説明

電子線殺菌装置

【課題】電子線照射ユニットのメンテナンスを、樹脂製容器の搬送手段を収容したシールドチャンバーから切り離して行う装置を提供する。
【解決手段】シールドチャンバー10内に物品搬送手段20を収容し、この物品搬送手段20で搬送している樹脂製容器2に、シールドチャンバー10の開口部32aに連結した電子線照射ユニット34から電子線を照射して殺菌する。電子線照射ユニット34に着脱可能な調整用照射ボックス60を備え、このボックス60を照射ユニット34の照射窓18を覆う状態で装着する。照射ボックス60内に、照射窓16から照射された電子線を受ける受け部材66が設けられ、さらに、この受け部材66を冷却する冷却機構70とボックス60内の排気を行う排気機構72が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置によって搬送されている物品に電子線を照射して殺菌する電子線殺菌装置に係り、特に、電子線を照射する電子線照射ユニットのメンテナンスを行うための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子線殺菌装置は、一般に、外部から遮断された殺菌チャンバー内に、物品を連続的に搬送する物品搬送手段を配置するとともに、殺菌チャンバーに形成した開口部に、電子線照射ユニットの照射窓を臨ませて、これら殺菌チャンバーと電子線照射ユニットを連結し、物品搬送手段によって搬送されている物品に、照射窓を介して電子線照射ユニットからの電子線を照射して殺菌するようにしている。
【0003】
電子線を照射する電子線照射ユニットの照射窓には、チタン等の金属箔を装着してあり、このチタン膜等の取り替え作業などのメンテナンスを定期的に行う必要がある。このようなチタン膜の取り替え作業を行う場合には、単にチタン膜を交換するだけでなく。交換後に電子線照射ユニットのチャンバー内を真空状態にして、実際に電子線を照射して調整をしている。
【0004】
電子線を照射して調整を行う際には、X線の漏れを防止するために、生産時と同様に電子線照射ユニットの照射窓を無菌チャンバーの開口部に臨ませて電子線を照射する。このときに物品搬送装置を停止させたままで電子線の照射を行うと、搬送装置の一箇所に連続的に照射されることになり、過熱状態になり熱変形が起こる等の問題が発生するため、搬送装置を運転させながら電子線の照射を行うようにしている。照射窓のチタン膜を交換した後、電子線を照射しながら調整を行う作業は通常6〜7時間を要するため、その間搬送装置のメンテナンス等の他の作業を行うことができないため効率が悪いという問題があった。
【0005】
メンテナンス時における電子線照射により被照射物の品質を損なうことを防止するための技術がすでに提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された発明は、照射窓と電子線の照射を受ける被照射物との間に着脱可能な電子線遮蔽体を配置し、被照射物に直接電子線が到達しないようにしている。また、この特許文献1には、電子線遮蔽体が冷却機構を有することも記載されており、電子線を照射することによって発生する熱にも対応するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−153991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載された発明では、被照射物が通過する搬送路の処理ゾーン内に電子線遮蔽体を設置しているので、メンテナンスの終了後に取り外さなければならない。しかしながら、電子線を照射するとオゾンが発生するので、電子線遮蔽体を取り外す際に、内部に発生したオゾンを外部に漏らすことになり、作業環境に悪影響を及ぼすという問題が発生する。また、前記処理ゾーン内に電子線遮蔽体を設置するので、取り付けおよび取り外しの作業性が悪いという問題があった。さらに、電子線照射ユニットのメンテナンスを行っている間、被照射物の搬送装置のメンテナンスを行うことができないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、電子線の照射窓を有する電子線照射ユニットを備え、電子線を物品に照射してこの物品の殺菌を行う電子線殺菌装置において、前記照射窓を覆う状態で前記電子線照射ユニットに脱着可能な調整ボックスと、この調整ボックス内に配置され、照射される電子線を受ける受け部材と、前記調整ボックス内の雰囲気を外部へ排出する排気機構と、前記受け部材を冷却する冷却機構とを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記物品を搬送する物品搬送手段と、この物品搬送手段を収容した殺菌チャンバーとを備え、この殺菌チャンバーに形成された開口部に、前記電子線照射ユニットの照射窓を臨ませて配置する殺菌状態と、電子線照射ユニットを殺菌チャンバーから切り離して前記調整ボックスを取り付けるメンテナンス状態とに切り換え可能にしたことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記受け部材に電子線が照射された際に、前記受け部材に流れる電流値を計測する計測手段と、この計測手段の計測結果を所定値と比較する比較手段と、この比較手段による比較結果に基づいて電子線照射量が適正か否かを判定する判定手段とを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子線殺菌装置は、電子線照射ユニットの照射窓を覆うようにして調整ボックスを取り付け、照射された電子線をこの調整ボックス内に配置した電子線受け部材によって受けるようにしたので、生産運転時に電子線の照射を受ける搬送装置等が電子線の照射により過熱する等の影響を受けることがなく、また、電子線照射ユニットのメンテナンス中に、搬送装置等のメンテナンスやその他の作業を行うことが可能であり、作業効率が向上する。さらに、調整ボックスが排気機構を備えているので、電子線が照射された調整ボックス内の雰囲気を外部に漏らすおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る電子線殺菌装置の平面図である。(実施例1)
【図2】図2は電子線照射ユニットと調整ボックスとを連結した状態を示す縦断面図である。
【図3】図3は電子線照射ユニットと調整ボックスとを連結した状態を示す要部の横断面図である。
【図4】図4は第2の実施例に係る電子線殺菌装置の電子線照射ユニットと調整ボックスとを連結した状態を示す縦断面図である。(実施例2)
【図5】図5(a)は調整用照射ボックス内に設置される電子線受け部材の他の例を示し、(b)はこの電子線受け部材を調整用照射ボックス内に取り付けた状態を示す図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0013】
無菌チャンバー内に搬送手段が配置され、外部から導入された容器等の物品を搬送している。この無菌チャンバーの壁面に開口部が形成され、電子線照射ユニットの照射窓をこの開口部に臨ませて連結する。搬送手段によって搬送されている物品に対し、電子線照射ユニットから電子線を照射して殺菌を行う。電子線照射ユニットは、無菌チャンバーから分離できるようになっており、分離した状態で照射窓のチタン膜の交換作業等を行う。さらに、電子線照射ユニットの照射窓の周囲を覆う調整ボックスを、電子線照射ユニットに着脱できるようにしている。この調整ボックスには、電子線照射ユニットから照射窓を介して照射された電子線を受ける受け部材と、この電子線受け部材を冷却する冷却機構と、内部の雰囲気を外部へ排出する排気機構が設けられており、電子線照射ユニットのメンテナンスを行う際には、電子線照射ユニットの照射窓を覆うようにして調整ボックスを取り付けるようにしたので、電子線の照射ユニットのメンテナンス中に、無菌チャンバー内の搬送手段を駆動する必要がなく、別の作業を行うことを可能にするという目的を達成する。
【実施例1】
【0014】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。この実施例に係る電子線殺菌装置によって電子線が照射されて殺菌され、その後の工程で液体等の内容物が充填される容器はペットボトル等の樹脂製容器2(図1中に省略して図示する)である。この樹脂製容器2は、図示しないエア搬送コンベヤの支持レールによってネック部に形成されたフランジの下面側を支持され、背後からエアを吹き付けられて連続的にこの電子線殺菌装置まで搬送される。搬送された樹脂製容器2は導入チャンバー4内に搬入され、この導入チャンバー4内に配置された搬入ホイール6に引き渡される。
【0015】
前記導入チャンバー4内の搬入ホイール6には、円周方向等間隔で複数の容器保持手段8が設けられており、上流側のエア搬送コンベヤから引き渡された樹脂製容器2を受け取って回転搬送する。
【0016】
導入チャンバー4に続いて、樹脂製容器2を電子線の照射により殺菌する際に、電子線やX線(制動X線)が外部に漏れないように遮蔽する鉛製の壁面から成るシールドチャンバー10が設置されている。このシールドチャンバー10内は、供給ホイール12が配置されている入口側の供給室14と、供給ホイール12から受け取った樹脂製容器2を搬送して、後に説明する電子線照射装置16の電子線照射窓18の前方を移動させるロータリ式の容器搬送装置20が設けられたメイン室22と、電子線照射装置16から電子線の照射を受けて殺菌された樹脂製容器2を受け取って排出する排出ホイール24が設置された排出室26に区画されている。
【0017】
シールドチャンバー10の壁面の、前記導入チャンバー4の搬入ホイール6から供給室14内の供給ホイール12へ樹脂製容器2の受け渡しを行う部分には、樹脂製容器2が通過可能な開口10aが形成されている。導入チャンバー4の搬入ホイール6から樹脂製容器2を受け取った供給ホイール12は、メイン室22に設置された容器搬送装置20に樹脂製容器2を引き渡す。供給室14とメイン室22との間の仕切壁14aにも、樹脂製容器2の受け渡しが可能な開口(図示せず)が形成されている。メイン室22内に設置された容器搬送装置20は、容器保持手段として多数のグリッパ(図示を省略)が、回転体28の外周部に円周方向等間隔で設けられている。また、前記導入チャンバー4内に配置された搬入ホイール6の容器保持手段8から樹脂製容器2を受け取って、容器搬送装置20のグリッパに引き渡す供給ホイール12にも、円周方向等間隔で複数の容器保持手段30が設けられている。
【0018】
鉛製のシールドチャンバー10の一方の側壁(図1の上方の側壁32)に隣接して電子線照射装置16が配置されている。この電子線照射装置16は、樹脂製容器2に電子線を照射する照射ユニット34を備えており、載置台36上に載置されている。電子線照射装置16の構成は周知であるので図示および詳細な説明は省略するが、照射ユニット34内の真空中でフィラメントを加熱して熱電子を発生させ、高電圧によって電子を加速して高速の電子線ビームにしてから、照射窓18に取り付けたアルミ(Al)あるいはチタン(Ti)等の窓箔を通して大気中に取り出して被処理物(この実施例では樹脂製容器2)に電子線を当てて殺菌等の処理を行う装置である。
【0019】
この実施例では、電子線照射装置16を載置した載置台36はレール38上を移動可能になっており、モータ40の駆動によりシールドチャンバー10に対して接近、離隔させることができる。この実施例では、2本のレール38が、シールドチャンバー10の取り付け側の壁面32と直交する方向を向けて平行に配置されており、図2に示すように、電子線照射ユニット34の下面に取り付けた複数のスライダ42がこのレール38に係合し、電子線照射ユニット34がこれらレール38に沿って進退動する。この電子線殺菌装置を運転する際には、載置台36をシールドチャンバー10に接近させ、照射ユニット34の照射窓18をシールドチャンバー10の壁面32(図1の上方側の壁面)に形成された開口32aに合致させて、これら両者34、10を連結する。前記容器搬送装置20による搬送経路の、電子線照射装置16の照射窓18の前面側に電子線照射エリアAが設定され、容器グリッパに保持された樹脂製容器2は、上下に垂直な状態でこの電子線照射エリアAを通過し、電子線照射装置6から電子線の照射を受けて殺菌される。
【0020】
前記シールドチャンバー10と電子線照射装置16との接続部の構成について簡単に説明する。シールドチャンバー10の電子線照射装置16側の壁面32には、シールドチャンバー10内に電子線を照射するための長方形の開口32aが形成されており、この開口32aの外面側の周囲を囲んで突条部32bが設けられている。この突条部32bは、開口32aからやや外側に離れた位置に設けられており、突条部32bの開口32a側が電子線照射装置16の照射ユニット34との連結部になっている。
【0021】
一方、電子線照射装置16側は、前記照射窓18が長方形の窓枠34aにより電子線照射ユニット20から突出しており、この長方形の窓枠34aが突条部24bの内側の連結部に嵌り込むようになっている。窓枠34aの表面にはシール部材(図示を省略)が設けられており、窓枠34aを所定圧力で壁面32に押し付けることにより密封状態で連結することができる。このように照射窓18の窓枠34aをシールドチャンバー10の外側の壁面32に当接させ、突条部32bによりその周囲を覆うことで連結部分からのX線や電子線の漏洩を防止している。図1は、電子線照射ユニット34の照射窓18を、シールドチャンバー10の開口32aの外面側に接続した状態を示している。
【0022】
さらに、この実施例に係る電子線殺菌装置では、シールドチャンバー10の開口32aを閉鎖するための閉鎖手段44を備えている。この閉鎖手段44は、開口32aをシールドチャンバー10の内面側から覆うシャッター46と、このシャッター46を進退動させて開口32aを開閉するシャッター開閉手段としてのエアシリンダ48とを有している。エアシリンダ48は、前記壁面32の内面側に水平方向を向けて固定されており、このエアシリンダ48のピストンロッドの先端が、前記シャッター46の背面に連結されている。シャッター46と壁面32との間にはシール部材が設けられており、閉鎖時には密封できるようになっている。
【0023】
前記電子線照射ユニット34の照射窓18の前方側が、前述のように、樹脂製容器2に電子線を照射する電子線照射エリアAになっている。前記容器搬送装置20によって搬送されている樹脂製容器2が、この電子線照射エリアAを通過した位置付近から、壁面26aと天面(図示せず)によって囲まれた排出室26が形成されている。前記電子線照射エリアAで電子線の照射を受けた樹脂製容器2は、容器搬送装置20のグリッパからこの排出室26内に設置された排出ホイール24に引き渡される。この排出ホイール24には、円周方向等間隔で複数の容器保持手段50が設けられており、容器搬送装置20のグリッパによって保持されている樹脂製容器2が、この容器保持手段50によって取り出されて排出される。
【0024】
前記排出室26内の排出ホイール24は、容器搬送手段20から受け取った樹脂製容器2を、次の中間チャンバー52に設置された搬出ホイール54の容器保持手段56に引き渡して、図示しないフィラ、キャッパ等の下流側の工程に送る。シールドチャンバー10の壁面の、前記排出室26の排出ホイール24から中間チャンバー52内の搬出ホイール54へ樹脂製容器2の受け渡しを行う部分には、樹脂製容器2が通過可能な開口10bが形成されている。
【0025】
この実施例に係る電子線殺菌装置は、シールドチャンバー10と電子線照射装置16とが着脱可能になっており、生産運転時には、前述のようにシールドチャンバー10と電子線照射装置16とを連結した状態(図1参照)にしておくが、照射窓18の窓箔の交換等のメンテナンスを行う際には、電子線照射装置16を分離して、その照射窓18側に調整用照射ボックス60(図2および図3参照)を連結する。
【0026】
この調整用照射ボックス60は、照射窓18よりも縦横ともに大きい直方体形状をしており、照射窓18側に向ける前面が開放している。この前面の上下左右の壁面60a、60b、60c、60dの内側に、それぞれ、短い連結板60e、60f、60g、60hが固定されている。調整用照射ボックス60は、前記シールドチャンバー10と同様に、電子線やX線(制動X線)が外部に漏れないように遮蔽する鉛製の壁面から構成されている。一方、電子線照射装置16の照射ユニット34側には、調整用照射ボックス60に連結する連結枠62が設けられている。この連結枠62の先端部62a、62b、62c、62dは、調整用照射ボックス60の上下左右の壁面60a、60b、60c、60dの内側に挿入できるサイズの四角形状をしている。この先端部62a、62b、62c、62dにはシール部材64が取り付けられており、このシール部材64を調整用照射ボックス60の前記連結板60e、60f、60g、60hに圧接させてこれら電子線照射ユニット34と調整用照射ボックス60とを固定することにより、両者の連結部を密封して電子線が漏れることを防止できる。
【0027】
調整用照射ボックス60の内部には、電子線照射ユニット34から照射された電子線を受ける受け部材66が設けられている。この電子線受け部材66は、調整用照射ボックス60と電子線照射ユニット34とを連結した状態で、照射窓18の前面にこの照射窓18と平行するように配置されている。また、照射された電子線をすべて受けることができるように、照射窓18の縦横のサイズよりもやや大きいサイズを有している。なお、この実施例では、電子線照射ユニット34の照射窓18が横方向に分割されて2つになっており、電子線受け部材66はこの照射窓18全体に対向する幅を有している(図3参照)。電子線照射ユニット34から照射された電子線を受ける受け部材66には、その表面を冷却する冷却機構68が設けられている。この冷却機構68は、外部の配管70から導入された冷却水を流通させて(図2および図3の矢印方向に流れる)、電子線の照射により加熱した受け部材66の表面を冷却する。
【0028】
さらに、前記調整用照射ボックス60には、内部の雰囲気を外部に排出する排気機構72が設けられている。この排気機構72は、調整用照射ボックス60の壁面に取り付けられ、調整用照射ボックス60の内部に開口する排気管74と、この排気管74の逆側に接続された吸引手段(図示せず)とを備えている。
【0029】
以上の構成に係る電子線殺菌装置の作動について説明する。通常の生産運転を行う場合には、電子線照射装置16をシールドチャンバー10側に移動させて、シールドチャンバー10の連結部と、電子線照射ユニット34の照射窓18の窓枠34aを密着させてこれら両者を連結する(図1に示す状態)。図示しないエア搬送コンベヤによって搬送されてきた樹脂製容器2は、導入チャンバー4内に入り、搬入ホイール6の容器保持手段8に引き渡される。搬入ホイール6によって回転搬送された後、樹脂製容器2は、鉛製のシールドチャンバー10の供給室14内に設置された供給ホイール12に引き渡され、供給ホイール12の容器保持手段32に保持されて回転搬送されて、メイン室22内の容器搬送装置20のグリッパ(図示せず)に引き渡される。
【0030】
容器搬送装置20のグリッパに保持され、回転体28の回転に伴って回転搬送された樹脂製容器2は、電子線照射装置16に設けられた電子線照射ユニット34の照射窓18の前面側に位置する電子線照射エリアAに到達する。この電子線照射エリアAでは、電子線照射ユニット34の照射窓18から電子線が照射されており、容器搬送装置20に所定の間隔で設けられているグリッパにそれぞれ保持された樹脂製容器2に電子線が照射される。電子線が照射されて殺菌された樹脂製容器2は、容器搬送装置20のグリッパから排出ホイール24の容器保持手段50に受け渡され、さらに、次の中間チャンバー52に設置されている搬出ホイール54の容器保持手段56に受け渡されて、フィラ、キャッパ等の次の工程に送られる。
【0031】
前述のように電子線を照射する照射ユニット34は、照射窓18に装着しているチタン膜等の金属箔の取り替え作業を定期的にしなければならない。このときには、電子線照射装置16をモータ40の駆動によって後退させ、シールドチャンバー10から切り離す。これらシールドチャンバー10と電子線照射装置16とを切り離すときには、シールドチャンバー10の内面に設けてある閉鎖手段44のエアシリンダ48を作動させて、シャッター46をシールドチャンバー10の開口部32a上に移動させてこの開口部32aを閉鎖する。
【0032】
次に、電子線照射装置16の照射窓18に取り付けられているチタン膜を取り外して新しいチタン膜に交換する。その後、電子線照射ユニット34の調整を行うために、シールドチャンバー10から切り離した電子線照射装置16の電子線照射ユニット34に調整用照射ボックス60を連結する。このときには、調整用照射ボックス60の内側に設けられている取付板60e、60f、60g、60hに、電子線照射ユニット34の連結枠62の先端62a、62b、62c、62dに設けているシール部材64を押し付けて連結する。このように調整用照射ボックス60に連結した後、電子線照射ユニット34のチャンバー内を真空にして実際に電子線を照射して調整を行う。電子線照射ユニット34から照射窓18を介して照射された電子線は、調整用照射ボックス60内に設置された電子線受け部材66によって受けられる。この電子線受け部材66には冷却機構68が設けられており、過熱状態になることを防止している。さらに、内部の雰囲気を外部に排出する排気機構72が設けられているので、電子線を照射した際に発生したオゾンを外部に排出しており、調整作業の終了後調整用照射ボックス60と電子線照射ユニット34を分離した際に、オゾンが外部に漏れることがない。
【0033】
この実施例装置では、電子線照射ユニット34のメンテナンスを行う際に、電子線照射ユニット34をシールドチャンバー10から切り離しているが、このシールドチャンバー10と同様に鉛製の壁面から成る調整用照射ボックス60を、照射窓18の前面側に連結して密閉しているので、電子線やX線(制動X線)が外部に漏れることがない。また、内部に容器搬送装置20が設けられているシールドチャンバー10を電子線照射ユニット34から切り離しているので、容器搬送装置20側も独立して作業をすることができ、容器搬送装置20のメンテナンス作業などの他の作業を電子線照射ユニット34の作業と同時進行で進めることができる。さらに、シールドチャンバー10の開口部32aを閉鎖手段44によって閉鎖しているので、電子線照射ユニット34を使用しない生産にも対応することができる。
【実施例2】
【0034】
図4により第2の実施例に係る電子線殺菌装置について説明する。この実施例の電子線殺菌装置は、電子線照射ユニット34と、この照射ユニット34に連結されている調整用照射ボックス60の基本的構成が前記第1実施例と同様であり、この構成に、電子線照射ユニット34から照射される電子線量が正常であるか否かを検出する手段を備えたことを特徴とするものである。なお、前記第1実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてだけ説明する。この実施例では、電子線受け部材80を電流計測電極として使用して電子線の照射量を計測するようになっており、電子線受け部材80は、絶縁材からなる支持体82を介して絶縁した状態で照射ボックス60内に設置されている。この電子線受け部材80を接地するアース線84の途中に電流計測手段86が接続されており、電子線受け部材80に電子線照射ユニット34から電子線が照射されることにより、この電子線受け部材80からアースに流れる電流を計測するようになっている。
【0035】
前記電流計測手段86によって計測されて制御装置88に送られた電流値は、比較手段90によって、制御装置88に予め記憶されている基準値と比較される。この比較手段90による比較結果に基づいて、電子線照射ユニット34から照射された電子線の照射量が適正であるか否かを判定手段92が判定する。このように電子線受け部材80に照射された電子線に応じてアース側に流れる電流値を計測することにより、照射ユニット34による電子線の照射量が正常な範囲にあるか否かを確認することができる。
【実施例3】
【0036】
図5(a)、(b)は第3の実施例に係る電子線殺菌装置の調整用照射ボックス60を示す図であり、この実施例では、調整用照射ボックス60内に取り付けた電子線受け部材100の前面に、小さく区分した多数の線量フィルム102を装着できるようになっている。これら多数の線量フィルム102は人手により取り付け、取り外しを行う。このように線量フィルム102を全面に取り付けた電子線受け部材100を調整用照射ボックス60内に設置し、この照射ボックス60を電子線照射ユニット34に連結して、電子線照射ユニット34から電子線を照射する。
【0037】
電子線受け部材100に電子線を照射した後、線量フィルム102を一枚ずつ取り外して線量計測器(図示せず)によって線量を計測し、すべての線量フィルム102に所定の照射線量が得られたかをチェックする。すべての線量フィルム102が所定の線量に達していたら、電子線照射ユニット34の照射窓18全域が正常であると判断する。
【0038】
この実施例3の構成は、前記実施例2に示す構成によって、計測された電流から電子線の照射量が正常であると判定された後、照射ユニット34の照射窓18の全域が正常であるかどうかをチェックするために用いられる。この二段階の検査を行う場合には、前記図4に示す電子線受け部材80が設置された調整用照射ボックス60と、図5(a)、(b)に示すように多数の線量フィルム102が取り付けられた調整用照射ボックス60を別個に用意して順次配置してもよく、また、照射ボックス60内の電子線受け部材80、100を着脱可能とし、同じボックス60内に、図4に示す電子線受け部材80を設置して電流を測定した後、この電子線受け部材80を取り外して、図5(b)に示す電子線受け部材100を装着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
2 物品(樹脂製容器)
10 殺菌チャンバー(シールドチャンバー)
18 照射窓
20 物品搬送手段
34 電子線照射ユニット
60 調整ボックス
66 受け部材
68 冷却機構
72 排気機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線の照射窓を有する電子線照射ユニットを備え、電子線を物品に照射してこの物品の殺菌を行う電子線殺菌装置において、
前記照射窓を覆う状態で前記電子線照射ユニットに脱着可能な調整ボックスと、この調整ボックス内に配置され、照射される電子線を受ける受け部材と、前記調整ボックス内の雰囲気を外部へ排出する排気機構と、前記受け部材を冷却する冷却機構とを設けたことを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項2】
前記物品を搬送する物品搬送手段と、この物品搬送手段を収容した殺菌チャンバーとを備え、この殺菌チャンバーに形成された開口部に、前記電子線照射ユニットの照射窓を臨ませて配置する殺菌状態と、電子線照射ユニットを殺菌チャンバーから切り離して前記調整ボックスを取り付けるメンテナンス状態とに切り換え可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の電子線殺菌装置。
【請求項3】
前記受け部材に電子線が照射された際に、前記受け部材に流れる電流値を計測する計測手段と、この計測手段の計測結果を所定値と比較する比較手段と、この比較手段による比較結果に基づいて電子線照射量が適正か否かを判定する判定手段とを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子線殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−120780(P2012−120780A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275738(P2010−275738)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】