電子部品の欠陥修復装置
【課題】本発明の目的は、液晶ディスプレイを初めとする半導体装置や、その他の電子部品に欠陥が生じたとき、その欠陥箇所を修復して機能を回復させる修復装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、単層又は多層の薄膜をその薄膜の物理的特性を維持したまま他の箇所に転写することにある。
【解決手段】超短パルスレーザーを適宜調整して発生する超短パルスレーザー発生装置と、前記超短パルスレーザー発生装置から照射された超短パルスレーザーを所定の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーターと、該超短パルスレーザーを集光する光学系と、修復すべき電子部品を載置して位置決めする第1のステージとを含む電子部品の欠陥修復装置。
【解決手段】超短パルスレーザーを適宜調整して発生する超短パルスレーザー発生装置と、前記超短パルスレーザー発生装置から照射された超短パルスレーザーを所定の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーターと、該超短パルスレーザーを集光する光学系と、修復すべき電子部品を載置して位置決めする第1のステージとを含む電子部品の欠陥修復装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の欠陥修復装置に関し、より詳しくは電子部品の欠陥箇所を修復し、欠陥のない部品に蘇らせる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画素数1024×768を有するXGA(Extended video Graphics Array)の液晶デイスプレイ(以下、LCDと言う)には、約236万個のサブ・ピクセルが形成されている。そして、これら個々のサブ・ピクセルはTFT(Thin FilmTransistor) によって作動させられる。このLCDの製造において、サブ・ピクセルの全てを欠陥なく製造するのは非常に困難であり、通常は一定の限度数の範囲内で点欠陥は許容されている。
【0003】
しかし、たとえサブ・ピクセルの中の一つに欠陥があり、そのサブ・ピクセルが誤作動した結果、その画素は異なる色を発したり、あるいは黒を表示するときに明点となったりする場合がある。このような場合、周りの色とは全く異なる色が表示され、あるいは一面黒が表示される中で唯一白く光り、黒の明度を低下させるなど、点欠陥は画面に表示されることになる。このような点欠陥を修正する一つの方法として、たとえば特開平6−11675号に開示されるように、明点欠陥部を黒く塗り潰したり、明点欠陥部上に熱転写シートのインクを残し、暗点欠陥に修正する方法が知られている。あるいは、点欠陥を明点/暗点の目立たない点にする、一時しのぎの修正方法である自己リーク方法で修正されている。これらはいずれも、点欠陥を目立たなくするだけであり、欠陥をなくす解決法ではなかった。このため、「点欠陥なし」というような厳しい顧客の要求に対応する場合は、顕著な歩留りの低下を免れられないものであった。
【0004】
ところで、点欠陥がカラーフィルターにある場合、欠陥を有するフィルターをYAGレーザーにより除去した後、その除去部に着色層を熱転写する方法が特開平9−230128号に開示されている。また、導体部分や絶縁体部分についての欠陥の修復方法が、特開平7−253583号、特開平8−150487号などに開示されている。これらの修復方法は欠陥をなくす有効な方法である。ところが、着色層や導体などを熱転写するのに、その着色層や導体などを半導体レーザーによって一旦溶融させる必要があるため、加熱溶融させても変色・変質しない材料に限定され、たとえば半導体層については適用できなかった。さらに、2層以上から構成される薄膜を同時に修復することは不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、液晶ディスプレイを初めとする半導体装置や、その他の電子部品に欠陥が生じたとき、その欠陥箇所を修復して機能を回復させる修復装置を提供することにある。
【0006】
また、本発明の目的は、単層又は多層の薄膜をその薄膜の物理的特性を維持したまま他の箇所に転写することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究開発を重ねた結果、本発明を想到するに至ったのである。本発明に係る電子部品の要旨とするところは、基板に複数の薄膜が積層され且つ適宜所定のパターンに形成された電子部品において、前記薄膜に生じた欠陥部を含む周囲を覆う1層又は複数層の薄膜の一部が除去されて下層の薄膜が露出させられた凹陥部に、欠陥を修復する転写膜が嵌め込まれていることにある。薄膜を積層し多数の素子を集積化した液晶ディスプレイなどの電子部品には点欠陥が発生し易い。この点欠陥の一つ一つについて、その欠陥部に凹陥部が形成されて、欠陥の原因が排除され、その代わりに欠陥のない薄膜や素子構造をした転写膜がその凹陥部内に嵌め込まれている。したがって、断線した箇所については、その上に嵌め込まれた転写膜によって電気的な導通が確保されることになる。また、転写膜が素子構造を備えている場合、転写膜が嵌め込まれた凹陥部は所定の素子としての機能を奏することになる。
【0008】
また、本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の要旨とするところは、基板に複数の薄膜が積層され且つ適宜所定のパターンに形成された電子部品における該薄膜に生じた欠陥部を修復する方法において、前記欠陥部を含む周囲を覆う薄膜を凹陥状に除去し、下層の薄膜を露出させるステップと、該欠陥を修復する転写膜を前記凹陥部に嵌め込み、露出させられた薄膜の上に被着させるステップとを含むことにある。この欠陥修復方法は、まず欠陥部を凹陥状に除去し、その形成された凹陥部に一層又は複数層からなる転写膜を溶融させたりせずに固体のまま転写する、すなわち嵌め込むものである。したがって、特に複数の薄膜からなる転写膜の場合であっても、凹陥部に転写された転写膜は素子としての機能・構成が損なわれることがなく、電子部品の欠陥部はほぼ完全に修復されることになる。電子部品の点欠陥について、全ての修復を行なうことにより、点欠陥のない電子部品が得られる。
【0009】
さらに、本発明に係る電子部品の欠陥修復装置の要旨とするところは、超短パルスレーザーを適宜調整して発生する超短パルスレーザー発生装置と、前記超短パルスレーザー発生装置から照射された超短パルスレーザーを所定の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーターと、該超短パルスレーザーを集光する光学系と、修復すべき電子部品を載置して位置決めする第1のステージとを含むことにあり、さらに、修復用基板を載置して位置決めする第2のステージと、前記第1のステージに載置された電子部品と第2のステージに載置された修復用基板とを所定の間隔を開けて保持する保持装置とを含むことにある。この欠陥修復装置は特に、電子部品を載置する第1のステージと修復用基板を載置する第2のステージを備えており、微細加工された電子部品と修復用基板との位置決めが容易にされている。そして、位置決めされた第1のステージと第2のステージとを保持装置により適切な圧力で加圧して、電子部品と修復用基板とを所定の間隔を開けて保持するようにしている。このため、転写膜が位置ずれすることなく、凹陥部に転写でき、また、転写膜にダメージを与えることなく、凹陥部に転写できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子部品は、それを構成する素子の一部に転写膜が嵌め込まれた痕跡を有しているが、その素子においても、他の箇所における素子の機能と同等乃至ほぼ同等の機能を発揮する。したがって、得られた電子部品としては、全く点欠陥もない完璧な製品を提供することができる。また、複雑な工程を繰り返してコストを要する製品である反面、不良率の高くなる製品において、微細な欠陥に伴う歩留りの低下を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係る電子部品の欠陥修復方法及び装置は、電子部品の発生した点欠陥の箇所のみを除去し、それによって形成された凹陥部の中に薄膜からなる転写膜を物理的特性を変化させることなく転写することとしている。この転写膜の転写は、超短パルスレーザー特にフェムト秒レーザーを用いて、透光性基板に積層された薄膜から任意に設定した形状に切断して、得られた転写膜を溶融させることなく他の箇所に転写するものである。超短パルスレーザーの切断面は非常に滑らかであり、電子部品に形成された凹陥部に転写された転写膜は密に嵌め込まれる。その結果、修復された電子部品は機能的に充分な形で修復される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の1実施形態における1工程を示す断面模式図である。
【図2】図1に示す欠陥修復方法に用いられる電子部品の要部拡大模式図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図である。
【図3】図1に示す実施形態の欠陥修復方法における次工程での電子部品の要部拡大模式図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図である。
【図4】図1に示す実施形態の欠陥修復方法における更に次工程を示す断面模式図である。
【図5】図1に示す実施形態の欠陥修復方法における更に次工程での電子部品の要部拡大模式図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図である。
【図6】本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の他の実施形態における1工程を示す断面模式図である。
【図7】図6に示す電子部品の欠陥修復方法に用いられる修復用基板の1例を示す要部拡大模式図である。
【図8】図6に示す実施形態の欠陥修復方法における更に次工程を示す断面模式図である。
【図9】図6に示す実施形態の欠陥修復方法における更に次工程での電子部品の要部拡大模式図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図である。
【図10】本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の更に他の実施形態における1工程を示す断面模式図である。
【図11】図10に示す実施形態の欠陥修復方法における他の工程を示す断面模式図である。
【図12】本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の更に他の実施形態における1工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る電子部品及び電子部品の欠陥修復方法並びに欠陥修復装置の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0014】
まず、本発明に係る電子部品の欠陥修復方法に用いられる修復装置は、図1に示すように、超短パルスレーザーを発生させる装置10と、その装置10から照射された超短パルスレーザー12を任意の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーター14と、レーザーの焦点を合わせるとともにその強さを高めるための光学系16と、修正すべき電子部品18を位置決めするために動かすことができる第1のステージ20を少なくとも備えて構成されている。
【0015】
超短パルスレーザー12としては、パルス幅(出力波形長)が数フェムト秒(fs=10-15 s )から数1000フェムト秒 (fs) であるフェムト秒レーザーが特に用いられ、その他、一部のエキシマレーザーなども用いることができる。レーザーのパルス幅が数ps( 10-12 s )以下、特に1ps以下の領域になると、パルス幅が小さくなるほどパルスの終結までに熱拡散がほとんど認められなくなり、さらに、表面又は固体内部での熱勾配が急峻になる。このため、超短パルスレーザー12によって加工されたアブレーション痕、特にその周縁部分に熱変成がほとんど見られず、しかも被加工面が滑らかになる。したがって、超短パルスレーザー12は半導体層や透明導電膜などの熱によって変質してしまう薄膜を含む欠陥部分の修復には好都合である。
【0016】
また、本発明に用いられる超短パルスレーザー12の波長は、超短パルスレーザー12が透過させられる透光性基板がガラス基板である場合、380nm以上であるのが好ましい。超短パルスレーザー12の波長が380nm以上であるのが好ましいのは、ガラス基板側からレーザー12を照射したとき、レーザー12がガラス基板に吸収されないためである。したがって、後述する修復用基板などの透光性基板が石英ガラス、溶融石英ガラス、あるいは岩塩などによって形成されている場合、その透光性基板を超短パルスレーザー12が透過し得る波長が選定される。一方、この超短パルスレーザー12の波長は、透光性基板上に形成された被加工薄膜に吸収されるものが選定され、薄膜の種類に対応して選択されることになる。
【0017】
このような超短パルスレーザー12を発生させる装置10の一例を挙げれば、Ti:サファイア、Cr:LiSAFなどの結晶を利用したレーザーやXeClレーザーが好ましく用いられる。また、この装置10は照射する超短パルスレーザー12のパルス数を適宜設定し得るものが用いられる。
【0018】
超短パルスレーザー発生装置10から照射される超短パルスレーザー12は2つの目的に使用される。すなわち、超短パルスレーザー12を薄膜側に照射し、その薄膜の照射面を徐々に除去する方法と、超短パルスレーザー12を透光性基板側から照射し、その超短パルスレーザー12が吸収される薄膜の箇所(面)からその上部にある薄膜の層を打ち抜く方法である。それぞれの加工条件の一例を示すと、超短パルスレーザー発生装置10が薄膜の照射面を徐々に除去する方法のために使用される場合、除去されるのが金属のとき、金属の種類によって異なるが、発生装置10のパワ−密度は0.1〜2.0Jule/cm2 に設定され、また、ITOのとき、0.4Jule/cm2 前後に設定される。他方、超短パルスレーザー発生装置10が薄膜の層を打ち抜く方法のために使用される場合、打ち抜かれるのが金属のとき、金属の種類によって異なるが、発生装置10のパワ−密度は0.1〜4.0Jule/cm2 に設定され、また、ITOのとき、0.8Jule/cm2前後に設定される。
【0019】
次に、超短パルスレーザー発生装置10から照射された超短パルスレーザー12を任意の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーター14は、たとえば液晶シャッターなどの装置によって構成される。ジェネレーター14は、それを通過したレーザー12の平面形状を、電子部品18の修復すべき箇所を含む適切な形状に微調整して成形し得る装置であれば、構造などは特に限定されない。
【0020】
また、光学系16や第1のステージ20は公知の装置を用いることができ、構造などは特に限定されない。光学系16は超短パルスレーザー発生装置10から照射された超短パルスレーザー12を第1のステージ20上の電子部品18内の1素子又は1部分に正確に焦点を合わせることができるように構成されていて、レンズなどによる透過式だけでなく、反射式のものでもよい。この光学系16は、ハーフミラーなどを含んでいてもよく、位置決めと微調整用の他の発光源と光学系を含むものであってもよい。第1のステージ20は少なくとも水平二軸方向に動かすことができればよく、特にミクロンオーダーで微調整することができる装置が用いられる。
【0021】
以上の構成を含む修復装置22は次のようにして使用される。まず、修復装置22の第1のステージ20の上に、欠陥箇所を含む電子部品18が配設される。本発明の修復方法に用いられる電子部品18は、基板24の上に薄膜を被着させて所定のパターンの配線、電極、半導体層、あるいは保護層などに形成し、一定の機能を備えた部品であれば、特に限定されない。より具体的に電子部品18を例示すれば、液晶ディスプレイ装置やイメージセンサー、LSIなどを挙げることができる。本実施形態では、基板24の上に配線26が形成され、その上を保護膜28が覆っている電子部品18の一部、たとえば液晶ディスプレイにおける信号線やゲート線を例にして説明する。
【0022】
第1のステージ20の上に配設された電子部品18について、図2に示すように、その欠陥である断線した箇所30の位置決めをするとともに、フレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーター14を作動させて、超短パルスレーザー発生装置10から照射される超短パルスレーザー12の範囲を設定することにより、断線箇所30を含む保護膜28を除去すべき範囲32の設定を行う。この位置決めと範囲32の設定は、超短パルスレーザー発生装置10の出力を低下させて行うか、あるいはそれ以外の図示しない調整用レーザー発生装置を配設しておき、そのレーザーにより行う。
【0023】
その後、超短パルスレーザー発生装置10からの超短パルスレーザー12により、電子部品18の断線箇所30の保護膜28を徐々に凹状に除去する。このときの超短パルスレーザー発生装置10の条件は、たとえばITOの場合、パワー密度が0.4Jule/cm2 前後に設定されるのが好ましい。そして、図3に示すように、凹陥部34を形成し、断線した配線26を少なくとも露出させる。このとき後述するように、断線した箇所の配線26の上に修復用の薄膜を被着させるため、配線26の表面を若干除去して、換言すれば配線26の少なくとも一部を残して残りを除去して、電気的接続を確保しておくのが好ましい。
【0024】
次いで、図4に示すように、電子部品18が取り付けられている第1のステージ20の上に配設されている第2のステージ35に、修復用基板36が配置されて固定される。そして、図示しない保持装置によって両ステージ20,35間に適度の圧力を加え、電子部品18と修復用基板36とが所定の間隔を開けて保持される。本実施形態で使用される第2のステージ35は修復用基板36を固定することができれば足りる。本実施形態においては、第2のステージ35は特に位置決め機能を必要とせず、第2のステージ35に取り付けられた修復用基板36を第1のステージ20上の電子部品18に対して平行に配設することができれば足りる。
【0025】
電子部品18と修復用基板36とは所定の間隔を開けて配設されるが、後述するように、修復用基板36から打ち抜かれた転写膜が弾き飛ばされて電子部品18の凹陥部34に嵌め込まれる。このとき、両者18と36の間隔が狭くて、たとえば隙間が全くない場合には、転写膜を転写したときに電子部品18と修復用基板36とが融着してしまい、分離できなくなる。一方、電子部品18と修復用基板36との間隔が開け過ぎの場合は、転写膜が修復用基板36から電子部品18の凹陥部34に飛び移るときに分解して飛散してしまう。そこで、電子部品18と修復用基板36との間隔は、実験に基づいて最適な値が求められるが、一般に1μm〜200μmの範囲が好ましく、特に50μm〜80μmの範囲が好ましい。
【0026】
修復用基板36は同図4及び図5に示すように、ガラス基板などの透光性基板38の上に修復用薄膜40が被着させられて構成されている。修復用薄膜40は修復すべき配線26と同じ材質であるのが好ましく、たとえば銅やアルミニウムなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。この修復用薄膜40は、透光性基板38の上に金属箔を接着したり、あるいは金属を蒸着させたりして、公知の手法で形成される。透光性基板38は超短パルスレーザー12を透過させるために透明であればよいが、特にガラス基板が好ましい。
【0027】
修復用基板36の裏面、すなわち修復用薄膜40の形成されていない面から超短パルスレーザー12を照射すると、超短パルスレーザー12は透光性基板38を透過し、その表面に形成された修復用薄膜40を超短パルスレーザー12が照射された面形状に打ち抜いて透光性基板38から弾き飛ばして転写する。そこで、電子部品18に形成された凹陥部34と対向する位置で、その形状と同形状に修復用基板40上に超短パルスレーザー12を結像し、所定の強さの超短パルスレーザー12を照射する。このときの超短パルスレーザー発生装置10の条件は前述したように、打ち抜かれるのが金属のときは、パワ−密度が0.1〜4.0Jule/cm2 に設定され、また、ITOのときは、0.8Jule/cm2 前後に設定されるのが好ましい。
【0028】
その結果、同図5(a)に示すように、修復用基板36の修復用薄膜40から打ち抜かれた修復部材(転写膜)42は対向して配設された電子部品18の凹陥部34内に嵌め込まれ、被着されて結合される。修復部材42は高エネルギーをもって凹陥部34内の配線26と密着させられるため、修復部材42と配線26とは拡散接合させられ、両者は電気的に接続されることになる。なお、同図5(a)は作動を説明するために、修復用基板38と電子部品18との隙間を大きく開けて描いている。
【0029】
このように、断線した配線26の上に被着させられた修復部材42は配線26と電気的に接続させられるため、配線26は機能を回復することになる。また、形成された凹陥部34の内面(切断面)や、その凹陥部34に転写された修復部材42の外表面(切断面)は、いずれも非常に滑らかであるため、両者の接合は機械的に切削して嵌め込んだように実現される。なお、凹陥部34内に嵌め込まれた修復部材42は上面が外部に露出させられているため、必要に応じてその上に保護膜などが被着させられるのが好ましい。
【0030】
以上、本発明に係る電子部品の欠陥修復方法とその方法により修復された電子部品の1実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
たとえば、上述の実施形態では修復用基板における修復部材は一層であったが、複数の層で構成することも可能である。一例として、図6に示すように、基板24の上に蓄積容量部Csを構成するCs線44と絶縁層46と画素電極48が積層された電子部品50において、基板24と接する側のCs線44に欠陥があった場合、その三層を欠陥のないものと置き換えることができる。
【0032】
すなわち、同図6に示すように、前述と同様に第1のステ−ジ20上に電子部品50を載置し、超短パルスレーザー発生装置10から照射される超短パルスレーザー12によって除去すべき欠陥を有する箇所52の位置決めとその範囲を設定し、超短パルスレーザー12を結像させる。その後、超短パルスレーザー12を照射して、電子部品50の欠陥部の上を覆っている画素電極48、絶縁層46、及びCs線44の一部を除去し、凹陥部54を形成する。
【0033】
一方、電子部品を修復するための修復用基板を予め作製しておく。図7に示すように、修復用基板56は透光性基板38の上に、電子部品50における積層の順序とは逆の順序に、画素電極58、絶縁層60、及びCs線62が積層されて形成される。ここで、修復用基板56の画素電極58及び絶縁層60の材質と膜厚は電子部品50のそれと同一であるのが好ましい。また、修復用基板56のCs線62の材質は電子部品50のそれと同一であるのが好ましいが、Cs線62の膜厚については、電子部品50のCs線44が凹陥部54内に一部残存させられることから、若干薄いのが好ましい。
【0034】
次に、図8に示すように、第2のステージ35に取り付けられた修復用基板56の薄膜を形成した面と、電子部品50の凹陥部54を形成した面とを重ね合わせ、その間に不活性ガスを流しながら、図示しない保持装置により適切な圧力を両者に加え、電子部品50と修復用基板56との隙間を所定の間隔にする。そして、前述と同様に超短パルスレーザー発生装置10から超短パルスレーザー12を照射して、電子部品50に形成された凹陥部54とほぼ同形状の薄膜の積層体(転写膜)64を修復用基板56の透光性基板38上の薄膜層から打ち抜いて、図9に示すように、凹陥部54に嵌め込む。凹陥部54に嵌め込まれた積層体64のCs線62は電子部品50のCs線44と電気的に接続させられるとともに、拡散接合させられる。また、積層体64の絶縁層60や画素電極58は、電子部品50の凹陥部54内にその積層体64が密に嵌め込まれることにより、電子部品50の絶縁層46や画素電極48と電気的に導通状態とすることも可能である。なお、画素電極48,58において、特に電気的な接続を確保する必要があるときや、導通試験で不具合が見出されたときには、同図中に仮想線で示すように、導電材66を公知の手法で被着させる。
【0035】
以上の説明から明らかな通り、本実施形態は修復用基板56に形成された薄膜層から所定形状の積層体64を打ち抜き、その積層体64を電子部品50の欠陥箇所に形成した凹陥部54に嵌め込む、すなわち転写するものである。その転写の過程において、積層体64を溶融させたり、あるいは蒸発させたり、過度に加熱したりするものではない。このため、積層体64の構成が変化したり、その特性特に絶縁層46の特性が変質したりすることはなく、修復された電子部品50は機能が100%乃至それに近い値まで回復することになる。
【0036】
この欠陥修復方法をたとえば液晶ディスプレイの画素電極部の部分的欠損に適用することも可能である。画素電極部はガラス基板の上に絶縁膜とITOとを積層した構成であり、転写した後、ITOの透明性を損なうことなく、画素全域とTFTのソース電極とが電気的に導通させられ、画素電極の部分的欠損による輝点化を回避できる。
【0037】
上述したように、複数の薄膜の層から構成される電子部品50の一部を修復する場合、逆の順序で積層した修復用基板56を作製して、その修復用基板56により電子部品50を修復してもよいが、電子部品50の構成と同じ構成の修復用基板又は他の電子部品を用いて修復することも可能である。この場合、修復に用いる基板又は電子部品は、修復される電子部品と構成が同じであるため、上述の方法によって電子部品を修復することはできない。そこで、次のようにして、電子部品の修復が行われる。
【0038】
まず、修復される電子部品50については、前述同様に欠陥を有する箇所52を含む一定範囲を超短パルスレーザー12により除去し、凹陥部54を形成する(図6参照)。次に、図10に示すように、修復される電子部品50と同じ構成の修復用基板68を用い、この修復用基板68の薄膜を形成した面と透光性基板70とを重ね合わせ、所定の間隔を開けて配設される。次いで、修復用基板68の透光性基板24側に、前述と同様に超短パルスレーザー発生装置10から超短パルスレーザー12を照射して、電子部品50に形成された凹陥部54とほぼ同形状の薄膜の積層体72を修復用基板68から打ち抜いて、透光性基板70の表面に転写し、第2の修復用基板74を形成する。
【0039】
ここで、透光性基板70の表面に積層体72を転写したとき、積層体72が透光性基板70の表面から脱落する恐れがあるときは、透光性基板70の表面に積層体72との密着性・付着性を高めるための処理を施すのが好ましい。また逆に、第2の修復用基板68からの転写膜である積層体72を電子部品50に転写したとき、第2の修復用基板68の透光性基板70表面に積層体72の一部が付着して残存する恐れがある。さらに、透光性基板70と積層体72との付着力が強い場合には、第2の修復用基板68から積層体72を電子部品50に転写するのに大きなエネルギーを必要とする。そこで、透光性基板70の表面にセパレート層を設け、積層体72がそのセパレート層に付着し易く、且つ積層体72を転写するとき、セパレート層から剥がれ易くするのが好ましい。また、セパレート層自体が分離して、積層体72とともに一部が電子部品50に転写されるようにしても好ましい。したがって、セパレート層を構成する材料は、修復を行なう部分に応じて最適の材質が選択される。たとえば、TFTのように、アルミニウムが最上層にくる部分の修復には、セパレート層としてアルミニウムが最適である。また、たとえば蓄積容量部のように、ITOが最上層にくる部分の修復には、セパレート層としてITOが最適である。さらに、絶縁部が最上層にくる部分の修復には、セパレート層として有機材料(絶縁物)が適しているが、分解のし易さから考えてα−シアノアクリレート、シリコン系化合物などが好ましい。
【0040】
得られた第2の修復用基板74を反転させて、図11に示すように、修復用基板74に転写された積層体72と、電子部品50に設けられた凹陥部54とが一致するように重ね合わせる。このとき、電子部品50が取り付けられた第1のステージ20と、第2の修復用基板74が取り付けられた第2のステージ35とを相対的に位置決め調整した後、電子部品50と積層体72との間に不活性ガスが流されると共に図示しない保持装置により適度の圧力が加えられ、電子部品50と積層体72との間に所定の間隔が開けられて保持される。
【0041】
そして、第2の修復用基板74の透光性基板70側に、上述と同様に超短パルスレーザー発生装置10から超短パルスレーザー12を照射して、積層体72を透光性基板70から弾き飛ばして電子部品50に形成された凹陥部54に嵌め込む。凹陥部54に嵌め込まれた積層体72のCs線44は電子部品50のCs線44と電気的に接続させられるとともに、拡散接合させられる。
【0042】
この欠陥修復方法において、たとえば液晶ディスプレイの場合を例にすれば、修復用基板68として、パネルの外周部にある従来使用されていなかった箇所に同一構成のピクセルを形成したものを使用し、それを必要に応じて修復に使用するのが好ましい。また同様に、パネルの外周部にある従来使用されていなかった箇所に修復用のTFTを含むサブ・ピクセルや、信号線とゲート線の交差部などの積層構造部、あるいは信号線やゲート線などの単層構造部を、それぞれ要素の形で多数形成して、それを修復用基板68として使用するのも好ましい。これらの修復用基板と電子部品とは同一の条件で製造されているため、修復用として好ましい。さらに、製造された液晶ディスプレイパネルのうちの一つを修復用基板68として利用することも可能である。この場合特に、不良率の高いパネルを修復用基板68として再利用するのが好ましい。
【0043】
また、転写膜である積層体は、薄膜を単純に積層したものだけでなく、たとえば図12に示すように、ゲート電極76、ドレイン電極77、ソース電極78、ゲート絶縁膜79、チャネル保護膜80などを備えたTFT構造部82であってもよい。複雑な構造をしたTFT構造部82の何れかに欠陥があった場合、そのTFT構造部82を上記方法により除去した後、その凹陥部84内に別途形成されたTFT構造部82を嵌め込むのである。このとき、ゲート電極76は凹陥部84内に一部を残しておくことにより、凹陥部84内に嵌め込まれた転写膜であるTFT構造部82のゲート電極76と面で接触し、電気的導通が確保される。また、ドレイン電極77及びソース電極78については、凹陥部84内に転写膜であるTFT構造部82が密に嵌め込まれることにより、電気的導通がなされるが、より確実なものとするために、接続部に跨がって図示しない導電体を配設しても好ましい。
【0044】
さらに、図示を省略するが、修復される電子部品の箇所は回路パターンの一部や電極部などであってもよい。たとえば、電子部品が液晶ディスプレイである場合、信号線とゲート線との交差部や、絶縁保護膜に覆われた信号線やゲート線の一部、あるいは画素電極部など、複数の薄膜から構成される箇所が本発明には好ましい。
【0045】
次に、上述の各実施形態における、超短パルスレーザーにより電子部品の欠陥部を除去して凹陥部を形成する工程や、あるいは透光性基板上の転写膜を超短パルスレーザーにより電子部品の欠陥部に形成した凹陥部に転写し嵌め込む工程において、少なくとも電子部品を冷却するのが好ましい。冷却は、電子部品を載置する第1のステージを通して間接的に行うようにしてもよいが、電子部品の被加工部に冷却ガスを噴出させて直接的に行うようにしてもよい。
【0046】
電子部品の少なくともレーザーによる被加工部を冷却することにより、凹陥部内やその周辺部あるいは転写膜の酸化や焼付きが防止される。電子部品及びそれが載置される第1のステージは冷却ガスの流出などによって温度調節がされていて、特に電子部品の被加工部は過熱されないように保護されている。一方、修復箇所で転写膜と凹陥部とが拡散接合するように、冷却温度が低すぎない範囲の適切な温度に保持される。なお、電子部品を冷却するとき、その電子部品の表面が結露しないように、乾燥ガスをその表面に流すか、あるいは乾燥した雰囲気で行なうのが好ましい。
【0047】
電子部品の被加工部を酸化から防止するために、不活性ガス又は還元ガスあるいはこれらの混合ガスを被加工部に流しながら、超短パルスレーザーによる加工を施すのが好ましい。これらの不活性ガスなどは冷却ガスであるのが好ましいが、常温又は常温より低い温度のガスであればよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、キセノンガスあるいは二酸化炭素ガスなどを用いることができる。また、還元ガスとしては、水素ガスや一酸化炭素ガスなどを用いることができるが、不活性ガスとの混合ガスで用いるのが好ましい。なお、電子部品の被加工部を酸化から防止するために、真空又は減圧チャンバー内でレーザーによる加工作業を行なうようにすることも可能である。
【0048】
修復される電子部品と修復用基板とは1μmから200μmの範囲の所定の間隔に保持される必要があるが、この間隔の調整を機械的に行なうのは非常に困難である。このため、電子部品と修復用基板との間に不活性ガスなどを流すことにより、ガスの内圧で両者の間隔を広げる一方、電子部品と修復用基板との間に圧力を加えて、両者を接近させるようにし、その圧力バランスによって間隔を調整するのが好ましい。このように構成することにより、電子部品と修復用基板との間隔の設定が容易になるだけでなく、転写が適切且つ確実にでき、しかも転写したとき、電子部品と修復用基板とが接合してしまうことから防止することができる。そしてさらに、電子部品の修復部とその近傍部などが酸化されるのを防止でき、冷却効果により熱影響部の範囲を小さくすることができる。
【0049】
次に、上述の実施形態では、電子部品に生じた欠陥部を表面から削り出す作業を超短パルスレーザーで行なっていたが、被加工面が滑らかに得られるのであれば、超短パルスレーザーに限定されるものではない。たとえば、超短パルスレーザー以外のレーザーを用いてもよく、あるいは電子又はイオンビームによって欠陥部の表面を削り取る作業を行なうことも可能である。さらに、フォトリソグラフィー法により、電子部品の欠陥部をエッチングにより除去することも可能である。
【0050】
以上、本発明に係る電子部品及び電子部品の欠陥修復方法並びに欠陥修復装置の実施形態を図示して種々説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではないのは言うまでもない。
【0051】
たとえば、電子部品の欠陥部を修復するために、その欠陥部を除去するとき、薄膜の最下層まで除去する必要はない。少なくとも欠陥を有する層まで除去すれば足りる。また、欠陥を有する層はどのような層にあってもよく、特に限定されない。
【0052】
また、本発明が適用される電子部品として、特に微細加工が施される液晶ディスプレイが最も好ましいが、それ以外に、イメージセンサーをはじめとする薄膜を積層するとともに微細加工を必要とする半導体装置などの電子部品が好ましい。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0053】
10:超短パルスレーザー発生装置
12:超短パルスレーザー
14:フレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーター
16:光学系
18,50:電子部品
20:第1のステージ
22:修復装置
24:基板
26:配線
30:断線箇所
34,54,84:凹陥部
35:第2のステージ
36,56,68:修復用基板
38,70:透光性基板
40:修復用薄膜
42:修復部材
44,62:Cs線(導電膜)
52:欠陥を有する箇所
64,72:積層体
82:TFT構造部(転写膜)
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の欠陥修復装置に関し、より詳しくは電子部品の欠陥箇所を修復し、欠陥のない部品に蘇らせる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画素数1024×768を有するXGA(Extended video Graphics Array)の液晶デイスプレイ(以下、LCDと言う)には、約236万個のサブ・ピクセルが形成されている。そして、これら個々のサブ・ピクセルはTFT(Thin FilmTransistor) によって作動させられる。このLCDの製造において、サブ・ピクセルの全てを欠陥なく製造するのは非常に困難であり、通常は一定の限度数の範囲内で点欠陥は許容されている。
【0003】
しかし、たとえサブ・ピクセルの中の一つに欠陥があり、そのサブ・ピクセルが誤作動した結果、その画素は異なる色を発したり、あるいは黒を表示するときに明点となったりする場合がある。このような場合、周りの色とは全く異なる色が表示され、あるいは一面黒が表示される中で唯一白く光り、黒の明度を低下させるなど、点欠陥は画面に表示されることになる。このような点欠陥を修正する一つの方法として、たとえば特開平6−11675号に開示されるように、明点欠陥部を黒く塗り潰したり、明点欠陥部上に熱転写シートのインクを残し、暗点欠陥に修正する方法が知られている。あるいは、点欠陥を明点/暗点の目立たない点にする、一時しのぎの修正方法である自己リーク方法で修正されている。これらはいずれも、点欠陥を目立たなくするだけであり、欠陥をなくす解決法ではなかった。このため、「点欠陥なし」というような厳しい顧客の要求に対応する場合は、顕著な歩留りの低下を免れられないものであった。
【0004】
ところで、点欠陥がカラーフィルターにある場合、欠陥を有するフィルターをYAGレーザーにより除去した後、その除去部に着色層を熱転写する方法が特開平9−230128号に開示されている。また、導体部分や絶縁体部分についての欠陥の修復方法が、特開平7−253583号、特開平8−150487号などに開示されている。これらの修復方法は欠陥をなくす有効な方法である。ところが、着色層や導体などを熱転写するのに、その着色層や導体などを半導体レーザーによって一旦溶融させる必要があるため、加熱溶融させても変色・変質しない材料に限定され、たとえば半導体層については適用できなかった。さらに、2層以上から構成される薄膜を同時に修復することは不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、液晶ディスプレイを初めとする半導体装置や、その他の電子部品に欠陥が生じたとき、その欠陥箇所を修復して機能を回復させる修復装置を提供することにある。
【0006】
また、本発明の目的は、単層又は多層の薄膜をその薄膜の物理的特性を維持したまま他の箇所に転写することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究開発を重ねた結果、本発明を想到するに至ったのである。本発明に係る電子部品の要旨とするところは、基板に複数の薄膜が積層され且つ適宜所定のパターンに形成された電子部品において、前記薄膜に生じた欠陥部を含む周囲を覆う1層又は複数層の薄膜の一部が除去されて下層の薄膜が露出させられた凹陥部に、欠陥を修復する転写膜が嵌め込まれていることにある。薄膜を積層し多数の素子を集積化した液晶ディスプレイなどの電子部品には点欠陥が発生し易い。この点欠陥の一つ一つについて、その欠陥部に凹陥部が形成されて、欠陥の原因が排除され、その代わりに欠陥のない薄膜や素子構造をした転写膜がその凹陥部内に嵌め込まれている。したがって、断線した箇所については、その上に嵌め込まれた転写膜によって電気的な導通が確保されることになる。また、転写膜が素子構造を備えている場合、転写膜が嵌め込まれた凹陥部は所定の素子としての機能を奏することになる。
【0008】
また、本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の要旨とするところは、基板に複数の薄膜が積層され且つ適宜所定のパターンに形成された電子部品における該薄膜に生じた欠陥部を修復する方法において、前記欠陥部を含む周囲を覆う薄膜を凹陥状に除去し、下層の薄膜を露出させるステップと、該欠陥を修復する転写膜を前記凹陥部に嵌め込み、露出させられた薄膜の上に被着させるステップとを含むことにある。この欠陥修復方法は、まず欠陥部を凹陥状に除去し、その形成された凹陥部に一層又は複数層からなる転写膜を溶融させたりせずに固体のまま転写する、すなわち嵌め込むものである。したがって、特に複数の薄膜からなる転写膜の場合であっても、凹陥部に転写された転写膜は素子としての機能・構成が損なわれることがなく、電子部品の欠陥部はほぼ完全に修復されることになる。電子部品の点欠陥について、全ての修復を行なうことにより、点欠陥のない電子部品が得られる。
【0009】
さらに、本発明に係る電子部品の欠陥修復装置の要旨とするところは、超短パルスレーザーを適宜調整して発生する超短パルスレーザー発生装置と、前記超短パルスレーザー発生装置から照射された超短パルスレーザーを所定の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーターと、該超短パルスレーザーを集光する光学系と、修復すべき電子部品を載置して位置決めする第1のステージとを含むことにあり、さらに、修復用基板を載置して位置決めする第2のステージと、前記第1のステージに載置された電子部品と第2のステージに載置された修復用基板とを所定の間隔を開けて保持する保持装置とを含むことにある。この欠陥修復装置は特に、電子部品を載置する第1のステージと修復用基板を載置する第2のステージを備えており、微細加工された電子部品と修復用基板との位置決めが容易にされている。そして、位置決めされた第1のステージと第2のステージとを保持装置により適切な圧力で加圧して、電子部品と修復用基板とを所定の間隔を開けて保持するようにしている。このため、転写膜が位置ずれすることなく、凹陥部に転写でき、また、転写膜にダメージを与えることなく、凹陥部に転写できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子部品は、それを構成する素子の一部に転写膜が嵌め込まれた痕跡を有しているが、その素子においても、他の箇所における素子の機能と同等乃至ほぼ同等の機能を発揮する。したがって、得られた電子部品としては、全く点欠陥もない完璧な製品を提供することができる。また、複雑な工程を繰り返してコストを要する製品である反面、不良率の高くなる製品において、微細な欠陥に伴う歩留りの低下を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係る電子部品の欠陥修復方法及び装置は、電子部品の発生した点欠陥の箇所のみを除去し、それによって形成された凹陥部の中に薄膜からなる転写膜を物理的特性を変化させることなく転写することとしている。この転写膜の転写は、超短パルスレーザー特にフェムト秒レーザーを用いて、透光性基板に積層された薄膜から任意に設定した形状に切断して、得られた転写膜を溶融させることなく他の箇所に転写するものである。超短パルスレーザーの切断面は非常に滑らかであり、電子部品に形成された凹陥部に転写された転写膜は密に嵌め込まれる。その結果、修復された電子部品は機能的に充分な形で修復される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の1実施形態における1工程を示す断面模式図である。
【図2】図1に示す欠陥修復方法に用いられる電子部品の要部拡大模式図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図である。
【図3】図1に示す実施形態の欠陥修復方法における次工程での電子部品の要部拡大模式図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図である。
【図4】図1に示す実施形態の欠陥修復方法における更に次工程を示す断面模式図である。
【図5】図1に示す実施形態の欠陥修復方法における更に次工程での電子部品の要部拡大模式図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図である。
【図6】本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の他の実施形態における1工程を示す断面模式図である。
【図7】図6に示す電子部品の欠陥修復方法に用いられる修復用基板の1例を示す要部拡大模式図である。
【図8】図6に示す実施形態の欠陥修復方法における更に次工程を示す断面模式図である。
【図9】図6に示す実施形態の欠陥修復方法における更に次工程での電子部品の要部拡大模式図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図である。
【図10】本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の更に他の実施形態における1工程を示す断面模式図である。
【図11】図10に示す実施形態の欠陥修復方法における他の工程を示す断面模式図である。
【図12】本発明に係る電子部品の欠陥修復方法の更に他の実施形態における1工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る電子部品及び電子部品の欠陥修復方法並びに欠陥修復装置の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0014】
まず、本発明に係る電子部品の欠陥修復方法に用いられる修復装置は、図1に示すように、超短パルスレーザーを発生させる装置10と、その装置10から照射された超短パルスレーザー12を任意の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーター14と、レーザーの焦点を合わせるとともにその強さを高めるための光学系16と、修正すべき電子部品18を位置決めするために動かすことができる第1のステージ20を少なくとも備えて構成されている。
【0015】
超短パルスレーザー12としては、パルス幅(出力波形長)が数フェムト秒(fs=10-15 s )から数1000フェムト秒 (fs) であるフェムト秒レーザーが特に用いられ、その他、一部のエキシマレーザーなども用いることができる。レーザーのパルス幅が数ps( 10-12 s )以下、特に1ps以下の領域になると、パルス幅が小さくなるほどパルスの終結までに熱拡散がほとんど認められなくなり、さらに、表面又は固体内部での熱勾配が急峻になる。このため、超短パルスレーザー12によって加工されたアブレーション痕、特にその周縁部分に熱変成がほとんど見られず、しかも被加工面が滑らかになる。したがって、超短パルスレーザー12は半導体層や透明導電膜などの熱によって変質してしまう薄膜を含む欠陥部分の修復には好都合である。
【0016】
また、本発明に用いられる超短パルスレーザー12の波長は、超短パルスレーザー12が透過させられる透光性基板がガラス基板である場合、380nm以上であるのが好ましい。超短パルスレーザー12の波長が380nm以上であるのが好ましいのは、ガラス基板側からレーザー12を照射したとき、レーザー12がガラス基板に吸収されないためである。したがって、後述する修復用基板などの透光性基板が石英ガラス、溶融石英ガラス、あるいは岩塩などによって形成されている場合、その透光性基板を超短パルスレーザー12が透過し得る波長が選定される。一方、この超短パルスレーザー12の波長は、透光性基板上に形成された被加工薄膜に吸収されるものが選定され、薄膜の種類に対応して選択されることになる。
【0017】
このような超短パルスレーザー12を発生させる装置10の一例を挙げれば、Ti:サファイア、Cr:LiSAFなどの結晶を利用したレーザーやXeClレーザーが好ましく用いられる。また、この装置10は照射する超短パルスレーザー12のパルス数を適宜設定し得るものが用いられる。
【0018】
超短パルスレーザー発生装置10から照射される超短パルスレーザー12は2つの目的に使用される。すなわち、超短パルスレーザー12を薄膜側に照射し、その薄膜の照射面を徐々に除去する方法と、超短パルスレーザー12を透光性基板側から照射し、その超短パルスレーザー12が吸収される薄膜の箇所(面)からその上部にある薄膜の層を打ち抜く方法である。それぞれの加工条件の一例を示すと、超短パルスレーザー発生装置10が薄膜の照射面を徐々に除去する方法のために使用される場合、除去されるのが金属のとき、金属の種類によって異なるが、発生装置10のパワ−密度は0.1〜2.0Jule/cm2 に設定され、また、ITOのとき、0.4Jule/cm2 前後に設定される。他方、超短パルスレーザー発生装置10が薄膜の層を打ち抜く方法のために使用される場合、打ち抜かれるのが金属のとき、金属の種類によって異なるが、発生装置10のパワ−密度は0.1〜4.0Jule/cm2 に設定され、また、ITOのとき、0.8Jule/cm2前後に設定される。
【0019】
次に、超短パルスレーザー発生装置10から照射された超短パルスレーザー12を任意の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーター14は、たとえば液晶シャッターなどの装置によって構成される。ジェネレーター14は、それを通過したレーザー12の平面形状を、電子部品18の修復すべき箇所を含む適切な形状に微調整して成形し得る装置であれば、構造などは特に限定されない。
【0020】
また、光学系16や第1のステージ20は公知の装置を用いることができ、構造などは特に限定されない。光学系16は超短パルスレーザー発生装置10から照射された超短パルスレーザー12を第1のステージ20上の電子部品18内の1素子又は1部分に正確に焦点を合わせることができるように構成されていて、レンズなどによる透過式だけでなく、反射式のものでもよい。この光学系16は、ハーフミラーなどを含んでいてもよく、位置決めと微調整用の他の発光源と光学系を含むものであってもよい。第1のステージ20は少なくとも水平二軸方向に動かすことができればよく、特にミクロンオーダーで微調整することができる装置が用いられる。
【0021】
以上の構成を含む修復装置22は次のようにして使用される。まず、修復装置22の第1のステージ20の上に、欠陥箇所を含む電子部品18が配設される。本発明の修復方法に用いられる電子部品18は、基板24の上に薄膜を被着させて所定のパターンの配線、電極、半導体層、あるいは保護層などに形成し、一定の機能を備えた部品であれば、特に限定されない。より具体的に電子部品18を例示すれば、液晶ディスプレイ装置やイメージセンサー、LSIなどを挙げることができる。本実施形態では、基板24の上に配線26が形成され、その上を保護膜28が覆っている電子部品18の一部、たとえば液晶ディスプレイにおける信号線やゲート線を例にして説明する。
【0022】
第1のステージ20の上に配設された電子部品18について、図2に示すように、その欠陥である断線した箇所30の位置決めをするとともに、フレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーター14を作動させて、超短パルスレーザー発生装置10から照射される超短パルスレーザー12の範囲を設定することにより、断線箇所30を含む保護膜28を除去すべき範囲32の設定を行う。この位置決めと範囲32の設定は、超短パルスレーザー発生装置10の出力を低下させて行うか、あるいはそれ以外の図示しない調整用レーザー発生装置を配設しておき、そのレーザーにより行う。
【0023】
その後、超短パルスレーザー発生装置10からの超短パルスレーザー12により、電子部品18の断線箇所30の保護膜28を徐々に凹状に除去する。このときの超短パルスレーザー発生装置10の条件は、たとえばITOの場合、パワー密度が0.4Jule/cm2 前後に設定されるのが好ましい。そして、図3に示すように、凹陥部34を形成し、断線した配線26を少なくとも露出させる。このとき後述するように、断線した箇所の配線26の上に修復用の薄膜を被着させるため、配線26の表面を若干除去して、換言すれば配線26の少なくとも一部を残して残りを除去して、電気的接続を確保しておくのが好ましい。
【0024】
次いで、図4に示すように、電子部品18が取り付けられている第1のステージ20の上に配設されている第2のステージ35に、修復用基板36が配置されて固定される。そして、図示しない保持装置によって両ステージ20,35間に適度の圧力を加え、電子部品18と修復用基板36とが所定の間隔を開けて保持される。本実施形態で使用される第2のステージ35は修復用基板36を固定することができれば足りる。本実施形態においては、第2のステージ35は特に位置決め機能を必要とせず、第2のステージ35に取り付けられた修復用基板36を第1のステージ20上の電子部品18に対して平行に配設することができれば足りる。
【0025】
電子部品18と修復用基板36とは所定の間隔を開けて配設されるが、後述するように、修復用基板36から打ち抜かれた転写膜が弾き飛ばされて電子部品18の凹陥部34に嵌め込まれる。このとき、両者18と36の間隔が狭くて、たとえば隙間が全くない場合には、転写膜を転写したときに電子部品18と修復用基板36とが融着してしまい、分離できなくなる。一方、電子部品18と修復用基板36との間隔が開け過ぎの場合は、転写膜が修復用基板36から電子部品18の凹陥部34に飛び移るときに分解して飛散してしまう。そこで、電子部品18と修復用基板36との間隔は、実験に基づいて最適な値が求められるが、一般に1μm〜200μmの範囲が好ましく、特に50μm〜80μmの範囲が好ましい。
【0026】
修復用基板36は同図4及び図5に示すように、ガラス基板などの透光性基板38の上に修復用薄膜40が被着させられて構成されている。修復用薄膜40は修復すべき配線26と同じ材質であるのが好ましく、たとえば銅やアルミニウムなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。この修復用薄膜40は、透光性基板38の上に金属箔を接着したり、あるいは金属を蒸着させたりして、公知の手法で形成される。透光性基板38は超短パルスレーザー12を透過させるために透明であればよいが、特にガラス基板が好ましい。
【0027】
修復用基板36の裏面、すなわち修復用薄膜40の形成されていない面から超短パルスレーザー12を照射すると、超短パルスレーザー12は透光性基板38を透過し、その表面に形成された修復用薄膜40を超短パルスレーザー12が照射された面形状に打ち抜いて透光性基板38から弾き飛ばして転写する。そこで、電子部品18に形成された凹陥部34と対向する位置で、その形状と同形状に修復用基板40上に超短パルスレーザー12を結像し、所定の強さの超短パルスレーザー12を照射する。このときの超短パルスレーザー発生装置10の条件は前述したように、打ち抜かれるのが金属のときは、パワ−密度が0.1〜4.0Jule/cm2 に設定され、また、ITOのときは、0.8Jule/cm2 前後に設定されるのが好ましい。
【0028】
その結果、同図5(a)に示すように、修復用基板36の修復用薄膜40から打ち抜かれた修復部材(転写膜)42は対向して配設された電子部品18の凹陥部34内に嵌め込まれ、被着されて結合される。修復部材42は高エネルギーをもって凹陥部34内の配線26と密着させられるため、修復部材42と配線26とは拡散接合させられ、両者は電気的に接続されることになる。なお、同図5(a)は作動を説明するために、修復用基板38と電子部品18との隙間を大きく開けて描いている。
【0029】
このように、断線した配線26の上に被着させられた修復部材42は配線26と電気的に接続させられるため、配線26は機能を回復することになる。また、形成された凹陥部34の内面(切断面)や、その凹陥部34に転写された修復部材42の外表面(切断面)は、いずれも非常に滑らかであるため、両者の接合は機械的に切削して嵌め込んだように実現される。なお、凹陥部34内に嵌め込まれた修復部材42は上面が外部に露出させられているため、必要に応じてその上に保護膜などが被着させられるのが好ましい。
【0030】
以上、本発明に係る電子部品の欠陥修復方法とその方法により修復された電子部品の1実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
たとえば、上述の実施形態では修復用基板における修復部材は一層であったが、複数の層で構成することも可能である。一例として、図6に示すように、基板24の上に蓄積容量部Csを構成するCs線44と絶縁層46と画素電極48が積層された電子部品50において、基板24と接する側のCs線44に欠陥があった場合、その三層を欠陥のないものと置き換えることができる。
【0032】
すなわち、同図6に示すように、前述と同様に第1のステ−ジ20上に電子部品50を載置し、超短パルスレーザー発生装置10から照射される超短パルスレーザー12によって除去すべき欠陥を有する箇所52の位置決めとその範囲を設定し、超短パルスレーザー12を結像させる。その後、超短パルスレーザー12を照射して、電子部品50の欠陥部の上を覆っている画素電極48、絶縁層46、及びCs線44の一部を除去し、凹陥部54を形成する。
【0033】
一方、電子部品を修復するための修復用基板を予め作製しておく。図7に示すように、修復用基板56は透光性基板38の上に、電子部品50における積層の順序とは逆の順序に、画素電極58、絶縁層60、及びCs線62が積層されて形成される。ここで、修復用基板56の画素電極58及び絶縁層60の材質と膜厚は電子部品50のそれと同一であるのが好ましい。また、修復用基板56のCs線62の材質は電子部品50のそれと同一であるのが好ましいが、Cs線62の膜厚については、電子部品50のCs線44が凹陥部54内に一部残存させられることから、若干薄いのが好ましい。
【0034】
次に、図8に示すように、第2のステージ35に取り付けられた修復用基板56の薄膜を形成した面と、電子部品50の凹陥部54を形成した面とを重ね合わせ、その間に不活性ガスを流しながら、図示しない保持装置により適切な圧力を両者に加え、電子部品50と修復用基板56との隙間を所定の間隔にする。そして、前述と同様に超短パルスレーザー発生装置10から超短パルスレーザー12を照射して、電子部品50に形成された凹陥部54とほぼ同形状の薄膜の積層体(転写膜)64を修復用基板56の透光性基板38上の薄膜層から打ち抜いて、図9に示すように、凹陥部54に嵌め込む。凹陥部54に嵌め込まれた積層体64のCs線62は電子部品50のCs線44と電気的に接続させられるとともに、拡散接合させられる。また、積層体64の絶縁層60や画素電極58は、電子部品50の凹陥部54内にその積層体64が密に嵌め込まれることにより、電子部品50の絶縁層46や画素電極48と電気的に導通状態とすることも可能である。なお、画素電極48,58において、特に電気的な接続を確保する必要があるときや、導通試験で不具合が見出されたときには、同図中に仮想線で示すように、導電材66を公知の手法で被着させる。
【0035】
以上の説明から明らかな通り、本実施形態は修復用基板56に形成された薄膜層から所定形状の積層体64を打ち抜き、その積層体64を電子部品50の欠陥箇所に形成した凹陥部54に嵌め込む、すなわち転写するものである。その転写の過程において、積層体64を溶融させたり、あるいは蒸発させたり、過度に加熱したりするものではない。このため、積層体64の構成が変化したり、その特性特に絶縁層46の特性が変質したりすることはなく、修復された電子部品50は機能が100%乃至それに近い値まで回復することになる。
【0036】
この欠陥修復方法をたとえば液晶ディスプレイの画素電極部の部分的欠損に適用することも可能である。画素電極部はガラス基板の上に絶縁膜とITOとを積層した構成であり、転写した後、ITOの透明性を損なうことなく、画素全域とTFTのソース電極とが電気的に導通させられ、画素電極の部分的欠損による輝点化を回避できる。
【0037】
上述したように、複数の薄膜の層から構成される電子部品50の一部を修復する場合、逆の順序で積層した修復用基板56を作製して、その修復用基板56により電子部品50を修復してもよいが、電子部品50の構成と同じ構成の修復用基板又は他の電子部品を用いて修復することも可能である。この場合、修復に用いる基板又は電子部品は、修復される電子部品と構成が同じであるため、上述の方法によって電子部品を修復することはできない。そこで、次のようにして、電子部品の修復が行われる。
【0038】
まず、修復される電子部品50については、前述同様に欠陥を有する箇所52を含む一定範囲を超短パルスレーザー12により除去し、凹陥部54を形成する(図6参照)。次に、図10に示すように、修復される電子部品50と同じ構成の修復用基板68を用い、この修復用基板68の薄膜を形成した面と透光性基板70とを重ね合わせ、所定の間隔を開けて配設される。次いで、修復用基板68の透光性基板24側に、前述と同様に超短パルスレーザー発生装置10から超短パルスレーザー12を照射して、電子部品50に形成された凹陥部54とほぼ同形状の薄膜の積層体72を修復用基板68から打ち抜いて、透光性基板70の表面に転写し、第2の修復用基板74を形成する。
【0039】
ここで、透光性基板70の表面に積層体72を転写したとき、積層体72が透光性基板70の表面から脱落する恐れがあるときは、透光性基板70の表面に積層体72との密着性・付着性を高めるための処理を施すのが好ましい。また逆に、第2の修復用基板68からの転写膜である積層体72を電子部品50に転写したとき、第2の修復用基板68の透光性基板70表面に積層体72の一部が付着して残存する恐れがある。さらに、透光性基板70と積層体72との付着力が強い場合には、第2の修復用基板68から積層体72を電子部品50に転写するのに大きなエネルギーを必要とする。そこで、透光性基板70の表面にセパレート層を設け、積層体72がそのセパレート層に付着し易く、且つ積層体72を転写するとき、セパレート層から剥がれ易くするのが好ましい。また、セパレート層自体が分離して、積層体72とともに一部が電子部品50に転写されるようにしても好ましい。したがって、セパレート層を構成する材料は、修復を行なう部分に応じて最適の材質が選択される。たとえば、TFTのように、アルミニウムが最上層にくる部分の修復には、セパレート層としてアルミニウムが最適である。また、たとえば蓄積容量部のように、ITOが最上層にくる部分の修復には、セパレート層としてITOが最適である。さらに、絶縁部が最上層にくる部分の修復には、セパレート層として有機材料(絶縁物)が適しているが、分解のし易さから考えてα−シアノアクリレート、シリコン系化合物などが好ましい。
【0040】
得られた第2の修復用基板74を反転させて、図11に示すように、修復用基板74に転写された積層体72と、電子部品50に設けられた凹陥部54とが一致するように重ね合わせる。このとき、電子部品50が取り付けられた第1のステージ20と、第2の修復用基板74が取り付けられた第2のステージ35とを相対的に位置決め調整した後、電子部品50と積層体72との間に不活性ガスが流されると共に図示しない保持装置により適度の圧力が加えられ、電子部品50と積層体72との間に所定の間隔が開けられて保持される。
【0041】
そして、第2の修復用基板74の透光性基板70側に、上述と同様に超短パルスレーザー発生装置10から超短パルスレーザー12を照射して、積層体72を透光性基板70から弾き飛ばして電子部品50に形成された凹陥部54に嵌め込む。凹陥部54に嵌め込まれた積層体72のCs線44は電子部品50のCs線44と電気的に接続させられるとともに、拡散接合させられる。
【0042】
この欠陥修復方法において、たとえば液晶ディスプレイの場合を例にすれば、修復用基板68として、パネルの外周部にある従来使用されていなかった箇所に同一構成のピクセルを形成したものを使用し、それを必要に応じて修復に使用するのが好ましい。また同様に、パネルの外周部にある従来使用されていなかった箇所に修復用のTFTを含むサブ・ピクセルや、信号線とゲート線の交差部などの積層構造部、あるいは信号線やゲート線などの単層構造部を、それぞれ要素の形で多数形成して、それを修復用基板68として使用するのも好ましい。これらの修復用基板と電子部品とは同一の条件で製造されているため、修復用として好ましい。さらに、製造された液晶ディスプレイパネルのうちの一つを修復用基板68として利用することも可能である。この場合特に、不良率の高いパネルを修復用基板68として再利用するのが好ましい。
【0043】
また、転写膜である積層体は、薄膜を単純に積層したものだけでなく、たとえば図12に示すように、ゲート電極76、ドレイン電極77、ソース電極78、ゲート絶縁膜79、チャネル保護膜80などを備えたTFT構造部82であってもよい。複雑な構造をしたTFT構造部82の何れかに欠陥があった場合、そのTFT構造部82を上記方法により除去した後、その凹陥部84内に別途形成されたTFT構造部82を嵌め込むのである。このとき、ゲート電極76は凹陥部84内に一部を残しておくことにより、凹陥部84内に嵌め込まれた転写膜であるTFT構造部82のゲート電極76と面で接触し、電気的導通が確保される。また、ドレイン電極77及びソース電極78については、凹陥部84内に転写膜であるTFT構造部82が密に嵌め込まれることにより、電気的導通がなされるが、より確実なものとするために、接続部に跨がって図示しない導電体を配設しても好ましい。
【0044】
さらに、図示を省略するが、修復される電子部品の箇所は回路パターンの一部や電極部などであってもよい。たとえば、電子部品が液晶ディスプレイである場合、信号線とゲート線との交差部や、絶縁保護膜に覆われた信号線やゲート線の一部、あるいは画素電極部など、複数の薄膜から構成される箇所が本発明には好ましい。
【0045】
次に、上述の各実施形態における、超短パルスレーザーにより電子部品の欠陥部を除去して凹陥部を形成する工程や、あるいは透光性基板上の転写膜を超短パルスレーザーにより電子部品の欠陥部に形成した凹陥部に転写し嵌め込む工程において、少なくとも電子部品を冷却するのが好ましい。冷却は、電子部品を載置する第1のステージを通して間接的に行うようにしてもよいが、電子部品の被加工部に冷却ガスを噴出させて直接的に行うようにしてもよい。
【0046】
電子部品の少なくともレーザーによる被加工部を冷却することにより、凹陥部内やその周辺部あるいは転写膜の酸化や焼付きが防止される。電子部品及びそれが載置される第1のステージは冷却ガスの流出などによって温度調節がされていて、特に電子部品の被加工部は過熱されないように保護されている。一方、修復箇所で転写膜と凹陥部とが拡散接合するように、冷却温度が低すぎない範囲の適切な温度に保持される。なお、電子部品を冷却するとき、その電子部品の表面が結露しないように、乾燥ガスをその表面に流すか、あるいは乾燥した雰囲気で行なうのが好ましい。
【0047】
電子部品の被加工部を酸化から防止するために、不活性ガス又は還元ガスあるいはこれらの混合ガスを被加工部に流しながら、超短パルスレーザーによる加工を施すのが好ましい。これらの不活性ガスなどは冷却ガスであるのが好ましいが、常温又は常温より低い温度のガスであればよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、キセノンガスあるいは二酸化炭素ガスなどを用いることができる。また、還元ガスとしては、水素ガスや一酸化炭素ガスなどを用いることができるが、不活性ガスとの混合ガスで用いるのが好ましい。なお、電子部品の被加工部を酸化から防止するために、真空又は減圧チャンバー内でレーザーによる加工作業を行なうようにすることも可能である。
【0048】
修復される電子部品と修復用基板とは1μmから200μmの範囲の所定の間隔に保持される必要があるが、この間隔の調整を機械的に行なうのは非常に困難である。このため、電子部品と修復用基板との間に不活性ガスなどを流すことにより、ガスの内圧で両者の間隔を広げる一方、電子部品と修復用基板との間に圧力を加えて、両者を接近させるようにし、その圧力バランスによって間隔を調整するのが好ましい。このように構成することにより、電子部品と修復用基板との間隔の設定が容易になるだけでなく、転写が適切且つ確実にでき、しかも転写したとき、電子部品と修復用基板とが接合してしまうことから防止することができる。そしてさらに、電子部品の修復部とその近傍部などが酸化されるのを防止でき、冷却効果により熱影響部の範囲を小さくすることができる。
【0049】
次に、上述の実施形態では、電子部品に生じた欠陥部を表面から削り出す作業を超短パルスレーザーで行なっていたが、被加工面が滑らかに得られるのであれば、超短パルスレーザーに限定されるものではない。たとえば、超短パルスレーザー以外のレーザーを用いてもよく、あるいは電子又はイオンビームによって欠陥部の表面を削り取る作業を行なうことも可能である。さらに、フォトリソグラフィー法により、電子部品の欠陥部をエッチングにより除去することも可能である。
【0050】
以上、本発明に係る電子部品及び電子部品の欠陥修復方法並びに欠陥修復装置の実施形態を図示して種々説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではないのは言うまでもない。
【0051】
たとえば、電子部品の欠陥部を修復するために、その欠陥部を除去するとき、薄膜の最下層まで除去する必要はない。少なくとも欠陥を有する層まで除去すれば足りる。また、欠陥を有する層はどのような層にあってもよく、特に限定されない。
【0052】
また、本発明が適用される電子部品として、特に微細加工が施される液晶ディスプレイが最も好ましいが、それ以外に、イメージセンサーをはじめとする薄膜を積層するとともに微細加工を必要とする半導体装置などの電子部品が好ましい。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0053】
10:超短パルスレーザー発生装置
12:超短パルスレーザー
14:フレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーター
16:光学系
18,50:電子部品
20:第1のステージ
22:修復装置
24:基板
26:配線
30:断線箇所
34,54,84:凹陥部
35:第2のステージ
36,56,68:修復用基板
38,70:透光性基板
40:修復用薄膜
42:修復部材
44,62:Cs線(導電膜)
52:欠陥を有する箇所
64,72:積層体
82:TFT構造部(転写膜)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超短パルスレーザーを適宜調整して発生する超短パルスレーザー発生装置と、前記超短パルスレーザー発生装置から照射された超短パルスレーザーを所定の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーターと、該超短パルスレーザーを集光する光学系と、修復すべき電子部品を載置して位置決めする第1のステージとを含む電子部品の欠陥修復装置。
【請求項2】
修復用基板を載置して位置決めする第2のステージと、前記第1のステージに載置された電子部品と、第2のステージに載置された修復用基板とを所定の間隔を開けて保持する保持装置とを含む請求項1に記載する電子部品の欠陥修復装置。
【請求項3】
少なくとも前記第1のステージに載置された電子部品を冷却する冷却装置を含む請求項1又は請求項2に記載する電子部品の欠陥修復装置。
【請求項4】
前記第1のステージに載置された電子部品と第2のステージに載置された修復用基板との隙間に不活性ガス又は還元性ガスを吹き込む装置を含み、前記保持装置により第1のステージと第2のステージとを相対的に接近する方向に加圧し、圧力の均衡によって所定の間隔に保つ請求項2に記載する電子部品の欠陥修復装置。
【請求項1】
超短パルスレーザーを適宜調整して発生する超短パルスレーザー発生装置と、前記超短パルスレーザー発生装置から照射された超短パルスレーザーを所定の形状に成形するフレキシブル・マスク・パターン・ジェネレーターと、該超短パルスレーザーを集光する光学系と、修復すべき電子部品を載置して位置決めする第1のステージとを含む電子部品の欠陥修復装置。
【請求項2】
修復用基板を載置して位置決めする第2のステージと、前記第1のステージに載置された電子部品と、第2のステージに載置された修復用基板とを所定の間隔を開けて保持する保持装置とを含む請求項1に記載する電子部品の欠陥修復装置。
【請求項3】
少なくとも前記第1のステージに載置された電子部品を冷却する冷却装置を含む請求項1又は請求項2に記載する電子部品の欠陥修復装置。
【請求項4】
前記第1のステージに載置された電子部品と第2のステージに載置された修復用基板との隙間に不活性ガス又は還元性ガスを吹き込む装置を含み、前記保持装置により第1のステージと第2のステージとを相対的に接近する方向に加圧し、圧力の均衡によって所定の間隔に保つ請求項2に記載する電子部品の欠陥修復装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−40765(P2011−40765A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205336(P2010−205336)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【分割の表示】特願平11−185241の分割
【原出願日】平成11年6月30日(1999.6.30)
【出願人】(504011210)エーユー オプトロニクス コーポレイション (36)
【氏名又は名称原語表記】AU Optronics Corp.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【分割の表示】特願平11−185241の分割
【原出願日】平成11年6月30日(1999.6.30)
【出願人】(504011210)エーユー オプトロニクス コーポレイション (36)
【氏名又は名称原語表記】AU Optronics Corp.
【Fターム(参考)】
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