説明

電子線照射装置のエージング装置、電子線照射装置、および電子線照射装置のエージング方法

【課題】カソード電極、高周波増幅器および加速器を自動でエージングする。
【解決手段】エージング装置200は、設定値テーブル230を記憶するパラメータ記憶部216と、設定値テーブルに基づいて初期値から定格値まで段階的に設定値を変更するパラメータ設定部250と、パラメータ設定部が変更した設定値に基づいて、電力供給部による電力供給処理を制御する電力制御部252と、各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットにおいて、予め設定されたエラー判定条件を満たしたか否かを判定するエラー判定部254と、エラー判定条件を満たしたと判定されると、電力供給部による電力供給処理を停止させる停止処理を実行する停止制御部256と、を備え、パラメータ設定部は、停止処理が実行された場合に、パラメータの設定値を、停止処理の実行時における設定値よりも前段階のいずれかの設定値に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射物に電子線を照射する電子線照射装置のエージング装置、電子線照射装置、および電子線照射装置のエージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療器具や食品等の滅菌、樹脂の架橋や硬化、悪性腫瘍等の病巣の除去等、様々な分野で利用されている電子線照射装置(例えば、特許文献1、2)が知られている。このような電子線照射装置は、真空状態に維持された真空室内にカソード電極と加速器を備えており、カソード電極に電力を供給することでカソード電極から熱電子を放出し、その熱電子を加速器で加速して被照射物に照射する。
【0003】
上述したカソード電極や、加速器に高周波の電圧を供給する高周波増幅器は、消耗品であるため交換する必要がある。この場合、電子線照射装置を停止して真空室を大気開放し、カソード電極や高周波増幅器の交換を行う。
【0004】
電子線照射装置を再稼働する場合には、まずイオンポンプ等の真空ポンプで真空室の真空引きを行う。そして、カソード電極や高周波増幅器に印加する電力を初期値から徐々に上げていき、定格値まで持っていく、慣らし運転(エージング)を行う。このエージングが完了して初めて、電子線の照射を行うことができる。
【0005】
従来、エージングは、ユーザによって逐一行われていた。具体的に説明すると、真空室内の真空度を測定する真空計(圧力計)が示す値をユーザが読み取り、その値に応じて、ユーザが、カソード電極に印加する電流値を初期値から定格値まで徐々に上げていったり、高周波増幅器に印加する電圧や電力を初期値から定格値まで徐々に上げていったりする。また、カソード電極、加速器、高周波増幅器のすべてのエージングを行うためには、1週間程度といった長時間を費やすことになる。したがって、エージングを行う際には、ユーザに煩雑な作業を強いるばかりでなく、ユーザを長時間拘束する結果になっていた。
【0006】
そこで、例えば、高周波増幅器が印加する加速器の電圧を一定にしておき、真空室における真空度に応じて、カソード電極に供給する電流量を初期値から定格値まで変化させる技術が開示されている(例えば、特許文献3)。特許文献3では、例えば、真空度が第1所定値以下であれば、カソード電極に供給する電流量を上げていき、真空度が、第1所定値より大きい第2所定値以上であれば、カソード電極に供給する電流量を下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−349998号公報
【特許文献2】特開2003−139898号公報
【特許文献3】特開昭59−6000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献3の技術では、真空度のみに応じて、カソード電極に供給する電流量を制御しているが、カソード電極、加速器等の電圧値異常や、電流値異常等が発生した場合、カソード電極のエージングを停止し、エージングを初めからやり直さなければならない。そのため、何らかの異常が発生した場合には、エージングがより一層長期化してしまうとともに、ユーザが煩雑な作業を行わなければならなかった。
【0009】
また、上述した特許文献3の技術では、高周波増幅器や加速器を自動的にエージングする技術については言及されていない。高周波増幅器や加速器のエージングは、カソード電極のエージングに要する時間の倍以上かかるため、特許文献3の技術を利用してカソード電極のみをエージングしたとしても、より長時間を要してしまう。さらに、高周波増幅器や加速器のエージングは、電圧値、パルス繰り返し数、電力値を初期値から定格値まで徐々に上げていく必要があるため、カソード電極のエージングと比較して、ユーザにより煩雑な作業を強いることになっていた。
【0010】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、ユーザの作業を簡素化することができ、またユーザを長時間拘束することなく、カソード電極のみならず、高周波増幅器や加速器をエージングすることが可能な電子線照射装置のエージング装置、電子線照射装置、および電子線照射装置のエージング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の電子線照射装置のエージング装置は、熱電子を放出する電子銃ユニットと、電子銃ユニットから放出された熱電子を加速する加速器ユニットと、加速器ユニットに高周波の電圧を供給する高周波増幅器ユニットと、加速器ユニットと高周波増幅器ユニットとを接続する導波管ユニットと、電子銃ユニットおよび加速器ユニットと内部空間が連結され、加速器ユニットで加速された熱電子を電子線として走査するとともに、大気圧雰囲気に取り出すスキャンホーンユニットと、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに電圧および電流のうち少なくとも一方を供給する電力供給部と、を備えた電子線照射装置のエージング装置であって、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに供給される、電圧値、電流値、供給する電圧のパルス繰り返し数および供給する電圧のパルス幅のうち少なくとも1つに関わるパラメータの設定値を、初期値から定格値までの段階的な値として記憶するパラメータ記憶部と、パラメータ記憶部に記憶されたパラメータの設定値のうち、初期値から定格値まで段階的に設定値を変更するパラメータ設定部と、パラメータ設定部が変更した設定値に基づいて、電力供給部による電力供給処理を制御する電力制御部と、各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットにおいて、予め設定されたエラー判定条件を満たしたか否かを判定するエラー判定部と、エラー判定条件を満たしたとエラー判定部が判定すると、電力供給部による、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットへの電圧および電流のうち少なくとも一方の供給を停止させる停止処理を実行する停止制御部と、を備え、パラメータ設定部は、停止制御部が停止処理を実行した場合に、パラメータの設定値を、停止処理の実行時における設定値よりも前段階のいずれかの設定値に変更することを特徴とする。
【0012】
パラメータ設定部は、パラメータの設定値を保持する時間である保持時間を設定するとともに停止制御部による停止処理が実行された場合には、前段階のいずれかの設定値に設定された保持時間よりも保持時間を短く設定してもよい。
【0013】
エラー判定部は、各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットで放電が発生していることをエラー判定条件としてエラー判定を行ってもよい。
【0014】
エラー判定部は、各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットの真空度が予め定められた閾値以上であると、放電が発生したと判定してもよい。
【0015】
パラメータ記憶部には、初期値から定格値まで複数段階設けられた、第1のパラメータの設定値および第2のパラメータの設定値が対応付けて記憶され、第1のパラメータの設定値は、第2のパラメータの1つの設定値につき、複数対応付けられており、パラメータ設定部は、第2のパラメータの設定値を維持したまま、当該第2のパラメータの設定値に対応する第1のパラメータの設定値のうち、最も低い設定値から最も高い設定値へと段階的に第1のパラメータの設定値を変更する工程を、第2のパラメータの設定値が初期値から定格値になるまで段階的に繰り返してもよい。
【0016】
パラメータ設定部は、エラー判定部によってエラーの判定がなされるとともに、停止制御部によって停止処理が実行された場合に、第2のパラメータの設定値を停止処理の実行時における設定値に維持するとともに、維持された当該第2のパラメータの設定値に対応する第1のパラメータの設定値のうち、最も低い設定値に第1のパラメータの設定値を変更してもよい。
【0017】
パラメータは、電子銃ユニットに供給する電力であってもよい。
【0018】
電子銃ユニットは、熱電子を放出するカソード電極と、カソード電極による熱電子の放出を制御するグリッドと、を含んで構成され、電力制御部は、電力供給部に、カソード電極に供給する電流と、グリッドに供給する電圧と、電子銃ユニットに供給する電圧のパルス幅と、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電圧と、当該加速器ユニットに供給する電圧のパルス幅と、を所定値に維持させておき、パラメータは、高周波増幅器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であってもよい。
【0019】
第1のパラメータは、高周波増幅器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であり、第2のパラメータは、高周波増幅器ユニットに供給する電圧であってもよい。
【0020】
電力制御部は、電力供給部に、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電圧と、当該電圧のパルス幅とを所定値に維持させておき、第1のパラメータは、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であり、第2のパラメータは、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電力であってもよい。
【0021】
電力制御部は、電力供給部に、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電力と、当該電力のパルス幅とを所定値に維持させておき、第1のパラメータは、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であり、第2のパラメータは、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電圧であってもよい。
【0022】
電力制御部は、電力供給部に、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する、電圧と電力とを所定値に維持させておき、第1のパラメータは、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であり、第2のパラメータは、高周波増幅器ユニットを通じて加速器ユニットに供給する電圧のパルス幅であってもよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の電子線照射装置は、熱電子を放出する電子銃ユニットと、電子銃ユニットから放出された熱電子を加速する加速器ユニットと、加速器ユニットに高周波の電圧を供給する高周波増幅器ユニットと、加速器ユニットと高周波増幅器ユニットとを接続する導波管ユニットと、電子銃ユニットおよび加速器ユニットと内部空間が連結され、加速器ユニットで加速された熱電子を電子線として走査するとともに、大気圧雰囲気に取り出すスキャンホーンユニットと、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに電圧および電流のうち少なくとも一方を供給する電力供給部と、各ユニットをエージングするエージング制御手段と、を備えた電子線照射装置であって、エージング制御手段は、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに供給される、電圧値、電流値、供給する電圧のパルス繰り返し数および供給する電圧のパルス幅のうち少なくとも1つに関わるパラメータの設定値を、初期値から定格値までの段階的な値として記憶するパラメータ記憶部と、パラメータ記憶部に記憶されたパラメータの設定値のうち、初期値から定格値まで段階的に設定値を変更するパラメータ設定部と、パラメータ設定部が変更した設定値に基づいて、電力供給部による電力供給処理を制御する電力制御部と、各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットにおいて、予め設定されたエラー判定条件を満たしたか否かを判定するエラー判定部と、エラー判定条件を満たしたとエラー判定部が判定すると、電力供給部による、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つへの電圧および電流のうち少なくとも一方の供給を停止させる停止処理を実行する停止制御部と、を含んで構成され、パラメータ設定部は、停止制御部が停止処理を実行した場合に、パラメータの設定値を、停止処理の実行時における設定値よりも前段階のいずれかの設定値に変更することを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の電子線照射装置のエージング方法は、熱電子を放出する電子銃ユニットと、電子銃ユニットから放出された熱電子を加速する加速器ユニットと、加速器ユニットに高周波の電圧を供給する高周波増幅器ユニットと、加速器ユニットと高周波増幅器ユニットとを接続する導波管ユニットと、電子銃ユニットおよび加速器ユニットと内部空間が連結され、加速器ユニットで加速された熱電子を電子線として走査するとともに、大気圧雰囲気に取り出すスキャンホーンユニットと、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに電圧および電流のうち少なくとも一方を供給する電力供給部と、を備えた電子線照射装置のエージング方法であって、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに供給される、電圧値、電流値、供給する電圧のパルス繰り返し数および供給する電圧のパルス幅のうち少なくとも1つに関わるパラメータの設定値を、初期値から定格値までの段階的な値として記憶しておき、記憶しておいたパラメータの設定値のうち、初期値から定格値まで段階的に設定値を変更するステップと、変更した設定値に基づいて、電力供給部に、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに電圧および電流のうち少なくとも一方を供給するステップと、各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットにおいて、予め設定されたエラー判定条件を満たしたか否かを判定するステップと、エラー判定条件を満たしたと判定すると、電子銃ユニット、加速器ユニットおよび高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットへの電圧および電流のうち少なくとも一方の供給を停止させる停止処理を実行するステップと、停止処理を実行した場合に、パラメータの設定値を、停止処理の実行時における設定値よりも前段階のいずれかの設定値に変更するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ユーザの作業を簡素化することができ、またユーザを長時間拘束することなく、カソード電極のみならず、高周波増幅器や加速器をエージングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】電子線照射装置の外観斜視図である。
【図2】図1におけるZ軸方向から電子線照射装置を見た図である。
【図3】カソード電源および電子銃ユニットの具体的な構成を説明するための説明図である。
【図4】エージング装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図5】パラメータ記憶部に記憶された設定値テーブルを説明するための説明図である。
【図6】パラメータ記憶部に記憶された設定値テーブルを説明するための説明図である。
【図7】パラメータ記憶部に記憶された設定値テーブルを説明するための説明図である。
【図8】パラメータ記憶部に記憶された設定値テーブルを説明するための説明図である。
【図9】パラメータ記憶部に記憶された設定値テーブルを説明するための説明図である。
【図10】パラメータ記憶部に記憶された設定値テーブルを説明するための説明図である。
【図11】本実施形態にかかるエージング装置を用いたエージング方法の具体的な処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図12】本実施形態にかかるエージング装置を用いたエージング方法の具体的な処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図13】エージング用のGUI画面およびエージング状態を示す画面を説明するための説明図である。
【図14】エージング用のGUI画面およびエージング状態を示す画面を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0028】
(電子線照射装置100)
図1は、電子線照射装置100の外観斜視図であり、図2は、図1におけるZ軸方向から電子線照射装置100を見た図である。なお、図1では、理解を容易にするために電子線照射装置100を支持する支持機構を省略する。
【0029】
図1および図2に示すように、電子線照射装置100は、カソード電源(電力供給部)104と、電子銃ユニット110と、高周波ユニット112と、導波管ユニット114と、プリバンチャユニット116と、加速器ユニット118と、スキャンホーンユニット120と、エージング装置200とを備えて構成されている。なお、電子銃ユニット110、プリバンチャユニット116、加速器ユニット118、スキャンホーンユニット120は、内部空間(真空室)が連続しており、この内部空間は、イオンポンプ等の真空ポンプ102で高真空状態から超高真空状態(例えば、10E−5Pa以下)に維持される。
【0030】
電子線照射装置100において、電子銃ユニット110から放出された熱電子は、プリバンチャユニット116、加速器ユニット118で加速され、スキャンホーンユニット120を通過して、搬送装置10で搬送される被照射物Wに向かって図1中Y軸方向に照射される。以下、電子線照射装置100の各機能部について詳述する。
【0031】
(電子銃ユニット110)
電子銃ユニット110は、例えば、三極管電子銃であり、カソード電源(交流電源)104から供給された電力によってカソード電極を加熱し、カソード電源104からパルス状に印加された高電圧のグリッドパルス電圧(引出電圧)により、電子線を放出する。
【0032】
図3は、カソード電源(電力供給部)104および電子銃ユニット110の具体的な構成を説明するための説明図である。図3(a)に示すように、カソード電源104は、ヒータ電源104aと、グリッドバイアス電源(GB)104bと、グリッドパルス電源(GP)104cと、カソードパルス電源104dとを含んで構成され、電子銃ユニット110に電力を供給する。また、電子銃ユニット110は、カソード電極150と、グリッド152と、アノード電極154とを含んで構成される。
【0033】
カソード電極150は、例えば、Ba(バリウム)含浸型で構成され、Ba材にタングステン等のフィラメントが埋め込まれている。カソード電極150のフィラメントには、カソード電源104のヒータ電源104aから電流(例えば、交流50Hz、10V)が供給され、この電流によってフィラメントが加熱される。そうすると、フィラメントによってBa材が加熱され、Ba材の表面に熱電子が発生することになる。そして、後述するグリッドパルス電源104cによってグリッド152に印加されるグリッドパルス電圧(引出電圧)と、カソードパルス電源104dによるカソード電極150とアノード電極154間の高圧のパルス電圧によって、熱電子がパルス的に放出され、このパルス的に放出された熱電子が電子線を構成することになる。
【0034】
グリッド152は、例えば、メッシュ(網目)状の電極で構成され、カソード電極150による熱電子の放出を制御する。具体的にグリッド152は、一方の端部がグリッドバイアス電源104b、グリッドパルス電源104cと接続されており、他方の端部は、電気的に浮いている(フローティングしている)。
【0035】
グリッドバイアス電源104bは、電子の引き出しを抑制するための負のバイアス電圧(例えば、DC−10V)を常にグリッド152に印加している。また、グリッドパルス電源104cは、正の電圧(例えば、+22V)をパルス的にグリッド152に印加する。そうすると、グリッド152に正の電圧が印加されている間のみ、カソード電極150のBa材の表面から電子が引き出される。
【0036】
アノード電極154は、カソード電極150から放出された電子線を初期加速する。図3(a)に示すように、カソード電源104のカソードパルス電源104dは、一方の端子がグリッドパルス電源104c側に接続され、他方の端子がアノード電極154を通じてグラウンド(0V)に接続されている。したがって、カソードパルス電源104dが、例えば−30kVの電圧を印加すると、ヒータ電源104a、グリッドバイアス電源104b、グリッドパルス電源104cは、−30kVを基準として、自己の電圧にフローティングする(浮く)ことになる。
【0037】
そうすると、アノード電極154は0Vであるため、カソード電極150とアノード電極154との間に電位差(30kV)が生じ、カソード電極150で引き出された電子がアノード電極154に到達することになる。
【0038】
具体的に説明すると、図3(b)に示すように、グリッドバイアス電源104bによってグリッド152に負のバイアス電圧(図3(b)中GB電圧で示す)が印加されている時刻t0から時刻t1の間には、カソード電極150からの電子の引き出しが抑制されている。そして時刻t1で、グリッドパルス電源104cによって、正の電圧(図3(b)中GP電圧で示す)が印加されると、正の電圧と負のバイアス電圧の差分(−10V+22V=12V)が有効な引出電圧となり、カソード電極150から電子が引き出されることになる。したがって、グリッドパルス電源104cが正の電圧を印加する時間(時刻t1〜t2)を制御することにより、カソード電極150からの電子の引き出し時間やパルス繰り返し数が制御される。ここで、定格状態の電子の引き出し時間は、例えば、2μsとし、パルス繰り返し数は、例えば、500pps(pulse per second)とする。
【0039】
そして、カソードパルス電源104dは、グリッドパルス電源104cが正の電圧を印加する時間(時刻t1〜t2)に同期させて、ヒータ電源104a、グリッドバイアス電源104b、グリッドパルス電源104cに電圧を印加する。そうすると、グリッドパルス電源104cによってカソード電極150から引き出された電子線は、アノード電極154によって初期加速され、プリバンチャユニット116に入射する。換言すれば、グリッドパルス電源104cが正の電圧を印加する時間と、カソードパルス電源104dが電圧を印加する時間が重なった時間のみ電子線がプリバンチャユニット116に入射されることになる。
【0040】
(高周波ユニット112、導波管ユニット114)
図1、図2に戻って説明すると、高周波ユニット112は、クライストロン等で構成される高周波増幅器ユニット112aと、高周波増幅器ユニット112aに電力を供給する高周波電源(電力供給部)112bとを含んで構成され、導波管ユニット114を通じてプリバンチャユニット116および加速器ユニット118に、例えばSバンドに相当する3GHzのパルス状の高周波電力を供給する。導波管ユニット114は、セラミック等で構成されたRF窓114a、114bを通じて、高周波増幅器ユニット112aから増幅されて供給される高周波の電圧を加速器ユニット118に供給する。導波管ユニット114におけるRF窓114aとRF窓114bの間には、六フッ化硫黄(SF)等の絶縁ガスが充填されており、高周波増幅器ユニット112aで増幅されて出力された電圧によって導波管ユニット114が放電してしまう事態を回避する。なおRF窓114a、114bはSFと真空とを隔てる境界の役割を果たす。
【0041】
(プリバンチャユニット116)
プリバンチャユニット116は、電子銃ユニット110と加速器ユニット118の間に設けられ、導波管ユニット114を通じて高周波増幅器ユニット112aに接続されている。プリバンチャユニット116は、電子銃ユニット110から入射された電子線をバンチング(密度圧縮(速度変調))して、加速器ユニット118に送出する。具体的に説明すると、プリバンチャユニット116内は、高周波増幅器ユニット112aから供給された高周波の電圧によって高周波電界が形成されており、プリバンチャユニット116を通過した電子線は、バンチングされて加速器ユニット118に入射する。プリバンチャユニット116で電子線をバンチングすることにより、加速器ユニット118で加速された電子線のエネルギーの分散を小さくすることができ、電子線のエネルギーの均一性を向上させることが可能となる。
【0042】
ここで、プリバンチャユニット116によって圧縮された電子線の加速器ユニット118への入射タイミングが、加速器ユニット118における高周波の正位相と同期したときのみ、電子線は加速器ユニット118で効率よく加速される。したがって、プリバンチャユニット116から加速器ユニット118への電子線の入射タイミングを調整するために、プリバンチャユニット116の高周波導入部116aには、不図示の位相調整手段が設けられている。また、電子線の圧縮率(バンチングされた電子線の長さ)も加速器ユニット118による加速効率に影響するため、すなわち、電子線の長さが短い程、加速効率が向上する。したがって、供給する高周波の強度を調整して電子線の長さを調整するために、プリバンチャユニット116の高周波導入部116aには、不図示の減衰(アッテネータ)手段が設けられている。
【0043】
(加速器ユニット118)
加速器ユニット118は、ステンレス(例えばSUS)等で形成され、内部に複数の加速空間を有して構成される。高周波増幅器ユニット112aから高周波の電圧(例えば、3GHz)が供給されると、加速器ユニット118の複数の加速空間が空間共振器として機能し、空間共振器内に時間的に変化する電界が生じる。そして、この時間的に変化する電界で、プリバンチャユニット116によって圧縮された電子線を加速する。
【0044】
ここで、電子線の速度と加速空間における正に帯電する(正位相になる)タイミングが同期するように、高周波増幅器ユニット112aから供給される電圧の周波数と、加速空間の距離が設計されているため、電子線は加速器ユニット118内で徐々に加速され、最終的には、例えば10MeV程度まで加速されて、スキャンホーンユニット120に入射される。
【0045】
なお、ここでは、加速器ユニット118として、定在波型の線形(リニアック)加速器を採用しているが、電子を加速できればよく、進行波型の線形加速器や、シンクロトロン、サイクロトロン等の円形加速器を採用することもできる。
【0046】
(スキャンホーンユニット120)
スキャンホーンユニット120は、その内部空間が加速器ユニット118と連結され、加速器ユニット118の出口付近に設けられたスキャン電磁石122と、加速器ユニット118と連結する端部と対向する端部に設けられた電子線取出部124とを含んで構成される(図1、図2参照)。
【0047】
スキャン電磁石122は、加速器ユニット118から入射された電子線を水平方向(図1中X軸方向)に走査(スキャン)する。電子線の進行方向は鉛直方向(図1中Y軸方向)であるため、スキャン電磁石122が鉛直方向に進行する電子線を水平方向に走査することにより、水平方向に幅のある被照射物Wに確実に電子線を照射することができる。
【0048】
電子線取出部124は、例えば、50μm程度の厚みのTi箔で構成され、内部空間と、大気とを隔てる境界の役割を果たす。そして、電子線取出部124から大気中に取り出された電子線は、被照射物Wに照射される。
【0049】
こうして、電子銃ユニット110で放出された電子線は、加速器ユニット118で加速されて、電子線取出部124を通じて、被照射物Wに照射される。
【0050】
ところで、上述した電子銃ユニット110のカソード電極150、グリッド152や、高周波増幅器ユニット112aは、消耗品であるため交換が必要である。このような消耗品を交換した後に電子線照射装置100を再稼働する場合には、カソード電極150、グリッド152や、高周波増幅器ユニット112aに印加する電力を初期値から徐々に上げていき、定格値まで持っていく、エージングを行う。消耗品の交換の際に大気開放されたために、カソード電極150や加速器ユニット118、高周波増幅器ユニット112aに付着した、大気中の物質(例えば、水や窒素)を、このエージングを行うことによって除去することもできる。
【0051】
以下、電子線照射装置100の高周波増幅器ユニット112a、加速器ユニット118および、電子銃ユニット110のエージングを行うエージング装置200およびエージング装置200を用いた電子線照射装置100のエージング方法について詳述する。
【0052】
(エージング装置200)
図4は、エージング装置200の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図4に示すように、エージング装置200は、操作部210と、表示部212と、真空計214と、パラメータ記憶部216と、中央制御部220とを含んで構成される。
【0053】
操作部210は、操作キー、十字キー、ジョイスティック、キーボード、後述する表示部212の表示面に重畳されたタッチパネル等で構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。また、遠隔操作のためのリモートコントローラが設けられる場合、当該リモートコントローラも操作部210として機能する。
【0054】
表示部212は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、後述する中央制御部220による制御指令に応じて、エージング用のGUI(Graphical User Interface)画面等を表示する。
【0055】
真空計214は、電子銃ユニット110、高周波増幅器ユニット112a、導波管ユニット114、プリバンチャユニット116、加速器ユニット118、スキャンホーンユニット120の真空度をそれぞれ測定する。そして、得られた測定結果を中央制御部220に出力する。
【0056】
パラメータ記憶部216は、ROM(Read Only Memory)等の記憶媒体で構成され、エージング用のGUI画面に基づく情報等の様々な情報を記憶する。また、本実施形態において、パラメータ記憶部216は、電子銃ユニット110、加速器ユニット118および高周波増幅器ユニット112aに供給される、電圧値、電流値、供給する電圧のパルス繰り返し数および供給する電圧のパルス幅に関わるパラメータの設定値を、初期値から定格値までの段階的な値として記憶する。本実施形態において、パラメータ記憶部216は、パラメータの設定値の段階的な値をテーブル化した設定値テーブルを予め記憶している。
【0057】
図5から図10は、パラメータ記憶部216に記憶された設定値テーブル230(図5から図10中、230a〜230fで示す)を説明するための説明図である。図5から図10に示すように、パラメータ記憶部216には、高周波増幅器ユニット112aをエージングするための設定値テーブル230a、加速器ユニット118をエージングするための設定値テーブル230b、230c、230d、電子銃ユニット110をエージングするための設定値テーブル230e、カソード電極150をエージング(脱ガス)するための設定値テーブル230fが予め記憶されている。
【0058】
図5から図8に示すように、設定値テーブル230a〜230dの行の方向232a(図5から図8における横方向)に、第1のパラメータ234aの設定値が初期値から定格値まで複数段階対応付けられており、列の方向232b(図5から図8における縦方向)に、第2のパラメータ234bの設定値が初期値から定格値まで複数段階対応付けられている。また、設定値テーブル230b〜230dにおいて、第1のパラメータ234aの設定値は、第2のパラメータ234bの1つの設定値につき、複数対応付けられている。なお、設定値テーブル230aにおいて、第2のパラメータ234bの設定値のうち初期値および定格値には、第1のパラメータ234aの設定値が複数対応付けられているが、その他の第2のパラメータ234bの設定値には、それぞれ第1のパラメータ230aが1つずつ対応付けられている。
【0059】
具体的に説明すると、図5に示すように、設定値テーブル230aには、第1のパラメータ234aとして、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aに供給する電圧のパルス繰り返し数が、第2のパラメータ234bとして、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aに供給する電圧が関連付けられている。なお、図5中「−」は、値を設定しないことを示す。
【0060】
また、図6に示すように、設定値テーブル230bには、第1のパラメータ234aとして、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に供給する電圧のパルス繰り返し数が、第2のパラメータ234bとして、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に供給する電力が関連付けられている。
【0061】
さらに、図7に示すように、設定値テーブル230cには、第1のパラメータ234aとして、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に供給する電圧のパルス繰り返し数が、第2のパラメータ234bとして、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に供給する電圧が関連付けられている。
【0062】
また、図8に示すように、設定値テーブル230dには、第1のパラメータ234aとして、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に供給する電圧のパルス繰り返し数が、第2のパラメータ234bとして、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に供給する電圧のパルス幅が関連付けられている。
【0063】
一方、図9に示すように、設定値テーブル230eには、高周波電源112bが高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に供給する電圧のパルス繰り返し数と、保持時間が関連付けられている。また、図10に示すように、設定値テーブル230fには、カソード電源104がカソード電極150のヒータに供給する電流と、保持時間が関連付けられている。
【0064】
また、パラメータ記憶部216は、設定値テーブル230aに関連付けて、パラメータの設定値を保持する時間である第1保持時間を示す固定値236aを予め記憶している。
【0065】
さらに、パラメータ記憶部216は、設定値テーブル230bに関連付けて、エージング中に常時供給しておく、予め定められた電圧値や電力値、電流値やパルス幅、および、その第1保持時間を示す固定値236b(電圧値、電圧のパルス幅、第1保持時間)を(図6)、予め記憶している。同様にパラメータ記憶部216は、設定値テーブル230cに関連付けて固定値236c(電力値、電力のパルス幅、第1保持時間)を(図7)、設定値テーブル230dに関連付けて固定値236d(電圧値、電力値、第1保持時間)を(図8)、設定値テーブル230eに関連付けて固定値236e(カソード電極150に供給する電流値、グリッド152に印加する電圧値、電子銃ユニット110に印加する電圧のパルス幅、高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に印加する電力値、当該電力のパルス幅)を(図9)、予め記憶している。
【0066】
図4に戻って説明すると、中央制御部220は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、エージング装置200全体を管理および制御する。また、本実施形態において、中央制御部220は、パラメータ設定部250、電力制御部252、エラー判定部254、停止制御部256としても機能する。
【0067】
パラメータ設定部250は、パラメータ記憶部216に記憶された設定値テーブル230に基づいて、各パラメータの設定値を、初期値から定格値まで段階的に変更する。パラメータ設定部250によるパラメータ設定処理の具体的な処理については、後に詳述する。
【0068】
電力制御部252は、パラメータ設定部250が変更した設定値に基づいて、カソード電源104および高周波電源112bによる電力供給処理を制御する。
【0069】
エラー判定部254は、各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットにおいて、予め設定されたエラー判定条件を満たしたか否かを判定する。具体的に説明すると、エラー判定部254は、各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットで放電が発生していることをエラー判定条件としてエラー判定を行う。本実施形態において、エラー判定部254は、真空計214が測定した電子銃ユニット110、高周波増幅器ユニット112a、導波管ユニット114、プリバンチャユニット116、加速器ユニット118、スキャンホーンユニット120の真空度が、予め定められた閾値(例えば、3.0E−5Pa)以上であると、放電が発生したとして、エラー判定条件を満たしたと判定する。
【0070】
停止制御部256は、エラー判定条件を満たした(エラーが発生した)と判定されると、高周波電源112bによる高周波増幅器ユニット112aへの電力供給、および、カソード電源104による電子銃ユニット110への電力供給を停止させる停止処理を実行する。
【0071】
(エージング方法)
続いて、エージング装置200を用いた電子線照射装置100のエージング方法について説明する。本実施形態においてパラメータ設定部250は、設定値テーブル230に基づいて、各パラメータの設定値を、初期値から定格値まで段階的に上げていき、エラー判定部254がエラー判定条件を満たすと、前段階のいずれかの設定値に戻して、エージングを再開する。以下に、エージング方法の具体的な処理について詳述する。
【0072】
図11および図12は、本実施形態にかかるエージング装置200を用いたエージング方法の具体的な処理の流れを説明するためのフローチャートである。図11に示すように、ユーザが、操作部210を通じて、高周波増幅器ユニット112a、加速器ユニット118、電子銃ユニット110、およびカソード電極150のいずれか1または複数のエージングの開始を所望する操作入力を試みる(S300におけるYES)と、中央制御部220は、表示部212にエージング用のGUI画面を表示する(S302)。そして、ユーザによる操作部210を通じた選択入力があると(S304におけるYES)、中央制御部220は、エージング処理を開始する(S306)。
【0073】
図13、図14は、エージング用のGUI画面およびエージング状態を示す画面を説明するための説明図である。図13に示すように、画面表示ステップS302において、表示部212に表示される画面400には、高周波増幅器ユニット112aをエージングするためのボタン402a、加速器ユニット118をエージングするためのボタン402b、電子銃ユニット110をエージングするためのボタン402c、カソード電極150をエージング(脱ガス)するためのボタン402dが含まれる。
【0074】
例えば、ユーザによる、操作部210を通じたボタン402aの選択入力がある(図11のS304におけるYES)と、図14(a)に示すように、中央制御部220は、高周波増幅器ユニット112aのエージング状態を示す画面410を表示部212に表示させる。また、例えば、ユーザによる、操作部210を通じたボタン402dの選択入力があると、図14(b)に示すように、中央制御部220は、カソード電極150のエージング状態を示す画面412を表示部212に表示させる。画面410および画面412では、パラメータ記憶部216に記憶された設定値テーブル230に従った値(画面410は設定値テーブル230a、画面412は設定値テーブル230f)が表示されるが、ユーザによる操作部210への操作入力に応じて、パラメータの設定値を変更することもできる。
【0075】
図11に戻って、エージング処理の具体的な流れについて説明する。ここでは、ユーザが画面400を通じて、加速器ユニット118のエージングを試みた場合(ボタン402bが選択された場合)を例に挙げて説明する。
【0076】
ユーザが、例えば、ボタン402bを選択したとする(図11のS304におけるYES)と、中央制御部220は、選択されたボタン402bが示すエージング処理の開始を実行する(S306)。
【0077】
(パラメータ設定処理)
パラメータ設定部250は、まず、選択されたボタン402bが示すエージングを行うべく、パラメータ記憶部216に保持された、対応する設定値テーブル230(ここでは、設定値テーブル230b:図6参照)を参照する。具体的に説明すると、パラメータ設定部250は、設定値テーブル230bに関連付けられた固定値236bを参照し、電力制御部252に固定値236bを出力する。図6に示すように、固定値236bが、電圧3.50kV、パルス幅2μs、第1保持時間3minであるとすると、電力制御部252は、固定値236bに基づいて、高周波電源112bに、高周波増幅器ユニット112aを通じて加速器ユニット118に供給する電圧を3.50kVに、電圧のパルス幅を2μsに、パラメータの設定値を保持する時間である第1保持時間を3minに固定させる(S308)。
【0078】
そして、パラメータ設定部250は、第2のパラメータ234bの設定値(ここでは、電力値)を維持したまま、第2のパラメータ234bの設定値に対応する第1のパラメータ234aの設定値(ここでは、パルス繰り返し数)のうち、最も低い設定値から最も高い設定値へと段階的に第1のパラメータ234aの設定値を設定する工程を行うとともに、パラメータ記憶部216に記憶された第2のパラメータ234bの設定値のうち、初期値から定格値まで段階的に工程を行う。
【0079】
具体的に説明すると、パラメータ設定部250は、第2のパラメータ234bの設定値として、設定値テーブル230の列の方向232bの変数mに従い、まず、1番目の値に設定する(S310)。すなわち、パラメータ設定部250は、高周波電源112bが供給する電力の設定値(第2のパラメータ234b)として、最小値である10Wを設定する。
【0080】
続いて、パラメータ設定部250は、第2のパラメータ234bの設定値を10Wに維持したまま、第1のパラメータ234a(パルス繰り返し数)の設定値を、設定値テーブル230の行の方向232aの変数nに従い、まず、1番目の値(5pps)に設定する(S312)。そうすると、電力制御部252は、パラメータ設定部250が設定した設定値に基づいて、高周波電源112bに、10Wを維持したまま、電力のパルス繰り返し数を5ppsにして、高周波増幅器ユニット112aへの電力供給処理を遂行させる(S314)。
【0081】
そして、エラー判定部254によるエラー判定を行い、エラー判定条件を満たしていない状態で(S316におけるNO)、第1保持時間が経過すると(S318におけるYES)、パラメータ設定部250が設定する設定値テーブル230の行の方向232aの変数nをインクリメントする(S320)。
【0082】
続いて、インクリメントした値nが、行の方向232aの変数nの最大値(ここでは、11)を上回ったか否かを判定し(S322)、上回っていなければ(S322におけるNO)、電力供給ステップS314から繰り返す。このようにして、ステップS314からステップS322を繰り返すと、パラメータ設定部250は、高周波電源112bが供給する電力の設定値として、まず、最小値である10Wを設定し、10Wを維持したまま、高周波電源112bが供給する電力のパルス繰り返し数を、最小値である5から最大値である100まで段階的に設定することになる。
【0083】
ここで、インクリメントした値nが、行の方向232aの変数nの最大値を上回ると(S322におけるYES)、列の方向232bの変数mをインクリメントする(S324)。そして、インクリメントした値mが、列の方向232bの変数mの最大値(ここでは、20)を上回ったか否かを判定し(S326)、上回っていなければ(S326におけるNO)、第1パラメータ設定ステップS312から繰り返す。このようにして、パラメータ設定部250は、設定値テーブル230の変数(mおよびn)に従って、設定値を変更するので、例えば、10Wでパルス繰り返し数100が終了すると、パラメータ設定部250は、高周波電源112bが供給する電力の設定値として、設定値テーブル230bの2行目に対応する20Wを設定し、20Wを維持したまま、高周波電源112bが供給する電力のパルス繰り返し数を、最小値である5から最大値である100まで段階的に変更する。すなわち、パラメータ設定部250は、設定値テーブル230の変数(m,n)を、(1,1)、(1,2)、…、(1,11)、(2,1)、…、(2,11)、…、(20,11)といった順でパラメータの設定値を段階的に変更する。
【0084】
そして、インクリメントした値mが、列の方向232bの変数mの最大値(ここでは、20)を上回ると(S326におけるYES)、当該エージング処理を終了する。このようにして、パラメータ設定部250は、設定値テーブル230bにしたがって、設定値を段階的に変更し、電力制御部252はパラメータ設定部250が変更した設定値に基づいて、高周波電源112bによる電力供給処理を制御する。
【0085】
(エラー判定処理、および、エラー判定後処理(停止制御処理、パラメータ変更処理))
続いてエラー判定部254によるエラー判定処理と、これに伴う、エラー判定後処理(停止制御部256による停止制御処理および、パラメータ設定部250によるパラメータ変更処理)を説明する。
【0086】
図12に示すように、パラメータ設定部250によるパラメータの設定値の変更に伴い、エージング処理が遂行されているときに、エラー判定条件を満たしたとエラー判定部254が判定する(S316におけるYES)と、まず、停止制御部256は、高周波電源112bによる高周波増幅器ユニット112aへの電力供給を停止するとともに、停止処理を実行したときの第1のパラメータ234bの変数nを、不図示のメモリに一時的に保持させておく(S332)。
【0087】
そして、パラメータ設定部250は、第2のパラメータ234bの設定値を停止処理の実行時における設定値に維持するとともに、第1のパラメータ234aの設定値を、パラメータ記憶部216に記憶され当該第2のパラメータ234bの設定値に対応する第1のパラメータ234aの設定値のうち、最も低い設定値に設定する(S334)。すなわち、パラメータ設定部250は、第1のパラメータ234aの設定値を、1番目の値(5pps)に設定する。具体的に説明すると、図6において、m=6(60W)、かつ、n=7(60PPS)のときにエラーが発生したとすると、パラメータ設定部250は、m=6(60W)を維持するとともに、n=1(5PPS)に設定する。
【0088】
なお、設定値テーブル230aを参照して高周波増幅器ユニット112aをエージングする場合、図5に示すように、m=2〜13、n=1〜9のときには値が設定されていないので、例えば、m=6(4.25kV)、かつ、n=10(200PPS)のときにエラーが発生したとすると、パラメータ設定部250は、m=6(4.25kV)を維持するとともに、第1のパラメータ234aの設定値のうち、最も低い設定値n=1(5PPS)に設定する。
【0089】
ここで、パラメータ設定部250は、保持時間として、第1保持時間(例えば、3min)よりも短い第2保持時間(例えば、1min)を保持時間として設定する(S336)。そうすると、電力制御部252は、パラメータ設定部250が設定した設定値に基づいて、高周波電源112bに、高周波増幅器ユニット112aへの電力供給処理を遂行させる(S338)。そして、エラー判定部254によるエラー判定を行い、エラー判定条件を満たしていなければ(S340におけるNO)、第2保持時間が経過するまで(S342におけるNO)、電力制御部252は、高周波電源112bに高周波増幅器ユニット112aへの電力供給処理を維持させる。
【0090】
一方、エラー判定部254によるエラー判定を行い、エラー判定条件を満たしていると(S340におけるYES)、停止ステップS332から処理を繰り返す。
【0091】
そして、第2保持時間が経過すると(S342におけるYES)、パラメータ設定部250が設定する設定値テーブル230bの行の方向232aの変数nをインクリメントする(S344)。続いて、インクリメントした値nが、停止処理が実行されたときの変数nを上回ったか否かを判定し(S346)、上回っていなければ(S346におけるNO)、電力供給ステップS338から繰り返す。
【0092】
一方、インクリメントした値nが、停止処理が実行されたときの変数nを上回ると(S346におけるYES)、インクリメントステップS322に戻る。
【0093】
このように、エラーが発生したときに、一旦停止処理を行うことで、エラーが発生した状態でのエージングを中断し、高周波増幅器ユニット112aや電子銃ユニット110が破損してしまう事態を回避するようにしている。
【0094】
また、停止処理が実行され、エージングを再開する際に、第2のパラメータの設定値を停止処理の実行時における設定値に維持するとともに、第1のパラメータの設定値を最も低い設定値に設定することで、エラーが発生しなかったときの値(前段階の値)からやり直すことができる。
【0095】
放電等のエラーは、高周波増幅器ユニット112aや、電子銃ユニット110に電力が供給されることによって、加熱され、大気開放した際に付着した不純物が急激にガス化することによって生じると考えられる。
【0096】
したがって、エージングを再開する際に、エラーが発生した時点で設定された値で再度エージングを試みると、まだガス化していない不純物が急激にガス化し、再度エラーが発生してしまう可能性がある。そこで、エージングを再開する際に、エラーが発生する前段階の値から順次やり直すことで、不純物を徐々にガス化させることで放電が起きる事態を回避することが可能となる。
【0097】
また、エラーが発生する前段階の値で既にエージングを行っているため、エージングを再開する際に、保持時間を短くしても不純物が急激にガス化する可能性は低い。したがって、パラメータ設定部250が、停止処理が実行される前の時間よりも保持時間を短く設定することで、エージングにかかる総時間を短縮することが可能となる。
【0098】
なお、エージングの順番は、高周波増幅器ユニット112a(設定値テーブル230a)、加速器ユニット118(設定値テーブル230b〜230dの順で)、電子銃ユニット110(設定値テーブル230e)の順で行うとよい。またカソード電極150のエージング(脱ガス)は、電子銃ユニット110のエージングの前であれば、いつでも構わない。
【0099】
また、高周波増幅器ユニット112aを交換した場合には、設定値テーブル230aに従った高周波増幅器ユニット112aのエージングと、設定値テーブル230bに従った加速器ユニット118のエージングを行えばよい。真空ポンプ102、カソード電極150、RF窓114、電子線取出部124を交換した場合には、設定値テーブル230b〜設定値テーブル230cに従った加速器ユニット118のエージング、設定値テーブル230eに従った電子銃ユニット110のエージング、設定値テーブル230fに従ったカソード電極150のエージングを行えばよい。
【0100】
以上説明したように、本実施形態にかかるエージング装置200によれば、ユーザはエージングの開始入力を行うだけで、高周波増幅器ユニット112a、加速器ユニット118、電子銃ユニット110のエージングを自動的に行うことができる。したがって、ユーザに煩雑な作業を強いることもなく、ユーザを長時間拘束してしまう事態を回避することが可能となる。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0102】
例えば、上述した実施形態では、パラメータ設定部250は、設定値テーブル230b〜cに基づいてパラメータの設定値を変更する場合、第2のパラメータ234bの設定値を維持したまま、当該第2のパラメータの設定値に対応する第1のパラメータ234aの設定値のうち、最も低い設定値から最も高い設定値へと段階的に第1のパラメータ234aの設定値を設定する工程を行うとともに、パラメータ記憶部216に記憶された第2のパラメータ234bの設定値のうち、初期値から定格値まで段階的に工程を行う。しかし、パラメータ設定部250は、少なくとも、パラメータの設定値を、停止処理の実行時における設定値よりも前段階のいずれかの設定値に変更すればよい。ここで。前段階は、直前の段階のみならず、エラー判定条件を満たさない状態で電力供給処理を行った過去のすべての段階のことである。
【0103】
また、パラメータ設定部250は、パラメータの設定値を、エラー判定条件を満たさない状態で電力供給処理を行った設定値であるか否かに拘わらず、停止処理の実行時における設定値よりも小さく設定してもよい。例えば、パラメータ設定部250が設定値テーブル230a(図5参照)に基づいてパラメータの設定値を変更する場合であって、4.10kV、200ppsでエージングを行っていたときにエラーが発生した場合、第2のパラメータ234bである電圧値を4.10kVに維持したまま、第1のパラメータとしてのパルス繰り返し数の最小値である5ppsに変更して、エージングを再開してもよい。
【0104】
さらに、上述した実施形態において、パラメータ設定部250は、エラーが発生し、エージングを再開するときの保持時間を、前段階で設定された保持時間としての第1保持時間から第2保持時間に変更している。具体的に説明すると、パラメータ設定部250が設定値テーブル230e、230fに基づいてパラメータの設定値を変更する場合、例えば、設定値テーブル230e(図9参照)を参照して、160ppsで保持時間が8minでエージングを行っている最中にエラーが発生した場合、保持時間をその前段階の保持時間である20minよりも短く(例えば、10min)設定してエージングを再開してもよい。
【0105】
また、上述した実施形態では、エラー判定部254が、真空計214が測定した各ユニットの真空度に基づいて放電が発生したか否かを判定しているが、他の方法で放電の発生を判定してもよい。また、エラー判定部254は、放電の発生に限らず、電圧値や電流値が所定範囲内にない場合等にエラー判定条件を満たしたと判定してもよい。
【0106】
さらに、上述した実施形態において、パラメータ記憶部216は、設定値テーブル230を記憶しているが、パラメータの設定値を、初期値から定格値までの段階的な値を記憶していればテーブルでなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、被照射物に電子線を照射する電子線照射装置のエージング装置、電子線照射装置および電子線照射装置のエージング方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
100 …電子線照射装置
102 …真空ポンプ
104 …カソード電源(電力供給部)
110 …電子銃ユニット
112 …高周波ユニット
112a …高周波増幅器ユニット
112b …高周波電源(電力供給部)
114 …導波管ユニット
116 …プリバンチャユニット
118 …加速器ユニット
120 …スキャンホーンユニット
150 …カソード電極
200 …エージング装置
216 …パラメータ記憶部
250 …パラメータ設定部
252 …電力制御部
254 …エラー判定部
256 …停止制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電子を放出する電子銃ユニットと、
前記電子銃ユニットから放出された熱電子を加速する加速器ユニットと、
前記加速器ユニットに高周波の電圧を供給する高周波増幅器ユニットと、
前記加速器ユニットと前記高周波増幅器ユニットとを接続する導波管ユニットと、
前記電子銃ユニットおよび前記加速器ユニットと内部空間が連結され、前記加速器ユニットで加速された熱電子を電子線として走査するとともに、大気圧雰囲気に取り出すスキャンホーンユニットと、
前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに電圧および電流のうち少なくとも一方を供給する電力供給部と、
を備えた電子線照射装置のエージング装置であって、
前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに供給される、電圧値、電流値、供給する電圧のパルス繰り返し数および供給する電圧のパルス幅のうち少なくとも1つに関わるパラメータの設定値を、初期値から定格値までの段階的な値として記憶するパラメータ記憶部と、
前記パラメータ記憶部に記憶されたパラメータの設定値のうち、初期値から定格値まで段階的に設定値を変更するパラメータ設定部と、
前記パラメータ設定部が変更した設定値に基づいて、前記電力供給部による電力供給処理を制御する電力制御部と、
前記各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットにおいて、予め設定されたエラー判定条件を満たしたか否かを判定するエラー判定部と、
前記エラー判定条件を満たしたと前記エラー判定部が判定すると、前記電力供給部による、前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットへの電圧および電流のうち少なくとも一方の供給を停止させる停止処理を実行する停止制御部と、を備え、
前記パラメータ設定部は、
前記停止制御部が停止処理を実行した場合に、前記パラメータの設定値を、前記停止処理の実行時における設定値よりも前段階のいずれかの設定値に変更することを特徴とする電子線照射装置のエージング装置。
【請求項2】
前記パラメータ設定部は、前記パラメータの設定値を保持する時間である保持時間を設定するとともに、前記停止制御部による停止処理が実行された場合には、前記前段階のいずれかの設定値に設定された保持時間よりも保持時間を短く設定することを特徴とする請求項1に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項3】
前記エラー判定部は、前記各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットで放電が発生していることをエラー判定条件としてエラー判定を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項4】
前記エラー判定部は、前記各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットの真空度が予め定められた閾値以上であると、前記放電が発生したと判定することを特徴とする請求項3に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項5】
前記パラメータ記憶部には、
初期値から定格値まで複数段階設けられた、第1のパラメータの設定値および第2のパラメータの設定値が対応付けて記憶され、
前記第1のパラメータの設定値は、前記第2のパラメータの1つの設定値につき、複数対応付けられており、
前記パラメータ設定部は、
前記第2のパラメータの設定値を維持したまま、当該第2のパラメータの設定値に対応する第1のパラメータの設定値のうち、最も低い設定値から最も高い設定値へと段階的に前記第1のパラメータの設定値を変更する工程を、前記第2のパラメータの設定値が初期値から定格値になるまで段階的に繰り返すことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項6】
前記パラメータ設定部は、
前記エラー判定部によってエラーの判定がなされるとともに、前記停止制御部によって停止処理が実行された場合に、前記第2のパラメータの設定値を前記停止処理の実行時における設定値に維持するとともに、維持された当該第2のパラメータの設定値に対応する第1のパラメータの設定値のうち、最も低い設定値に前記第1のパラメータの設定値を変更することを特徴とする請求項5に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項7】
前記パラメータは、前記電子銃ユニットに供給する電力であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項8】
前記電子銃ユニットは、
熱電子を放出するカソード電極と、
前記カソード電極による熱電子の放出を制御するグリッドと、
を含んで構成され、
前記電力制御部は、前記電力供給部に、前記カソード電極に供給する電流と、前記グリッドに供給する電圧と、前記電子銃ユニットに供給する電圧のパルス幅と、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電力と、当該加速器ユニットに供給する電圧のパルス幅と、を所定値に維持させておき、
前記パラメータは、前記高周波増幅器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエージング装置。
【請求項9】
前記第1のパラメータは、前記高周波増幅器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であり、
前記第2のパラメータは、前記高周波増幅器ユニットに供給する電圧であることを特徴とする請求項5または6に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項10】
前記電力制御部は、前記電力供給部に、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電圧と、当該電圧のパルス幅とを所定値に維持させておき、
前記第1のパラメータは、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であり、
前記第2のパラメータは、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電力であることを特徴とする請求項5または6に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項11】
前記電力制御部は、前記電力供給部に、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電力と、当該電力のパルス幅とを所定値に維持させておき、
前記第1のパラメータは、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であり、
前記第2のパラメータは、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電圧であることを特徴とする請求項5または6に記載のエージング装置。
【請求項12】
前記電力制御部は、前記電力供給部に、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する、電圧と電力とを所定値に維持させておき、
前記第1のパラメータは、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電圧のパルス繰り返し数であり、
前記第2のパラメータは、前記高周波増幅器ユニットを通じて前記加速器ユニットに供給する電圧のパルス幅であることを特徴とする請求項5または6に記載の電子線照射装置のエージング装置。
【請求項13】
熱電子を放出する電子銃ユニットと、
前記電子銃ユニットから放出された熱電子を加速する加速器ユニットと、
前記加速器ユニットに高周波の電圧を供給する高周波増幅器ユニットと、
前記加速器ユニットと前記高周波増幅器ユニットとを接続する導波管ユニットと、
前記電子銃ユニットおよび前記加速器ユニットと内部空間が連結され、前記加速器ユニットで加速された熱電子を電子線として走査するとともに、大気圧雰囲気に取り出すスキャンホーンユニットと、
前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに電圧および電流のうち少なくとも一方を供給する電力供給部と、
前記各ユニットをエージングするエージング制御手段と、
を備えた電子線照射装置であって、
前記エージング制御手段は、
前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに供給される、電圧値、電流値、供給する電圧のパルス繰り返し数および供給する電圧のパルス幅のうち少なくとも1つに関わるパラメータの設定値を、初期値から定格値までの段階的な値として記憶するパラメータ記憶部と、
前記パラメータ記憶部に記憶されたパラメータの設定値のうち、初期値から定格値まで段階的に設定値を変更するパラメータ設定部と、
前記パラメータ設定部が変更した設定値に基づいて、前記電力供給部による電力供給処理を制御する電力制御部と、
前記各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットにおいて、予め設定されたエラー判定条件を満たしたか否かを判定するエラー判定部と、
前記エラー判定条件を満たしたと前記エラー判定部が判定すると、前記電力供給部による、前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つへの電圧および電流のうち少なくとも一方の供給を停止させる停止処理を実行する停止制御部と、を含んで構成され、
前記パラメータ設定部は、
前記停止制御部が停止処理を実行した場合に、前記パラメータの設定値を、前記停止処理の実行時における設定値よりも前段階のいずれかの設定値に変更することを特徴とする電子線照射装置。
【請求項14】
熱電子を放出する電子銃ユニットと、前記電子銃ユニットから放出された熱電子を加速する加速器ユニットと、前記加速器ユニットに高周波の電圧を供給する高周波増幅器ユニットと、前記加速器ユニットと前記高周波増幅器ユニットとを接続する導波管ユニットと、前記電子銃ユニットおよび前記加速器ユニットと内部空間が連結され、前記加速器ユニットで加速された熱電子を電子線として走査するとともに、大気圧雰囲気に取り出すスキャンホーンユニットと、前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに電圧および電流のうち少なくとも一方を供給する電力供給部と、を備えた電子線照射装置のエージング方法であって、
前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに供給される、電圧値、電流値、供給する電圧のパルス繰り返し数および供給する電圧のパルス幅のうち少なくとも1つに関わるパラメータの設定値を、初期値から定格値までの段階的な値として記憶しておき、
記憶しておいた前記パラメータの設定値のうち、初期値から定格値まで段階的に設定値を変更するステップと、
変更した前記設定値に基づいて、前記電力供給部に、前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットに電圧および電流のうち少なくとも一方を供給するステップと、
前記各ユニットのうちの少なくとも1つのユニットにおいて、予め設定されたエラー判定条件を満たしたか否かを判定するステップと、
前記エラー判定条件を満たしたと判定すると、前記電子銃ユニット、前記加速器ユニットおよび前記高周波増幅器ユニットのうち少なくとも1つのユニットへの電圧および電流のうち少なくとも一方の供給を停止させる停止処理を実行するステップと、
前記停止処理を実行した場合に、前記パラメータの設定値を、前記停止処理の実行時における設定値よりも前段階のいずれかの設定値に変更するステップと、
を含むことを特徴とする電子線照射装置のエージング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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