説明

電子線殺菌装置

【課題】簡素な構造でありつつ、容器の外周面に電子線照射を一様に且つ効率よく照射する。
【解決手段】外周部に円周等分に設けられた容器保持手段10で容器Pを保持して搬送する回転体2と、上流から搬送されてくる容器を容器保持手段に受渡し供給する容器受渡し供給装置と、回転体によって搬送される容器に電子線を照射して容器を殺菌する電子線照射装置と、電子線照射により殺菌された殺菌済容器を容器保持手段から下流に排出する容器受渡し排出装置と、容器保持手段10を回転支持し、容器保持手段10に保持された容器Pの軸心C1からオフセットされた回転軸心C2を持つ回転支持手段20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌室内で搬送される容器に電子線を照射することにより、容器を殺菌する電子線殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器が容器保持手段によって保持されて搬送される間に、電子線照射装置からの電子線照射を受けて殺菌される電子線照射装置は、既に公知となっており、各種の性能向上が図られている。(特許文献1および2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−296955号公報(図1〜図3)
【特許文献2】特開2009−132506号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子線照射装置で容器を殺菌するに当って、容器の断面形状が円形でなく、矩形等の複雑な形状でも容器の外周面を一様に殺菌すること、および、前記電子線照射装置から電子線を照射されている区間で容器を出来るだけ電子線照射窓に近づける等容器が電子線照射を有効に受けて殺菌性能を向上させることが要求されているとともに、殺菌済容器が未殺菌容器と混同しないようにする衛生面でのより高度な要求が出されるようになっている。
【0005】
前記特許文献1によれば、ボトル(容器)保持手段を、回転支持軸と、この回転支持軸の下端に取付けられたネックグリッパと、ネックグリッパを回転移動(公転)させる回転体と、ネックグリッパを自転させる回転手段を備えて、電子線照射装置の照射窓の前方をボトルが搬送されている間に、ボトルを回転手段によって回転させ、容器の外周面をむらなく完全に殺菌することができるとしている。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の技術では、保持する容器の中心軸線(軸心)と同一の軸心を有する回転支持軸により、容器を自転させるとしているので、容器の断面形状が円形の場合には容器の外周面をむらなく殺菌することができるが、容器の断面形状が長辺と短辺を有する矩形等の非円形の場合には、長辺側と短辺側で受ける電子線の照射量が異なり、むらなく(一様に)殺菌することができないという恐れがある。
さらに、排出室で殺菌済容器の搬送経路途中に未殺菌容器の排出部を設けているので、排出室のボトル保持手段が未殺菌容器を搬送することにより次の殺菌済容器が汚染されてしまうという恐れがある。
【0007】
また、前記特許文献2によれば、電子線殺菌装置において、外周部に円周等方向間隔でグリッパを設け、グリッパにボトル(容器)のネック部を保持して搬送する回転体に対して、グリッパを回転させる回転手段と、グリッパと電子線照射装置の照射面との距離を一定に保つ進退動手段を備えて、グリッパを半径方向に進退動させることにより、ボトルと電子線照射面との距離を一定に保って、効率よく電子線を照射してボトルの殺菌を行うとしている。
【0008】
しかしながら、前記特許文献2の技術では、グリッパの回転手段と進退動手段を別々の構成としているので、装置が複雑となり、装置コストが高価になるという恐れがある。
【0009】
本発明は、搬送されている容器に電子線を照射して容器を殺菌する電子線殺菌装置において、電子線照射装置から電子線を照射されている区間で、容器の外周面に電子線照射を一様に、かつ、効率よく受けられる簡素な構造で安価な装置コストの電子線殺菌装置、および、殺菌済容器が未殺菌容器に再汚染されない電子線殺菌装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題に対し、本発明は以下の手段により解決を図る。
(1)第1の手段の電子線殺菌装置は、外周部に円周等分に設けられた容器保持手段で容器を保持して搬送する回転体と、上流から搬送されてくる容器を前記容器保持手段に受渡し供給する容器受渡し供給装置と、前記回転体によって搬送される前記容器に電子線を照射して容器を殺菌する電子線照射装置と、前記電子線照射により殺菌された殺菌済容器を前記容器保持手段から下流に排出する容器受渡し排出装置を備えた電子線殺菌装置において、前記容器保持手段を回転支持し、前記容器保持手段に保持された容器の軸心からオフセットされた回転軸心を持つ回転支持手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
(2)第2の手段の電子線殺菌装置は、前記第1の手段の電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置の照射区間で前記容器が搬送される際に、前記電子線照射装置の電子線照射窓と照射対象の前記容器表面との距離を限りなく一定とするように、前記容器の軸心と前記回転支持手段の回転軸心とのオフセット量を設定する構成としたことを特徴とする。
【0012】
(3)第3の手段の電子線殺菌装置は、前記第1および第2の手段の電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置の照射区間で、前記容器保持手段に保持された前記容器を、前記回転支持手段によって回転の基準位置から180度または180度以上回転させながら搬送する構成としたことを特徴とする。
【0013】
(4)第4の手段の電子線殺菌装置は、前記第1から第3の手段の電子線殺菌装置において、前記電子線照射窓の近辺に設けた容器殺菌レベル検出手段によって未殺菌容器を検出した場合に、未殺菌容器検出信号を制御装置に取り込んで、該制御装置からの指令により、前記未殺菌容器が前記電子線照射装置の照射区間を過ぎてから前記容器受渡し排出装置に到るまでの区間内でリジェクトされるように、未殺菌容器リジェクト部を構成したことを特徴とする。
【0014】
(5)第5の手段の電子線殺菌装置は、前記第4の手段の電子線殺菌装置において、前記容器保持手段に保持された前記容器を、前記電子線照射装置から前記未殺菌容器リジェクト部に達するまでの区間で、更に回転させて合計360度回転させるように構成したことを特徴とする。
【0015】
(6)第6の手段の電子線殺菌装置は、前記第5の手段の電子線殺菌装置において、前記容器保持手段を、前記回転体の回転により前記容器受渡し排出装置から前記容器受渡し供給装置に到るまでの区間内で、前記回転支持手段によって360度逆回転させて回転の基準位置に戻すように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および2に係わる本発明は、外周部に円周等分に設けられた容器保持手段で容器を保持して搬送する回転体と、上流から搬送されてくる容器を前記容器保持手段に受渡し供給する容器受渡し供給装置と、前記回転体によって搬送される前記容器に電子線を照射して容器を殺菌する電子線照射装置と、前記電子線照射により殺菌された殺菌済容器を前記容器保持手段から下流に排出する容器受渡し排出装置を備えた電子線殺菌装置において、前記容器保持手段を回転支持し、前記容器保持手段に保持された容器の軸心からオフセットされた回転軸心を持つ回転支持手段を設け、また、前記電子線照射装置の照射区間で前記容器が搬送される際に、前記電子線照射装置の電子線照射窓と照射対象の前記容器表面との距離を限りなく一定とするように、前記容器の軸心と前記回転支持手段の回転軸心とのオフセット量を設定する構成としたことにより、前記軸心のオフセットによって、容器の断面形状が矩形等の非円形である場合には前記電子線照射窓と照射対象の前記容器表面との距離を限りなく一定にすることができ、効率的に容器の表面をむらなく電子線殺菌でき、また、容器の断面形状が円形の場合でも、電子線照射対象の容器表面を電子線照射窓に近づけることができ、これによって容器の電子線殺菌性能が向上できるという効果を有するとともに、これらの効果が簡素な構造で安価な装置コストによって実現できるという効果を有する。
【0017】
請求項3に係わる本発明は、前記請求項1および2に記載する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置の照射区間で、前記容器保持手段に保持された前記容器を、前記回転支持手段によって回転の基準位置から180度または180度以上回転させながら搬送する構成としたことにより、容器の断面形状が矩形等の非円形である場合には、容器の表面をむらなく電子線殺菌でき、また、容器の断面形状が円形の場合でも、前記180度または180度以上の回転の間に、容器の表面を電子線照射窓に近づけて電子線殺菌効果を向上させることができるという効果を有する。
【0018】
請求項4に係わる本発明は、前記請求項1から3に記載する電子線殺菌装置において、前記電子線照射窓の近辺に設けた容器殺菌レベル検出手段によって未殺菌容器を検出した場合に、未殺菌容器検出信号を制御装置に取り込んで、該制御装置からの指令により、前記未殺菌容器が前記電子線照射装置の照射区間を過ぎてから前記容器受渡し排出装置に到るまでの区間内でリジェクトされるように、未殺菌容器リジェクト部を構成したことにより、未殺菌容器の容器保持手段に殺菌済容器を保持させるということがなく、無菌の管理が万全となるという効果を有する。
【0019】
請求項5に係わる本発明は、前記請求項1から3に記載する電子線殺菌装置において、前記容器保持手段に保持された前記容器を、前記電子線照射装置から前記未殺菌容器リジェクト部に達するまでの区間で、更に回転させて合計360度回転させるように構成したことにより、前記容器保持手段の容器受渡し方向を基準方向にすることができるという効果を有する。
【0020】
請求項6に係わる本発明は、前記請求項5に記載する電子線殺菌装置において、前記容器保持手段に保持された前記容器を、前記電子線照射装置から前記未殺菌容器リジェクト部に達するまでの間に、更に回転させて合計360度回転させることにより、前記容器保持手段を回転の基準位置に戻すことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係わる電子線殺菌装置を示す平面図である。
【図2】図1のII−II断面図で、拡大図としてある。
【図3】図2のIII−III断面図で、要部を拡大した部分詳細図としてある。
【図4】本発明の実施の形態の作用を説明する図で、容器の断面形状が非円形の場合を示している。
【図5】本発明の実施の形態に係わる容器保持手段の平面図で、詳細図としてあり、容器保持のためにグリッパが閉じた状態を示す図である。
【図6】図5の容器保持手段のグリッパが開いた状態を示す図である。
【図7】図4に相当する図で、本発明の実施の形態の作用を説明する図であり、容器の断面形状が円形の場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
(発明の第1の実施の形態)
【0023】
本発明の実施の形態を図1から図7に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係わる電子線殺菌装置を示す平面図である。
図2は、図1のII−II断面図で、拡大図としてある。
図3は、図2のIII−III断面図で、要部を拡大した部分詳細図としてある。
図4は、本発明の実施の形態の作用を説明する図で、容器の断面形状が非円形の場合を示している。
図5は、本発明の実施の形態に係わる容器保持手段の平面図で、詳細図としてあり、容器保持のためにグリッパが閉じた状態を示す図である。
図6は、図5の容器保持手段のグリッパが開いた状態を示す図である。
図7は、図4に相当する図で、本発明の実施の形態の作用を説明する図であり、容器の断面形状が円形の場合を示している。
【0024】
図において、電子線殺菌装置1は、容器保持手段10と回転支持手段20を備えた回転体2と、電子線照射装置3と、容器受渡し供給装置(以下供給ホイールと称することがある)5と、容器受渡し排出装置(以下排出ホイールと称することがある)6と、殺菌室8と、未殺菌容器リジェクト部9と、制御装置30によって主に構成されている。
【0025】
上流からF1の方向へ供給されてくる容器Pは、入口室8f内の回転ホイール4によって矢印4aの方向に搬送されて、図示Sの位置で殺菌室8内の供給ホイール5に受渡され、矢印5aの方向に搬送されて、図示Aの位置で回転体2に備えられた容器保持手段10に受渡され、矢印2aの方向に搬送されながら、図示Cの区間で電子線照射装置3の電子線照射窓3sからの電子線照射を受けて殺菌された後、図示Bの位置で排出ホイール6に受渡され、矢印6aの方向に搬送されて、図示Tの位置で出口室8b内の回転ホイール7による矢印7aの方向の搬送を経て矢印F2の方向の後工程へ搬送されるようになっている。
【0026】
前記容器保持手段10は、図2に示すように、前記回転体2に付属のリング状板2rに備えられた回転支持手段20に支持される構成となっており、図2および図5に示すように、回転支持手段20の載置台21の所定の位置に取付けられたフレーム12の穴12tおよび穴12bに回転摺動自在に軸支された一対の軸13aおよび軸13bと一体形成されている一対のグリップ11aおよびグリップ11bの閉作用により、容器Pの鍔部Ptの内側の首部Pkを保持するようになっている。
【0027】
図5および図6に示すように、容器Pの首部Pkは、一対のグリップ11aおよびグリップ11bの先端部11anおよび先端部11bnが、前記一対の軸13aおよび軸13bと一体に取付けられているレバー16aおよびレバー16bが圧縮ばね17の作用により、閉状態となることによって保持されるようになっているとともに、前記軸13aと一体に取付けられているレバー15の先端部に取付けられた軸14pの周りを回転するローラ14が、制御装置30からの指令で作動する図示しない駆動機構により押しブロック32が押されることに伴って矢印32pの方向に移動し、前記レバー15を介して軸13aが回転して、前記一対のグリップ11aおよびグリップ11bに取付けられている一対のギヤ18aとギヤ18bの噛合いを介して、圧縮ばね17の作用に抗して前記一対のグリップ11aおよびグリップ11bの先端部11anおよび先端部11bnが開状態となることによって保持を解放されるようになっている。
【0028】
前記回転支持手段20は、図2に示すように、前記リング状板2rに取付けられた支持台22の穴に回転摺動自在に軸支され、前記載置台21と一体形成された軸23の先端部23sに取付けられたピニオンギヤ25pと、固定のリング状板1sに取付けられた溝カム29の溝部と係合しているカムフォロア28の移動によって回転体2の半径方向に移動するラックギヤ25gとの噛合いにより、前記ピニオンギヤ25pの回転を介して軸23が回転することによって、前記容器支持手段10を軸23の軸心C2の周りに回転させるようになっている。
なお、前記ラックギヤ25gは、回転体2の図示しないブラケットに取付けられた4箇所の軸27の周りを回転するローラ26によって上下方向の位置を規制されるとともに、回転体2の図示しない位置規制機構によって回転体2の半径方向(図示25aの方向)に移動するようになっている。
【0029】
図2に示すように、前記軸23の軸心C2は、前記容器保持手段10により保持された容器Pの軸心C1と距離eだけオフセットされている。
ここで、前記オフセットの距離eは、前記載置台21と前記フレーム12との取付け位置を容器Pの形状により選択することによって、必要な距離とすることができるようになっている。
【0030】
また、前記回転支持手段20は、図1に示すAの位置では、供給ホイール5から容器保持手段10へ容器Pを受渡しできるように、回転の基準位置に設定されており、回転体2による搬送によりCの区間に達する前までは前記基準位置のままとなり、前記Cの区間に達するとCの区間では、図3に示すように、前記カムフォロア28が、前記溝カム29の溝部のカム軌跡により、大径部29aから移行部29bを経て中間部29cへ、さらに、移行部29d、中間部29e、移行部29f、中間部29gへと移動する。なお、前記移行部29bは、後述するように、容器Pの表面Pcが前記電子線照射窓3sと平行になるように容器Pを回転するカム軌跡となっており、移行部29dおよび移行部29fは、容器Pをそれぞれ90度回転するようなカム軌跡となっている。
【0031】
前記カムフォロア28の前記大径部29aから中間部29gへの移動に伴って、前記ラックギヤ25gが矢印25aの方向に順次移動し、前記ラックギヤ25gと噛合っているピニオンギヤ25pが回転することにより、軸23、載置台21を介して、前記容器支持手段10が軸23の軸心C2の周りを回転することによって容器Pの軸心C1が軸心C2の周りを回転して、容器Pの断面が矩形である場合には、容器Pの電子線照射対象の表面は、前記Cの区間では、図4に示すように、電子線照射窓3sの表面から距離dにある直線d1に限りなく近づいた状態で搬送され、前記容器保持手段10が前記Cの区間で矢印Paのように合計180度以上(180度より少し多い角度)回転するようになっている。ここで、図4に示す軌跡23cは前記軸心C2の移動軌跡である。
【0032】
前記中間部29c、中間部29e、中間部29gは、径の変化が無いカム軌跡となっており、容器Pの電子線照射対象のそれぞれの表面Pc、表面Pe、表面Pgが図示二点鎖線の直線d1に沿う位置に保持されるようになっている。
また、図示29a1は溝カム29の大径部29aと同じ径を示しており、前記径の変化を分り易くするために図示したものである。
【0033】
図3に示すように、前記Cの区間を過ぎたDの区間では、前記溝カム29のカム軌跡が移行部29hのように変化しており、前記容器保持手段10は矢印Paの方向にさらに180度以下(180度より少し少ない角度)で回転して、前記Cの区間と前記Dの区間で合計360度回転するようになっている。
即ち、前記合計360度の回転で、前記容器保持手段10が回転の基準位置へ戻るようになっていて、前記一対のグリッパ11aおよびグリッパ11bの方向が容器保持手段10から容器Pを排出、および、容器保持手段10へ容器Pを供給できる方向となっている。
【0034】
なお、容器Pの底部近辺は、図2に示すように、図示しない取付け具に取付けられた反射板33が設けられており、電子線照射窓3sから照射される電子線が該反射板33に反射して容器Pの底部にも照射されるようになっている。
また、容器Pの鍔部Ptを含めた口部にも、同様に、図示しない反射板が設けられており、反射した電子線が容器Pの口部も照射されるようになっているが、本発明の技術思想を規制するものではないので、詳細な説明は省略する。
【0035】
前記電子線照射窓3sの近辺には、図1に示すように、電子線照射装置3によって殺菌された容器Pの殺菌レベルを検出する容器殺菌レベル検出手段31が設けられており、該容器殺菌レベル検出手段31によって検出された信号は制御装置30に送られるようになっている。
未殺菌であると検出された容器Pは、回転体2の回転により、図示Eの区間に達すると、制御装置30からの指令で作動する図示しない駆動機構により押しブロック32が押されることに伴ってローラ14が矢印32pの方向に移動し、前記レバー15を介して軸13aが回転して、前記一対のグリップ11aおよびグリップ11bに取付けられている一対のギヤ18aとギヤ18bの噛合いを介して、図6に示すように、圧縮ばね17の作用に抗して前記一対のグリップ11aおよびグリップ11bの先端部11anおよび先端部11bnが開状態となることによって、未殺菌容器リジェクト部9に排斥されるようになっている。
【0036】
前記電子線照射装置3によって正常に殺菌された容器Pは、回転体2の回転により、図示Bの位置に達すると、前記容器保持手段10から前記排出ホイール6に受渡し排出されるようになっている。
前記容器保持手段10は、回転体2が前記Bの位置からさらに回転して前記Aの位置に達するまでの区間内の図示Fの区間で、前記溝カム29の図示しないカム軌跡により、前記CおよびDの区間での合計360度回転の方向と逆方向に360度回転されて、前記回転の基準位置に戻されるようになっている。
【0037】
なお、上記説明では、前記回転支持手段20によって前記容器保持手段10を、前記Cの区間で合計180度以上回転し、前記Dの区間でさらに180度以下回転して合計360度の回転、前記Fの区間で逆回転の360度回転とした場合を説明したが、容器Pの形状および殺菌目的によっては、前記Cの区間で合計180度回転し、前記Dの区間でさらに180度回転して合計360度の回転、前記Fの区間で逆回転の360度回転としてもよく、また、図1のGの区間で180度以下の回転、前記Cの区間でさらに180度以上の回転をして合計360度の回転、前記Fの区間で逆回転の360度回転とするように、前記溝カム29のカム軌跡を構成することとしてもよく、何れの場合も前記一対のグリッパ11aおよびグリッパ11bの方向が容器保持手段10から容器Pを排出、および、容器保持手段10へ容器Pを供給できる方向となっている。
【0038】
また、容器Pの形状および殺菌目的によっては、前記中間部29c、中間部29e、中間部29gを設けなくてもよい場合があり、前記溝カム29のカム軌跡は、容器Pの形状、殺菌目的等によって選択することができる。
【0039】
次に、本発明の実施の形態に係わる電子線殺菌装置1の作用を説明する。
供給ホイール5から容器Pを受渡し供給された容器保持手段10が電子線照射窓3sの前面の図示Cの区間にくると、溝カム29の溝部のカム軌跡により、回転支持手段20のカムフォロア28が移動することに伴って、ラックギヤ25gが矢印25aの方向に移動し、前記ラックギヤ25gと噛合っているピニオンギヤ25pが回転して、軸23の軸心C2周りの回転を介して容器保持手段10が回転し、該容器保持手段10の一対のグリッパ11aおよびグリッパ11bに保持されている容器Pが回転する。
【0040】
この際、容器Pの軸心C1が前記軸23の軸心C2とオフセットされた状態となっているので、容器Pの断面形状が矩形等の非円形である場合(ここでは、図4に示すように、説明の便宜上矩形としている)に、前記オフセットの距離eを適宜に選択することによって、前記矩形の短辺と長辺の表面と前記電子線照射窓3sとの距離を一定にして、即ち、図4に示すPc,Pe、Pgの面が前記電子線照射窓3sから距離dの直線d1に沿うようにして容器Pを搬送することができる。
【0041】
また、前記Cの区間では、前記溝カム29を、前記大径部29aから移行部29bを経て中間部29cへ、さらに、移行部29d、中間部29e、移行部29f、中間部29gへと移動するカム軌跡としてあり、また、前記移行部29bは容器Pを図示Pcの面を直線d1に沿うように回転し、移行部29dおよび移行部29fは容器Pをそれぞれ90度回転するようなカム軌跡としてあり、さらに、前記中間部29c、中間部29e、中間部29gは、径の変化が無いカム軌跡としてあるので、容器Pを図示Pc,Pe、Pgの面が一時的に直線d1に沿うように保持して搬送することができ、殺菌性能を向上させることができる。
このようにして、容器Pの断面形状が矩形等の非円形である場合に、容器Pがむらなく電子線照射を受けて殺菌されることができる。
【0042】
また、上記説明では、殺菌対象の容器Pの断面形状を矩形等の非円形とした場合について説明したが、容器Pの断面形状が円形である場合について、図7を基に説明する。
図7に示すように、断面形状が円形の容器Pが、電子線照射区間であるCの区間で、軸心C2の周りに回転すると、図示Pp、図示Pq、図示Prのように電子線照射窓3sに近づいて移動することによって、容器Pの電子線照射対象の表面を前記電子線照射窓3sに近づけることができ、電子線照射をより強く受けるようにすることができるので、殺菌効率を向上させることができる。
このように、容器Pの断面形状が円形である場合においても、前記軸心C1と軸心C2のオフセットの作用により、容器Pの電子線殺菌性能を向上させることができる。
【0043】
また、電子線照射窓3sの近辺に容器殺菌レベル検出手段31を設けて、未殺菌容器を検出できるようにし、未殺菌容器を検出した場合に、電子線照射装置3と容器受渡し排出の位置Bとの間の未殺菌容器リジェクト部9で、制御装置30からの指令で未殺菌容器を排斥することができるので、未殺菌容器を保持していた容器保持手段10に殺菌済容器を保持させることがなく、衛生面で理想的な状態とすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 電子線殺菌装置
3 電子線照射装置
3s 電子線照射窓
5 容器受渡し供給装置(供給ホイール)
6 容器受渡し排出装置(排出ホイール)
8 殺菌室
9 未殺菌容器リジェクト部
10 容器保持手段
11a、11b グリッパ
12 フレーム
13a、13b 軸
14 ローラ
15 レバー
16a、16b レバー
17 圧縮ばね
20 回転支持手段
21 載置台
22 支持台
23 軸
25p ピニオンギヤ
25g ラックギヤ
28 カムフォロア
29 溝カム
30 制御装置
31 容器殺菌レベル検出手段
C1 (容器の)軸心
C2 (軸23の)軸心
e (軸心C1と軸心C2の)オフセット距離
P 容器
Pk (容器Pの)首部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に円周等分に設けられた容器保持手段で容器を保持して搬送する回転体と、上流から搬送されてくる容器を前記容器保持手段に受渡し供給する容器受渡し供給装置と、前記回転体によって搬送される前記容器に電子線を照射して容器を殺菌する電子線照射装置と、前記電子線照射により殺菌された殺菌済容器を前記容器保持手段から下流に排出する容器受渡し排出装置を備えた電子線殺菌装置において、前記容器保持手段を回転支持し、前記容器保持手段に保持された容器の軸心からオフセットされた回転軸心を持つ回転支持手段を設けたことを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置の照射区間で前記容器が搬送される際に、前記電子線照射装置の電子線照射窓と照射対象の前記容器表面との距離を限りなく一定とするように、前記容器の軸心と前記回転支持手段の回転軸心とのオフセット量を設定する構成としたことを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する電子線殺菌装置において、前記電子線照射装置の照射区間で、前記容器保持手段に保持された前記容器を、前記回転支持手段によって回転の基準位置から180度または180度以上回転させながら搬送する構成としたことを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載する電子線殺菌装置において、前記電子線照射窓の近辺に設けた容器殺菌レベル検出手段によって未殺菌容器を検出した場合に、未殺菌容器検出信号を制御装置に取り込んで、該制御装置からの指令により、前記未殺菌容器が前記電子線照射装置の照射区間を過ぎてから前記容器受渡し排出装置に到るまでの区間内でリジェクトされるように、未殺菌容器リジェクト部を構成したことを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項5】
請求項4に記載する電子線殺菌装置において、前記容器保持手段に保持された前記容器を、前記電子線照射装置から前記未殺菌容器リジェクト部に達するまでの区間で、更に回転させて合計360度回転させるように構成したことを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項6】
請求項5に記載する電子線殺菌装置において、前記容器保持手段を、前記回転体の回転により前記容器受渡し排出装置から前記容器受渡し供給装置に到るまでの区間内で、前記回転支持手段によって360度逆回転させて回転の基準位置に戻すように構成したことを特徴とする電子線殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−75452(P2012−75452A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220412(P2010−220412)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】