説明

電子装置およびこの電子装置の検査方法並びに発熱素子の検査方法

【課題】複数の発熱素子の高温環境下での機能試験がその発熱素子の上限許容動作温度付近で実行でき、各発熱素子に最適な温度負荷を与えることができる電子装置の検査方法の提供。
【解決手段】温度センサで感知した発熱素子の温度tnと発熱素子Cnの上限許容動作温度Tnとの差である温度差ΔTnを求め、温度差ΔTnが最も小さい発熱素子Cnを高温検査対象発熱素子として選択する工程(ステップP3〜P10)と、高温検査対象発熱素子の温度tnと限許容動作温度Tnとの比較に基づく冷却ファンFanの回転速度の制御により、温度tnを限許容動作温度Tn以下の所定温度の範囲に収めた状態で、高温検査を所定時間に亘って実行する工程(ステップP13〜P19)とを、複数の発熱素子(Cn)に関し、順次に実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステム等の電子装置およびこの電子装置の検査方法並びに発熱素子の検査方法に関し、特に複数の発熱素子及びそれら発熱素子を冷却するためのファンを有する電子装置において、そのファンの制御により発熱素子を上限許容動作温度付近の高温で動作させることにより、高温環境における発熱素子の作動を検査する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムでは、CPU等の発熱素子を複数有し、それら発熱素子をファンで冷却している。それら複数の発熱素子はユニットに実装され、そのユニットには内部の複数の発熱素子を冷却するための1つ又は複数のファンが設けてある。
【0003】
コンピュータシステムの製造工程においては、エージング試験(経時変化試験)と称される高温環境下での動作試験が一般的に行われる。エージング試験では、コンピュータシステムが設置される部屋全体をそのコンピュータシステムの上限許容作動温度に設定して行われていた。
【0004】
しかしながら、コンピュータシステムのユニット内における発熱素子の実装位置、各発熱素子の上限許容動作温度などが発熱素子よって相違するので、各発熱素子に掛かる温度負荷は発熱素子毎に異なる。従って、コンピュータシステムが設置される部屋全体をそのコンピュータシステムの上限許容動作温度に設定して行うエージング試験では、高温環境下での動作試験が各発熱素子について適切に行われているとは言えない。
【0005】
複数の発熱回路(加入者回路)を有する電子装置(加入者回路装置)において、複数の発熱回路全体について一度にエージング試験を行うのではなく、装置試験部に接続する発熱回路を順次に切り替え、複数の発熱回路の内から検査対象の発熱回路を1つずつ選択することにより、発熱回路毎にエージング試験を行うようにしたエージング方式なる発明が特開平3−213039(特許文献1)に開示されている。
【0006】
また、特開2007−293605(特許文献2)には、CPU搭載の複数のボード(プリント基板)を有するコンピュータ等の情報処理装置において、各ボードに温度センサを設け、その温度センサで検知した温度に応じて冷却ファンの回転数を多段に制御し、CPU最大負荷時の最高温度を温度センサで検出し、ファンの回転数の各段についてのその最高温度のデータに基づき、ファンの回転数の適切な段数を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−213039号公報
【特許文献2】特開2007−293605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1に記載のエージング方式では、発熱回路毎にエージング試験を行うとしても、そのエージング試験を実行する際の環境温度は、試験対象の発熱回路における発熱素子の上限許容動作温度に対応していないので、高温環境下での動作試験を各発熱素子の上限許容動作温度に対応して行うことはできず、各発熱素子に最適な温度負荷を与えることができない。
【0009】
また、前述の特許文献2に記載された方法では、ファンの回転数の段数を、CPU最大負荷時の最高温度のデータに応じて適切に判定することができたとしても、高温環境下での動作試験を各発熱素子の上限許容動作温度に対応して行うことはできないので、各発熱素子に最適な温度負荷を与えることができない。
【0010】
(本発明の目的)
そこで、本発明は、複数の発熱素子の上限許容動作温度や実装位置が互いに異なっても、各発熱素子の高温環境下での機能試験がその発熱素子の上限許容動作温度付近で実行でき、各発熱素子に最適な温度負荷を与えることができる発熱素子の検査方法、並びにそれら複数の発熱素子を有する電子装置の検査方法およびその電子装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明による電子装置およびこの電子装置の検査方法並びに発熱素子の検査方法は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0012】
(1)本発明による電子装置の検査方法は、電源入力のオン又はオフの制御が夫々可能な複数の発熱素子と、該発熱素子夫々の温度を感知する温度センサと、該複数の発熱素子を冷却するための回転速度が可変なファンと、前記電源入力のオン又はオフの制御を前記各発熱素子について個別に行うと共に前記温度センサで感知した前記温度に基づき前記ファンの回転数を制御する検査制御部とを有する電子装置の検査方法であり、
前記検査制御部は、前記電源が入力されている複数の前記発熱素子に関し、
前記温度センサで感知した前記温度と前記発熱素子の上限許容動作温度との差である温度差を求める温度差測定工程と、
前記温度差が最も小さい発熱素子を高温検査対象発熱素子として選択し、前記ファンの回転速度の制御により、前記温度センサで感知する該高温検査対象発熱素子の前記温度を前記上限許容動作温度以下の所定温度の範囲に収めた状態で、該高温検査対象発熱素子の高温検査を所定時間に亘って実行する高温検査工程とを
順次に実行することを特徴とする。
(2)また、本発明による発熱素子の検査方法は、電源入力のオン又はオフの制御が夫々可能な複数の発熱素子と、該発熱素子夫々の温度を感知する温度センサと、該複数の発熱素子を冷却するための回転速度が可変なファンと、前記電源入力のオン又はオフの制御を前記各発熱素子について個別に行うと共に前記温度センサで感知した前記温度に基づき前記ファンの回転数を制御する検査制御部とを有する電子装置における前記発熱素子の検査方法であり、
前記検査制御部は、前記電源が入力されている複数の前記発熱素子に関し、
前記温度センサで感知した前記温度と前記発熱素子の上限許容動作温度との差である温度差を求める温度差測定工程と、
前記温度差が最も小さい発熱素子を高温検査対象発熱素子として選択し、前記ファンの回転速度の制御により、前記温度センサで感知する該高温検査対象発熱素子の前記温度を前記上限許容動作温度以下の所定温度の範囲に収めた状態で、該高温検査対象発熱素子の高温検査を所定時間に亘って実行する高温検査工程とを
順次に実行することを特徴とする。
(3)また、本発明による電子装置は、電源入力のオン又はオフの制御が夫々可能な複数の発熱素子と、該発熱素子夫々の温度を感知する温度センサと、該複数の発熱素子を冷却するための回転速度が可変なファンと、前記電源入力のオン又はオフの制御を前記各発熱素子について個別に行うと共に前記温度センサで感知した前記温度に基づき前記ファンの回転数を制御する検査制御部とを有する電子装置であり、
前記検査制御部は、前記電源が入力されている複数の前記発熱素子に関し、
前記温度センサで感知した前記温度と前記発熱素子の上限許容動作温度との差である温度差を求める温度差測定と、
前記温度差が最も小さい発熱素子を高温検査対象発熱素子として選択し、前記ファンの回転速度の制御により、前記温度センサで感知する該高温検査対象発熱素子の前記温度を前記上限許容動作温度以下の所定温度の範囲に収めた状態で、該高温検査対象発熱素子の高温検査を所定時間に亘って実行する高温検査とを
順次に実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の発熱素子の上限許容動作温度や実装位置が互いに異なっても、各発熱素子の高温環境下での機能試験がその発熱素子の上限許容動作温度付近で実行でき、各発熱素子に最適な温度負荷を与えることができる発熱素子の検査方法、並びにそれら複数の発熱素子を有する電子装置の検査方法およびその電子装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態であるコンピュータシステムの構成を示す図である。
【図2】図1のコンピュータシステムの検査方法の手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による電子装置およびこの電子装置の検査方法並びに発熱素子の検査方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。
【0016】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明による電子装置の検査方法は、電源入力のオン又はオフの制御が夫々可能な複数の発熱素子と、該発熱素子夫々の温度を感知する温度センサと、該複数の発熱素子を冷却するための回転速度が可変なファンと、前記電源入力のオン又はオフの制御を前記各発熱素子について個別に行うと共に前記温度センサで感知した前記温度に基づき前記ファンの回転数を制御する検査制御部とを有する電子装置の検査方法であり、
前記検査制御部は、前記電源が入力されている複数の前記発熱素子に関し、
前記温度センサで感知した前記温度と前記発熱素子の上限許容動作温度との差である温度差を求める温度差測定工程と、
前記温度差が最も小さい発熱素子を高温検査対象発熱素子として選択し、前記ファンの回転速度の制御により、前記温度センサで感知する該高温検査対象発熱素子の前記温度を前記上限許容動作温度以下の所定温度の範囲に収めた状態で、該高温検査対象発熱素子の高温検査を所定時間に亘って実行する高温検査工程とを
順次に実行することを特徴とする。
【0017】
本発明による電子装置の一例であるコンピュータシステムの検査方法について、図1および図2を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態であるコンピュータシステムの構成を示す図である。また、図2は図1のコンピュータシステムの検査方法を示す流れ図である。以下では、図1のコンピュータシステムの検査方法を中心に説明するが、その説明において、本実施の形態の検査方法が適用されるコンピュータシステムおよびこのコンピュータシステムにおける複数の発熱素子の検査方法の実施の形態も説明される。
【0018】
図1のコンピュータシステム1は、ユニット2及び検査制御部3を有する。ユニット2は発熱素子C1〜Cn、温度センサS1〜Sn及び冷却ファンFanを有してなる。検査制御部3は、OR回路11、選択回路12、機能試験部13、発熱素子毎の許容動作温度(Tn)バッファ41及び予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42を有する。検査制御部3には、パーソナルコンピュータでなる制御端末4が接続されている。
【0019】
発熱素子C1〜CnはCPU、半導体メモリ等である。温度センサS1〜Snは、発熱素子C1〜Cnに夫々取り付けられ、発熱素子C1〜Cn夫々の温度t1〜tnを感知し、温度t1〜tnを出力線102でOR回路11へ出力する。制御端末4は、発熱素子(Cn)夫々の上限の許容動作温度(Tn)及び予定検査時間(Hp)並びに発熱素子数(N)を予め記憶している。ここで、発熱素子(Cn)は、第n番目の発熱素子を指す。また、同様に、温度センサ(Sn)はその発熱素子(Cn)に取り付けられた温度センサを、温度(tn)は温度センサ(Sn)で感知された温度を、許容動作温度(Tn)は発熱素子(Cn)の上限の許容動作温度を、夫々意味する。機能試験部13は、機能試験プログラムを記憶する半導体メモリ、その機能試験プログラムを実行するCPUを備え、機能試験プログラムの実行の過程で、N個の発熱素子(Cn)の内から順に一つずつ選び、選んだ一つの発熱素子(Cn)を線路143経由で制御端末4に通知する。
【0020】
機能試験部13から発熱素子(Cn)の通知を受けた制御端末4は、その通知された発熱素子(Cn)に関する許容動作温度(Tn)を線路141経由で許容動作温度(Tn)バッファ41へ送り、また、その通知された発熱素子(Cn)に関する予定検査時間(Hp)を線路142経由で予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42へ送る。制御端末4は、予定検査時間(Hp)に併せて、発熱素子数(N)を予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42へ送る。
【0021】
許容動作温度(Tn)バッファ41は、制御端末4から順次に送られる発熱素子(Cn)の許容動作温度(Tn)を一旦保持し、その許容動作温度(Tn)を線路241経由で選択回路12へ順次に出力する。選択回路12は、許容動作温度(Tn)バッファ41からの許容動作温度(Tn)が順次に入力される時に、OR回路11から供給される温度t1〜tnの内からその許容動作温度(Tn)に対応する発熱素子(Cn)の温度(tn)を選び、温度(tn)を許容動作温度(Tn)と対応付けて出力する。
【0022】
予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42は、制御端末4から順次に送られる発熱素子(Cn)の予定検査時間(Hp)と発熱素子数(N)とを一旦保持し、それら予定検査時間(Hp)及び発熱素子数(N)を線路242経由で機能試験部13に順次に出力する。許容動作温度(Tn)バッファ41が許容動作温度(Tn)を出力し、予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42が予定検査時間(Hp)及び発熱素子数(N)を出力するタイミングは、機能試験部13の要求に基づき、制御端末4が許容動作温度(Tn)バッファ41及び予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42に与える出力命令により制御される。
【0023】
機能試験部13は、発熱素子(Cn)の温度(tn)及び許容動作温度(Tn)を選択回路12から受け、更に予定検査時間(Hp)及び発熱素子数(N)を予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42から受け、これらデータを半導体メモリに一旦記憶し、これらデータをその半導体メモリからCPUに読み出し、CPUで機能試験プログラムを実行し、発熱素子(Cn)の高温検査を行う。この高温検査は、発熱素子(Cn)のエージング試験であり、発熱素子(Cn)の上限の許容動作温度(Tn)付近、即ちその許容動作温度(Tn)から一定温度範囲内で、予定検査時間(Hp)に亘って機能試験プログラムに従って発熱素子(Cn)を動作させることにより行う。機能試験部13は、各発熱素子(Cn)の高温検査が個別にできるようにするために、発熱素子(Cn)に供給される電源のオン/オフを発熱素子(Cn)毎に行うとともに、発熱素子(Cn)の温度(tn)が上限の許容動作温度(Tn)付近、即ちその許容動作温度(Tn)から一定温度範囲内に収まるように、冷却ファンFanの回転数を制御する。発熱素子(Cn)に供給される電源のオン/オフ制御は、機能試験部13から線路101経由で送る電源オン/オフ信号により行う。また、冷却ファンFanの回転数の制御は、機能試験部13から線路103経由で送る冷却ファン制御信号により行う。
【0024】
機能試験部13は、選んだ発熱素子(Cn)について機能試験を実行することにより、その機能試験中に温度センサ温度センサ(Sn)から出力される当該発熱素子(Cn)の温度(tn)を得るともに、温度(tn)を制御端末4に出力する。制御端末4は、機能試験部13から受けたその発熱素子(Cn)の温度(tn)をディスプレイに表示する。制御端末4のディスプレイ表示された発熱素子(Cn)の温度(tn)により、その発熱素子(Cn)の高温検査の結果が判別できる。
【0025】
次に、図1のコンピュータシステム1の高温検査方法の実行手順を図2の流れ図を参照して、詳しく説明する。図2の流れ図に示す各処理は、機能試験部13が機能試験プログラムを実行することにより、機能試験部13自身で又は機能試験部13の命令により行われる。
【0026】
ユニット2の内部に実装されているN個の発熱素子C1〜Cnの電源は、機能試験部13により個別にオン/オフ制御される。全ての発熱素子C1〜Cnの電源をオンし(ステップP1)、カウント値nおよびmを"1"に夫々初期化する(ステップP2)。カウント値n及びmは、何れも1,2,3・・・・Nの何れかである。
【0027】
温度センサS1の出力である発熱素子C1の温度t1を取得するために、発熱素子C1の温度データ要求を制御端末4に送り、制御端末4に許容動作温度T1をバッファ41経由で選択回路12へ出力させ、選択回路12から温度センサS1の出力である発熱素子C1の温度t1を許容動作温度T1とともに取得し、温度t1及び許容動作温度T1をメモリに一旦記憶し、メモリからその温度t1及び許容動作温度T1を読み出す(ステップP3,P4)。
【0028】
次に、温度t1と許容動作温度T1との差である温度差ΔT1=|t1−T1|を計算し(ステップP5)、温度差ΔT1を保存する(ステップP6)。発熱素子数Nを予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42から読み出し(ステップP7)、n=1とNとを比較し(ステップP8)、今は1<Nであるので、nを1+1=2とし(ステップP9)、再びステップP3に戻り、ステップP3からP8までの処理をn=Nとなるまで実行する。n=Nとなったとき、C1〜Cn(n=N)までのすべの発熱素子に関する温度tnと許容動作温度Tnとの差ΔTnがメモリに格納される。
【0029】
ここで、すべの発熱素子に関する温度tnと許容動作温度Tnとの差ΔTnの値が最小である発熱素子の番号nを選定し(ステップP10)、発熱素子Cnに対する機能試験を実行する(ステップP11)。発熱素子Cnに対する機能試験により発熱素子Cnの温度tnを取得し、温度tnを一旦メモリに保存した後に、温度tnを読み出す(ステップP12)。
【0030】
次に、発熱素子Cnの温度tnと許容動作温度Tnとを比較し(ステップP13)、tn<Tnのときは、冷却ファンFanを低速化する(ステップP14)ことにより発熱素子Cnの温度tnをその発熱素子Cnの許容動作温度Tnに近づける。他方、tn=Tnのときは、冷却ファンFanを高速化する(ステップP15)ことにより発熱素子Cnの温度tnをその発熱素子Cnの許容動作温度Tnより下げる。もし、tn>Tnのときは、発熱素子Cnに何らかの異常があると判定し(ステップP16)、高温検査を終了する。
【0031】
ステップP13の比較において、tn<Tnであるか、又はtn=Tnであれば、発熱素子Cnに関する機能試験を継続し、発熱素子Cnを許容動作温度Tn付近の一定の高温の温度範囲で動作させ、その高温の温度範囲で動作させている時間である高温時間Hrをカウントする(ステップP17)。発熱素子Cnに関する予定検査時間Hpを予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ42から読み出し(ステップP18)、高温時間Hrと予定検査時間Hpとを比較し(ステップP19)する。Hr<Hpのときは、ステップP13に戻り、ステップP13〜P17の処理を繰り返し実行し、Hr=Hpとなったときに発熱素子Cnに対する機能試験を停止する(ステップP20)。
【0032】
Hr=HpとなるまでステップP13〜P17の処理を繰り返し実行することにより、発熱素子Cnの高温試験が予定検査時間Hpに亘って実行される。この高温試験において発熱素子Cnの温度tnが許容動作温度Tnを超えれば(tn>Tn)、発熱素子Cnが異常であると判定される(ステップP16)は上述のとおりである。ステップP13〜P17の高温試験において発熱素子Cnに異常が発見されないときは、発熱素子Cnは正常と判定され、発熱素子Cnの電源がオフとされ(ステップP21)、発熱素子Cnについての高温検査を終了する。
【0033】
次に、カウント値mに"1"を加え、カウント値mを"1"から"2"に上げる(ステップP22)。そして、カウント値mを発熱素子数Nと比較し(ステップP23)、m<NであればステップP3に戻り、ステップP3〜P23の処理を繰り返し実行し、全ての発熱素子(Cn)について高温試験が実行され、m=Nに至ったときに本実施の形態の方法による高温試験が終了する(ステップP23)。
【0034】
以上に図1及び図2を参照して説明したコンピュータシステムの検査方法によれば、複数の発熱素子(Cn)の上限許容動作温度(Tn)や実装位置が互いに異なっても、各発熱素子(Cn)の高温環境下での機能試験がその発熱素子(Cn)の上限許容動作温度(Tn)付近で実行でき、各発熱素子(Cn)に最適な温度負荷を与えることができる。この実施の形態の方法においては、全ての発熱素子(Cn)に関する高温検査を発熱素子(Cn)の温度(tn)が発熱素子(Cn)の上限許容動作温度(Tn)に最も近づいたものから順次に自動的に実施できる。従って、本実施の形態の検査方法では、複数の発熱素子を有するたコンピュータシステムの高温検査およびコンピュータシステム内の複数の発熱素子夫々に関する高温検査を、格別な熟練者を要することなく、オペレータによる格別の操作を要せずして実施でき、経済効率に優れている。
【0035】
本発明が上述の実施形態に限られるものでないことは勿論である。例えば、実施形態では、高温試験を開始するときに、全ての発熱素子C1〜Cnに電源を投入するとしたが(ステップP1)、必ずしも全ての発熱素子C1〜Cnに電源を投入する必要はなく、複数の発熱素子C1〜Cnに電源を投入するようにしても、本発明は実施できる。また、上記の実施形態では、発熱素子は一つのユニット内に実装されているとしたが、冷却ファンによる冷却範囲を一つのユニットとして扱うことにより、複数のユニットにより構成されているコンピュータシステムについても、本発明の方法によれば、並列に同様に検査を行うことができる。
【0036】
上記の実施形態では、検査制御部3の機能試験部13において機能試験プログラムを実行するとしてが、本発明では、機能試験プログラムは制御端末4において実行するようにしても差し支えない。また、上記の実施形態では、検査制御部3はコンピュータシステム1を構成する要素とし、制御端末4はコンピュータシステム1の外に接続する要素としてが、本発明では、検査制御部3および制御端末4を一体に構成し、一体化した検査制御部3および制御端末4をコンピュータシステム1の内部又は外部に設けるようにしても差し支えない。
【符号の説明】
【0037】
1 コンピュータシステム
2 ユニット
3 検査制御部
4 制御端末
11 OR回路
12 選択回路
13 機能試験部
41 許容動作温度(Tn)バッファ
42 予定検査時間(Hp)・発熱素子数(N)バッファ
C1〜Cn 発熱素子
S1〜Sn 温度センサ
Fan 冷却ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源入力のオン又はオフの制御が夫々可能な複数の発熱素子と、該発熱素子夫々の温度を感知する温度センサと、該複数の発熱素子を冷却するための回転速度が可変なファンと、前記電源入力のオン又はオフの制御を前記各発熱素子について個別に行うと共に前記温度センサで感知した前記温度に基づき前記ファンの回転数を制御する検査制御部とを有する電子装置の検査方法であり、
前記検査制御部は、前記電源が入力されている複数の前記発熱素子に関し、
前記温度センサで感知した前記温度と前記発熱素子の上限許容動作温度との差である温度差を求める温度差測定工程と、
前記温度差が最も小さい発熱素子を高温検査対象発熱素子として選択し、前記ファンの回転速度の制御により、前記温度センサで感知する該高温検査対象発熱素子の前記温度を前記上限許容動作温度以下の所定温度の範囲に収めた状態で、該高温検査対象発熱素子の高温検査を所定時間に亘って実行する高温検査工程とを
順次に実行することを特徴とする電子装置の検査方法。
【請求項2】
前記検査制御部は、前記温度差測定工程を最初に実行するときは、前記発熱素子の全ての前記電源をオンにし、該発熱素子の数を基に、該全ての発熱素子について該温度差測定工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の検査方法。
【請求項3】
前記高温検査を終えた前記発熱素子の前記電源をオフにした後に、前記温度差測定工程を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子装置の検査方法。
【請求項4】
前記電子装置は、制御端末に接続してあり、
前記発熱素子毎の前記上限許容動作温度及び該発熱素子毎の前記所定時間の内の少なくとも一方は前記制御端末から前記検査制御部に提供されることを特徴とする請求項1,2又は3のうちの何れかに記載の電子装置の検査方法。
【請求項5】
前記発熱素子の前記高温検査は、該発熱素子の機能試験であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れかに記載の電子装置の検査方法。
【請求項6】
電源入力のオン又はオフの制御が夫々可能な複数の発熱素子と、該発熱素子夫々の温度を感知する温度センサと、該複数の発熱素子を冷却するための回転速度が可変なファンと、前記電源入力のオン又はオフの制御を前記各発熱素子について個別に行うと共に前記温度センサで感知した前記温度に基づき前記ファンの回転数を制御する検査制御部とを有する電子装置における前記発熱素子の検査方法であり、
前記検査制御部は、前記電源が入力されている複数の前記発熱素子に関し、
前記温度センサで感知した前記温度と前記発熱素子の上限許容動作温度との差である温度差を求める温度差測定工程と、
前記温度差が最も小さい発熱素子を高温検査対象発熱素子として選択し、前記ファンの回転速度の制御により、前記温度センサで感知する該高温検査対象発熱素子の前記温度を前記上限許容動作温度以下の所定温度の範囲に収めた状態で、該高温検査対象発熱素子の高温検査を所定時間に亘って実行する高温検査工程とを
順次に実行することを特徴とする発熱素子の検査方法。
【請求項7】
電源入力のオン又はオフの制御が夫々可能な複数の発熱素子と、該発熱素子夫々の温度を感知する温度センサと、該複数の発熱素子を冷却するための回転速度が可変なファンと、前記電源入力のオン又はオフの制御を前記各発熱素子について個別に行うと共に前記温度センサで感知した前記温度に基づき前記ファンの回転数を制御する検査制御部とを有する電子装置であり、
前記検査制御部は、前記電源が入力されている複数の前記発熱素子に関し、
前記温度センサで感知した前記温度と前記発熱素子の上限許容動作温度との差である温度差を求める温度差測定と、
前記温度差が最も小さい発熱素子を高温検査対象発熱素子として選択し、前記ファンの回転速度の制御により、前記温度センサで感知する該高温検査対象発熱素子の前記温度を前記上限許容動作温度以下の所定温度の範囲に収めた状態で、該高温検査対象発熱素子の高温検査を所定時間に亘って実行する高温検査とを
順次に実行することを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−244274(P2011−244274A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115546(P2010−115546)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】