説明

電子線照射装置

【課題】横断面形状が無端リング状の長尺被照射物を偏平状態で搬送しながら該被照射物に電子線照射を施すにあたり、電子線照射に起因して被照射物内部に発生するガスを排除しながら電子線照射処理を施せる電子線照射装置を提供する。
【解決手段】電子線照射装置本体1を設けた電子線照射室2及び該室内の電子線照射領域に長尺被照射物Wを偏平状態で張設して搬送するための電子線照射領域上流側及び下流側の案内部材31、32を有する電子線照射装置10。被照射物W内に電子線照射により発生するガスGを排出するガス排出装置4を有し、ガス排出装置4は、被照射物Wを両案内部材31、32の間の第1位置P1から上流側案内部材31へ向け第2位置P2まで扱き部材(41、41)で扱くことで、ガスGを案内部材31よりさらに上流側の被照射物内へ押し出し排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線照射装置は、電線被覆材料等の高分子材料の電子線照射による改質(架橋等)、電子線照射による塗膜等のキュアリング、電子線照射による医療品等の殺菌などに利用されている。
【0003】
電子線照射対象である被照射物には、短尺なもの、長尺もの等があるが、長尺被照射物については、被照射物搬送方向において電子線照射領域の上流側及び下流側のそれぞれに配置した被照射物案内部材間に張設して搬送しつつ電子線照射を施すことが多い。かかる被照射物案内部材としては、回転可能の案内ローラが一般的である。
【0004】
このように長尺被照射物を電子線照射領域に張設して搬送しつつ該被照射物に電子線照射を施す電子線照射装置は、例えば、特開平9−138300号公報に開示されている。
【0005】
長尺被照射物の中には、ロープ状、紐状等の被照射物のほか、中実の棒状のもの、横断面形状(長手方向に垂直な断面の形状)が無端リング状である、円筒状、チューブ状のもの等がある。
【0006】
これらのなかで、横断面形状が無端リング状の長尺被照射物は、それが、柔軟性を有しているような場合は、該長尺被照射物の搬送の容易化及び該長尺被照射物への電子線照射の容易化等のために、該長尺被照射物を電子線照射室内の電子線照射領域に偏平状態に張設しつつ搬送しながら電子線照射を施すことが多い。
【0007】
この場合も、一般的には、長尺被照射物を偏平状態で張設しつつ搬送するための被照射物案内部材が、被照射物搬送方向において電子線照射領域の上流側及び下流側のそれぞれに配置され、被照射物はそれら両案内部材で支えられ、電子線照射領域に張設される状態で搬送され、電子線照射を受ける。
【0008】
【特許文献1】特開平9−138300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、横断面形状が無端リング状の長尺被照射物を、電子線照射領域の上流側及び下流側に配置した案内部材に偏平状態に支持させて張設して搬送しつつ電子線照射を施す場合、被照射物によっては、それら両案内部材間で電子線照射を受ける被照射物部分において、電子線照射に起因してガスが発生することがある。
【0010】
かかる被照射物においてその内部に発生したガスは、上流側及び下流側の案内部材のところで、該被照射物内部空間が偏平状に閉じられているので外部へ放出され難い。しかも、該被照射物は長尺ものであり、連続的に搬送されつつ電子線照射を受けるので、両案内部材間で電子線照射を受ける被照射物部分において該ガスが次第に増加し、該被照射物部分が電子線照射を受けるに適する偏平状態からガス圧で膨張し、所望の電子線照射を行い難くなったり、被照射物の搬送が困難になったり、最悪の場合は、該被照射物部分がガス圧で破裂する恐れもでてくる。
【0011】
そこで本発明は、電子線照射装置本体を設けた電子線照射室及び該電子線照射室内の電子線照射領域に横断面形状が無端リング状の長尺被照射物を偏平状態に張設して搬送するための該被照射物搬送方向において電子線照射領域の上流側及び下流側のそれぞれに配置された被照射物案内部材を有する電子線照射装置であって、かかる長尺被照射物を該両案内部材間に偏平状態に張設して搬送しながら該被照射物に電子線照射を施すにあたり、電子線照射に起因して該被照射物内部に発生するガスを排除しながら電子線照射処理を施せる電子線照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため本発明は、
電子線照射装置本体を設けた電子線照射室及び該電子線照射室内の電子線照射領域に横断面形状が無端リング状の長尺被照射物を偏平状態で張設して搬送するための該被照射物搬送方向において電子線照射領域の上流側及び下流側のそれぞれに配置された被照射物案内部材を有する電子線照射装置であり、
前記被照射物内に電子線照射により発生するガスを排出するためのガス排出装置を有しており、該ガス排出装置は、前記被照射物を前記上流側及び下流側の両案内部材の間の第1位置から該上流側案内部材へ向け第2位置まで扱き部材で扱くことで、該ガスを、該上流側案内部材よりさらに上流側の被照射物内へ押し出し排除するガス排出装置である電子線照射装置を提供する。
【0013】
本発明にかかる電子線照射装置によると、横断面形状が無端リング状の長尺被照射物を電子線照射領域の上流側及び下流側にそれぞれ配置された被照射物案内部材間に張設して搬送しながら該両案内部材間の被照射物部分に電子線照射処理を施せる。
【0014】
かかる両案内部材間の被照射物部分への電子線照射により該被照射物部分の内部にガスが発生しても、ガス排出装置を用いて、該被照射物部分を、上流側及び下流側の両案内部材の間の第1位置から該上流側案内部材へ向け第2位置まで扱き部材で扱くことで(少なくとも1回又は複数回繰り返し扱くことで)、該ガスを、該上流側案内部材よりさらに上流側の被照射物内へ押し出し排除しながら電子線照射処理を実施できる。
【0015】
さらに説明すると、ガス排出装置により、被照射物を上流側及び下流側の両案内部材の間の第1位置から該上流側案内部材へ向け第2位置まで扱き部材で扱くことで、該扱きにより上流側へ押し出されるガスの圧力が、上流側案内部材に当接して偏平状に閉じられている被照射物部位の内部を押し開き、それにより、扱き出されたガスが、該上流側案内部材のさらに上流側に続いている、これから電子線照射を受ける被照射物部分の内部へ排除される。
【0016】
上流側案内部材に当接している被照射物部位の内部は、扱きにより加圧されたガスの圧力が作用しないときは、該当接により閉じられ、上流側へ排除されたガスが該部位から下流側へ逆流することは抑制される。従って、ガス排出装置で、被照射物を、上流側及び下流側の両案内部材の間の第1位置から該上流側案内部材へ向け第2位置まで、少なくとも1回或いは繰り返し扱くことで、ガスを、該上流側案内部材よりさらに上流側の被照射物内へ押し出し排除しながら電子線照射処理を実施できる。
【0017】
なお、例えば、前記電子線照射領域上流側案内部材とさらにその上流側の案内部材或いは被照射物繰り出しリール等の部材との間隔を、その間の被照射物部分が、排除されてくるガスを受け入れるに支障がない程度の長さを有し得る間隔に設定しておく等により、該上流側被照射物部分にガスを容易に押し出し排除できる。
【0018】
ガス排出装置における被照射物扱きのための扱き部材は、被照射物を扱けるものであれば、特に制限はないが、例えば、前記第1位置で被照射物を挟着開始し、該挟着状態で前記第2位置へ移動可能の対ピンチ部材を挙げることができる。
そこで、前記ガス排出装置の例として、前記被照射物を前記偏平状態の両面側から挟着して扱くための少なくとも一組の対ピンチ部材と、該対ピンチ部材を移動させるピンチ部材駆動部とを含んでいるものを挙げることができる。かかるピンチ部材駆動部としては、該対ピンチ部材が、被照射物を前記第1位置で挟着開始し、前記第2位置まで該挟着状態のまま該被照射物を扱きつつ移動し、該第2位置から、被照射物の挟着を解除した状態で該第1位置へと戻るように該対ピンチ部材を循環移動させるものを例示できる。
【0019】
かかる対ピンチ部材は、被照射物を挟着した状態で転動できる回転可能の対ローラであることが望ましいが、回転部材である必要はなく、被照射物を挟着したまま該被照射物に対し相対的に移動可能な滑り性を有する、回転しない対ピンチ部材(非回転部材)でもよい。
【0020】
いずれにしても、ガス排出装置は、かかる対ピンチ部材を一組有しているだけでもよいが、複数組有し、前記ピンチ部材駆動部は、該複数組の対ピンチ部材のそれぞれが順次、被照射物を前記第1位置で挟着開始し、前記第2位置まで該挟着状態のまま該被照射物を扱きつつ移動し、該第2位置から、被照射物の挟着を解除した状態で該第1位置へと戻るように該対ピンチ部材を循環移動させるものであってもよい。かかる複数組の対ピンチ部材を採用することで、効率よくガス排除を行える。
【0021】
また、複数組の対ピンチ部材を採用する場合、前記ピンチ部材駆動部は、いずれかの対ピンチ部材が前記第2位置に到達したときには、残りの対ピンチ部材のうち少なくとも一組の対ピンチ部材が前記第1位置から第2位置までの間に位置して被照射物を挟着しているように、該複数対の対ピンチ部材を循環移動させるものであってもよい。
【0022】
かかる構成を採用すると、電子線照射により被照射物内部に発生するガスを、それだけ、次々と円滑に確実に排除できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によると、電子線照射装置本体を設けた電子線照射室及び該電子線照射室内の電子線照射領域に横断面形状が無端リング状の長尺被照射物を偏平状態に張設して搬送するための該被照射物搬送方向において電子線照射領域の上流側及び下流側のそれぞれに配置された被照射物案内部材を有する電子線照射装置であって、かかる長尺被照射物を該両案内部材間に偏平状態に張設しつつ搬送しながら該被照射物に電子線照射を施すにあたり、電子線照射に起因して該被照射物内部に発生するガスを排除しながら電子線照射処理を施せる電子線照射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る電子線照射装置の1例の構成の概略を示す図である。
図2は図1の電子線照射装置10におけるガス排出装置4の一部の概略斜視図である。
【0025】
図1に示す電子線照射装置10は、電子線照射装置本体1を備えた電子線照射室2を含んでいる。電子線照射室2は電子線照射対象である被照射物Wの入口21及び出口22を有している。内部には、電子線照射装置本体1の電子線照射窓11の下方の電子線照射領域の、被照射物Wの搬送方向において上流側に被照射物案内部材31が、下流側に被照射物案内部材32が、それぞれ配置されている。
【0026】
ここでの案内部材31、32は回転自在の案内ローラである。
なお、電子線照射室2の入口21の外側にも被照射物Wを案内する案内部材(ここでは案内ローラR1が設置されているとともに、出口22の外側にも案内部材(ここでは案内ローラ)R2が設置されている。
【0027】
ここでの被照射物Wは、図3に示すように、長手方向Xに垂直な横断面形状が無端リング形状を呈する、柔軟なフィルムからなる長尺チューブである。該長尺チューブWは、偏平状態で図示省略の繰り出しリールに巻き取られており、該リールから案内ローラR1及び必要に応じ、さらにその上流側の案内部材に案内されて照射室入口21から照射室2内へ導入され、ここで、電子線照射領域の上流側及び下流側の案内ローラ31、32の上面に圧接されて該両案内ローラ31、32間で張設されつつ、照射室出口22から導出され、案内ローラR2等の案内部材に案内されつつ、図示省略の巻き取りリールに巻き取られるように搬送される。かかる搬送の途中で、電子線照射領域において電子線照射装置本体1の窓11から電子線照射を受ける。
【0028】
照射室2内にはガス排出装置4も設置されている。ガス排出装置4は、本例では、電子線照射領域より上流側且つ案内ローラ31より下流側のチューブ部分に対して設置されている。
【0029】
ガス排出装置4は、本例では、3組の対ピンチローラ(41、41)及び該対ピンチローラを駆動するピンチローラ駆動部42を含んでいる。
【0030】
各組の対ピンチローラにおける一方のピンチローラ41はチューブWの搬送路より上側に配置されており、他方のピンチローラ41はチューブWの搬送路より下側に配置されている。
【0031】
ピンチローラ駆動部42は、チューブWの搬送路の上側に配置された3本のピンチローラ41を循環駆動するための上流側チェーンスプロケット421、下流側チェーンスプロケット422及びこれらスプロケットに巻き掛けられた無端チエーン423と、チューブWの搬送路の下側に配置された3本のピンチローラ41を循環駆動するための上流側チェーンスプロケット421、下流側チェーンスプロケット422及びこれらスプロケットに巻き掛けられた無端チエーン423とを含んでいる。
【0032】
チューブWの搬送路の上側に配置された3本のピンチローラ41を循環駆動するための上流側チェーンスプロケット421、下流側チェーンスプロケット422及びこれらスプロケットに巻き掛けられた無端チェーン423は、図2に示す位置関係に設置されている。
【0033】
すなわち、スプロケット421、422は、それぞれチューブWの搬送路を間にして手前側と奥側にそれぞれ1枚ずつ設けられており、手前側及び奥側の2枚のスプロケット421は軸421sにて連動回転するように連結されている。手前側及び奥側の2枚のスプロケット422は軸422sにて連動回転するように連結されている。これらスプロケットは図省略のフレームに回転可能に支持されている。チェーン423は、手前側の上流側及び下流側のスプロケット421、422に巻き掛けられているとともに、奥側の上流側及び下流側のスプロケット421、422に巻き掛けられている。
【0034】
各ピンチローラ41は、その両軸端が手前側及び奥側のチェーン423、423にそれぞれ、回転自在に連結されている。
従って、チューブ搬送路上側のチェーン423が図上反時計方向に回動することで、該チェーンに連結された各ピンチローラ41は、第1位置P1でチューブWに接触開始し、チューブWに接触したまま転動しつつ、上流側案内ローラ31の直ぐ手前の第2位置P2まで移動することができ、その後、チューブWから離れて移動し、再び第1位置P1に戻ることができる。
【0035】
チューブ搬送路の下側に配置された3本のピンチローラ41を循環駆動するための上流側チェーンスプロケット421、下流側チェーンスプロケット422及びこれらスプロケットに巻き掛けられた無端チェーン423は、図示を省略しているが、図2に示す位置関係に対し、上下対称に設置されている。
【0036】
すなわち、下側のスプロケット421、422は、それぞれチューブWの搬送路を間にして手前側と奥側にそれぞれ1枚ずつ設けられており、手前側及び奥側の2枚のスプロケット421は軸421sにて連動回転するように連結されている。手前側及び奥側の2枚のスプロケット422は軸422sにて連動回転するように連結されている。これらスプロケットは図省略のフレームに回転可能に支持されている。チェーン423は、手前側の上流側及び下流側のスプロケット421、422に巻き掛けられているとともに、奥側の上流側及び下流側のスプロケット421、422に巻き掛けられている。
【0037】
各ピンチローラ41は、その両軸端が手前側及び奥側のチェーン423、423にそれぞれ、回転自在に連結されている。
従って、チューブ搬送路下側のチェーン423が図上時計方向に回動することで、該チェーンに連結された各ピンチローラ41は、第1位置P1でチューブWに接触開始し、被照射物Wに接触したまま転動しつつ、第2位置P2まで移動することができ、その後、チューブWから離れて移動し、再び第1位置P1に戻ることができる。
【0038】
上側及び下側の上流側のスプロケット421は 図示省略の電動モータにより図示省略の伝動機構を介して互いに反対方向に同期して回転駆動可能であり、従って上下のチェーン423も互いに反対方向に、すなわち、上側チェーン423は図上反時計方向回りに、下側チェーン423は図上時計方向まわりに、同期して回転可能である。
【0039】
そして、上側の各ピンチローラ41が第1位置に位置するとき、これと対をなす下側ピンチローラ41も第1位置に位置し、これら対ピンチローラ(41、41)はチューブWを挟着開始し、チューブWを扱きつつ第2位置へ移動することができる。
【0040】
また、各ピンチローラ41はチェーン423に等間隔配置で連結されており、チェーンスプロケット421、422の径、チェーン423の周長等は、一組の対ピンチローラ(41、41)が第2位置に到達したときには、後続の対ピンチローラ(41、41)が第1位置P1或いはそれより第2位置P2寄りの位置でチューブWを挟着しているように設定されている。
【0041】
以上説明した電子線照射装置10によると、長尺チューブWを電子線照射領域の上流側及び下流側にそれぞれ配置された案内ローラ31、32間に張設して搬送しながら該両案内ローラ31、32間のチューブW部分に電子線照射処理を施せる。
【0042】
かかる両案内ローラ31、32間のチューブW部分への電子線照射により該チューブ部分の内部にガスが発生しても、ガス排出装置4の対ピンチローラ(41、41)を用いて、該チューブ部分を両案内ローラ31、32間の第1位置P1から第2位置P2まで、繰り返し挟着して扱くことで、該ガスを、案内ローラ31よりさらに上流側のチューブW部分内へ押し出し排除しながら電子線照射処理を実施できる。
【0043】
さらに説明すると、ガス排出装置4の対ピンチローラ(41、41)により、チューブWを案内ローラ31、32間の第1位置P1から第2位置P2まで挟着しつつ扱くことで、該扱きにより上流側へ押し出されるガスの圧力が、案内ローラ31に圧接されて偏平状に閉じられているチューブ部位の内部を押し開き、それにより、扱き出されたガスが、案内ローラ31のさらに上流側に続いている、これから電子線照射を受けるチューブW部分の内部へ排除される。
【0044】
また、一組の対ピンチローラ(41、41)が第2位置P2に到達したときには、後続の対ピンチローラ(41、41)が第1位置P1或いはそれより第2位置寄りの位置でチューブWを挟着しているので、それだけ円滑、確実にガスを排除できる。
【0045】
案内ローラ31に当接しているチューブWの部位の内部は、扱きにより加圧されたガスの圧力が作用しないときは、該当接により閉じられ、上流側へ排除されたガスが該部位から下流側へ逆流することは抑制される。従って、チエーン423を回動させ、複数組の対ピンチローラ(41、41)を循環移動させ、各組の対ピンチローラ(41、41)で、チューブWを、案内ローラ31、32間の第1位置P1から第2位置P2まで、繰り返し扱くことで、ガスを、案内ローラ31よりさらに上流側のチューブ部分内へ押し出し排除しながら電子線照射処理を実施できる。
【0046】
なお、本例では、案内ローラ31とさらにその上流側の案内ローラR1との間隔は、その間のチューブW部分が、排除されてくるガスを受け入れるに支障がない程度の長さを有し得る間隔に設定されている。
【0047】
以上説明したガス排出装置4では、一組の対ピンチローラ(41、41)が第2位置P2に到達したときには、後続の対ピンチローラ(41、41)が第1位置P1或いはそれより第2位置寄りの位置でチューブWを挟着しているので、それだけ円滑、確実にガスを排除できるが、一組の対ピンチローラ(41、41)が第2位置P2に到達して、チューブWから離れていくときに、後続の対ピンチローラ(41、41)が未だ第1位置P1に到達していなくても、ガス排除は可能である。
【0048】
何故なら、本例では、一組の対ピンチローラ(41、41)が第2位置P2に到達して、チューブWから離れていくと、該対ピンチローラ(41、41)により加圧されていたガスの圧力が低下し、案内ローラ31に当接しているチューブWの部位の内部が閉じられ、それにより、案内ローラ31より上流側のチューブW部分へ排出されたガスが逆流することが抑制されるからである。後続の対ピンチローラ(41、41)により、再び、ガス圧を上昇させて案内ローラ31に当接しているチューブWの部位の内部を開き、該ガスを案内ローラ31より上流側のチューブW部分内へ押し出し排除できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、横断面形状が無端リング形状を呈する被照射物を偏平状態に搬送しつつ該被照射物に電子線照射処理を施すとき、該被照射物内に発生することがあるガスを排除しつつ所望の電子線照射処理を施すことに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る電子線照射装置の1例の構成の概略を示す図である。
【図2】図1の装置におけるガス排出装置の一部の概略斜視図である。
【図3】被照射物の1例であるチューブの一部の斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
10 電子線照射装置
1 電子線照射装置本体
11 装置本体1の電子線照射窓
2 電子線照射室
21 室2の入口
22 室2の出口
31 電子線照射領域上流側の被照射物案内ローラ
32 電子線照射領域下流側の被照射物案内ローラ
R1、R2 室2外の被照射物案内ローラ
4 ガス排出装置
41 対ピンチローラを構成するピンチローラ
42 ピンチローラ駆動部
421、422 チェーンスプロケット
421s、422s スプロケット連結軸
423 無端チェーン
P1 第1位置
P2 第2位置
W 被照射物例である長尺チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線照射装置本体を設けた電子線照射室及び該電子線照射室内の電子線照射領域に横断面形状が無端リング状の長尺被照射物を偏平状態に張設して搬送するための該被照射物搬送方向において電子線照射領域の上流側及び下流側のそれぞれに配置された被照射物案内部材を有する電子線照射装置であり、
前記被照射物内に電子線照射により発生するガスを排出するためのガス排出装置を有しており、該ガス排出装置は、前記被照射物を前記上流側及び下流側の両案内部材の間の第1位置から該上流側案内部材へ向け第2位置まで扱き部材で扱くことで、該ガスを、該上流側案内部材よりさらに上流側の被照射物内へ押し出し排除するガス排出装置であることを特徴とする電子線照射装置。
【請求項2】
前記ガス排出装置は、前記扱き部材として、前記被照射物を前記偏平状態の両面側から挟着して扱くための少なくとも一組の対ピンチ部材を有しているとともに、該対ピンチ部材を移動させるピンチ部材駆動部を含んでおり、該ピンチ部材駆動部は、該対ピンチ部材が、該被照射物を前記第1位置で挟着開始し、前記第2位置まで該挟着状態のまま該被照射物を扱きつつ移動し、該第2位置から、被照射物の挟着を解除した状態で該第1位置へと戻るように該対ピンチ部材を循環移動させる請求項1記載の電子線照射装置。
【請求項3】
前記対ピンチ部材は複数組設けられており、前記ピンチ部材駆動部は、該複数組の対ピンチ部材のそれぞれが順次、前記被照射物を前記第1位置で挟着開始し、前記第2位置まで該挟着状態のまま該被照射物を扱きつつ移動し、該第2位置から、被照射物の挟着を解除した状態で該第1位置へと戻るとともに、いずれかの対ピンチ部材が該第2位置に到達したときには、残りの対ピンチ部材のうち少なくとも一組の対ピンチ部材が該第1位置から第2位置までの間に位置して該被照射物を挟着しているように、該複数対の対ピンチ部材を循環移動させる請求項2記載の電子線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−71552(P2007−71552A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255592(P2005−255592)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(503237806)株式会社NHVコーポレーション (37)
【Fターム(参考)】