説明

電子表示装置

【課題】 コストダウンが可能で、薄型化や軽量化が可能な電子表示装置を提供する。
【解決手段】 可撓性を有するシート状であって、画像情報を表裏両側から視認可能に表示する表示体(20)の複数と、前記複数の表示体(20)の一端部を冊子状に綴じる綴じ部(11)と、前記表示体に画像情報を送出するデータ送出部(11B)とを備え、前記データ送出部(11B)は、前記複数の表示体(20)の内、隣接する表示体(20)と接触しない非接触面を有する表示体に対して、前記非接触面側から正規の向きの画像が視認できるよう前記向きを設定して前記画像情報を送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面表示可能なシート状表示デバイスを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビジョンやパソコン用ディスプレイ等の画像表示装置は、大画面の液晶パネルやプラズマパネル等の表示素子の実用化により薄型化が実現した。
そして、表示素子に対しては、薄型化に加え、さらにシート化も要望され、その実用化に向けて開発が進められている。
このようなシート状の表示素子を用いれば、広告表示媒体,電子ぺーパ(新聞等)あるいは電子ブック(書籍)等について従来とは全く異なる新しい形態の表示装置が提供できることから、そのシート状表示素子の実用化が大変期待されている。この新しい形態の表示装置の一例が、特許文献1に記載されている。
この特許文献1に記載された表示装置は、ペーパ状頁表示媒体を綴って書籍状にした電子ブック装置である。
【特許文献1】特開2003−58081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の特許文献1に記載された電子ブック装置におけるペーパ状頁表示媒体は、その表と裏の両面それぞれに表示素子を設けて成るものである。
具体的には、一対のフィルム状基板間に微粉末を封入し、これに電圧を印可することで表示機能を発揮させるように構成した表示素子を、支持体となる支持基板の両面側にそれぞれ配置して成るものである。
【0004】
従って、この構成においては、書籍状に形成して1枚のペーパの表裏にそれぞれ表示を行う場合、表用と裏用の2つの表示素子が必要になる。
そのため、部品点数が多くコストアップとなり、また、この2つの表示体を張り合わせる工数が必要になり、工数削減が難しいという課題がある。
【0005】
また、張り合わせが必要なことから、ぺーパ状頁表示媒体自体の厚さを薄くすることには限界があり、また、その分質量も重くなって、薄型化や軽量化が難しいという基本的な課題がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、コストダウンが可能で、薄型化や軽量化が可能な電子表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本願発明は手段として次の構成を有する。
即ち、請求項1に係る発明は、可撓性を有するシート状であって、画像情報を表裏両側から視認可能に表示する表示体(20)の複数と、前記複数の表示体(20)の一端部を冊子状に綴じる綴じ部(11)と、前記表示体に画像情報を送出するデータ送出部(11B)とを備え、前記データ送出部(11B)は、前記複数の表示体(20)の内、隣接する表示体(20)と接触しない非接触面を有する表示体に対して、前記非接触面側から正規の向きの画像が視認できるよう前記向きを設定して前記画像情報を送出することを特徴とする電子表示装置(10)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コストダウンが可能であり、また、薄型化や軽量化ができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明の電子表示装置の実施例に用いる表示体を示す図である。
図2は、本発明の電子表示装置の実施例に用いる表示体を説明する断面図である。
図3は、本発明の電子表示装置の実施例を示す斜視図である。
【0010】
実施例の電子表示装置に用いる表示体(ディスプレイ)を図1に示す。この表示体は、この電子表示装置が複数枚の頁を有する電子ブックの場合には、その1枚分に相当するものである。
この表示体の断面を図2に示す。また、この表示体を複数枚綴って書籍状にした電子ブックを図3に示す。
【0011】
まず、表示体について図2を用いて説明する。
この表示体20は、基体1として、厚さ0.1mmのPES(Polyethersulfone)を用い、この基体1上に発光素子を形成して成るものである。
この表示体20の発光素子21を有機ELとした場合の具体的な製造工程の例を以下に説明する。
【0012】
(1)基体1の表面に、平滑性を上げるための平滑層と水分の透過を防ぐバリア 層とを形成する。バリア層は最表面層であり、SiO2の無機膜として形 成する(この表面処理を終了した状態を図2における基体1として示す) 。
(2)この基体1のバリア層上に、アノードとしてのITO(Indium−T in Oxide)膜2をスパッタ法により50nmの厚さに常温下で形 成する。
(3)このITO膜2をフォトリソグラフィとウエットエッチングを用いて所定 形状にパターニングし、さらにこのITO膜2の仕事関数を、酸素プラズ マ処理により高める。
(4)ITO膜2がパタ−ニングされた基板を、2つの真空室を有する真空蒸着 装置の有機室に投入し、ITO膜2上に正孔輸送層としてα−NPD(ジ フェニルナフチルジアミン)膜3を蒸着ににより50nmの厚さで形成す る。
(5)続いて、α−NPD膜3上に、電子輸送孔兼発光層であるAlq3(キノ リノールアルミ錯体)膜4を蒸着により50nmの厚さで形成する。
(6)この後、真空蒸着装置の無機室側に基体を移動し、Alq3膜4上に、所 定形状にパターン化したメタルマスクを用いて、カソード電極5として、 LiF(フッ化リチウム),Au(金)及びAl(アルミニウム)をそれ ぞれ0.5nm,5nm及び15nmの厚さで蒸着により順次積層形成す る。この構成のカソ−ド電極は可視光を充分透過できる厚さで形成されて いる。
以上の工程により、基体1上に発光素子21が形成される。
【0013】
さらに、発光素子21を封入した表示体20を、N2でパージされたグローブボックス槽内における以下の工程により得る。
即ち、基体1と同じPES材からなる別の基体1Bを、そのエッジ部から約1mm内側までの範囲にUV硬化樹脂を塗布して発光素子21上に密着載置し、その後、UV光を照射して両基体1、1Bを接着する。
【0014】
上述した工程により形成した表示体20は、図1に示すA方向と、その反対方向であるB方向との両方向に光を透過させることができる。
すなわち、アノード電極(ITO)2,α−NPD膜3及びカソード電極5は光透過膜であるから、発光層であるAlq3膜4からの光は両方向に放出される。
【0015】
従って、この表示体20に表示された画像をA方向から見た場合の像と、B方向から見た場合の像とは、互いに鏡像の関係にある。
当然、画像の種類(例えば方向性が無い画像)によっては、このような鏡像であっても問題なく情報を表示提供することが可能である。また、方向性があっても、以下に詳述するように、両面表示型の例えば電子ブックとして利用することが可能である。
【0016】
次に、電子表示装置の実施例を図3を用いて詳述する。
この電子表示装置は電子ブックであり、可撓性を有する表示シートを複数枚綴って書籍状に形成したものである。
この表示シートとして、上述した実施例の、両面側から像を視認可能な表示体20を用いている。
【0017】
この電子ブックは、表示体20に電子データを送信するデータ送出部11Bを有する綴り部11において表示体20を任意の枚数綴ることができ、また、一旦綴った後も任意の枚数増減できるように構成されている。
ここで、電子データは、文字,数字,記号,模様,静止画像あるいは動画等の画像情報である。
【0018】
図3に示すように、この実施例の電子ブック10は、表示体(表示シート)を6枚綴ってなるものである。
その1枚の一面側を仮に1ページ目、他面側を仮に2ページ目とすると、表示体20において1ページ目は、図1のA方向の面に相当し、2ページ目は、図1のB方向の面に相当する。
【0019】
まず、使用者が1ページ目に表示された画像情報を読んでいる時には、1ページ目の画像情報がデータ送出部11Bから送信されて表示されている。
次に、使用者が表示体をめくり2ページ目に移ると、表示体がめくられたことを関知するセンサー13により表示体めくり情報がデータ送出部11Bに送られる。
このセンサー13は、各表示体の表裏両面にそれぞれ設けられ、表示体同士の接触と表示体自身の撓みを検知するセンサーである。接触検知は、センサ同士が接触することで流れる微弱電流を検知して接触を検出するものである。
この接触検知により、その表示体が他の表示体と接触しているか否かを検出し、データ送出部11Bにその圧力検出情報を送出する。
また、撓み検知により、その表示体がどちら側に撓んでいるか、また、撓みの時間変化を検出し、表示体がブックを開いた状態で左右のどちら側にあるか、また、使用者によりめくられたか否か、めくられた場合はその方向を検出し、データ送出部11Bにその撓み検出情報(ページめくり情報)を送出する。
この圧力検出情報及び撓み検出情報とに基づいて、表示体がめくられたか否か、そして、どのページが開かれているか、をデータ送出部11Bは判別する。
【0020】
このページめくり情報により、2ページ目の情報がデータ送出部11Bから表示体20に送られそれが表示される。
このセンサーは、あるシートが、それと隣接するシートと接触している場合はその接触した側とは反対側のシート面から正規の画像が視認できるように、めくり情報をデータ送出部11Bに送出するものである。
【0021】
従って、本として見た場合に、開いているページを表示する表示体、すなわち、一方の面が隣接するシートと接触していない表示体(2枚ある)を検出すると共に、それらの表示体に対して、開いている側(隣接するシートと接触していない側)から正規の画像が視認できるようにめくり情報を送出するように構成されている。
【0022】
図3には、センサ13をシート面状に設けた例を示しているが、綴り部11に備えていてもよい。
もちろん、2ページ目から1ページ目に戻る場合は、そのもどりめくりを検出してその情報を送出するように構成されている。
【0023】
以上のように、実施例の電子表示装置は、発光素子21が1つであっても、そこで表示させる情報を適宜入れ替えることにより、両面表示型の表示装置として利用できるので、部品点数が少なく、コストダウンが可能であり、製造工程も少なくて済むものである。
また、表示体の厚さも薄くできるので、表示装置としても薄く、また、軽量にすることができる。
【0024】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0025】
基体1の材料は、上述した実施例に限定するものではない。絶縁性と光透過性を有する可撓性基体であればよい。具体的には、PET(ポリエチレンテレフタレート),PS(ポリスチレン)あるいはPC(ポリカーボネート)等のプラスチック基体を用いることができる。
この場合、従来の書籍と同様の紙のような触感を得るには、厚さを1mm以下にするのが好ましい。
【0026】
基体1の表裏面を保護する保護層としては、実施例で示したSiO2以外に、SiN,SiONあるいはAL23を用いることができる。もちろん、これらを複合したり積層した層としてもよい。
【0027】
アノード電極の透明導電性膜は、可視光を透過でき、ホール輸送層にホールを注入するものであれば良く、実施例で示したITOに限定されるものではない。
例えば、酸化インジウムに酸化亜鉛が含まれているIZO(IN23+ZnO2),二酸化スズ(SnO2),二酸化スズ−アンチモン混合物(SnO2+Sb),酸化インジウム(In23),酸化亜鉛−アルミニウム混合物(Zn−O+Al)や、これらに微量の添加物を含んだもの、可視光が透過できる程度に薄く形成したニッケル(Ni),金(Au),白金(Pt),クロム(Cr)等の金属、あるいは、これらに微量の添加物を含んだものでも良い。また、これらの積層膜でも良い。
【0028】
陰極は、電子輸送層に電子を注入するもので、仕事関数の小さな銀(Ag),スズ(Sn),鉛(Pb),マグネシウム(Mg),あるいは、マンガン(Mn)等の金属を可視光が透過できる程度に薄くしたものや、これらの合金でも良い。また、これらの積層膜でも良い。
【0029】
また、これらのアノード膜、カソード膜共に、可視光透率を40%以上とすることが好ましい。可視光透過率が高ければ、発光素子に流れる電流値を低く抑えることができ、装置としての消費電力を抑制することできるからである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の電子表示装置の実施例に用いる表示体を示す図である。
【図2】本発明の電子表示装置の実施例に用いる表示体を説明する断面図である。
【図3】本発明の電子表示装置の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1,1B 基体
2 ITO膜(アノード)
3 α−NPD膜
4 Alq3膜(発光層)
5 カソード電極
10 電子ブック(電子表示装置)
11 綴り部
11B データ送出部
13 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状であって、画像情報を表裏両側から視認可能に表示する表示体の複数と、
前記複数の表示体の一端部を冊子状に綴じる綴じ部と、
前記表示体に画像情報を送出するデータ送出部とを備え、
前記データ送出部は、
前記複数の表示体の内、隣接する表示体と接触しない非接触面を有する表示体に対して、前記非接触面側から正規の向きの画像が視認できるよう前記向きを設定して前記画像情報を送出することを特徴とする電子表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−98617(P2006−98617A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283510(P2004−283510)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】