説明

電子装置

【課題】コントローラから制御回路に送る情報量を抑え、簡素な構成で、特性に応じてスイッチング素子を適切に制御できる電子装置を提供する。
【解決手段】制御装置12は、制御回路124と、コントローラ125とを備えている。コントローラ125は、記憶されているオン、オフ閾値電圧と検出した温度に基づいて制限電圧と制限時間を求める。そして、記憶されている制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルに基づいて、求めた制限電圧と制限時間に対応する識別情報を求め出力する。制御回路124は、記憶されている制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルと、コントローラ125の出力した識別情報に基づいて、制限電圧と制限時間を求める。複数の情報を対応する1つの情報に変換できる。そのため、コントローラから制御回路に送る情報量を抑えられる。従って、簡素な構成で、特性に応じてスイッチング素子を適切に制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子と、駆動回路とを備えた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング素子と、駆動回路とを備えた電子装置として、例えば特許文献1に開示されているゲート駆動回路がある。
【0003】
特許文献1に開示されているゲート駆動回路は、パワースイッチング素子を駆動する回路である。ゲート駆動回路は、第1オン側電源回路と、第2オン側電源回路とを備えている。第1オン側電源回路は、第1オン電源と、第1スイッチとを有している。第2オン側電源回路は、第2オン電源と、第2スイッチと、オン側遅延回路とを有している。第1オン電源の供給する第1オン電圧は、第2オン電源の供給する第2オン電圧より低く設定されている。
【0004】
パワースイッチング素子のオンを指示する信号が入力されると、第1スイッチがオンして、パワースイッチング素子のゲートに、第1オン電源の第1オン電圧が印加される。パワースイッチング素子のオンを指示する信号は、オン側遅延回路によって遅延される。オン側遅延回路によって遅延された信号が入力されると、第2スイッチがオンして、パワースイッチング素子のゲートに、第2オン電源の第2オン電圧が印加される。つまり、パワースイッチング素子のオン動作中には、ゲートに低く設定された第1オン電圧が印加され、パワースイッチング素子が定常状態になると、ゲートに高く設定された第2オン電圧が印加される。
【0005】
パワースイッチング素子のオン動作中に、ゲート電圧を低くすることで、パワースイッチング素子に流れるコレクタ電流を抑えることができる。そのため、異常が発生してパワースイッチング素子をオフする場合であっても、サージ電圧による破損や発熱による破損を抑えることができる。従って、パワースイッチング素子の破損に対する耐量を向上させることができる。また、パワースイッチング素子が定常状態になると、ゲート電圧を高くすることで、パワースイッチング素子の定常損失を抑えることができる。
【0006】
ところで、このゲート駆動回路は、電圧の異なる2つの電源を備えている。そのため、回路構成が複雑になるという問題があった。
【0007】
また、パワースイッチング素子には、特性のばらつきがある。そのため、パワースイッチング素子を適切に制御するためには、特性に応じてオン側遅延回路の遅延時間、第1オン電源の第1オン電圧及び第2オン電源の第2オン電圧を設定しなければならない。しかし、遅延時間、第1オン電圧及び第2オン電圧は、ハードウェアによって設定されている。そのため、パワースイッチング素子の特性に応じて設定を変更することはできない。従って、特性に応じてパワースイッチング素子を適切に制御することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−071956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに対して、簡素な構成で、特性に応じてスイッチング素子を適切に制御することができる電子装置が提案されている。
【0010】
この電子装置は、定電流回路と、電圧制限回路と、コントローラと、制御回路とを備えている。コントローラは、駆動信号を出力するとともに、予め記憶されているスイッチング素子の特性情報に基づいて電圧制限回路を制御するための制御情報を求め出力する。駆動信号がスイッチング素子のオンを指示すると、制御回路は、定電流回路を制御してスイッチング素子の制御端子に定電流を流し込むとともに、制御情報に基づいて電圧制限回路を制御してスイッチング素子の制御端子の電圧を制限する。
【0011】
そのため、前述したゲート駆動回路のように、2つの電源を用いることなく、定電流回路と電圧制限回路によって、スイッチング素子の制御端子に印加される電圧を調整することができる。従って、回路構成を簡素化することができる。また、予め記憶されているスイッチング素子の特性情報に基づいて電圧制限回路を制御するため、特性に応じてスイッチング素子を適切に制御することができる。
【0012】
しかし、この電子装置は、コントローラから制御回路に、駆動信号に加え制御情報をも送らなければならない。制御情報が複数ある場合、回路構成が複雑になるという問題があった。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、コントローラから制御回路に送る情報量を抑え、簡素な構成で、特性に応じてスイッチング素子を適切に制御することができる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、記憶されている、複数の制御情報の値の組合せとして構成される組合せ情報と、組合せ情報毎に設けられ、組合せ情報同士を識別する識別情報とに基づいて、求めた複数の制御情報から対応する識別情報を求めることで、コントローラから制御回路に送る情報を抑え、簡素な構成で、特性に応じてスイッチング素子を適切に制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、請求項1に記載の電子装置は、スイッチング素子と、スイッチング素子に接続され、スイッチング素子を駆動する駆動回路と、スイッチング素子のオン、オフを指示するための駆動信号と、駆動回路を制御するための複数の制御情報とを求めるコントローラと、駆動回路及びコントローラに接続され、複数の制御情報に基づいて駆動回路を制御し、駆動信号に基づいてスイッチング素子を駆動する制御回路と、を備えた電子装置であって、コントローラは、記憶されている、複数の制御情報の値の組合せとして構成される組合せ情報と、組合せ情報毎に設けられ組合せ情報同士を識別する識別情報とに基づいて、求めた複数の制御情報から対応する識別情報を求めて出力し、制御回路は、記憶されている組合せ情報と識別情報と、コントローラの出力した識別情報とに基づいて、複数の制御情報を求めることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、複数の制御情報を対応する識別情報に変換することができる。つまり、複数の情報を対応する1つの情報に変換することができる。そのため、コントローラから制御回路に送る情報量を抑えることができる。従って、複数の情報をパラレルやシリアルで送る場合に比べ、回路構成を簡素化することができる。これにより、簡素な構成で、特性に応じてスイッチング素子を適切に制御することができる。
【0017】
請求項2に記載の電子装置は、コントローラは、識別情報に応じた周期のパルス信号を連続して出力し、制御回路は、コントローラの出力したパルス信号の周期に基づいてコントローラの出力した識別情報を求めることを特徴とする。この構成によれば、識別情報に応じた周期のパルス信号が連続して出力される。そのため、識別情報を何度も確認することができる。従って、識別情報の誤認識を防止することができる。
【0018】
請求項3に記載の電子装置は、コントローラは、識別情報に応じた指定された周期のパルス信号を連続して出力し、制御回路は、コントローラの出力したパルス信号の周期が指定された周期以外である場合には、以前に求めた複数の制御情報に基づいて駆動回路を制御することを特徴とする。この構成によれば、パルス信号の周期が、ノイズによって一時的に指定された周期以外に変化しても、その影響を受けることなく、駆動回路を制御することができる。
【0019】
請求項4に記載の電子装置は、制御回路は、コントローラの出力したパルス信号の周期が所定時間以上継続して指定された周期以外である場合には、異常信号を出力することを特徴とする。この構成によれば、コントローラの異常を知らせることができる。
【0020】
請求項5に記載の電子装置は、制御回路は、コントローラの出力したパルス信号に基づいて求めた識別情報が記憶されている識別情報と異なるときには、記憶されている初期設定用の複数の制御情報に基づいて駆動回路を制御することを特徴とする。この構成によれば、制御回路に記憶されている組合せ情報と識別情報が消去される異常状態においても、初期設定用の複数の制御情報に基づいて駆動回路を制御することができる。
【0021】
請求項6に記載の電子装置は、コントローラは、駆動信号の出力を停止しているときに
識別情報を出力することを特徴とする。この構成によれば、駆動信号の出力が停止すると、スイッチング素子の駆動も停止する。そのため、スイッチング素子の駆動に伴ってノイズが発生することもない。従って、ノイズの影響を受けることなく、コントローラから制御回路に識別情報を送ることができる。
【0022】
請求項7に記載の電子装置は、コントローラは、駆動信号ラインを介して制御回路に
駆動信号を出力するとともに、駆動信号ラインを介して制御回路に識別情報を出力することを特徴とする。この構成によれば、識別情報を送るための信号ラインを別途設ける必要がない。そのため、回路構成をより簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態におけるモータ制御装置の回路図である。
【図2】図1における制御装置の回路図である。
【図3】複数の制御情報の値の組合せとして構成される組合せ情報と、組合せ情報を識別する識別情報の関係を説明するための説明図である。
【図4】識別情報とコントローラの出力するパルス信号の関係を説明するための説明図である。
【図5】第2実施形態における制御装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電子装置を車両に搭載され、車両駆動用モータを制御するモータ制御装置に適用した例を示す。
【0025】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して第1実施形態のモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図1は、第1実施形態におけるモータ制御装置の回路図である。
【0026】
図1に示すモータ制御装置1(電子装置)は、車体から絶縁された高電圧バッテリB1の出力する直流高電圧(例えば288V)を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM1に供給し、車両駆動用モータM1を制御する装置である。モータ制御装置1は、平滑コンデンサ10と、インバータ装置11と、制御装置12とを備えている。
【0027】
平滑コンデンサ10は、高電圧バッテリB1の直流高電圧を平滑化するための素子である。平滑コンデンサ10の一端は、高電圧バッテリB1の正極端子に接続されている。また、他端は、高電圧バッテリB1の負極端子に接続されている。さらに、高電圧バッテリB1の負極端子は、車体から絶縁された高電圧バッテリ用のグランドに接続されている。
【0028】
インバータ装置11は、平滑コンデンサ10によって平滑化された直流電圧を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM1に供給する装置である。インバータ装置11は、IGBT110a〜110f(スイッチング素子)を備えている。
【0029】
IGBT110a〜110fは、ゲート(制御端子)の電圧を制御することで駆動され、オン、オフすることで平滑コンデンサ10に平滑化された直流電圧を3相交流電圧に変換するためのスイッチング素子である。IGBT110a、110d、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fはそれぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT110a〜110cのエミッタが、IGBT110d〜110fのコレクタにそれぞれ接続されている。直列接続された3組のIGBT110a、110d、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fは並列接続されている。IGBT110a〜110cのコレクタは平滑コンデンサ10の一端に、IGBT110d〜110fのエミッタは平滑コンデンサ10の他端にそれぞれ接続されている。また、IGBT110a〜110fのゲートとエミッタは制御装置12にそれぞれ接続されている。さらに、直列接続されたIGBT110a、110d、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fの直列接続点は、車両駆動用モータM1にそれぞれ接続されている。
【0030】
制御装置12は、IGBT110a〜110fを制御する装置である。制御装置12は、IGBT110a〜110fのゲートとエミッタにそれぞれ接続されている。
【0031】
次に、図2〜図4を参照して制御装置について詳細に説明する。ここで、図2は、図1における制御装置の回路図である。具体的には、1つのIGBTに対する回路部分を示す回路図である。図3は、複数の制御情報の値の組合せとして構成される組合せ情報と、組合せ情報を識別する識別情報の関係を説明するための説明図である。図4は、識別情報とコントローラの出力するパルス信号の関係を説明するための説明図である。
【0032】
図2に示すように、制御装置12は、IGBT110dに対して、駆動用電源回路120と、オン駆動用定電流回路121(駆動回路)と、オフ駆動用回路122(駆動回路)と、電圧制限回路123(駆動回路)と、制御回路124と、を備えている。また、IGBT110a〜110fに対して、コントローラ125を備えている。制御装置12は、他のIGBT110a〜110c、110e、110fに対しても、それぞれ同様に、駆動用電源回路と、オン駆動用定電流回路と、オフ駆動用回路と、電圧制限回路と、制御回路とを備えている。
【0033】
駆動用電源回路120は、IGBT110dを駆動するための電圧を供給する回路である。駆動用電源回路120は、電源回路(図略)から供給される電圧を安定化して出力する。駆動用電源回路120の入力端子は、電源回路に接続されている。また、正極端子は、オン駆動用定電流回路121に接続されている。さらに、負極端子は、車体から絶縁された高電圧バッテリ用のグランドに接続され、高電圧バッテリ用のグランドを介してIGBT110dのエミッタに接続されている。
【0034】
オン駆動用定電流回路121は、IGBT110dをオンするための回路である。具体的には、IGBT110dのゲートに、制御回路124からの指示に基づいて一定の定電流を流し込んで電荷を充電して、ゲート電圧をオン、オフ閾値電圧より高くし、IGBT110dをオンする回路である。オン駆動用定電流回路121は、定電流源121aと、スイッチ121bとを備えている。
【0035】
定電流源121aは、一定の定電流を出力する回路である。定電流源121aの電源端子は、駆動用電源回路120の正極端子に接続されている。また、出力端子は、スイッチ121bに接続されている。
【0036】
スイッチ121bは、制御回路124の指示に基づいて、定電流源121aをIGBT110dのゲートに接続するための素子である。スイッチ121bの一端は、定電流源121aの出力端子に接続されている。また、他端は、IGBT110dのゲートに接続されている。さらに、制御端子は、制御回路124に接続されている。
【0037】
オフ駆動用回路122は、IGBT110dをオフするための回路である。具体的には、IGBT110dのゲートから電荷を放電して、ゲート電圧をオン、オフ閾値電圧より低くし、IGBT110dをオフする回路である。オフ駆動用回路122は、オフ駆動用FET122aと、オフ駆動用抵抗122bとを備えている。
【0038】
オフ駆動用FET122aは、ゲートの電圧を制御することで駆動され、オンすることでIGBT110dのゲートから電荷を放電するスイッチング素子である。具体的には、NチャネルMOSFETである。オフ駆動用FET122aのソースは、車体から絶縁された高電圧バッテリ用のグランドに接続され、高電圧バッテリ用のグランドを介して駆動用電源回路120の負極端子とIGBT110dのエミッタに接続されている。また、ドレインは、オフ駆動用抵抗122bを介してIGBT110dのゲートに接続されている。さらに、ゲートは、制御回路124に接続されている。
【0039】
電圧制限回路123は、IGBT110dのゲート電圧を制限するための回路である。具体的には、IGBT110dのゲート電圧を、制御回路124の指示する所定の制限時間の間、制御回路124の指示する所定の制限電圧に制限する回路である。電圧制限回路123は、クランプ回路123aと、スイッチ123bとを備えている。
【0040】
クランプ回路123aは、接続した端子の電圧を制御回路124の指示する所定の制限電圧に制限する回路である。クランプ回路123aの一端は、IGBT110dのゲートに接続されている。また、他端は、スイッチ123bに接続されている。さらに、制御端子は、制御回路124に接続されている。
【0041】
スイッチ123bは、制御回路124の指示に基づいて、制御回路124の指示する所定の制限時間の間、クランプ回路123aをIGBT110dのゲートに接続するための素子である。スイッチ123bの一端は、クランプ回路123aの他端に接続されている。また、他端は、車体から絶縁された高電圧バッテリ用のグランドに接続され、高電圧バッテリ用のグランドを介して駆動用電源回路120の負極端子とIGBT110dのエミッタに接続されている。さらに、制御端子は、制御回路124に接続されている。
【0042】
制御回路124は、コントローラ125が識別情報として出力したパルス信号の周期に基づいて識別情報を求め、記憶されている、複数の制御情報の値の組合せとして構成される組合せ情報と、組合せ情報毎に設けられ組合せ情報同士を識別する識別情報とに基づいて、コントローラ125の出力した識別情報から複数の制御情報を求める回路である。また、コントローラ125の出力した駆動信号と、求めた複数の制御情報とに基づいて、オン駆動用定電流回路121と、電圧制限回路123と、オフ駆動用回路122を制御し、IGBT110dを駆動する回路でもある。
【0043】
制御回路124は、コントローラ125が識別情報として出力したパルス信号の周期が指定された周期以外である場合には、以前に求めた複数の制御情報に基づいて、オン駆動用定電流回路121と、オフ駆動用回路122と、電圧制限回路123を制御する。また、コントローラ125が識別情報として出力したパルス信号の周期が所定時間以上継続して指定された周期以外である場合には、異常信号を出力する。さらに、求めた識別情報が複数の制御情報の組合せ情報と識別情報のテーブルにない場合、記憶されている初期設定用の複数の制御情報に基づいて、オン駆動用定電流回路121と、オフ駆動用回路122と、電圧制限回路123を制御する。制御回路124は、メモリ124aを備えている。
【0044】
メモリ124aは、複数の制御情報の組合せ情報と識別情報のテーブルと、初期設定用の制限電圧と制限時間を記憶する素子である。具体的には、不揮発性メモリである。メモリ124aには、複数の制御情報の組合せ情報と識別情報のテーブルとして、図3に示す制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルが記憶されている。また、異常時に用いる初期設定用の制限電圧と制限時間が記憶されている。制御回路124は、コントローラ125に接続されている。また、スイッチ121bの制御端子に接続されている。さらに、オフ駆動用FET122aのゲートに接続されている。加えて、IGBT110dのゲートに接続されるとともに、クランプ回路123aとスイッチ123bの制御端子にそれぞれ接続されている。
【0045】
ここで、駆動用電源回路120、オン駆動用定電流回路121、オフ駆動用FET122a、電圧制限回路123及び制御回路124は、ICとして一体的に構成されている。
【0046】
コントローラ125は、外部から入力される指令に基づいてIGBT110dをオン、オフするための駆動信号を生成して出力する回路である。また、記憶されているIGBT110dの特性情報と、検出したIGBT110dの温度とに基づいて、電圧制限回路123を制御するための複数の制御情報を求める回路でもある。さらに、記憶されている、複数の制御情報の値の組合せとして構成される組合せ情報と、組合せ情報毎に設けられ組合せ情報同士を識別するための識別情報とに基づいて、求めた複数の制御情報から対応する識別情報を求め、識別情報に応じた指定された周期のパルス信号を出力する回路でもある。コントローラ125は、メモリ125aと、マイクロコンピュータ125bとを備えている。
【0047】
メモリ125aは、IGBT110dの特性情報を記憶するとともに、複数の制御情報の組合せ情報と識別情報のテーブルを記憶する素子である。具体的には、不揮発性メモリである。メモリ125aには、特性情報として、モータ制御装置1の組付けが完了した段階で事前に測定されたIGBT110dのオン、オフ閾値電圧が記憶されている。また、複数の制御情報の組合せ情報と識別情報のテーブルとして、図3に示す制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルが記憶されている。
【0048】
マイクロコンピュータ125bは、外部から入力される指令に基づいて駆動信号を生成して出力する素子である。また、メモリ125aに記憶されているオン、オフ閾値電圧と、検出したIGBT110dの温度とに基づいて、制限電圧と制限時間を求める素子でもある。さらに、メモリ125a記憶されている、図3に示す制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルに基づいて、求めた制限電圧と制限時間から対応する識別情報を求め、図4に示す識別情報に応じた指定された周期のパルス信号を連続して出力する素子でもある。マイクロコンピュータ125bのバスは、メモリ125bに接続されている。また、駆動信号出力端子は、フォトカプラ126aを介して制御回路124の駆動信号入力端子に接続されている。さらに、制御情報出力端子は、フォトカプラ126bを介して制御回路124の制御情報入力端子に接続されている。
【0049】
次に、図1を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図1に示すモータ制御装置1が動作を開始する。高電圧バッテリB1の直流高電圧は、平滑コンデンサ10によって平滑化される。制御装置12は、外部から入力される指令に基づいて、インバータ装置11を構成するIGBT110a〜110fを制御する。具体的には、IGBT110a〜110fを所定周期でオン、オフする。インバータ装置11は、平滑コンデンサ10によって平滑化された直流高電圧を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM1に供給する。このようにして、モータ制御装置1が車両駆動用モータM1を制御する。
【0050】
次に、図2を参照してIGBTの駆動動作について説明する。 図2に示すマイクロコンピュータ125bは、メモリ125aに記憶されているIGBT110dのオン、オフ閾値電圧と、検出したIGBT110dの温度とに基づいて、電圧制限回路123の制限電圧と制限時間を求める。そして、メモリ125aに記憶されている、図3に示す制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルに基づいて、求めた制限電圧と制限時間から対応する識別情報を求め、図4に示す識別情報に応じた指定された周期のパルス信号を連続して出力する。
【0051】
例えば、図3に示すように、制限電圧に関する制御情報Aがa1、制限時間に関する制御情報Bがb1の場合、対応する識別情報はX1となり、制御回路124は、図4に示すように、識別情報X1に応じた周期T1のパルス信号を出力する。また、図3に示すように、制限電圧に関する制御情報Aがa2、制限時間に関する制御情報Bがb2の場合、対応する識別情報はX2となり、制御回路124は、図4に示すように、識別情報X2に応じた周期T2(>T1)のパルス信号を出力する。
【0052】
制御回路125は、フォトカプラ126aを介して入力されるパルス信号の周期に基づいて識別情報を求める。メモリ124aに記憶されている、図3に示す制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルと、求めた識別情報とに基づいて、制限電圧と制限時間を求める。そして、IGBT110dのゲート電圧が、求めた制限電圧で制限されるようクランプ回路123aを制御する。
【0053】
その後、フォトカプラ126aを介して入力される駆動信号がIGBT110dのオンを指示すると、制御回路124は、スイッチ121bをオンするとともに、オフ駆動用FET122aをオフして、定電流源121aからIGBT110dのゲートに一定の定電流を流し込む。これにより、IGBT110dのゲートに電荷が充電され、ゲート電圧が上昇する。
【0054】
ゲート電圧が所定の電圧になると、制御回路124は、スイッチ123bをオンし、ゲート電圧の制限を開始する。ゲート電圧が上昇しオン、オフ閾値電圧を超えると、IGBT110dがオンする。IGBT110dがオンしてコレクタ電流が流れるようになると、電圧の上昇が停止し、ゲートの電圧がミラー電圧になる。その後、ゲート電圧がさらに上昇するが、電圧制限回路123によって制限電圧に制限される。制御回路124は、ゲート電圧の制限を開始してから、求めた制限時間経過後にスイッチ123bをオフし、電圧の制限を解除する。電圧の制限が解除されると、ゲート電圧が駆動用電源回路120の電圧まで上昇する。
【0055】
つまり、ゲート電圧がオン、オフ閾値電圧を超えてIGBTがオンすると、ゲート電圧が制限電圧に制限され、その後、制限が解除され、ゲート電圧が駆動用電源回路の電圧まで上昇する。そのため、従来と同様に、異常が発生してIGBT110dをオフする場合であっても、サージ電圧による破損や発熱による破損を抑えることができる。従って、IGBT110dの破損に対する耐量を向上させることができる。また、IGBT110dが定常状態になると、ゲート電圧を高くすることで、IGBT110dの定常損失を抑えることができる。
【0056】
一方、フォトカプラ126aを介して入力される駆動信号がIGBT110dのオフを指示すると、制御回路124は、オン駆動用定電流回路121の動作を停止し、オフ駆動用FET122aをオンする。これにより、IGBT110dのゲートからオフ駆動用抵抗122bを介して電荷が放電される。その結果、ゲート電圧がオン、オフ閾値電圧より低くなり、IGBT110dがオフする。
【0057】
なお、制御回路124は、コントローラ125が識別情報として出力したパルス信号の周期が、図4に示す指定された周期T1、T2、T3以外である場合には、以前に求めた制限電圧と制限時間に基づいて、オン駆動用定電流回路121と、オフ駆動用回路122と、電圧制限回路123を制御する。また、コントローラ125が識別情報として出力したパルス信号の周期が所定時間以上継続して指定された周期T1、T2、T3以外である場合には、異常信号を出力する。さらに、求めた識別情報が、メモリ124aに記憶されている、図3に示す制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルにない場合、つまり、テーブルの識別情報と異なる場合、メモリ124aに記憶されている初期設定用の制限電圧と制限時間に基づいて、オン駆動用定電流回路121と、オフ駆動用回路122と、電圧制限回路123を制御する。
【0058】
次に、効果について説明する。第1実施形態によれば、制限電圧と制限時間を対応する識別情報に変換することができる。つまり、複数の制御情報を対応する1つの識別情報に変換することができる。そのため、コントローラ125から制御回路124に送る情報量を抑えることができる。従って、複数の制御情報をパラレルやシリアルで送る場合に比べ、回路構成を簡素化することができる。これにより、簡素な構成で、特性に応じてIGBT110dを適切に制御することができる。
【0059】
第1実施形態によれば、コントローラ125は、識別情報に応じた周期のパルス信号を連続して出力する。そのため、識別情報を何度も確認することができる。従って、識別情報の誤認識を防止することができる。
【0060】
第1実施形態によれば、制御回路124は、コントローラ125が識別情報として出力したパルス信号の周期が、図4に示す指定された周期T1、T2、T3以外である場合には、以前に求めた制限電圧と制限時間に基づいて、オン駆動用定電流回路121と、オフ駆動用回路122と、電圧制限回路123を制御する。そのため、パルス信号の周期が、ノイズによって一時的に指定された周期以外に変化しても、その影響を受けることなく、オン駆動用定電流回路121と、オフ駆動用回路122と、電圧制限回路123を制御する。
【0061】
第1実施形態によれば、制御回路124は、コントローラ125が識別情報として出力したパルス信号の周期が所定時間以上継続して指定された周期T1、T2、T3以外である場合には、異常信号を出力する。そのため、コントローラ125の異常を知らせることができる。
【0062】
第1実施形態によれば、制御回路125は、求めた識別情報が、メモリ124aに記憶されている、図3に示す制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルにない場合、メモリ124aに記憶されている初期設定用の制限電圧と制限時間に基づいて、オン駆動用定電流回路121と、オフ駆動用回路122と、電圧制限回路123を制御する。そのため、制御回路124に記憶されている組合せ情報と識別情報が消去される異常状態においても、初期設定用の制限電圧と制限時間に基づいて、オン駆動用定電流回路121と、オフ駆動用回路122と、電圧制限回路123を制御することができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のモータ制御装置について説明する。第2実施形態のモータ制御装置は、第1実施形態のモータ制御装置が、駆動信号と識別情報をそれぞれ別の信号ラインを介して、それぞれ独立して送っているのに対して、駆動信号を送るタイミングと、識別情報を送るタイミングとを調整し、駆動信号と識別情報を共通の信号ラインで送るようにしたものである。
【0064】
まず、図5を参照して制御装置の構成と動作について説明する。ここで、図5は、第2実施形態における制御装置の回路図である。ここでは、第1実施形態の制御装置との相違部分について説明し、共通する部分については必要とされる箇所以外説明を省略する。
【0065】
図4に示すように、制御装置22は、IGBT210dに対して、駆動用電源回路220と、オン駆動用定電流回路221と、オフ駆動用回路222と、電圧制限回路223と、制御回路224と、コントローラ225とを備えている。IGBT210dは、第1実施形態のIGBT110dに相当する。駆動用電源回路220、オン駆動用定電流回路221、オフ駆動用回路222、電圧制限回路223及び制御回路224は、第1実施形態の駆動用電源回路120、オン駆動用定電流回路121、オフ駆動用回路122、電圧制限回路123及び制御回路124と同一構成である。
【0066】
コントローラ225は、メモリ225aと、マイクロコンピュータ225bとを備えている。
【0067】
メモリ225aは、第1実施形態のメモリ125aと同一構成である。
【0068】
マイクロコンピュータ225bは、外部から入力される指令に基づいて駆動信号を生成し、駆動信号ライン225cを介して制御回路224に出力する素子である。また、メモリ225aに記憶されているオン、オフ閾値電圧と、検出したIGBT210dの温度とに基づいて、制限電圧と制限時間を求める素子である。さらに、メモリ225a記憶されている制限電圧と制限時間の組合せ情報と識別情報のテーブルに基づいて、求めた制限電圧と制限時間から対応する識別情報を求め、駆動信号の出力を停止しているときに、駆動信号ライン225cを介して制御回路224に出力する素子である。マイクロコンピュータ225bの駆動信号出力端子は、駆動信号ライン225cを介して制御回路224の駆動信号入力端子に接続されている。また、制御情報出力端子は、駆動信号ライン225cを介して制御回路224の制御情報入力端子に接続されている。
【0069】
動作については、駆動信号を送るタイミングと、識別情報を送るタイミングを除いて、第1実施形態のモータ制御装置と同一であるため、説明を省略する。
【0070】
次に、効果について説明する。第2実施形態によれば、コントローラ225は、駆動信号の出力を停止しているときに識別情報を出力する。駆動信号の出力が停止すると、IGBT110dの駆動も停止する。そのため、IGBT110dの駆動に伴ってノイズが発生することもない。従って、ノイズの影響を受けることなく、コントローラ225から制御回路224に識別情報を送ることができる。
【0071】
第2実施形態によれば、コントローラ225は、駆動信号ライン225cを介して制御回路224に駆動信号を出力するとともに、駆動信号ライン225cを介して制御回路224に識別情報を出力する。そのため、識別情報を送るための信号ラインを別途設ける必要がない。従って、回路構成をより簡素化することができる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・モータ制御装置(電子装置)、10・・・平滑コンデンサ、11・・・インバータ装置、110a〜110d・・・IGBT(スイッチング素子)、12、22・・・制御装置、120、220・・・駆動用電源回路、121、221・・・オン駆動用定電流回路(駆動回路)、121a、221a・・・定電流源、121b、221b・・・スイッチ、122、222・・・オフ駆動用回路(駆動回路)、122a、222a・・・オフ駆動用FET、122b、222b・・・オフ駆動用抵抗、123、223・・・電圧制限回路(駆動回路)、123a、223a・・・クランプ回路、123b、223b・・・スイッチ、124、224・・・制御回路、125、225・・・コントローラ、125a、225a・・・メモリ、125b、225b・・・マイクロコンピュータ、225c・・・駆動信号ライン、126a、126b、226a・・・フォトカプラ、B1・・・高電圧バッテリ、M1・・・車両駆動用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、
スイッチング素子に接続され、スイッチング素子を駆動する駆動回路と、
スイッチング素子のオン、オフを指示するための駆動信号と、駆動回路を制御するための複数の制御情報とを求めるコントローラと、
駆動回路及びコントローラに接続され、複数の制御情報に基づいて駆動回路を制御し、駆動信号に基づいてスイッチング素子を駆動する制御回路と、
を備えた電子装置であって、
コントローラは、記憶されている、複数の制御情報の値の組合せとして構成される組合せ情報と、組合せ情報毎に設けられ組合せ情報同士を識別する識別情報とに基づいて、求めた複数の制御情報から対応する識別情報を求めて出力し、
制御回路は、記憶されている組合せ情報と識別情報と、コントローラの出力した識別情報とに基づいて、複数の制御情報を求めることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
コントローラは、識別情報に応じた周期のパルス信号を連続して出力し、
制御回路は、コントローラの出力したパルス信号の周期に基づいてコントローラの出力した識別情報を求めることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
コントローラは、識別情報に応じた指定された周期のパルス信号を連続して出力し、
制御回路は、コントローラの出力したパルス信号の周期が指定された周期以外である場合には、以前に求めた複数の制御情報に基づいて駆動回路を制御することを特徴とする
請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
制御回路は、コントローラの出力したパルス信号の周期が所定時間以上継続して指定された周期以外である場合には、異常信号を出力することを特徴とする請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
制御回路は、コントローラの出力したパルス信号に基づいて求めた識別情報が記憶されている識別情報と異なるときには、記憶されている初期設定用の複数の制御情報に基づいて駆動回路を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
コントローラは、駆動信号の出力を停止しているときに識別情報を出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項7】
コントローラは、駆動信号ラインを介して制御回路に駆動信号を出力するとともに、駆動信号ラインを介して制御回路に識別情報を出力することを特徴とする請求項6に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161123(P2012−161123A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17471(P2011−17471)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】