説明

電子装置およびその製造方法

【課題】開口部を形成されることにより、大きなバンドギャップを有するグラフェンシートを有する電子装置を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板上に形成されたグラフェンシート23と、前記グラフェンシートの一端に形成されたソース電極23Sと、前記グラフェンシートの他端に形成されたドレイン電極23Dと、前記グラフェンシート上ゲート絶縁膜を介して形成され、前記グラフェンシートにゲート電圧を印加するゲート電極と、前記グラフェンシートに前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ方向を横切って形成された複数の開口部23Aよりなる開口部列と、を備え、前記複数の開口部はいずれも、三つのジグザグ端により画成されて正三角形の形状を有し、前記ジグザグ端のうち二つは、前記ソース電極とドレイン電極を結んだ方向に対し30°の角度をなし、もう一つのジグザグ端は90°の角度をなし、それぞれの正三角形の向きを揃えて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラフェンシートを使った電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは例えば黒鉛結晶中において炭素の六角形格子を構成するsp結合をした炭素原子よりなる原子層であるが、散乱の効果を抑制できれば室温でも200000cm2-1cm-1を超える非常に大きな電子移動度を達成可能であることから、グラフェンのシートを使って超高速電子装置を作製する研究がなされている。
【0003】
しかしながら黒鉛結晶と同様にグラフェンシートも半金属であり、価電子帯と伝導帯が重なっていてバンドギャップが存在しないため、そのままでは電流のスイッチングに使えない。
【0004】
このため、特許文献1におけるようにグラフェンシートにより幅が10nm以下のリボン状構造を形成し、量子閉じ込め効果によって、バンドギャップを発生させる技術が提案されている。
【0005】
またグラフェンシートに半径が10nm前後の孔をメッシュ状に形成し、形成された孔の周期配列の効果によりバンドギャップを発生させる技術も提案されている(非特許文献1〜3)。バンドギャップが発生するという効果までは言及されていないものの、このような穴開き構造は、特許文献2よっても公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−94190号公報
【特許文献2】特開平10−139411号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Bai et al., Nature Nanotech. 5, 190 (2010)
【非特許文献2】M. Kim et al., Nano. Lett. 10, 1125 (2010)
【非特許文献3】X. Liang et al., Nano Lett. 10, 2454 (2010)
【非特許文献4】K. S. Noveselov, et al., Science 306, 666 (2004)
【非特許文献5】C. Berger, et al., J. Phys. Chem. B 108, 19912 (2004)
【非特許文献6】A. Reina et.al., Nano. Lett. 9, 30 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1は、グラフェンシート1の例を示す平面図である。
【0009】
図1を参照するに、グラフェンシート1は先にも述べた通りsp結合をした炭素原子の六角格子よりなる原子層であるが、このようなグラフェンシート1を構成する六角形格子は、互いに平行で互い違いに配置されたC−C結合1aおよびC−C結合1bを含み全体としては前記C−C結合1aおよび1bの方向に延在する第1のエッジ1Aと、ジグザグに繰り返すC−C(炭素−炭素)結合1cおよび1dを含み、全体としては前記エッジ1Aに直交する方向に延在する第2のエッジ1Bで画成されている。
【0010】
前記第1のエッジ1Aでは、C−C結合1aは次のC−C結合1bに斜めのC−C結合1eで連続し、また前記C−C結合1bが次のC−C結合1aに、斜めのC−C結合1fにより連続し、アームチェア端とよばれる縁部形状をなす。これに対し前記第2のエッジ1Bは前記C−C結合1cとC−C結合1dが繰り返されることからジグザグ端とよばれる形状をなす。
【0011】
このようなアームチェア端をなすエッジ1Aあるいはジグザグ端をなすエッジ1Bでは電子の量子閉じ込め効果が生じ、このため、前記特許文献1ではこのようなアームチェア端あるいはジグザグ端により、グラフェンシートのバンド構造中にバンドギャップを発生させ、電子装置のオン/オフ動作を可能としていた。
【0012】
しかし特許文献1に記載の方法では、チャネルが実効的に前記アームチェア端あるいはジグザグ端に対応して形成されるためチャネル幅が10nm以下と狭くなり、大きな電流を得ようとすると、アームチェア端あるいはジグザグ端を有する多数のリボン状構造をグラフェンシートにより作製し、これらのリボン状構造をソース領域とドレイン領域の間に並列に、かつ高密度に配置する必要がある。このためかかる従来技術では、電子装置の製造工程が複雑になる問題が生じる。
【0013】
また非特許文献1〜3に記載の方法では、孔の二次元周期配列によりバンドギャップを発生させていることから、グラフェンシート中に半径が10nm程度の孔を二次元的に配列させる必要があり、チャネル長が数十ナノメートル程度の微細化された電子装置には使うことができない。さらにこのような10nmオーダーの周期性により形成されたバンドギャップはせいぜい0.1eV程度と小さく、通常の電子装置で使われるような動作電圧で確実にオンオフ動作をさせるのは容易ではない。
【0014】
さらに2層になったグラフェンシートの面に垂直に電場を印加することによりバンドギャップを発生させる技術も提案されているが、かかる構成で得られるバンドギャップの大きさは最大でも0.3eV程度にしかならず、電子装置への適用は困難である。
【0015】
また特許文献2に記載の方法では、円形の穴又は円形の組み合わせによる穴、又は多角形の穴を有する構造を請求しているが、穴の形状や並べ方、サイズによっては期待通りの大きさのバンドギャップを得られない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一の側面によれば電子装置は、基板と、前記基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたグラフェンシートと、前記グラフェンシートの一端に形成されたソース電極と、前記グラフェンシートの他端に形成されたドレイン電極と、前記グラフェンシートに前記ソース領域とドレイン領域との間でゲート電圧を印加するゲート電極と、前記グラフェンシートに前記ソース電極とドレイン電極の間において、前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ方向を横切って形成された、複数の開口部よりなる開口部列と、を備え、前記複数の開口部はいずれも、三つのジグザグ端により画成されて正三角形の形状を有し、前記ジグザグ端のうち二つは、前記ソース電極とドレイン電極を結んだ方向に対しいずれも30°の角度をなし、もう一つのジグザグ端は90°の角度をなし、前記複数の開口部は前記開口部列において、それぞれの正三角形の向きを揃えて形成されている。
【0017】
他の側面によれば電子装置は、基板と、前記基板上に形成されたグラフェンシートと、前記グラフェンシートの一端に形成されたソース電極と、前記グラフェンシートの他端に形成されたドレイン電極と、前記グラフェンシートを前記ソース電極とドレイン電極の間において覆うゲート絶縁膜と、前記ソース電極とドレイン電極の間において前記グラフェンシート上に、前記ゲート絶縁膜を介して形成され、前記グラフェンシートに前記ソース領域とドレイン領域との間でゲート電圧を印加するゲート電極と、前記ソース電極とドレイン電極の間において、前記グラフェンシートに前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ方向を横切って形成された複数の開口部よりなる開口部列と、を備え、前記複数の開口部はいずれも、三つのジグザグ端により画成されて正三角形の形状を有し、前記ジグザグ端のうち二つは、前記ソース電極とドレイン電極を結んだ方向に対しいずれも30°の角度をなし、もう一つのジグザグ端は90°の角度をなし、前記複数の開口部は前記開口部列において、それぞれの正三角形の向きを揃えて形成されている。
【0018】
他の側面によれば電子装置の製造方法は、基板上にグラフェンシートを形成する工程と、前記グラフェンシート上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜中に複数のマスク開口部を形成する工程と、前記グラフェンシートを、前記絶縁膜をマスクにパターニングし、前記グラフェンシート中に前記複数のマスク開口部にそれぞれ対応した複数の開口部を形成し、前記複数の開口部により開口部列を形成する工程と、前記グラフェンシートを非酸化性雰囲気中で熱処理し、前記グラフェンシート中の前記複数の開口部の形状を安定な形状に変化させる工程と、前記グラフェンシート上に、前記開口部列を挟んで一方の側にソース電極を、他方の側にドレイン電極を形成する工程と、を含み、前記複数のマスク開口部を形成する工程は、前記複数のマスク開口部の各々が、前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ直線に対し、いずれも時計回り方向と反時計回り方向に30°の角度をなす二つの縁部と、前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ直線に対して直交する一つの縁部により画成される正三角形の形状を有するように実行され、また前記複数のマスク開口部を形成する工程では、前記複数のマスク開口部が、それぞれの三角形の向きを揃えて形成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、グラフェンシート中に、向きを揃えて正三角形形状の複数の開口部を形成することにより、前記グラフェンシートのバンド構造中に、大きな伝導ギャップを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】グラフェンの六角形格子を示す平面図である。
【図2】第1の実施形態による電子装置を示す平面図である。
【図3】図2中、線A−A'に沿った断面図である。
【図4】比較対照例による開口部の例を示す平面図である。
【図5】比較対照例による開口部の他の例を示す平面図である。
【図6】比較対照例による開口部のさらに他の例を示す平面図である。
【図7】第1の実施形態の一変形例による開口部列を示す平面図である。
【図8】第1の実施形態の他の変形例による開口部列を示す平面図である。
【図9】第1の実施形態のさらに他の変形例による開口部列を示す平面図である。
【図10】第1の実施形態のさらに他の変形例による開口部列を示す平面図である。
【図11】図2の電子装置においてグラフェンシートに生じるバンドギャップを示すグラフである。
【図12】図2の電子装置の製造方法を説明するフローチャートである。
【図13A】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その1)である。
【図13B】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その2)である。
【図13C】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その3)である。
【図13D】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その4)である。
【図13E】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その5)である。
【図13F】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その6)である。
【図13G】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その7)である。
【図13H】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その8)である。
【図13I】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その9)である。
【図13J】図2の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その10)である。
【図14】図13Gの工程で使われるマスクパターンを示す平面図である。
【図15】第2の実施形態による電子装置を示す断面図である。
【図16】図15の電子装置の製造方法を説明するフローチャートである。
【図17A】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その1)である。
【図17B】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その2)である。
【図17C】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その3)である。
【図17D】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その4)である。
【図17E】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その5)である。
【図17F】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その6)である。
【図17G】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その7)である。
【図17H】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その8)である。
【図17I】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その9)である。
【図17J】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その10)である。
【図17K】図15の電子装置の製造方法を説明する工程断面図(その11)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態による電子装置20の平面図、図3は、図2中、線A−A'に沿った断面図を示す。
【0022】
最初に図3の断面図を参照するに、例えばp+型にドープされゲート電極を兼用するシリコン基板21上には、ゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜22が形成されており、前記シリコン酸化膜22上には前記図1のグラフェンシート1と同様なグラフェンシート23が形成されている。
【0023】
さらに前記シリコン基板21上、前記グラフェンシート23の一方の端にはソース電極23Sが、また他方の端にはドレイン電極23Dが形成されている。
【0024】
前記グラフェンシート23には、図2の平面図に示すように複数の開口部23Aが、前記ソース電極23Sとドレイン電極23Dを結んだ方向(以下、「チャネル方向」と表記する)を横切って、前記チャネル方向に直交するチャネル幅方向に延在する開口部列23Nの形で形成されている。図示の例では各々の開口部23Aは縁部23a〜23aにより画成されて正三角形をなしており、前記縁部23a〜23aのすべてにジグザグ端が形成されている。ここで前記「チャネル方向」は、前記ソース電極23Sから前記グラフェンシート23に放出された電子が前記グラフェンシート23中をドレイン電極23Dに向かって走行する方向でもあり、図2における直線A−A'に平行な方向である。
【0025】
図2の構成の電子装置20では前記ソース電極23Sとドレイン電極23Dとは平行に対向しており、前記直線A−A'は前記ソース電極23Sおよびドレイン電極23Dに直交している。
【0026】
さらに図2の構成の電子装置20では、前記グラフェンシート23が前記シリコン基板21上において、グラフェンシート23を構成する炭素原子の六角形格子のうちの平行に対向する一対の縁部が、前記チャネル方向に平行になるような向きに配置されており、その結果、前記ジグザグ端23a、23aは、前記チャネル方向に対してそれぞれ反時計回りと時計回り方向に30°傾いた角度をなしており、23aは、前記チャネル方向に直交している。
【0027】
このような構成の電子装置20において、グラフェンシート23に生じるバンドギャップEgの大きさを計算したところ、例えば図2に示した構成において前記開口部23Aの一辺の長さを約2.5nmとして、前記開口部23Aを中心間距離が約3.5nmとなるように配列した場合、前記バンドギャップEgは1.00eVとなることが示された。ただしこの計算は、炭素原子一個あたり一つのpz軌道を基底とし、最近接原子間の相互作用のみを考慮した強束縛近似計算により行っている。
【0028】
一方、前記グラフェンシート23中に形成される開口部23Aの代わりに、比較対照例として、(A)図4の平面図に示すように一辺の長さが2.5nmの菱形形状を有し、ジグザグ端23b〜23bのみで画成された開口部23Bを形成した場合、(B)図5に示すように長方形状で、2つのジグザグ端23c,23cによる長さ2.5nmの辺と2つのアームチェア端23c,23cによる長さ2.3nmの辺を有する開口部23Cを形成した場合、および(C)図6に示すように一辺の長さが1.5nmの六角形状を有し、ジグザグ端のみで画成された開口部23Eを形成した場合を考えると、前記バンドギャップEgの大きさは、前記(A),(B),(C)に対応して、それぞれ0.54eV,0.13eV,および0.56eVとなることが示された。ただしこの計算も、炭素原子一個あたり一つのpz軌道を基底とし、最近接原子間の相互作用のみを考慮した強束縛近似計算により行っている。また上記の計算でも、開口部の中心間距離は約3.5nmとしている。
【0029】
上記の計算において、図4,図5および図6におけるグラフェンシート23の向きは、図2におけるグラフェンシート23の向きと同じに設定している。そこで図4の構成(A)では前記開口部23Bは、チャネル幅方向に互いに対向し、かつチャネル方向に対してそれぞれ反時計回り方向および時計回り方向に30°傾いたジグザグ端23bおよび23bと、チャネル幅方向に互いに対向し、かつチャネル方向に対してそれぞれ時計回り方向および反時計回り方向に30°傾いたジグザグ端23bおよび23bとを含む縁部で画成されており、また図5の構成(B)では、前記開口部23Cを画成するジグザグ端23c,23cは、前記チャネル方向に直交する方向、すなわちチャネル幅方向に延在し、一方、前記アームチェア端23c,23cは、前記チャネル幅方向に直交する方向、すなわちチャネル方向に延在しており、また図6の構成(C)では、前記開口部23Eを画成するジグザグ端23e,23eは前記チャネル方向に直交する方向、すなわちチャネル幅方向に延在する一方、ジグザグ端23e,23e,23c,23cは前記チャネル方向に対して反時計回り方向あるいは時計回り方向に30°の角度をなしていることに注意すべきである。
【0030】
このように本実施形態によれば、グラフェンシート23には、図2に示した正三角形形状の開口部を形成した場合に、最も大きなバンドギャップEgが生じることが発見された。
【0031】
次に、前記正三角形形状の開口部23Aに対応する正三角形形状の開口部23Fの、前記グラフェンシート23中における並べ方を、図7〜10のように様々に変化させた場合における、前記バンドギャップEgの変化について説明する。
【0032】
まず図7を参照するに、図7の例は前記図2と実質的に同一であり、正三角形の開口部23Fが同じ方向を向いてチャネル幅方向に沿って整列している。この場合のバンドギャップは前述の通り1.00eVである。また図8に示したように各開口部23Fがチャネル幅方向に沿って一列に整列していない場合であっても、先と同様な計算により、バンドギャップEgとして前記1.00eVの値が得られることが示された。
【0033】
一方、同様な計算により、図9に示すような、正三角形状開口部23Fとその逆向きの正三角形状開口部23Gが交互に配列され、かつこれらがチャネル幅方向に沿って一列に整列している場合にはバンドギャップEgは0.02eVにしかならず、また図10に示すような、開口部23Fと23Gが交互に並んではいるが、それぞれの底辺を結ぶ線で左右に線対称に折り返され、チャネル幅方向に沿って一列には整列していない場合には、バンドギャップEgは0.06eVにしかならないことが示された。
【0034】
このような図7あるいは図8以外の配置においてバンドギャップEgの減少が生じる理由であるが、例えば図9における開口部23Fと開口部23Gとでは、二つの隣接する開口部で、二つのジグザグ端が平行に対向していることが関係している可能性がある。すなわち、平行なジグザグ端が近接して形成された場合、それぞれのジグザグ端に局在化してバンドギャップを形成するはずであった電子の波動関数が拡がってしまい、このような電子の波動関数の非局在化が上記のバンドギャップの減少をもたらしている可能性がある。例えば図10の配置では、開口部23Fおよび23Gの相対向する平行なジグザグ端が図9の場合よりも斜めに離間しており、これに伴ってより大きな0.06eVのバンドギャップEgが生じている可能性がある。このようなグラフェンシート23において平行に相対向するジグザグ端は、比較対照例による前記図4の構成、図5の構成および図6の構成においても生じていることがわかる。これに対し、図2あるいは図7,図8に示す本実施形態においては、このような平行に相対向するジグザグ端は形成されていないことに注意すべきである。
【0035】
このように本実施形態によれば、グラフェンシート23において大きなバンドギャップEgを得るには、前記グラフェンシート23中に、各々三つのジグザグ端により画成された正三角形状の複数の開口部23Fを、前記ジグザグ端のうち二つは、前記ソース電極23Sとドレイン電極23Dを結んだ方向に対しいずれも30°の角度をなし、もう一つのジグザグ端は90°の角度をなすように、向きを揃えて形成するのが有利であることが結論される。
【0036】
図11は、前記図7に示した一列に整列した正三角形状開口部23Fについて、(a)隣接する開口部23F間での中心間距離を固定し、開口部23Fの大きさ、すなわち正三角形の一辺の長さを変化させた場合、(b)開口部23Fの端間距離を固定し開口部23Fの大きさ、すなわち正三角形の一辺の長さを変化させた場合、および(c)開口部23Fの大きさ、すなわち正三角形の一辺の長さを固定し開口部23Fの中心間距離を変化させた場合について、バンドギャップEgの値を、先の計算と同様にして求めた結果を示すグラフである。中心間距離、端間距離および辺の長さは、図11に定義した通りである。
【0037】
図11を参照するに、横軸は、前記開口部23Fの中心間距離に対する前記開口部23Fの正三角形の一辺の長さの割合を示しているが、図11の関係より、この割合が大きいほどバンドギャップEgが増大することが分かる。例えばEg>0.5eVのグラフェンシート23を得たい場合は、前記割合を6割以上にすればよいことがわかる。
【0038】
なお本実施形態において、前記グラフェンシート23を、図2あるいは図4〜図10におけるように、六角形格子の互いに平行な一対の縁部が前記チャネル方向に直交するような向きに配置し、かかるグラフェンシート23に前記開口部23A,23B,23C,23E,23F,23Gなどの一般的な開口部を形成した場合、熱力学的な安定性の観点から、前記開口部を画成する縁部のうち安定なものは、前記チャネル方向に対し0°,あるいは反時計回りあるいは時計回り方向に30°、あるいは反時計回りあるいは時計回り方向に60°、あるいは90°のいずれかの角度をなすものに限定されることに注意すべきである。このうち0°方向および反時計回りあるいは時計回り方向に60°の角度をなす縁部はアームチェア端を形成し、反時計回りあるいは時計回り方向に30°の角度をなす縁部、および90°の角度をなす縁部はジグザグ端を形成する。
【0039】
次に、図12のフローチャートおよび図13A〜図13Jの工程断面図を参照しながら、図2の電子装置20の製造工程について説明する。
【0040】
図12のフローチャートを参照するに、ステップ1において図13Aに示すように、例えばp+型にドープされたシリコン基板21上に、ゲート絶縁膜として作用する厚さが例えば300nmのシリコン酸化膜22を形成する。ここで前記シリコン酸化膜22は、前記シリコン基板21の熱酸化などにより形成することができる。なお前記基板21としては、p+型にドープされたシリコン基板以外にも、n+型にドープされたシリコン基板や金属基板など、他の導電性基板を使うことができる。この場合には前記シリコン酸化膜22は例えばスパッタ法などにより形成することができる。
【0041】
次に図12のステップ2において、図13Bに示すように、前記シリコン酸化膜22上にグラフェンシート23を形成する。前記グラフェンシート23は、例えば高配向熱分解グラファイト(Highly Oriented Pyrolytic Graphite;HOPG)や天然グラファイト、キッシュグラファイトなどのバルクグラファイト結晶表面からグラファイト層をスコッチテープ(登録商標)やセロテープ(登録商標)などの粘着テープや粘着シートなどの粘着媒体により機械的に剥離ないしへき開させ、さらにこれを例えば非特許文献4などに記載されているように、別の粘着テープで繰り返しへき開させることにより薄片化するプロセスにより得ることができる。このようにして得られたグラフェンシート23は、さらに粘着媒体ごと、前記シリコン酸化膜22の表面にこすりつけて転写され、これにより図13Bの構造が得られる。
【0042】
あるいは非特許文献5などに記載されているように六方晶系の6H−SiC基板を用意し、これを真空中またはArなど非酸化性雰囲気中、1200℃以上に加熱することで基板表面からSi原子を脱離させることにより、SiC基板表面にSiCの六方晶系の原子配列に依存してグラフェンシートをエピタキシャルに得ることも可能である。この場合にも、得られたグラフェンシートを粘着媒体などに転写し、これを前記シリコン酸化膜22の表面に転写することによって、前記図13Bの構造を得ることができる。
【0043】
また非特許文献6などに記載されているようにグラフェンシートをCVD法で形成することも可能である。この場合には、Fe,Ni,Cuなどの金属触媒をシリコン基板上のシリコン酸化膜表面に堆積し、アセチレンを原料とした熱CVDプロセスを650〜1000℃程度の温度で実行することにより、前記金属触媒上にグラフェンを合成することができる。この場合も、得られたグラフェンを粘着媒体に転写し、さらにこれを前記シリコン酸化膜22の表面に転写することにより、図13Bの構造を得ることができる。
【0044】
次にステップ3において図13Cに示すように、前記グラフェンシート23を覆って、ハードマスクとなるシリコン酸化膜HM1を、例えばCVD法あるいはスパッタ法により、例えば10nmの膜厚に形成し、さらにステップ4において、レジストパターンR1のマスク方位を合わせた上で、前記シリコン酸化膜HM1を図13Dに示すように、前記レジストパターンR1をマスクにパターニングし、前記グラフェンシート23のうち、前記ソース電極23Sが形成されるソース領域23sと前記ドレイン電極23Dが形成されるドレイン領域23dとを、前記ソース領域23sとドレイン領域23dとを結んだ線が、前記グラフェンシート23を構成する炭素の六角形格子のうち、平行に対向して延在する二辺に直交するように、露出させる。
【0045】
さらにステップ5において前記図13Dの構造上にソース電極パターン23S,ドレイン電極パターン23Dとなる金属膜23Mを、図13Eに示すように前記シリコン酸化膜HM1上においてレジストパターンRをも覆うように例えばスパッタ法あるいは電子ビーム蒸着法などにより堆積し、さらにステップ7において前記レジストパターンRを、その上に堆積した金属膜23M共々リフトオフする。これにより、前記グラフェンシート23のソース領域23sに前記ソース電極パターン23Sが、またドレイン領域23dに前記ドレイン電極パターン23Dが、それぞれ形成される。前記金属膜23Mは、例えば厚さが5nmのTi密着膜(図示せず)と厚さが例えば30nmのAu膜(図示せず)とを順次積層した構造を有してもよい。
【0046】
次にステップ8において前記シリコン酸化膜HM上にレジスト膜Rが形成され、前記レジスト膜R中に図14のマスクパターンMを使って図13Gに示すようにレジスト開口部R2Aが、前記マスクパターンM中のマスク開口部23Mに対応して形成される。前記マスク開口部23Mは、前記グラフェンシート23中に形成される開口部列23Aに対応した正三角形形状のマスク開口部を、向きを揃えて前記開口部列に沿って配列させた構成を有しており、前記開口部23Aのジグザグ端23a、23aおよび23aがそれぞれマスク開口部23Mのエッジ23m、23mおよび23mに対応している。
【0047】
前記ステップ8ではその際、前記マスク開口部23Mの向きが、前記グラフェンシート23中に形成したい開口部23Aの向きに一致するように、前記グラフェンシート23に対して前記レジスト膜Rの方位を設定される。このようなマスク方位合わせの結果、前記エッジ23mは前記チャネル方向から反時計回り方向に30°傾いており、一方前記エッジ23mは、前記チャネル方向から時計回り方向に30°傾いている。前記エッジ23mは、前記チャネル方向に直交している。
【0048】
前記ステップ8では、さらにこのようにして形成されたレジスト開口部R2Aにより前記シリコン酸化膜HMがパターニングされ、前記シリコン酸化膜HM中には、図13Hに示すように前記マスク開口部23Mに対応したマスク開口部HMAが形成される。
【0049】
次にステップ9の工程において前記グラフェンシート23に対し、前記シリコン酸化膜HMをマスクに、例えば10mTorrの圧力下、90Wのプラズマパワーで25sccmの流量で酸素ガスを供給しながら反応性イオンエッチング(RIE)を行い、前記グラフェンシート23に、図13Iに示すように、前記マスク開口部HMAに対応して開口部23Aを、前記グラフェンシート23の方位に対して所定の関係になるように、すなわち開口部23Aのジグザグ端23aおよび23aが、前記チャネル方向に対してそれぞれ反時計回り方向および時計回り方向に30°傾き、ジグザグ端23mが、前記チャネル方向に直交するように、形成する。前記マスクパタ―ンMにおいて前記マスク開口部23Mは図14に示すように開口部列方向に周期的に形成されており、これにより前記グラフェンシート23にはかかる開口部23Aにより開口部列23Nが、前記チャネル幅方向に形成される。
【0050】
さらにステップ10において図13Jに示すように前記シリコン酸化膜HMを、HFを使ったウェットエッチングにより選択的に除去し、その後、水素雰囲気などの還元雰囲気中、例えば1000°の温度で熱処理することにより、前記開口部23Aの端部における炭素原子の配列を安定化させる。かかる安定化の結果、仮に図13Hの工程でマスクパタ―ンMの方位が僅かにずれていたとしても、前記開口部23Aの縁部において炭素原子は再配列し、前記チャネル方向に反時計回り方向あるいは時計回り方向に30°の角度のジグザグ端が安定に得られる。
【0051】
[第2の実施形態]
図14は、第2の実施形態による電子装置60の構成を示す断面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0052】
図14を参照するに、電子装置60は6H−SiC基板61の(0001)面上に形成されており、前記(0001)面上に直接に形成され、前記図2の平面図に示した開口部23Aにより開口部列23Nを形成されたグラフェンシート23と、前記グラフェンシート23上に、前記グラフェンシート23を構成する炭素原子の六角形格子のうち、平行に対向する二辺に対して直交する向きにおいて相互に対向するように形成されたソース電極23Sおよびドレイン電極23Dを含む。
【0053】
さらに前記グラフェンシート23は、前記開口部列23Nごと、たとえは厚さが10nmの酸化ハフニウム(HfO)よりなるゲート絶縁膜62により覆われ、前記ゲート絶縁膜62上には、厚さが例えば5nmのチタン(Ti)膜と厚さが例えば30nmの金(Au)膜とを順次積層した構成のゲート電極63が形成されている。
【0054】
なお図示の構成ではソース電極23Sおよびドレイン電極23Dも前記酸化ハフニウム膜62により覆われており、前記酸化ハフニウム膜62には前記ソース電極23Sおよび23Dに対応して図示しないビアホールが形成される。
【0055】
かかる構成の電子装置でも、前記ソース電極23Sとドレイン電極23Dとが、前記ソース電極23Sとドレイン電極23Dとを結んだ直線が、前記グラフェンシート23Sを構成する炭素の六角形格子のうち相対向する二辺に対して直交するような向きに形成されているため、先の図2の実施形態と同様に、前記グラフェンシート23中には、前記チャネル方向に対して時計回り方向あるいは反時計回り方向に30°傾いたジグザグ端とチャネル方向に直交するジグザグ端により画成された正三角形形状の開口部23Aの開口部列23Nが、先の実施形態と同様に形成されており、その結果、前記グラフェンシート23は、先の図11のグラフよりわかるように、例えば開口部23Aの辺の長さが開口部23Aの中心間距離の6割以上であれば、0.5eV以上の大きなバンドギャップEgを示す。このため図14の電子装置60においても、前記ソース電極23Sからドレイン電極62Dへの電子の流れを、前記ゲート電極63に印加したゲート電圧により確実に制御することが可能となる。
【0056】
以下、図15の電子装置60の製造方法を、図16のフローチャートおよび図17A〜図17Kの工程断面図を参照しながら説明する。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0057】
図16のフローチャートを参照するに、ステップ21において図17Aに示すように(0001)面を主面とする6H−SiC基板61を準備し、ステップ22において前記6H−SiC基板を真空中、あるいは1200°以上のアルゴン(Ar)など非酸化雰囲気中において熱処理し、前記基板21の主面を画成する(0001)面からSi元素を脱離させる。その結果、(0001)面よりなる前記6H−SiC基板21の主面には、図17Bに示すように六方晶系配列した炭素原子よりなる炭素原子層が残り、所望のグラフェンシート23がエピタキシャルに形成される。
【0058】
次に図16のステップ23において図17Cに示すようにシリコン酸化膜よりなるハードマスク膜HM1を、例えばスパッタ法やCVD法により形成し、ステップ24において前記ハードマスク膜HM1を、図17Dに示すようにレジストパターンR1をマスクにパターニングして、前記グラフェンシート23のうち、ソース領域23sとドレイン領域23dとを露出する。
【0059】
さらに図16のステップ25において前記図17Dの構造上に、厚さが5nmのチタン膜と厚さが30nmの金膜とを、電子ビーム蒸着法あるいはスパッタ法により順次堆積して図17Eに示す金属膜23Mを形成し、さらに図16のステップ26において図17Fに示すように前記レジストパターンR1をその上の金属膜23M共々リフトオフし、前記グラフェンシート23のソース領域23sにソース電極23Sを、またドレイン領域23dにドレイン電極23Dを、それぞれ形成する。
【0060】
さらに図16のステップ27において前記ハードマスク膜HM1を、例えば先の図14で説明したマスクパタ―ンMを使ってマスク開口部23Mに従ってパターニングし、図17Gに示すように前記グラフェンシート23を露出する開口部HMAを形成し、ステップ28において前記グラフェンシート23を、前記ハードマスク膜HM1をマスクにパターニングし、さらに図17Hに示すように前記グラフェンシート23中に、例えば開口部23Aよりなる開口部列23Nを形成する。
【0061】
さらに図16のステップ29において、前記グラフェンシート23を水素雰囲気など還元雰囲気中、例えば1000°の温度で熱処理し、先に形成された開口部23Aの縁部における炭素原子の配列を安定化させる。さらにステップ30において図17Iに示すようにハードマスク膜HM1をたとえはHFによるウェット処理により除去し、さらにステップ31において図17Jに示すように、ゲート絶縁膜62を前記グラフェンシート23上に形成する。図示の例では、前記ゲート絶縁膜62として酸化ハフニウム(HfO)膜を使っているが、酸化ジルコニウム(ZrO)膜やハフニウムシリケート(HfSiO)膜やハフニウムジルコネート(ZrSiO)膜などを使うことも可能である。
【0062】
さらにステップ32において前記ゲート絶縁膜62上に前記ソース電極パターン23Sあるいはドレイン電極パターン23Dと同様な、Ti膜と金膜の積層構造のゲート電極63を形成することにより、図17Kに示すようにトップゲート構造の電子装置を得ることができる。
【0063】
なお上記の各実施形態において、「グラフェンシート」は、必ずしも、炭素の六角形格子を構成するsp結合をした炭素原子よりなる厳密に単一の原子層である必要はなく、かかる原子層を複数含んでいてもよい。
【0064】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,23 グラフェンシート
1A アームチェア端
1B ジグザグ端
1a,1b,1c,1d,1e C−C結合
20,60 電子装置
21 シリコン基板
23A,23B,23C,23E,23F,23G 開口部
23a〜23a,23b〜23b,23c〜23c,23e〜23e 縁部
23N 開口部列
23M マスク開口部
23m〜23m エッジ
23S ソース電極パターン
23D ドレイン電極パターン
61 SiC基板
62 ゲート絶縁膜
63 ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたグラフェンシートと、
前記グラフェンシートの一端に形成されたソース電極と、
前記グラフェンシートの他端に形成されたドレイン電極と、
前記グラフェンシートに前記ソース領域とドレイン領域との間でゲート電圧を印加するゲート電極と、
前記グラフェンシートに前記ソース電極とドレイン電極の間において、前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ方向を横切って形成された、複数の開口部よりなる開口部列と、
を備え、
前記複数の開口部はいずれも、三つのジグザグ端により画成されて正三角形の形状を有し、前記ジグザグ端のうち二つは、前記ソース電極とドレイン電極を結んだ方向に対しいずれも30°の角度をなし、もう一つのジグザグ端は90°の角度をなし、
前記複数の開口部は前記開口部列において、それぞれの正三角形の向きを揃えて形成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に形成されたグラフェンシートと、
前記グラフェンシートの一端に形成されたソース電極と、
前記グラフェンシートの他端に形成されたドレイン電極と、
前記グラフェンシートを前記ソース電極とドレイン電極の間において覆うゲート絶縁膜と、
前記ソース電極とドレイン電極の間において前記グラフェンシート上に、前記ゲート絶縁膜を介して形成され、前記グラフェンシートに前記ソース領域とドレイン領域との間でゲート電圧を印加するゲート電極と、
前記ソース電極とドレイン電極の間において、前記グラフェンシートに前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ方向を横切って形成された複数の開口部よりなる開口部列と、
を備え、
前記複数の開口部はいずれも、三つのジグザグ端により画成されて正三角形の形状を有し、前記ジグザグ端のうち二つは、前記ソース電極とドレイン電極を結んだ方向に対しいずれも30°の角度をなし、もう一つのジグザグ端は90°の角度をなし、
前記複数の開口部は前記開口部列において、それぞれの正三角形の向きを揃えて形成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
前記ジグザグ端の一つは、前記グラフェンシートの面に対して垂直方向から見た場合に、前記ソース電極とドレイン電極を結んだ方向に対し、時計回りに30°の角度をなすことを特徴とする請求項1または2記載の電子装置。
【請求項4】
前記ジグザグ端の一つは、前記グラフェンシートの面に対して垂直方向から見た場合に、前記ソース電極とドレイン電極を結んだ方向に対し、反時計回りに30°の角度をなすことを特徴とする請求項1または2記載の電子装置。
【請求項5】
前記ジグザグ端の一つは、前記グラフェンシートの面に対して垂直方向から見た場合に、前記ソース電極とドレイン電極を結んだ方向に対し、直交することを特徴とする請求項1または2記載の電子装置。
【請求項6】
前記ジグザグ形状の端部は、他の炭素原子に結合していない結合手を有する炭素原子を二個以上含む5個以上の炭素原子から構成されていることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか一項記載の電子装置。
【請求項7】
前記開口部列は、前記ソース電極とドレイン電極の間で、前記キャリアの流れを横切って複数列にわたり形成されていることを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか一項記載の電子装置。
【請求項8】
前記開口部列において、隣接する開口部間の中心間距離に対する前記開口部の一辺の長さの割合が6割以上であることを特徴とする請求項1〜7のうち、いずれか一項記載の電子装置。
【請求項9】
基板上にグラフェンシートを形成する工程と、
前記グラフェンシート上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜中に複数のマスク開口部を形成する工程と、
前記グラフェンシートを、前記絶縁膜をマスクにパターニングし、前記グラフェンシート中に前記複数のマスク開口部にそれぞれ対応した複数の開口部を形成し、前記複数の開口部により開口部列を形成する工程と、
前記グラフェンシートを非酸化性雰囲気中で熱処理し、前記グラフェンシート中の前記複数の開口部の形状を安定な形状に変化させる工程と、
前記グラフェンシート上に、前記開口部列を挟んで一方の側にソース電極を、他方の側にドレイン電極を形成する工程と、
を含み、
前記複数のマスク開口部を形成する工程は、前記複数のマスク開口部の各々が、前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ直線に対し、いずれも時計回り方向と反時計回り方向に30°の角度をなす二つの縁部と、前記ソース電極とドレイン電極を結ぶ直線に対して直交する一つの縁部により画成される正三角形の形状を有するように実行され、
また前記複数のマスク開口部を形成する工程では、前記複数のマスク開口部が、それぞれの三角形の向きを揃えて形成されることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記ソース電極とドレイン電極とを形成する工程は、前記ソース電極とドレイン電極とを結んだ直線が、前記グラフェンシートを構成する炭素原子の六角形格子の相対向する2辺に平行あるいは直交するように、位置合わせする工程を含むことを特徴とする請求項9記載の電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図13G】
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【図13H】
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【図13I】
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【図13J】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図17G】
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【図17H】
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【図17I】
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【図17J】
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【図17K】
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【公開番号】特開2013−74208(P2013−74208A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213470(P2011−213470)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】