電子織物及び電子織物の機能領域を決定する方法
本発明は、電子織物100,200の機能領域を決定する方法に関するものである。該電子織物は、第1の複数の導体108a〜b,202a〜d、第2の複数の導体104a〜b,204a〜d及び複数のコンデンサ112,212a〜pを備える織物基体を有し、各コンデンサは誘電体103aにより分離された上記第1の複数の導体108a〜b,202a〜dのうちの導体と上記第2の複数の導体104a〜b,204a〜dのうちの導体とを有し、これらコンデンサ112,212a〜pは当該電子織物の実質的に全表面にわたり分散され、各コンデンサ112,212a〜pは少なくとも10pFの容量を有する。本方法は、上記コンデンサの各々に対して、(a)当該コンデンサに関連する上記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する上記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加するステップ301と、(b)当該コンデンサの容量を示す電気特性を検出するステップ302と、(c)該検出された電気特性を評価するステップ303と、(d)該評価に基づいて当該コンデンサが上記電子織物の機能領域に含まれるかを判定するステップ304とを有する。本方法は、当該電子織物における導体間に形成された上記コンデンサ等の、該電子織物に本来備わった物理的特性を利用するので、機能領域を決定するために当該電子織物上に何の電子デバイスも配置する必要がない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子織物、及び電子織物の機能領域を決定する方法に関する。本発明は、更に、電子織物の機能領域を決定するためのコントローラにも関する。
【背景技術】
【0002】
織物は、日々の生活に使用されている。織物と電子装置が統合された場合、新たな応用分野が出現する。衣類産業等の多くの分野において、所望の形状及び特徴構造を形成するために、織物は大きなシートから切り出される。逆に、電子部品は、典型的には、当該機能のために既に寸法決めされた所定の回路基板上に配置される。電子装置が織物上に配置される場合、当該電子織物のシートが、機能を失わずに如何なる形状にも切り出すことができたなら、製造コストが減少し、ユーザにとっての汎用性が増加するであろう。
【0003】
米国特許出願公開第2006/0035554は、大きな寸法で製造することができると共に所望の形状に裁断することが可能な織物布を開示している。この織物は、該織物布全体に配置される電子データ処理用の複数の微細電子部品を有している。これらの微細電子部品は、相互に電子メッセージを交換して自己組織化を可能にし、これにより当該電子織物を、得られた特定の寸法に適合させる。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0035554に開示された電子織物の欠点は、処理及びデータ通信が可能な多数の微細電子デバイスが必要であり、これが当該電子織物のコストを増加させる点にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上述した及び他の欠点に鑑み、本発明の大きな目的は、電子織物の機能領域を決定する費用効果的且つ汎用性のある方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、これら及び他の目的は、第1の複数の導体及び第2の複数の導体を備える織物基体を有する電子織物の機能領域を決定する方法であって、上記織物基体は、各々が誘電体により分離された上記第1の複数の導体のうちの導体及び上記第2の複数の導体のうちの導体を有する複数のコンデンサが当該電子織物の実質的に全表面にわたって形成され、該方法が、これらコンデンサの各々に対して、当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加するステップと、当該コンデンサの容量を示す電子特性を検出するステップと、該検出された電子特性を評価するステップと、当該コンデンサが上記電子織物の機能領域に含まれるかを上記評価に基づいて判定するステップとを有するような方法により達成される。
【0007】
本方法は、当該電子織物における導体間に形成されたコンデンサ等の該電子織物に本来備わった物理的特性を利用しているので、機能領域を決定するために、当該電子織物上に何の電子デバイス(例えば、従来技術において記載された微細電子部品等)も配置される必要がない。このことは、コストを低減すると共に、汎用性も向上させる。何故なら、機能領域を、当該電子織物上に如何なる電子デバイスが配置される前又は後においても決定することができるからである。更に、全ての必要な機能を、上記導体に印加される電圧を制御するように構成された単一のコントローラ内に収容することができる。該コントローラは、当該電子織物上に配設することができるか、又は外部装置内(例えば、携帯型若しくは静止型試験装置内)に設けることもできる。本方法は、製造の間に及び/又は当該電子織物が動作している際に使用することができる。本方法は、例えば電子織物が所望の形状に裁断された後に、該電子織物の機能領域を決定するためのみならず、該電子織物における接続不良(破損された導体等)を検出するためにも使用することができる。このことは、上記コントローラが、如何なる駆動データも当該機能領域に適合させることも可能にする。例えば、当該電子織物が織物表示器として使用される場合、上記コントローラは画像をアドレス指定可能なピクセルの寸法及び形状に調整することができる。
【0008】
ここで、機能領域とは、電子織物におけるアドレス指定可能な領域と理解されるべきである。電子織物が所望の形状に裁断されている用途例では、機能領域は当該織物の切除されていない部分を指すことができる。しかしながら、当該電子織物における導体が破壊された領域は、当該機能領域から除外することもできる。
【0009】
本発明は、複数の導体を有する織物基体の適切な構成により、これら導体は測定可能な容量を持つ複数のコンデンサを形成することができるという理解に基づくものである。更に、発明者は、機能領域を、当該電子織物の実質的に全表面にわたり斯様なコンデンサを設けると共に、斯かるコンデンサの容量を評価することにより決定することができると理解した。
【0010】
当業者であれば、正確な分散(分布)は例えば用途により変化するであろうことが理解される。例えば、当該電子織物が織物表示装置に使用されるなら、該電子織物を、測定可能なコンデンサが各々のアドレス指定可能なピクセルに対して形成されるように構成することが好ましいであろう。
【0011】
ここで、電子織物とは、電気導体が設けられた織物基体と理解されたい。該織物基体は剛性の又は可撓性の基体に基づくものであり得る。特に有利な実施例において、上記基体は布地であり得る。上記導体は織り合わされた導電性縦糸及び/又は横糸とすることができるか、又は当該織物基体に、例えば縫いつけ、刺繍、クランプ留め、超音波接着、積層、キルティング、クローシェ編みにより取り付けることができる。他の代替例は、導電性インク、電気メッキ、非電気メッキ又はエッチング形成導体パターンを使用することであろう。
【0012】
前記の印加される電圧は交流電圧とすることができる一方、容量を示す前記の検出される電気特性は交流電流とすることができる。前記コンデンサはフィルタを形成することもでき、その場合において、フィルタされたAC(交流)信号の出力を、当該容量を示す電気特性として検出することができる。更に、該AC信号に対する電圧応答を、当該容量を示す電気特性として検出することもできる。代替実施例によれば、前記コンデンサを充電するためにDC電圧を印加することもできる。この場合、放電電流を、当該容量を示す電気特性として検出することができる。しかしながら、この構成は、交流電圧を使用する方法よりも長い時間が掛かる。
【0013】
検出された電気特性を評価する前記ステップは、検出された電気特性を所定の閾値と比較するステップを含むことができる。しかしながら、斯かる評価は、複数の他のコンデンサに関して検出された電気特性の値と比較することにより正規化することもできる。
【0014】
評価されるコンデンサ(複数のコンデンサ)と関連しない如何なる導体(複数の導体)も、評価されるコンデンサと関連する導体の間に電圧が印加されている間には一定の電圧に維持することができる(例えば、これら導体を接地電位、即ち0Vに保持することにより)。利点は、評価されるコンデンサに関連する容量を、他の導体から派生する他の並列及び直列容量により影響を受けることなく検出することができる点にある。
【0015】
本発明の第2態様によれば、第1の複数の導体、第2の複数の導体及び複数のコンデンサを備えた織物基体を有する電子織物であって、各コンデンサが誘電体により分離された上記第1の複数の導体のうちの導体及び上記第2の複数の導体のうちの導体を有し、これらコンデンサが当該電子織物の実質的に全表面にわたって分散され、各コンデンサが少なくとも10pFの容量を有するような電子織物が提供される。
【0016】
このような電子織物は、例えば織り(weaving)等の通常の製造技術により製造することができる。更に、斯かる電子織物の機能領域は、該電子織物上に如何なる電子デバイスが配置されることも要せずに決定することができる。更に、本発明の該第2態様の効果及びフィーチャは、第1態様に関連して上述したものと殆ど同様である。
【0017】
当該コンデンサに関連する第1の複数の導体のうちの導体と、当該コンデンサに関連する第2の複数の導体のうちの導体との間の距離は、該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つようにすることができる。例えば、当該織物基体が、織り合わされた導電性及び非導電性の糸から形成され、コンデンサが2つの導電性糸の間の交差部分に形成される場合、当該容量は斯かる2つの導電性糸を分離する縦糸の層数を変えることにより調整することができる。同様に、コンデンサが並んで配置された2つの導電性糸の間に形成される場合、当該容量は斯かる2つの導電性糸の間に配設された非導電性糸の数を変えることにより調整することができる。約10pFなる容量は、典型的には、測定装置(前記コントローラ等の)を合理的な費用で設けることが可能な最小の容量である。
【0018】
当該コンデンサに関連する第1の複数の導体のうちの導体と、当該コンデンサに関連する第2の複数の導体のうちの導体との間の誘電体は、該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つような誘電率を有することができる。
【0019】
当該コンデンサに関連する第1の複数の導体のうちの導体の導電面積と、当該コンデンサに関連する第2の複数の導体のうちの導体の導電面積とは、該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つようなものとすることができる。
【0020】
織られた織物基体の場合、上記導電面積は、例えば、より大きな直径の導電性糸を使用することにより、又は互いに隣接する2以上の導電性糸を織って単一の導体を形成することにより増加させることができる。導電面積は、導電性糸のうちの当該コンデンサを形成する部分の長さを調整することにより変化させることもできる。
【0021】
上記織物基体は、各コンデンサが少なくとも100pFの容量を持つように構成することができる。これは、前記導体間の距離、前記導電面積及び/又は前記誘電体を調整することにより達成することができる。コンデンサを構成する対の導体の間の誘電体として高誘電率を持つ非導電性糸が使用される場合、これらの高誘電率糸は漂遊容量を防止するために当該織物基体に選択的に(例えば、コンデンサを構成すべき導体間にのみ)織り込むことができる。少なくとも100pFの容量を持つコンデンサを使用することは、(例えば、ノイズに対して)余り敏感でない一層強い方法を可能にする。更に、一層大きな容量は検出するのが一層容易であり、これにより、測定装置(例えば、前記コントローラ)のコストを低減することができる。
【0022】
当該電子織物は、一群の電子部品を駆動するように構成された第1及び第2の群の駆動導体を更に有することができる。斯かる駆動導体は、典型的には、第1の群の駆動導体のうちの導体と第2の群の駆動導体のうちの導体との間に電子デバイス(例えば、LED)を容易に配設することができるように構成される。例えば、これら駆動導体は、当該織物の表面においてアクセスすることができると共に、電子部品が接続されるのを可能にするような距離で配置することができる。利点は、前記第1及び第2の複数の導体を、上記駆動導体に接続された如何なる電子デバイスに影響を与えることもなしに当該電子織物の機能領域を決定すべく使用することができる点にある。このことは、例えば、当該電子織物の機能領域を決定すべく前記容量を評価するために印加される電圧が、さもなければ悪影響を有し得るような敏感な電子部品の場合に有利であり得る。
【0023】
前記第1及び第2の複数の導体は、上記第1及び第2の群の駆動導体から電気絶縁層により分離することができる。織り合わされた導電性及び非導電性糸から形成される織物基体の場合、この電気絶縁層は、非導電性糸のみを有する少なくとも1つの縦糸層とすることができる(一方、導電性横糸は、この少なくとも1つの縦糸層とは交差しない)。
【0024】
本発明の第3態様によれば、電子織物の機能領域を決定するために該電子織物に接続することが可能なコントローラが提供される。該コントローラは、前記コンデンサの各々を、当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加し、当該コンデンサの容量を示す電気特性を検出し、該検出された電気特性を評価し、該コンデンサが当該電子織物の機能領域内に含まれるかを上記評価に基づいて判定することにより、評価するように構成することができる。
【0025】
上記コントローラは、評価されるコンデンサに関連する導体間に電圧が印加される間に、該評価されるコンデンサ(複数のコンデンサ)とは関連しない如何なる導体も一定電圧に維持されるように構成することができる。
【0026】
上記コントローラは、当該電子織物上に、又は電子織物の機能領域を決定するために使用することが可能な試験装置内に配置することができる。該試験装置は静止型又は携帯型とすることができる。試験装置を使用することにより、各電子織物に対して新たなコントローラを設ける必要がなくなり、コストを更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1a】図1aは、本発明の一実施例による、3層に織られた電子織物を概略図示する。
【図1b】図1bは、動き推定1aにおける織物の概略断面図である。
【図2】図2は、第1の複数の導体及び第2の複数の導体の配置を図示する概要図である。
【図3】図3は、本発明による方法の概略フローチャートである。
【図4a】図4aは、壊れた導体の検出を概略図示する。
【図4b】図4bも、壊れた導体の検出を概略図示する。
【図5a】図5aは、所望の形状に裁断される前の電子織物を概略図示する。
【図5b】図5bは、右上の角部が切除された電子織物の一部を概略図示する。
【図6a】図6aは、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図6b】図6bも、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図6c】図6cも、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図6d】図6dも、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図6e】図6eも、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図7】図7は、本発明による電子織物の更に他の実施例を概略図示する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の前記及び他の態様を、本発明の目下のところ好ましい実施例を示す添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0029】
尚、これらの図は概略的であり、寸法通りには描かれていないことに注意されたい。また、明瞭化及び便宜のため、これら図の各部の相対寸法及び比率は誇張されているか又は寸法が縮小されて示されている。
【0030】
以下の記載において、本発明は、非常に限られた数の縦糸及び横糸並びに特定の簡略化された織り構造を持つ織物を参照して説明される。しかしながら、これは決して本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明は他の種類の織り構造を持つ織物にも等しく適用可能である。更に、本発明は隣接する導体を分離する中間の非導電性糸で以って説明されているが、隣接する導体の間に誘電体を設ける他の方法も存在する。例えば、導体に電気絶縁被覆(コーティング)を設けることもできる。更に、織り合わされた導電性糸の代替として、導体を当該織物基体に、例えば縫いつけ、刺繍、クランプ留め、超音波接着、積層、キルティング又はクローシェ編みにより取り付けることもできる。また、導電インク、エッチング形成された導体パターン、電気メッキ又は非電気メッキを使用することもできる。
【0031】
以下の説明では、縦糸及び横糸が繰り返し参照される。製織においては、製織の方向に概ね延びる糸が縦糸と呼ばれる一方、製織方向(及び縦糸)とは実質的に垂直に延びる糸は横糸と呼ばれる。典型的には、縦糸及び横糸は互いに垂直となるが、これは必ずしも当てはまる必要はなく、本発明は互いに垂直な縦糸及び横糸を持つものに限定されると見なされるべきではない。
【0032】
図1は、本発明による電子織物100の一実施例を概略図示している。図1aには、本発明の第1実施例による3層に織られた織物基体が示され、該織物基体は中間縦糸層103により分離された上側及び下側縦糸層101及び102を有している。下側縦糸層102は非導電性縦糸105a〜kにより分離された3本の導電性縦糸104a〜cを有する一方、上側縦糸層101及び中間縦糸層103は、ここでは、全て非導電性縦糸からなっている。横糸方向においては、図1では2本の導電性横糸108a〜bが見られる。図1aに示された導電性横糸108a〜bの間には非導電性横糸が存在し得るが、ここでは、明瞭化のために省略されている。
【0033】
図1aにおける織物基体のA−A線に沿う概略断面を示す図1bを参照すると、導電性横糸108bは、導電性縦糸104aと交差する一方、該縦糸から電気的に絶縁されたままとなっている。中間層103における非導電性糸103aは上記導電性横糸108bと導電性縦糸104aとの間の誘電体を形成するので、導体104a、108bの間の交差部分に小さなコンデンサ112が形成される。当業者により理解されるように、該コンデンサの容量は、上記誘電体の誘電率、導電プレート(即ち、当該コンデンサを形成する上記導体の部分)の面積及び該導電プレートの間の距離に依存する。このように、該コンデンサの容量は、例えば上記導体を分離する非導電性糸の数を調整することにより、少なくとも10pF(ピコファラド)、より好ましくは少なくとも100pFとなるように構成することができる。100pFより大きな容量は、10000メートル当たり110グラムの重さ(110dtexに相当する)を有するポリアミドの非導電性糸により分離された1対の交差する導体に対して達成され得ることが分かった。
【0034】
導体を分離する糸の数は、典型的には1本又は2本であるが、用途に応じて、もっと多い糸を使用することもできる。追加の糸は容量を低下させるが、導体を分離する2本以上の非導電性糸を有することが時には望ましい可能性もある。これは、例えば、短絡回路の危険性を低減し得るからである。
【0035】
導電性横糸108bと導電性縦糸104aとの間に交流電圧が印加されるので、この結果として、交流電流が生じる。該交流電圧の周波数が高いほど、導電性横糸108bと導電性縦糸104aとの間に一層多くの電流が流れる。
【0036】
上記周波数は、例えば蛍光灯(より低い周波数に対して)又は無線信号(より高い周波数に対して)からの妨害を回避するために、好ましくは1kHz〜1MHzの範囲内とすることができる。より高い周波数は、より多くの電力を消費する傾向もある。このように、典型的な周波数は、より好ましくは、1kHz〜500kHzの範囲内であり得る。
【0037】
前記容量を測定するために印加される電圧は、好ましくは、当該電子織物の通常の動作電圧内、即ち、典型的には0.5V〜20Vの範囲内とすることができる。
【0038】
導電性横糸108bと導電性縦糸104aとの間の交差部分を参照して上述したコンデンサの原理は、適切に構成されるならば(即ち、適切な誘電体の誘電率並びに導電プレートの面積及び距離)、誘電体により分離された他の導体にも当てはまることが理解される。更に、上記導体は、コンデンサを形成するために互いに交差する必要はなく、並んで延在することもできる(例えば、誘電体により分離された2つの平行な導電性縦糸)。
【0039】
図2は、電子織物200における第1の複数の導体及び第2の複数の導体の配置を示す概要図である。第1の複数の導体202a〜d及び第2の複数の導体204a〜dは、互いに電気的に絶縁され、例えば図1に関連して前述した一群の導電性縦糸及び横糸として実施化することができる。
【0040】
図2には、電子織物200の一部における第1の複数の導体202a〜d及び第2の複数の導体204a〜dが概念的に示されており、この場合において、上側の層の導体は行202a〜dに実線により図示される一方、下側の層の導体は列204a〜dに点線により図示されている。
【0041】
更に、この場合、当該電子織物200はマイクロコントローラを含むコントローラ206に接続され、該コントローラは行202a〜dを駆動する行ドライバ208及び列204a〜dを駆動する列ドライバ210に接続されて、これらドライバを制御するように構成される。この場合、各ドライバは電源を含んでいる。幾つかの実施例において、上記コントローラ及びドライバは、有利には、当該電子織物上に配置する(又は該電子織物に組み込む)ことができる。一例は、本発明が、例えば宣伝のための織物表示器用に使用された電子織物において動作の故障を検出ために使用される場合であろう。しかしながら、時には、機能領域を決定するために使用することが可能な外部試験装置を設けることが有利であり得る。斯かる試験装置は、典型的には、上記コントローラ206及びドライバ208、210、並びにドライバ208、210を導体202a〜d、204a〜dに接続するためのコネクタを含む。このように、上記ドライバは、当該電子織物が所望の形状に裁断された後に接続することができる。この構成は、当該電子織物の全ての辺が切断されるのを可能にする。
【0042】
当業者により理解されるように、図2に関連して説明したコントローラは、当該電子織物における行及び列ラインを制御する方法の一概略例に過ぎず、該コントローラに対して種々の変更を本発明の範囲から逸脱することなしに実施することができる。例えば、マイクロコントローラの代わりに、マイクロプロセッサ又はASICを使用することもできる。
【0043】
以下、電子織物の機能範囲を決定するための方法を、図3の概略フローチャート及び図2における電子織物の概略図を参照して説明する。
【0044】
電子織物200の機能領域は、各交差部分に関連するコンデンサ212a〜212pが機能領域の一部であるかを、下記のステップにより反復的に決定することにより判定することができる。
【0045】
先ず、ステップ301において、当該コンデンサに関連する行ラインと列ラインとの間に交流電圧が印加される一方、他の行ライン及び列ラインは接地電位、即ち0Vに保持される。例えば、コンデンサ212aを評価するためには、行ライン202aと列ライン204aとの間に交流電圧が印加される。
【0046】
ステップ302において、前記コントローラは容量を示す電気特性(ここでは、交流電流)を検出する。コンデンサに関連する電流の大きさは、使用される周波数及び電圧に依存するが、典型的にはμAの大きさのオーダである。
【0047】
ステップ303において、上記の検出された交流電流が、例えば該交流電流を所定の閾値と比較することにより評価される。該閾値は、当該コンデンサに対して予測される電流より小さいが、ノイズを無視するほど充分に大きい。
【0048】
最後に、ステップ304において、該コントローラは、当該コンデンサが当該電子織物の機能領域内に含まれるかを、ステップ303における評価に基づいて判定する。
【0049】
評価される行及び列ラインが当該交差部分まで機能しているなら、該交差部分におけるコンデンサは電流を通過させ、結果として所定の閾値より大きな交流電流を生じるので、該交差部分は機能領域に含まれると見なされる。しかしながら、当該交差部分より前の行又は列ラインに切断部が存在したら、実質的に電流は検出されないので、該交差部分は機能領域に含まれないと見なされる。
【0050】
この手順は、当該電子織物の機能領域のマップを描き出すために、各交差部分に対して繰り返される。
【0051】
当業者であれば、当該コンデンサが機能するかを判定するため他の電気特性を利用することもできることが理解される。例えば、コンデンサはフィルタとして作用することができる。このように、AC信号を印加すると共に、出力を測定することにより、コンデンサを検出することができる。他の代替例は、AC信号からの電圧応答を測定することであろう。更に他の代替例は、一定電圧を印加し、次いで放電を測定することであろう。
【0052】
上記方法は、交差する導体の間に形成されるコンデンサを参照して説明されたが、本方法は他の配置構成に対しても等しく適用可能であることが理解される。例えば、誘電体により分離された平行な導体により形成されるコンデンサを検出することである。
【0053】
上述した方法は、当該電子織物における導体が切断されている等の欠陥を検出するためにも使用することができる。この一例が、図4a〜bに概念的に図示され、これら図において行ライン202cは切断部410で示されるように破壊されている。機能領域が判定される際に、該破壊部より前のコンデンサ212kに関しては容量を示す交流電流が検出され得るが(図4aにより示される)、該破壊部より後のコンデンサ212lに対しては実質的に何の電流も検出され得ない(図4bにより示される)。
【0054】
図5aは、所望の形状に裁断される前の電子織物500の一実施例を概略図示しており、該図において電子織物は大きな可撓性シートとして示されている。このシートは、例えば、織られた布であり、その場合において、前記導体は図1に関連して前述したような当該布において織り合わされた導電性糸である。
【0055】
図5bは、上記電子織物の一部を概念的に示し、その機能領域は図3に関連して上述した方法により判定される。図示の例において、当該電子織物の右上の角部は切断部510a〜fにより切除されている。このように、機能領域が図3における手順に従い判定される際に、該電子織物500の右上角部における交差部520a〜iは、当該機能領域に含まれないと見なされる一方、残りの交差部分は該機能領域の一部と見なされる。
【0056】
一実施例によれば、当該電子織物は、該織物に接続された例えば照明デバイス(例えばLED等の)、センサ、通信デバイス等の電子デバイスを含むことができる。
【0057】
図6aは、電子織物600の一部の概略断面を示す。該電子織物600は、一組の導体(ここでは、導電性縦糸604及び導電性横糸606である)を介して給電されるLED602を有する。LED602を駆動することに加えて、導電性縦糸604及び導電性横糸606は、当該電子織物の機能領域を、該導電性縦糸604と導電性横糸606との間の絶縁された交差部分における容量Cを図3に関連して説明したような手順に従って測定することにより決定するために使用することができる。前記電圧は、ここでは、LED602の両端間に印加されるので、検出される容量は、LEDの容量CLEDと、絶縁された交差部分容量Cとの直列容量となる。即ち、検出される容量は(CLED・C)/(CLED+C)である。このように、この構成は、機能領域を決定するために使用される前記閾値より小さくならないように、LEDの容量CLEDが、検出される容量に対して充分に大きいものと仮定している。
【0058】
図6bは、電子織物600の一部の概略断面を示し、この場合において、一組の導体(ここでは、導電性縦糸604及び導電性横糸606である)を、LED602に給電するために使用することができる。更に、追加の導電性縦糸608が、当該電子織物の当該部分が機能領域の一部であるかを、導電性の糸606と608との間の絶縁された交差部分における容量Cを図3に関連して説明したような手順に従って測定することにより判定するように配設されている。導電性縦糸608等の追加の導体を使用することの利点は、機能領域を決定するために使用される交流電圧が電子デバイス602の両端間に印加されることがなく、これにより、該電子デバイスが損なわれる危険性を低減する点にある。この構成は、敏感な電子装置を有する電子織物にとり特に有用である。
【0059】
図6cに概念的に示されているように、誘電体により分離された2つの平行な導体により形成されるコンデンサに関して容量を測定することも可能である。この場合、コンデンサは、非導電性縦糸605により分離された導電性縦糸604及び導電性縦糸608により形成される。
【0060】
図6dは、更に他の実施例を概念的に示し、該実施例において、コンデンサは誘電体により分離された2つの平行な導体間に形成される。ここでは、上記コンデンサは、非導電性縦糸611により分離された導電性縦糸608及び導電性縦糸609により形成されている。この実施例においては、当該コンデンサCに関連する導体608、609の何れも、電子デバイス(LED602等の)を駆動するために使用されていないことに注意されたい。
【0061】
図6eは、他の実施例を概念的に示し、該実施例においては、一組の駆動導体(ここでは、導電性縦糸604及び導電性横糸606)がLED602を駆動するために使用されている。更に、導電性縦糸610及び導電性横糸612が、当該電子織物の当該部分が機能領域の一部であるかを、導電性の糸610と導電性横糸612との間の交差部分における容量Cを図3に関連して説明したような手順に従って測定することにより判定するように配設されている。駆動導体604、606は、ここでは、非導電性縦糸の層614により他の導体610、612から分離されている。
【0062】
図7は、3つの縦糸層を持つ電子織物に関する導体配置を概念的に示し、この場合において、導体は縦糸層及び横糸層における織り合わされた導電性糸である。上側の層の導体は列の実線により示される一方、下側の層の導体は行の点線により示されている。
【0063】
列のライン702a〜eは一群の上側層駆動導体を示し、行のライン704a〜eは一群の下側層駆動導体を示している。
【0064】
下側層駆動導体704a〜eの各々から、当該導体横糸においてループが形成され、結果として、示された接続点707が得られる(図の乱雑さを防ぐために、これら接続点のうちの1つのみが符号により示されている)。これら接続点707の各々と、上側層駆動導体702a〜eにおける対応する接続点708(ここでも、これら接続点のうちの1つのみが符号により示されている)との間に、LED706(これらLEDのうちの1つのみが符号により示されている)が接続される。
【0065】
更に、列ライン703a〜eは機能領域を決定するために使用することが可能な複数の上側層導体を示し、行ライン705a〜eは機能領域を決定するために使用することが可能な複数の下側層導体を示している(これらは、LED706に給電するためには使用されないことに注意)。機能領域を決定するために使用することが可能な導体703a〜e、705a〜eの各々は、前記駆動導体702a〜e、704a〜eの1つに隣接して延在しているが、該1つとは1以上の非導電性糸により分離されている。
【0066】
図7に示されるように、検出可能なコンデンサ712(これらコンデンサのうちの1つしか、符号により示されていない)は、機能領域を決定するために使用可能な複数の上側導体703a〜eのうちの導体と、機能領域を決定するために使用可能な複数の下側導体705a〜eのうちの導体との間の各交差部分に形成される。
【0067】
当該装置を介して、機能領域は、図3に関連して説明した前記方法に従い各交差部分におけるコンデンサ712の容量Cを測定することにより決定することができる。機能領域を決定するために前記駆動導体以外の導体を使用することの利点は、電子装置の両端間に電圧が印加されることがないので、敏感な電子装置に影響を与えることがない点にある。追加の導体は、切断部を一層正確に位置特定するために追加することもできる。電子織物の機能領域を決定した後、該電子織物において電子装置を駆動するために使用されない斯かる導体は、例えば、これら導体を接地点に接続することにより、静電気放電保護(ESD protection)に使用することができる。また、これら導体は放熱に使用することもできる。
【0068】
一実施例によれば、当該電子織物は織物表示装置に使用することができる。電子織物の機能領域を決定することにより、前記コントローラは、信号処理アルゴリズムを使用することにより画像を機能領域の大きさ及び形状に適合させることができる。このようにして、表示織物は、異なる形状に裁断することができ又は信頼性の障害を知ることができ、活動領域に合致する画像を生成させることができる。即ち、表示コントローラは画像データを、依然としてアドレス指定可能なピクセルに適合させるのを可能にされる。例えば、当該織物表示装置がロゴを表示するために使用されるような宣伝用途においては、大きな織物は大きなロゴを表示することができる一方、小さな織物は該ロゴを自動的に縮尺することができる。
【0069】
以上、本発明を図面及び上記記載において詳細に図示及び説明したが、斯様な図示及び説明は解説的又は例示的と見なされるべきであり、限定するものと見なされるべきでない。即ち、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。開示された実施例に対する変形は、当業者であれば、請求項に記載された発明を実施するに際し、図面、開示及び添付請求項の精査から理解し及び実施することができる。尚、請求項において、"有する"なる文言は他の構成要素を排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。また、特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。また、請求項における如何なる符号も、範囲を限定するものと見なしてはならない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子織物、及び電子織物の機能領域を決定する方法に関する。本発明は、更に、電子織物の機能領域を決定するためのコントローラにも関する。
【背景技術】
【0002】
織物は、日々の生活に使用されている。織物と電子装置が統合された場合、新たな応用分野が出現する。衣類産業等の多くの分野において、所望の形状及び特徴構造を形成するために、織物は大きなシートから切り出される。逆に、電子部品は、典型的には、当該機能のために既に寸法決めされた所定の回路基板上に配置される。電子装置が織物上に配置される場合、当該電子織物のシートが、機能を失わずに如何なる形状にも切り出すことができたなら、製造コストが減少し、ユーザにとっての汎用性が増加するであろう。
【0003】
米国特許出願公開第2006/0035554は、大きな寸法で製造することができると共に所望の形状に裁断することが可能な織物布を開示している。この織物は、該織物布全体に配置される電子データ処理用の複数の微細電子部品を有している。これらの微細電子部品は、相互に電子メッセージを交換して自己組織化を可能にし、これにより当該電子織物を、得られた特定の寸法に適合させる。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0035554に開示された電子織物の欠点は、処理及びデータ通信が可能な多数の微細電子デバイスが必要であり、これが当該電子織物のコストを増加させる点にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上述した及び他の欠点に鑑み、本発明の大きな目的は、電子織物の機能領域を決定する費用効果的且つ汎用性のある方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、これら及び他の目的は、第1の複数の導体及び第2の複数の導体を備える織物基体を有する電子織物の機能領域を決定する方法であって、上記織物基体は、各々が誘電体により分離された上記第1の複数の導体のうちの導体及び上記第2の複数の導体のうちの導体を有する複数のコンデンサが当該電子織物の実質的に全表面にわたって形成され、該方法が、これらコンデンサの各々に対して、当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加するステップと、当該コンデンサの容量を示す電子特性を検出するステップと、該検出された電子特性を評価するステップと、当該コンデンサが上記電子織物の機能領域に含まれるかを上記評価に基づいて判定するステップとを有するような方法により達成される。
【0007】
本方法は、当該電子織物における導体間に形成されたコンデンサ等の該電子織物に本来備わった物理的特性を利用しているので、機能領域を決定するために、当該電子織物上に何の電子デバイス(例えば、従来技術において記載された微細電子部品等)も配置される必要がない。このことは、コストを低減すると共に、汎用性も向上させる。何故なら、機能領域を、当該電子織物上に如何なる電子デバイスが配置される前又は後においても決定することができるからである。更に、全ての必要な機能を、上記導体に印加される電圧を制御するように構成された単一のコントローラ内に収容することができる。該コントローラは、当該電子織物上に配設することができるか、又は外部装置内(例えば、携帯型若しくは静止型試験装置内)に設けることもできる。本方法は、製造の間に及び/又は当該電子織物が動作している際に使用することができる。本方法は、例えば電子織物が所望の形状に裁断された後に、該電子織物の機能領域を決定するためのみならず、該電子織物における接続不良(破損された導体等)を検出するためにも使用することができる。このことは、上記コントローラが、如何なる駆動データも当該機能領域に適合させることも可能にする。例えば、当該電子織物が織物表示器として使用される場合、上記コントローラは画像をアドレス指定可能なピクセルの寸法及び形状に調整することができる。
【0008】
ここで、機能領域とは、電子織物におけるアドレス指定可能な領域と理解されるべきである。電子織物が所望の形状に裁断されている用途例では、機能領域は当該織物の切除されていない部分を指すことができる。しかしながら、当該電子織物における導体が破壊された領域は、当該機能領域から除外することもできる。
【0009】
本発明は、複数の導体を有する織物基体の適切な構成により、これら導体は測定可能な容量を持つ複数のコンデンサを形成することができるという理解に基づくものである。更に、発明者は、機能領域を、当該電子織物の実質的に全表面にわたり斯様なコンデンサを設けると共に、斯かるコンデンサの容量を評価することにより決定することができると理解した。
【0010】
当業者であれば、正確な分散(分布)は例えば用途により変化するであろうことが理解される。例えば、当該電子織物が織物表示装置に使用されるなら、該電子織物を、測定可能なコンデンサが各々のアドレス指定可能なピクセルに対して形成されるように構成することが好ましいであろう。
【0011】
ここで、電子織物とは、電気導体が設けられた織物基体と理解されたい。該織物基体は剛性の又は可撓性の基体に基づくものであり得る。特に有利な実施例において、上記基体は布地であり得る。上記導体は織り合わされた導電性縦糸及び/又は横糸とすることができるか、又は当該織物基体に、例えば縫いつけ、刺繍、クランプ留め、超音波接着、積層、キルティング、クローシェ編みにより取り付けることができる。他の代替例は、導電性インク、電気メッキ、非電気メッキ又はエッチング形成導体パターンを使用することであろう。
【0012】
前記の印加される電圧は交流電圧とすることができる一方、容量を示す前記の検出される電気特性は交流電流とすることができる。前記コンデンサはフィルタを形成することもでき、その場合において、フィルタされたAC(交流)信号の出力を、当該容量を示す電気特性として検出することができる。更に、該AC信号に対する電圧応答を、当該容量を示す電気特性として検出することもできる。代替実施例によれば、前記コンデンサを充電するためにDC電圧を印加することもできる。この場合、放電電流を、当該容量を示す電気特性として検出することができる。しかしながら、この構成は、交流電圧を使用する方法よりも長い時間が掛かる。
【0013】
検出された電気特性を評価する前記ステップは、検出された電気特性を所定の閾値と比較するステップを含むことができる。しかしながら、斯かる評価は、複数の他のコンデンサに関して検出された電気特性の値と比較することにより正規化することもできる。
【0014】
評価されるコンデンサ(複数のコンデンサ)と関連しない如何なる導体(複数の導体)も、評価されるコンデンサと関連する導体の間に電圧が印加されている間には一定の電圧に維持することができる(例えば、これら導体を接地電位、即ち0Vに保持することにより)。利点は、評価されるコンデンサに関連する容量を、他の導体から派生する他の並列及び直列容量により影響を受けることなく検出することができる点にある。
【0015】
本発明の第2態様によれば、第1の複数の導体、第2の複数の導体及び複数のコンデンサを備えた織物基体を有する電子織物であって、各コンデンサが誘電体により分離された上記第1の複数の導体のうちの導体及び上記第2の複数の導体のうちの導体を有し、これらコンデンサが当該電子織物の実質的に全表面にわたって分散され、各コンデンサが少なくとも10pFの容量を有するような電子織物が提供される。
【0016】
このような電子織物は、例えば織り(weaving)等の通常の製造技術により製造することができる。更に、斯かる電子織物の機能領域は、該電子織物上に如何なる電子デバイスが配置されることも要せずに決定することができる。更に、本発明の該第2態様の効果及びフィーチャは、第1態様に関連して上述したものと殆ど同様である。
【0017】
当該コンデンサに関連する第1の複数の導体のうちの導体と、当該コンデンサに関連する第2の複数の導体のうちの導体との間の距離は、該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つようにすることができる。例えば、当該織物基体が、織り合わされた導電性及び非導電性の糸から形成され、コンデンサが2つの導電性糸の間の交差部分に形成される場合、当該容量は斯かる2つの導電性糸を分離する縦糸の層数を変えることにより調整することができる。同様に、コンデンサが並んで配置された2つの導電性糸の間に形成される場合、当該容量は斯かる2つの導電性糸の間に配設された非導電性糸の数を変えることにより調整することができる。約10pFなる容量は、典型的には、測定装置(前記コントローラ等の)を合理的な費用で設けることが可能な最小の容量である。
【0018】
当該コンデンサに関連する第1の複数の導体のうちの導体と、当該コンデンサに関連する第2の複数の導体のうちの導体との間の誘電体は、該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つような誘電率を有することができる。
【0019】
当該コンデンサに関連する第1の複数の導体のうちの導体の導電面積と、当該コンデンサに関連する第2の複数の導体のうちの導体の導電面積とは、該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つようなものとすることができる。
【0020】
織られた織物基体の場合、上記導電面積は、例えば、より大きな直径の導電性糸を使用することにより、又は互いに隣接する2以上の導電性糸を織って単一の導体を形成することにより増加させることができる。導電面積は、導電性糸のうちの当該コンデンサを形成する部分の長さを調整することにより変化させることもできる。
【0021】
上記織物基体は、各コンデンサが少なくとも100pFの容量を持つように構成することができる。これは、前記導体間の距離、前記導電面積及び/又は前記誘電体を調整することにより達成することができる。コンデンサを構成する対の導体の間の誘電体として高誘電率を持つ非導電性糸が使用される場合、これらの高誘電率糸は漂遊容量を防止するために当該織物基体に選択的に(例えば、コンデンサを構成すべき導体間にのみ)織り込むことができる。少なくとも100pFの容量を持つコンデンサを使用することは、(例えば、ノイズに対して)余り敏感でない一層強い方法を可能にする。更に、一層大きな容量は検出するのが一層容易であり、これにより、測定装置(例えば、前記コントローラ)のコストを低減することができる。
【0022】
当該電子織物は、一群の電子部品を駆動するように構成された第1及び第2の群の駆動導体を更に有することができる。斯かる駆動導体は、典型的には、第1の群の駆動導体のうちの導体と第2の群の駆動導体のうちの導体との間に電子デバイス(例えば、LED)を容易に配設することができるように構成される。例えば、これら駆動導体は、当該織物の表面においてアクセスすることができると共に、電子部品が接続されるのを可能にするような距離で配置することができる。利点は、前記第1及び第2の複数の導体を、上記駆動導体に接続された如何なる電子デバイスに影響を与えることもなしに当該電子織物の機能領域を決定すべく使用することができる点にある。このことは、例えば、当該電子織物の機能領域を決定すべく前記容量を評価するために印加される電圧が、さもなければ悪影響を有し得るような敏感な電子部品の場合に有利であり得る。
【0023】
前記第1及び第2の複数の導体は、上記第1及び第2の群の駆動導体から電気絶縁層により分離することができる。織り合わされた導電性及び非導電性糸から形成される織物基体の場合、この電気絶縁層は、非導電性糸のみを有する少なくとも1つの縦糸層とすることができる(一方、導電性横糸は、この少なくとも1つの縦糸層とは交差しない)。
【0024】
本発明の第3態様によれば、電子織物の機能領域を決定するために該電子織物に接続することが可能なコントローラが提供される。該コントローラは、前記コンデンサの各々を、当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加し、当該コンデンサの容量を示す電気特性を検出し、該検出された電気特性を評価し、該コンデンサが当該電子織物の機能領域内に含まれるかを上記評価に基づいて判定することにより、評価するように構成することができる。
【0025】
上記コントローラは、評価されるコンデンサに関連する導体間に電圧が印加される間に、該評価されるコンデンサ(複数のコンデンサ)とは関連しない如何なる導体も一定電圧に維持されるように構成することができる。
【0026】
上記コントローラは、当該電子織物上に、又は電子織物の機能領域を決定するために使用することが可能な試験装置内に配置することができる。該試験装置は静止型又は携帯型とすることができる。試験装置を使用することにより、各電子織物に対して新たなコントローラを設ける必要がなくなり、コストを更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1a】図1aは、本発明の一実施例による、3層に織られた電子織物を概略図示する。
【図1b】図1bは、動き推定1aにおける織物の概略断面図である。
【図2】図2は、第1の複数の導体及び第2の複数の導体の配置を図示する概要図である。
【図3】図3は、本発明による方法の概略フローチャートである。
【図4a】図4aは、壊れた導体の検出を概略図示する。
【図4b】図4bも、壊れた導体の検出を概略図示する。
【図5a】図5aは、所望の形状に裁断される前の電子織物を概略図示する。
【図5b】図5bは、右上の角部が切除された電子織物の一部を概略図示する。
【図6a】図6aは、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図6b】図6bも、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図6c】図6cも、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図6d】図6dも、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図6e】図6eも、本発明による電子織物の一実施例を示す概略断面図である。
【図7】図7は、本発明による電子織物の更に他の実施例を概略図示する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の前記及び他の態様を、本発明の目下のところ好ましい実施例を示す添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0029】
尚、これらの図は概略的であり、寸法通りには描かれていないことに注意されたい。また、明瞭化及び便宜のため、これら図の各部の相対寸法及び比率は誇張されているか又は寸法が縮小されて示されている。
【0030】
以下の記載において、本発明は、非常に限られた数の縦糸及び横糸並びに特定の簡略化された織り構造を持つ織物を参照して説明される。しかしながら、これは決して本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明は他の種類の織り構造を持つ織物にも等しく適用可能である。更に、本発明は隣接する導体を分離する中間の非導電性糸で以って説明されているが、隣接する導体の間に誘電体を設ける他の方法も存在する。例えば、導体に電気絶縁被覆(コーティング)を設けることもできる。更に、織り合わされた導電性糸の代替として、導体を当該織物基体に、例えば縫いつけ、刺繍、クランプ留め、超音波接着、積層、キルティング又はクローシェ編みにより取り付けることもできる。また、導電インク、エッチング形成された導体パターン、電気メッキ又は非電気メッキを使用することもできる。
【0031】
以下の説明では、縦糸及び横糸が繰り返し参照される。製織においては、製織の方向に概ね延びる糸が縦糸と呼ばれる一方、製織方向(及び縦糸)とは実質的に垂直に延びる糸は横糸と呼ばれる。典型的には、縦糸及び横糸は互いに垂直となるが、これは必ずしも当てはまる必要はなく、本発明は互いに垂直な縦糸及び横糸を持つものに限定されると見なされるべきではない。
【0032】
図1は、本発明による電子織物100の一実施例を概略図示している。図1aには、本発明の第1実施例による3層に織られた織物基体が示され、該織物基体は中間縦糸層103により分離された上側及び下側縦糸層101及び102を有している。下側縦糸層102は非導電性縦糸105a〜kにより分離された3本の導電性縦糸104a〜cを有する一方、上側縦糸層101及び中間縦糸層103は、ここでは、全て非導電性縦糸からなっている。横糸方向においては、図1では2本の導電性横糸108a〜bが見られる。図1aに示された導電性横糸108a〜bの間には非導電性横糸が存在し得るが、ここでは、明瞭化のために省略されている。
【0033】
図1aにおける織物基体のA−A線に沿う概略断面を示す図1bを参照すると、導電性横糸108bは、導電性縦糸104aと交差する一方、該縦糸から電気的に絶縁されたままとなっている。中間層103における非導電性糸103aは上記導電性横糸108bと導電性縦糸104aとの間の誘電体を形成するので、導体104a、108bの間の交差部分に小さなコンデンサ112が形成される。当業者により理解されるように、該コンデンサの容量は、上記誘電体の誘電率、導電プレート(即ち、当該コンデンサを形成する上記導体の部分)の面積及び該導電プレートの間の距離に依存する。このように、該コンデンサの容量は、例えば上記導体を分離する非導電性糸の数を調整することにより、少なくとも10pF(ピコファラド)、より好ましくは少なくとも100pFとなるように構成することができる。100pFより大きな容量は、10000メートル当たり110グラムの重さ(110dtexに相当する)を有するポリアミドの非導電性糸により分離された1対の交差する導体に対して達成され得ることが分かった。
【0034】
導体を分離する糸の数は、典型的には1本又は2本であるが、用途に応じて、もっと多い糸を使用することもできる。追加の糸は容量を低下させるが、導体を分離する2本以上の非導電性糸を有することが時には望ましい可能性もある。これは、例えば、短絡回路の危険性を低減し得るからである。
【0035】
導電性横糸108bと導電性縦糸104aとの間に交流電圧が印加されるので、この結果として、交流電流が生じる。該交流電圧の周波数が高いほど、導電性横糸108bと導電性縦糸104aとの間に一層多くの電流が流れる。
【0036】
上記周波数は、例えば蛍光灯(より低い周波数に対して)又は無線信号(より高い周波数に対して)からの妨害を回避するために、好ましくは1kHz〜1MHzの範囲内とすることができる。より高い周波数は、より多くの電力を消費する傾向もある。このように、典型的な周波数は、より好ましくは、1kHz〜500kHzの範囲内であり得る。
【0037】
前記容量を測定するために印加される電圧は、好ましくは、当該電子織物の通常の動作電圧内、即ち、典型的には0.5V〜20Vの範囲内とすることができる。
【0038】
導電性横糸108bと導電性縦糸104aとの間の交差部分を参照して上述したコンデンサの原理は、適切に構成されるならば(即ち、適切な誘電体の誘電率並びに導電プレートの面積及び距離)、誘電体により分離された他の導体にも当てはまることが理解される。更に、上記導体は、コンデンサを形成するために互いに交差する必要はなく、並んで延在することもできる(例えば、誘電体により分離された2つの平行な導電性縦糸)。
【0039】
図2は、電子織物200における第1の複数の導体及び第2の複数の導体の配置を示す概要図である。第1の複数の導体202a〜d及び第2の複数の導体204a〜dは、互いに電気的に絶縁され、例えば図1に関連して前述した一群の導電性縦糸及び横糸として実施化することができる。
【0040】
図2には、電子織物200の一部における第1の複数の導体202a〜d及び第2の複数の導体204a〜dが概念的に示されており、この場合において、上側の層の導体は行202a〜dに実線により図示される一方、下側の層の導体は列204a〜dに点線により図示されている。
【0041】
更に、この場合、当該電子織物200はマイクロコントローラを含むコントローラ206に接続され、該コントローラは行202a〜dを駆動する行ドライバ208及び列204a〜dを駆動する列ドライバ210に接続されて、これらドライバを制御するように構成される。この場合、各ドライバは電源を含んでいる。幾つかの実施例において、上記コントローラ及びドライバは、有利には、当該電子織物上に配置する(又は該電子織物に組み込む)ことができる。一例は、本発明が、例えば宣伝のための織物表示器用に使用された電子織物において動作の故障を検出ために使用される場合であろう。しかしながら、時には、機能領域を決定するために使用することが可能な外部試験装置を設けることが有利であり得る。斯かる試験装置は、典型的には、上記コントローラ206及びドライバ208、210、並びにドライバ208、210を導体202a〜d、204a〜dに接続するためのコネクタを含む。このように、上記ドライバは、当該電子織物が所望の形状に裁断された後に接続することができる。この構成は、当該電子織物の全ての辺が切断されるのを可能にする。
【0042】
当業者により理解されるように、図2に関連して説明したコントローラは、当該電子織物における行及び列ラインを制御する方法の一概略例に過ぎず、該コントローラに対して種々の変更を本発明の範囲から逸脱することなしに実施することができる。例えば、マイクロコントローラの代わりに、マイクロプロセッサ又はASICを使用することもできる。
【0043】
以下、電子織物の機能範囲を決定するための方法を、図3の概略フローチャート及び図2における電子織物の概略図を参照して説明する。
【0044】
電子織物200の機能領域は、各交差部分に関連するコンデンサ212a〜212pが機能領域の一部であるかを、下記のステップにより反復的に決定することにより判定することができる。
【0045】
先ず、ステップ301において、当該コンデンサに関連する行ラインと列ラインとの間に交流電圧が印加される一方、他の行ライン及び列ラインは接地電位、即ち0Vに保持される。例えば、コンデンサ212aを評価するためには、行ライン202aと列ライン204aとの間に交流電圧が印加される。
【0046】
ステップ302において、前記コントローラは容量を示す電気特性(ここでは、交流電流)を検出する。コンデンサに関連する電流の大きさは、使用される周波数及び電圧に依存するが、典型的にはμAの大きさのオーダである。
【0047】
ステップ303において、上記の検出された交流電流が、例えば該交流電流を所定の閾値と比較することにより評価される。該閾値は、当該コンデンサに対して予測される電流より小さいが、ノイズを無視するほど充分に大きい。
【0048】
最後に、ステップ304において、該コントローラは、当該コンデンサが当該電子織物の機能領域内に含まれるかを、ステップ303における評価に基づいて判定する。
【0049】
評価される行及び列ラインが当該交差部分まで機能しているなら、該交差部分におけるコンデンサは電流を通過させ、結果として所定の閾値より大きな交流電流を生じるので、該交差部分は機能領域に含まれると見なされる。しかしながら、当該交差部分より前の行又は列ラインに切断部が存在したら、実質的に電流は検出されないので、該交差部分は機能領域に含まれないと見なされる。
【0050】
この手順は、当該電子織物の機能領域のマップを描き出すために、各交差部分に対して繰り返される。
【0051】
当業者であれば、当該コンデンサが機能するかを判定するため他の電気特性を利用することもできることが理解される。例えば、コンデンサはフィルタとして作用することができる。このように、AC信号を印加すると共に、出力を測定することにより、コンデンサを検出することができる。他の代替例は、AC信号からの電圧応答を測定することであろう。更に他の代替例は、一定電圧を印加し、次いで放電を測定することであろう。
【0052】
上記方法は、交差する導体の間に形成されるコンデンサを参照して説明されたが、本方法は他の配置構成に対しても等しく適用可能であることが理解される。例えば、誘電体により分離された平行な導体により形成されるコンデンサを検出することである。
【0053】
上述した方法は、当該電子織物における導体が切断されている等の欠陥を検出するためにも使用することができる。この一例が、図4a〜bに概念的に図示され、これら図において行ライン202cは切断部410で示されるように破壊されている。機能領域が判定される際に、該破壊部より前のコンデンサ212kに関しては容量を示す交流電流が検出され得るが(図4aにより示される)、該破壊部より後のコンデンサ212lに対しては実質的に何の電流も検出され得ない(図4bにより示される)。
【0054】
図5aは、所望の形状に裁断される前の電子織物500の一実施例を概略図示しており、該図において電子織物は大きな可撓性シートとして示されている。このシートは、例えば、織られた布であり、その場合において、前記導体は図1に関連して前述したような当該布において織り合わされた導電性糸である。
【0055】
図5bは、上記電子織物の一部を概念的に示し、その機能領域は図3に関連して上述した方法により判定される。図示の例において、当該電子織物の右上の角部は切断部510a〜fにより切除されている。このように、機能領域が図3における手順に従い判定される際に、該電子織物500の右上角部における交差部520a〜iは、当該機能領域に含まれないと見なされる一方、残りの交差部分は該機能領域の一部と見なされる。
【0056】
一実施例によれば、当該電子織物は、該織物に接続された例えば照明デバイス(例えばLED等の)、センサ、通信デバイス等の電子デバイスを含むことができる。
【0057】
図6aは、電子織物600の一部の概略断面を示す。該電子織物600は、一組の導体(ここでは、導電性縦糸604及び導電性横糸606である)を介して給電されるLED602を有する。LED602を駆動することに加えて、導電性縦糸604及び導電性横糸606は、当該電子織物の機能領域を、該導電性縦糸604と導電性横糸606との間の絶縁された交差部分における容量Cを図3に関連して説明したような手順に従って測定することにより決定するために使用することができる。前記電圧は、ここでは、LED602の両端間に印加されるので、検出される容量は、LEDの容量CLEDと、絶縁された交差部分容量Cとの直列容量となる。即ち、検出される容量は(CLED・C)/(CLED+C)である。このように、この構成は、機能領域を決定するために使用される前記閾値より小さくならないように、LEDの容量CLEDが、検出される容量に対して充分に大きいものと仮定している。
【0058】
図6bは、電子織物600の一部の概略断面を示し、この場合において、一組の導体(ここでは、導電性縦糸604及び導電性横糸606である)を、LED602に給電するために使用することができる。更に、追加の導電性縦糸608が、当該電子織物の当該部分が機能領域の一部であるかを、導電性の糸606と608との間の絶縁された交差部分における容量Cを図3に関連して説明したような手順に従って測定することにより判定するように配設されている。導電性縦糸608等の追加の導体を使用することの利点は、機能領域を決定するために使用される交流電圧が電子デバイス602の両端間に印加されることがなく、これにより、該電子デバイスが損なわれる危険性を低減する点にある。この構成は、敏感な電子装置を有する電子織物にとり特に有用である。
【0059】
図6cに概念的に示されているように、誘電体により分離された2つの平行な導体により形成されるコンデンサに関して容量を測定することも可能である。この場合、コンデンサは、非導電性縦糸605により分離された導電性縦糸604及び導電性縦糸608により形成される。
【0060】
図6dは、更に他の実施例を概念的に示し、該実施例において、コンデンサは誘電体により分離された2つの平行な導体間に形成される。ここでは、上記コンデンサは、非導電性縦糸611により分離された導電性縦糸608及び導電性縦糸609により形成されている。この実施例においては、当該コンデンサCに関連する導体608、609の何れも、電子デバイス(LED602等の)を駆動するために使用されていないことに注意されたい。
【0061】
図6eは、他の実施例を概念的に示し、該実施例においては、一組の駆動導体(ここでは、導電性縦糸604及び導電性横糸606)がLED602を駆動するために使用されている。更に、導電性縦糸610及び導電性横糸612が、当該電子織物の当該部分が機能領域の一部であるかを、導電性の糸610と導電性横糸612との間の交差部分における容量Cを図3に関連して説明したような手順に従って測定することにより判定するように配設されている。駆動導体604、606は、ここでは、非導電性縦糸の層614により他の導体610、612から分離されている。
【0062】
図7は、3つの縦糸層を持つ電子織物に関する導体配置を概念的に示し、この場合において、導体は縦糸層及び横糸層における織り合わされた導電性糸である。上側の層の導体は列の実線により示される一方、下側の層の導体は行の点線により示されている。
【0063】
列のライン702a〜eは一群の上側層駆動導体を示し、行のライン704a〜eは一群の下側層駆動導体を示している。
【0064】
下側層駆動導体704a〜eの各々から、当該導体横糸においてループが形成され、結果として、示された接続点707が得られる(図の乱雑さを防ぐために、これら接続点のうちの1つのみが符号により示されている)。これら接続点707の各々と、上側層駆動導体702a〜eにおける対応する接続点708(ここでも、これら接続点のうちの1つのみが符号により示されている)との間に、LED706(これらLEDのうちの1つのみが符号により示されている)が接続される。
【0065】
更に、列ライン703a〜eは機能領域を決定するために使用することが可能な複数の上側層導体を示し、行ライン705a〜eは機能領域を決定するために使用することが可能な複数の下側層導体を示している(これらは、LED706に給電するためには使用されないことに注意)。機能領域を決定するために使用することが可能な導体703a〜e、705a〜eの各々は、前記駆動導体702a〜e、704a〜eの1つに隣接して延在しているが、該1つとは1以上の非導電性糸により分離されている。
【0066】
図7に示されるように、検出可能なコンデンサ712(これらコンデンサのうちの1つしか、符号により示されていない)は、機能領域を決定するために使用可能な複数の上側導体703a〜eのうちの導体と、機能領域を決定するために使用可能な複数の下側導体705a〜eのうちの導体との間の各交差部分に形成される。
【0067】
当該装置を介して、機能領域は、図3に関連して説明した前記方法に従い各交差部分におけるコンデンサ712の容量Cを測定することにより決定することができる。機能領域を決定するために前記駆動導体以外の導体を使用することの利点は、電子装置の両端間に電圧が印加されることがないので、敏感な電子装置に影響を与えることがない点にある。追加の導体は、切断部を一層正確に位置特定するために追加することもできる。電子織物の機能領域を決定した後、該電子織物において電子装置を駆動するために使用されない斯かる導体は、例えば、これら導体を接地点に接続することにより、静電気放電保護(ESD protection)に使用することができる。また、これら導体は放熱に使用することもできる。
【0068】
一実施例によれば、当該電子織物は織物表示装置に使用することができる。電子織物の機能領域を決定することにより、前記コントローラは、信号処理アルゴリズムを使用することにより画像を機能領域の大きさ及び形状に適合させることができる。このようにして、表示織物は、異なる形状に裁断することができ又は信頼性の障害を知ることができ、活動領域に合致する画像を生成させることができる。即ち、表示コントローラは画像データを、依然としてアドレス指定可能なピクセルに適合させるのを可能にされる。例えば、当該織物表示装置がロゴを表示するために使用されるような宣伝用途においては、大きな織物は大きなロゴを表示することができる一方、小さな織物は該ロゴを自動的に縮尺することができる。
【0069】
以上、本発明を図面及び上記記載において詳細に図示及び説明したが、斯様な図示及び説明は解説的又は例示的と見なされるべきであり、限定するものと見なされるべきでない。即ち、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。開示された実施例に対する変形は、当業者であれば、請求項に記載された発明を実施するに際し、図面、開示及び添付請求項の精査から理解し及び実施することができる。尚、請求項において、"有する"なる文言は他の構成要素を排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。また、特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。また、請求項における如何なる符号も、範囲を限定するものと見なしてはならない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の複数の導体及び第2の複数の導体を備える織物基体を有する電子織物の機能領域を決定する方法であって、前記織物基体は、各々が誘電体により分離された前記第1の複数の導体のうちの導体及び前記第2の複数の導体のうちの導体を有する複数のコンデンサが前記電子織物の実質的に全表面にわたって形成されるように構成され、該方法が、これらコンデンサの各々に対して、
− 当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加するステップと、
− 当該コンデンサの容量を示す電子特性を検出するステップと、
− 検出された前記電子特性を評価するステップと、
− 当該コンデンサが前記電子織物の前記機能領域に含まれるかを前記評価に基づいて判定するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記導体の間に印加される前記電圧が交流電圧である請求項1に記載の電子織物の機能領域を決定する方法。
【請求項3】
検出される前記電気特性が交流電流である請求項1又は請求項2に記載の電子織物の機能領域を決定する方法。
【請求項4】
検出された前記電子特性を評価する前記ステップが、検出された前記電気特性を所定の閾値と比較するステップを含む請求項1ないし3の何れか一項に記載の電子織物の機能領域を決定する方法。
【請求項5】
評価される前記コンデンサに関連する前記導体の間に前記電圧が印加される間に、評価される前記コンデンサに関連しない何れの導体も一定電圧に維持される請求項1ないし4の何れか一項に記載の電子織物の機能領域を決定する方法。
【請求項6】
第1の複数の導体、第2の複数の導体及び複数のコンデンサを備えた織物基体を有する電子織物であって、前記コンデンサの各々が誘電体により分離された前記第1の複数の導体のうちの導体及び前記第2の複数の導体のうちの導体を有し、これらコンデンサが当該電子織物の実質的に全表面にわたって分散され、前記コンデンサの各々が少なくとも10pFの容量を有する電子織物。
【請求項7】
当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と、当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間の距離が、当該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つような距離である請求項6に記載の電子織物。
【請求項8】
当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と、当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間の前記誘電体が、当該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つような誘電率を有する請求項6又は請求項7に記載の電子織物。
【請求項9】
前記コンデンサの各々が少なくとも100pFの容量を持つ請求項6ないし8の何れか一項に記載の電子織物。
【請求項10】
一群の電子部品を駆動する第1の群の駆動導体及び第2の群の駆動導体を更に有する請求項6ないし9の何れか一項に記載の電子織物。
【請求項11】
請求項6ないし10の何れか一項に記載の電子織物の機能領域を決定するために該電子織物に接続することが可能なコントローラであって、前記コンデンサの各々を、当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加し、当該コンデンサの容量を示す電気特性を検出し、該検出された電気特性を評価し、当該コンデンサが前記電子織物の前記機能領域内に含まれるかを前記評価に基づいて判定することにより評価するコントローラ。
【請求項12】
前記コントローラが、評価される前記コンデンサに関連する前記導体間に前記電圧が印加される間に、該評価されるコンデンサとは関連しない如何なる導体も一定電圧に維持されるようにする請求項11に記載のコントローラ。
【請求項1】
第1の複数の導体及び第2の複数の導体を備える織物基体を有する電子織物の機能領域を決定する方法であって、前記織物基体は、各々が誘電体により分離された前記第1の複数の導体のうちの導体及び前記第2の複数の導体のうちの導体を有する複数のコンデンサが前記電子織物の実質的に全表面にわたって形成されるように構成され、該方法が、これらコンデンサの各々に対して、
− 当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加するステップと、
− 当該コンデンサの容量を示す電子特性を検出するステップと、
− 検出された前記電子特性を評価するステップと、
− 当該コンデンサが前記電子織物の前記機能領域に含まれるかを前記評価に基づいて判定するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記導体の間に印加される前記電圧が交流電圧である請求項1に記載の電子織物の機能領域を決定する方法。
【請求項3】
検出される前記電気特性が交流電流である請求項1又は請求項2に記載の電子織物の機能領域を決定する方法。
【請求項4】
検出された前記電子特性を評価する前記ステップが、検出された前記電気特性を所定の閾値と比較するステップを含む請求項1ないし3の何れか一項に記載の電子織物の機能領域を決定する方法。
【請求項5】
評価される前記コンデンサに関連する前記導体の間に前記電圧が印加される間に、評価される前記コンデンサに関連しない何れの導体も一定電圧に維持される請求項1ないし4の何れか一項に記載の電子織物の機能領域を決定する方法。
【請求項6】
第1の複数の導体、第2の複数の導体及び複数のコンデンサを備えた織物基体を有する電子織物であって、前記コンデンサの各々が誘電体により分離された前記第1の複数の導体のうちの導体及び前記第2の複数の導体のうちの導体を有し、これらコンデンサが当該電子織物の実質的に全表面にわたって分散され、前記コンデンサの各々が少なくとも10pFの容量を有する電子織物。
【請求項7】
当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と、当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間の距離が、当該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つような距離である請求項6に記載の電子織物。
【請求項8】
当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と、当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間の前記誘電体が、当該コンデンサが少なくとも10pFの容量を持つような誘電率を有する請求項6又は請求項7に記載の電子織物。
【請求項9】
前記コンデンサの各々が少なくとも100pFの容量を持つ請求項6ないし8の何れか一項に記載の電子織物。
【請求項10】
一群の電子部品を駆動する第1の群の駆動導体及び第2の群の駆動導体を更に有する請求項6ないし9の何れか一項に記載の電子織物。
【請求項11】
請求項6ないし10の何れか一項に記載の電子織物の機能領域を決定するために該電子織物に接続することが可能なコントローラであって、前記コンデンサの各々を、当該コンデンサに関連する前記第1の複数の導体のうちの導体と当該コンデンサに関連する前記第2の複数の導体のうちの導体との間に電圧を印加し、当該コンデンサの容量を示す電気特性を検出し、該検出された電気特性を評価し、当該コンデンサが前記電子織物の前記機能領域内に含まれるかを前記評価に基づいて判定することにより評価するコントローラ。
【請求項12】
前記コントローラが、評価される前記コンデンサに関連する前記導体間に前記電圧が印加される間に、該評価されるコンデンサとは関連しない如何なる導体も一定電圧に維持されるようにする請求項11に記載のコントローラ。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図7】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図7】
【公表番号】特表2012−503324(P2012−503324A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527438(P2011−527438)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053957
【国際公開番号】WO2010/032173
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053957
【国際公開番号】WO2010/032173
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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