説明

電子線殺菌装置における電子線照射エネルギー量監視システム

【課題】殺菌室に囲まれた電子線殺菌装置において、電子線照射で計測器が故障することがないように、電子線照射エネルギー量を把握する。
【解決手段】殺菌室4内で容器2等を電子線照射装置3からの電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置1において、電子線照射装置3から電子線照射を受ける容器2近傍の位置に、その内部に液体が流通する管路を有する反射板11を設置して、該反射板11に前記管路へ液体を供給する供給配管13および前記管路から液体を回収する回収配管14,15を接続して、供給配管13と回収配管14,15の殺菌室4外部の途中に液体の流量を計測する流量計16,17並びに液体の温度を計測する温度計18−20を設け、計測した前記液体の流量と温度をもとに反射板11が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置25で演算して求めて、これをもとに容器2への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌室内で電子線照射により容器等を殺菌する電子線殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PETボトル等の容器に電子線を照射して容器を殺菌する電子線殺菌装置において、電子線照射方向が所定の方向だけとなっている場合、対象とする容器の形状により、或いは肉厚が一様でない容器構成により、容器の電子線吸収量が均一とならないために、容器の箇所によっては殺菌不十分となるか或いは殺菌過多となる恐れがある。このために容器の電子線吸収量を均一化する工夫がなされている。(特許文献1)
また、容器の電子線殺菌装置が実用化されるに当って、容器が正常に殺菌されていることを確認し、管理することが公知技術となっている。(特許文献2)
近年、容器殺菌のトレーサビリティを管理することが衛生管理上求められるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−248894号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開2008−213845号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1によれば、電子線照射装置の電子線照射窓と反対側に位置する電子線吸収量が少ないボトル(容器)口部と対面する位置に反射板を設けて、電子線照射を受けるボトルが前記電子線照射窓に向いている面と同様の電子線吸収量を受けるようにしている。
しかしながら、前記特許文献1の技術では、ボトルの殺菌エネルギー量監視は電子線照射装置の電流、電圧等の電子線出力量という間接的監視となり、ボトルが受ける電子線照射エネルギー量等の直接的監視ではないという恐れがある。また、反射板を設けているものの、反射板が受ける電子線照射エネルギー量を利用してボトルが受ける電子線照射エネルギー量を監視するシステムの技術については開示されていない。
【0005】
また、前記特許文献2によれば、電子線殺菌システムは、外部から殺菌ボックス内に搬入され、容器搬送装置により搬送されながら電子線照射装置から電子線照射を受けた容器の温度を温度計により測定して、設定温度範囲に入っているかどうかで容器が正常に殺菌されているかどうかを判定するとしている。
しかしながら、前記特許文献2の技術では、前記温度計が電子線照射の影響を受ける殺菌ボックスの中に設けられているので、電子線照射時に発生するX線により故障又は損傷しやすいという恐れがある。
【0006】
本発明は、殺菌室に囲まれた電子線殺菌装置において、電子線照射の影響で計測器が故障又は損傷することがないように、殺菌室の外部に設けた計測器の計測値をもとに殺菌対象の容器が受ける電子線照射エネルギー量を把握して監視でき、トレーサビリティの管理をすることができるシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題に対し、本発明は以下の手段により解決を図る。
(1)第1の手段の電子線照射エネルギー量監視システムは、殺菌室内で容器等を電子線照射装置からの電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置から電子線照射を受ける容器近傍の位置に、その内部に液体が流通する管路を有する反射板を設置して、該反射板に前記管路へ液体を供給する供給配管および前記管路から液体を回収する回収配管を接続して、前記供給配管と前記回収配管の前記殺菌室外部の途中に液体の流量を計測する流量計並びに液体の温度を計測する温度計を設け、計測した前記液体の流量と温度をもとに前記反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする。
【0008】
(2)第2の手段の電子線照射エネルギー量監視システムは、前記第1の手段の電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板が複数個ある場合は、前記液体の流量計並びに温度計をそれぞれの反射板に対応するように設けて、前記複数個の反射板に対応して計測した前記液体の流量と温度をもとにそれぞれの反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする。
【0009】
(3)第3の手段の電子線照射エネルギー量監視システムは、前記第1又は第2の手段の電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記電子線照射エネルギー量を、前記計測した液体の流量、比重、比熱と、前記回収配管を通過する液体温度と前記供給配管を通過する液体温度との温度差をもとに演算するようにしたことを特徴とする。
【0010】
(4)第4の手段の電子線照射エネルギー量監視システムは、前記第1から第3の手段のうちいずれか一の電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記計測した液体の流量と、前記回収配管の内断面積と、前記反射板から前記回収配管に設けた温度計までの配管長さから、前記反射板を通過した前記液体が前記温度計に達する時間を演算して、これをもとに前記温度計で前記液体の温度を計測している対象容器のタイミングを割り出して、前記電子線照射エネルギー量を求めた対象容器を特定できるように構成したことを特徴とする。
【0011】
(5)第5の手段の電子線照射エネルギー量監視システムは、殺菌室内で容器等を電子線照射装置からの電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置から電子線照射を受ける容器近傍の位置に反射板を設置し、該反射板にその他端が前記殺菌室の外部まで延伸したヒートパイプの一端を一体に取り付け、該ヒートパイプの前記他端に前記反射板の温度或いは発熱量を計測する温度計或いは熱量計を設けて、計測した前記温度或いは発熱量をもとに前記反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする。
【0012】
(6)第6の手段の電子線照射エネルギー量監視システムは、前記第5の手段の電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板が複数個ある場合は、前記温度計或いは熱量計をそれぞれの反射板に対応するように設けて、前記複数個の反射板に対応して計測した前記温度或いは発熱量をもとにそれぞれの反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする。
【0013】
(7)第7の手段の電子線照射エネルギー量監視システムは、前記第5又は第6の手段の電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板から前記温度計或いは熱量計までの前記ヒートパイプの長さをもとに、前記反射板の温度或いは発熱量が前記温度計或いは熱量計に達する時間を予め求めておいて、これをもとに前記温度計或いは熱量計で前記温度或いは発熱量を計測しているタイミングを割り出して、前記電子線照射エネルギー量を求めた対象容器を特定できるように構成したことを特徴とする。
【0014】
(8)第8の手段の電子線照射エネルギー量監視システムは、前記第1から第7の手段のうちいずれか一の電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記電子線照射装置の電子線出力量を前記制御装置に取り込んで、該電子線出力量を付加して、電子線照射エネルギー量を監視するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係わる本発明は、殺菌室内で容器等を電子線照射装置からの電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置から電子線照射を受ける容器近傍の位置に、その内部に液体が流通する管路を有する反射板を設置して、該反射板に前記管路へ液体を供給する供給配管および前記管路から液体を回収する回収配管を接続して、前記供給配管と前記回収配管の前記殺菌室外部の途中に液体の流量を計測する流量計並びに液体の温度を計測する温度計を設け、計測した前記液体の流量と温度をもとに前記反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるようにしたことにより、殺菌対象容器が受ける電子線照射エネルギー量を、電子線照射装置の電子線出力量という間接的なものではなく、電子線照射を直接受けた反射板の電子線照射エネルギー量で把握して、これをもとに殺菌対象容器の殺菌良否を監視でき、その結果をトレーサビリティとして管理できるとともに、温度計等の機器が電子線照射の影響を受けない殺菌室の外部で使用されるために故障又は損傷されずにすみ、さらに、前記反射板がその内部の管路を通過する水により冷却されて、反射板が高温になるのを防止できるという効果を有する。
【0016】
請求項2に係わる本発明は、請求項1に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板が複数個ある場合は、前記液体の流量計並びに温度計をそれぞれの反射板に対応するように設けて、前記複数個の反射板に対応して計測した前記液体の流量と温度をもとにそれぞれの反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるようにしたことにより、電子線照射エネルギー量を木目細かく把握して監視することができて、電子線照射による殺菌性能の監視精度が向上するという効果を有する。
【0017】
請求項3に係わる本発明は、前記請求項1又は2に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記電子線照射エネルギー量を、前記計測した液体の流量、比重、比熱と、前記回収配管を通過する液体温度と前記供給配管を通過する液体温度との温度差をもとに演算するようにしたことにより、電子線照射エネルギー量監視システムを具体的に提供できるという効果を有する。
【0018】
請求項4に係わる本発明は、前記請求項1から3のうちいずれか一項に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記計測した液体の流量と、前記回収配管の内断面積と、前記反射板から前記回収配管に設けた温度計までの配管長さから、前記反射板を通過した前記液体が前記温度計に達する時間を演算して、これをもとに前記温度計で前記液体の温度を計測している対象容器のタイミングを割り出すようにしたことにより、前記電子線照射エネルギー量を求めた対象容器を特定でき、容器殺菌のトレーサビリティを容器毎に把握できるという効果を有する。
【0019】
請求項5に係わる本発明は、殺菌室内で容器等を電子線照射装置からの電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置において、殺菌室内で容器等を電子線照射装置からの電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置から電子線照射を受ける容器近傍の位置に反射板を設置し、該反射板にその他端が前記殺菌室の外部まで延伸したヒートパイプの一端を一体に取り付け、該ヒートパイプの前記他端に前記反射板の温度或いは発熱量を計測する温度計或いは熱量計を設けて、計測した前記温度或いは発熱量をもとに前記反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことにより、殺菌対象容器が受ける電子線照射エネルギー量を、電子線照射装置の電子線出力量という間接的なものではなく、電子線照射を直接受けた反射板の電子線照射エネルギー量で把握して、これをもとに殺菌対象容器の殺菌良否を監視でき、その結果をトレーサビリティとして管理できるとともに、温度計等の機器が電子線照射の影響を受けない殺菌室の外部で使用されるために故障又は損傷されずにすみ、さらに、前記温度或いは発熱量計測の装置が簡素な構造になるという効果を有する。
【0020】
請求項6に係わる本発明は、前記請求項5に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板が複数個ある場合は、前記温度計或いは熱量計をそれぞれの反射板に対応するように設けて、前記複数個の反射板に対応して計測した前記温度或いは発熱量をもとにそれぞれの反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことにより、電子線照射エネルギー量を木目細かく把握して監視することができて、電子線照射による殺菌性能の監視精度が向上するという効果を有する。
【0021】
請求項7に係わる本発明は、前記請求項5又は6に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板から前記温度計或いは熱量計までの前記ヒートパイプの長さをもとに、前記反射板の温度或いは発熱量が前記温度計或いは熱量計に達する時間を予め求めておいて、これをもとに前記温度計或いは熱量計で前記温度或いは発熱量を計測しているタイミングを割り出すようにしたことにより、前記電子線照射エネルギー量を求めた対象容器を特定でき、容器殺菌のトレーサビリティを容器毎に把握できるという効果を有する。
【0022】
請求項8に係わる本発明は、前記請求項1から7のうちいずれか一項に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記電子線照射装置の電子線出力量を前記制御装置に取り込んで、該電子線出力量を付加して、電子線照射エネルギー量を監視するようにしたことにより、電子線照射装置の出力の把握と前記反射板での電子線照射エネルギー量の把握を互いにバックアップして、総合的に高度で確実な電子線照射エネルギー量監視システムとすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる電子線照射エネルギー量監視システムを摸式的に示した正面図で、一部断面図としてある。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係わる電子線照射エネルギー量監視システムを摸式的に示した正面図で、一部断面図としてあり、図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
(発明の第1の実施の形態)
【0025】
本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
図1は、本発明に係わる第1の実施の形態の電子線照射エネルギー量監視システムを摸式的に示した正面図で、一部断面図としてある。
図において、電子線殺菌装置1は、殺菌室4に搬送されてきた容器2が、円周等分に設けられて図示しない開閉機構により開閉するグリッパ7により首部2nを把持されて、図示しない駆動装置によって回転する軸5の回転により回転円板6を介して回転搬送され、前記殺菌室4の壁部に設けられた電子線照射装置3の前方に達した時、該電子線照射装置3の電子線照射窓3wから電子線照射を受けて殺菌され、前記容器2への電子線照射エネルギー量を電子線照射エネルギー量監視システム10により監視されるように構成されている。
【0026】
前記電子線照射エネルギー量監視システム10は、電子線照射を受けて殺菌される前記容器2の近傍の位置で、前記容器2から見て電子線照射窓3wと反対側に対向して設けられ、内部に水(液体)を流通する図示しない管路を設けた反射板11および反射板12と、前記反射板11および反射板12の管路に水(液体)を供給する供給配管13aおよび供給配管13bと、前記反射板11および反射板12の管路から水(液体)を回収する回収配管14および回収配管15と、矢印13fの方向から水(液体)を前記配管13aと前記配管13bに分岐して供給する供給配管13と、前記供給配管13の途中で前記殺菌室4の外部に設けられた温度計18と、前記回収配管14の途中で前記殺菌室4の外部に設けられた流量計16並びに温度計19と、前記回収配管15の途中で前記殺菌室4の外部に設けられた流量計17並びに温度計20と、これらの装置、システムを制御する制御装置25により構成されている。
【0027】
次に、本発明の実施の形態に係わる電子線殺菌装置1の電子線照射エネルギー量監視システム10の作用を説明する。
殺菌室4に搬送されてきた容器2が、前記回転円板6の回転により回転搬送されて、前記殺菌室4の壁部に設けられた電子線照射装置3の前方に達した時、該電子線照射装置3から電子線照射を受けて殺菌される際に、前記反射板11および反射板12は、前記電子線照射装置3から照射された電子線が周辺機器に不必要に照射されないようにするとともに、前記電子線照射装置3から照射された電子線を該反射板11および反射板12に反射させ、容器2に電子線を当てて殺菌する。この際、前記反射板11および反射板12に受けた電子線照射により該反射板11および反射板12が熱エネルギーを与えられて発熱する。
【0028】
前記温度計18により温度Ti℃を計測され、前記供給配管13aにより供給されてきた水は、前記反射板11内の管路を通過する際に、前記反射板11が受けた熱エネルギーにより温められて、前記回収配管14内では温度計19により温度T1o℃を、流量計16により流量Q1を計測されて矢印14fの方向に回収される。
同様に、前記温度計18により温度Ti℃を計測され、前記供給配管13bにより供給されてきた水は、前記反射板12内の管路を通過する際に、前記反射板12が受けた熱エネルギーにより温められて、前記回収配管15内では温度計20により温度T2o℃を、流量計17により流量Q2を計測されて矢印15fの方向に回収される。
【0029】
前記温度計18により計測された温度Ti℃、前記温度計19により計測された温度T1o℃、前記温度計20により計測された温度T2o℃、前記流量計16により計測された流量Q1、前記流量計17により計測された流量Q2の信号は、制御装置25に送られて、前記反射板11および反射板12が受ける単位時間当りの電子線照射エネルギー量が、それぞれE1=cxdxQ1x(T1o―Ti)、および、E2=cxdxQ2x(T2o―Ti)として制御装置25で演算される。なお、ここで、cおよびdは水(流体)の比熱および比重である。
【0030】
ここで、制御装置25には予めE1並びにE2をもとにしたエネルギー量の許容範囲が設定されていて、演算されたE1並びにE2をもとにしたエネルギー量が所定の許容範囲に入っていれば、反射板11並びに反射板12で受けた電子線照射による電子線照射エネルギー量が正常であると判断され、演算されたE1並びにE2をもとにしたエネルギー量が所定の許容範囲から外れていれば、反射板11並びに反射板12で受けた電子線照射による電子線照射エネルギー量が異常であると判断される。
前記容器2への電子線照射エネルギー量は、前記反射板11並びに反射板12が受けた電子線照射エネルギー量から等価換算して監視できるとともに、前記容器2への電子線照射エネルギー量のトレーサビリティを管理できる。
従来は、温度計等の計測器が殺菌室4内に設けられていたが、本発明によれば、計測器が殺菌室4の外部に設けられるので前記計測器が電子線照射を受けて故障、損傷するということはない。
【0031】
また、供給配管14および回収配管15の内断面積をD1およびD2とし、前記反射板11と前記温度計19、および、前記反射板12と前記温度計20の間の配管長さをL1およびL2とすると、前記反射板11で温められた水が前記反射板11から前記温度計19まで到達する時間t1、および、前記反射板12で温められた水が前記反射板12から前記温度計20まで到達する時間t2は、t1=D1xL1/Q1、および、t2=D2xL2/Q2となり、これらのt1およびt2を制御装置25で演算することにより、監視された電子線照射エネルギー量の対象容器2を特定することができる。
なお、ここで、D1とD2が同じである場合、L1とL2を同じ長さとしておけば、前記反射板11および前記反射板12に対応する電子線照射エネルギー量監視対象の容器2を同時に特定できる。
【0032】
さらに、電子線照射装置3の電流、電圧等の電子線出力量を制御装置25に取り込んで、前記E1および前記E2に加味すると、電子線照射装置3の電子線出力量の把握と前記反射板11並びに前記反射板12で受けた電子線照射エネルギー量の把握を互いにバックアップして、総合的に高度で確実な電子線照射エネルギー量監視ができる。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を図2に基づいて説明する。
図2は、本発明に係わる第2の実施の形態の電子線照射エネルギー量監視システムを摸式的に示した正面図で、一部断面図としてあり、図1に相当する図である。
図2において、第1の実施の形態と同じ構造のものは同じ記号を記してあり、重複する説明は省略する。
図において、電子線殺菌装置1aの電子線照射エネルギー量監視システム10aは、電子線照射を受けて殺菌される前記容器2の近傍の位置で、前記電子線照射装置3の電子線照射窓3wと前記容器2から見て反対側に対向して設けられた反射板11aおよび反射板12aと、前記反射板11aにその一端の蒸発部が一体に取り付けられたヒートパイプ21と、殺菌室4の外部に位置した該ヒートパイプ21の他端の凝縮部にブロック21aを介して設けられた前記反射板11aの温度を計測する温度計23と、前記反射板12aにその一端の蒸発部が一体に取り付けられたヒートパイプ22と、殺菌室4の外部に位置した該ヒートパイプ22の他端の凝縮部にブロック22aを介して設けられた前記反射板12aの温度を計測する温度計24と、これらの装置、システムを制御する制御装置25aにより構成されている。
【0034】
次に、本発明の実施の形態に係わる電子線殺菌装置1aの電子線照射エネルギー量監視システム10aの作用を説明する。
前記反射板11aおよび反射板12aが電子線照射を受けて温められると、反射板11aおよび反射板12aに一体に取り付けられているヒートパイプ21およびヒートパイプ22の熱移動作用によって、温められた反射板11aおよび反射板12aの温度が温度計23および温度計24により計測され、計測された温度の信号が制御装置25aに取り込まれて、前記反射板11aおよび反射板12aが受けた電子線照射エネルギー量が制御装置25aによって演算により求められ、これをもとに前記容器2への電子線照射エネルギー量を監視できるとともに、前記容器2への電子線照射エネルギー量のトレーサビリティを管理できる。
なお、上記説明では、ヒートパイプ21およびヒートパイプ22にブロック21aおよびブロック22aを介して温度計23および温度計24を設けた場合について説明したが、温度計の代わりに熱量計を設けることとしてもよい。
【0035】
このようにして、温度計等の計測器が、殺菌室4内に設けられることなく、殺菌室4の外部で反射板11a並びに反射板12aの温度を計測できるので、前記計測器が電子線照射を受けて故障、損傷するということはない。
また、ヒートパイプ21およびヒートパイプ22の熱移動の時間を予め調べておけば、監視された電子線照射エネルギー量の対象容器2を特定することができる。
さらに、ヒートパイプ21およびヒートパイプ22の長さを同じにしておく等の対応により、反射板11aおよび反射板12aに対応する電子線照射エネルギー量監視対象の容器2を同時に特定できる。
【0036】
なお、上記説明では、反射板を2個設ける場合について説明したが、反射板は1個でもよく、また、3個以上でもよく、容器の形状、目的等により必要な個数の反射板を選定できる。
【符号の説明】
【0037】
1、1a 電子線殺菌装置
2 容器
3 電子線照射装置
4 殺菌室
6 回転円板
7 グリッパ
10、10a 電子線照射エネルギー量監視システム
11、11a、12、12a 反射板
13、13a、13b 供給配管
14,15 回収配管
16、17 流量計
18、19、20 温度計
21、22 ヒートパイプ
23、24 温度計
25、25a 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌室内で容器等を電子線照射装置からの電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置から電子線照射を受ける容器近傍の位置に、その内部に液体が流通する管路を有する反射板を設置して、該反射板に前記管路へ液体を供給する供給配管および前記管路から液体を回収する回収配管を接続して、前記供給配管と前記回収配管の前記殺菌室外部の途中に液体の流量を計測する流量計並びに液体の温度を計測する温度計を設け、計測した前記液体の流量と温度をもとに前記反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする電子線照射エネルギー量監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板が複数個ある場合は、前記液体の流量計並びに温度計をそれぞれの反射板に対応するように設けて、前記複数個の反射板に対応して計測した前記液体の流量と温度をもとにそれぞれの反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする電子線照射エネルギー量監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記電子線照射エネルギー量を、前記計測した液体の流量、比重、比熱と、前記回収配管を通過する液体温度と前記供給配管を通過する液体温度との温度差をもとに演算するようにしたことを特徴とする電子線照射エネルギー量監視システム。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記計測した液体の流量と、前記回収配管の内断面積と、前記反射板から前記回収配管に設けた温度計までの配管長さから、前記反射板を通過した前記液体が前記温度計に達する時間を演算して、これをもとに前記温度計で前記液体の温度を計測している対象容器のタイミングを割り出して、前記電子線照射エネルギー量を求めた対象容器を特定できるように構成したことを特徴とする電子線照射エネルギー量監視システム。
【請求項5】
殺菌室内で容器等を電子線照射装置からの電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置から電子線照射を受ける容器近傍の位置に反射板を設置し、該反射板にその他端が前記殺菌室の外部まで延伸したヒートパイプの一端を一体に取り付け、該ヒートパイプの前記他端に前記反射板の温度或いは発熱量を計測する温度計或いは熱量計を設けて、計測した前記温度或いは発熱量をもとに前記反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする電子線照射エネルギー量監視システム。
【請求項6】
請求項5に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板が複数個ある場合は、前記温度計或いは熱量計をそれぞれの反射板に対応するように設けて、前記複数個の反射板に対応して計測した前記温度或いは発熱量をもとにそれぞれの反射板が受ける電子線照射エネルギー量を制御装置で演算して求めて、これをもとに前記容器への電子線照射エネルギー量を監視できるように構成したことを特徴とする電子線照射エネルギー量監視システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記反射板から前記温度計或いは熱量計までの前記ヒートパイプの長さをもとに、前記反射板の温度或いは発熱量が前記温度計或いは熱量計に達する時間を予め求めておいて、これをもとに前記温度計或いは熱量計で前記温度或いは発熱量を計測しているタイミングを割り出して、前記電子線照射エネルギー量を求めた対象容器を特定できるように構成したことを特徴とする電子線照射エネルギー量監視システム。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載する電子線照射エネルギー量監視システムにおいて、前記電子線照射装置の電子線出力量を前記制御装置に取り込んで、該電子線出力量を付加して、電子線照射エネルギー量を監視するように構成したことを特徴とする電子線照射エネルギー量監視システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−229622(P2011−229622A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101358(P2010−101358)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】