説明

電子部品の放熱構造

【課題】電子部品の熱を効率良く放熱することのできる電子装置の放熱構造を提供する。
【解決手段】筐体1内に配置される電子部品の放熱構造であって、電子部品の側面及び筐体1の側壁に当接させた伝熱冷却板8を設ける。具体的には、フェライトコア5の2つの対向する側面5aには、弾性のある放熱シート7を、金属バンド6を介して当接させるように設けている。さらに、放熱シート7には、この放熱シート7に当接させるように伝熱冷却板8が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通信の高速大容量化にともない、通信基地局等の電子装置に内蔵された電子デバイスが演算処理の過程で極めて高温化する傾向にある。このため、電子デバイスからの熱を効果的に放熱する構造が望まれている。例えば、電源トランスは、通常、フェライトコアに一次コイル及び二次コイルを設けて構成されている(特許文献1参照)。
さらに、図6に示すように、従来の電源トランス10の放熱構造としては、フェライトコア20がアルミ等の金属のバンド30で固定されたものが知られている。図7は、図6の矢印Aの方向から見た矢視図である。図7に矢印で放熱の様子を模式的に示すように、金属バンド30は、電源トランス10が発生する熱を自然空冷するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−272825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、筐体の小型化から電源トランスも小型化が進み、また、電源トランスの周囲の雰囲気温度も高温化しているため、従来の金属バンドのみの自然空冷では放熱が不十分であり、電源トランスの温度が上昇してトランスの温度許容値をオーバーする可能性がある。このような問題は、電源トランスに限らず、パワートランジスタやパワーIC等の発熱する電子部品にも同様に生じるものである。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電子部品の熱を効率良く放熱することのできる電子装置の放熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子部品の放熱構造の要旨構成は、筐体内に配置される電子部品の放熱構造であって、前記電子部品の側面及び前記筐体の側壁に当接させた伝熱冷却板を設けたものである。
【0007】
本発明の好適一実施形態では、前記伝熱冷却板は、少なくとも、対向する2つの面を有し、当該対向する2つの面を前記電子部品の2つの側面に当接させて当該電子部品を挟み込む。
【0008】
本発明の別の好適一実施形態では、前記電子部品は、コイルを備える電源トランスであり、前記2つの対向する面を前記コイルの2つの側面に当接させて当該コイルを挟み込む。
【0009】
本発明のさらに別の好適一実施形態では、前記電子部品は、フェライトコアを備える電源トランスであり、前記2つの対向する面を前記フェライトコアの2つの側面に当接させて当該フェライトコアを挟み込む。
【0010】
本発明の他の好適一実施形態では、前記伝熱冷却板は、少なくとも、対向する2つの面の2組からなる4つの面を有し、前記電子部品は、コイル及びフェライトコアを備える電源トランスであり、前記2組の対向する2つの面のうち一方の組の2面は、前記コイルの2つの側面に当接し、他方の組の2面は、前記フェライトコアの2つの側面に当接する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品の熱を効率良く放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る電子部品の放熱構造の要部を示す斜視図である。
【図2】図1のB方向から見た矢視図である。
【図3】筐体へ取り付ける前の状態における、第1の実施形態に係る電子部品の放熱構造の要部を示す斜視図である。
【図4】第2の実施形態に係る電子部品の放熱構造の要部を示す斜視図である。
【図5】第3の実施形態に係る電子部品の放熱構造の要部を示す斜視図である。
【図6】従来の電源トランスの放熱構造を示す、概略斜視図である。
【図7】図6に示す電源トランスの放熱の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品の放熱構造を示す斜視図である。なお、以下、電源トランスの放熱構造について説明するが、本発明は電源トランスの場合に限られるものではない。
【0014】
図1に示すように、筐体1(壁面の一部のみ図示している)の内部に搭載された基板(図示せず)上に電源トランス3が実装されている。この電源トランス3は、電源電圧の値を変換するものであり、一次コイル及び二次コイルを含む複数のコイル4がフェライトコア5に同芯状に巻き付けられてなる。フェライトコア5は、アルミ等の金属のバンド6で固定されている。
【0015】
図2は、図1の矢印Bの方向からみた矢視図である。
図2に示すように、フェライトコア5の2つの対向する側面5aには、弾性のある放熱シート7を、金属バンド6を介して当接させるように設けている。さらに、放熱シート7には、この放熱シート7に当接させるように伝熱冷却板8が設けられている。
具体的には、図2に示すように、伝熱冷却板8は、対向する2つの板バネ部8aを有し、フェライトコア5を、放熱シート7を介して、この2つの板バネ部8aにより挟み込むようにしている。
【0016】
伝熱冷却板8は、厚さ1〜2mmのアルミニウム、銅等の非磁性の金属板である。また、図3に筐体1の側壁に取り付ける前の状態の放熱構造を示すように、伝熱冷却板8は、取り付け部8bを有し、図1、2に示すように、この取り付け部8bにネジ等の取り付け部品8cを、例えば放熱グリス等を介して取り付けることによって、伝熱冷却板8を筐体1の壁面に当接させている。
また、図1〜3に示すように、伝熱冷却板8は、筐体1の壁面との接触面積が大きくなるように、筐体1の壁面に沿う形状の壁面接触部分8dを有する。
【0017】
上記の放熱構造によれば、図2において矢印で熱の移動を模式的に示すように、電源トランス3で発生した熱は、金属バンド6、放熱シート7を通って、伝熱冷却板8に伝熱され、伝熱冷却板8から電子装置の筐体1及び取り付け部品8cに放熱される。
これにより、自然空冷より電源トランスの熱を効率良く放熱することができ、高い冷却効果を得ることができる。
【0018】
また、板バネ部8a及び放熱シート7は弾性を有するため、伝熱冷却板7と放熱シート6との接触面積が増加して、放熱効果が高まる。
【0019】
さらに、板バネ部8aによりフェライトコア5を挟み込んで固定しているため、電源トランス3の振動を抑えることができる。このため、電源トランスが振動することにより発生する騒音を低減することができる。
【0020】
なお、冷却部品である放熱シート7及び伝熱冷却板8は、電源トランス3を基板に実装する前に電源トランス3に取り付けても良いし、実装した後に取り付けても良い。
【0021】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、筐体に取り付ける前の放熱構造の要部を示す斜視図である。
図4に示すように、伝熱冷却板8は、対向する2つの板バネ部8aを有し、コイル4を、放熱シート7を介して、この2つの板バネ部8aにより挟み込んでいる。
【0022】
この構造によれば、電源トランス3で発生した熱は、コイル4、放熱シート7を通って、伝熱冷却板8に伝熱され、伝熱冷却板8から筐体1及び取り付け部品8cに放熱される。
これにより、コイルを直接冷却することにより、電源トランスの熱を効率良く放熱することができ、高い冷却効果を得ることができる。
また、第1の実施形態と同様に、板バネ部8a及び放熱シート7は弾性を有するため、伝熱冷却板8と放熱シート7との接触面積が増加して、放熱効果が高まる。
さらに、板バネ部8aによりコイル4を挟み込んでいるため、電源トランス3の振動を抑えることができる。このため、電源トランスが振動することにより発生する騒音を低減することができる。
なお、第2の実施形態においても、冷却部品である放熱シート7及び伝熱冷却板8は、電源トランス3を基板に実装する前に電源トランス3に取り付けても良いし、実装した後に取り付けても良い。
【0023】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図5は、電源トランスに取り付ける前の伝熱冷却板8を示す斜視図である。
図5に示すように、本実施形態の伝熱冷却板8は、箱型をしており、2つの対向する2面の2組からなる4つの側面と、1つの上面と、から構成されている。
4つの側面は、板バネ部8a及びスリット部8eをそれぞれ有する。また、上面にはスリット部9を設けている。なお、図面を明瞭とするため、側面のうち1面は図示を省略している。
【0024】
上記の伝熱冷却板8を基板に実装した電源トランスに取り付けた放熱構造によれば、4つの板バネ部8aが、フェライトコア5及びコイル4にそれぞれ放熱シートを介して当接するため、発熱部品と放熱部品との接触面積が増大し、またフェライトコア5とコイル4との双方を冷却することができるため、非常に冷却効果が高い。
【0025】
また、フェライトコア5の2つの側面及びコイル4の2つの側面をそれぞれ板バネで挟みこむため、電源トランス3の振動をさらに効果的に抑えることができる。このため、電源トランスが振動することにより発生する騒音をかなり低減させることができる。
さらに、スリット部8e、9を通して、熱を箱型の伝熱冷却板8の外側へ放熱させることができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、伝熱冷却板は、電源トランスのコイルやフェライトコアの形状に応じて、適宜、接触面積が大きくなるような様々な形状とすることができる。
【0027】
また、上記実施形態では電源トランスを例に説明したが、電子部品は、例えば、パワートランジスタ、パワーIC等であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 筐体
3 電源トランス
4 コイル
5 フェライトコア
5a フェライトコアの側面
6 金属バンド
7 放熱シート
8 伝熱冷却板
8a 板バネ部
8b 取り付け部
8c 取り付け部品
8d 壁面接触部分
8e スリット部
9 スリット部
10 電源トランス
20 フェライトコア
30 金属バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置される電子部品の放熱構造であって、
前記電子部品の側面及び前記筐体の側壁に当接させた伝熱冷却板を設けたことを特徴とする電子部品の放熱構造。
【請求項2】
前記伝熱冷却板は、少なくとも、対向する2つの面を有し、当該対向する2つの面を前記電子部品の2つの側面に当接させて当該電子部品を挟み込む、請求項1に記載の電子部品の放熱構造。
【請求項3】
前記電子部品は、コイルを備える電源トランスであり、
前記2つの対向する面を前記コイルの2つの側面に当接させて当該コイルを挟み込む、請求項2に記載の電子部品の放熱構造。
【請求項4】
前記電子部品は、フェライトコアを備える電源トランスであり、
前記2つの対向する面を前記フェライトコアの2つの側面に当接させて当該フェライトコアを挟み込む、請求項2に記載の電子部品の放熱構造。
【請求項5】
前記伝熱冷却板は、少なくとも、対向する2つの面の2組からなる4つの面を有し、
前記電子部品は、コイル及びフェライトコアを備える電源トランスであり、
前記2組の対向する2つの面のうち一方の組の2面は、前記コイルの2つの側面に当接し、他方の組の2面は、前記フェライトコアの2つの側面に当接する、請求項2に記載の電子部品の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84727(P2013−84727A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223044(P2011−223044)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】