説明

電子装置の障害監視装置、障害監視方法および障害監視プログラム

【課題】電子装置の動作中に、環境の局所的な変化を捉えて障害の早期発見や障害に至る予兆を検知することのできる電子装置の障害監視装置、障害監視方法および障害監視プログラムを得る。
【解決手段】障害監視装置10は、予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定手段11と、測定手段11から得られる測定データの差分を演算する差分演算手段12と、差分演算手段12の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較手段13と、比較の結果、所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告手段14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子装置の障害発生に係わる管理を行う電子装置の障害監視装置、障害監視方法および障害監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ等の各種の電子装置は、内蔵のCPU(Central Processing Unit)や抵抗といった回路部品が通電によって発熱する。したがって、内蔵のファンが正常に作動しないようなトラブルが発生した場合には装置内部の温度が過度に上昇し、内蔵の電子回路が熱暴走するといったような不具合が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、電子装置の温度等の環境データを測定して監視し、環境データとしての値が安全運転を可能にする予め設定された幅を超える場合には、環境異常を通知するようにすることが、本発明の第1の関連技術として提案されている。この第1の関連技術によれば、温度等の環境異常によるシステムの障害を未然に防止して、システムの信頼性を向上させることができる。
【0004】
また、装置内の温度と予め設定されている許容限界温度とを比較して、許容限界温度の範囲外の温度条件下ではOS(Operating System)の起動を抑制することが、本発明の第2の関連技術として提案されている。この第2の関連技術によれば、許容限界温度値範囲外の温度条件下でOSが動作することによる故障を防止して、システムの稼働性を向上させ、システムの信頼性を確保することができる。
【特許文献1】特開昭62−47753号公報(第2ページ左上欄第17行目〜右上欄第19行目、第1図)
【特許文献2】特開平08−292819号公報(第0018段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このうち第1の関連技術では、たとえば電子装置の置かれた周囲の温度が四季の変化によって上下すると、周囲から取得する環境データもこれに応じて上下する。安全運転を可能にする予め設定される温度等の値の幅は、電子装置が四季を通じて動作することを前提とするのであれば、当然に四季の温度変化に対応したある程度広い温度幅に設定される。この結果、たとえば冬場の寒い時期に電子回路の一部が過熱状態になっても、夏場の暑い時期を考慮した正常な温度の上限値を超えるまで温度異常が生じたことが検出されない。このため、冬場には装置の内部で局部的に異常な発熱が発生したとしても、これがセンサによって検出されるまでに時間を要する場合があり、異常に至る小さな異変を見逃してしまう可能性があるという問題があった。
【0006】
一方、第2の関連技術では、たとえば夏場のように温度が異常に高くなる環境になると、安全を確保するためにOSの起動そのものを阻止しようとするものである。しかしながら、電子装置の筐体の一部に外部から日光が照射して温度が局部的に上昇するような場合がある。このような場合には、OSが起動して空冷用のファンが作動すれば温度の初期的な偏在がそれ以後の電子装置の動作に問題を生じさせない場合も多い。このような場合も、第2の関連技術によれば、環境の局部的な変化に対して適応することができず、電子装置そのものの使用を制限することがあるといった問題があった。また、第2の関連技術は、OSが一旦起動した後の電子装置の異常事態を監視する技術ではない。そこでこのような異常事態の発生に対して第2の関連技術を活用することができない。
【0007】
また、従来の電子装置の障害を監視する障害監視装置は、警告専用の専用ICチップを実装したりマネージメントボードとして後から付加したものであって、主に電源電圧、部品温度、冷却ファンの回転を監視し、実際に発生している異常を検知して警告する構成となっている。冗長構成機ではハードディスクやCPU、メモリの縮退までも検出する機能を持つものもある。しかしながら、従来のこのような障害監視装置は、何らかの異常が起こった後に障害を検出するのであり、障害予防の見地から見た場合に十分とは言えない。
【0008】
そこで本発明の目的は、電子装置の動作中に、環境の局所的な変化を捉えて障害の早期発見や障害に至る予兆を検知することのできる電子装置の障害監視装置、障害監視方法および障害監視プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、(イ)予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定手段と、(ロ)この測定手段から得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算手段と、(ハ)この差分演算手段によって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較手段と、(ニ)この比較手段によって前記した所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告手段とを電子装置の障害監視装置が具備する。
【0010】
また、本発明では、(イ)電子装置内部の温度を冷却する冷却手段と、(ロ)この冷却手段によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段と、(ハ)前記した電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段と、(ニ)前記した環境温度測定手段および前記した所定部位温度測定手段から時間を置いてそれぞれの測定データを繰り返し取得するサンプリング手段と、(ホ)このサンプリング手段を用いてそれぞれのサンプリングの時点で取得した2種類の前記した測定データの差分としての温度差を求めることで前記した冷却手段の前記したサンプリングの時点における冷却度を演算する冷却度演算手段と、(へ)この冷却度演算手段の演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成手段と、(ト)この冷却度変化データ作成手段で作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき前記した冷却手段の冷却に関する警告を発する障害予測警告手段とを電子装置の障害監視装置が具備する。
【0011】
更に本発明では、(イ)音響センサと、(ロ)この音響センサから時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するサンプリング手段と、(ハ)このサンプリング手段を用いて取得した2種類の前記した測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算手段と、(ニ)この差分演算手段の演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成手段と、(ホ)この変化データ作成手段で作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較手段と、(へ)この比較手段によって前記した所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告手段とを電子装置の障害監視装置が具備する。
【0012】
更にまた、本発明では、(イ)予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定ステップと、(ロ)この測定ステップで得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算ステップと、(ハ)この差分演算ステップによって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較ステップと、(ニ)この比較ステップにより前記した所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告ステップとを電子装置の障害監視方法が具備する。
【0013】
また、本発明では、(イ)電子装置内部の温度を冷却する冷却手段によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段と、前記した電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段とから時間を置いて各サンプリング時にそれぞれの測定データを取得する測定データ取得ステップと、(ロ)この測定データ取得ステップで取得した2種類の前記した測定データの差分としての温度差を求めることで前記した冷却手段の前記したサンプリング時における冷却度を演算する冷却度演算ステップと、(ハ)この冷却度演算ステップでの演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成ステップと、(ニ)この冷却度変化データ作成ステップで作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき前記した冷却手段の冷却に関する警告を発する障害予測警告ステップとを電子装置の障害監視方法が具備する。
【0014】
更にまた、本発明では、(イ)電子装置に備えられた音響センサから時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するデータサンプリングステップと、(ロ)このデータサンプリングステップで取得した2種類の前記した測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算ステップと、(ハ)この差分演算ステップでの演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成ステップと、(ニ)この変化データ作成ステップで作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較ステップと、(ホ)この比較ステップによって前記した所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告ステップとを電子装置の障害監視方法が具備する。
【0015】
また、本発明では、コンピュータに、電子装置の障害監視プログラムとして、(イ)予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定処理と、(ロ)この測定処理で得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算処理と、(ハ)この差分演算処理によって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較処理と、(ニ)この比較処理によって前記した所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告処理とを実行させることを特徴としている。
【0016】
更にまた、本発明では、電子装置内部の温度を冷却する冷却手段と、この冷却手段によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段と、前記した電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段とを備えたコンピュータに、電子装置の障害監視プログラムとして、(イ)前記した環境温度測定手段および前記した所定部位温度測定手段から時間を置いてそれぞれの測定データを繰り返し取得するサンプリング処理と、(ロ)このサンプリング処理によってそれぞれのサンプリングの時点で取得した2種類の前記した測定データの差分としての温度差を求めることで前記した冷却手段の前記したサンプリングの時点における冷却度を演算する冷却度演算処理と、(ハ)この冷却度演算処理による演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成処理と、(ニ)この冷却度変化データ作成処理で作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき前記した冷却手段の冷却に関する警告を発する障害予測警告処理とを実行させることを特徴としている。
【0017】
また、本発明では、電子装置に音響センサを備えたコンピュータに、電子装置の障害監視プログラムとして、(イ)前記した音響センサから時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するサンプリング処理と、(ロ)このサンプリング処理で取得した2種類の前記した測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算処理と、(ハ)この差分演算処理による演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成処理と、(ニ)この変化データ作成処理で作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較処理と、(ホ)この比較処理によって前記した所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告処理とを実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、所定の2つの測定データの差分をとって、その時間的な変化を監視するので、電子装置の内部変化を具体的に把握することができる。また、障害の発生を予測することができるだけでなく、電子装置の各種部品の保守管理が容易になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の電子装置の障害監視装置のクレーム対応図を示したものである。本発明の電子装置の障害監視装置10は、予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定手段11と、この測定手段11から得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算手段12と、この差分演算手段12によって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較手段13と、この比較手段13によって前記した所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告手段14とを備えている。
【0020】
図2は、本発明の他の電子装置の障害監視装置のクレーム対応図を示したものである。本発明の他の電子装置の障害監視装置20は、電子装置内部の温度を冷却する冷却手段21と、この冷却手段21によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段22と、前記した電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段23と、環境温度測定手段23および所定部位温度測定手段22から時間を置いてそれぞれの測定データを繰り返し取得するサンプリング手段24と、このサンプリング手段24を用いてそれぞれのサンプリングの時点で取得した2種類の前記した測定データの差分としての温度差を求めることで冷却手段21の前記したサンプリングの時点における冷却度を演算する冷却度演算手段25と、この冷却度演算手段25の演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成手段26と、この冷却度変化データ作成手段26で作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき冷却手段21の冷却に関する警告を発する障害予測警告手段27とを備えている。
【0021】
図3は、本発明の更に他の電子装置の障害監視装置のクレーム対応図を示したものである。本発明の更に他の電子装置の障害監視装置30は、音響センサ31と、この音響センサ31から時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するサンプリング手段32と、このサンプリング手段32を用いて取得した2種類の前記した測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算手段33と、この差分演算手段33の演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成手段34と、この変化データ作成手段34で作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較手段35と、この比較手段35によって前記した所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告手段36とを備えている。
【0022】
図4は、本発明の電子装置の障害監視方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の電子装置の障害監視方法40は、予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定ステップ41と、この測定ステップ41で得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算ステップ42と、この差分演算ステップ42によって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較ステップ43と、この比較ステップ43により前記した所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告ステップ44とを備えている。
【0023】
図5は、本発明の他の電子装置の障害監視方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の他の電子装置の障害監視方法50は、電子装置内部の温度を冷却する冷却手段によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段と、前記した電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段とから時間を置いて各サンプリング時にそれぞれの測定データを取得する測定データ取得ステップ51と、この測定データ取得ステップ51で取得した2種類の前記した測定データの差分としての温度差を求めることで前記した冷却手段の前記したサンプリング時における冷却度を演算する冷却度演算ステップ52と、この冷却度演算ステップ52での演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成ステップ53と、この冷却度変化データ作成ステップ53で作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき前記した冷却手段の冷却に関する警告を発する障害予測警告ステップ54とを備えている。
【0024】
図6は、本発明の更に他の電子装置の障害監視方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の更に他の電子装置の障害監視方法60は、電子装置に備えられた音響センサから時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するデータサンプリングステップ61と、このデータサンプリングステップ61で取得した2種類の前記した測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算ステップ62と、この差分演算ステップ62での演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成ステップ63と、この変化データ作成ステップ63で作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較ステップ64と、この比較ステップ64によって前記した所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告ステップ65とを備えている。
【0025】
図7は、本発明の電子装置の障害監視プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の電子装置の障害監視プログラム70は、コンピュータに、予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定処理71と、この測定処理71で得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算処理72と、この差分演算処理72によって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較処理73と、この比較処理73によって前記した所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告処理74とを実行させる。
【0026】
図8は、本発明の他の電子装置の障害監視プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の他の電子装置の障害監視プログラム80は、電子装置内部の温度を冷却する冷却手段と、この冷却手段によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段と、前記した電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段とを備えたコンピュータに、前記した環境温度測定手段および前記した所定部位温度測定手段から時間を置いてそれぞれの測定データを繰り返し取得するサンプリング処理81と、このサンプリング処理81によってそれぞれのサンプリングの時点で取得した2種類の前記した測定データの差分としての温度差を求めることで前記した冷却手段の前記したサンプリングの時点における冷却度を演算する冷却度演算処理82と、この冷却度演算処理82による演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成処理83と、この冷却度変化データ作成処理83で作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき前記した冷却手段の冷却に関する警告を発する障害予測警告処理84とを実行させる。
【0027】
図9は、本発明の更に他の電子装置の障害監視プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の更に他の電子装置の障害監視プログラム90は、電子装置に音響センサを備えたコンピュータに、前記した音響センサから時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するサンプリング処理91と、このサンプリング処理91で取得した2種類の前記した測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算処理92と、この差分演算処理92による演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成処理93と、この変化データ作成処理93で作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較処理94と、この比較処理94によって前記した所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告処理95とを実行させる。
【0028】
<発明の実施の形態>
【0029】
次に本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
図10は、本発明の実施の形態による障害監視装置を備えた電子装置の構成を表わしたものである。本実施の形態の電子装置100は、その内部に障害の発生を管理するための障害監視装置101を備えている。障害監視装置101内には、その内部の全体的な制御を行う中央制御機能部102が配置されている。中央制御機能部102は、CPU(Central Processing Unit)103およびこのCPU103が実行する制御プログラムをその一部領域に格納したメモリ104を備えている。
【0031】
この中央制御機能部102は、各種センサからの情報を入力するセンサ入力回路106と接続されている。センサ入力回路106には、周辺温度計測サーモセンサ107と、環境温度計測サーモセンサ108および音響センサ109が接続されている。
【0032】
このうち周辺温度計測サーモセンサ107は、たとえばCPU103が発生する熱を外部に放出するための冷却用のデバイスとしてのヒートシンク141の周辺の温度を測定するセンサや、図示しない印字部の定着用のヒータの温度を測定するセンサであるとする。周辺温度計測サーモセンサ107としては、たとえばサーモパイル(Thermopile)といった赤外線センサのように測定対象範囲を10cm四方のように広範囲に設定するデバイスが好ましい。これにより、周辺温度計測サーモセンサ107は電子装置100の内部における熱源の周囲の平均的な温度を計測することができる。これは、たとえば熱電対を用いてピンポイントで温度を測定した場合に生じ得る局所的な温度変動による誤検知を防止するためである。
【0033】
環境温度計測サーモセンサ108は、電子装置100の置かれた環境温度を計測するセンサである。環境温度計測サーモセンサ108は、本実施の形態の場合、電子装置100の外部からエアを取り入れるファン142からなるエアインテーク(Air intake)付近に配置されている。これにより、環境温度計測サーモセンサ108は、電子装置100を取り巻く環境温度を計測する。
【0034】
音響センサ109は、メモリ104の一部を構成する図示しないハードディスク等の障害監視装置101内の各種機構の発生する音や、図示しない筐体を伝わる衝撃音の計測を行うセンサである。本実施の形態の音響センサ109は、電子装置100の外部の環境音を軽減あるいは消去するようにノイズキャンセリング機能を備えるものとなっている。
【0035】
中央制御機能部102は、更に障害監視装置101内の次の各部の制御を行うようになっている。データメモリ機能部111は、中央制御機能部102がセンサ入力回路106を介して入力した計測データ112を記憶する。差分演算機能部113は、データメモリ機能部111から蓄積データ114を取り出して、対となる2つのセンサについての蓄積された計測データの差分をとる演算を行う。ただし、音響センサ109は音の振幅と周波数についての測定データを出力し、本実施の形態の場合にはこれら音の振幅と周波数についての測定データを1対の測定データとして使用する。したがって、音に関しては音響センサ109という1種類のセンサを用いて計測データの差分をとる演算が行われる。
【0036】
演算結果メモリ機能部115は、差分演算機能部113が演算した差分データ116を格納する。変化演算機能部117は、差分演算機能部113から差分データ118を時間軸に沿って読み出して、これら差分データ118を連結した形式の時系列変化データを生成する。変化量メモリ機能部119は、変化演算機能部117の出力する時系列変化データ120を格納する。比較機能部121は、変化演算機能部117から読み出した差分データ122と変化量メモリ機能部119から読み出した時系列変化データ123を入力して、判定レベル保持レジスタ124から読み出された閾値125と比較するようになっている。判定結果出力機能部126は、比較機能部121の出力する比較結果データ127と、中央制御機能部102から出力される計測データ112の双方を入力する。そして、周辺温度計測サーモセンサ107の測定値が電子装置100自体の異常発熱を示していた場合のように計測データ112それ自体が、装置の安全性を保証する保証値を超えていた場合には、従来から行われていたように異常事態が発生したものとして、音や視覚表示による警報出力(アラーム)128を行う。また、比較結果データ127が電子装置100の障害の発生が予測される現象(以下、本明細書では予兆という。)を示していたり、障害が発生したことを示しているような場合には、その内容に応じた警報出力128を行うようになっている。
【0037】
このような構成の障害監視装置101で、これを構成するデータメモリ機能部111等の各構成部品は必ずしもハードウェアで構成する必要がない。障害監視装置101を構成する少なくとも一部の部品は、CPU103が制御プログラムを実行することによって機能的に実現するソフトウェア部品で構成してもよい。
【0038】
ところで、本実施の形態の障害監視装置101では、センサ入力回路106が周辺温度計測サーモセンサ107と、環境温度計測サーモセンサ108および音響センサ109のそれぞれが出力する計測値を一定時間ごとにサンプリングして、計測データ131として中央制御機能部102に入力するようになっている。センサ入力回路106のサンプリング周期は、一例として6分ごとといった周期となる。もちろん、サンプリングは一定周期で行う必要がない。たとえば、障害の予兆が観測されるおそれのある期間ではサンプリングを時間的に細かく行うようにしてもよい。
【0039】
図11は、計測データの受信処理の概要を表わしたものである。図10と共に説明する。
【0040】
中央制御機能部102は、センサ入力回路106を介して計測データ131の受信を待機している(ステップS201)。前記したような6分というサンプリング周期で周辺温度計測サーモセンサ107、環境温度計測サーモセンサ108あるいは音響センサ109から計測データ131の受信があると(Y)、中央制御機能部102はこの計測データ131と、これに併せて送られてきたセンサの種別を表わす情報に時刻情報を付加して、計測データ112としてデータメモリ機能部111に格納する(ステップS202)。
【0041】
この計測データ112は判定結果出力機能部126にも送られる。判定結果出力機能部126は、送られてきた計測データ112におけるセンサの種別を表わす情報を基にして、その計測データ112の示す値が安全であるという保証値を超過するものであるかを判別する(ステップS203)。たとえば、周辺温度計測サーモセンサ107の測定した特定部位の周辺温度が予め取り決めた安全な温度とされる上限温度としての閾値を超えるものであったとする。この場合には、その特定部位の温度に対する保証値を超過するものとして(ステップS203:Y)、計測データ112に対応する警報(以下、第1のアラームという。)が出力される(ステップS204)。一例を示すと、「装置の印字部の定着温度が異常に高いので、所定時間、定着器の通電を停止します。」という音声メッセージが図示しないスピーカから流れると共に、図示しないディスプレイにエラー表示が行われて、ステップS201の計測データの受信を待機する状態に戻る(リターン)。この一方で、ステップS203で計測データ112の示す値が保証値以下であり安全であると判別された場合には(N)、このような第1のアラームの出力処理を行うことなく、ステップS201の処理に戻る(リターン)。
【0042】
以上のステップS203以降の処理は、各種のセンサが異常を検知したときに従来から普通に行われていたものである。本実施の形態の電子装置100でも、異常が検出されたときに、第1のアラームが出力されることにして、従来と同様の安全対策を本実施の形態独自の安全対策と併用している。
【0043】
図12は、本実施の形態の電子装置の独自の処理としての障害の早期発見や障害の予兆を検知する処理の様子を表わしたものである。図10と共に説明する。
【0044】
中央制御機能部102は、差分演算機能部113による差分データの演算のタイミングが到来したか(ステップS221)と、変化演算機能部117による変化量データを作成するタイミングが到来したか(ステップS222)と、比較機能部121による比較が行われるタイミングが到来したか(ステップS223)を、常にチェックしている。
【0045】
差分演算機能部113による差分データの演算のタイミングが到来したら(ステップS221:Y)、データメモリ機能部111から該当する計測データ114を読み出す(ステップS224)。そして、差分データの演算を行う(ステップS225)。
【0046】
ここで、説明を分かりやすくするために、電子装置100自体の発熱障害の早期発見や発熱障害の予兆を検知する場合を例に挙げて説明する。また、この説明では、周辺温度計測サーモセンサ107が電子装置100のヒートシンク141の周辺の温度を測定するセンサであるものとする。
【0047】
この例の場合、中央制御機能部102はデータメモリ機能部111から周辺温度計測サーモセンサ107と、環境温度計測サーモセンサ108の計測データ114を抜き出して読み出す(ステップS224)。差分演算機能部113は、時間的にほぼ一致するこれら1対の計測データの差分をとる(ステップS225)。ここでは、ヒートシンク141の周辺の温度と外気温度の差分が演算され、これによって得られた差分データ116が演算結果メモリ機能部115に格納され(ステップS226)、その後、処理がステップS221〜ステップS223の待機状態に戻る(リターン)。
【0048】
ところで、演算結果メモリ機能部115に格納された差分データ116は、ヒートシンク141の「冷却性能データ」としての意味合いを持っている。冷却性能の判定原理としては、環境温度(エアインテーク辺りの平均値)と被測定物(ヒートシンク141の周辺の温度)との温度差に着目している。一般に、冷却装置は一定の発熱量を持つ発熱源から冷却性能分の熱量を外部へ放出することで、発熱源の温度を環境温度へ近づける機能を持っている。差分データ116が小さいほど、熱交換効率が高くヒートシンク141の「冷却性能」が高い。差分データ116が大きくなるほど、熱交換効率が低くヒートシンク141の「冷却性能」が低い。また、差分データ116の時間的な変化を見たとき、差分データ116の差が時間の経過に従って開いていったとすると、時間と共に冷却効率が下がっており、発熱障害が発生していたり、あるいは発熱障害の予兆が表われている可能性がある。
【0049】
図12に戻って説明を続ける。ヒートシンク141の「冷却性能」の時間的な変化を見るための変化演算タイミングが到来すると(ステップS221:N、ステップS222:Y)、変化演算機能部117は演算結果メモリ機能部115から差分データ118を時系列に沿って1つずつ読み出す(ステップS227)。変化演算機能部117はこの読み出した個々の差分データ118を時間軸に沿って1つずつ連結して、時系列変化データを生成する(ステップS228)。生成された時系列変化データ120は変化量メモリ機能部119に格納される(ステップS229)。この後、処理がステップS221〜ステップS223の待機状態に戻る(リターン)。このようにして、変化量メモリ機能部119には、「冷却性能」の時間的な変化を表わした時系列変化量データが蓄積されることになる。
【0050】
次に、アラーム出力のためのチェックが行われるタイミングとしての比較タイミングが到来した場合を説明する。本実施の形態では、周辺温度計測サーモセンサ107と環境温度計測サーモセンサ108から6分置きに計測データ131が取得されるので、6分置きに比較タイミングが到来する。この比較タイミングが到来すると(ステップS222:N、ステップS223:Y)、比較機能部121が変化演算機能部117から時間的に最も新しい差分データ122を読み出すと共に、変化量メモリ機能部119からその格納されている時系列変化データ123を読み出す。したがって、ステップS228で最新の時系列変化データを生成した時点をステップS223の比較タイミングとすれば、変化演算機能部117が受け取った最新の差分データ118を差分データ122として比較機能部121に供給すると共に、生成した時系列変化データ120を変化量メモリ機能部119に送出し、この時系列変化データ120を時系列変化データ123として比較機能部121に供給する。
【0051】
比較機能部121は、差分データ122と時系列変化データ123を取得すると、これらのデータ122、123が「冷却性能」に関するので、判定レベル保持レジスタ124から「冷却性能」に関する閾値125を読み出す。そして、閾値125との乖離度を比較することで、変化量の多寡を判定し、電子装置100の安定度合いを示す比較結果データ127を出力して(ステップS230)、処理を待機状態に戻す(リターン)。比較結果データ127が、電子装置100の障害の早期発見や障害の予兆の検知に該当する内容の場合、判定結果出力機能部126は、警報出力128として障害の予兆の検知の警報(以下、第2のアラームという。)を出力することになる。
【0052】
以上説明したように本実施の形態の障害監視装置101は、計測データ112に対応する第1のアラームと、比較結果データ127を基にした障害の予兆の検知の結果としての第2のアラームの2種類のアラームを出力することになる。これを更に具体的に説明する。
【0053】
障害監視装置101が測定する環境温度をTaとし、被測定物の温度をTbとする。また、冷却度をTdとし、電子装置100としての限界温度としての保証値をTltとする。判定結果出力機能部126は、次の(1)式を用いて冷却度Tdを算出する。
【0054】
Td=Tb−Ta ……(1)
【0055】
また、図11で示したように、計測データ112をデータメモリ機能部111にそれぞれ格納する時点で、次の(2)式により被測定物の温度Tbが保証値Tltを超過しているかを判別し、この条件を満たす事態になっていれば第1のアラームを警報出力128として出力する。
【0056】
Tb>Tlt ……(2)
【0057】
ところで、冷却度Tdは外気温としての環境温度Taや電子装置100の負荷の具合で多少の上下がある。そこで、時系列で変化を捉えることができるようにし、そのために冷却度Tdとして、ある程度の個数の値を冷却度Td1、Td2、Td3、……のように用意しておく。また、基準となる基準冷却度Tdsを設定しておく。ここで基準冷却度Tdsは、予め実機で収集して基準となる値を設定するか、電子装置100を最初の1日程度運転して、そのときの冷却度に関するデータを集めて平均値を採って基準冷却度Tdsとして設定する。
【0058】
この基準冷却度Tdsと、各冷却度Td1、Td2、Td3、……の変位量Tdis1、Tdis2、Tdis3、……を次の(3)式のように生成して保存する。
【0059】
Tds−Td1=Tdis1
Tds−Td2=Tdis2
Tds−Td3=Tdis3
…… ……(3)
【0060】
そして、たとえば1日単位で変位量Tdisの変化ΔTdisを計測する。ヒートシンク141やファン142等による冷却性能が維持されている限り、変位量の変化ΔTdis自体がマイナスにならない。一方、ファン142が汚損して冷却性能が低下すると、環境温度Taが低下している場合には変位量の変化ΔTdisがマイナスにならないときでも、環境温度Taが高くなってきたような場合に冷却性能が不十分となる。このような場合には、変位量の変化ΔTdisがマイナスに移行し始めることがある。そこで、変位量の変化ΔTdisがマイナスになった時点で、何らかの障害の予兆であるものとして、第2のアラームを警報出力128として出力する。
【0061】
このように第2のアラームは、異常温度が実際に検出されたときの警告通知という従来の手法と異なり、部品の経年変化や長期的な環境変化に対する部品や装置の性能の限界を知り、障害の発生前や障害がまだ認知されていない障害の初期段階で警報を出力する仕組みとして有効である。
【0062】
以上、電子装置100の発熱障害について説明した。次に、図10に示した音響センサ109を用いた障害検知について図10〜図12を用いて簡単に説明を行う。本実施の形態では音響センサ109自体がノイズキャンセリング機能を備えたものとなっており、電子装置100の外部に存在する音源の影響は無視することができるようになっている。
【0063】
まず、音に関する第1のアラームの出力に関しては、電子装置100の内部で発生する音が保証値を超過しているか(図11ステップS203)を判別することによって行われる。すなわち、保証値あるいは限界値を超過するような音が検出された場合には(ステップS203:Y)、第1のアラームが判定結果出力機能部126から警報出力128として出力される。本実施の形態の音響センサ109は、音をその可聴周波数における振幅と周波数という2つの成分で検出することができる。したがって、たとえば正常な運転では発生しない周波数領域で所定のレベル以上の音が検出された場合には、異常音が発生したものとして第1のアラームを出力する。
【0064】
次に音に関する第2のアラームの出力について説明する。図10に示す音響センサ109の出力についての差分演算のタイミングが到来すると(図12ステップS221:Y)、データメモリ機能部111から音響センサ109の出力する計測データ114の読み出しが行われる(ステップS224)。そして、音の振幅と周波数の差分をとるための差分データの演算が行われる(ステップS225)。これによって得られた差分データ116は、演算結果メモリ機能部115に格納され(ステップS226)。
【0065】
演算結果メモリ機能部115に格納された差分データは、ステップS227で時系列に沿って読み出され(ステップS227)、音に関する時系列変化データが生成される(ステップS228)。この時系列変化データ120を変化量メモリ機能部119に格納し(ステップS229)、比較タイミングが到来した時点で(ステップS223:Y)、比較機能部121が比較処理を実行する(ステップS230)。この比較処理では、差分データ118における差分の大きくなっていく過程を監視することで、ファン142や図示しないハードディスクといった可動部分を有する部品の劣化や不具合の進行の状況を把握することができ、所定の時点で第2のアラームを警報出力128として出力する。
【0066】
音響センサ109の場合でも、計測データの採取は、温度の場合と同様にたとえば6分置きといった間隔で行い、平均値を算出することが有効である。発熱の場合と比較すると、異音が発生しても電子装置100はその動作に早急に不都合を生じることが少ない。したがって、従来の電子装置100の多くでは、音による動作の監視を軽視し、異音の発生を見落としがちである。しかし障害の予兆として考えたとき、何らかの不具合が生じた結果として音に変化が生じるという点は見過ごすべきではない。また、音響センサ109は電子装置100に外部から加わった衝撃も音の変化として検知可能である。したがって、衝撃を急激な音の変化として捉えて、第2のアラームを警報出力128として出力することも可能である。
【0067】
なお、以上説明した実施の形態では、温度の検知と音の検知のそれぞれについて第2のアラームを個別に警報出力128として出力することにしたが、これらの論理積をとって両者がほぼ同じ時間帯に発生した場合には、更に重度の警報を出力するようにしてもよい。また、以上説明した実施の形態では、温度と音を検知対象としたが、電子装置の種類によっては光、磁気、電流、湿度といった他の物理現象を測定し、これらの差分データの経時的な変化をチェックして、第2のアラームを警報出力128として出力するものであってもよい。もちろん、この場合にもこれらのセンサの出力を単純に所定の閾値と比較して第1のアラームを出力することも可能である。
【0068】
以上説明した本実施の形態によれば、障害の発生前に動作状況や環境要因の変化を読み取って障害の予兆を警告することができるので、電子装置の稼働品質の向上を図ることができる。また、本実施の形態では、第2のアラームを出力できる構成となっていると共に第1のアラームも出力する構成となっている。したがって、第2のアラームが出力することなく障害が発生するような事態にも対処することができる。
【0069】
更に、本実施の形態によれば、障害が発生して第1のアラームが出力されて電子装置の修理に出向いた作業者は、その時点で第2のアラームが出ていれば、この第2のアラームの出力原因を探ることで、障害の特定を容易にしたり、具体的に発生した障害に対する修理だけでなく、次に生じる可能性のある障害への対応も採ることができる。また、定期点検の際に第2のアラームが出ているかの履歴を調べて対処することで、次の定期点検まで電子装置を健全に保つ確率を向上させることができ、保守管理のコストの低減と顧客のクレームの減少を図ることができる。更に、現実には障害に至らないような検知が行われたような場合に、電子装置のカバーを頻繁に開閉したことが衝撃音等の障害を予測させる音の発生の原因であったような場合には、ユーザにより良い環境で運用させるためのアドバイスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の電子装置の障害監視装置のクレーム対応図である。
【図2】本発明の他の電子装置の障害監視装置のクレーム対応図である。
【図3】本発明の更に他の電子装置の障害監視装置のクレーム対応図である。
【図4】本発明の電子装置の障害監視方法のクレーム対応図である。
【図5】本発明の他の電子装置の障害監視方法のクレーム対応図である。
【図6】本発明の更に他の電子装置の障害監視方法のクレーム対応図である。
【図7】本発明の電子装置の障害監視プログラムのクレーム対応図である。
【図8】本発明の他の電子装置の障害監視プログラムのクレーム対応図である。
【図9】本発明の更に他の電子装置の障害監視プログラムのクレーム対応図である。
【図10】本発明の実施の形態による障害監視装置を備えた電子装置の構成を表わしたブロック図である。
【図11】本実施の形態における計測データの受信処理の概要を表わした流れ図である。
【図12】本実施の形態の電子装置における障害の早期発見や障害の予兆の検知の処理の様子を表わした流れ図である。
【符号の説明】
【0071】
10、20、30 電子装置の障害監視装置
11 測定手段
12、33 差分演算手段
13、35 比較手段
14、27、36 障害予測警告手段
21 冷却手段
22 所定部位温度測定手段
23 環境温度測定手段
24、32 サンプリング手段
25 冷却度演算手段
26 冷却度変化データ作成手段
31、109 音響センサ
34 変化データ作成手段
40、50、60 電子装置の障害監視方法
41 測定ステップ
42、62 差分演算ステップ
43、64 比較ステップ
44、54、65 障害予測警告ステップ
51 測定データ取得ステップ
52 冷却度演算ステップ
53 冷却度変化データ作成ステップ
61 データサンプリングステップ
63 変化データ作成ステップ
70、80、90 電子装置の障害監視プログラム
71 測定処理
72、92 差分演算処理
73、94 比較処理
74、84、95 障害予測警告処理
81、91 サンプリング処理
82 冷却度演算処理
83 冷却度変化データ作成処理
93 変化データ作成処理
100 電子装置
101 障害監視装置
102 中央制御機能部
103 CPU
104 メモリ
106 センサ入力回路
107 周辺温度計測サーモセンサ
108 環境温度計測サーモセンサ
113 差分演算機能部
117 変化演算機能部
119 変化量メモリ機能部
121 比較機能部
124 判定レベル保持レジスタ
126 判定結果出力機能部
128 警報出力(アラーム)
141 ヒートシンク
142 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定手段と、
この測定手段から得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算手段と、
この差分演算手段によって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較手段と、
この比較手段によって前記所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告手段
とを具備することを特徴とする電子装置の障害監視装置。
【請求項2】
電子装置内部の温度を冷却する冷却手段と、
この冷却手段によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段と、
前記電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段と、
前記環境温度測定手段および前記所定部位温度測定手段から時間を置いてそれぞれの測定データを繰り返し取得するサンプリング手段と、
このサンプリング手段を用いてそれぞれのサンプリングの時点で取得した2種類の前記測定データの差分としての温度差を求めることで前記冷却手段の前記サンプリングの時点における冷却度を演算する冷却度演算手段と、
この冷却度演算手段の演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成手段と、
この冷却度変化データ作成手段で作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき前記冷却手段の冷却に関する警告を発する障害予測警告手段
とを具備することを特徴とする電子装置の障害監視装置。
【請求項3】
音響センサと、
この音響センサから時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するサンプリング手段と、
このサンプリング手段を用いて取得した2種類の前記測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算手段と、
この差分演算手段の演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成手段と、
この変化データ作成手段で作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較手段と、
この比較手段によって前記所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告手段
とを具備することを特徴とする電子装置の障害監視装置。
【請求項4】
障害の発生を検知する障害発生検知手段と、この障害発生検知手段が障害の発生を検知したとき警告を発する障害発生警告手段とを更に具備することを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかに記載の電子装置の障害監視装置。
【請求項5】
前記音響センサは自装置以外の場所で発生した音の影響を抑制するノイズキャンセラ回路を備えていることを特徴とする請求項3記載の電子装置の障害監視装置。
【請求項6】
予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定ステップと、
この測定ステップで得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算ステップと、
この差分演算ステップによって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較ステップと、
この比較ステップにより前記所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告ステップ
とを具備することを特徴とする電子装置の障害監視方法。
【請求項7】
電子装置内部の温度を冷却する冷却手段によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段と、前記電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段とから時間を置いて各サンプリング時にそれぞれの測定データを取得する測定データ取得ステップと、
この測定データ取得ステップで取得した2種類の前記測定データの差分としての温度差を求めることで前記冷却手段の前記サンプリング時における冷却度を演算する冷却度演算ステップと、
この冷却度演算ステップでの演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成ステップと、
この冷却度変化データ作成ステップで作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき前記冷却手段の冷却に関する警告を発する障害予測警告ステップ
とを具備することを特徴とする電子装置の障害監視方法。
【請求項8】
電子装置に備えられた音響センサから時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するデータサンプリングステップと、
このデータサンプリングステップで取得した2種類の前記測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算ステップと、
この差分演算ステップでの演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成ステップと、
この変化データ作成ステップで作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較ステップと、
この比較ステップによって前記所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告ステップ
とを具備することを特徴とする電子装置の障害監視方法。
【請求項9】
コンピュータに、
予め定めた複数種類の物理現象に関して時間を置いて繰り返し測定する測定処理と、
この測定処理で得られる予め定めた2種類の物理現象の測定データについてこれらの差分を演算する差分演算処理と、
この差分演算処理によって演算した差分の演算結果を時系列に配置しその演算結果の経時的な変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較処理と、
この比較処理によって前記所定の安全範囲を超える演算結果の変化があったことが判別されたとき警告を発する障害予測警告処理
とを実行させることを特徴とする電子装置の障害監視プログラム。
【請求項10】
電子装置内部の温度を冷却する冷却手段と、この冷却手段によって冷却する所定部位の温度を測定する所定部位温度測定手段と、前記電子装置の設置されている場所の環境温度を測定する環境温度測定手段とを備えたコンピュータに、
前記環境温度測定手段および前記所定部位温度測定手段から時間を置いてそれぞれの測定データを繰り返し取得するサンプリング処理と、
このサンプリング処理によってそれぞれのサンプリングの時点で取得した2種類の前記測定データの差分としての温度差を求めることで前記冷却手段の前記サンプリングの時点における冷却度を演算する冷却度演算処理と、
この冷却度演算処理による演算結果を時系列に配置し、冷却度の時間的な変化の様子を示す冷却度変化データを作成する冷却度変化データ作成処理と、
この冷却度変化データ作成処理で作成した冷却度変化データから所定の環境温度以上で冷却度が環境温度の上昇に応じて上昇しないことが判別されたとき前記冷却手段の冷却に関する警告を発する障害予測警告処理
とを実行させることを特徴とする電子装置の障害監視プログラム。
【請求項11】
電子装置に音響センサを備えたコンピュータに、
前記音響センサから時間を置いて音の振幅を示す振幅データと音の周波数を示す周波数データをそれぞれ測定データとして繰り返し取得するサンプリング処理と、
このサンプリング処理で取得した2種類の前記測定データの差分をそれぞれ演算する差分演算処理と、
この差分演算処理による演算結果を時系列に配置し、音を振幅と周波数で表わす変化データを作成する変化データ作成処理と、
この変化データ作成処理で作成した変化データの示す変化を、障害が発生しないと見なせる予め定めた所定の安全範囲と比較する比較処理と、
この比較処理によって前記所定の安全範囲を超える変化データの変化があったことが判別されたとき音の発生に関する警告を発する障害予測警告処理
とを実行させることを特徴とする電子装置の障害監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−134525(P2010−134525A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307383(P2008−307383)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)
【Fターム(参考)】