説明

電子装置

【課題】基板の一面上に電子部品をはんだ接続し、電子部品と基板との間にアンダーフィル樹脂を充填してなる電子装置において、電子部品の大型化により電子部品と基板とのギャップが異なっても、アンダーフィル樹脂の領域を一定に確保できるようにする。
【解決手段】基板10の一面10aのうち電子部品20が搭載される領域の外周に、当該一面10aから突出するダム50を、当該領域を取り囲むように配置し、アンダーフィル樹脂40をダム50の内周に収容し、ダム50の表面に、電子部品20におけるはんだ30との接続部以外の表面よりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さい濡れ性低下部51を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の一面上に電子部品をはんだ接続し、電子部品と基板との間にアンダーフィル樹脂を充填してなる電子装置に関し、特に10mm□以上の大型の電子部品をはんだ接続する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の電子装置としては、フェースダウンで実装する半導体素子(たとえばフリップチップ、CSPなど)、および、面実装タイプのチップ部品(たとえばセラミックコンデンサ、セラミック抵抗、トランジスタやダイオードなどのミニモールド、SOPなど)を、セラミック基板に、はんだを介して接続し実装してなるものが、一般的に知られている。
【0003】
しかしながら、これら電子部品と基板との熱膨張係数差から熱ストレスにより接続部信頼性が劣る。そのため、接続部の信頼性を上げるべく、エポキシ樹脂等のアンダーフィル樹脂によって基板と電子部品との間を充填することが行われている(たとえば、特許文献1参照)。この場合、一般には、はんだ接続された基板−部品間に、アンダーフィル樹脂を定量注入する。
【特許文献1】特開2006−351559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、製品の高機能化により、電子部品としては、上記した従来の小型部品以外にも、アルミ電解コンデンサやインダクタなどの10mm□以上の平面形状を有する大型の電子部品を、直接、セラミック基板にはんだ実装する場合がある。
【0005】
本発明者は、このような大型電子部品をはんだ接続した場合においても、従来と同様に、接続部の信頼性を上げるべく、部品と基板との間にアンダーフィル樹脂を充填することを考え、試作検討を行った。
【0006】
図10(a)、(b)は、本発明者が検討のために、従来技術に基づいて試作した電子装置の概略断面図である。この試作品としての電子装置において、電子部品20は10mm□以上の平面形状を有する大型のものである。
【0007】
そして、電子部品20は、基板10の一面10a上にはんだ30を介して搭載され、電子部品20の電極21と基板10の電極11とが、はんだ30によって電気的・機械的に接続されている。また、電子部品20と基板10との間にはアンダーフィル樹脂40が充填されている。
【0008】
ここで、本発明者の検討によれば、このような大型電子部品20の場合、部品面積が大きく、かつ部品の公差が大きいことから、部品−基板間のギャップが著しく異なるため、従来のアンダーフィル樹脂のように、定量注入で充填した場合、以下のような問題点が発生する。
【0009】
アンダーフィル樹脂40の量を厳しく制御した場合は、信頼性に問題の無い構造が可能であるが、たとえば、図10(a)に示されるように、組付け高さが高く部品−基板間のギャップが大きくなった場合は、アンダーフィル樹脂40の未充填部分K1が発生し、信頼性劣化を引き起こす。
【0010】
また、図10(b)に示されるように、組付け高さが低く上記ギャップが小さくなった場合には、アンダーフィル樹脂40のつながりK2が発生し、熱ストレスによる樹脂クラックから接続部への信頼性劣化が懸念される。更に、ベアチップのワイヤボンディング、検査用のランド等に対して、樹脂40がかぶると問題があるため、樹脂40のエリアはできる限り小さくしておくことが高密度実装においては望ましい。
【0011】
従来では、電子部品の部品面積は小さく組付けギャップのばらつきも小さかったため、一定量の樹脂を充填しても樹脂の形状がばらつくことはなかった。しかし、本発明者の検討によれば、上記した大型電子部品の場合、部品−基板間の体積で最大±40%ばらつく。そのため、上記図10に示したように、一定量の樹脂量を塗布しても上記ギャップのばらつきにより、部品露出や樹脂つながりが発生し、信頼性を損なうと考えられる。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、基板の一面上に電子部品をはんだ接続し、電子部品と基板との間にアンダーフィル樹脂を充填してなる電子装置において、電子部品の大型化により電子部品と基板とのギャップが異なっても、アンダーフィル樹脂の領域を一定に確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、基板(10)の一面(10a)のうち電子部品(20)が搭載される領域の外周に、当該一面(10a)から突出するダム(50)を、当該領域を取り囲むように配置し、アンダーフィル樹脂(40)を、ダム(50)の内周に収容し、ダム(50)の表面に、アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性を低下させる濡れ性低下部(51)を設けたことを、第1の特徴とする。
【0014】
それによれば、アンダーフィル樹脂(40)の周辺へのはみ出しは、ダム(50)によって防止される。特に、本発明では、ダム(50)の表面にてアンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性を低くしているため、単純にダムを設けた場合よりも、アンダーフィル樹脂(40)がダム(50)を乗り越えにくくなる。したがって、本発明によれば、電子部品(20)の大型化により電子部品(20)と基板(10)とのギャップが異なっても、アンダーフィル樹脂(40)の領域を一定に確保することができる。
【0015】
ここにおいて、濡れ性低下部(51)は、電子部品(20)におけるはんだ(30)との接続部以外の表面よりもアンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さいものにできる。
【0016】
それによれば、アンダーフィル樹脂(40)が、ダム(50)よりも電子部品(20)の表面に沿って這い上がりやすくなるため、アンダーフィル樹脂(40)がダム(50)を乗り越えるのを防止しやすくできる。
【0017】
ここで、このように濡れ性の小さい濡れ性低下部(51)としては、ダム(50)の表面に、電子部品(20)の表面よりもアンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料をコーティングしたものであってもよいが(後述の図6参照)、ダム(50)の全体を、電子部品(20)の表面よりもアンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料より形成し、ダム(50)の表面に位置する当該材料により濡れ性低下部(51)を構成するものであってもよい(後述の図1等参照)。
【0018】
また、ダム(50)としては、基板(10)の一面(10a)側に設けられた第1のダム部(50a)と、第1のダム部(50a)の上に設けられ第1のダム部(50a)よりもアンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料よりなる第2のダム部(50b)とにより構成された2層構造を有するものであって、第2のダム部(50b)の表面が濡れ性低下部(51)を構成しているものにできる(後述の図7参照)。
【0019】
この場合、第1のダム部(50a)については、一般的な樹脂ダムの材料を用いることができ、コスト低減などが期待される。
【0020】
そして、この場合にも、第2のダム部(50b)を構成する材料としては、電子部品(20)におけるはんだ(30)との接続部以外の表面よりもアンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料を採用することができる。
【0021】
また、電子部品(20)と基板(10)とが対向する部位において電子部品(20)および基板(10)のいずれか一方に、突起(60)を設け、この突起(60)により電子部品(20)と基板(10)との距離を一定に確保すれば(後述の図9参照)、アンダーフィル樹脂(40)の厚さを一定にして樹脂量のばらつきを極力低減するうえで好ましい構成が提供される。
【0022】
また、上記第1の特徴を有する電子装置においては、電子部品(20)は10mm□以上の平面形状を有するものであるものにできる。
【0023】
本発明は、電子部品(20)を、10mm□以上の平面形状を有するものとし、基板(10)の一面(10a)のうち電子部品(20)が搭載される領域の外周に、当該一面(10a)から突出するダム(50)を、当該領域を取り囲むように配置し、アンダーフィル樹脂(40)を、ダム(50)の内周に収容したことを、第2の特徴とする。
【0024】
それによれば、アンダーフィル樹脂(40)の周辺へのはみ出しは、ダム(50)によって防止されるため、10mm□以上の平面形状を有する大型の電子部品(20)を用いることで、電子部品(20)の大型化により電子部品(20)と基板(10)とのギャップが異なっても、アンダーフィル樹脂(40)の領域を一定に確保することができる。
【0025】
ここにおいて、ダム(50)の表面に、アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性を低下させる濡れ性低下部(51)を設ければ、ダム(50)のアンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さくなり、アンダーフィル樹脂(40)がダム(50)を乗り越えて周辺へはみ出すのを抑制しやすくなる。
【0026】
この濡れ性低下部(51)としては、電子部品(20)におけるはんだ(30)との接続部以外の表面よりもアンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さいものにできる。この場合も、アンダーフィル樹脂(40)は、ダム(50)よりは電子部品(20)の表面に沿って這い上がりやすくなるため、アンダーフィル樹脂(40)のダム(50)の乗り越えを防止しやすくできる。
【0027】
また、この場合も、電子部品(20)の表面よりも濡れ性の小さい濡れ性低下部(51)としては、ダム(50)の全体を上記濡れ性が小さい材料より形成したものにより構成してもよいし、上記したような第1のダム部(50a)および第2のダム部(50b)の2層構造における第2のダム部(50b)により構成してもよい。
【0028】
また、上記第2の特徴を有する電子装置においても、電子部品(20)と基板(10)とが対向する部位において電子部品(20)および基板(10)のいずれか一方に、電子部品(20)と基板(10)との距離を一定に確保するための突起(60)を設ければ、アンダーフィル樹脂(40)の厚さを一定にして樹脂量のばらつきを極力低減するうえで好ましい。
【0029】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0031】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る電子装置S1を示す概略断面図である。図2は、同電子装置を図1の上方から見た概略平面図であり、(a)はアンダーフィル樹脂40を省略した状態、(b)はアンダーフィル樹脂40が存在する状態を示す。基板10の一面10a上に電子部品20が搭載され、基板10の電極11と電子部品20の電極21とがはんだ30を介して電気的に接続されている。
【0032】
基板10は、セラミック基板やプリント基板、あるいはリードフレーム等を採用することができ、特に限定されるものではない。基板10の電極11は、基板10の一面10aに形成されており、例えば、Ag、AgSnおよびAgPd等のAg系金属や、CuおよびCuNi等のCu系金属や、Ni系金属、あるいはAu等の材料を用いた厚膜やめっきから構成されたものである。
【0033】
電子部品20は、10mm□以上の平面形状を有する大型の電子部品である。ここで、10mm□以上の平面形状とは、10m×10mの正方形と同じ平面か、もしくは当該正方形よりも一回り大きい平面であって当該正方形が当該平面の中に入り込むような外形を有する平面のことを意味する。
【0034】
具体的に、このような電子部品20としては、たとえばアルミ電解コンデンサやインダクタなどが挙げられる。また、電子部品20の電極21の金属としては、Au系金属、Ag系金属、Ni系金属、Sn系金属等が用いられる。
【0035】
そして、はんだ30としては、この種の電子装置に一般に用いられるはんだ材料が用いられる。具体的には、共晶はんだや鉛フリーはんだなどが採用される。また、アンダーフィル樹脂40は、電子部品20と基板10との間に充填されており、これら部品−基板間にてはんだ30を封止するように配置されている。
【0036】
このようなアンダーフィル樹脂40は、従来より半導体装置の分野にて用いられる一般的なものであり、たとえばエポキシ樹脂などよりなる。ここで、このアンダーフィル樹脂40には、通常のものと同じくシリカなどの無機材料よりなるフィラーが含まれていてもよいし、全く含まれなくてもよい。
【0037】
ここで、本電子装置S1においては、基板10の一面10aのうち電子部品20が搭載される領域の外周には、当該一面10aから突出するダム50が、当該領域を取り囲むように配置されている。つまり、基板10の一面10aには、電子部品20を取り囲む環状のダム50が設けられている。ここでは、図2に示されるように、ダム50の平面形状は矩形枠状をなしている。
【0038】
そして、アンダーフィル樹脂40の上面のほぼ全体は、ダム50の頂部よりも低くなっており、アンダーフィル樹脂40はダム50の内周に収容されている。ここで、ダム50は、樹脂、セラミックあるいは金属などよりなり、材質に応じて、ディスペンスや印刷などによる塗布・硬化、あるいは、スパッタ、蒸着などの手法を用いて形成されるものである。
【0039】
また、本実施形態では、ダム50の表面には、アンダーフィル樹脂40に対する濡れ性を低下させる濡れ性低下部51が設けられている。ここでは、濡れ性低下部51は、電子部品20におけるはんだ30との接続部以外の表面よりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さいものである。
【0040】
ここで、電子部品20におけるはんだ30との接続部とは、電子部品20の電極21における基板10の電極11と対向する対向面である。この接続部としての電極21の対向面は、上記したように金属である。
【0041】
そして、電子部品20におけるはんだ30との接続部以外の表面とは、電子部品20の表面のうちこの電極21の対向面を除く表面であり、具体的には、図1に示されるように、電子部品20における電極21の側面21a、および、電極21以外の本体部分の表面20aである。
【0042】
ここで、電子部品20の電極21の側面21aは、一般のものと同様に、エポキシ樹脂やセラミックなどの膜でコーティングされたものであり、また、本体部分の表面20aは、金属、セラミックやモールド樹脂などよりなる。そして、ダム50の表面は、これら電子部品20の表面20a、21aよりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さいものとなっている。
【0043】
本実施形態では、ダム50の全体が、電子部品20の表面20a、21aよりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さい材料よりなり、ダム50の表面に位置する当該材料により濡れ性低下部51が構成されている。
【0044】
電子部品20の表面20a、21aの材質等により適宜変更されるが、このようなダム50を構成する濡れ性が小さい材料としては、たとえば、フッ素系樹脂、フッ素ゴム、シリコーン系樹脂、シリコーンゴムなどの樹脂、ニッケルなどの金属、アルミナなどのセラミックから選択された材料が挙げられる。
【0045】
このような電子装置S1は、次のようにして作られる。一面10aに電極11が形成された基板10において、当該一面10aにダム50を形成し、そのダム50の内周にはんだ30を介して電子部品20を接続する。なお、ここまでの状態が図2(a)に示されている。
【0046】
その後、電子部品20と基板10との隙間に対して、電子部品20の側面側からアンダーフィル樹脂40を注入し、これを硬化させる。こうして、図1および図2(b)に示されるように、基板10の一面10a上に電子部品20をはんだ接続し、電子部品20と基板10との間にアンダーフィル樹脂40を充填してなる本実施形態の電子装置S1ができあがる。
【0047】
ところで、本実施形態によれば、基板10の一面10aのうち電子部品20が搭載される領域の外周に、当該領域を取り囲むようにダム50を配置しており、アンダーフィル樹脂40がダム50の内周に収容されるように構成しているため、アンダーフィル樹脂40の周辺へのはみ出しは、ダム50によって防止される。
【0048】
特に、本実施形態では、ダム50の表面にて、上述したようにアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性を低くしているため、単純に樹脂よりなるダムを設けた場合よりも、アンダーフィル樹脂40がダム50を乗り越えにくくなる。
【0049】
そのため、本実施形態のように、10mm□以上の平面形状を有する大型の電子部品20を用いることで、上記したように、電子部品20の大型化による電子部品20と基板10とのギャップのばらつきが大きくなり、当該ギャップが異なったとしても、アンダーフィル樹脂40の領域をダム50の内周の領域の範囲とすることができる。
【0050】
また、濡れ性低下部51は、電子部品20におけるはんだ30との接続部以外の表面20a、21aよりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さいものであるため、アンダーフィル樹脂40に隣り合うダム50の表面と電子部品20の表面とでは、電子部品20の表面の方が、アンダーフィル樹脂40に濡れやすい。
【0051】
このことから、ダム50と電子部品20との間に位置するアンダーフィル樹脂40の高さが高くなった場合に、アンダーフィル樹脂40は、ダム50よりも電子部品20の表面20a、21aに沿って這い上がりやすくなるため、アンダーフィル樹脂40がダム50を乗り越えていくのが防止される。
【0052】
実際に、図1に示されるように、基板10の一面10a上におけるアンダーフィル樹脂40は、電子部品20の表面20a、21aに沿って這い上がっており、その這い上がっているアンダーフィル樹脂40における最も高い部分は、ダム50の頂部よりも上方に位置している。
【0053】
ここで、限定するものではないが、本実施形態における各部寸法の具体的な例について図3を参照して述べる。上述したが、10mm□以上の平面形状を有する大型の電子部品20の場合、部品−基板間の体積で最大±40%ばらつく。
【0054】
ここで、図3(a)は、この体積ばらつきが−40%、つまり電子部品20と基板10とのギャップHinが最小となった場合を示し、図3(b)は、この体積ばらつきが+40%、つまり電子部品20と基板10とのギャップHinが最大となった場合を示す。そして、このギャップHinのばらつきに対応する具体的な数値例を示す。
【0055】
電子部品20は平面が10mm□の正方形をなすものとし、電子部品20と基板10とのギャップHinの標準値を130μm、ダム50の高さHdを1.0mm、ダム50と電子部品20との距離dを0.5mmとする。また、アンダーフィル樹脂40の比重を1.75とし、アンダーフィル樹脂40は、ギャップHinのばらつきによらず40mgの定量注入とする。
【0056】
たとえば、標準のギャップHinでは、電子部品20の下に位置するアンダーフィル樹脂40の体積、重量、厚さHinはそれぞれ13.00mm3、22.75mg、0.13mm、電子部品20の外側に位置するアンダーフィル樹脂40の体積、重量、厚さHoutはそれぞれ9.86mm3、17.25mg、0.47mmである。
【0057】
また、図3(a)に示されるような最小のギャップHinでは、電子部品20の下に位置するアンダーフィル樹脂40の体積、重量、厚さHinはそれぞれ7.80mm3、13.65mg、0.08mm、電子部品20の外側に位置するアンダーフィル樹脂40の体積、重量、厚さHoutはそれぞれ15.06mm3、26.35mg、0.72mmである。
【0058】
また、図3(b)に示されるような最大のギャップHinでは、電子部品20の下に位置するアンダーフィル樹脂40の体積、重量、厚さHinはそれぞれ18.20mm3、31.85mg、0.18mm、電子部品20の外側に位置するアンダーフィル樹脂40の体積、重量、厚さHoutはそれぞれ4.66mm3、8.15mg、0.22mmである。
【0059】
つまり、10mm□程度の平面形状を有する電子部品20の場合、ダム50の高さHdを1.0mm、ダム50と電子部品20との距離dを0.5mmとすれば、40mgのアンダーフィル樹脂40の定量注入を行ったときに、ギャップHinが異なっても、アンダーフィル樹脂40のはみ出しを防止できる。
【0060】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。上記第1実施形態では、上記図1に示されるように、電子部品20におけるはんだ30との接続部、すなわち、電子部品20の電極21の上記対向面がダム50の頂部よりも低い例を示したが、図4に示されるように、この電子部品20の電極21の上記対向面がダム50の頂部よりも高いものであってもよい。
【0061】
この場合でも、この電子部品20の電極21の対向面の位置以外の構成については、上記第1実施形態と同様であり、それによって、本実施形態の電子装置においても、電子部品20の大型化により電子部品20と基板10とのギャップが異なっても、アンダーフィル樹脂40の領域を一定に確保することができる。
【0062】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係るアンダーフィル樹脂40の注入方法を示す概略断面図である。なお、図5では、基板10の電極11、電子部品20の電極21、および、はんだ30は省略してある。
【0063】
上述したように、電子部品20と基板11とをはんだ30を介して接続した後、電子部品20と基板10との隙間に対して、電子部品20の側面側からアンダーフィル樹脂40を注入し、これを硬化させる。
【0064】
このとき、本実施形態の注入方法では、ダム50と電子部品20との間に位置するアンダーフィル樹脂40の厚さ、すなわち、電子部品20の外側に位置するアンダーフィル樹脂40の厚さHoutを、モニターしながら樹脂40の注入を行う。
【0065】
この厚さHoutのモニターは、レーザなどを用いて容易に行える。そして、この厚さHoutが一定となるように、アンダーフィル樹脂40を注入する。たとえば、電子部品20と基板10とのギャップHinが厚い場合でも、薄い場合でも、厚さHoutが一定となるように、アンダーフィル樹脂40の注入量を変える。
【0066】
それにより、電子部品20と基板10とのギャップHinが、ばらついたとしても、厚さHoutを一定にすることができる。なお、本実施形態の注入方法は上記各実施形態および後述する各実施形態に適用可能である。
【0067】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、図6では、基板10の電極11、電子部品20の電極21、および、はんだ30は省略してある。本実施形態は、ダム50における上記濡れ性の小さい濡れ性低下部51を変形したものであり、それ以外の部分は、上記各実施形態と同様のものにできる。
【0068】
上記濡れ性低下部51としては、上記各実施形態に示したように、ダム50の全体を、電子部品20の表面20a、21aよりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さい材料より形成し、当該材料により濡れ性低下部51を構成するものであってもよいが、ダム50本体の表面に別体の膜を設けたり、当該表面に濡れ性低下処理を行うなどにより、濡れ性低下部51を形成してもよい。
【0069】
具体的に別体の膜とする場合には、ダム50の表面に、電子部品20の表面20a、21aよりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さい材料をコーティングすればよい。図6には、このコーティング膜としての濡れ性低下部51が示されている。
【0070】
この場合、濡れ性低下部51の内側部分、すなわちダム50の本体部分は、上記濡れ性が小さい材料を用いなくてもよく、たとえば一般的なエポキシ樹脂などの樹脂により構成できる。そして、濡れ性低下部51としては、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂あるいはパラフィン系ワックスをコーティングしたものや、フッ素系コーティング剤、フッ素系シランカップリング剤、さらには、ニッケルメッキなどが挙げられる。
【0071】
また、ダム50本体の表面に濡れ性低下処理を行う場合は、当該表面をサンドブラストなどで物理的に荒らしたり、あるいは薬品などで化学的に荒らすなどの粗化処理を行ってもよい。この場合、この粗化されたダム50の表面により、濡れ性低下部51が構成されることとなる。
【0072】
このような本実施形態の濡れ性低下部51を有するダム50によっても、上記実施形態と同様に、アンダーフィル樹脂40がダム50を乗り越えるのを防止しやすくできる。そして、電子部品20の大型化により電子部品20と基板10とのギャップが異なっても、アンダーフィル樹脂40の領域を一定に確保することができる。
【0073】
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、図7では、基板10の電極11、電子部品20の電極21、および、はんだ30は省略してある。本実施形態も、上記濡れ性低下部51を変形したものであり、それ以外の部分は、上記各実施形態と同様のものにできる。
【0074】
本実施形態のダム50は、基板10の一面10a側に設けられた第1のダム部50aと、第1のダム部50aの上に設けられた第2のダム部50bとにより構成された2層構造を有する。ここで、第2のダム部50bは、第1のダム部50aよりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さい材料よりなる。
【0075】
そして、本実施形態においては、ダム50の表面のうち第2のダム部50bの表面が濡れ性低下部51として構成されている。第2のダム部50bを構成する材料は、第1のダム部50aよりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さい材料であればよいが、望ましくは、上記同様の電子部品20におけるはんだ30との接続部以外の表面よりもアンダーフィル樹脂40に対する濡れ性が小さい材料がよい。
【0076】
たとえば、第1のダム部50aは一般的なエポキシ樹脂により形成し、その上に、塗布・硬化などによりフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂などよりなる第2のダム部50bを形成すればよい。また、可能ならば、第2のダム部50bは、セラミックや金属などであってもよい。
【0077】
このように、第1のダム部50aについては、一般的な樹脂ダムの材料を用いることができ、ダム50全体を上記濡れ性が小さい材料で形成する場合に比べて、材料コストの低減が期待される。
【0078】
また、本実施形態のダム50によっても、上記実施形態と同様に、アンダーフィル樹脂40がダム50を乗り越えるのを防止でき、電子部品20の大型化により電子部品20と基板10とのギャップが異なっても、アンダーフィル樹脂40の領域をダム50の内周領域の範囲に留めることができる。
【0079】
なお、本実施形態の2層構造のダム50においては、第1のダム部50aと第2のダム部50bとの間に、第3の層が介在していてもよい。この第3の層は複数層でもよい。いずれにせよ、本実施形態によれば、アンダーフィル樹脂40は、第1のダム部50aの表面では這い上がるが、第2のダム部50bの表面では這い上がりが抑制され、はみ出し防止がなされる。
【0080】
(第6実施形態)
図8は、本発明の第6実施形態に係る電子装置の要部を示す概略平面図であり、ダム50の平面形状を示す図である。
【0081】
本実施形態は、基板10の一面10aにて、ダム50を格子状に設け、大型の電子部品20を複数個実装する場合に高密度に実装できるようにしたものである。この場合、格子状のダム50における各格子の内周部に電子部品20を配置することになり、図8に示される例では、4個の格子の内周部に対して、それぞれ電子部品20を実装することが可能である。
【0082】
ここで、本実施形態のダム50としては、上記した各実施形態に示した各種のダム50を採用することができる。つまり、上記各種のダム50を用いて、図8のような格子状の配置パターンとすることができる。
【0083】
(第7実施形態)
図9は、本発明の第8実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、図9においては、基板10の電極11、電子部品20の電極21、および、はんだ30は省略してある。
【0084】
本実施形態では、図9に示されるように、電子部品20と基板10とが対向する部位において、電子部品20および基板10のいずれか一方に、突起60を設けている。図9(a)では、電子部品20に、基板10に向かって突出する突起60が設けられており、図9(b)では、基板10の一面10aに、電子部品20に向かって突出する突起60が設けられている。
【0085】
この突起60は、電子部品20や基板10の一面10aに樹脂を塗布・硬化したり、電子部品20や基板10の表面をエッチングやプレスなどによって凹凸加工したりすることによって、形成される。つまり、突起60は、電子部品20や基板10と別体に形成されたものでもよいし、一体に形成されたものでもよい。
【0086】
そして、この突起60によって、電子部品20と基板10との距離が一定に確保されている。つまり、突起60がスペーサとして機能し、突起60の高さが、実質的に電子部品20と基板10とのギャップに相当するものとなっている。
【0087】
本実施形態は、このように突起60を形成するものであり、上記した各実施形態と組み合わせて適用することが可能である。そして、本実施形態によれば、上記した各実施形態の効果を奏しつつ、アンダーフィル樹脂40の厚さを一定にして樹脂量のばらつきを極力低減することができる。
【0088】
(他の実施形態)
なお、電子部品20としては、上記した10mm□以上の平面形状を有する大型のもの以外にも、それよりも小型のもの、たとえばコンデンサや抵抗、半導体素子等の従来の一般的な小型部品を採用してもよい。
【0089】
また、濡れ性低下部51は、ダム50の表面に設けられていればよく、上記実施形態以外にも、ダム50の内部形状等は、適宜変更が可能である。また、ダム50の断面形状が、上記実施形態では、かまぼこ形状であったが、四角形状や三角形状などでもよい。また、ダム50の平面配置パターンについては、電子部品20を取り囲む環状をなすものであればよく、上記のような矩形枠状以外の形状でもよい。
【0090】
また、上記各実施形態では、電子部品20と基板10とは、それぞれに設けられた電極11、21にてはんだ30を介して接続されていたが、電子部品と基板とははんだを介して接続されればよく、上記したような電極による接続以外にも、単に機械的に接続するだけの形態であってもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の電子装置の概略平面図であり、(a)はアンダーフィル樹脂を省略した状態、(b)はアンダーフィル樹脂が存在する状態を示す。
【図3】第1実施形態に係る電子装置における各部寸法を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るアンダーフィル樹脂の注入方法を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る電子装置の要部を示す概略平面図である。
【図9】本発明の第8実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図10】本発明者が試作した電子装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0092】
10…基板、10a…基板の一面、20…電子部品、30…はんだ、
40…アンダーフィル樹脂、50…ダム、50a…第1のダム部、
50b…第2のダム部、51…濡れ性低下部、60…突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)と、
前記基板(10)の一面(10a)上にはんだ(30)を介して搭載され前記はんだ(30)によって前記基板(10)と接続された電子部品(20)と、
前記電子部品(20)と前記基板(10)との間に充填されたアンダーフィル樹脂(40)とを備え、
前記基板(10)の一面(10a)のうち前記電子部品(20)が搭載される領域の外周には、当該一面(10a)から突出するダム(50)が、当該領域を取り囲むように配置されており、
前記アンダーフィル樹脂(40)は、前記ダム(50)の内周に収容されており、
前記ダム(50)の表面には、前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性を低下させる濡れ性低下部(51)が設けられていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記濡れ性低下部(51)は、前記電子部品(20)における前記はんだ(30)との接続部以外の表面よりも前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さいものであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記ダム(50)の全体が、前記電子部品(20)の前記表面よりも前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料よりなり、前記ダム(50)の表面に位置する当該材料により前記濡れ性低下部(51)が構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記ダム(50)は、前記基板(10)の一面(10a)側に設けられた第1のダム部(50a)と、前記第1のダム部(50a)の上に設けられ前記第1のダム部(50a)よりも前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料よりなる第2のダム部(50b)とにより構成された2層構造を有するものであり、
前記第2のダム部(50b)の表面が前記濡れ性低下部(51)を構成していることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
前記第2のダム部(50b)を構成する材料は、前記電子部品(20)における前記はんだ(30)との接続部以外の表面よりも前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料であることを特徴とする請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記電子部品(20)と前記基板(10)とが対向する部位において前記電子部品(20)および前記基板(10)のいずれか一方に、突起(60)が設けられ、この突起(60)により前記電子部品(20)と前記基板(10)との距離が一定に確保されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項7】
前記電子部品(20)は10mm□以上の平面形状を有するものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項8】
基板(10)と、
前記基板(10)の一面(10a)上にはんだ(30)を介して搭載され前記はんだ(30)によって前記基板(10)と接続された電子部品(20)と、
前記電子部品(20)と前記基板(10)との間に充填されたアンダーフィル樹脂(40)とを備える電子装置において、
前記電子部品(20)は10mm□以上の平面形状を有するものであり、
前記基板(10)の一面(10a)のうち前記電子部品(20)が搭載される領域の外周には、当該一面(10a)から突出するダム(50)が、当該領域を取り囲むように配置されており、
前記アンダーフィル樹脂(40)は、前記ダム(50)の内周に収容されていることを特徴とする電子装置。
【請求項9】
前記ダム(50)の表面には、前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性を低下させる濡れ性低下部(51)が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の電子装置。
【請求項10】
前記濡れ性低下部(51)は、前記電子部品(20)における前記はんだ(30)との接続部以外の表面よりも前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さいものであることを特徴とする請求項9に記載の電子装置。
【請求項11】
前記ダム(50)の全体が、前記電子部品(20)の前記表面よりも前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料よりなり、前記ダム(50)の表面に位置する当該材料により前記濡れ性低下部(51)が構成されていることを特徴とする請求項10に記載の電子装置。
【請求項12】
前記ダム(50)は、前記基板(10)の一面(10a)側に設けられた第1のダム部(50a)と、前記第1のダム部(50a)の上に設けられ前記第1のダム部(50a)よりも前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料よりなる第2のダム部(50b)とにより構成された2層構造を有するものであり、
前記第2のダム部(50b)の表面が前記濡れ性低下部(51)を構成していることを特徴とする請求項9に記載の電子装置。
【請求項13】
前記第2のダム部(50b)を構成する材料は、前記電子部品(20)における前記はんだ(30)との接続部以外の表面よりも前記アンダーフィル樹脂(40)に対する濡れ性が小さい材料であることを特徴とする請求項12に記載の電子装置。
【請求項14】
前記電子部品(20)と前記基板(10)とが対向する部位において前記電子部品(20)および前記基板(10)のいずれか一方に、突起(60)が設けられ、この突起(60)により前記電子部品(20)と前記基板(10)との距離が一定に確保されていることを特徴とする請求項8ないし13のいずれか1つに記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−43765(P2009−43765A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204147(P2007−204147)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】