説明

電子部品の接合方法及び電子機器の製造方法

【課題】回路基板上に半導体素子等の電子部品を誘導加熱で半田付けあるいはろう付けする際に、錘を必要とせずに効率良く半田付けする。
【解決手段】回路基板11として少なくとも片面に金属回路13が形成されたセラミック基板14を備えるとともに、半導体素子12(電子部品)を接合する部分と対応する箇所に強磁性体17が埋設されたものを使用する。強磁性体17はループ状に形成されている。金属回路13上にシート半田31を介して半導体素子12を配置するとともに、強磁性体17を磁束が通過するように高周波誘導加熱を行ってシート半田31を溶融させ、金属回路13と半導体素子12とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の接合方法及び電子機器の製造方法に係り、詳しくは回路基板上の接合部に半導体素子等の電子部品を半田又はろう材等の金属接合材料を用いて接合するのに好適な電子部品の接合方法及び電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属部材とセラミックス部材や、基板と電子部品とを接合する方法として、高周波誘導加熱を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、複数の熱電素子と基板とを接合して熱電変換モジュールを製作する接合装置が提案されている。この接合装置は、図11(a)に示すように、台51と、基板52に一端面を接し同基板52を加圧する加圧治具(錘)53と、同加圧治具53の周りに設けられる高周波加熱コイル54とを備える。そして、台51上に順次カーボンシート55、熱電素子56、基板52を配置するとともに、加圧治具53により基板52を加圧した状態で誘導加熱(高周波加熱)により加圧治具53を加熱する。すると、加圧治具53の熱が基板52に伝わり、熱電素子56が基板52に接合される。また、接合対象間に半田やろう材を配置しておけば半田付けやろう付けが行える。
【0003】
また、熱風や赤外線を用いたリフローソルダリングにおける実装部品に対する熱によるダメージを軽減するため、磁性体の電磁誘導により基板自身を発熱させるように構成したプリント配線装置が提案されている(特許文献2参照。)。このプリント配線装置は、例えば、図11(b)に示すように、絶縁体61の表面に磁性体62が接着層63を介して積層された構成である。このプリント配線装置を高周波磁界中に配置することにより、磁性体62は電磁誘導のうず電流損によって自己発熱するため、実装部品の半田付け部分をプリント配線装置側から加熱でき、熱による実装部品のダメージを軽減できる。
【特許文献1】実開平5−13660号公報
【特許文献2】特開平6−112609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の方法のように錘(加圧治具)を加熱して、錘から接合対象に熱を伝える方法では、熱容量が相応にある錘を加熱するため、必要なエネルギーが多く、時間が掛かる。また、接合すべき電子部品上に錘を載せるため、電子部品の表面を傷つける可能性がある。
【0005】
一方、特許文献2の構成では、基板側に磁性体を積層することにより、錘を用いる必要がなく、錘を用いることに起因する前記の問題は解消する。しかし、特許文献2の構成では、プリント配線装置を高周波磁界中に配置した際、半田が存在する箇所以外の部分も広く加熱されるという問題がある。
【0006】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、回路基板上に半導体素子等の電子部品を誘導加熱で半田付けあるいはろう付けする際に、錘を必要とせずに効率良く半田付けすることができる半田付け方法及び電子機器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、回路基板上に設けられた接合部に電子部品を半田やろう材としての金属接合材料を用いて接合する電子部品の接合方法である。そして、前記回路基板として少なくとも片面に導体パターンが形成された絶縁層を備えるとともに、前記電子部品を接合する部分と対応する箇所に強磁性体が電気的絶縁材を介して配置されたものを使用し、前記接合部上に金属接合材料を介して電子部品を配置するとともに、前記強磁性体を磁束が通過するように高周波誘導加熱を行って前記金属接合材料を溶融させて前記接合部と前記電子部品とを接合する。ここで、「電子部品」とは、回路基板上に表面実装される部品を意味する。
【0008】
この発明では、金属接合材料上に載置された電子部品の上に載せた錘を高周波誘導加熱で加熱するとともにその熱を金属接合材料に伝達して金属接合材料を溶融させる従来技術と異なり、錘を加熱する必要がなく、金属接合材料の近くに配置された強磁性体が誘導加熱されてその熱により金属接合材料を加熱する。したがって、回路基板上に半導体素子等の電子部品を誘導加熱で半田付けあるいはろう付けする際に、錘を必要とせずに効率良く半田付けすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記強磁性体は前記絶縁層に埋設された状態で配置されている。この発明では、絶縁層の表面を平坦にして電子部品を基板の表面と平行に接合するのが容易になる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記強磁性体はループ状に形成されている。この発明では、強磁性体が平板状に形成されている場合に比較して、絶縁層を熱伝導性の良い材質で構成した場合、製品の状態で電子部品で発生した熱の放熱が円滑に行われる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記電気的絶縁材はセラミックスで構成されている。セラミックスは樹脂やエラストマ等の他の電気的絶縁材に比較して熱伝導性及び耐熱性が良いため、接合部に接合された半導体素子等の電子部品が駆動された際に発熱しても電気的絶縁材を介して放熱が円滑に行われ、また、耐久性も向上する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、
前記電子部品は、ボールグリッドアレイ(BGA)パッケージである。半田付けで接合されるBGAパッケージとマザーボードとの間に線膨張率の差が有る場合、リフロー炉を通して半田付けを行うと、BGAパッケージの大型化とともに線膨張差による反りや半田部のクラックなどの不具合が生じる。この発明では、配線層と対応する箇所に配置された強磁性体が、誘導加熱で発熱して半田付け部近傍のみが局部加熱されるため、前記の不具合が抑制される。
【0013】
請求項6に記載の発明の電子機器の製造方法では、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子部品の接合方法を半田付け工程に使用する。この発明では、回路基板上に半導体素子等の電子部品を誘導加熱で効率良く半田付けすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回路基板上に半導体素子等の電子部品を誘導加熱で半田付けあるいはろう付けする際に、錘を必要とせずに効率良く半田付けすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を電子機器の部品となる半導体モジュールの製造方法の一工程である半導体素子の半田付け方法に具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。なお、図1〜図3は、半導体モジュールや半田付け装置等の構成を模式的に示したものであり、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くするために、それぞれの部分の幅、長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。
【0016】
図1(a),(b)に示すように、半導体モジュール10は、回路基板11と、回路基板11上に半田付けにより接合された電子部品としての複数(4個)の半導体素子12とを備えている。回路基板11は、表面に導体パターンとしての金属回路13を有する絶縁層としてのセラミック基板14が金属製のヒートシンク15と金属板16を介して一体化された冷却回路基板(ヒートシンク付き基板)である。ヒートシンク15は冷却媒体が流れる冷媒流路15aを備えている。ヒートシンク15は、アルミニウム系金属や銅等で形成されている。アルミニウム系金属とはアルミニウム又はアルミニウム合金を意味する。金属板16は、セラミック基板14とヒートシンク15とを接合する接合層として機能し、例えば、アルミニウムや銅等で形成されている。
【0017】
金属回路13は、例えば、アルミニウムや銅等で形成されている。セラミック基板14は、例えば、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素等により形成されている。半導体素子12は、金属回路13に接合(半田付け)されている。即ち、金属回路13は半導体素子12を回路基板11上に接合するための接合部を構成する。図2における符号「H」は、半田層を示している。半導体素子12としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )やダイオードが用いられている。
【0018】
セラミック基板14には金属回路13の半導体素子12を接合する部分と対応する箇所に強磁性体17が埋設されている。強磁性体17としてニッケル(Ni)が使用されている。強磁性体17は、ループ状に形成されている。セラミック基板14は、厚さが1mm以下に形成されている。
【0019】
強磁性体17の厚さは表皮効果を考慮して設定される。表皮効果は高周波電流が導体を流れる時、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる現象のことであり、周波数が高くなるほど電流が表面に集中する。導体の電流密度Jは、深さδに対して、次式の関係がある。
【0020】
J=e−δ/d・・・(1)
ここでdは表皮深さで、電流が表面電流の1/e(約0.37)になる深さであり、次式で表される。
【0021】
d=√(2ρ/(ωμ))・・・(2)
導体がニッケルの場合、周波数が10kHz〜100kHzの範囲で、表皮深さdは100μmから約30μmまで周波数の増加に対して対数的に減少する。そして、強磁性体17は、誘導加熱の際に高周波加熱コイルに流れる高周波電流の周波数によって異なるが、例えば、厚さが表皮深さの2倍程度に設定されている。
【0022】
次に半導体モジュールの製造方法を説明する。
図2は、半田付け装置の構成を概略的に示している。図2に示すように、半導体モジュール10の製造に使用する半田付け装置HKは、密閉可能な容器(チャンバ)18を備え、当該容器18は開口部19aを有する箱型の本体19と、当該本体19の開口部19aを開放及び閉鎖する蓋体20とから構成されている。本体19には、半導体モジュール10を位置決めして支持する支持台21が設置されている。また、本体19には、蓋体20の装着部位にパッキン22が配設されている。
【0023】
蓋体20は、本体19の開口部19aを閉鎖可能な大きさで形成されており、本体19に蓋体20を装着することにより容器18内には密閉空間Sが形成されるようになっている。また、蓋体20において、密閉空間Sと対向する部位は、磁力線(磁束)を通す電気的絶縁材で形成されている。この実施形態では、電気的絶縁材としてガラスが用いられており、蓋体20にはガラス板20aが組み付けられている。
【0024】
また、本体19には、容器18内に還元性ガス(この実施形態では水素)を供給するための還元ガス供給部23が接続されている。還元ガス供給部23は、配管23aと、当該配管23aの開閉バルブ23bと、水素タンク23cとを備えている。また、本体19には、容器18内に不活性ガス(この実施形態では窒素)を供給するための不活性ガス供給部24が接続されている。不活性ガス供給部24は、配管24aと、当該配管24aの開閉バルブ24bと、窒素タンク24cとを備えている。また、本体19には、容器18内に充満したガスを外部に排出するためのガス排出部25が接続されている。ガス排出部25は、配管25aと、当該配管25aの開閉バルブ25bと、真空ポンプ25cとを備えている。半田付け装置HKは、還元ガス供給部23、不活性ガス供給部24及びガス排出部25を備えることにより、密閉空間S内の圧力を調整可能な構成とされており、密閉空間S内の圧力は、圧力調整によって加圧されたり、減圧されたりする。
【0025】
また、本体19には、半田付け後の容器18内に熱媒体(冷却用ガス)を供給するための供給手段としての熱媒供給部(図示せず)が接続されている。
半田付け装置HKの上部(蓋体20の上方)には、高周波加熱コイル26が設置されている。この実施形態の高周波加熱コイル26は、1枚のセラミック基板14を覆う大きさに形成されている。高周波加熱コイル26は、渦巻き状(角形渦巻き状)に形成されており、平面的に展開されている。また、高周波加熱コイル26は、蓋体20(ガラス板22の装着部位)に対向するように配置されている。高周波加熱コイル26は、半田付け装置HKが備える高周波発生装置27に電気的に接続されているとともに、容器18内に設置された温度センサ(図示せず)の計測結果に基づき、高周波発生装置27の出力が制御されるようになっている。また、高周波加熱コイル26には、コイル内部に冷却水を通すための冷却路28が形成されているとともに、半田付け装置HKが備える冷却水タンク29に接続されている。
【0026】
また、半田付けを行う際には、位置決め用の治具30を用いて、セラミック基板14上にシート半田31と、半導体素子12とを位置決めするようになっている。治具30は平面正方形状に形成されるとともに、その裏面に金属回路13の外周部と係合可能な正方形状の凹部30aが形成されている。また、治具30には、半導体素子12のサイズに応じた大きさで形成された位置決め用の孔30bが形成されている。
【0027】
次に、前記半田付け装置HKを用いて半導体モジュール10の製造方法の一工程である半田付け工程において、回路基板11に対する半導体素子12の半田付けを行う方法について説明する。なお、半田付け装置HKを用いて半田付けを行うのに先立って、金属回路13を有するセラミック基板14をヒートシンク15と一体化した回路基板11を予め作製しておく。
【0028】
半田付けを行う際には、最初に、本体19から蓋体20を外し、開口部19aを開放する。そして、図2に示すように本体19の支持台21上に回路基板11を置き、位置決めする。次に、回路基板11のセラミック基板14上に、治具30を載置する。治具30は、凹部30aが金属回路13の周縁部と係合して位置決めされた状態でセラミック基板14上に載置される。そして、治具30の各孔30b内にシート半田31と半導体素子12を配置する。
【0029】
次に蓋体20を本体19に取り付け、開口部19aを閉鎖して、容器18内に密閉空間Sを形成する。この状態では、高周波加熱コイル26は、蓋体20に組み付けられたガラス板20aを挟んで半導体素子12及び治具30と対向する状態に配置される。
【0030】
次に、ガス排出部25を操作して容器18内を真空引きするとともに、不活性ガス供給部24を操作して容器18内に窒素を供給し、密閉空間S内を不活性ガスで充満させる。この真空引きと窒素の供給を数回繰り返した後、還元ガス供給部23を操作して容器18内に水素を供給し、密閉空間S内を還元ガス雰囲気とする。
【0031】
次に、高周波発生装置27を作動させ、高周波加熱コイル26に高周波電流を流す。すると、高周波加熱コイル26には、対応する強磁性体17を通る高周波の磁束Fが発生し、強磁性体17には磁束Fの通過によってうず電流が発生して発熱する。その熱がセラミック基板14から金属回路13上に載置されたシート半田31に伝わり、シート半田31が加熱されて溶融温度以上の温度になることにより溶融する。
【0032】
半田が完全に溶融した後、高周波発生装置27を停止させる。なお、容器18内に設置した温度センサ(図示せず)の検出結果に基づき、高周波加熱コイル26に流れる高周波電流の大きさが制御される。また、容器18内(密閉空間S)の圧力は、半田付け作業の進行状況に合わせて加圧及び減圧され、雰囲気調整が行われる。
【0033】
そして、高周波発生装置27を停止させた後、冷却用の熱媒供給部を操作して容器18内に冷却用ガスを供給する。冷却用ガスは、ヒートシンク15の冷媒流路15aの入口又は出口に向かって吹き込まれるとともに、容器18内に供給された冷却用ガスは、冷媒流路15a及びヒートシンク15の周囲を流れて、回路基板11を冷却する。この結果、溶融した半田は、溶融温度未満に冷却されることによって凝固し、金属回路13と半導体素子12とを接合する。この状態において、半田付けが終了し、半導体モジュール10が完成する。そして、蓋体20を本体19から取り外し、治具30を外した後に容器18内から半導体モジュール10を取り出す。
【0034】
したがって、この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)回路基板11上に設けられた金属回路13に半導体素子12を接合面全面で半田付けする半田付け方法において、回路基板11として金属回路13が形成されたセラミック基板14を備えるとともに、半導体素子12を接合する部分と対応する箇所に強磁性体17が電気的絶縁材を介して配置されたものを使用する。そして金属回路13上にシート半田31を介して半導体素子12を配置するとともに、強磁性体17を磁束Fが通過するように高周波誘導加熱を行ってシート半田31を溶融させて金属回路13と半導体素子12とを接合する。したがって、回路基板11上に半導体素子12等の電子部品を誘導加熱で半田付けする際に、錘を必要とせずに効率良く半田付けすることができる。また、強磁性体17が半導体素子12を接合する部分と対応する箇所、即ちシート半田31と対応する箇所に配置されているため、シート半田31に対して集中的に熱を伝えることができ、金属回路13全体を加熱する場合に比べてより効率的な加熱を実現できる。
【0035】
(2)強磁性体17はセラミック基板14に埋設された状態で配置されているため、強磁性体17と半田との間に介在する絶縁層の表面を平坦にして半導体素子12をセラミック基板14の表面と平行に接合するのが容易になる。
【0036】
(3)強磁性体17はループ状に形成されているため、強磁性体17が平板状に形成されている場合に比較して、絶縁層を熱伝導性の良い材質で構成した場合、製品の状態において半導体素子12で発生した熱の放熱が円滑に行われる。
【0037】
(4)電気的絶縁材はセラミックスで構成されている。セラミックスは樹脂やエラストマ等の他の電気的絶縁材に比較して熱伝導性及び耐熱性が良いため、金属回路13に接合された半導体素子12等の電子部品が駆動された際に発熱しても電気的絶縁材を介して放熱が円滑に行われ、また、耐久性も向上する。
【0038】
(5)シート半田31及び半導体素子12は、治具30を介してセラミック基板14上の所定位置に位置決めされた状態で配置される。したがって、シート半田31が溶融した状態で半導体素子12の姿勢が傾いたり、位置ずれしたりすることが抑制される。
【0039】
(6)半田付けは非酸化状態で行うのが好ましいため、回路基板11を容器18内に収容して不活性ガス中あるいは還元性ガスの雰囲気で行われるが、強磁性体17で発生した熱がシート半田31に直ぐに伝達されて半田を溶融させるため、錘を加熱する場合に比較して発生した熱が周囲に放熱される経路が少ない。したがって、錘を介してシート半田31を加熱する場合に比べて効率的な加熱を実現することができる。
【0040】
(7)強磁性体17として、ニッケル(Ni)が使用されている。したがって、高周波誘導加熱で効率良く加熱される強磁性体17を入手し易い。
(8)電子機器の部品となる半導体モジュール10の製造方法の一工程である半導体素子12の半田付け工程において前記の方法で半田付けを行っている。したがって、電子機器の製造方法において、前記各効果を得ることができる。
【0041】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 強磁性体17は、金属回路13毎に設けられるのではなく、例えば、図4(a)に示すように、両金属回路13と対応する位置に跨るようにして、全ての半導体素子12の接合部と対応する形状のループ状としてもよい。また、図4(b)に示すように、各半導体素子12の接合部と対応する位置にそれぞれ独立したループ状の強磁性体17を設けてもよい。
【0042】
○ セラミック基板14上に金属回路13が2個形成されるとともに、各金属回路13上に半導体素子12が2個ずつ接合された構成に限らない。例えば、図4(c)に示すように、各金属回路13上に半導体素子12を1個ずつ接合したり、あるいはセラミック基板14上に金属回路13を1個形成するとともに、金属回路13上に半導体素子12を1個接合したりする構成としてもよい。そして、半導体素子12の接合箇所と対応する位置に破線で示すように、強磁性体17を設ける。
【0043】
○ 強磁性体17はループ状に限らず、例えば、図5(a)に示すように、複数の孔17aが形成されたニッケル板によりメッシュ状に形成したり、図5(b)に示すように、半導体素子12の外形に対応した形状のニッケル板で平面状に形成したりしてもよい。しかし、例えば、セラミック基板14を窒化アルミ製とした場合、ニッケルは熱伝導性が窒化アルミより悪いため、半導体モジュール10が電子機器に組み込まれて駆動された際に、半導体素子12における発熱を効率よく放熱するにはループ状やメッシュ状の方が良い。孔17aの形状は円形に限らず、三角形、四角形等の多角形や楕円等任意の形状でよく、また異なる形状のものが混在したり、大きさの異なるものが混在したりしてもよい。
【0044】
○ 回路基板11はヒートシンク15を備えたヒートシンク付き基板に限らず、少なくとも片面に導体パターンが形成された絶縁層を備えるとともに、半導体素子12(電子部品)を接合する部分と対応する箇所に強磁性体17が電気的絶縁材を介して配置された構成であればよい。例えば、図6(a)に示すように、セラミック基板14の片面に金属回路13(導体パターン)が形成され、他方の面に金属回路13と同等の線膨張係数の層32が形成された構成としてもよい。層32は反り防止機能を発揮する。また、図6(b)に示すように、樹脂基板33の片面に金属回路13が形成された構成とし、樹脂基板33を構成する樹脂中に強磁性体17を埋設してもよい。樹脂としてはポリイミドやポリアミドイミド等の特に耐熱性に優れた樹脂が好ましいが、高い耐熱性が要求されるのは半田付けの際の短時間であるため、エポキシ樹脂等のようにポリイミドに比較して耐熱性の低い樹脂であってもよい。樹脂基板33の場合、ガラス繊維や炭素繊維等で強化されたものが好ましい。また、基板は必ずしも電気的絶縁材で形成される必要はなく、図6(c)に示すように、アルミニウムや銅などの金属基板34の上にポリイミド等の耐熱性樹脂で形成された絶縁層34aを設け、絶縁層34a上に金属回路13を形成した構成としてもよい。強磁性体17は、絶縁層34aを構成する樹脂中に埋設される。
【0045】
○ 強磁性体17は絶縁層34aに埋設された構成に限らず、図6(d)に示すように、セラミック基板14上に強磁性体17が配置され、金属回路13が絶縁材(電気的絶縁材)35を介して強磁性体17上に配置された構成としてもよい。
【0046】
○ 金属回路13上に電子部品(半導体素子12)を接合するための金属接合材料(半田)を溶融させる熱を強磁性体17に発生させるための磁束を発生させる構成は、高周波加熱コイル26を回路基板11の上方に配置する構成に限らない。例えば、図7に示すように、略C字状のコア36に高周波加熱コイル26を巻回し、コア36の対向する端面の間に回路基板11が配置される構成としてもよい。この場合、高周波加熱コイル26に高周波の交流電流が流れることにより、コア36の一方の端面から回路基板11を通過して他方の端面に向かう磁束の向きが周波数に合わせて180度変更される。そして、強磁性体17の両表面にうず電流が発生する状態になる。
【0047】
○ 強磁性体17の材料となる強磁性材はニッケルに限らず、鉄(Fe)、コバルト(Co)等の他の単体の強磁性金属や合金でもよい。強磁性材の合金として、例えば、パーマロイ等の鉄ニッケル合金が挙げられる。
【0048】
○ 半田付けに使用する半田はシート半田31に限らず、半田ペーストを使用してもよい。そして、シート半田31を金属回路13の接合部と対応する箇所に配置する方法に代えて、半田ペーストを接合部と対応する箇所に塗布するようにしてもよい。
【0049】
○ 治具30は、凹部30aが金属回路13の周縁部と係合して位置決めされた状態でセラミック基板14上に載置される構成に限らない。例えば、凹部30aの周面をセラミック基板14の周面と係合可能な段差形状にしてもよい。金属回路13の厚さはセラミック基板14の厚さに比較して薄いため、セラミック基板14の周面と係合可能に形成する方が凹部30aの形成及び位置決めが容易になる。
【0050】
○ 回路基板11上に設けられるセラミック基板14の数は1個に限らず複数であってもよい。また、回路基板11上に設けられるセラミック基板14の数が1個の場合、複数の回路基板11を容器18に収容して同時に半田付けをするようにしてもよい。これらの場合、高周波加熱コイル26は、複数のセラミック基板14の上方に跨って配置する構成としてもよい。この場合、高周波加熱コイル26に対する高周波電流の供給経路や冷却水の供給経路を少なくすることができ、半田付け装置HKの構造を簡素化できる。
【0051】
○ 蓋体20は、本体19に対して取り外し不能な構成、例えば、開閉式でもよい。
○ 高周波加熱コイル26を容器18の外側において蓋体20の上方に配置する構成において、蓋体20は、少なくとも高周波加熱コイル26と対向する部位が電気的絶縁材で形成されているのが好ましく、当該部位をガラスに代えて、例えば、セラミックスや樹脂で形成してもよい。また、蓋体20全体を同じ電気的絶縁材で形成してもよい。
【0052】
○ 高周波加熱コイル26を、容器18(密閉空間S)内に配置してもよい。
○ 回路基板11上に設けられた接合部(金属回路13)に接合される電子部品は、半導体素子12のように接合部と対向する面全体が接合されるものに限らず、チップ抵抗やチップコンデンサ等のように電子部品の両端に端子を有し、各端子が異なる接合部に接合されるものであってもよい。
【0053】
○ 回路基板としてプリント配線板を使用し、電子部品としてパッケージ裏面に複数の端子がグリッド状に配置されたものを使用してもよい。例えば、マザーボードにBGA(ボールグリッドアレイ)パッケージを半田付けする場合、図8に示すように、マザーボード40の一方の面には、BGAパッケージ41に形成された半田ボール42と対応して接合部としての配線パターン43を形成する。また、マザーボード40の他方の面には、配線パターン43と対応する位置に強磁性体のパターンとして強磁性体層44を形成する。そして、各配線パターン43と各半田ボール42とが対応する状態でマザーボード40上にBGAパッケージ41を配置して、高周波加熱装置45により磁場を発生させて、磁束Fが強磁性体層44を通過する状態で誘導加熱を行い、強磁性体層44を発熱させ、半田付け部近傍のみを局所加熱する。なお、マザーボード40は図示しない支持装置により支持されて、高周波加熱装置45の上方に配置される。加熱された半田ボール42が溶融した後、溶融した半田を冷却・凝固させると、図9に示すように、BGAパッケージ41が半田Hを介してマザーボード40に接合される。
【0054】
BGAパッケージ41を従来技術のようにリフロー炉を通して半田付けする場合は、マザーボード40及びBGAパッケージ41全体を加熱するため、効率が悪い。また、全体を加熱するため、半田付け部に比べて大きなリフロー炉が必要になる。また、半田付けで接合されるBGAパッケージ41とマザーボード40との間に線膨張率の差が有る場合、リフロー炉を通して半田付けを行うと、BGAパッケージ41の大型化とともに線膨張差による反りや半田部のクラックなどの不具合が生じる。しかし、この実施形態では、配線パターン43と対応する箇所に配置された強磁性体層44が、誘導加熱で発熱して半田付け部近傍のみが局部加熱されるため、前記の不具合が抑制される。即ち、半田付け部付近のみ加熱するため、エネルギーロスが少なく、線膨張差による影響が小さく、反りやクラック発生を抑えることができる。また、大きな半田付け設備が不要になる。
【0055】
○ マザーボード40にBGAパッケージ41を半田付けする場合、高周波加熱装置から発生する磁束FがBGAパッケージ41の上方からマザーボード40及びマザーボード40の下面に形成された強磁性体層44を貫通するようにしてもよい。
【0056】
○ 図10に示すように、強磁性体層44をマザーボード40内に配置した構成としてもよい。この場合、強磁性体層44をマザーボード40の配線パターン43が形成された面と反対側の面に形成する場合に比較して、強磁性体層44と配線パターン43との距離が小さくなるため、半田付けの際に強磁性体層44で発生した熱が効率良く配線パターン43を介して半田ボール42に伝達される。
【0057】
○ BGAパッケージ41に限らずLGA(ランドグリッドアレイ)パッケージの半田付けに適用してもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0058】
(1)請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記強磁性体は、複数の孔が形成された強磁性材製の板材がセラミック基板又は樹脂基板に埋設されて構成されている。
(2)少なくとも片面に導体パターンが形成された絶縁層を備えるとともに、前記電子部品を接合する部分と対応する箇所に強磁性体が電気的絶縁材を介して配置された回路基板。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)は(b)のA−A線における拡大断面図、(b)は半導体モジュールの平面図、(c)は(a)のC−C線におけるセラミック基板の断面図。
【図2】半田付け装置の概略縦断面図。
【図3】図2の部分拡大図。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ強磁性体の形状が異なる別の実施形態を示す模式断面図。
【図5】(a),(b)はそれぞれ別の実施形態における基板の模式断面図。
【図6】(a)〜(d)はそれぞれ別の実施形態における基板の模式断面図。
【図7】別の実施形態における誘導加熱の方法を示す模式図。
【図8】BGAパッケージをマザーボードに半田付けする場合におけるマザーボードを断面とした模式図。
【図9】同じくBGAパッケージがマザーボードに半田付けされる際のマザーボード、BGAパッケージ及び高周波加熱装置の関係を示す模式断面図。
【図10】別の実施形態のマザーボードに半田付けした場合のマザーボードを断面とした模式図。
【図11】(a)は従来技術の断面図、(b)は別の従来技術の断面図。
【符号の説明】
【0060】
F…磁束、H…半田、11…回路基板、12…電子部品としての半導体素子、13…接合部及び導体パターンとしての金属回路、14…絶縁層としてのセラミック基板、17…強磁性体、31…金属接合材料としてのシート半田、34a…絶縁層、35…絶縁材、40…回路基板としてのマザーボード、41…電子部品としてのBGAパッケージ、42…金属接合材料としての半田ボール、43…接合部としての配線パターン、44…強磁性体としての強磁性体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に設けられた接合部に電子部品を半田やろう材としての金属接合材料を用いて接合する電子部品の接合方法であって、
前記回路基板として少なくとも片面に導体パターンが形成された絶縁層を備えるとともに、前記電子部品を接合する部分と対応する箇所に強磁性体が電気的絶縁材を介して配置されたものを使用し、前記接合部上に金属接合材料を介して電子部品を配置するとともに、前記強磁性体を磁束が通過するように高周波誘導加熱を行って前記金属接合材料を溶融させて前記接合部と前記電子部品とを接合する電子部品の接合方法。
【請求項2】
前記強磁性体は前記絶縁層に埋設された状態で配置されている請求項1に記載の電子部品の接合方法。
【請求項3】
前記強磁性体はループ状に形成されている請求項1又は請求項2に記載の電子部品の接合方法。
【請求項4】
前記電気的絶縁材はセラミックスで構成されている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子部品の接合方法。
【請求項5】
前記電子部品は、ボールグリッドアレイパッケージである請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子部品の接合方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子部品の接合方法を半田付け工程に使用する電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−141188(P2008−141188A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288503(P2007−288503)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】