説明

電子部品の放熱構造

【課題】筐体に搭載される電子部品を効率的に放熱することができる、電子部品の放熱構造を提供する。
【解決手段】本発明は、筐体2に搭載される電子部品10の放熱構造であって、筐体2の床面3aに熱的に結合した底部12a、及び筐体2の少なくとも1つの内側面4aに熱的に結合した側部12bを有する板状ヒートパイプ12を備え、電子部品10が、板状ヒートパイプ12の底部12aの上面に熱的に結合していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、無線通信システムの基地局においては、小型化と通信の高速大容量化に伴い、基地局に内蔵された電子部品からの熱を効率的に放熱する構造が望まれている。従来の放熱構造として、電子部品などの発熱体の底面及び側面を、平坦な板状ヒートパイプと熱的に結合させることにより、両者の熱的結合面の面積を大きくし、これにより該結合面での熱抵抗を低減させるものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−75084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基地局の筐体の床面上に平坦な板状ヒートパイプを設け、該板状ヒートパイプ上に複数の電子部品を設けて放熱する場合、全ての電子部品を該床面を介して放熱しなければならないため、これらを効率的に放熱することができないという問題がある。このような問題は、基地局に限らず、発熱する電子部品を搭載する各種の電子機器においても、同様に生じるものである。
【0005】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、筐体に搭載される電子部品を効率的に放熱することができる、電子部品の放熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する第1の観点に係る電子部品の放熱構造の発明は、
筐体に搭載される電子部品の放熱構造であって、
前記筐体の床面に熱的に結合した底部、及び前記筐体の少なくとも1つの内側面に熱的に結合した側部を有する板状ヒートパイプを備え、
前記電子部品が、前記板状ヒートパイプの前記底部の上面に熱的に結合していることを特徴とするものである。
【0007】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る電子部品の放熱構造において、
前記板状ヒートパイプの前記底部は、熱伝導シートを介して前記筐体の前記床面と熱的に結合していることを特徴とするものである。
【0008】
さらに、第3の観点に係る発明は、第1または第2の観点に係る電子部品の放熱構造において、
前記板状ヒートパイプの前記側部の外面に固定された、熱伝導性の取り付け板をさらに備え、
前記取り付け板は、止めねじの軸部が遊びをもって貫通する大径穴を備え、前記筐体の側壁に対して位置調整可能に、前記大径穴を通して前記止めねじにより前記筐体の前記側壁に固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筐体に搭載される電子部品を、効率的に放熱することができる、電子部品の放熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子部品の放熱構造を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子部品の放熱構造の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電子部品の放熱構造を示す斜視図である。図1では、基地局等の電子機器1の筐体2の底壁3と1つの側壁4との内面である、それぞれ床面3aと内側面4aとを示している。筐体2の床面3a上には、複数の電子部品10、30が搭載されている。図2は、図1に示す筐体2の底壁3を通るA−A断面図である。図3は、図1に示す筐体2の側壁4を通るB−B断面図である。筐体2は、熱伝導性材料で形成され、その底壁3又は側壁4の外面には、図示しない熱伝導性のフィンを設けることができる。
【0013】
電子機器1の床面3a上に搭載された電子部品10、30は、電子機器1の稼動中に発熱するため、これらを故障させないためにこれらの放熱が必要である。ここで、仮に電子部品10、30の両方を筐体2の底壁3のみを介して放熱すると、発熱量が比較的小さな電子部品30が、発熱量が比較的大きな電子部品10により熱せられる結果となり、両者を効率的に放熱できないおそれがある。そこで、本実施の形態では、発熱量が比較的大きな電子部品10を、L型板状ヒートパイプ12を用いて筐体2の底壁3と側壁4の両方を介して放熱する。一方、発熱量が比較的小さな電子部品30は、従来から既知の平坦型板状ヒートパイプ32を用いて、筐体2の底壁3のみを介して放熱する。
【0014】
L型板状ヒートパイプ12は、筐体2の床面3aと熱的に結合される底部12aと、筐体2の内側面4aと熱的に結合される側部12bとを、一体的に形成したものである。L型板状ヒートパイプ12の内部には、底部12aと側部12bとの間で連続する空洞部(図示せず)が形成され、その空洞部に作動流体が封入されている。この空洞部は真空引きされており、これにより作動流体の蒸発を起きやすくしている。作動流体としては、L型板状ヒートパイプ12の材質との適合性を考慮して、水、シクロペンタン、アルコール、代替フロン等を用いることができる。
【0015】
電子部品10は、密着用の熱伝導シート11を用いて、L型板状ヒートパイプ12の底部12aの上面に密着される。また、L型板状ヒートパイプ12の底部12aは、熱抵抗調整用の熱伝導シート13を介して、筐体2の床面3a上に設けられる。熱伝導シート13は、電子機器1の製造時にその材料、厚さ、又は面積などを変更することにより、その熱抵抗率が調整される。
【0016】
L型板状ヒートパイプ12の側部12bは、銅などの熱伝導性の取り付け板20を介して、筐体2の内側面4aに取り付けられる。具体的には、L型板状ヒートパイプ12の側部12bの外面に、接着剤を塗布するなどして取り付け板20が固定され、その後、取り付け板20を止めねじ21により筐体2の側壁4に固定される。図3に示すように、取り付け板20を止めねじ21により筐体2の側壁4に取り付けるために、側壁4にはねじ穴4bが形成される。また、取り付け板20には、止めねじ21の軸部が遊びをもって貫通する大径穴20aが形成される。これにより、筐体2の側壁4に対する取り付け板20の取り付け位置を調整することができる。よって、例えば、筐体2の床面3aからの電子部品10の取付け高さが定められている場合、電子部品10の高さ方向の寸法にバラつきがあっても、取付け板20の取り付け高さを調整することで、電子部品10の取付け高さを一定にすることができる。すなわち、電子部品10の取り付け高さを一定にするために、密着用の熱伝導シート11の厚さを調整する必要がなくなる。したがって、熱伝導シート11の熱伝導率を一定に保つことができる。
【0017】
発熱量が比較的小さな電子部品30は、密着用の熱伝導シート31を用いて、平坦型板状ヒートパイプ32の上面に密着される。また、平坦型板状ヒートパイプ32は、筐体2の床面3a上に設けられる。ここで、平坦型板状ヒートパイプ32と筐体2との間には、熱抵抗調整用の熱伝導シートを設けない。
【0018】
上記のように構成した電子機器1の作用を説明する。電子機器1が稼動されると、電子部品10、30が発熱する。L型板状ヒートパイプ12の内部では、発熱量が比較的大きな電子部品10からの熱により、筐体2と反対側で作動流体が蒸発し、筐体2と近接側で作動流体が凝縮することによって、熱がL型板状ヒートパイプ12の底部12a及び側部12bの全体に拡散する。このようにして、L型板状ヒートパイプ12を介して、電子部品10と筐体2の底壁3及び側壁4との間の熱交換が行われる。ここで、熱伝導シート13の熱抵抗率が高ければ高いほど、電子部品10と筐体2の底壁3との間の熱交換が制限され、電子部品10と側壁4との間の熱交換が促進される。一方、発熱量が比較的小さな電子部品30から発生する熱は、同様にして平坦型板状ヒートパイプ32の全体に拡散する。これにより、平坦型板状ヒートパイプ32を介して、電子部品30と筐体2の底壁3との間の熱交換が行われる。
【0019】
以上より、発熱量が比較的大きな電子部品10を、L型板状ヒートパイプ12を用いて放熱することにより、電子部品10からの熱の一部を筐体2の側壁4を介して放熱するため、効率的に電子部品10の放熱を行うことができる。
【0020】
また、L型板状ヒートパイプ12の底部12aと筐体2の底壁3との間に、熱抵抗調整用の熱伝導シート13を設けることにより、電子部品10と筐体2の底壁3との間の熱交換を制限することができるので、電子部品10からの熱が電子部品30に及ぶのを抑制することができる。よって、効率的に電子部品10、30の放熱を行うことができる。
【0021】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、複数の電子部品10、30の発熱量が同等である場合は、これらをL型板状ヒートパイプ12に搭載することもできる。これにより、電子部品10、30からの熱の一部を筐体2の側壁4を介して放熱するため、効率的に電子部品10、30の放熱を行うことができる。
【0022】
また、上記実施の形態では、筐体2の床面3aと1つの内側面4aとに熱的に結合されるL型板状ヒートパイプ12を用いたが、その代わりに、筐体2の床面3aと複数の内側面4aに熱的に結合されるあらゆる形状の板状ヒートパイプを用いることもできる。また、板状ヒートパイプは、筐体2の床面3aと内側面4aとに加えて、筐体2の天井面にも熱的に結合させるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 電子機器
2 筐体
3 底壁
3a 床面
4 側壁
4a 内側面
4b ねじ穴
10、30 電子部品
11、31 密着用の熱伝導シート
12 L型板状ヒートパイプ
12a 底部
12b 側部
13 熱抵抗調整用の熱伝導シート
20 取り付け板
20a 大径穴
21 止めねじ
32 平坦型板状ヒートパイプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に搭載される電子部品の放熱構造であって、
前記筐体の床面に熱的に結合した底部、及び前記筐体の少なくとも1つの内側面に熱的に結合した側部を有する板状ヒートパイプを備え、
前記電子部品が、前記板状ヒートパイプの前記底部の上面に熱的に結合していることを特徴とする電子部品の放熱構造。
【請求項2】
前記板状ヒートパイプの前記底部は、熱伝導シートを介して前記筐体の前記床面と熱的に結合していることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の放熱構造。
【請求項3】
前記板状ヒートパイプの前記側部の外面に固定された、熱伝導性の取り付け板をさらに備え、
前記取り付け板は、止めねじの軸部が遊びをもって貫通する大径穴を備え、前記筐体の側壁に対して位置調整可能に、前記大径穴を通して前記止めねじにより前記筐体の前記側壁に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品の放熱構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−105962(P2013−105962A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250067(P2011−250067)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】