説明

電子透かし情報を用いたドキュメントのセキュリティー保護

本発明は、ドキュメント(1)を製作する方法であって、ドキュメント(1)の複数のレイヤー(15、17、19)にそれぞれ画像情報が取り込まれ、この画像情報が補完し合って全体画像となり、この画像情報は、少なくとも2つのレイヤー(15、17、19)中に、電子透かし情報(25、27、29)を含み、少なくとも2つのレイヤー(15、17、19)中の電子透かし情報(25、27、29)が、全体となって初めてドキュメント(1)のオーセンティケーションのためのセキュリティー機能を形成する方法に関する。本発明はさらに、対応するドキュメント(1)、オーセンティケーション(37)方法およびオーセンティケーション装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドキュメントの製作方法、その方法で製作されたドキュメント、ドキュメントが真正であるか否かを確認するオーセンティケーション(Authentisierung)方法、およびオーセンティケーション装置に関する。ここでドキュメントとは、とりわけセキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメントである。
【背景技術】
【0002】
セキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメントは、多くの場合そのセキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメントの、発行者、個人グループまたは個人のドキュメント所有者への帰属関係を表す個別化情報(特に個人特定情報)を含む。個人特定情報としては、特に画像情報、例えば旅券用写真、指紋または他のバイオメトリックス上の特徴、さらに英数字文字列、例えば個人の名前、住所、居住地または誕生日が適する。
【0003】
セキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメントの例には、身分証明書、旅券、IDカード、通行許可証、ビザ、制御文字、切符、運転免許証、自動車検査証、銀行券、小切手、郵便切手、クレジットカード、任意のICカード、および貼付ラベル(例えば、製品保証書)がある。
【0004】
従来技術から、有価ドキュメントおよび/またはセキュリティードキュメントの様々な製作方法が知られている。例えば米国特許第6,022,429号(特許文献1)、米国特許第6,264,296号(特許文献2)、米国特許第6,685,312号(特許文献3)、米国特許第6,932,527号(特許文献4)、米国特許第6,979,141号(特許文献5)および米国特許第7,037,013号(特許文献6)には、未加工製品にインクジェット印刷を施した場合に、これを、機械的および/または化学的損傷ならびに改ざんに対する保護としての保護塗装または保護フィルムで保護するという方法が記載されている。この方法により、個人特定情報および/または個別化情報をセキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメント中に印刷技術的に色付きで保存することができる。しかしながら、得られるセキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメントは、印刷情報が完全に比較的表面近くに印刷され、塗装または保護フィルムからなる保護層が、大抵はカード未加工製品と一体的な材料結合を形成せず、解離可能および/または除去可能なので、改ざんに対して比較的低い安全性しか有さない。その後の印刷物の改ざんが可能である。
【0005】
ドイツ特許出願公開第4134539号(A1)(特許文献7)から、カラー画像情報を有する記録担体、特に有価カードおよび/または証明カード、ならびにその製作方法が知られている。画像情報は明/暗部分とカラー部分に分解される。視覚的印象を決定する明/暗部分は高解像度で記録担体に取り込まれる。この部分にカラー画像情報が一致するように重ねられて、一体的な全体的印象が生じる。偽造に対する安全性を確保するために、画像情報の一部がカード構造に取り込まれる。記載された実施形態では、例えば明/暗情報がレーザ彫刻によって透明フィルムに取り込まれ、この透明フィルムが印刷された挿入体の上に重ねられる。このフィルム上に付着されたカラー受容層または透明フィルム自体にカラー部分が印刷される。別の実施形態では、インレイ(Inlett)に画像情報のカラー部分が電子写真法で設けられる。続いて、定着されたカラートナー像の上に薄い透明カバーフィルムが配置され、この透明カバーフィルムに画像情報の明/暗部分がレーザビーム描画装置(Laseerstrahlschreibers)を用いて焼き付けられる。別の実施形態では、例えばインクジェット印刷といった従来の方法を用いてインレイ(Inlett)に白黒情報が設けられ、次の工程で、移動するカラーインクを受容するのに適した実質的に透明な樹脂フィルムでインレイが覆われる。このカラー画像部分は、移動するカラーインクにより、カバー層の深部に取り込まれる。このとき、カバーフィルムにまずカラー画像情報を印刷することができる。熱作用下でカラーインクは、UV放射によってカバー層の架橋が開始されるまでカバー層の内部に移動し、この架橋によりそれ以上の移動が停止される。さらに別の実施形態では、カラー情報がまずカバー層に取り込まれ、続いてこれに明暗情報が、従来の印刷法で印刷される。新たに生じる問題は、下面または内部に情報の一部が配置されて用いられるフィルムが、挿入体と一体的な結合を形成せず、したがって偽造のためにそれを除去および/または置き換えできることである。その上、記載された一連の実施形態においては、情報の一部が表面に直接配置されるので、偽造および/または改ざんがとりわけ容易である。
【0006】
米国特許第7,005,003号(B2)(特許文献8)、欧州特許第0,131,145号(B1)(特許文献9)、米国特許第5,734,800号(特許文献10)、および米国特許第6,765,693号(B1)(特許文献11)は、様々な色分解によるカラー画像を印刷する方法を記載している。
【0007】
とりわけセキュリティードキュメントは発行者により、担体構成要素が樹脂製のカードとして発行されることが多い。その際、ポリカーボネートが特に耐性があることが立証されている。この種のドキュメントは特に偽造から保護されなければならず、また特定のドキュメントが本当に名目上の発行者から発行されたものであることは確実に確認可能でなければならない。
【0008】
例えば旅券用写真、もしくは旅券用写真の写し、またはドキュメントの所有者でなくドキュメントの種類を示す画像(例えば、特定のロゴ)といった画像成分を含むドキュメントをセキュリティー保護するために、電子透かしを画像中に取り込むことが知られている。電子透かしを取り込む方法は、オリジナルの画像情報の変化形に基づいている。通例、透かしは、観察者に全くまたは殆ど知覚できない情報である。例えば、米国特許出願公開第2002/080996号(A1)(特許文献12)は、セキュリティードキュメント中に2進データを埋め込む方法およびシステム、ならびにそうしたデータを検知し、デコードする付随の方法およびシステムを記載している。
【0009】
本発明によるドキュメントは、例えば上記の各段落に記載されているように製作し構築することができ、および/または上記に示された特徴の1つまたは複数を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,022,429号
【特許文献2】米国特許第6,264,296号
【特許文献3】米国特許第6,685,312号
【特許文献4】米国特許第6,932,527号
【特許文献5】米国特許第6,979,141号
【特許文献6】米国特許第7,037,013号
【特許文献7】ドイツ特許出願公開第4134539号(A1)
【特許文献8】米国特許第7,005,003号(B2)
【特許文献9】欧州特許第0,131,145号(B1)
【特許文献10】米国特許第5,734,800号
【特許文献11】米国特許第6,765,693号(B1)
【特許文献12】米国特許出願公開第2002/080996号(A1)
【特許文献13】ドイツ特許出願公開第3832396号(A)
【特許文献14】米国特許第3,028,365号(A)
【特許文献15】米国特許第2,999,835号(A)
【特許文献16】米国特許第3,148,172号(A)
【特許文献17】米国特許第3,275,601号(A)
【特許文献18】米国特許第2,991,273号(A)
【特許文献19】米国特許第3,271,367号(A)
【特許文献20】米国特許第3,062,781号(A)
【特許文献21】米国特許第2,970,131号(A)
【特許文献22】米国特許第2,999,846号(A)
【特許文献23】ドイツ特許出願公開第1570703号(A)
【特許文献24】ドイツ特許出願公開第2063050号(A)
【特許文献25】ドイツ特許出願公開第2063052号(A)
【特許文献26】ドイツ特許出願公開第2211956号(A)
【特許文献27】フランス特許出願公開第1561518号(A)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“’Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry”, Wiley rlag, Electronic Release, 2006
【非特許文献2】H. Schnell, “Chemistry and Physics of Polycarbonates”, Interscience Publishers, New York,1964
【非特許文献3】H. Schnell, “Chemistry and Physics of Polycarbonates”, Polymer Reviews, Vol.IX, Seite 33ff, Interscience Publ., 1964
【非特許文献4】“Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry”, Wiley Verlag, Electronic Release,2007
【非特許文献5】van Renesse, “Optical document security”, 3rd Ed., Artech House、2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題の一つは、偽造に対する安全性が高められたドキュメントの製作方法を提供することである。さらに対応するドキュメントも提供される。本発明のさらなる課題は、ドキュメントが真正であるか否かを確認するためのオーセンティケーション方法およびオーセンティケーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の基本的技術思想によれば、透かし情報をドキュメントの少なくとも2つの異なるレイヤーの画像情報に取り込み、その際に透かし情報は、その少なくとも2つのレイヤー中において透かし情報が全体として初めて、ドキュメントのオーセンティケーションのためのセキュリティー機能が構築されるように構成される。
【0014】
「レイヤー」(Schicht)という概念は、大抵はドキュメント中の平坦な領域を意味する。この領域は、平面あるいはレイヤーを横切る方向において、ドキュメント中のその位置によって画定される。例えば、IDカードのような市販のカード形態のドキュメントの場合、レイヤーはカード表面から一定の距離にわたっている。
【0015】
「レイヤー」という概念と「基層」(Substrat)という概念とは区別すべきである。例えば、通常のカードドキュメントの場合、複数の基層または材料積層が相互にラミネートされて、複合材料が形成される。原理的には、単一の積層(Lage)でさえも、既に2つまたはそれ以上のレイヤーを含んでおり、その中に全体画像のための画像情報を存在させることが可能である。とりわけ、第1のレイヤーを基層の第1の表面に、第2のレイヤーを基層の反対側の第2の表面に、そして第3のレイヤーを基層の内部に置くことができる。ただし、それを実行に移す場合、例えば表面に印刷すると、印刷材が基層の内部にまで浸透するということが起こり得る。したがって、大抵の場合、1つの積層は画像情報を有するレイヤーを最大でも2つまで含むことになる。
【0016】
以下に述べる本発明の特徴のいくつかは、製作方法、その製作方法によって製作されたドキュメント、オーセンティケーション方法、および/またはオーセンティケーション装置に関連する。ある特徴がそのような複数のカテゴリーに関連する場合、その特徴を具体的に1つのカテゴリーにおいてだけ詳しく説明するが、その説明は他のカテゴリーにも適用される。
【0017】
少なくとも2つのレイヤー中の透かし情報の全体は、様々な方法で構築することができる。言い換えれば、透かし情報の全体を様々な方法で部分に分解し、個々のレイヤー中に取り込むことができる。分解の際に、透かし情報に他の情報を追加することができるため、したがってこの場合、透かし情報の全体は、該少なくとも2つのレイヤー中の透かし情報の単なる寄せ集めによって生じるのではない。追加の情報は、後でさらに詳しく述べるように、例えば、どこにおよび/またはどのレイヤー中に全体をなす他の部分情報が存在するかという情報、および/または透かし情報の全体を得るために部分情報の評価をどのように行うかについての情報である。
【0018】
評価の際だけでなく、個々のレイヤー中に含まれる透かし情報の取得の際にも、様々なやり方を行うことができる。第1の形態では、個々のレイヤー中の透かし情報だけを別々に取得し、所定の指示に従ってそれらから透かし情報の全体を構築することが可能である。ただし、ある特別な形態では、少なくとも2つのレイヤー中の透かし情報の取得を、まとめて1回の追加的取得で行うことができる。例えば、第1のレイヤー中の画像情報が第1の色だけで表され、第2のレイヤー中の画像情報が別の第2の色だけで表されている場合、透かし情報は個々のレイヤーから、一度に色選択的に取得することができる。両方のレイヤー中の透かし情報を、例えば色選択なしの取得によりまとめて取得することもできる。まとめて取得する場合の情報量は、通常、異なるレイヤーからの情報を処理することによって得られる情報量よりも少ない。しかしながら、複数のレイヤーからまとめて取得した情報は、個々のレイヤー中の情報の取得によっては得られない追加の情報を含むこともあり得る。その理由は、取得方法に依存するが、あらゆる場合においてあるレイヤー中に含まれる全ての情報が取得されるとは限らないからである。その理由は、例えば光学的取得の場合、情報を取得しなくてよい他のレイヤーが取得を妨害し、および/または取得が全スペクトルに対して感受性を持たないからである。別の理由としては、あるレイヤー中に含まれる情報の一部が、レイヤー中の物質が特定の波長の電磁波の照射によって励起され、したがって特徴的波長の放射を発するときにしか取得できないからである。そうした蛍光によって初めて、どの個所に蛍光材料が存在するかが検出可能である。
【0019】
ある特別な形態では、透かし情報は少なくとも1つのレイヤーにおいて、画像平面のある部分領域にだけ取り込まれている。画像平面とは、画像情報の存在するレイヤー内の平面を意味する。透かし情報がその部分領域にしか存在しないので、事前に情報を知らされていない観察者が見つけることは困難である。しかし、透かし情報の存在する部分領域が異なるレイヤー中で重ならないか、または少なくとも完全には重ならないならば、情報を知らされている観察者または読取り装置の使用者にとって、透かし情報の取得および後続処理は、部分領域を知っていることによって容易になり、かつ改善される。例えば、透かし情報を備える部分領域を、他の画像領域よりも高い解像度で検出および/または評価することが可能である。また、レイヤー面に対して垂直に延在する方向からの、特に光学的検出が、基層材料または他のレイヤー中にある印刷材によって妨げられないように、透かし情報を備える部分領域を選択することもできる。
【0020】
レイヤーのうちの少なくとも1つ中で、透かし情報が、画像平面のある部分領域にだけ取り込まれている場合、第1のレイヤー中の透かし情報が、第1のレイヤーまたは第2のレイヤーのどの部分領域に他の透かし情報が配置されているかという情報、および/または第2のレイヤー中および/または第1のレイヤーの他の部分領域中の透かし情報をどのように評価すべきか、という情報を含むという特に有利な方法手順が可能である。特に、第1のレイヤー中の(配置または評価についての追加の情報を含む)透かし情報をどのように評価すべきかについて秘密の規則が決まっている場合、潜在的偽造者は、透かし情報の全体に到達することができない。例えば、パーソナライズされたドキュメントの場合、透かし情報もパーソナライズすることができる。潜在的偽造者が、透かし情報のパーソナライズがどのように行われたかの原理を認識できなければ、別の個人に対しても正しいパーソナライズされたドキュメントを製作することはできない。
【0021】
透かし情報は、好ましくは、とりわけ知覚できない、または少なくとも訓練されていない人の目では知覚できない電子透かし情報であり、すなわち観察者が、個々のレイヤーの画像情報から合成された画像を観察しても、画像中に透かし情報が存在することを認識することができない。(とりわけ、デジタル印刷によってドキュメント中に取り込まれる画像情報における)画像情報への透かし情報の取り込み自体は公知である。そのような方法を記載した文献は上に挙げた。したがって、本発明の説明においては、透かし情報の生成および透かし情報の画像情報への取り込みについてはより詳細には取り上げない。
【0022】
好ましくは、異なるレイヤーに取り込まれる透かし情報は、全体として初めて評価可能なオーセンティケーション情報を形成する。言い換えれば、ただ1つのレイヤーからの透かし情報、または全てのレイヤーからではない透かし情報、および/または透かし情報が存在する全てのレイヤーではあるが、その全ての部分領域からではない透かし情報では、ドキュメントが真正であるかどうかの確認には充分でない。さらに、透かし情報は、全体として存在しない限り評価することができない。すなわち、全体の一部を評価することはできない。評価とは、結果を確認できることを意味する。そうした形態の例では、情報の全体性が、特に全体からチェック・サムを計算することによって評価される。全体の一部分が欠けると、チェック・サムは計算できない。
【0023】
この形態が示すように、本発明は、ドキュメント中に含まれる全体透かし情報をどのように扱うかについての所与の規則に少なくとも部分的に依存する。したがって、ドキュメントの製作方法の一部は、例えば、透かし情報をドキュメントに取り込んだ後に、取得および/または評価が実際に所望の結果をもたらすように、評価規定および/またはドキュメントからの透かし情報取得規定を考慮して、透かし情報を処理する工程でもある。
【0024】
しかし上述の形態の他に、本発明は、ドキュメントに取り込まれた全ての透かし情報全体の部分集合も評価できるという形態も含む。例えば、第1のレイヤーまたは任意のレイヤーの第1の部分領域に取り込まれた透かし情報からこの部分集合を評価することにより、ドキュメント所有者、発行者またはドキュメントについての情報(例えば、ドキュメント番号)を得ることができる。
【0025】
好ましい形態では、ドキュメントの個々のレイヤー中の画像情報はそれぞれ別々の色で表される。いずれにしろ個々のレイヤー中の色情報によって形成される特定の画像に関する限り、それ自体公知のように、表色系または色空間の原色(例えば、赤−緑−青(RGB)、またはシアン−マゼンタ−イエロー−ブラック(CMYK))を用いる場合、好ましくは各レイヤーに対して最大で1色の原色が使用される。
【0026】
各レイヤーに1つの色を割り当てることにより、透かし情報とそれぞれの色との一義的な割り当てが確立されるので、偽造に対する安全性が高められる。加えて、例えば光学的検出の際にカラーフィルタを使用することによって、特定のレイヤーの透かし情報を選択的に取得するのに色を利用することができる。
【0027】
“色”とは本発明の特定の例示的実施形態においては、“モノクロ階調”をも意味する。例えば、第1のレイヤー中では暗いモノクロ階調が、第2のレイヤー中では明るいモノクロ階調が画像情報に用いられる。ただしこの場合は、個々のレイヤー中の画像情報を選択的に、光学的に取得するのが困難である。
【0028】
本明細書において光学的作用が説明される場合は色で説明され、これに対し、印刷画像の製作が説明される場合は、それぞれが色を有する印刷材(例えば、インク)で説明される。
【0029】
全体画像の場合、これは例えば旅券用写真またはロゴでよい。しかしながら、複数のレイヤー中の画像情報によって形成される画像は、本明細書においては、基層上への印刷によって達成可能なその他のいかなる造形(Gestaltung)をも意味し、例えば、テキストはグラフィックで造形することができ、そして多色の活字で印刷することができる。
【0030】
ドキュメントの場合、ドキュメントの複数のレイヤー中に画像情報がそれぞれ取り込まれており、あるいは取り込まれ、これらの画像情報が補完し合って全体画像となる。その際、好ましくはレイヤーの位置は別々の基層の表面によって画定される。
【0031】
例えば、全体画像情報は少なくとも2つの印刷抽出物(Druckauszuege)に分割され、例えばそれぞれが全体画像の部分情報を含む。印刷抽出物にはその以外に透かし情報が刻み込まれている。次いで、少なくとも2つの印刷抽出物が少なくとも2つの別個の基層表面に印刷され、その結果、印刷された印刷抽出物が正確に重なり合い、一緒に全体画像が生じる。
【0032】
例えば、(特に層状の)基層は、ラミネートにより相互に結合することができる。この場合、少なくとも2つの印刷抽出物は、少なくとも2つの互いに離間された平面に印刷されるが、必ずしも画像情報を含むレイヤーと同数の別々の基層に印刷する必要はない。
【0033】
本発明は特にポリマー材料積層体からなる複合体を有するドキュメントに関するものであるが、場合によってこの複合体は、他の材料、例えばボール紙や紙からなる積層体を追加的に含むことができる。この複合体は、とりわけセキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメントの製作に役立つ。
【0034】
とりわけ、ドキュメントは、例えば透明な保護フィルムへ溶接されたポリマー材料積層複合体を有することができる。ポリマー材料以外にも、他の素子および機構、例えばマイクロチップおよびマイクロチップを無線で読み取るためのアンテナ構造がドキュメントの一部であることができる。さらに、ポリマー材料中に、他の物質、例えば未公開(geheime)の添加材を導入することもできる。
【0035】
画像情報は、それ自体公知の方法で、ドキュメント、特にポリマー材料積層複合体の個々のレイヤー上に印刷されているか、あるいは印刷される。好ましい印刷法は、インクジェット印刷または他のデジタル印刷法である。なぜならば、デジタル印刷を用いたドキュメントは容易に個別化可能である、すなわち、例えば将来のドキュメント所有者の個人に対して(例えば旅券用写真の印刷により)パーソナライズできるからである。
【0036】
基本的にポリマー材料積層体の材料としては、例えばセキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメントの分野で慣用的に使用される全ての材料が使用可能である。ポリマー材料積層体は、PC(ポリカーボネート、とりわけビスフェノールAポリカーボネート)、PET(ポリエチレングリコールテレフタレート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、TPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PI(ポリイミドまたはポリ−トランス−イソプレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、およびこれらポリマーの共重合体を含む群からの、同一のまたは異なるポリマー材料をベースとして形成することができる。好ましいのはPC材料の使用であり、その際、決して必須ではないが、例えば、いわゆる低Tg材料は、とりわけ印刷層がその上に塗布されているポリマー材料積層体、および/または印刷層を担持しているポリマー材料積層体と結合されているポリマー材料積層体のためであって、具体的には印刷層のある側に使用可能である。低Tg材料とはガラス転移点が140℃未満のポリマーである。
【0037】
ポリマー材料積層体は充填されてあるいは充填されずに使用することができる。充填されたポリマー材料積層体は特に、着色顔料または他の充填材を含む。また、ポリマー材料積層体は着色剤で着色されるか、あるいは無色であってもよく、後者の場合は透明あっても半透明であってもよい。
【0038】
(ドキュメントまたは積層複合体をラミネートにより得るために)好ましくは、結合されるポリマー材料積層体のうち少なくとも1つの積層のベースポリマーは、同一または異なって、相互に反応性の基を含み、その際、200℃未満のラミネート温度で、第1のポリマー材料積層体の反応性基が互いに、および/または第2のポリマー材料積層体の反応性基と反応する。これにより、ラミネートされた層間の緊密な結合を損なうことなく、ラミネート温度を低下させることができる。反応性基を有する種々異なるポリマー材料積層体の場合、これらの異なるポリマー材料積層体は、それぞれの反応性基の反応により、もはや容易に層間剥離が生じる可能性はない。なぜならば、ポリマー材料の積層間に反応性結合が生じ、同様に反応性ラミネートが生じるからである。さらに、ラミネート温度が低いことから、カラー印刷層の変化、特に変色を防止することが可能となる。したがって、とりわけ裸眼ではもはや知覚できない透かし情報を印刷画像中に含ませることも可能となる。
【0039】
少なくとも1つのポリマー材料の層のガラス転移点Tは熱ラミネートの前に120℃未満(または110℃未満または100℃未満)であり、この場合、ポリマー材料積層体の基本ポリマーの反応性基の相互の反応による熱ラミネートの後の該ポリマー材料の層のガラス転移点が、熱ラミネートの前の上記のガラス転移点よりも、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも20℃高いことが有利である。その際、相互にラミネートする層の反応性結合だけは起こらない。さらに分子量が、したがってガラス転移点も、層内および層間のポリマーの架橋により高くなる。これにより層間剥離はさらに困難となり、特に改ざんをしようとすると、例えば印刷インキが層間剥離に必要な高い温度によって非可逆的に損傷され、そしてそのためにドキュメントは破壊される。こうしたポリマー材料を使用する場合のラミネート温度は180℃未満が好ましく、150℃未満がより良好である。適当な反応性基の選択は、ポリマー化学分野の専門家にとっては問題なく可能である。反応性基は、例えば、−CN、−OCN、−NCO、−NC、−SH、−S、−Tos、−SCN、−NCS、−H、−エポキシ(−CHOCH)、−NH、−NN、−NN−R、−OH、−COOH、−CHO、−COOR、−ハロゲン(Hal)(−F、−Cl、−Br、−I)、−Me−ハロゲン(Hal)(Meは少なくとも2価の金属、例えばMg)、−Si(OR)、−SiHal、−CH=CH、および−COR” (式中、R”は任意の反応性または非反応性の基であることができ、例えば、H、ハロゲン(Hal)、それぞれ直鎖状もしくは分岐状の、飽和されたまたは飽和されていない、場合によっては置換されたC〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C20アラルキル、または1個もしくは複数個の同一もしくは異なるヘテロ原子N、O、またはSを含む対応する複素環である)を含む群から選択される。当然ながら他の反応性基でも可能である。これには、ディールス・アルダー反応または複分解の反応相手も含まれる。
【0040】
反応性基は、基本ポリマーに直接結合されるか、あるいはスペーサ基を介してベースポリマーと結合させることができる。スペーサ基としては、ポリマー化学の専門家に知られているどのスペーサ基も対象となる。その際、スペーサ基は、弾性を付与するオリゴマーまたはポリマーであることができ、これによりセキュリティードキュメントおよび/または有価ドキュメントが破損する危険性が低減される。そのような弾性を付与するスペーサ基は専門家に周知であり、したがってここでより詳細に説明する必要はない。単に例として、いずれも直鎖状または分岐状の、飽和されたまたは飽和されていない、場合によっては置換された−(CH−、−(CH−CH−O)−、−(SiR−O)−、−(C−、−(C10−、C〜Cアルキレン、−C〜C(n+3)アリーレン、C〜C(n+4)アリールアルキレン(式中、nは1〜20、好ましくは1〜10である)、または1個もしくは複数個の同一もしくは異なるヘテロ原子N、O、またはSを含む対応する複素環を含む群から選択されるスペーサ基が挙げられる。さらなる反応性基あるいは修飾の可能性については、“Ullmann´s Encyclopaedia of Industrial Chemistry”, Wiley Verlag, elektronische Ausgabe 2006(非特許文献1)を参照されたい。本発明の実施形態の範囲内において、ベースポリマーとは、実施されるラミネート条件下で反応性の基を有さないポリマー構造を意味する。このポリマーはホモポリマーでもコポリマーでもよい。例示されたポリマーについては修飾されたポリマーも含む。
【0041】
ポリマー材料積層複合体中の各層は、複合体の内部にある層、すなわち積層複合体の表面を形成しない層上に配置されているのが有利である。この場合、セキュリティー機能として用いられる印刷層の偽造または改ざんが困難ないしは不可能となる。これは透かし情報が変化しないように維持するのにも有利である。
【0042】
ただしこの場合、不正操作によって慣習的なカード状データ担体は比較的容易に層間剥離する可能性があるという問題がある。印刷技術法によって積層複合体の内部にあるレイヤーにセキュリティー機能(例えば、全体透かし情報の少なくとも一部)が設けられる場合には、印刷材が、積層複合体の層の材料と少なくとも実質的に同じポリマーからなるバインダーを含むことによってこの問題は解決される。この場合、ラミネートの際に個々の層の一体的結合が形成されるので、層間剥離の危険性は実際的に排除される。複合体の層の少なくともいくつかがポリカーボネートからなる場合、印刷材も同様にポリカーボネートベースのバインダーを含んでいることが特に好ましい。最後の場合、印刷材は積層複合体の内部にある層上に印刷されるが、とりわけこの際、積層複合体の印刷層に接する全ての層がポリカーボネートからなっている。
【0043】
ポリカーボネート複合積層体への印刷には、基本的に通常用いられる全てのインキが使用できる。好ましくは、次を含む調合物が印刷インキとして使用される:A)ポリカーボネート誘導体含有のバインダー0.1〜20重量%、B)好ましくは有機溶剤または溶剤混合物30〜99.9重量%、C)着色剤または着色剤混合物0〜10重量%(重量%は乾燥質量に基づく)、D)官能性材料または官能性材料混合物0〜10重量%、E)添加材および/またくは助剤0〜30重量%、あるいはそれらの物質の混合物。成分A)〜E)の合計は常に100重量%となる。そのようなポリカーボネート誘導体は、ポリカーボネート材料、特に、ビスフェノールAをベースとするポリカーボネート、例えばMakrofol(登録商標)フィルム、と高度に適合性がある。さらに、使用されるポリカーボネート誘導体は高温安定性であり、200℃までまたはそれ以上の典型的なラミネート温度でも全く変色しないので、上述した低Tg材料の使用は必須ではない。詳細には、ポリカーボネート誘導体は、次式(I)で表される官能性カーボネート構造単位を含むことができる。
【0044】
【化1】

【0045】
(式中、RおよびRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C10アリール、好ましくはフェニル、およびC〜C12のアラルキル、好ましくはフェニル−C〜Cアルキル、とりわけベンジルであり;mは4〜7、好ましくは4または5の整数であり;RおよびRはX毎に個々に選択可能であり、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキルであり;Xは炭素であり、そしてnは20超の整数を意味する。ただし少なくとも1つの原子Xにおいて、RおよびRは同時にアルキルを意味する。)ここで、好ましくは1〜2個の原子Xにおいて、とりわけ1個だけの原子Xにおいて、RおよびRは同時にアルキルである。上記のRおよびRは、とりわけメチルであることができる。ジフェニル置換されたC原子(C1)に対してα位にあるX−原子は、ジアルキルで置換することができない。C1に対してβ位にあるX−原子はジアルキルで置換することができる。好ましくはm=4または5である。ポリカーボネート誘導体は、例えば、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール、4,4’−(3,3−ジメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール、または4,4’−(2,4,4−トリメチルシクロペンタン−1,1−ジイル)ジフェノールのようなモノマーをベースにして形成することができる。そのようなポリカーボネート誘導体は、例えば、ドイツ特許出願公開第3832396号(A)(特許文献13)に従って次式(Ia)で表されるジフェノールから製造することでき、その開示内容の全体は本明細書の開示内容に組み入れられる。該式(Ia)のジフェノールを1種用いてホモポリカーボネートを形成することも、該式(Ia)のジフェノールを複数種用いてコポリカーボネートを形成することもできる。(残基、基およびパラメータの意味は上記の式(I)と同様。)
【0046】
【化2】

【0047】
さらに、上記の式(Ia)で表されるジフェノールは、その他のジフェノール、例えば次式(Ib)のジフェノールと混合して、高分子量の、熱可塑性、芳香族ポリカーボネート誘導体を製造するのにも使用できる。
HO−Z−OH (Ib)
【0048】
上記の式(Ib)で表されるその他のジフェノールとして適当なものは、Zが6〜30のC原子を有する芳香族残基であり、これは1つまたは複数の芳香核を含むことができ、置換されることができ、そして脂肪族残基または式(Ia)の環式脂肪族残基でない環式脂肪族残基、または架橋要素としてのヘテロ原子を含むことができる。上記の式(Ib)で表されるジフェノールの例としては、ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらの核がアルキル化またはハロゲン化された化合物が挙げられる。これらのジフェノールおよびさらに別の適切なジフェノールは、例えば、米国特許第3,028,365号(A)(特許文献14)、米国特許第2,999,835号(A)(特許文献15)、米国特許第3,148,172号(A)(特許文献16)、米国特許第3,275,601号(A)(特許文献17)、米国特許第2,991,273号(A)(特許文献18)、米国特許第3,271,367号(A)(特許文献19)、米国特許第3,062,781号(A)(特許文献20)、米国特許第2,970,131号(A)(特許文献21)、米国特許第2,999,846号(A)(特許文献22)、ドイツ特許出願公開第1570703号(A)(特許文献23)、ドイツ特許出願公開第2063050号(A)(特許文献24)、ドイツ特許出願公開第2063052号(A)(特許文献25)、ドイツ特許出願公開第2211956号(A)(特許文献26)、フランス特許出願公開第1561518号(A)(特許文献27)、およびH. Schnell:“Chemistry and Physics of Polycarbonates“, Interscience Publishers, New York 1964(非特許文献2)に記載されており、それらの開示内容の全体を本明細書の開示内容に組み入れるものとする。好ましいその他のジフェノールとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが例示される。特に好ましい式(Ib)のジフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが例示される。とりわけ、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。これら他のジフェノールは単独でも混合物としても使用できる。式(Ia)のジフェノールと、場合によって一緒に使用される式(Ib)の他のジフェノールとのモル比は、100モル%(Ia):0モル%(Ib)〜2モル%(Ia):98モル%(Ib)、好ましくは100モル%(Ia):0モル%(Ib)〜10モル%(Ia):90モル%(Ib)、特に100モル%(Ia):0モル%(Ib)〜30モル%(Ia):70モル%(Ib)である。式(Ia)のジフェノールから、場合によっては、他のジフェノールとの組合せからなる高分子量ポリカーボネート誘導体は、既知のポリカーボネート製造法に従って製造することができる。その際、様々なジフェノールは、ランダム状にもブロック状にも互いに結合できる。使用されるポリカーボネート誘導体は、当該分野で知られている方法で分岐させることができる。分岐が所望される場合、少量の、好ましくは(使用されるジフェノールに対して)0.05〜2.0モル%の三官能性またはそれ以上の化合物、とりわけ3個以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物と、既知の方法で縮合することによって達成できる。3個以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する分岐剤をいくつか挙げると、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ヘキサ[4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェニル]−o−テレフタル酸エステル、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラ[4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ]メタン、および1,4−ビス[4’,4”−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼンがある。それ以外の三官能性化合物をいくつか挙げると、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、および3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールがある。従来知られているポリカーボネート誘導体の分子量調整のための連鎖停止剤として、一官能性の化合物が慣用的濃度で用いられる。適当な化合物は、例えば、フェノール、tert−ブチルフェノール、またはその他のアルキル置換フェノールである。分子量調整にはとりわけ次式(Ic)で表されるフェノールの少量が適している。
【0049】
【化3】

【0050】
(式中、Rは分岐状のCおよび/またはCのアルキル残基を示す。)好ましくはアルキル残基R中のCH−プロトンの割合は47〜89%であり、CH−プロトンおよびCH−プロトンの割合は53〜11%であり;また好ましくはRがOH基に対してo位および/またはp位にあり、特に好ましくはo位の割合の上限は20%である。連鎖停止剤は、使用されるジフェノールに対して一般に0.5〜10モル%、好ましくは1.5〜8モル%の量で用いられる。ポリカーボネート誘導体は好ましくは相−界面挙動に従って従来知られている方法で製造される(参照:H.Schnell: Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, Vol. IX, Seite 33ff., Interscience Publ. 1964(非特許文献3))。その場合、式(Ia)のジフェノールはアルカリ性の水相中に溶解される。他のジフェノールとのカーボネートコポリマーを製造するには、式(Ia)のジフェノールと、例えば式(Ib)で表される他のジフェノールの混合物が使用される。分子量を調整するには、例えば式(Ic)の連鎖停止剤が加えられる。次いで、不活性の、好ましくはポリカーボネートを溶解する有機相の存在下で、相−界面縮合法に従ってホスゲンと反応させる。反応温度は、0℃〜40℃である。また場合により一緒に使用される分岐剤(好ましくは0.05〜2.0モル%)は、ホスゲン化の前にジフェノールと共にアルカリ性水相に提供されるか、あるいは有機溶剤中に溶解されて、加えることができる。式(Ia)のジフェノールおよび場合により式(Ib)の他のジフェノールに加えて、モノおよび/またはビスクロロ炭酸エステルも使用することができ、その際、これは有機溶剤中に溶解して加えられる。連鎖停止剤ならびに分岐剤の量は、式(Ia)および場合により式(Ib)のジフェノラート残基のモル量に応じ;クロロ炭酸エステルを一緒に使用する場合は、ホスゲンの量は公知のようにそれに対応して減らすことができる。連鎖停止剤用、および場合により分岐剤ならびにクロロ炭酸エステルに適した有機溶剤は、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン、とりわけ塩化メチレンとクロロベンゼンの混合物である。場合によっては、使用する連鎖停止剤および分岐剤を同じ溶剤中に溶解することができる。相−界面重縮合のための有機相としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンならびに塩化メチレンとクロロベンゼンの混合物が使われる。アルカリ性水相としては、例えばNaOH溶液が使われる。相−界面法によるポリカーボネート誘導体の製造は、通常は、3級アミン、特に3級脂肪族アミン、例えばトリブチルアミンやトリエチルアミンのような触媒によって慣用的な方法で行うことができ;触媒は、使用されるジフェノール類のモル量に対して0.05〜10モル%の量で使用することができる。触媒は、ホスゲン化の始まる前、またはホスゲン化の間、あるいはその後で加えることができる。ポリカーボネート誘導体は、公知の均一相での方法、いわゆる「ピリジン法」によっても、また、公知の溶融エステル交換法により、ホスゲンの代わりに例えばジフェニルカーボネートを使用しても製造することができる。ポリカーボネート誘導体は、直鎖状あるいは分岐状であってよく、式(Ia)のジフェノールをベースとするホモポリカーボネートまたはカーボネートコポリマーである。その他のジフェノール、とりわけ式(Ib)のジフェノール有する任意の組成によって、ポリカーボネートの性質を有利な方法で変えることができる。そのようなカーボネートコポリマーにおいて、ポリカーボネート誘導体中に含まれる式(Ia)のジフェノールの量は、ジフェノール単位の全量100モル%に対して、100モル%〜2モル%、好ましくは100モル%〜10モル%、とりわけ100モル%〜30モル%である。ポリカーボネート誘導体は、式(Ib)に基づくモノマー単位M1、好ましくはビスフェノールA、ならびに、ジェミナル二置換されたジヒドロキシジフェニルシクロアルカン、好ましくは4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノールに基づくモノマー単位M2を含むコポリマー、とりわけそれらからなるコポリマーであることができ、ここでモル比M2/M1は、好ましくは0.3超、とりわけ0.4超、例えば0.5超である。好ましいのは、ポリカーボネート誘導体の(重量平均)平均分子量は少なくとも10,000、好ましくは20,000〜300,000の場合である。
【0051】
上記の成分Bは基本的に、本質的に有機性または水性でよい。本質的に水性とは、成分B)の20重量%までが有機溶剤であってよいことを意味する。本質的に有機性とは、成分B)中に水が5重量%までは存在してよいことを意味する。成分Bは、好ましくは、液体の脂肪族の、脂環式の、および/または芳香族の炭化水素、液体の有機エステルおよび/またはそのような物質の混合物を含むか、あるいはそれらからなる。使用される有機溶剤は、好ましくはハロゲンを含まない有機溶剤である。考慮の対象となるのは、とりわけメシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、クメン、および溶剤ナフサ、トルエン、キシレンのような脂肪族の、脂環式の、芳香族の炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートのような(有機)エステルである。好ましくは、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、クメン、および溶剤ナフサ、トルエン、キシレン、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸メトキシプロピル、エチル−3−エトキシプロピオネートである。とりわけ好ましくは、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、1,2,4−トリメチルベンゼン、クメン(2−フェニルプロパン)、溶剤ナフサ、およびエチル−3−エトキシプロピオネートである。好ましい混合溶剤は、例えば、L1)0〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、特に2〜3重量%のメシチレン、L2)10〜50重量%、好ましくは25〜50重量%、特に30〜40重量%の1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、L3)0〜20重量%、好ましくは1〜20重量%、特に7〜15重量%の1,2,4−トリメチルベンゼン、L4)10〜50重量%、好ましくは25〜50重量%、特に30〜40重量%のエチル−3−エトキシプロピオネート、L5)0〜10重量%、好ましくは0.01〜2重量%、特に0.05〜0.5重量%のクメン、および、L6)0〜80重量%、好ましくは1〜40重量%、特に15〜25重量%の溶剤ナフサを含み、ここで成分L1〜L6の合計は常に100重量%になる。
【0052】
調合物は、具体的に、A)ジェミナル二置換ジヒドロキシジフェニルシクロアルカンをベースとするポリカーボネート誘導体を含むバインダー0.1〜10重量%、特に0.5〜5重量%、B)有機溶剤または溶剤混合物40〜99.9重量%、特に45〜99.5重量%、C)着色剤または着色剤混合物0.1〜6重量%、特に0.5〜4重量%、D)官能性材料または官能性材料混合物0.001〜6重量%、特に0.1〜4重量%、E)添加剤および/また助剤、またはそのような物質の混合物0.1〜30重量%、特に1〜20重量%を含有することができる。
【0053】
成分Cとしては、着色剤が用いられる限り、基本的にはいずれの着色剤または着色剤混合物も対象になる。着色剤は色を付与する全ての物質を意味する。すなわち、染料(染料に関する概説は、“Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry”, Wiley Verlag, Electronic Release,2007(非特許文献4)の“Dyes, General Survey“の章)だけでなく、顔料(有機ならびに無機の顔料に関する概説は、“Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry”, Wiley Verlag, Electronic Release,2007(非特許文献4)の“Pigments, Organic”および/または“Pigments, Inorganic“の章)も意味する。染料は、成分Bの溶剤中に可溶性であるか、あるいは(安定に)分散可能であるかまたは懸濁可能であるべきである。さらに、着色剤は、160℃以上の温度で5分を超える時間の間安定性である、とりわけ色安定性であることが有利である。着色剤は、処理条件下で所与のかつ再現可能な変色に供され、そしてそれ相応に選択することが可能である。顔料は熱安定性に加え、とりわけ微細粒径分布になければならない。インクジェット印刷では、実際上粒径は1.0μmを超えてはならず、さもないと印刷ヘッドの目詰まりが生じる。一般的に、ナノスケールの固体顔料および溶解された染料が実証されている。着色剤はカチオン性、アニオン性または中性でよい。インクジェット印刷用に使用される着色剤について、単なる例示として挙げると、Brillantschwarz C.I. Nr. 28440、Chromogenschwarz C.I. Nr. 14645、Direkttiefschwarz E C.I. Nr. 30235、Echtschwarzsalz B C.I. Nr. 37245、Echtschwarzsalz K C.I. Nr. 37190、Sudanschwarz HB C.I. 26150、Naphtolschwarz C.I. Nr. 20470、Bayscript(登録商標)Schwarz液状、C.I. Basic Black 11、C.I. Basic Blue 154、Cartasol(登録商標)Tuerkis K−ZL液状、Cartasol(登録商標) Tuerkis K−RL液状(C.I. Basic Blue 140)、CartasolBlau K5R液状。その他の適したものとして、例えば市販の染料として、Hostafine(登録商標)Schwarz TS液状(ドイツClariant社の販売)、Bayscript(登録商標)Schwarz液状(C.I.−Gemisch、ドイツBayer社の販売)、Cartasol(登録商標)Schwarz MG液状(C.I. Basic Black 11、ドイツClariant社の登録商標)、Flexonylschwarz(登録商標)PR 100(E C.I. Nr. 30235、Hoechst社の販売)、ローダミンB、Cartasol(登録商標)Orange K3 GL、Cartasol(登録商標)Gelb K4 GL、Cartasol(登録商標)K GLまたはCartasol(登録商標)Rot K−3Bがある。その他、溶解性の着色剤として、アントラキノン系染料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、クマリン系染料、メチン系染料、ペリノン系染料、および/またはピラゾール系染料が、例えば商品名Macrolex(登録商標)で入手でき、使用される。その他の、適当な着色剤は、“Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry”, Wiley Verlag, Electronic Release,2007(非特許文献4)の”Colorants Used in Ink Jet Inks“の章に記載されている。溶解性の良好な着色剤は、印刷層のマトリックスあるいはバインダー中へ最適に一体化される。着色剤は、染料あるいは顔料として直接添加するか、または染料および顔料とさらにバインダーと一緒の混合物のペーストとして添加する。この追加のバインダーは調合物中の他の成分と化学的適合性でなければならない。そうしたペーストが着色剤として使用される場合は、成分Bの使用量は、ペーストの他の成分を除いた着色剤の量だけを示す。こうしたペーストの他の成分は、成分Eの中に含めるべきである。いわゆる有色顔料をシアン・マゼンタ・イエローのスケール色として、そして好ましくはカーボンブラックも使用することで全色調印刷が可能となる。
【0054】
成分Dは、技術的補助手段を用いてヒトの目で直接、または適当な検知器を使用することにより見えるようになる物質を含む。これは、有価ドキュメントおよびセキュリティードキュメントの保護のために使用される、当業者に周知の材料を意味する(van Renesse, “Optical document security”, 3rd Ed., Artech House、2005(非特許文献5)も参照)。これには、光ルミノフォア、電気ルミノフォア、反ストークスルミノフォア、フルオロフォア等のルミネセンス物質(染料あるいは顔料、有機あるいは無機)、さらには磁化可能な、光音響的に応答可能な、または圧電性の材料を含む。さらに、ラマン活性材料、またはラマン活性強化材料、さらにはいわゆるバーコード材料が使用される。この場合も、成分Cについての説明のように、成分B中における溶解性、また顔料系の場合は1μm未満の粒径、さらに160℃を超える温度に対する熱安定性が好ましい判定基準として有効である。官能性材料は直接加えても、ペーストを介して、すなわち成分Eの部分となる追加のバインダーとの混合物に、または成分Aの使用されるバインダーに加えてもよい。
【0055】
成分Eは、インクジェット印刷用のインクの場合、通常の調整された物質、例えば消泡剤、調整剤、湿潤剤、界面活性剤、流動性改良剤、乾燥剤、触媒、(光)安定剤、保存料、殺生物剤、界面活性剤、粘度調整用有機ポリマー、緩衝液システムを含む。調整剤としては、当業者に広く用いられる調整塩が挙げられ、乳酸ナトリウムが例示される。殺生物剤としては、インク用に用いられる市販の全ての保存料が対象になる。その例には、Proxel(登録商標)GXLおよびParmetol(登録商標)A26がある。界面活性剤としては、インク用に用いられる市場から入手可能な全ての界面活性剤が対象になる。好ましくは、両性またはノニオン性界面活性剤である。しかし、当然ながら染料の性質を変えない特定のアニオン性またはカチオン性界面活性剤の使用も可能である。適切な界面活性剤としては、ベタイン、エトキシ化ジオールなどが例示される。例えば製品シリーズSurfynol(登録商標)、Tergitol(登録商標)がある。特にインクジェット印刷用に用いる際の界面活性剤の量は、例えば、インキの表面張力が25℃の測定で10〜60mN/mの範囲、好ましくは20〜45mN/mとなるように選択する。緩衝液システムはpH値を2.5〜8.5の範囲、特に5〜8の範囲に安定させるように調整することができる。好ましい緩衝液システムとしては、酢酸リチウム、ホウ酸緩衝液、トリエタノールアミン、または酢酸/酢酸ナトリウムがある。緩衝液システムは、特に実質的に水性の成分Bの場合に意味を有する。インキの粘度調整には(場合によっては水溶性の)ポリマーを用いることができる。この場合、慣用的なインキ調合物に適したポリマーの全てが対象になる。例としては、特に平均分子量3,000〜7,000の水溶性でん粉、特に平均分子量25,000〜250,000のポリビニルピロリドン、特に平均分子量10,000〜20,000のポリビニルアルコール、とりわけ平均分子量1,000〜8,000のキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーある。最後に示したブロックコポリマーの製品シリーズの例には、Pluronic(登録商標)がある。殺生物剤の量は、インクの全量に対して、0〜0.5重量%の範囲、好ましくは0.1〜0.3重量%でよい。界面活性剤の量は、インクの全量に対して、0〜0.2重量%の範囲でよい。調整剤の量は、インクの全量に対して、0〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%とすることができる。助剤には、その他の成分、例えば酢酸、ギ酸、N−メチルピロリドンあるいは使用される染料溶液またはペーストからのその他のポリマーがある。成分Eとして適した物質は、補完のため、例えば“Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry”, Wiley Verlag, Electronic Release,2007(非特許文献4)の“Paints and Coatings”の章、“Paint Additives”の節を参照されたい。
【0056】
上述したインキ組成物は特にインクジェット印刷に適しているが、各成分の比率を用途に応じて調整さえすれば、任意の別の印刷法にも使用できる。このとき肝要なのは、複合体のポリマー材料積層体がポリカーボネートからなる場合、上記の組成物がバインダーとしてポリカーボネート誘導体を含むことである。
【0057】
上記の印刷材(特にインキ)が使用されるか否かにかかわらず、全く一般的に、透かし情報の存在するレイヤーの少なくとも1つにおける画像情報がインクジェット印刷でのピクセル(画素)によって形成されることが好ましい。そうした印刷画像は、電子透かしを画像情報に取り込むのに極めて適している。例えば、印刷画像のピクセルの形状、大きさおよび/または構成を変化させることにより透かしを画像情報に取り込むことができる。例えば、所定の形状および/または大きさの複数の部分面から合成したピクセルによって、透かし情報の一部である画像点をコードすることもできる。ピクセルが他の形状であれば、それは、例えば、透かし情報に属さないことになる。
【0058】
本発明の例示的実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ドキュメントの積層体の側面分解図である。
【図2】ドキュメントの積層体の透視分解図である。
【図3】ドキュメントのオーセンティケーション方法の第1の例示的実施形態を表すフローチャートである。
【図4】オーセンティケーション方法の別の例示的実施形態を表すフローチャートである。
【図5】予め定めたように意図的に不鮮明に画像対象を描写したさらなるセキュリティー機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、ドキュメント1の5つの層3、5、7、9、11の側面分解図であり、最上層3と、最下層11がドキュメント1の外表面を形成する。この図は、ドキュメント1の製作の中間工程の図と考えてよい。その場合、図1は層3〜11のラミネート直前の状態を示す。
【0061】
ドキュメント1の内側にある層5、7、9のそれぞれの下面に部分領域15、17、19がある。これらの部分領域15、17、19には、印刷画像、好ましくはインクジェット印刷画像の形で画像情報がそれぞれ印刷されている。好ましくは、それぞれの印刷画像は、例えばRGBまたはCMYKといった多成分表色系の原色1色だけで印刷される。図1の左方に示された、層7と層9の間に上下に並んだ3つの点で表されているように、ドキュメントにはさらに多くの層が存在していてもよく、それらにおいても部分領域が印刷可能であり、例えばCMYK色空間の欠けていた4番目の色で印刷できる。
【0062】
印刷された部分領域15、17、19は、層5、7、9がラミネートされる前に、重なり合うように各層内に配置されているので、部分領域15、17、19中の印刷画像は、ドキュメント1の外表面を上および/または下から見たときに全体画像を生み出す。したがって上述の表色系の場合、この全体画像は、通常多色である。
【0063】
部分領域15、17、19のうち少なくとも2つの領域は、それぞれ印刷画像中に透かし情報を含んでいる。このとき透かし情報は、好ましくは電子透かし情報であり、これは観察者には知覚不可能か、あるいは技術的補助手段を用いて初めて知覚できるように形成されている。
【0064】
図2に描かれた層5、7、9は、図1によるドキュメント1の各層であることができる。これらの層にも、画像情報が印刷された部分領域15、17、19が存在する。ここに図示された例示的実施形態では、領域15、17、19にはそれぞれ透かし情報を含んだ部分領域25、27、29が存在する。これらの部分領域25、27、29の外側にも、画像情報は存在するが、透かし情報は存在しない。また図2が示すように、層5、7、9を正確にラミネートすれば、部分領域25、27、29は上下に重ならない。もし不慣れな観察者や潜在的偽造者が、ドキュメント1の表面を観察して透かしに気づいたとしても、全体透かし情報が層5、7、9の3つのレイヤーに分配されていることまでは分からない。例えば、層5、7、9の厚さが約50μmであると、例えば、各層への色の割り当てについての予備知識なしでは、透かし情報が各層間に分配されていることを知ることは不可能である。異なる層にある透かし情報が重なるように配置されている場合にも、同様のことが当てはまる。例えば部分領域25、27、29の全体または一部が重なり合ってもよく、ここで重なり合うという概念は、図2に描かれる領域15、17、19を上または下から見た場合のことである。
【0065】
図3および図4を用いて、透かし情報の評価の例示的実施形態を説明する。ここでは透かし情報の評価および取得についてのみ説明するが、透かし情報の取り込みに関してドキュメントをどのように製作するか、または製作されたかも直接的に明らかとなる。
【0066】
図3の左上に示されるドキュメント1は、例えば図1および/または図2に描かれたドキュメントでよい。第1の工程31で、ドキュメント1の印刷画像15から第1の透かし情報が取得される。例えば、まず印刷画像15の全画像情報が取得される。これは、ドキュメント1の第1のレイヤー中の画像情報のみに限定される。例えばこのレイヤー中の全ての印刷画像は、単一の色(例えば、イエロー)で印刷されている。この印刷画像から、それ自体公知の方法で、例えば予め定められた評価規則を用いて、透かし情報を抽出することができる。第1の透かし情報の抽出は、図3でブロック33として示されている。
【0067】
次の工程35で、第1の透かし情報が評価部37に送られる。これにより、ドキュメント1に含まれる全体透かし情報の一部だけが得られる。
【0068】
本特許出願において複数のレイヤー中の画像情報により形成される全体画像について述べるとき、この画像が1つの連続する平面中の一画像である必要はない。むしろ、本発明は、複数の画像または部分画像が観察者に示されるドキュメントの平面に分配されている場合を包含している。透かし情報も、これら複数の画像または部分画像に分配することができる。
【0069】
工程39において、印刷画像17の存在する第2のレイヤーから、透かし情報も含む画像情報を取得する。例えば、上述のやり方で、工程41で第2の透かし情報を入手し、これを工程43で評価部37に送る。
【0070】
図3の下部に示されているように、さらにドキュメント1の第3のレイヤーから、印刷画像19からの画像情報が取得され(工程45)、第3の透かし情報が抽出され(工程47)、この第3の透かし情報が工程49で評価部37に送られる。
【0071】
図4に描かれるように、ドキュメント1が真正であるか否かを確認するのに用いられる評価部37の機能の仕方についてさらに詳しく触れる。
【0072】
図3に関して説明した方法には、数多くの変形がある。例えば、透かし情報を(例えば、ドキュメント1の2つのレイヤーまたは4つのレイヤーとは)別の数のレイヤーから抽出できる。透かし情報が個別のレイヤー内に存在する画像領域は、全体が重なっていてももしくは部分的に相互に重なっていても、また重なっていなくてもよい。さらに、オーセンティケーションに必要な全体情報が、個別のレイヤーにある部分印刷画像から合成された画像のみから得られなくてもよい。すなわち、ドキュメントに含まれる他の情報と、画像中に含まれる透かし情報とを組み合わせて全体情報とすることもできる。この場合、全体情報によって初めてドキュメントが真正であるか否かが決定可能である。他の情報をドキュメント中に含めることができる方法の例としては、デジタルデータメモリ(例えばメモリチップ)、および、例えば機械読取り領域(MRZ=Machine Readable Zone)内にあり、任意選択に符号化可能でもある光学的認識可能情報がある。
【0073】
図4は、ドキュメント1の異なる2つのレイヤー中のみに存在する印刷画像情報の評価を行う例示的実施形態を示す。最初の工程で、第1のレイヤーの印刷画像15から印刷画像情報が取得される(工程51)。この中から、工程53において第1の透かし情報が抽出される。この方法は、第1の透かし情報から得られた情報を、工程55で他の透かし情報の取得および/または評価の制御に使用する点で図3での方法と相違している。例えば、第1の透かし情報は、ドキュメント中で第2の透かし情報を取得できる場所についての情報、すなわち、例えば、ドキュメント1のどのレイヤーのどの部分領域に第2の透かし情報が含まれているかという情報を含んでいる。その際、レイヤーは割り当てられている色によって定義できる。
【0074】
工程59において、工程55からの情報を用いて、印刷画像17を有する第2のレイヤーで画像情報を取得し、工程61で目的の第2の透かし情報を抽出する。
【0075】
図3による印刷画像15、17、19と同様に、図4による印刷画像15、17も、好ましい形態では、それぞれが表色系の単一の色で印刷される。図3の印刷画像15について既に上述したが、この印刷画像は、例えばイエローの印刷材料で印刷される。これに対し図3および図4の印刷画像17はそれに対応して、例えばマゼンタ色の印刷材料で印刷される。
【0076】
工程53、61で抽出された第1および第2の透かし情報は、工程57、63で評価部37に送られる。
【0077】
図4を用いて説明した方法を変形することもできる。とりわけ、この方法と、図3を用いて説明した方法とを組み合わせることができる。したがって例えば、異なるレイヤーからの透かし情報を他から全く独立に取得し、抽出することも、また個別のレイヤーからの透かし情報を他のレイヤーの透かし情報を見つけ、取得し、抽出するのに用いることも可能である。さらに、後で詳しく述べる評価部37において、個別の部分領域または個別のレイヤーからの透かし情報を、他のレイヤーまたは全体透かし情報からの透かし情報の評価を制御するのに使用することもできる。
【0078】
簡単な事例では評価部37は次のように働く。図3に示されるように、個々のレイヤー中の透かし情報はそれぞれが、他の透かしとは無関係の別々の情報を含む電子透かしを含む。例えば第1の透かし情報からはドキュメント所有者の名前が求められ、第2の透かし情報からはドキュメント所有者の誕生日が求められ、第3の透かし情報からはドキュメント番号が求められる。これらの情報が、ドキュメント中の平文からの情報、または例えばドキュメントのMRZから得られる情報と比較される。例えば、名前、誕生日またはドキュメント番号が一致しない場合、そのドキュメントは真正でない。
【0079】
本発明においては全く一般的に、透かし情報は暗号化でき、解読キーを知ることで初めて透かしから取得できる。また、透かし情報の作成には、例えば暗号学的ハッシュ関数が適用されるので、透かし情報からその透かし情報の根底にある元の情報を推定することはできない。この場合、評価部では、例えばハッシュ関数の適用により真正性を検査するための比較情報を作成するのにオリジナル情報が用いられる。さらに透かしに含まれる情報には、例えば発行者の署名を付すことによってその出所を明示することができる。
【0080】
全体透かし情報の評価の変形では、全体情報を、個別の透かし情報の例えば和から、または別の所定の論理的結合から合成できる。例えば図3により第1、第2、第3の透かしから得られたビット列を所定の方法で並べ合わせ、単一の全体ビット列を得ることが可能である。
【0081】
評価を個々の透かし情報の取得および抽出と考えた場合の別の可能な評価手段として、上述したように既に抽出された透かし情報を制御に、例えば透かし情報の暗号解読、透かし情報の抽出の順序、および/または同じドキュメント中の別の透かし情報の評価、および/または冗長情報の検出の制御に使用する。また既に抽出された透かし情報が、適用すべき評価方法(例えば、色振幅空間から周波数空間への変換)を規定することもできる。
【0082】
前記の事例では、個々の透かし情報に含まれる情報は独立の情報であり、したがってそれ自体を記録し評価することができる。しかし、同一のレイヤー内の異なる部分領域中の複数の透かし情報、および/または異なるレイヤー中の複数の透かし情報を取得および抽出して初めて全体情報が得られ、これを評価できるようにすることも可能である。このとき、評価可能な全体情報に合成される部分情報は、上述のようにそれぞれ1つの色および/またはレイヤーに割り当てることができる。
【0083】
混合形態も可能である。この場合、透かし情報の一部(例えば、イエローが割り当てられたレイヤー中の透かし情報)はそれ自体で、他の透かし情報に依存せずに評価可能であり、他の平面(例えば、マゼンタ色が割り当てられた第2の平面およびシアン色が割り当てられた第3の平面)からの透かし情報は、2つまたはそれ以上のレイヤーからの全部の情報が揃って初めて評価可能となる。また混合形を、全てのレイヤーの全体透かし情報のうち抽出済みの一部が、取得、抽出および/または評価を制御するような形に構成することもできる。「制御する」というのは、情報がプロセスを単独で強制的に制御するのを意味するのではない。そうではなくて例えばソフトウェアが、既に抽出された透かし情報を用いてプロセスを制御するという意味である。
【0084】
ここで説明すべき別の発想は、ドキュメントの複数のレイヤーに透かし情報を取り込むという上述の発想と組合せ可能であり、またそれとは独立に実際に実行することもできる。
【0085】
この発想は、今日、偽造者が非常に高解像度の光学スキャナを使用するという問題が前提になっている。追加のセキュリティー機能をドキュメント中に設けるために、それ自体光学的に読み取り可能な情報(例えば、文字シンボルまたは他のシンボル、ロゴまたはグラフィック、バーコードおよび/または透かし、特に電子透かし)を、所定の規則に従いドキュメント中に不鮮明に取り込むことが提案される。不鮮明とは、それぞれの印刷対象(シンボル等、上記参照)の縁部で色の強度経過が緩慢である、すなわち不鮮明に取り込むという操作なしの情報に比べて、より長い距離を経てゼロまたは他の強度値に低下していくことを意味する。
【0086】
極端な場合、この不鮮明操作により、情報が観察者によってもはや認知不能になる。例えば、波縞模様の場合のように類似する幾何分布では、印刷色の強度極大と極小をドキュメント上に形成することが考えられるが、このとき例えば強度極大は、波縞線が通常通るところに、強度極小は、例えば通常2本の波縞線の間の中間位置にあるようにする。強度極大が充分小さく選ばれ、不鮮明度が充分大きく選ばれると、すなわち強度極大から強度極小への移行が、単位距離当たりの強度のわずかな低下によって行われると、そのようにして得られた模様または情報はドキュメント中で認知できないか、または陰影としてしか認知できない。
【0087】
印刷画像を光学的に取得した後、オリジナル情報が不鮮明操作によってどのように変更されたかに関する知識を使用してオリジナル情報を計算することができる。例えば評価方向に沿った色強度に対する閾値を使用して、いつ閾値に到達し、もしくは超えたか、または到達し、もしくは下回ったかが求められ、さらに閾値に到達し、超えた場所、または下回った場所が、識別すべき平面の縁部として定義される。別の可能な手段として、評価方向に沿った強度分布を、例えば場所の関数として強度勾配を計算することにより求め、強度分布が実質的により急峻である、対応する印刷画像を計算する。
【0088】
とりわけデジタル印刷においては、単位面積当たりのある色の画素数を多く、もしくは少なく(および/または大きく、もしくは小さく)印刷することで強度を変えることができる。
【0089】
この不鮮明操作のアイデアを、次に、画像情報をドキュメントの異なるレイヤーに配置することに関して既に述べた本発明の1つまたは複数の特徴と組み合わせる。その場合、画像情報が透かし情報も含むことは必須ではない。しかし、少なくとも1つのレイヤーが透かし情報をも含むことは可能である。
【0090】
不鮮明操作を、全体画像のための画像情報を含む全てのレイヤーでなく、単に1つまたは複数のレイヤーでのみ実施することが提案される。
【0091】
例示的実施形態が図5に示される。図の上部に文字「A」が、左には鮮明に、中央には第1の不鮮明操作の適用後で、右には第2の不鮮明操作の適用後で示される。ここで第1の不鮮明操作では、第2の不鮮明操作に比べて不鮮明度が低くなっている。
【0092】
図5の下部は、上部の文字「A」の3種の描画のそれぞれに対する全体印刷画像を示す。ここで文字「A」はドキュメントの第1のレイヤーに印刷され、図5の下部に認められるアルファベットは、付加的に1〜4の数字とともに、第1の平面とは異なる第2の平面に印刷される。ここでも、異なる平面またはレイヤーに、それぞれ表色系の1つの色を割り当てることができる。文字「A」が例えばイエローで、アルファベットは黒色で印刷され、文字「A」に第2の不鮮明操作が適用される場合、この文字はさらに識別が困難になる(図5右下)。
【0093】
図5の下部の斜線陰影で示すように、例えばドキュメントの文字「A」のレイヤーまたはアルファベットのレイヤーまたは別のレイヤーに追加的に陰影を印刷することができ、これは文字「A」の識別性をさらに減じる。
【0094】
不鮮明処理が施された情報を、鮮明に印刷された情報をも含む、複数レイヤーの印刷画像の1つのレイヤーに取り込むことも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドキュメント(1)を製作する方法であって、
− ドキュメント(1)の複数のレイヤー(15、17、19)にそれぞれ画像情報が取り込まれ、前記画像情報が補完し合って全体画像となり、
− 前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも2つのレイヤー中の前記画像情報が、電子透かし情報(25、27、29)を含み、
ここで、前記少なくとも2つのレイヤー(15、17、19)中の前記電子透かし情報(25、27、29)が、全体となって初めてドキュメント(1)のオーセンティケーションのためのセキュリティー機能が構築される、上記方法。
【請求項2】
前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも1つのレイヤーにおいて、透かし情報(25、27、29)が画像平面の部分領域に取り込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のレイヤー(15)中の透かし情報(25、27、29)が、前記第1のレイヤーまたは第2のレイヤー(17)のどの部分領域に他の透かし情報が配置されているかについての情報を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1のレイヤー(15)中の透かし情報(25、27、29)が、第2のレイヤー(17)中の、および/または第1のレイヤーの他の部分領域中の透かし情報をどのように評価するかについての情報を含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
別々の異なるレイヤー(15、17、19)に取り込まれている透かし情報(25、27、29)が、全体となって初めて評価可能なオーセンティケーション情報を形成する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
画像情報が単一のレイヤーに関して非選択的に光学的に取得される場合には、前記透かし情報が第1の全体情報を形成するように、そして画像情報が個々のレイヤー(15、17、19)に関して選択的に光学的に取得される場合には、前記透かし情報が前記第1の全体情報とは別の第2の全体情報を形成するように、透かし情報が別々の異なるレイヤー(15、17、19)中に取り込まれる、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記ドキュメント(1)の複数の隣接する積層(5、7、9)がそれぞれポリマー材料によって形成され、前記隣接する積層(5、7、9)が相互に強固に結合されて、ポリマー材料積層複合体を形成する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記隣接する積層(5、7、9)の少なくとも2つがポリカーボネート材料から形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのレイヤー(15、17、19)中の前記画像情報が、ポリカーボネートをベースとするバインダーを含む印刷材によって形成される、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記画像情報が、前記ドキュメント(1)の前記個々のレイヤー(15、17、19)中で、それぞれ異なる色で表される、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
透かし情報(25、27、29)を含む前記レイヤー(15、17、19)の少なくとも1つ中の前記画像情報が、インクジェット印刷の画素によって形成される、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
ドキュメント、特に、有価ドキュメントおよび/またはセキュリティードキュメントであって、
− 前記ドキュメントが、複数のレイヤー(15、17、19)を有し、前記レイヤー中に画像情報がそれぞれ取り込まれ、前記画像情報が補完し合って全体画像となり、
− 前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも2つのレイヤー中の前記画像情報が、透かし情報(25、27、29)を含み、
ここで、前記少なくとも2つのレイヤー(15、17、19)中の透かし情報(25、27、29)が、全体となって初めてドキュメント(1)のオーセンティケーションのためのセキュリティー機能が構築される、ドキュメント。
【請求項13】
前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも1つのレイヤーにおいて、透かし情報(25、27、29)が画像平面の部分領域に取り込まれている、請求項12に記載のドキュメント。
【請求項14】
第1のレイヤー(15)中の前記透かし情報(25)が、前記第1のレイヤーまたは第2のレイヤー(17)のどの部分領域に他の透かし情報(27)が配置されているかについての情報を含む、請求項10および11に記載のドキュメント。
【請求項15】
第1のレイヤー(15)中の透かし情報(25、27、29)が、第2のレイヤー(17)中の透かし情報(25、27、29)、および/または第1のレイヤーの他の部分領域中の透かし情報(25、27、29)を、どのように評価するかについての情報を含む、請求項12〜14のいずれか一つに記載のドキュメント。
【請求項16】
別々の異なるレイヤー(15、17、19)中に取り込まれている透かし情報(25、27、29)が、全体となって初めて評価可能なオーセンティケーション情報を形成する、請求項12〜15のいずれか一つに記載のドキュメント。
【請求項17】
画像情報が単一のレイヤーに関して非選択的に光学的に取得される場合には、前記透かし情報が第1の全体情報を形成するように、そして画像情報が個々のレイヤー(15、17、19)に関して選択的に光学的に取得される場合には、前記透かし情報が、前記第1の全体情報とは別の第2の全体情報を形成するように、前記透かし情報(25、27、29)が別々の異なるレイヤー(15、17、19)中に取り込まれる、請求項12〜16のいずれか一つに記載のドキュメント。
【請求項18】
前記ドキュメント(1)の複数の隣接する積層(5、7、9)がそれぞれポリマー材料によって形成され、前記隣接する積層(5、7、9)が相互に強固に結合されて、ポリマー材料積層複合体を形成する、請求項12〜17のいずれか一つに記載のドキュメント。
【請求項19】
前記隣接する積層(5、7、9)の少なくとも2つがポリカーボネート材料を含む、請求項18に記載のドキュメント。
【請求項20】
前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも1つのレイヤー中の画像情報が、ポリカーボネートをベースとするバインダーを含む印刷材によって形成される、請求項12〜19のいずれか一つに記載のドキュメント。
【請求項21】
前記画像情報が、前記ドキュメント(1)の前記個々のレイヤー(15、17、19)中で、それぞれ異なる色で表される、請求項12〜20のいずれか一つに記載のドキュメント。
【請求項22】
透かし情報(25、27、29)を含む前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも1つのレイヤーの画像情報が、インクジェット印刷の画素によって形成されている、請求項12〜21のいずれか一つに記載のドキュメント。
【請求項23】
ドキュメントが真正であるか否かを確認する、ドキュメントをオーセンティケーションする方法であり、
− ドキュメント(1)の複数のレイヤー(15、17、19)中でそれぞれ画像情報が取り込まれ、その際、異なるレイヤー(15、17、19)の前記画像情報が補完し合って全体画像となり、
− 前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも2つのレイヤー中の前記画像情報から、それぞれ透かし情報(25、27、29)が抽出され、
前記少なくとも2つのレイヤー(15、17、19)の抽出された透かし情報(25、27、29)の全体から、前記ドキュメントが真性であるか否かが確認される、上記方法。
【請求項24】
前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも1つのレイヤーにおいて、透かし情報(25、27、29)が画像平面の部分領域中で取り込まれる、請求項23に記載のオーセンティケーションする方法。
【請求項25】
第1のレイヤー(15)中の透かし情報(25)から、第1のレイヤーまたは第2のレイヤー(17)のどの部分領域に他の透かし情報(27)が配置されているかが確認される、請求項24に記載のオーセンティケーションする方法。
【請求項26】
第1のレイヤー(15)中の透かし情報(25)から、第2のレイヤー(17)中の透かし情報(27)、および/または第1のレイヤーの他の部分領域中の透かし情報(27)が、どのように評価されるかが確認される、請求項23〜25のいずれか一つに記載のオーセンティケーションする方法。
【請求項27】
全体となって初めて評価可能なオーセンティケーション情報を形成する透かし情報(25、27、29)が、別々の異なるレイヤー(15、17、19)中で取り込まれる、請求項23〜26のいずれか一つに記載のオーセンティケーションする方法。
【請求項28】
別々の異なるレイヤー(15、17、19)中の画像情報が、単一のレイヤーに関して非選択的に光学的に取得され、そこから第1の全体情報を形成する第1の透かし情報が抽出され、その際、さらに、画像情報が前記個々のレイヤー(15、17、19)に関して選択的に光学的に取得され、そこから個々のレイヤー(15、17、19)に関して、第2の全体情報を形成する透かし情報が抽出され、そしてその際、前記第1の全体情報および前記第2の全体情報が評価されて、ドキュメントが真正であるか否かが確認される、請求項23〜27のいずれか一つに記載のオーセンティケーションする方法。
【請求項29】
前記ドキュメント(1)の前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも1つのレイヤー中の画像情報が、前記レイヤーに割り当てられた所定の単一色における画像信号を選択的に取得することによって取得される、請求項23〜28のいずれか一つに記載のオーセンティケーションする方法。
【請求項30】
透かし情報(25、27、29)を含む前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも1つのレイヤー中の画像情報が、前記レイヤー中のインクジェット印刷の画素構造を取得することによって取得される、請求項23〜29のいずれか一つに記載のオーセンティケーションする方法。
【請求項31】
ドキュメントが真正であるか否かを確認するためのオーセンティケーション装置であって、
− ドキュメント(1)の複数のレイヤー(15、17、19)中のそれぞれの画像情報を取得し、その際、前記別々の異なるレイヤー(15、17、19)からの前記画像情報が補完し合って全体画像となるように構成された取得装置、
− 前記レイヤー(15、17、19)のうち少なくとも2つのレイヤー中の前記画像情報からそれぞれ透かし情報(25、27、29)が抽出されるように構成された抽出装置および、
− 前記少なくとも2つのレイヤー(15、17、19)の前記抽出された透かし情報(25、27、29)の全体から前記ドキュメントが真正であるか否かが確認されるように構成された決定装置、
を含む、オーセンティケーション装置。
【請求項32】
請求項23〜30のいずれか一つに記載のオーセンティケーションする方法を実施するように構成されたオーセンティケーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−500393(P2011−500393A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531467(P2010−531467)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009337
【国際公開番号】WO2009/056353
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】