電子膨張弁および空気調和機
【課題】冷媒流量の微調整を高精度に行うことのできる電子膨張弁および空気調和機を提供する。
【解決手段】電子膨張弁は、先端に弁部が形成された弁体と、この弁体が弁軸方向に移動することによりこの弁部との間に可変絞り部を形成する弁座と、パルス数に応じて弁部を移動させるステッピングモータとを備えている。そして、弁部の側面の少なくとも一部分は、開度比が一定となる形状に形成されている。
【解決手段】電子膨張弁は、先端に弁部が形成された弁体と、この弁体が弁軸方向に移動することによりこの弁部との間に可変絞り部を形成する弁座と、パルス数に応じて弁部を移動させるステッピングモータとを備えている。そして、弁部の側面の少なくとも一部分は、開度比が一定となる形状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の冷媒回路に設けられる電子膨張弁および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電子膨張弁として、特許文献1に記載の技術が知られている。
この技術では、小流量範囲での冷媒流量の制御性を向上させるため、弁体に、冷媒通路と略平行な面を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−148420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気調和機の動作が安定期にあるとき、冷媒流量の僅かな調整が必要となる。しかし、弁体の最小移動幅に対する開口面積増大量が大きいとき、冷媒流量を微小量だけ増大または減少させることが難しい。冷媒流量が制御上の許容範囲内を超えて変動するときは、開度の微調整が行われるため、弁体が進退を繰り返す。
【0005】
そこで、従来の電子膨張弁では、上記構成により、小流量範囲における冷媒流量の制御を可能とする。しかし、次のような課題がある。弁本体の基部を冷媒通路の側面に対し所定距離にわたって平行にしているため、この範囲内で弁体が移動するときは開口面積が殆ど変わらない。このため冷媒流量が殆ど変わらず、結果的に、冷媒流量の微調整ができない場合もあると考えられる。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、冷媒流量の微調整を行うことのできる電子膨張弁および空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、先端に弁部(43)が形成された弁体(40)と、この弁体(40)が弁軸方向に移動することにより前記弁部(43)との間に可変絞り部を形成する弁座(33)と、パルス数に応じて前記弁体(40)を移動させるステッピングモータ(36)とを備えた電子膨張弁において、前記弁部(43)と前記弁座(33)との間に形成される隙間で前記弁軸方向に直交する断面の面積を開口面積とし、前記パルス数の増減前の前記開口面積と前記パルス数の増減後の前記開口面積との面積比を開度比として前記弁部(43)の側面の少なくとも一部分は前記開度比が一定となる形状に形成されていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、弁部(43)の側面の少なくとも一部は、開度比が一定となるように形成されている。すなわち、弁体(40)を移動させたとき、一定比で開口面積が増大する。このため、冷媒流量の変化比が一定となる。これにより、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0009】
なお、「開度比が一定」には「実質的一定」も含まれる。すなわち、開度比を精確に一定とする曲面形状のみならず、この曲面以外にも複数の面に置換したものであって、各面の境界線が前記曲面に配置されるものも含まれる。また、この曲面に近似した近似曲面も含まれる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子膨張弁(30)において、前記弁部(43)の側面が前記弁軸方向に3以上の領域に区分され、前記各領域の境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にあることを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、開度比が一定となる仮想曲面上に沿うように各領域の側面が形成される。すなわち、弁部(43)の側面は、上記仮想曲面に近似されている。これにより、弁部(43)の移動範囲にわたって冷媒流量の変化比が略一定になるため、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子膨張弁(30)において、前記領域の前記弁軸方向の長さを区間長として、前記各領域の区間長は前記弁部(43)の先端部に向けて順に小さいことを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、開度比が一定となる仮想曲面上に沿うように各領域の側面が形成され、かつ各領域の区間長が弁部(43)の先端部に向けて順に小さくしているため、開度が大きい程、弁部(43)の移動量に対する開度の変化量が大きく、開度が小さい程、弁部(43)の移動量に対する開度の変化量が小さくなる。すなわち、小開度領域においては、大開度領域に比べてより冷媒流量を高精度に調整をすることができる。大開度領域では、冷媒流量の高精度調整は必要とされていないため、この構成は、電子膨張弁(30)の動作安定化に寄与する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)において、前記開口面積の最大値を最大開口面積とし、前記最大開口面積に対する前記開口面積の割合を開度として、前記弁部(43)の側面は、前記開度が0%以上〜25%未満となるところに対応する第1領域、前記開度が25%以上〜50%未満となるところに対応する第2領域、前記開度が50%以上〜75%未満となるところに対応する第3領域、および前記開度が75%以上〜100%以下となるところに対応する第4領域の4つの領域に区分されるとともに前記各領域が円錐台側面形態とされ、前記各領域の境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にあることを要旨とする。
【0015】
この発明によれば、弁部(43)の移動において開度が25%増大するごとに、弁部(43)の側面形態が変えられている。そして、各境界線が、開度比が一定となる仮想曲面上にある。このため、弁部(43)の側面を曲面として形成する場合に比べて、容易に弁部(43)を形成することができるとともに、弁部(43)の移動範囲にわたって流量変化比を略一定とすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)において、前記開口面積の最大値を最大開口面積とし、前記最大開口面積に対する前記開口面積の割合を開度として、前記弁部(43)の側面は、前記開度が0%以上〜20%未満となるところに対応する第1領域、前記開度が20%以上〜40%未満となるところに対応する第2領域、前記開度が40%以上〜60%未満となるところに対応する第3領域、前記開度が60%以上〜80%未満となるところに対応する第4領域、および前記開度が80%以上〜100%以下となるところに対応する第5領域の5つの領域に区分されるとともに前記各領域が円錐台側面形態とされ、前記各領域の側面境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にあることを要旨とする。
【0017】
この発明によれば、弁部(43)の移動において開度が20%増大するごとに、弁部(43)の側面形態が変えられている。そして、各境界線が、開度比が一定となる仮想曲面上にある。このため、弁部(43)の側面を曲面として形成する場合に比べて、容易に弁部(43)を形成することができるとともに、弁部(43)の移動範囲にわたって流量変化比を略一定とすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の電子膨張弁(30)において、前記弁部(43)の弁軸を含む断面の外形線が次の2つの式で示される関係、
【0019】
【数1】
【0020】
xは、前記弁部(43)の前記弁軸方向において、弁座(33)の基部から半径rに対応する部分までの長さ、xmaxは、前記弁部(43)の基部から先端までの長さ、βは、開度比、Smaxは、最大開口面積、rは、前記弁部(43)の前記弁軸から側面までの長さ(半径)、を満たすことを要旨とする。
【0021】
この発明によれば、側面が曲面で形成され、弁部(43)の移動範囲において開度比がβとされている。このため、弁部(43)の移動範囲にわたって冷媒の流量変化を略一定にすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、先端に弁部(43)が形成された弁体(40)と、この弁体(40)が弁軸方向に移動することにより前記弁部(43)との間に可変絞り部を形成する弁座(33)と、パルス数に応じて前記弁体(40)を移動させるステッピングモータ(36)とを備えた電子膨張弁において、前記弁部(43)の側面のうち基部から先端までの少なくとも基部から1/5までの領域は、前記弁部(43)の弁軸に対する角度θについて次式を満たすことを要旨とする。
【0023】
【数2】
【0024】
この発明によれば、弁部(43)の側面のうち基部から先端までの少なくとも基部から1/5までの領域は、上記式を満たす形状に形成されている。すなわち、弁部(43)の移動に対して、開口面積が微小ずつ増減する構成とされている。このため、小開度領域において、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)を備える空気調和機である。
この発明によれば冷媒流量の微調整をすることができるため、空気調和機(1)における空調が安定する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電子膨張弁(30)により、冷媒流量の微調整を行うことができる。また、冷媒流量の微調整が可能となるため、空気調和機(1)の動作が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態の空気調和機について、その全体構造を示す模式図。
【図2】電子膨張弁の一部を断面で示した全体構成図。
【図3】同電子膨張弁の弁体を示し、(a)は電子膨張弁が全閉状態にあるときの弁周りの断面図、(b)は電子膨張弁が絞り状態にあるときの断面図。
【図4】図3(b)のA−A線に沿った断面図。
【図5】同電子膨張弁のマップを示し、(a)はパルス積算値と開度との関係を示すマップ、(b)はパルス積算値と開度比との関係を示すマップ。
【図6】同電子膨張弁における弁部の側面図。
【図7】同電子膨張弁における弁部の変形例の側面図。
【図8】同電子膨張弁における弁部の変形例の側面図。
【図9】同電子膨張弁の制御に用いられる制御マップ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、本実施形態の空気調和機の構成を示す。
空気調和機1は、冷媒を圧縮する圧縮機10と、室外に設けられる室外熱交換器20と、冷媒を膨張させる電子膨張弁30と、室内に設けられる室内熱交換器50と、四路切換弁60と、各装置を管理および制御する制御装置70とを備えている。
【0029】
図2を参照して、電子膨張弁30について説明する。
電子膨張弁30は、冷媒の出入口をなす第1配管31と、第2配管32と、棒状の弁体40と、弁座33と、弁孔34を有する円筒状部材35と、弁体40を弁軸方向に駆動するステッピングモータ36とを備えている。
【0030】
第1配管31は、電子膨張弁30の一方の出入口を構成する。第2配管32は、電子膨張弁30の他方の出入口を構成する。第2配管32は、第1配管31に対して垂直に交叉する。円筒状部材35は、第1配管31と弁室37とを接続する。弁孔34の弁室37側には、テーパ部が形成されている。このテーパ部は弁座33を構成する。
【0031】
図3を参照して、弁体40について説明する。
弁体40は、弁棒41と、テーパ部42と、弁棒41の先端にテーパ部42を介して形成された弁部43により構成されている。
【0032】
弁棒41は、ステッピングモータ36の回転軸に固定されている。
テーパ部42は、弁座33に当接することにより、電子膨張弁30を全閉状態にする。弁部43は、弁孔34に挿入される。弁部43の外径は、弁孔34の内径よりも小さく、かつ先端に向けて径が小さくなっている。可変絞り部は、弁部43が弁軸方向に移動することにより、弁部43と弁座33との間に形成される。
【0033】
弁体40とステッピングモータ36の回転軸とは、ねじまたはギア等の回転変換機構を介して接続されている。回転変換機構は、ステッピングモータ36の回転軸の回転運動を弁体40の直線運動に変換する。
【0034】
ステッピングモータ36は、制御装置70から出力されるパルス信号により駆動する。パルス数と回転角とは相関する。すなわち、ステッピングモータ36に入力されるパルス数に比例してステッピングモータ36の回転軸の回転角が大きくなる。
【0035】
弁体40は弁軸方向に移動する。
弁体40の移動量は、ステッピングモータ36の回転角に比例する。すなわち、弁体40の移動量すなわち弁部43の移動量は、制御装置70からステッピングモータ36に出力されるパルス数に比例する。
【0036】
図1に示すように、制御装置70には、温度センサ71および圧力センサ72が接続されている。温度センサ71は冷媒の温度(以下、冷媒温度)を検出し、冷媒温度に対応する冷媒温度信号を制御装置70に出力する。圧力センサ72は冷媒の圧力(以下、冷媒圧力)を検出し、冷媒圧力に対応する冷媒圧力信号を制御装置70に出力する。
【0037】
また、制御装置70は、ステッピングモータ36に出力するパルス数をカウントする。また、カウントしたパルス数を積算して、パルス積算値を計算し、かつパルス積算値を記憶する。なお、パルス数は、正負の符号が付与されている。すなわち、弁部43が弁孔34に挿入する方向(以下、進入方向)にステッピングモータ36の回転軸が回転(以下、負回転)するとき、パルス数は負の値とされる。一方、弁部43が弁孔34から出る方向(以下、退出方向)にステッピングモータ36の回転軸が回転(以下、正回転)するとき、パルス数は正の値とされる。すなわち、ステッピングモータ36の回転軸が正回転して弁部43が退出方向に移動するとき、パルス積算値は増大する。一方、ステッピングモータ36の回転軸が負回転して弁部43が進入方向に移動するとき、パルス積算値は減少する。
【0038】
図3を参照して、弁部43の位置について説明する。
図3(a)に示すように、弁体40のテーパ部42が弁座33に接触するとき、このときの弁部43の位置が基準位置に設定される。なお、弁部43が基準位置にあるとき、制御装置70のパルス積算値がリセットされ、パルス積算値は「0」となる。
【0039】
図3(b)に示すように、弁部43が基準位置から離れたとき、弁部43と弁座33の最小径部分との間に隙間が形成される。
弁部43の位置は、基準位置からの弁部43の移動距離に等しい。このため、弁部43の位置はパルス積算値との関係で特定される。すなわち、基準位置からの弁部43の移動量は、基準位置から所定位置まで移動する間におけるパルス数の総和に対応する。すなわち、弁部43の位置はパルス積算値に対応する。
【0040】
図4を参照して、電子膨張弁30の開口面積および開度について説明する。
開口面積は、弁座33の最小径部分と弁部43との間の隙間部分において弁軸方向に直交する断面の面積(隙間面積)として定義される。具体的には、開口面積は、弁座33の最小径部分の面積SA(弁軸方向に直交する断面の面積)と、弁座33の最小径部分を含む面で弁部43を切断したときの断面積SB(弁軸方向に直交する断面の面積)との差により定義される。
【0041】
弁部43の全体が第1配管31から出たとき、開口面積は弁座33の最小径部分の面積SAに一致する。すなわち。弁座33の最小径部分の面積は、最大開口面積Smaxに対応する。
【0042】
開度は、弁部43が所定位置にあるときの開口面積と最大開口面積Smaxとの比(%)として定義される。すなわち、弁部43のテーパ部42と弁座33とが接触して全閉状態にあるとき、開度は0%であり、弁部43の全体が第1配管31から出ているとき、開度は100%である。
【0043】
弁部43と開度との関係について説明する。
開度は、近似的に、冷媒流量に比例関係にある。冷媒流量を制御するときは、開度が調整される。開度調整は、パルス積算値を用いて行われる。
【0044】
開度は、パルス積算値の増大に従って増大する。一方、パルス積算値に伴う開度の増大態様は、弁部43の側面構造に依存する。このため、制御装置70は、開度調整を行うとき、開度とパルス積算値との関係を示すマップを用いる。
【0045】
例えば、形成しやすい形状である円錐状の弁部43を採用している場合、パルス積算値Xaに対して、開度がC−D・(E−Xa)2関数として表されるマップが用いられる。このような構成の場合、小開度領域において開度調整を行うとき、開度に対してXa2の寄与が大きく、パルス積算値Xaの微小変化における開度の変化量が大きいため、開度の微調整が難しい。すなわち、小流量領域における流量微調整が困難である。
【0046】
そこで、本実施形態では、開度を高精度に制御することを目的として、開度調整が行いやすいマップを想定した。そして、このマップに基づいた弁構造を考案した。まず、このマップについて説明する。
【0047】
図5は、パルス積算値と開度との関係を示すマップを示す。
このマップは、開度が、パルス積算値すなわち弁部43の位置に対して指数関数的に大きくなる関係にある。すなわち、次の(1)式を満たす。
【0048】
【数3】
【0049】
・Y:開度
・A:定数
・X:パルス積算値
・β:X=最大パルス積算値XmaxとしたときY=100となる値。
・Xmax:パルス積算値の最大値。すなわち、基準位置から最も離れた弁部43の位置に対応するパルス積算値。
【0050】
なお、X=0のとき、すなわちパルス積算値が0のとき、実際には開度が0%となるが、計算上の簡略のため、X=0のとき、開度が所定値をとることとする。
開度Y(X)によれば、パルス積算値Xの所定値δ(パルス数の所定増減値)だけ異なる2点において、次の関係が成立する。
【0051】
【数4】
【0052】
所定値δを1(1パルス)とする場合、パルス積算値Xが1異なる2点における開度比(Y(X+1)/Y(X))は「β」となる。この開度比は、パルス積算値Xの値に関わらず、一定値である。なお、所定値δを大きくすると開度比(Y(X+δ)/Y(X))も大きくなるが、パルス積算値Xの値に対しては一定値である。
【0053】
上記(1)式を満たすことは、上記(2)式を満たすことと同値である。
すなわち、上記(1)を満たすマップを用いれば、パルス積算値すなわち弁部43の位置に対して開度比が一定となる。パルス積算値の全体にわたって開度比が一定であるとき、パルス積算値にわたって冷媒流量の変化比も一定であるため、冷媒流量の制御が行いやすくなる。特に、小開度領域において、開度が確実に微小量増大するため、冷媒流量の微調整が可能となる。
【0054】
なお、開度比が一定とは、パルス積算値の増分に対して開度が所定値ずつ増大することを示す。例えば、開度比を1.05かつ開度の初期値を1%とするとき、パルス積算値の1ずつの増大に対して、開度は、1.0%、1.05%、1.1025%、1.15763%・・・と順に増大する。
【0055】
この種のマップによれば、冷媒流量は、パルス積算値の増大とともに指数関数的に増大する。すなわち、パルス積算値が小さいとき、冷媒流量は小さくかつパルス積算値の増大にともなう冷媒流量の増分も小さい。一方、パルス積算値が大きいとき、冷媒流量は大きくかつパルス積算値の増大にともなう冷媒流量の増分も大きい。
【0056】
図6を参照して、上記(1)式を満たす弁部43の一例を挙げる。
弁部43の外形線の形状について説明する。
弁部43において弁軸を含む断面の外形線は以下の式を満たす。
【0057】
【数5】
【0058】
【数6】
【0059】
・x:弁部43において基部44から半径rに対応する部分までの長さ。
・xmax:弁部43において基部44から先端までの長さ。
・β:開度比。
・Smax:最大開口面積。
・r:弁部43の弁軸から側面までの長さ(半径)。
・B:定数。
【0060】
なお、xmaxは、1パルスについて弁部43が弁軸方向に移動する単位距離として、この単位距離と最大パルス積算値Xmaxとの積に対応する。また、テーパ部42の幅を微小であるとみなして、弁部43の基部44の断面積と最大開口面積Smaxとが一致することとした。
【0061】
以上の式を満たす側面を有する弁部43は、パルス駆動により、上記(1)式および(2)式を満たす。すなわち、上記(3)式によれば、(5)式が成立する。
【0062】
【数7】
【0063】
上記(5)式は、弁部43が基準位置から距離xの位置まで離れたときの距離xとrとの関係を示す。上記(5)式は、開口面積を示す。すなわち、上記(5)式は、弁部43の所定位置における開度を示す。すなわち、(5)式は、最大開口面積Smaxと、弁座33の最小径部分を含む面で弁部43を切断したときの断面積(π・r2)との差すなわち開口面積が、弁部位置の指数関数として表されていることを示す。この式は(1)式と同じである。すなわち、(4)式の側面を有する弁部43は、弁部43の位置に関わらず、開度比が一定である。
【0064】
図7を参照して、弁部43の他の例を挙げる。
本例の弁部43は、側面が次の5つの領域に区別される。
第1領域RAは、開度が0%以上〜20%未満となるところに対応する。第2領域RBは、開度が20%以上〜40%未満となるところに対応する。第3領域RCは、開度が40%以上〜60%未満となるところに対応する。第4領域RDは、開度が60%以上〜80%未満となるところに対応する。第5領域REは、開度が80%以上〜100%以下となるところに対応する。
【0065】
各領域の側面は円錐台の側面形態とされている。
そして、各領域の側面境界線LSは、開度比が一定となる仮想曲面V上に設けている。具体的には、仮想曲面Vは、上記(3)および(4)を満たす曲面である。すなわち、弁部43の側面は仮想曲面Vに近似する。このような構成とする場合、各領域の弁軸方向の長さ(区間長L)は弁部43の先端部に向けて順に小さくなる。また、第1領域RAの側面の角度θは、弁部43の弁軸に対し、0<tanθ<0.2の関係を満たす。
【0066】
図8を参照して、弁部43の他の例を挙げる。
本例の弁部43は、側面が次の4つの領域に区別される。
第1領域RAは、開度が0%以上〜25%未満となるところに対応する。第2領域RBは、開度が25%以上〜50%未満となるところに対応する。第3領域RCは、開度が50%以上〜75%未満となるところに対応する。第4領域RDは、開度が75%以上〜100%以下となるところに対応する。
【0067】
各領域の側面は円錐台の側面形態とされている。
そして、各領域の側面境界線LSは、開度比が一定となる仮想曲面V上に設けている。具体的には、仮想曲面Vは、上記(3)および(4)を満たす曲面である。すなわち、この弁部43の側面は仮想曲面Vに近似する。このような構成とする場合、各領域の弁軸方向の長さ(区間長L)は弁部43の先端部に向けて順に小さくなる。また、第1領域RAの側面の角度θは、弁部43の弁軸に対し、0<tanθ<0.2の関係を満たす。
【0068】
[冷媒流量制御]
冷媒流量制御について説明する。
空気調和機1では、冷媒圧力、冷媒温度等に基づいて冷媒流量が調整される。冷媒流量の調整は、電子膨張弁30の開度調整により行われる。すなわち、冷媒圧力、冷媒温度等に基づいて制御装置70により要求開度が計算される。そして、要求開度に対応するように電子膨張弁30の開度が調整される。なお、要求開度はPID制御により逐次更新され、この更新毎に開度が調整される。
【0069】
要求開度が決定したとき、制御装置70は、電子膨張弁30の開度を要求開度に調整する。具体的には、制御マップを用いて、要求開度に応じたパルス積算値(以下、補正パルス値)を決定する。次に、要求開度の指令時におけるパルス積算値(以下、実パルス値)を読み取るとともに、補正パルス値と実パルス値との差を算出する。そして、この差に対応するパルス信号をステッピングモータ36に出力して弁部43を駆動して、開度を要求開度と一致させる。
【0070】
図9を参照して上記制御マップについて説明する。
制御マップは、図5(a)に示したマップと実質的に同じである。すなわち、制御マップはパルス積算値の大きさに関係なく、開度比が一定になる。但し、横軸を要求開度とし、縦軸をパルス積算値としている。
【0071】
従来構造の電子膨張弁と比較して、本実施形態の電子膨張弁30にかかる制御マップについて説明する。
図9に、従来構造の電子膨張弁の制御マップを破線で示した。
【0072】
従来構造の電子膨張弁は、円錐状または円錐台状の弁部を有する。この種の弁部の場合、パルス積算値に対応して弁部が弁孔から出る方向に移動するとき、弁部の移動量の2乗に比例して開度が大きくなる。このため、要求開度が小さいとき、かつ要求開度を微小量変更させることは難しい。すなわち、図9に示すように、小開度領域(例えば、要求開度の0〜10%以下の範囲)に対応するパルス積算値は、最大パルス積算値の1/10以下である。
【0073】
一方、本実施形態の電子膨張弁30では、開度が指数関数的に増大するように構成されているため、図9に示すように、小開度領域に対応するパルス積算値は、最大パルス積算値の1/2程度を占める。すなわち、小開度領域において、従来構造よりも、多くのパルス数を用いて弁部43を制御することが可能である。このため、開度を微調整することができる。これにより、冷媒流量の精緻な制御が可能となる。
【0074】
以下、本実施形態の効果を説明する。
(1)本実施形態では、弁部43の側面は、当該側面と弁座33との間で隙間(開口部)を形成するとき開度比が一定となるように形成されている。
【0075】
この構成によれば、弁部43の側面は、開度比が一定となるように形成されている。すなわち、弁部43を移動させたとき、一定比で開口面積が増大する。このため、冷媒流量の変化比が一定となる。これにより冷媒流量の微調整をすることができる。
【0076】
(2)本実施形態では、弁部43の側面が弁軸方向に3以上の領域に区分され、各領域の境界線が、開度比が一定となる仮想曲面V上にある。この構成によれば、開度比が一定となる仮想曲面V上に沿うように各領域の側面が形成される。すなわち、弁部43の側面は、上記仮想曲面Vに近似されている。これにより、弁部43の移動範囲にわたって冷媒流量の変化比が略一定になるため、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0077】
(3)本実施形態の変形例では、弁部側面の各領域の区間長Lが弁部43の先端部に向けて順に小さい。この構成によれば、各領域の区間長Lが弁部43の先端部に向けて順に小さいため、開度が大きい程、弁部43の移動量に対する変化量が大きく、開度が小さい程、弁部43の移動量に対する変化量が小さくなる。すなわち、小開度領域においては、大開度領域に比べてより冷媒流量を高精度に調整することができる。なお、このような構成によれば、各領域の区間長Lを弁部43の先端部に向けて順に小さくしない構成に比べて、弁部43が短くなる。
【0078】
(4)本実施形態では、弁部43の弁軸を含む断面の外形線が上記(3)式および上記(4)式で示される関係を満たす。この構成によれば、側面が曲面で形成され、弁部43の移動範囲において開度比がβとされる。このため、弁部43の移動範囲にわたって冷媒の流量変化を略一定にすることができる。
【0079】
(5)本実施形態の変形例では、弁部43の移動において開度が25%増大するごとに、弁部43の側面形態が変えられている。そして、各境界線が、開度比が一定となる仮想曲面V上にある。このため、弁部43の側面を曲面として形成する場合に比べて、容易に弁部43を形成することができる。また、弁部43の移動範囲にわたって流量変化比を略一定とすることができる。
【0080】
(6)本実施形態の変形例では、弁部43の移動において開度が20%増大するごとに、弁部43の側面形態が変えられている。そして、各境界線が、開度比が一定となる仮想曲面V上にある。このため、弁部43の側面を曲面として形成する場合に比べて、容易に弁部43を形成することができる。また、弁部43の移動範囲にわたって流量変化比を略一定とすることができる。
【0081】
(7)本実施形態の変形例では、第1領域の側面の角度θが、弁部43の弁軸に対し、0<tanθ<0.2の関係を満たす。すなわち、弁部43の移動に対して、開口面積が微小ずつ増減する構成とされている。このため、小開度領域において、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0082】
(8)本実施形態の空気調和機1は、電子膨張弁30を備えている。この構成によれば冷媒流量の微調整をすることができるため、空気調和機1における空調が安定する。
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態にて示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0083】
・本実施形態では、弁部43の側面全体が、上記(3)式および上記(4)式を満たす。このような構成に代えて、側面の一部だけが上記(3)式および上記(4)式を満たす構成としてもよい。この場合においても、少なくとも当該一部の側面において、開口比が一定となるため、当該側面に対応する弁部43の駆動範囲において、冷媒流量を高精度に制御することができる。
【0084】
例えば、弁部43の基部44から先端部までの長さを100とし基部の位置を0とする場合において、1〜25の範囲で、上記(3)式および(4)式を満たす構成とすることもできる。位置0においては殆ど流量が0であって極小開度領域では開度制御を行わないこと、また位置25〜100の範囲では開度の微調整を行うことが少ないことから、所定領域のみ開度比一定とすることに技術的意義がある。
【0085】
・本実施形態では、(1)式のマップに実現するように弁部43の側面形状の最適化を行っているが、弁座形状の最適化により、(1)式のマップを実現してもよい。また、弁部43および弁座33の両者の形状を考慮して、(1)式のマップを実現してもよい。
【0086】
・本実施形態の変形例では、弁部43の側面を5つまたは4つの面により構成しているが、6以上の面により構成してもよい。また、3つの面で構成してもよい。なお、いずれの構成の場合でも、各領域の面により構成される多面体は、弁部43の底面と先端部とにより構成される仮想円錐形状に対し、弁部43の全体側面が膨出する形態となる。
【符号の説明】
【0087】
1…空気調和機、10…圧縮機、20…室外熱交換器、30…電子膨張弁、31…第1配管、32…第2配管、33…弁座、34…弁孔、35…円筒状部材、36…ステッピングモータ、37…弁室、40…弁体、41…弁棒、42…テーパ部、43…弁部、44…基部、50…室内熱交換器、60…四路切換弁、70…制御装置、71…温度センサ、72…圧力センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の冷媒回路に設けられる電子膨張弁および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電子膨張弁として、特許文献1に記載の技術が知られている。
この技術では、小流量範囲での冷媒流量の制御性を向上させるため、弁体に、冷媒通路と略平行な面を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−148420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気調和機の動作が安定期にあるとき、冷媒流量の僅かな調整が必要となる。しかし、弁体の最小移動幅に対する開口面積増大量が大きいとき、冷媒流量を微小量だけ増大または減少させることが難しい。冷媒流量が制御上の許容範囲内を超えて変動するときは、開度の微調整が行われるため、弁体が進退を繰り返す。
【0005】
そこで、従来の電子膨張弁では、上記構成により、小流量範囲における冷媒流量の制御を可能とする。しかし、次のような課題がある。弁本体の基部を冷媒通路の側面に対し所定距離にわたって平行にしているため、この範囲内で弁体が移動するときは開口面積が殆ど変わらない。このため冷媒流量が殆ど変わらず、結果的に、冷媒流量の微調整ができない場合もあると考えられる。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、冷媒流量の微調整を行うことのできる電子膨張弁および空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、先端に弁部(43)が形成された弁体(40)と、この弁体(40)が弁軸方向に移動することにより前記弁部(43)との間に可変絞り部を形成する弁座(33)と、パルス数に応じて前記弁体(40)を移動させるステッピングモータ(36)とを備えた電子膨張弁において、前記弁部(43)と前記弁座(33)との間に形成される隙間で前記弁軸方向に直交する断面の面積を開口面積とし、前記パルス数の増減前の前記開口面積と前記パルス数の増減後の前記開口面積との面積比を開度比として前記弁部(43)の側面の少なくとも一部分は前記開度比が一定となる形状に形成されていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、弁部(43)の側面の少なくとも一部は、開度比が一定となるように形成されている。すなわち、弁体(40)を移動させたとき、一定比で開口面積が増大する。このため、冷媒流量の変化比が一定となる。これにより、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0009】
なお、「開度比が一定」には「実質的一定」も含まれる。すなわち、開度比を精確に一定とする曲面形状のみならず、この曲面以外にも複数の面に置換したものであって、各面の境界線が前記曲面に配置されるものも含まれる。また、この曲面に近似した近似曲面も含まれる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子膨張弁(30)において、前記弁部(43)の側面が前記弁軸方向に3以上の領域に区分され、前記各領域の境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にあることを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、開度比が一定となる仮想曲面上に沿うように各領域の側面が形成される。すなわち、弁部(43)の側面は、上記仮想曲面に近似されている。これにより、弁部(43)の移動範囲にわたって冷媒流量の変化比が略一定になるため、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子膨張弁(30)において、前記領域の前記弁軸方向の長さを区間長として、前記各領域の区間長は前記弁部(43)の先端部に向けて順に小さいことを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、開度比が一定となる仮想曲面上に沿うように各領域の側面が形成され、かつ各領域の区間長が弁部(43)の先端部に向けて順に小さくしているため、開度が大きい程、弁部(43)の移動量に対する開度の変化量が大きく、開度が小さい程、弁部(43)の移動量に対する開度の変化量が小さくなる。すなわち、小開度領域においては、大開度領域に比べてより冷媒流量を高精度に調整をすることができる。大開度領域では、冷媒流量の高精度調整は必要とされていないため、この構成は、電子膨張弁(30)の動作安定化に寄与する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)において、前記開口面積の最大値を最大開口面積とし、前記最大開口面積に対する前記開口面積の割合を開度として、前記弁部(43)の側面は、前記開度が0%以上〜25%未満となるところに対応する第1領域、前記開度が25%以上〜50%未満となるところに対応する第2領域、前記開度が50%以上〜75%未満となるところに対応する第3領域、および前記開度が75%以上〜100%以下となるところに対応する第4領域の4つの領域に区分されるとともに前記各領域が円錐台側面形態とされ、前記各領域の境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にあることを要旨とする。
【0015】
この発明によれば、弁部(43)の移動において開度が25%増大するごとに、弁部(43)の側面形態が変えられている。そして、各境界線が、開度比が一定となる仮想曲面上にある。このため、弁部(43)の側面を曲面として形成する場合に比べて、容易に弁部(43)を形成することができるとともに、弁部(43)の移動範囲にわたって流量変化比を略一定とすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)において、前記開口面積の最大値を最大開口面積とし、前記最大開口面積に対する前記開口面積の割合を開度として、前記弁部(43)の側面は、前記開度が0%以上〜20%未満となるところに対応する第1領域、前記開度が20%以上〜40%未満となるところに対応する第2領域、前記開度が40%以上〜60%未満となるところに対応する第3領域、前記開度が60%以上〜80%未満となるところに対応する第4領域、および前記開度が80%以上〜100%以下となるところに対応する第5領域の5つの領域に区分されるとともに前記各領域が円錐台側面形態とされ、前記各領域の側面境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にあることを要旨とする。
【0017】
この発明によれば、弁部(43)の移動において開度が20%増大するごとに、弁部(43)の側面形態が変えられている。そして、各境界線が、開度比が一定となる仮想曲面上にある。このため、弁部(43)の側面を曲面として形成する場合に比べて、容易に弁部(43)を形成することができるとともに、弁部(43)の移動範囲にわたって流量変化比を略一定とすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の電子膨張弁(30)において、前記弁部(43)の弁軸を含む断面の外形線が次の2つの式で示される関係、
【0019】
【数1】
【0020】
xは、前記弁部(43)の前記弁軸方向において、弁座(33)の基部から半径rに対応する部分までの長さ、xmaxは、前記弁部(43)の基部から先端までの長さ、βは、開度比、Smaxは、最大開口面積、rは、前記弁部(43)の前記弁軸から側面までの長さ(半径)、を満たすことを要旨とする。
【0021】
この発明によれば、側面が曲面で形成され、弁部(43)の移動範囲において開度比がβとされている。このため、弁部(43)の移動範囲にわたって冷媒の流量変化を略一定にすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、先端に弁部(43)が形成された弁体(40)と、この弁体(40)が弁軸方向に移動することにより前記弁部(43)との間に可変絞り部を形成する弁座(33)と、パルス数に応じて前記弁体(40)を移動させるステッピングモータ(36)とを備えた電子膨張弁において、前記弁部(43)の側面のうち基部から先端までの少なくとも基部から1/5までの領域は、前記弁部(43)の弁軸に対する角度θについて次式を満たすことを要旨とする。
【0023】
【数2】
【0024】
この発明によれば、弁部(43)の側面のうち基部から先端までの少なくとも基部から1/5までの領域は、上記式を満たす形状に形成されている。すなわち、弁部(43)の移動に対して、開口面積が微小ずつ増減する構成とされている。このため、小開度領域において、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)を備える空気調和機である。
この発明によれば冷媒流量の微調整をすることができるため、空気調和機(1)における空調が安定する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電子膨張弁(30)により、冷媒流量の微調整を行うことができる。また、冷媒流量の微調整が可能となるため、空気調和機(1)の動作が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態の空気調和機について、その全体構造を示す模式図。
【図2】電子膨張弁の一部を断面で示した全体構成図。
【図3】同電子膨張弁の弁体を示し、(a)は電子膨張弁が全閉状態にあるときの弁周りの断面図、(b)は電子膨張弁が絞り状態にあるときの断面図。
【図4】図3(b)のA−A線に沿った断面図。
【図5】同電子膨張弁のマップを示し、(a)はパルス積算値と開度との関係を示すマップ、(b)はパルス積算値と開度比との関係を示すマップ。
【図6】同電子膨張弁における弁部の側面図。
【図7】同電子膨張弁における弁部の変形例の側面図。
【図8】同電子膨張弁における弁部の変形例の側面図。
【図9】同電子膨張弁の制御に用いられる制御マップ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、本実施形態の空気調和機の構成を示す。
空気調和機1は、冷媒を圧縮する圧縮機10と、室外に設けられる室外熱交換器20と、冷媒を膨張させる電子膨張弁30と、室内に設けられる室内熱交換器50と、四路切換弁60と、各装置を管理および制御する制御装置70とを備えている。
【0029】
図2を参照して、電子膨張弁30について説明する。
電子膨張弁30は、冷媒の出入口をなす第1配管31と、第2配管32と、棒状の弁体40と、弁座33と、弁孔34を有する円筒状部材35と、弁体40を弁軸方向に駆動するステッピングモータ36とを備えている。
【0030】
第1配管31は、電子膨張弁30の一方の出入口を構成する。第2配管32は、電子膨張弁30の他方の出入口を構成する。第2配管32は、第1配管31に対して垂直に交叉する。円筒状部材35は、第1配管31と弁室37とを接続する。弁孔34の弁室37側には、テーパ部が形成されている。このテーパ部は弁座33を構成する。
【0031】
図3を参照して、弁体40について説明する。
弁体40は、弁棒41と、テーパ部42と、弁棒41の先端にテーパ部42を介して形成された弁部43により構成されている。
【0032】
弁棒41は、ステッピングモータ36の回転軸に固定されている。
テーパ部42は、弁座33に当接することにより、電子膨張弁30を全閉状態にする。弁部43は、弁孔34に挿入される。弁部43の外径は、弁孔34の内径よりも小さく、かつ先端に向けて径が小さくなっている。可変絞り部は、弁部43が弁軸方向に移動することにより、弁部43と弁座33との間に形成される。
【0033】
弁体40とステッピングモータ36の回転軸とは、ねじまたはギア等の回転変換機構を介して接続されている。回転変換機構は、ステッピングモータ36の回転軸の回転運動を弁体40の直線運動に変換する。
【0034】
ステッピングモータ36は、制御装置70から出力されるパルス信号により駆動する。パルス数と回転角とは相関する。すなわち、ステッピングモータ36に入力されるパルス数に比例してステッピングモータ36の回転軸の回転角が大きくなる。
【0035】
弁体40は弁軸方向に移動する。
弁体40の移動量は、ステッピングモータ36の回転角に比例する。すなわち、弁体40の移動量すなわち弁部43の移動量は、制御装置70からステッピングモータ36に出力されるパルス数に比例する。
【0036】
図1に示すように、制御装置70には、温度センサ71および圧力センサ72が接続されている。温度センサ71は冷媒の温度(以下、冷媒温度)を検出し、冷媒温度に対応する冷媒温度信号を制御装置70に出力する。圧力センサ72は冷媒の圧力(以下、冷媒圧力)を検出し、冷媒圧力に対応する冷媒圧力信号を制御装置70に出力する。
【0037】
また、制御装置70は、ステッピングモータ36に出力するパルス数をカウントする。また、カウントしたパルス数を積算して、パルス積算値を計算し、かつパルス積算値を記憶する。なお、パルス数は、正負の符号が付与されている。すなわち、弁部43が弁孔34に挿入する方向(以下、進入方向)にステッピングモータ36の回転軸が回転(以下、負回転)するとき、パルス数は負の値とされる。一方、弁部43が弁孔34から出る方向(以下、退出方向)にステッピングモータ36の回転軸が回転(以下、正回転)するとき、パルス数は正の値とされる。すなわち、ステッピングモータ36の回転軸が正回転して弁部43が退出方向に移動するとき、パルス積算値は増大する。一方、ステッピングモータ36の回転軸が負回転して弁部43が進入方向に移動するとき、パルス積算値は減少する。
【0038】
図3を参照して、弁部43の位置について説明する。
図3(a)に示すように、弁体40のテーパ部42が弁座33に接触するとき、このときの弁部43の位置が基準位置に設定される。なお、弁部43が基準位置にあるとき、制御装置70のパルス積算値がリセットされ、パルス積算値は「0」となる。
【0039】
図3(b)に示すように、弁部43が基準位置から離れたとき、弁部43と弁座33の最小径部分との間に隙間が形成される。
弁部43の位置は、基準位置からの弁部43の移動距離に等しい。このため、弁部43の位置はパルス積算値との関係で特定される。すなわち、基準位置からの弁部43の移動量は、基準位置から所定位置まで移動する間におけるパルス数の総和に対応する。すなわち、弁部43の位置はパルス積算値に対応する。
【0040】
図4を参照して、電子膨張弁30の開口面積および開度について説明する。
開口面積は、弁座33の最小径部分と弁部43との間の隙間部分において弁軸方向に直交する断面の面積(隙間面積)として定義される。具体的には、開口面積は、弁座33の最小径部分の面積SA(弁軸方向に直交する断面の面積)と、弁座33の最小径部分を含む面で弁部43を切断したときの断面積SB(弁軸方向に直交する断面の面積)との差により定義される。
【0041】
弁部43の全体が第1配管31から出たとき、開口面積は弁座33の最小径部分の面積SAに一致する。すなわち。弁座33の最小径部分の面積は、最大開口面積Smaxに対応する。
【0042】
開度は、弁部43が所定位置にあるときの開口面積と最大開口面積Smaxとの比(%)として定義される。すなわち、弁部43のテーパ部42と弁座33とが接触して全閉状態にあるとき、開度は0%であり、弁部43の全体が第1配管31から出ているとき、開度は100%である。
【0043】
弁部43と開度との関係について説明する。
開度は、近似的に、冷媒流量に比例関係にある。冷媒流量を制御するときは、開度が調整される。開度調整は、パルス積算値を用いて行われる。
【0044】
開度は、パルス積算値の増大に従って増大する。一方、パルス積算値に伴う開度の増大態様は、弁部43の側面構造に依存する。このため、制御装置70は、開度調整を行うとき、開度とパルス積算値との関係を示すマップを用いる。
【0045】
例えば、形成しやすい形状である円錐状の弁部43を採用している場合、パルス積算値Xaに対して、開度がC−D・(E−Xa)2関数として表されるマップが用いられる。このような構成の場合、小開度領域において開度調整を行うとき、開度に対してXa2の寄与が大きく、パルス積算値Xaの微小変化における開度の変化量が大きいため、開度の微調整が難しい。すなわち、小流量領域における流量微調整が困難である。
【0046】
そこで、本実施形態では、開度を高精度に制御することを目的として、開度調整が行いやすいマップを想定した。そして、このマップに基づいた弁構造を考案した。まず、このマップについて説明する。
【0047】
図5は、パルス積算値と開度との関係を示すマップを示す。
このマップは、開度が、パルス積算値すなわち弁部43の位置に対して指数関数的に大きくなる関係にある。すなわち、次の(1)式を満たす。
【0048】
【数3】
【0049】
・Y:開度
・A:定数
・X:パルス積算値
・β:X=最大パルス積算値XmaxとしたときY=100となる値。
・Xmax:パルス積算値の最大値。すなわち、基準位置から最も離れた弁部43の位置に対応するパルス積算値。
【0050】
なお、X=0のとき、すなわちパルス積算値が0のとき、実際には開度が0%となるが、計算上の簡略のため、X=0のとき、開度が所定値をとることとする。
開度Y(X)によれば、パルス積算値Xの所定値δ(パルス数の所定増減値)だけ異なる2点において、次の関係が成立する。
【0051】
【数4】
【0052】
所定値δを1(1パルス)とする場合、パルス積算値Xが1異なる2点における開度比(Y(X+1)/Y(X))は「β」となる。この開度比は、パルス積算値Xの値に関わらず、一定値である。なお、所定値δを大きくすると開度比(Y(X+δ)/Y(X))も大きくなるが、パルス積算値Xの値に対しては一定値である。
【0053】
上記(1)式を満たすことは、上記(2)式を満たすことと同値である。
すなわち、上記(1)を満たすマップを用いれば、パルス積算値すなわち弁部43の位置に対して開度比が一定となる。パルス積算値の全体にわたって開度比が一定であるとき、パルス積算値にわたって冷媒流量の変化比も一定であるため、冷媒流量の制御が行いやすくなる。特に、小開度領域において、開度が確実に微小量増大するため、冷媒流量の微調整が可能となる。
【0054】
なお、開度比が一定とは、パルス積算値の増分に対して開度が所定値ずつ増大することを示す。例えば、開度比を1.05かつ開度の初期値を1%とするとき、パルス積算値の1ずつの増大に対して、開度は、1.0%、1.05%、1.1025%、1.15763%・・・と順に増大する。
【0055】
この種のマップによれば、冷媒流量は、パルス積算値の増大とともに指数関数的に増大する。すなわち、パルス積算値が小さいとき、冷媒流量は小さくかつパルス積算値の増大にともなう冷媒流量の増分も小さい。一方、パルス積算値が大きいとき、冷媒流量は大きくかつパルス積算値の増大にともなう冷媒流量の増分も大きい。
【0056】
図6を参照して、上記(1)式を満たす弁部43の一例を挙げる。
弁部43の外形線の形状について説明する。
弁部43において弁軸を含む断面の外形線は以下の式を満たす。
【0057】
【数5】
【0058】
【数6】
【0059】
・x:弁部43において基部44から半径rに対応する部分までの長さ。
・xmax:弁部43において基部44から先端までの長さ。
・β:開度比。
・Smax:最大開口面積。
・r:弁部43の弁軸から側面までの長さ(半径)。
・B:定数。
【0060】
なお、xmaxは、1パルスについて弁部43が弁軸方向に移動する単位距離として、この単位距離と最大パルス積算値Xmaxとの積に対応する。また、テーパ部42の幅を微小であるとみなして、弁部43の基部44の断面積と最大開口面積Smaxとが一致することとした。
【0061】
以上の式を満たす側面を有する弁部43は、パルス駆動により、上記(1)式および(2)式を満たす。すなわち、上記(3)式によれば、(5)式が成立する。
【0062】
【数7】
【0063】
上記(5)式は、弁部43が基準位置から距離xの位置まで離れたときの距離xとrとの関係を示す。上記(5)式は、開口面積を示す。すなわち、上記(5)式は、弁部43の所定位置における開度を示す。すなわち、(5)式は、最大開口面積Smaxと、弁座33の最小径部分を含む面で弁部43を切断したときの断面積(π・r2)との差すなわち開口面積が、弁部位置の指数関数として表されていることを示す。この式は(1)式と同じである。すなわち、(4)式の側面を有する弁部43は、弁部43の位置に関わらず、開度比が一定である。
【0064】
図7を参照して、弁部43の他の例を挙げる。
本例の弁部43は、側面が次の5つの領域に区別される。
第1領域RAは、開度が0%以上〜20%未満となるところに対応する。第2領域RBは、開度が20%以上〜40%未満となるところに対応する。第3領域RCは、開度が40%以上〜60%未満となるところに対応する。第4領域RDは、開度が60%以上〜80%未満となるところに対応する。第5領域REは、開度が80%以上〜100%以下となるところに対応する。
【0065】
各領域の側面は円錐台の側面形態とされている。
そして、各領域の側面境界線LSは、開度比が一定となる仮想曲面V上に設けている。具体的には、仮想曲面Vは、上記(3)および(4)を満たす曲面である。すなわち、弁部43の側面は仮想曲面Vに近似する。このような構成とする場合、各領域の弁軸方向の長さ(区間長L)は弁部43の先端部に向けて順に小さくなる。また、第1領域RAの側面の角度θは、弁部43の弁軸に対し、0<tanθ<0.2の関係を満たす。
【0066】
図8を参照して、弁部43の他の例を挙げる。
本例の弁部43は、側面が次の4つの領域に区別される。
第1領域RAは、開度が0%以上〜25%未満となるところに対応する。第2領域RBは、開度が25%以上〜50%未満となるところに対応する。第3領域RCは、開度が50%以上〜75%未満となるところに対応する。第4領域RDは、開度が75%以上〜100%以下となるところに対応する。
【0067】
各領域の側面は円錐台の側面形態とされている。
そして、各領域の側面境界線LSは、開度比が一定となる仮想曲面V上に設けている。具体的には、仮想曲面Vは、上記(3)および(4)を満たす曲面である。すなわち、この弁部43の側面は仮想曲面Vに近似する。このような構成とする場合、各領域の弁軸方向の長さ(区間長L)は弁部43の先端部に向けて順に小さくなる。また、第1領域RAの側面の角度θは、弁部43の弁軸に対し、0<tanθ<0.2の関係を満たす。
【0068】
[冷媒流量制御]
冷媒流量制御について説明する。
空気調和機1では、冷媒圧力、冷媒温度等に基づいて冷媒流量が調整される。冷媒流量の調整は、電子膨張弁30の開度調整により行われる。すなわち、冷媒圧力、冷媒温度等に基づいて制御装置70により要求開度が計算される。そして、要求開度に対応するように電子膨張弁30の開度が調整される。なお、要求開度はPID制御により逐次更新され、この更新毎に開度が調整される。
【0069】
要求開度が決定したとき、制御装置70は、電子膨張弁30の開度を要求開度に調整する。具体的には、制御マップを用いて、要求開度に応じたパルス積算値(以下、補正パルス値)を決定する。次に、要求開度の指令時におけるパルス積算値(以下、実パルス値)を読み取るとともに、補正パルス値と実パルス値との差を算出する。そして、この差に対応するパルス信号をステッピングモータ36に出力して弁部43を駆動して、開度を要求開度と一致させる。
【0070】
図9を参照して上記制御マップについて説明する。
制御マップは、図5(a)に示したマップと実質的に同じである。すなわち、制御マップはパルス積算値の大きさに関係なく、開度比が一定になる。但し、横軸を要求開度とし、縦軸をパルス積算値としている。
【0071】
従来構造の電子膨張弁と比較して、本実施形態の電子膨張弁30にかかる制御マップについて説明する。
図9に、従来構造の電子膨張弁の制御マップを破線で示した。
【0072】
従来構造の電子膨張弁は、円錐状または円錐台状の弁部を有する。この種の弁部の場合、パルス積算値に対応して弁部が弁孔から出る方向に移動するとき、弁部の移動量の2乗に比例して開度が大きくなる。このため、要求開度が小さいとき、かつ要求開度を微小量変更させることは難しい。すなわち、図9に示すように、小開度領域(例えば、要求開度の0〜10%以下の範囲)に対応するパルス積算値は、最大パルス積算値の1/10以下である。
【0073】
一方、本実施形態の電子膨張弁30では、開度が指数関数的に増大するように構成されているため、図9に示すように、小開度領域に対応するパルス積算値は、最大パルス積算値の1/2程度を占める。すなわち、小開度領域において、従来構造よりも、多くのパルス数を用いて弁部43を制御することが可能である。このため、開度を微調整することができる。これにより、冷媒流量の精緻な制御が可能となる。
【0074】
以下、本実施形態の効果を説明する。
(1)本実施形態では、弁部43の側面は、当該側面と弁座33との間で隙間(開口部)を形成するとき開度比が一定となるように形成されている。
【0075】
この構成によれば、弁部43の側面は、開度比が一定となるように形成されている。すなわち、弁部43を移動させたとき、一定比で開口面積が増大する。このため、冷媒流量の変化比が一定となる。これにより冷媒流量の微調整をすることができる。
【0076】
(2)本実施形態では、弁部43の側面が弁軸方向に3以上の領域に区分され、各領域の境界線が、開度比が一定となる仮想曲面V上にある。この構成によれば、開度比が一定となる仮想曲面V上に沿うように各領域の側面が形成される。すなわち、弁部43の側面は、上記仮想曲面Vに近似されている。これにより、弁部43の移動範囲にわたって冷媒流量の変化比が略一定になるため、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0077】
(3)本実施形態の変形例では、弁部側面の各領域の区間長Lが弁部43の先端部に向けて順に小さい。この構成によれば、各領域の区間長Lが弁部43の先端部に向けて順に小さいため、開度が大きい程、弁部43の移動量に対する変化量が大きく、開度が小さい程、弁部43の移動量に対する変化量が小さくなる。すなわち、小開度領域においては、大開度領域に比べてより冷媒流量を高精度に調整することができる。なお、このような構成によれば、各領域の区間長Lを弁部43の先端部に向けて順に小さくしない構成に比べて、弁部43が短くなる。
【0078】
(4)本実施形態では、弁部43の弁軸を含む断面の外形線が上記(3)式および上記(4)式で示される関係を満たす。この構成によれば、側面が曲面で形成され、弁部43の移動範囲において開度比がβとされる。このため、弁部43の移動範囲にわたって冷媒の流量変化を略一定にすることができる。
【0079】
(5)本実施形態の変形例では、弁部43の移動において開度が25%増大するごとに、弁部43の側面形態が変えられている。そして、各境界線が、開度比が一定となる仮想曲面V上にある。このため、弁部43の側面を曲面として形成する場合に比べて、容易に弁部43を形成することができる。また、弁部43の移動範囲にわたって流量変化比を略一定とすることができる。
【0080】
(6)本実施形態の変形例では、弁部43の移動において開度が20%増大するごとに、弁部43の側面形態が変えられている。そして、各境界線が、開度比が一定となる仮想曲面V上にある。このため、弁部43の側面を曲面として形成する場合に比べて、容易に弁部43を形成することができる。また、弁部43の移動範囲にわたって流量変化比を略一定とすることができる。
【0081】
(7)本実施形態の変形例では、第1領域の側面の角度θが、弁部43の弁軸に対し、0<tanθ<0.2の関係を満たす。すなわち、弁部43の移動に対して、開口面積が微小ずつ増減する構成とされている。このため、小開度領域において、冷媒流量の微調整をすることができる。
【0082】
(8)本実施形態の空気調和機1は、電子膨張弁30を備えている。この構成によれば冷媒流量の微調整をすることができるため、空気調和機1における空調が安定する。
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態にて示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0083】
・本実施形態では、弁部43の側面全体が、上記(3)式および上記(4)式を満たす。このような構成に代えて、側面の一部だけが上記(3)式および上記(4)式を満たす構成としてもよい。この場合においても、少なくとも当該一部の側面において、開口比が一定となるため、当該側面に対応する弁部43の駆動範囲において、冷媒流量を高精度に制御することができる。
【0084】
例えば、弁部43の基部44から先端部までの長さを100とし基部の位置を0とする場合において、1〜25の範囲で、上記(3)式および(4)式を満たす構成とすることもできる。位置0においては殆ど流量が0であって極小開度領域では開度制御を行わないこと、また位置25〜100の範囲では開度の微調整を行うことが少ないことから、所定領域のみ開度比一定とすることに技術的意義がある。
【0085】
・本実施形態では、(1)式のマップに実現するように弁部43の側面形状の最適化を行っているが、弁座形状の最適化により、(1)式のマップを実現してもよい。また、弁部43および弁座33の両者の形状を考慮して、(1)式のマップを実現してもよい。
【0086】
・本実施形態の変形例では、弁部43の側面を5つまたは4つの面により構成しているが、6以上の面により構成してもよい。また、3つの面で構成してもよい。なお、いずれの構成の場合でも、各領域の面により構成される多面体は、弁部43の底面と先端部とにより構成される仮想円錐形状に対し、弁部43の全体側面が膨出する形態となる。
【符号の説明】
【0087】
1…空気調和機、10…圧縮機、20…室外熱交換器、30…電子膨張弁、31…第1配管、32…第2配管、33…弁座、34…弁孔、35…円筒状部材、36…ステッピングモータ、37…弁室、40…弁体、41…弁棒、42…テーパ部、43…弁部、44…基部、50…室内熱交換器、60…四路切換弁、70…制御装置、71…温度センサ、72…圧力センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に弁部(43)が形成された弁体(40)と、この弁体(40)が弁軸方向に移動することにより前記弁部(43)との間に可変絞り部を形成する弁座(33)と、パルス数に応じて前記弁体(40)を移動させるステッピングモータ(36)とを備えた電子膨張弁において、
前記弁部(43)と前記弁座(33)との間に形成される隙間で前記弁軸方向に直交する断面の面積を開口面積とし、
前記パルス数の増減前の前記開口面積と前記パルス数の増減後の前記開口面積との面積比を開度比として、
前記弁部(43)の側面の少なくとも一部分は前記開度比が一定となる形状に形成されている
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電子膨張弁(30)において、
前記弁部(43)の側面が前記弁軸方向に3以上の領域に区分され、
前記各領域の境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にある
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項3】
請求項2に記載の電子膨張弁(30)において、
前記領域の前記弁軸方向の長さを区間長として、
前記各領域の区間長は前記弁部(43)の先端部に向けて順に小さい
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)において、
前記開口面積の最大値を最大開口面積とし、
前記最大開口面積に対する前記開口面積の割合を開度として、
前記弁部(43)の側面は、
前記開度が0%以上〜25%未満となるところに対応する第1領域、
前記開度が25%以上〜50%未満となるところに対応する第2領域、
前記開度が50%以上〜75%未満となるところに対応する第3領域、および
前記開度が75%以上〜100%以下となるところに対応する第4領域の4つの領域に区分されるとともに前記各領域が円錐台側面形態とされ、
前記各領域の境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にある
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)において、
前記開口面積の最大値を最大開口面積とし、
前記最大開口面積に対する前記開口面積の割合を開度として、
前記弁部(43)の側面は、
前記開度が0%以上〜20%未満となるところに対応する第1領域、
前記開度が20%以上〜40%未満となるところに対応する第2領域、
前記開度が40%以上〜60%未満となるところに対応する第3領域、
前記開度が60%以上〜80%未満となるところに対応する第4領域、および
前記開度が80%以上〜100%以下となるところに対応する第5領域の5つの領域に区分されるとともに前記各領域が円錐台側面形態とされ、
前記各領域の側面境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にある
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項6】
請求項1に記載の電子膨張弁(30)において、
前記弁部(43)の弁軸を含む断面の外形線が次の2つの式で示される関係、
【数1】
xは、前記弁部(43)の前記弁軸方向において、弁座(33)の基部から半径rに対応する部分までの長さ、
xmaxは、前記弁部(43)の基部から先端までの長さ、
βは、開度比、
Smaxは、最大開口面積、
rは、前記弁部(43)の前記弁軸から側面までの長さ(半径)、を満たす
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項7】
先端に弁部(43)が形成された弁体(40)と、この弁体(40)が弁軸方向に移動することにより前記弁部(43)との間に可変絞り部を形成する弁座(33)と、パルス数に応じて前記弁体(40)を移動させるステッピングモータ(36)とを備えた電子膨張弁において、
前記弁部(43)の側面のうち基部から先端までの少なくとも基部から1/5までの領域は、前記弁部(43)の弁軸に対する角度θについて次式を満たすこと
【数2】
を特徴とする電子膨張弁。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)を備える空気調和機。
【請求項1】
先端に弁部(43)が形成された弁体(40)と、この弁体(40)が弁軸方向に移動することにより前記弁部(43)との間に可変絞り部を形成する弁座(33)と、パルス数に応じて前記弁体(40)を移動させるステッピングモータ(36)とを備えた電子膨張弁において、
前記弁部(43)と前記弁座(33)との間に形成される隙間で前記弁軸方向に直交する断面の面積を開口面積とし、
前記パルス数の増減前の前記開口面積と前記パルス数の増減後の前記開口面積との面積比を開度比として、
前記弁部(43)の側面の少なくとも一部分は前記開度比が一定となる形状に形成されている
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電子膨張弁(30)において、
前記弁部(43)の側面が前記弁軸方向に3以上の領域に区分され、
前記各領域の境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にある
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項3】
請求項2に記載の電子膨張弁(30)において、
前記領域の前記弁軸方向の長さを区間長として、
前記各領域の区間長は前記弁部(43)の先端部に向けて順に小さい
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)において、
前記開口面積の最大値を最大開口面積とし、
前記最大開口面積に対する前記開口面積の割合を開度として、
前記弁部(43)の側面は、
前記開度が0%以上〜25%未満となるところに対応する第1領域、
前記開度が25%以上〜50%未満となるところに対応する第2領域、
前記開度が50%以上〜75%未満となるところに対応する第3領域、および
前記開度が75%以上〜100%以下となるところに対応する第4領域の4つの領域に区分されるとともに前記各領域が円錐台側面形態とされ、
前記各領域の境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にある
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)において、
前記開口面積の最大値を最大開口面積とし、
前記最大開口面積に対する前記開口面積の割合を開度として、
前記弁部(43)の側面は、
前記開度が0%以上〜20%未満となるところに対応する第1領域、
前記開度が20%以上〜40%未満となるところに対応する第2領域、
前記開度が40%以上〜60%未満となるところに対応する第3領域、
前記開度が60%以上〜80%未満となるところに対応する第4領域、および
前記開度が80%以上〜100%以下となるところに対応する第5領域の5つの領域に区分されるとともに前記各領域が円錐台側面形態とされ、
前記各領域の側面境界線が、前記開度比が一定となる仮想曲面上にある
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項6】
請求項1に記載の電子膨張弁(30)において、
前記弁部(43)の弁軸を含む断面の外形線が次の2つの式で示される関係、
【数1】
xは、前記弁部(43)の前記弁軸方向において、弁座(33)の基部から半径rに対応する部分までの長さ、
xmaxは、前記弁部(43)の基部から先端までの長さ、
βは、開度比、
Smaxは、最大開口面積、
rは、前記弁部(43)の前記弁軸から側面までの長さ(半径)、を満たす
ことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項7】
先端に弁部(43)が形成された弁体(40)と、この弁体(40)が弁軸方向に移動することにより前記弁部(43)との間に可変絞り部を形成する弁座(33)と、パルス数に応じて前記弁体(40)を移動させるステッピングモータ(36)とを備えた電子膨張弁において、
前記弁部(43)の側面のうち基部から先端までの少なくとも基部から1/5までの領域は、前記弁部(43)の弁軸に対する角度θについて次式を満たすこと
【数2】
を特徴とする電子膨張弁。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子膨張弁(30)を備える空気調和機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−108647(P2013−108647A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252738(P2011−252738)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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