説明

電子部品の実装装置

【課題】この発明は半導体チップを基板に本圧着するときに使用される保護テープに無駄が生じることがないようにした実装装置を提供することにある。
【解決手段】複数の実装ヘッド11と、繰り出しリール32から繰り出されて巻き取りリール34に巻き取られる耐熱性の保護テープ31と、基板に半導体チップ複数の実装ヘッドによって保護テープを介して圧着させる加圧用駆動源27A,27Bと、半導体チップを基板に圧着した後、繰り出しリール32と巻き取りリール34の駆動を制御して保護テープの隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面間に位置する加圧面によって加圧されていない未使用の部分を使用し、かつ保護テープの実装ヘッドによって加圧された使用済の部分が加圧面に対向しないよう保護テープを送る制御装置を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は耐熱性を備えた保護テープを介して基板に電子部品を加熱しながら圧着する電子部品の実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、携帯電話機や電子辞書などの小型電子機器には半導体チップなどの電子部品が実装された基板が用いられる。基板に電子部品を実装する場合、基板に上記電子部品を接着材料としての熱硬化性の異方性導電部材(ACF)を介して仮圧着した後、実装ツールで加圧加熱して上記異方性導電部材を溶融硬化させて本圧着するということが行われる。
【0003】
電子部品を基板に本圧着する際、加圧加熱されることで溶融する異方性導電部材が実装ツールに付着して硬化し、その実装ツールの加圧面が凹凸状になるということがある。実装ツールの加圧面が凹凸状になると、電子部品を基板に確実に加圧することができなくなって実装不良が発生するという虞がある。
【0004】
そこで、実装ツールによって電子部品を基板に本圧着するとき、基板と実装ツールとの間にフッ素樹脂などの耐熱性を備えた材料によって形成された保護テープを介在させ、この保護テープを介して上記実装ツールによって電子部品を実装するということが行われている。
【0005】
それによって、電子部品からはみ出した異方性導電部材が実装ツールの加圧面に付着するのを防止するようにしている。特許文献1には、基板に実装される電子部品と実装ツールの加圧面との間に保護テープを介在させて上記電子部品を本圧着する実装装置が示されている。
【0006】
基板に仮圧着された電子部品を本圧着する場合、実装ツールによって異方性導電部材を加圧加熱して溶融硬化させなければならない。異方性導電部材を溶融硬化させるには時間が長く掛かるから、本圧着に要するタクトタイムが長くなり、生産性の向上に限界が生じるということがあった。
【0007】
そこで、実装装置に複数の実装ヘッドを所定間隔で配置し、複数の実装ヘッドによって電子部品の本圧着を同時に行うようにすることで、生産性の向上を図るということが行われている。
【0008】
複数の実装ヘッドによって複数の電子部品を同時に実装する場合、実装ツールを下降させ、保護テープを介して電子部品を基板に本圧着したならば、上記保護テープの加圧ツールによって加圧された使用済みの部分を送り、未使用の部分を上記複数の実装ツールの加圧面に対向させるようにしている。
【0009】
従来、複数の実装ツールを有する実装装置において、電子部品を基板に本圧着した後、上記保護テープを複数の実装ヘッドの配置長さ、つまり複数の実装ヘッドの最も上流側に位置する加圧面の一端から最も下流側に位置する加圧面の他端に対応する長さで上記保護テープを送ることで、保護テープの新たに繰り出された未使用の部分を各実装ヘッドの加圧面に対向させるようにしていた。
【特許文献1】特開2001−28382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、電子部品を基板に本圧着した後、保護テープの未使用の部分を各実装ヘッドの加圧面に対向させるために、上記保護テープを複数の実装ヘッドの配置長さに対応する長さで送るようにすると、保護テープの隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面間に位置していた未使用の部分も使用されることなく、巻き取られてしまうことになる。
【0011】
そのため、保護テープの隣り合う一対の加圧面間に位置する部分が無駄に廃棄されることになるから、その分、ランニングコストが上昇するということがある。とくに、実装ヘッドの幅寸法は、構造上、その実装ヘッドの下端に形成される加圧面の幅寸法に比べて数倍の大きさとなるから、保護テープの隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面間に位置する部分を有効に使用するようにしないと、無駄になる量が多くなるということがある。
【0012】
しかも、保護テープの隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面間に位置する未使用の部分が最も下流側の加圧面から外れる位置となるまで上記保護テープを毎回送るようにしているから、1回当たりの保護テープの送り長さが長くなり、その送りに時間が掛かるから、生産性が低下するということもある。
【0013】
この発明は、保護テープの隣り合う実装ヘッドの加圧面間に位置する未使用の部分を有効に利用することができるようにした電子部品の実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、所定方向に搬送される基板に電子部品を圧着する実装装置であって、
加圧面を有し、上記基板の搬送方向に沿って所定間隔で、かつ上下方向に移動可能に配置された複数の実装ヘッドと、
繰り出しリールから繰り出されて巻き取りリールに巻き取られるとともにこれらリール間の部分が上記基板と上記実装ヘッドの間に走行可能に設けられた保護テープと、
上記複数の実装ヘッドを下降方向に駆動して上記基板に上記電子部品を上記複数の実装ヘッドによって上記基板に上記保護テープを介して圧着させる駆動手段と、
上記実装ヘッドが上記電子部品を上記基板に圧着した後、上記繰り出しリールと巻き取りリールの駆動を制御して上記保護テープの隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面間に位置する上記加圧面によって加圧されていない未使用の部分を使用し、かつ上記保護テープの上記実装ヘッドによって加圧された使用済の部分が上記加圧面に対向しないよう上記保護テープを送る制御手段と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【0015】
この発明は、所定方向に搬送される基板に電子部品を圧着する実装装置であって、
加圧面を有し、上記基板の搬送方向に沿って所定間隔で、かつ上下方向に移動可能に配置された複数の実装ヘッドと、
繰り出しリールから繰り出されて巻き取りリールに巻き取られるとともにこれらリール間の部分が上記基板と上記実装ヘッドの間に走行可能に設けられた保護テープと、
上記複数の実装ヘッドを下降方向に駆動して上記電子部品を上記複数の実装ヘッドによって上記基板に上記保護テープを介して圧着させる駆動手段と、
上記実装ヘッドが上記電子部品を上記基板に圧着した後、上記繰り出しリールと巻き取りリールの駆動を制御して上記保護テープの上記実装ヘッドによって加圧された使用済の部分が上記実装ヘッドの加圧面に対向しないよう上記保護テープを送る制御手段を具備し、
実装ヘッドの数をH、上記保護テープを加圧する各実装ヘッドの加圧面の幅寸法をS、隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面の間隔をLとし、(L/S=N+n)であるとき{ただし、Nは整数、nは小数である}、
上記制御手段は上記保護テープの送りを、長さSでN回送った後、{(L+2S)・(H−1)−S(H−2)}の長さで送るよう制御することを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【0016】
この発明は、所定方向に搬送される基板に電子部品を圧着する実装装置であって、
加圧面を有し、上記基板の搬送方向に沿って所定間隔で、かつ上下方向に移動可能に配置された複数の実装ヘッドと、
繰り出しリールから繰り出されて巻き取りリールに巻き取られるとともにこれらリール間の部分が上記基板と上記実装ヘッドの間に走行可能に設けられた保護テープと、
隣り合う一対の実装ヘッド間に上下方向に駆動可能に設けられた上記保護テープを弛ませる長さ調整手段と、
上記複数の実装ヘッドを下降方向に駆動して上記基板に上記電子部品を上記複数の実装ヘッドによって上記保護テープを介して圧着させる駆動手段と、
上記複数の実装ヘッドによって上記電子部品を上記基板に圧着するときに上記繰り出しリール、巻き取りリール及び上記長さ調整手段の駆動を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【0017】
上記長さ調整手段は、隣り合う一対の実装ヘッド間に位置する上記保護テープの長さが上記加圧面の整数倍の長さになるよう上記保護テープを弛ませることが好ましい。
【0018】
この発明は、所定方向に搬送される基板に電子部品を圧着する実装装置であって、
加圧面を有し、上記基板の搬送方向に沿って所定間隔で、かつ上下方向に移動可能に配置された複数の実装ヘッドと、
繰り出しリールから繰り出されて巻き取りリールに巻き取られるとともにこれらリール間の部分が上記基板と上記実装ヘッドの間に走行可能に設けられた保護テープと、
隣り合う一対の実装ヘッド間に上下方向に駆動可能に設けられ上昇方向に駆動されたときにその上昇距離の2倍の長さで上記保護テープを弛ませる長さ調整手段と、
上記複数の実装ヘッドを下降方向に駆動して上記基板に上記電子部品を上記複数の実装ヘッドによって上記保護テープを介して圧着させる駆動手段と、
上記複数の実装ヘッドによって上記電子部品を上記基板に圧着するときに上記繰り出しリール、巻き取りリール及び上記長さ調整手段の駆動を制御する制御手段を具備し、
上記実装ヘッドの数をH、上記保護テープを加圧する各実装ヘッドの加圧面の幅寸法をS、隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面の間隔をLとし、(L/S=N+n)であるとき{ただし、Nは整数、nは小数である。)、上記制御手段は、
上記長さ調整手段を上昇させて上記nが1以上の整数となるよう上記一対の加圧面間に位置する保護テープを弛ませてから、一対の実装ヘッドを下降させて上記保護テープの各実装ヘッドの加圧面に対向する未使用の部分を介して上記基板に電子部品を圧着し、ついで上記保護テープを上記加圧面の幅寸法Sに対応する長さで上記巻き取りリールに巻き取らせることを(N+1)回繰り返して行なった後、上記保護テープを上記巻き取りリールによって{S(N+3)・(H−1)−S(H−2)}の長さで巻き取らせることを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、保護テープの隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面間に位置する未使用の部分を有効に利用することができるから、保護テープに無駄が生じるのを防止し、ランニングコストの軽減を図ることが可能となる。しかも、1回当たりの保護テープの送り長さを短くできるから、その分、保護テープの送りに要する時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1に示す実装装置は搬送手段を構成する平行に離間対向して配置された一対のガイドレール1(一方のみ図示)を備えている。このガイドレール1に沿って搬送されるリードフレームなどの一対の基板Wは実装位置Bに所定間隔で位置決めされる。上記基板Wには電子部品としてのたとえば半導体チップ2が図示しない異方性導電接着剤を介して仮圧着されていて、上記実装位置Bに位置決めされた後、後述するように本圧着される。
【0021】
上記実装位置Bには、上記ガイドレール1の上方に実装手段5が設けられている。この実装手段5の上方には加圧手段6が配設され、実装手段5を後述するように作動させるようになっている。
【0022】
上記実装手段5は板状の第1の支持体8を有する。この支持体8は板面を上記基板Wの搬送方向に沿わせて配置されていて、その板面には2本で対をなす2組のリニアガイド9が上下方向に沿って設けられている。
【0023】
各組のリニアガイド9にはそれぞれ実装ヘッド11が背面に設けられた図示しない受け部材を移動可能に係合させて設けられている。各実装ヘッド11はブロック状の本体部12と、この本体部12の下面に垂設され下端面が加圧面13aとなった加圧ツール13と、上記本体部12の上面に突設された作動軸部14を有し、作動軸部14の上端部にはラジアル軸受15が回転軸線を水平にして設けられている。
【0024】
上記本体部12の両側面に設けられたピン12aと、上記支持体8の上部に設けられた係止部材16との間には上記実装ヘッド11を弾性的に保持するばね17が設けられている。上記支持体8の上部には取付け部材18が設けられ、この取付け部材18には調整ねじ19が螺合されている。この調整ねじ19の先端は上記実装ヘッド11の本体部12の上面に当接するようになっている。
【0025】
したがって、調整ねじ19のねじ込み量を調整すれば、上記実装ヘッド11の高さ位置、つまり実装ヘッド11を弾性的に変位させて上記加圧ツール13の加圧面13aの高さを調整できるようになっている。
【0026】
なお、加圧ツール13の下端部には図示しないヒータが埋設されていて、後述するように上記基板Wに上記半導体チップ2を本圧着するとき、この半導体チップ2を介して上記異方性導電部材を加熱して溶融硬化させるようになっている。
【0027】
ここで、図3(a)に示すように、一対の実装ヘッド11の加圧面13a間の間隔をLとし、上記加圧ツール13の加圧面13aの幅寸法をSとすると、L>Sとなっている。通常、実装ヘッド11の本体部12の幅寸法は構造上、加圧ツール13の加圧面13aの幅寸法Sに比べて十分に大きくなることが避けられないから、LはSの数倍程度の長さとなっている。
【0028】
上記加圧手段6は、上記実装手段5の上方に固定的に配置された第2の支持体21を有する。この第2の支持体21の板面には、一対の実装ヘッド11と対応する間隔で、2本で対をなす2組のリニアガイド22が上下方向に沿って設けられている。
【0029】
各組のリニアガイド22にはそれぞれ可動体23が上下方向に移動可能に設けられている。この可動体23には加圧部24が下端部を上記可動体23の下端よりも下方に突出させて取付けられている。
【0030】
上記加圧部24は、その下端面によって上記実装ヘッド11の上端面である、上記作動軸部14の上端に設けられたラジアル軸受15を後述するように押圧できるようになっている。
【0031】
上記第2の支持体21の上部には保持部材26が設けられ、この保持部材26にはたとえばリニアモータなどの一対の第1、第2の加圧用駆動源27A,27Bが軸線を垂直にして設けられている。これら加圧用駆動源27A,27Bの駆動軸27a,27bは上記可動体23に連結されている。
【0032】
したがって、上記第1、第2の加圧用駆動源27A,27Bが作動して駆動軸27a,27bが下降方向に駆動されれば、この駆動軸27a,27bに連動して上記可動体23が下降するから、この可動体23に設けられた加圧部24の下端面によって上記実装ヘッド11の作動軸部14の上端に設けられたラジアル軸受15が押圧されて上記実装ヘッド11が下降方向に駆動されることになる。
【0033】
上記実装ヘッド11の加圧ツール13の加圧面13aと、上記ガイドレール1を搬送される基板Wの上面との間には、フッ素樹脂などの耐熱性を有する樹脂によって形成された保護テープ31が走行可能に配置されるようになっている。
【0034】
上記保護テープ31は、上記第1の支持体8の一側に配置された繰り出しリール32から繰り出され、一対のガイドローラ33によって上記基板Wと平行に走行するようガイドされて巻き取りリール34に巻き取られるようになっている。上記繰り出しリール32は供給駆動源35によって回転駆動され、上記巻き取りリール34は巻き取り駆動源36によって回転駆動されるようになっている。
【0035】
したがって、上記実装ヘッド11が下降方向に駆動されれば、上記基板Wに仮圧着された半導体チップ2が保護テープ31を介して上記加圧ツール13の加圧面13aによって加圧されながら加熱される。
【0036】
なお、半導体チップ2が加圧ツール13によって加圧されるとき、上記基板Wの下面は図1に鎖線で示すバックアップツール38によって支持される。それによって、基板Wが下方へ撓むのが阻止されるようになっている。
【0037】
半導体チップ2が加圧ツール13によって加圧されるとき、上記バックアップツール38を図示しないZ駆動源によって上昇方向に駆動し、その上面をガイドレール1に支持された基板Wの下面に近接させるようにしてもよい。
【0038】
図2に示すように、上記第1、第2の加圧用駆動源27A,27B、供給駆動源35及び巻き取り駆動源36は制御装置37によって後述するように駆動が制御されるようになっている。第1、第2の加圧用駆動源27A,27Bは同期して駆動される。それによって、一対の実装ヘッド11によって2枚の基板Wに仮圧着された上記半導体チップ2の本圧着は同時に行われるようになっている。
【0039】
つぎに、上記構成の実装装置によって基板Wに仮圧着された半導体チップ2を本圧着するときの動作を図3を参照しながら説明する。
まず、半導体チップ2が仮圧着された2枚の基板Wがガイドレール1に沿って一対の実装ヘッド11のピッチ(センター間の距離で、図3(a)にPで示す。)と同じ間隔で搬送されて実装位置Bで、各基板Wに仮圧着された半導体チップ2がそれぞれ加圧ツール13の加圧面13aに対向するよう位置決めされる。この状態を図3(a)に示す。
【0040】
つぎに、第1、第2の加圧用駆動源27A,27Bが制御装置37によって同期して駆動されて一対の実装ヘッド11が下降し、各実装ヘッド11に設けられた加圧ツール13の加圧面13aによって基板Wに仮圧着された半導体チップ2が保護テープ31を介して加圧加熱される。それによって、上記半導体チップ2を基板Wに仮圧着した異方性導電部材が溶融して硬化するから、上記半導体チップ2が基板Wに本圧着されることになる。
【0041】
その際、溶融した異方性導電部材が半導体チップ2からはみ出して加圧ツール13の加圧面13aに付着する虞があるが、加圧ツール13は保護テープ31を介して半導体チップ2を加圧加熱しているから、異方性導電部材が溶融して半導体チップ2からはみ出しても、上記加圧面13aに付着するのが防止される。
【0042】
このようにして、基板Wに半導体チップ2を本圧着したならば、2枚の基板Wを実装位置Bから搬出し、新たな2枚の基板Wを実装位置Bに搬入し、所定の位置に位置決めする。それと同時に、制御装置37は供給駆動源35と巻き取り駆動源36を作動させ、繰り出しリール32から保護テープ31を所定長さだけ繰り出し、その繰り出された長さ分を巻き取りリール34に巻き取り、上記保護テープ31の加圧面13aによって加圧された使用済みの部分を加圧面13aと非対向の位置に移動させ、未使用の部分を加圧面13aに対向させる。
【0043】
具体的に説明すると、一対の実装ヘッド11の加圧面13a間の間隔がL、加圧面13aの幅寸法がSであって、L>Sであるとすると、半導体チップ2を本圧着したならば、上記保護テープ31は図3(a)に示す状態から図3(b)に示すようにSの長さで搬送される。
【0044】
それによって、図3(b)に示すように保護テープ31の搬送方向上流側の加圧ツール13の加圧面13aによって加圧された使用済みの部分t1は一対の加圧ツール13の加圧面13aの間の部分に位置し、下流側の加圧ツール13の加圧面13aによって加圧された使用済みの部分t2は上記加圧ツール13の加圧面13aよりも下流側に搬送される。
【0045】
ここで、(L/S=N+n)であるとするならば(ただし、Nは整数で、nは小数である。)、上述した半導体チップ2の本圧着と、保護テープ31の長さSでの搬送がN回繰り返される。図3(c)は2回繰り返した状態を示し、図3(d)は3回繰り返した状態を示す。保護テープ31の2回目に使用されて加圧された部分を図3(c)にt3,t4で示し、3回目に使用された部分を図3(d)にt5,t6で示す。
【0046】
3回繰り返すことで、保護テープ31の一対の加圧面13a間に位置する未使用の部分の残りの長さ寸法は、図3(d)に示すように加圧面13aの幅寸法よりも短い長さnとなる。したがって、上述した本圧着が3回繰り返された後、制御装置37は、供給駆動源35と巻き取り駆動源36を作動させ、上記保護テープ31を{(L+2S)・(H−1)−S(H−2)}の長さで送る。
【0047】
それによって、上記保護テープ31の加圧面13aによって加圧、加熱された使用済みの部分t1〜t6は、図3(e)に示すように保護テープ31の搬送方向下流側に位置する加圧ツール13の加圧面13aから下流側に外れた位置まで搬送されることになる。
【0048】
このように、一対の実装ヘッド11が加圧面13aの幅寸法Sよりも大きな間隔Lで配置されている場合、本圧着時に保護テープ31の一対の加圧面13aの間に位置する未使用の部分のうちのほとんどの部分、つまり加圧面13aの幅寸法Sよりも短い長さnだけを残こして使用することができる。
【0049】
それによって、上記保護テープ31が未使用の状態で巻き取りリール34に巻き取られる長さが大幅に減少するから、無駄の発生も減少し、ランニングコストを低減することができる。
【0050】
しかも、最終回を除く各回における保護テープ31の送り長さは加圧面13aの幅寸法Sと同じ長さでよいから、毎回(L+2S)の長さで保護テープ31を送っていた従来に比べ、保護テープ31の送りに要する時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
【0051】
図4(a)〜(d)と図5(a)〜(d)はこの発明の第2の実施の形態を示す。上記第1の実施の形態では保護テープ31の一対の加圧ツール13の加圧面13aの間隔Lと、加圧面13aの幅寸法Sとの関係が(L/S=N+n)の場合、最後に残る保護テープ31の未使用の部分の長さが上記幅寸法Sよりも短い長さnとなったが、第2の実施の形態では保護テープ31の一対の実装ヘッド11の加圧面13aの間隔、つまり一対の加圧面13a間の長さ寸法Lが加圧面13aの幅寸法Sの整数倍でなくても、保護テープ31に未使用となる部分が生じないようにしている。
【0052】
すなわち、実装装置の構成は図1に示す第1の実施の形態と同じであるが、図4(a)に示すように、間隔Lの距離で離間した一対の加圧ツール13の加圧面13a間には長さ調整手段を構成する棒状の引き上げ部材41が保護テープ31の下方に軸線を保護テープ31の幅方向に直交させて配置されているという点で相違している。
【0053】
上記引き上げ部材41は上下駆動源42によって直線駆動される駆動軸42aに連動部材43を介して連結されている。それによって、上記引き上げ部材41は図4(a)に矢印で示すように上下方向に駆動されるようになっている。
【0054】
なお、上下駆動源42としては、詳細は図示しないが、パルスモータによってねじ軸を回転駆動し、このねじ軸に螺合されためねじ体によって上記駆動軸42aを直線駆動したり、リニアモータによって上記駆動軸42aを直線駆動するようにすればよい。
【0055】
また、上記引き上げ部材41がガイドレール1を搬送される基板Wに干渉するのを防止するため、引き上げ部材41が上昇させられているときに、基板Wを搬送するようにすれとよい。
【0056】
上記上下駆動源42は図2に示す制御装置37によって駆動が制御されるようになっていて、上昇方向へ駆動されることで、上記保護テープ31を一対の加圧面13a間の部分で弛ませることができるようになっている。
【0057】
上記引き上げ部材41の上昇寸法は、以下のように設定される。すなわち、図4(b)にLで示す保護テープ31の一対の加圧面13aの間の間隔Lが上記加圧面13aの幅寸法SのN倍(Nは整数)よりも寸法n(n<S)だけ大きい場合、図4(a)に示すUで示す上記引き上げ部材41の上昇距離は、
U=(S−n)/2
となるよう設定される。それによって、保護テープ31が引き上げ部材41によって引き上げられたときの一対の加圧面13a間に位置する保護テープ31の長さ寸法L1は、
L1=L+2U
となる。すなわち、引き上げ部材41によって引き上げられた状態での保護テープ31の一対の加圧面13a間の長さ寸法L1は上記加圧面13aの幅寸法Sの整数倍となる。この第2の実施の形態では上記長さ寸法L1は幅寸法Sの3倍に設定される。なお、上記長さ寸法L1は幅寸法Sの3倍以上に設定してもよい。
【0058】
したがって、長さ調整手段としての引き上げ部材41を有する実装装置において、基板Wに仮圧着された半導体チップ2を本圧着する場合、まず、図4(a)に示すように、上記引き上げ部材41を上下駆動源42によって一対の加圧面13aの未使用の保護テープ31の長さ寸法を上記上昇寸法Uで上昇させ、保護テープ31の一対の実装ヘッド11間の長さを加圧面13aの整数倍となる長さL1にする。
【0059】
上記引き上げ部材41を上昇させるとき、その上昇距離の2倍の長さで保護テープ31が繰り出しリール32から繰り出されるよう、制御装置37は供給駆動源35の作動を制御する。このとき、巻き取りリール34は逆回転して巻き取った保護テープ31を繰り出さないよう制御される。
【0060】
この状態で、制御装置37によって第1、第2の加圧用駆動源27A,27Bを作動させて一対の実装ヘッド11を下降させ、各実装ヘッド11の加圧ツール13の加圧面13aによって基板Wに仮圧着された半導体チップ2を本圧着する。保護テープ31が一対の加圧面13aによって加圧された部分を図4(a)にt1,t2で示す。
【0061】
つぎに、図4(b)に示すように上記引き上げ部材41を下降させ、巻き取りリール34を作動させて保護テープ31を加圧面13aの幅寸法Sに対応する長さで巻き取り、保護テープ31の下流側の加圧面13aによって加圧された部分t2をその加圧面13aから外れて非対向となる下流側にずらす。このとき、保護テープ31の上流側の加圧面13aによって加圧された部分t1はその加圧面13aに対して幅寸法Sよりも短い長さ、つまり{(S−U)=n}の長さで送られるから、その部分t2の一部、つまりt1の部分のうち、(S−n)の長さの部分が上記加圧面に13aに対向した状態にある。
【0062】
したがって、保護テープ31を加圧面13aの幅寸法Sに対応する長さで巻き取った後、図4(c)に示すように引き上げ部材41を上昇寸法Uで上昇させると同時に、繰り出しリール32だけを作動させて保護テープ31を上昇寸法Uの2倍の距離で繰り出させる。それによって、保護テープ31の上流側の加圧面13aによって加圧された部分t1が、その加圧面13aよりも下流側に非対向状態で位置決めされる。
【0063】
その状態で、一対の実装ヘッド11を下降させて基板Wに半導体チップ2を本圧着させる。このとき、保護テープ31が加圧面13aによって加圧加熱される部分を図4(c)にt3,t4で示す。
【0064】
つぎに、図4(d)に示すように引き上げ部材41を下降させ、保護テープ31を加圧面13aの幅寸法Sに対応する距離で巻き取った後、図5(a)に示すように引き上げ部材41を上昇させて、上流側に位置する加圧ツール13の加圧面13aに対して保護テープ31の使用済みのt3の部分を非対向に位置決めする。その後、加圧ツール13を下降させて半導体チップ2を本圧着する。このとき、保護テープ31の使用された部分をt5,t6で示す。
【0065】
つぎに、図5(b)に示すように引き上げ部材41を下降させて保護テープ31を加圧面13aの幅寸法Sに対応する長さで送った後、図5(c)に示すように引き上げ部材41を上昇させて下流側の加圧面13aに対して保護テープ31の使用済みの部分t5を非対向状態にする。そして、一対の加圧ツール13を下降させて半導体チップ2を基板Wに保護テープ31を介して本圧着する。このとき、保護テープ31の使用された部分を図5(c)にt7,t8で示す。
【0066】
このようにして、4回の本圧着を繰り返して行ったならば、図5(d)に示すように上記引き上げ部材41を下降させるとともに、巻き取りリール34によって上記保護テープ31を加圧面13aの幅寸法Sの5倍の長さで巻き取らせる。
【0067】
最終回の圧着、つまり隣り合う実装ヘッド11間に位置する保護テープ31を無駄なく使用した後に送られる保護テープ31の長さLnは、実装ヘッド11の数をHとしたとき、下記に示す式によって求めることができる。
【0068】
Ln={S(N+3)・(H−1)−S(H−2)}
なお、(L/S=N+n)であるから、図4と図5に示す実施の形態の場合は、N=2となる。
【0069】
このように、保護テープ31をLnの長さで送れば、未使用の新たな保護テープ31が上流側に位置する加圧面13aの一端と、下流側に位置する加圧面13aの他端との間に位置するよう供給される。したがって、その状態で上記引き上げ部材41を上昇させた後、保護テープ31をnに相当する長さで弛ませてから、上述した本圧着を繰り返して行えばよい。
【0070】
すなわち、引き上げ部材41によって一対の加圧ツール13の加圧面13a間に位置する保護テープ31の長さを、加圧面13aの幅寸法Sの整数倍にして本圧着するようにすれば、保護テープ31の一対の加圧面13a間に位置する部分に無駄が生じることなく使用することができる。
【0071】
上記第2の実施の形態において、引き上げ部材41を上昇させて各実装ヘッド11を下降させて本圧着した後、上記引き上げ部材41を下降させて保護テープ31を所定長さで送るようにしているが、上記引き上げ部材41は一対の加圧ツール13間の保護テープ31に加圧ツール13の幅寸法S以上の未使用の部分がなくなったとき、すなわち図5(c)の状態になったときにだけ下降させると同時に、保護テープ31を巻き取りリール34で巻き取るようにしてもよい。
【0072】
また、保護テープを弛ませるときに引き上げ部材41を上昇させずに下降させても差し支えない。
なお、上記第1、第2の実施の形態において、加圧手段に2つの実装ツールが設けられている場合について説明したが、実装ツールの数は2つに限られず、3つ以上であってもよい。
【0073】
また、複数の実装ツールを別々の加圧用駆動源によって同期させて下降方向に駆動するようにしたが、加圧用駆動源によって下降方向に駆動される加圧部の大きさを複数の実装ツールのラジアル軸受を同時に押圧する大きさとすることで、1つの加圧用駆動源によって複数の実装ツールを下降方向に駆動するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す実装装置の構成図。
【図2】上記実装装置の制御系統のブロック図。
【図3】(a)〜(e)は半導体チップを本圧着するときの保護テープの送り方を順次示す説明図。
【図4】(a)〜(d)はこの発明の第2の実施の形態の半導体チップを本圧着するときの保護テープの送り方を順次示す説明図。
【図5】(a)〜(d)は図4(a)〜(d)に続く半導体チップを本圧着するときの保護テープの送り方を順次示す説明図。
【符号の説明】
【0075】
2…半導体チップ(電子部品)、5…実装手段、6…加圧手段、11…実装ヘッド、13…加圧ツール、13a…加圧面、27A,27B…第1、第2の加圧用駆動源、32…繰り出しリール、34…巻き取りリール、35…供給駆動源、36…巻き取り駆動源、37…制御装置、41…引き上げ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に搬送される基板に電子部品を圧着する実装装置であって、
加圧面を有し、上記基板の搬送方向に沿って所定間隔で、かつ上下方向に移動可能に配置された複数の実装ヘッドと、
繰り出しリールから繰り出されて巻き取りリールに巻き取られるとともにこれらリール間の部分が上記基板と上記実装ヘッドの間に走行可能に設けられた保護テープと、
上記複数の実装ヘッドを下降方向に駆動して上記基板に上記電子部品を上記複数の実装ヘッドによって上記基板に上記保護テープを介して圧着させる駆動手段と、
上記実装ヘッドが上記電子部品を上記基板に圧着した後、上記繰り出しリールと巻き取りリールの駆動を制御して上記保護テープの隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面間に位置する上記加圧面によって加圧されていない未使用の部分を使用し、かつ上記保護テープの上記実装ヘッドによって加圧された使用済の部分が上記加圧面に対向しないよう上記保護テープを送る制御手段と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項2】
所定方向に搬送される基板に電子部品を圧着する実装装置であって、
加圧面を有し、上記基板の搬送方向に沿って所定間隔で、かつ上下方向に移動可能に配置された複数の実装ヘッドと、
繰り出しリールから繰り出されて巻き取りリールに巻き取られるとともにこれらリール間の部分が上記基板と上記実装ヘッドの間に走行可能に設けられた保護テープと、
上記複数の実装ヘッドを下降方向に駆動して上記電子部品を上記複数の実装ヘッドによって上記基板に上記保護テープを介して圧着させる駆動手段と、
上記実装ヘッドが上記電子部品を上記基板に圧着した後、上記繰り出しリールと巻き取りリールの駆動を制御して上記保護テープの上記実装ヘッドによって加圧された使用済の部分が上記実装ヘッドの加圧面に対向しないよう上記保護テープを送る制御手段を具備し、
実装ヘッドの数をH、上記保護テープを加圧する各実装ヘッドの加圧面の幅寸法をS、隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面の間隔をLとし、(L/S=N+n)であるとき{ただし、Nは整数、nは小数である}、
上記制御手段は上記保護テープの送りを、長さSでN回送った後、{(L+2S)・(H−1)−S(H−2)}の長さで送るよう制御することを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項3】
所定方向に搬送される基板に電子部品を圧着する実装装置であって、
加圧面を有し、上記基板の搬送方向に沿って所定間隔で、かつ上下方向に移動可能に配置された複数の実装ヘッドと、
繰り出しリールから繰り出されて巻き取りリールに巻き取られるとともにこれらリール間の部分が上記基板と上記実装ヘッドの間に走行可能に設けられた保護テープと、
隣り合う一対の実装ヘッド間に上下方向に駆動可能に設けられた上記保護テープを弛ませる長さ調整手段と、
上記複数の実装ヘッドを下降方向に駆動して上記基板に上記電子部品を上記複数の実装ヘッドによって上記保護テープを介して圧着させる駆動手段と、
上記複数の実装ヘッドによって上記電子部品を上記基板に圧着するときに上記繰り出しリール、巻き取りリール及び上記長さ調整手段の駆動を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項4】
上記長さ調整手段は、隣り合う一対の実装ヘッド間に位置する上記保護テープの長さが上記加圧面の整数倍の長さになるよう上記保護テープを弛ませることを特徴とする請求項3記載の電子部品の実装装置。
【請求項5】
所定方向に搬送される基板に電子部品を圧着する実装装置であって、
加圧面を有し、上記基板の搬送方向に沿って所定間隔で、かつ上下方向に移動可能に配置された複数の実装ヘッドと、
繰り出しリールから繰り出されて巻き取りリールに巻き取られるとともにこれらリール間の部分が上記基板と上記実装ヘッドの間に走行可能に設けられた保護テープと、
隣り合う一対の実装ヘッド間に上下方向に駆動可能に設けられ上昇方向に駆動されたときにその上昇距離の2倍の長さで上記保護テープを弛ませる長さ調整手段と、
上記複数の実装ヘッドを下降方向に駆動して上記基板に上記電子部品を上記複数の実装ヘッドによって上記保護テープを介して圧着させる駆動手段と、
上記複数の実装ヘッドによって上記電子部品を上記基板に圧着するときに上記繰り出しリール、巻き取りリール及び上記長さ調整手段の駆動を制御する制御手段を具備し、
上記実装ヘッドの数をH、上記保護テープを加圧する各実装ヘッドの加圧面の幅寸法をS、隣り合う一対の実装ヘッドの加圧面の間隔をLとし、(L/S=N+n)であるとき{ただし、Nは整数、nは小数である。)、上記制御手段は、
上記長さ調整手段を上昇させて上記nが1以上の整数となるよう上記一対の加圧面間に位置する保護テープを弛ませてから、一対の実装ヘッドを下降させて上記保護テープの各実装ヘッドの加圧面に対向する未使用の部分を介して上記基板に電子部品を圧着し、ついで上記保護テープを上記加圧面の幅寸法Sに対応する長さで上記巻き取りリールに巻き取らせることを(N+1)回繰り返して行なった後、上記保護テープを上記巻き取りリールによって{S(N+3)・(H−1)−S(H−2)}の長さで巻き取らせることを特徴とする電子部品の実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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