説明

電子線照射用アクリル系樹脂フィルム

【課題】電子線照射後の黄変が抑制された、且つ耐衝撃性や耐候性を改善した電子線照射用アクリル系樹脂フィルムの提供。
【解決手段】アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂、および紫外線吸収剤としてトリアジン化合物を含むアクリル系樹脂組成物を成形してなる電子線照射用アクリル系樹脂フィルム。アクリル系ゴム粒子(a)が、アクリル酸エステル50〜99.9重量%、共重合可能な他のビニル系単量体0〜49.9重量%および共重合可能な1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物(a−1)を重合してなる少なくとも一層のアクリル酸エステル系架橋弾性体5〜85重量部の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−2)を95〜15重量部共重合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線照射用アクリル系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム上に電子線照射を行いフィルム表面の表面架橋を実施したり、コーティング剤塗布した後に電子線照射を行うことで硬化させるケースがポリエチレンやPETフィルム等(例えば、特許文献1、2)で増えている。
【0003】
しかしながら、アクリル系樹脂フィルムは電子線照射後に黄色くなるために、電子線照射を実施することが出来ずに、電子線照射用途に好適なアクリル系樹脂フィルムが開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−41032公報
【特許文献2】特許第3614810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電子線照射後の黄変を抑制し、且つ耐衝撃性や耐候性を改善したアクリル樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定の紫外線吸収剤を配合することにより、アクリル樹脂ではこれまで困難であった、電子線照射後の黄変を抑制したアクリル系樹脂フィルムの作製に成功し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂、および紫外線吸収剤としてトリアジン化合物を含むアクリル系樹脂組成物を成形してなる、電子線照射用アクリル系樹脂フィルムである。
【0008】
上記アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂が、アクリル系ゴム粒子(a)5〜100重量%およびメタクリル系重合体(b)0〜95重量%からなり[(a)および(b)の合計量が100重量%]、
アクリル系ゴム粒子(a)が、アクリル酸エステル50〜99.9重量%、共重合可能な他のビニル系単量体0〜49.9重量%および共重合可能な1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物(a−1)を重合してなる少なくとも一層のアクリル酸エステル系架橋弾性体5〜85重量部の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−2)を95〜15重量部共重合してなる[(a−1)および(a−2)の合計量が100重量部]ものであり、
メタクリル系重合体(b)が、メタクリル酸アルキルエステル80〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を共重合してなるものであることが好ましい。
【0009】
上記紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系化合物を含まないことが好ましい。
【0010】
上記トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が、アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して1.5重量部以下であることが好ましい。
【0011】
上記電子線照射用アクリル系樹脂フィルムは、膜厚が30〜300μmであることが好ましい。
【0012】
上記電子線照射用アクリル系樹脂フィルムは、電子線量100kGy、電圧200kV、電流24mA、速度12m/min、照射幅500mm、照射雰囲気がN2の条件での電子線照射前後における、JIS K 7113に準拠し、透過光でC2光源、2度視野で測定するフィルムのb値の変化(電子線照射前のフィルムのb値−電子線照射後のフィルムのb値)が、−1.0〜+1.0の範囲であることが好ましい。
【0013】
上記電子線照射用アクリル系樹脂フィルムは、電子線照射(電子線量100kGy、電圧200kV、電流24mA、速度12m/min、照射幅500mm、照射雰囲気がN2)および耐候性試験(JIS A 1415、試験条件がブラックパネル温度:63℃ 雨あり(60分中12分スプレー)50%RH、550W/m2 at300〜800nm、試験時間が1000時間である)前後における、JIS K 7113に準拠し、透過光でC2光源、2度視野で測定するフィルムのb値の変化(電子線照射前のフィルムのb値−電子線照射し、更に耐候性試験実施後のフィルムのb値)が、−1.0〜+1.0の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアクリル系樹脂組成物によれば、電子線照射後の黄変が抑制され、かつ耐衝撃性および耐候性に優れたフィルムを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアクリル系樹脂組成物は、アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂(以下、単に「(メタ)アクリル系樹脂」と称することがある。)を含有する。得られるフィルムに、優れた耐折り曲げ割れ性、または、表面硬度が付与される。
【0016】
アクリル系ゴム粒子としては、アクリル酸エステル系架橋弾性体の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−2)を共重合して得られるものが好ましい。
【0017】
アクリル酸エステル系架橋弾性体は、アクリル酸エステルを主成分とした架橋弾性体である。より具体的には、アクリル酸エステル、必要に応じて共重合可能な他のビニル系単量体、および、共重合可能な1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体(以下、単に「多官能性単量体」を称することがある。)からなる単量体混合物(a−1)を重合させてなるものを好ましく使用できる。単量体混合物(a−1)を全部混合(1段重合)して重合してもよく、また、単量体混合物(a−1)の組成を変化させて2回以上(2段重合以上)に分けて重合してもよい。
【0018】
アクリル酸エステル系架橋弾性体におけるアクリル酸エステルとしては、重合性やコストの点より、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数1〜12のものがより好ましい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
アクリル酸エステル系架橋弾性体におけるアクリル酸エステル量は、単量体混合物(a−1)100重量%において50〜99.9重量%が好ましく、70〜99.9重量%がより好ましく、80〜99.9重量%が最も好ましい。アクリル酸エステル量が50重量%未満では、耐衝撃性が低下し、引張破断時の伸びが低下し、フィルム切断時にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0020】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸エステル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド等のアクリル酸アルキルエステル誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル誘導体等があげられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうちでも、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステルが好ましい。より好ましくはメタクリル酸アルキルエステルであり、アルキル基の炭素数が1〜12であるものがさらに好ましい。メタクリル酸エステルは直鎖状でもよいし分岐状でもよい。
【0021】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における共重合可能な他のビニル系単量体の量は、単量体混合物(a−1)100重量%において0〜49.9重量%が好ましく、0〜30重量%がより好ましく、0〜20重量%が最も好ましい。他のビニル系単量体の量が49.9重量%を超えると、耐衝撃性が低下し、引張破断時の伸びが低下し、フィルム切断時にクラックが発生しやすくなる場合がある。
【0022】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における共重合可能な1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体としては、通常使用されるものでよく、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、テトロメチロールメタンテトラメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートおよびこれらのアクリレート類などを使用することができる。これらの多官能性単量体は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における共重合可能な1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体の量は、アクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径と共に、応力白化、引張破断時の伸びあるいは透明性に大きく影響する。
【0024】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における多官能性単量体の配合量は、単量体混合物(a−1)100重量%において0.1〜10重量%が好ましく、1.0〜4重量%がより好ましい。多官能性単量体の配合量が0.1〜10重量%であれば、耐折り曲げ割れ性、および成形時における樹脂の流動性の観点から好ましい。
【0025】
アクリル系ゴム粒子は、アクリル酸エステル系架橋弾性体の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−2)を共重合させて得られるものが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステル系架橋弾性体5〜85重量部の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−2)95〜15重量部を少なくとも1段階以上で共重合させることにより得られるものである。ただし、アクリル酸エステル系架橋弾性体(単量体混合物(a−1))および単量体混合物(a−2)の合計量が100重量部を満たすものとする。
【0026】
単量体混合物(a−2)中のメタクリル酸エステルの配合量は、硬度、剛性の点で、80重量%以上が好ましく、85重量%がより好ましく、90重量%がさらに好ましい。
【0027】
共重合可能な他のビニル系単量体としては、上記アクリル酸エステル系架橋弾性体に使用したものや、アルキル基の炭素数が1〜12であるアクリル酸アルキルエステルが使用可能である。具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられる。これらの単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
この際、単量体混合物(a−2)(グラフト共重合組成)においては、アクリル酸エステル系架橋弾性体にグラフト反応せずに、未グラフトの重合体となる成分(フリーポリマー)が生じる。この成分(フリーポリマー)は、(メタ)アクリル系樹脂の一部を構成するものとして使用できる。
【0029】
アクリル系ゴム粒子の一部[アクリル酸エステル系架橋弾性体およびグラフトされた(a−2)]は、メチルエチルケトンに不溶となる。
【0030】
アクリル酸エステル系架橋弾性体に対するグラフト率は、30〜250%が好ましく、50〜230%がより好ましく、70〜220%がさらに好ましい。グラフト率が30%未満では透明性が低下したり、引張破断時の伸びが低下してフィルム切断時にクラックが発生しやすくなる傾向がある。250%超では、フィルム成形時の溶融粘度が高くなりフィルムの成形性が低下する傾向がある。
【0031】
アクリル系ゴム粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能であるが、乳化重合法が特に好ましい。
【0032】
アクリル系ゴム粒子の平均粒子径は、40nm超300nm以下が好ましく、40nm超250nm以下がより好ましく、40nm超150nm以下がさらに好ましい。アクリル系ゴム粒子の平均粒子径が40nm以下では、フィルムの耐衝撃性および耐折曲げ割れ性が低下する傾向がある。300nmを超えるとフィルムの透明性が低下する傾向にある。ここでのアクリル系ゴム粒子の平均粒子径は、日機装株式会社製 Microtrac粒度分布測定装置MT3000を使用し、ラテックス状態で光散乱法を用いて測定した値である。
【0033】
アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂中のアクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径d(nm)と、アクリル酸エステル系架橋弾性体に用いられる多官能性単量体の量w(重量%)とは、引張破断時の伸び、あるいは透明性に大きく影響する為、関係式:0.01d≦w≦0.06dを満たすものであることが好ましく、0.015d≦w≦0.05dを満たすものであることがより好ましい。多官能性単量体の量wが、上記範囲であれば耐衝撃性が低下し難い、引張破断時の伸びが低下し難くフィルム切断時にクラックが生じ難い、透明性が低下し難い、フィルム成形性が良好といった利点を奏する。
【0034】
アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂中のアクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径dは40〜200nmが好ましく、40〜160nmがより好ましい。アクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径dが40nm以上であれば、耐衝撃性および引張破断時の伸びが低下しにくく、フィルム切断時にクラックが生じにくくなり、200nm以下であれば、透明性を確保することができるため、好ましい。
【0035】
アクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径dは、得られるフィルムから凍結超薄切片法により試料調整した後、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 JEM1200EX)を用いて、加速電圧80kVにて40000倍で観察した写真を基に測定した値である。
【0036】
アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の還元粘度は0.2〜0.8dl/gが好ましく、0.2〜0.7dl/gがより好ましく、0.2〜0.6dl/gがさらに好ましい。上記範囲であれば、得られるフィルムの引張破断時の伸びが低下し難くフィルムを切断する際にクラックが発生し難い。またフィルムの成形性が良好といった利点を有する。
【0037】
ここでのメチルエチルケトン可溶分の還元粘度は、アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた後、ISO1628−1に基づき、標準粘度管を使用し、25℃の恒温室にて溶液、溶媒の流下時間を測定し、これらの値と溶液濃度を用いて算出した値である。
【0038】
アクリル酸エステル系架橋弾性体の重合における開始剤としては、公知の有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの開始剤を使用することができる。具体的には、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパ−オキサイド、スクシン酸パ−オキサイド、パ−オキシマレイン酸t−ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ホルムアルデヒドスルホキシ酸ソーダ、還元糖、アスコルビン酸等の有機系過酸化物や、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、2価の鉄塩等の無機系過酸化物、さらにアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物も使用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムの錯体などの還元剤と組み合わせた通常のレドックス型開始剤として使用してもよい。
【0039】
これらの中でも、重合安定性、粒子径制御の点から、2価の鉄塩等の無機系還元剤および/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ソーダ、還元糖、アスコルビン酸等の有機系還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤を使用するのが好ましい。
【0040】
有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法など、公知の添加法で添加することができる。透明性の点から、単量体に混合して添加する方法あるいは乳化剤水溶液に分散させて添加する方法が好ましい。
【0041】
乳化重合に使用される界面活性剤にも特に限定はなく、通常の乳化重合用の界面活性剤であれば使用することができる。例えば、アルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に要すれば、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
【0042】
得られたアクリル系ゴム粒子ラテックスは、通常の凝固、洗浄および乾燥の操作により、または、スプレ−乾燥、凍結乾燥などによる処理により、分離、回収される。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂には、メタクリル系重合体を含有させてもよい。
【0044】
(メタ)アクリル系樹脂には、それぞれ重合して得られたアクリル系ゴム粒子とメタクリル系重合体とをラテックス状あるいはパウダー、ビーズ、ペレット等の形態で混合して得たものを使用出来る。
【0045】
(メタ)アクリル系樹脂には、同一の反応機でアクリル系ゴム粒子を製造した後、メタクリル系重合体を続けて製造したものも使用出来る。
【0046】
メタクリル系重合体は、メタクリル酸エステル系重合体、またはメタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体との共重合体を使用出来る。好ましくは、メタクリル酸エステルを80〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を共重合してなるものを使用出来る。
【0047】
得られるフィルムの硬度、剛性の観点から、メタクリル酸エステルの配合量は85重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
【0048】
上記メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、容易に入手できる点で、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0049】
メタクリル系重合体における共重合可能な他のビニル系単量体としては、前記アクリル系ゴム粒子に使用したものがあげられる。これらの単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
メタクリル系重合体を、アクリル系ゴム粒子と別個に重合することも可能である。その場合も重合方法は特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能である。
【0051】
メタクリル系重合体の重合における開始剤としては、上述したアクリル酸エステル系架橋弾性体の重合における開始剤と同様の、公知の有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの開始剤を使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法など、公知の添加法で添加することができるが、透明性の点から、単量体に混合して添加する方法が好ましい。
【0053】
懸濁重合に使用される分散剤としては、一般的に懸濁重合に用いられる分散剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の高分子分散剤、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機塩があげられる。難水溶性無機塩を用いる場合には、α−オレフィンスルフォン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン性界面活性剤を併用すると、分散安定性が増すので効果的である。また、これらの分散剤は得られる樹脂粒子の粒子径を調整するために、重合中に1回以上追加することもある。
【0054】
アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂中のアクリル系ゴム粒子の含有量は、5〜100重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましく、10〜40重量%がさらに好ましい。アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂が、アクリル系ゴム粒子およびメタクリル系重合体からなる樹脂組成物である場合は、アクリル系ゴム粒子およびメタクリル系重合体の合計量が100重量%であるものとする。アクリル系ゴム粒子の含有量が5重量%以上であれば、得られるフィルムの引張破断時の伸びが低下し難く、フィルムを切断する際にクラックが発生し難くなる傾向がある。5〜45重量%では、さらに得られるフィルムの硬度、剛性が良好となる傾向がある。
【0055】
本発明においては紫外線吸収剤としてトリアジン系化合物を配合する。トリアジン系紫外線吸収剤であれば電子線照射後の構造変化が小さく黄味を示すb値の変化が小さいアクリル系樹脂フィルムを得ることが出来る。
【0056】
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル]− 1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル) −6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられ、市販品ではチヌビン1577(チバ・ジャパン株式会社)などが挙げられる。
【0057】
市販のトリアジン系紫外線吸収剤としては、チヌビン1577(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)が特に好ましい。
【0058】
本発明のアクリル系樹脂組成物には、トリアジン系以外のベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を併用しても良いが、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の併用は電子線照射後に黄変しやすくなる為に好ましくない。
【0059】
本発明の紫外線吸収剤の使用量は、(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して1.5重量部以下が好ましく、より好ましくは1重量部以下であり、最も好ましくは0.6重量部以下である。好ましい下限値は0.05重量部である。0.05重量部より小さいと、紫外線吸収性能が低下し、耐候性が不十分になる場合がある。一方、1.5重量部より多いと電子線照射後の黄変が大きくなり、b値の変化が大きくなる場合があることから好ましくない。
【0060】
本発明においては、ヒンダードアミン系光安定剤を添加してもよい。ヒンダードアミン系光安定剤としては、公知のものを使用でき、例えば、テトラキス(1,2,2 , 6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートなどが挙げられる。単独または2種以上併用して使用しても良い。
【0061】
本発明においては、ヒンダードアミン系光安定剤の使用量は、(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、1.0重量部以下が好ましく、より好ましくは0.6重量部以下である。1.0重量部より大きいとフィルムの押出成形時に揮発分としてチルロールや周辺機械に付着することから好ましくない。本発明においてヒンダードアミン系光安定剤の重量平均分子量は、特に限定されない。
【0062】
本発明のアクリル系樹脂組成物には、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、ラジカルトラップ剤、触媒、可塑剤、収縮防止剤、抗菌・脱臭剤、光拡散剤、艶消しビーズ、艶消し架橋粒子を、単独または2種類以上組み合わせて、本発明の目的が損なわれない範囲で添加してもよい。
【0063】
本発明のアクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、MS樹脂などを配合してもよい。
【0064】
本発明のアクリル系樹脂組成物を成形することによって得られる。アクリル系樹脂フィルムは電子線照射用に好適である。本発明のアクリル系樹脂フィルムに電子線照射することで、フィルムの表面状態が変化し、表面硬度の向上による傷付き性の改善や、濡れやすくなることで材料に限定されずに塗料やコーティング剤を塗布することが可能となる。また電子線硬化タイプの塗料やコーティング剤をフィルムの表面に塗布することで、紫外線硬化タイプや熱硬化タイプとは異なり、高い生産加工性や表面硬度、耐溶剤性、真空成形加工性、熱加工性、耐汚染性、耐水性などの性能を得ることが可能である。本発明の電子線照射用アクリル系樹脂フィルムに電子線照射する際は、電子線量はフィルム表面やコーティング剤の表面の性能を改善出来る範囲であれば、出来る限り小さい方がフィルムのb値の変化(JIS K 7113)を抑制出来ることから好ましい。照射雰囲気は窒素等の不活性ガスで充満させることがフィルムのb値の変化(JIS K 7113)を抑制する観点から好ましい。
【0065】
本発明の電子線照射用アクリル系樹脂フィルムは、一般的なフィルムの成形方法により製造することが可能であり、例えば、押出機の先端に取り付けたTダイ等からフィルム状に溶融押出して製造する方法やカレンダー成形法やインフレーション成形法が挙げられる。使用する押出機としては、単軸押出機、2軸押出機のどちらを用いても良い。ただし、2軸押出機を使用する場合には、吐出量制御の為に、定量フィーダーを使用して原料樹脂を供給することが好ましく、樹脂圧力制御、製膜精度の点から、押出機とダイスとの間にギアポンプを介して樹脂を押し出すことが好ましい。
【0066】
必要に応じて、フィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、特にガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能であり、目的に応じて、多層押出やラミネーション、コーティング、コロナ処理、UV処理、蒸着処理、一軸延伸、二軸延伸などによるフィルムの改質も可能である。
【0067】
本発明のアクリル系樹脂フィルムの厚さは、好ましくは30〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。30μm未満または300μmより大きいとフィルム成形性が悪くなる傾向がある。
【0068】
本発明の電子照射用アクリル系樹脂フィルムは、電子線照射前後における、JIS K 7113に基づくフィルムのb値の変化(電子線照射前のフィルムのb値−電子線照射後のフィルムのb値)が、−1.0〜+1.0の範囲であることが好ましい。ここで、電子線照射は、電子線量100kGy、電圧200kV、電流24mA、速度12m/min、照射幅500mm、照射雰囲気がN2を条件とする。フィルムのb値の測定は、JIS K 7113に準拠し、透過光でC2光源、2度視野での測定値である。
【0069】
本発明の電子線照射用アクリル系樹脂フィルムは、上記電子線照射後、更に耐候性試験を経たフィルムのb値の変化(電子線照射前のフィルムのb値−電子線照射し、更に耐候性試験実施後のフィルムのb値)が、−1.0〜+1.0の範囲であることが好ましく、−0.9〜+0.9の範囲がより好ましい。ここでいう耐候性試験は、JIS A 1415に準拠し、試験条件をブラックパネル温度:63℃ 雨あり(60分中12分スプレー)50%RH、550W/m2 at300〜800nmにして、1000時間、雨と光に暴露させることである。フィルムのb値の測定は、上記と同様である。
【0070】
本発明の電子線照射用アクリル系樹脂フィルムは、自動車内装材、自動車外装材などの塗装の代替に用いられる着色フィルム;窓枠、浴室設備、壁紙、床材などの建材用の着色フィルム;日用雑貨品、家具や電気機器のハウジング、ファクシミリなどのOA機器のハウジング、電気または電子装置の部品、道路標識や看板などの再帰性反射シートなどとして利用され得る。このフィルムを含む積層体としては、携帯電話窓や筐体、パソコン筐体やキーボード、家電筐体、自動車内装、自動車外装、偏光子保護フィルム、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、光学レンズ、光ファイバ、光ディスク、液晶用導光板、液晶用フィルム、滅菌処理の必要な医療用品、電子レンジ調理容器、家電製品のハウジング、玩具またはレクリエーション用の製品が挙げられる。
【実施例】
【0071】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
下記製造例、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0073】
なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法は、次のとおりである。
【0074】
(加工性:カッター試験)
得られたフィルムをカッターで直線に切ったときに、切断面からの割れの個数をみた。割れの個数が多い場合、割れのために所望の形に切断することができなくなることがある。加工性の指標の一つとして一般的に用いられる方法である。
【0075】
(耐候性試験)
電子線照射後のフィルムを、テフロン(登録商標)シートを下地としてアルミテープで固定し、下記の条件で試験を実施した。実施時間は、実施例、比較例では1000時間とした。
試験方法:JIS A 1415
試験装置:WS型 サンシャインカーボンアーク燈を用いるもの。
試験機:スガ試験機サンシャインウェザーメーター WEL−SUN−DCH−B型
試験条件:ブラックパネル温度:63℃ 雨あり(60分中12分スプレー)50%RH、550W/m2 at300〜800nm、
試験時間:1000時間
【0076】
(色差の測定法)
得られたフィルム(電子線照射前のフィルム)、電子線照射後のフィルム、及び電子線照射および耐候性試験後のフィルムの色差(b値)を、JIS K 7113に準拠し、透過光でC2光源、2度視野で測定した。測定には、日本電色工業株式会社製 分光色差計SE2000を使用した。
電子線照射後のb値の変化を次式から算出した。
電子線照射後のb値の変化=(電子線照射前のフィルムのb値−電子線照射後のフィルムのb値)
電子線照射および耐候性試験実施後のb値の変化(単に、「耐候性試験実施後のb値の変化」と称することがある)を次式から算出した。
電子線照射および耐候性試験実施後のb値=(電子線照射前のフィルムのb値−電子線照射し、更に耐候性試験後のフィルムのb値)
【0077】
(電子線照射)
得られたフィルムに対し、電子線量100kGy、電圧200kV、電流24mA、速度12m/min、照射幅500mm、照射雰囲気をN2の条件で電子線照射した。
【0078】
(アクリル樹脂組成物の作製)
<アクリル系ゴム粒子(a1−1)>
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.25部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.006部
硫酸第一鉄 0.00015部
【0079】
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、メタクリル酸メチル(MMA)3部、アクリル酸ブチル(BA)27部、アリルメタクリレート(AlMA)0.4部、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.02部の混合物を15部/時間の割合で連続的に添加し、重合させた。添加終了後1時間重合を継続し、重合の転換率98%としアクリル酸エステル系架橋弾性体を得た。
【0080】
その後、MMA63部、BA7部、ターシャリードデシルメルカプタン(t−DM)0.2部、CHP0.3部の混合物を10部/時間の割合で連続的に添加して重合させ、さらに、1時間重合を継続し、重合転換率を98%以上にして、アクリル系ゴム粒子(a1−1)のラテックスを得た。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥してアクリル系ゴム粒子の樹脂粉末(a1−1)を得た。
【0081】
<メタクリル系重合体(a1−2)>
メタクリル系重合体(a1−2)として、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(住友化学(株)製、スミペックスLG、ペレット状物)を使用した。
【0082】
(実施例1〜8、比較例1〜8)
上記の如く得られたアクリル系ゴム粒子(a1−1)、メタクリル系重合体(a1−2)、トリアジン系紫外線吸収剤、各種添加剤を、ヘンシェルミキサーを用いて表1に示す配合割合で混合し、アクリル系樹脂組成物を作製した。
【0083】
シリンダ温度を200℃〜260℃に温度調整した40mmφ単軸押出機(大阪精機工作(株)製)を使用し、スクリュー回転数90rpm、吐出量15kg/時間にて、得られたアクリル系樹脂組成物を溶融混練し、ストランド状に引き取り、水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて切断して、アクリル系樹脂の樹脂ペレットを製造した。
【0084】
アクリル系樹脂の樹脂ペレットを5時間以上80℃で乾燥させた後、シリンダー温度を165〜260℃、ダイス温度を240〜260℃に温度調整した、フィルムダイを有する40mmφ単軸押出機を使用し、実施例および比較例記載の厚さに調整したフィルムを作製した。
【0085】
得られたフィルムの加工性、電子線照射後のb値の変化、耐候性試験後のb値の変化を上記方法により評価した。これらの結果を表1〜2に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
使用したUVA(紫外線吸収剤)は次のとおりである。
B−1:チヌビン1577 紫外線吸収剤(トリアジン系) チバ・ジャパン製
B−2:チヌビン234 紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) チバ・ジャパン製
B−3:LA−31 紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) アデカ製
使用したHALS(ヒンダードアミン光安定剤)は次のとおりである。
チヌビン144 ヒンダードアミン光安定剤 重量平均分子量 約685g/モル チバ・ジャパン製
【0089】
比較例1〜8のフィルムは、電子線照射後のb値の変化が大きく、中でも比較例8のフィルムはフィルム加工時に割れが多発して加工性が低いのに対し、実施例1〜8に示されるとおり、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、電子線照射後のb値の変化、および耐候性試験後のb値の変化がともに小さく、さらに加工性にも優れることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂、および紫外線吸収剤としてトリアジン化合物を含むアクリル系樹脂組成物を成形してなる、電子線照射用アクリル系樹脂フィルム。
【請求項2】
アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂が、アクリル系ゴム粒子(a)5〜100重量%およびメタクリル系重合体(b)0〜95重量%からなり[(a)および(b)の合計量が100重量%]、
アクリル系ゴム粒子(a)が、アクリル酸エステル50〜99.9重量%、共重合可能な他のビニル系単量体0〜49.9重量%および共重合可能な1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物(a−1)を重合してなる少なくとも一層のアクリル酸エステル系架橋弾性体5〜85重量部の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−2)を95〜15重量部共重合してなる[(a−1)および(a−2)の合計量が100重量部]ものであり、
メタクリル系重合体(b)が、メタクリル酸アルキルエステル80〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を共重合してなるものである、
請求項1記載の電子線照射用アクリル系樹脂フィルム。
【請求項3】
紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系化合物を含まない、請求項1または2記載の電子線照射用アクリル系樹脂フィルム。
【請求項4】
トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が、アクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して1.5重量部以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の電子線照射用アクリル系樹脂フィルム。
【請求項5】
膜厚が30〜300μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の電子線照射用アクリル系樹脂フィルム。
【請求項6】
電子線量100kGy、電圧200kV、電流24mA、速度12m/min、照射幅500mm、照射雰囲気がN2の条件での電子線照射前後における、JIS K 7113に準拠し、透過光でC2光源、2度視野で測定するフィルムのb値の変化(電子線照射前のフィルムのb値−電子線照射後のフィルムのb値)が、−1.0〜+1.0の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の電子線照射用アクリル系樹脂フィルム。
【請求項7】
電子線照射(電子線量100kGy、電圧200kV、電流24mA、速度12m/min、照射幅500mm、照射雰囲気がN2)および耐候性試験(JIS A 1415、試験条件がブラックパネル温度:63℃ 雨あり(60分中12分スプレー)50%RH、550W/m2 at300〜800nm、試験時間が1000時間である)前後における、JIS K 7113に準拠し、透過光でC2光源、2度視野で測定するフィルムのb値の変化(電子線照射前のフィルムのb値−電子線照射し、更に耐候性試験実施後のフィルムのb値)が、−1.0〜+1.0の範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の電子線照射用アクリル系樹脂フィルム。

【公開番号】特開2011−63721(P2011−63721A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215901(P2009−215901)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】