準試料として好適であることがわかる。
【0036】
二酸化ケイ素結晶の150nm又は175nmのピーク波長を基準に用いて、真空紫外領域用SEM−CL等の電子線励起真空紫外発光測定装置の波長校正を行なうことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップエネルギーが6.2eV以上の酸化物結晶よりなる電子線励起真空紫外発光測定装置用の校正用標準試料。
【請求項2】
測定試料及び請求項1に記載の校正用標準試料の電子励起真空紫外発光を同じ測定条件で測定し、測定試料と校正用標準試料の発光強度の比(測定試料の発光強度/校正用標準試料の発光強度)を求めることを特徴とする、電子線励起真空紫外発光強度の定量的測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電子線励起真空紫外発光強度の定量的測定方法を用いて、検量線の作成及び測定試料の電子励起真空紫外発光測定をすることを特徴とする、測定試料中に含有される発光に寄与する元素の定量方法。
【請求項4】
請求項1の校正用標準試料を波長基準として用いて、電子線励起真空紫外光測定装置の波長を校正することを特徴とする電子線励起真空紫外光測定装置の波長校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−232242(P2011−232242A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104209(P2010−104209)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】