説明

電子部品の製造方法

【課題】 基板上に、高い精度で、形成不良なく電極を形成し得る電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の電子部品の製造方法は、平板状の基板1を準備する基板準備工程と、基板1の主面上にレジストパターン2aを形成するレジストパターン形成工程と、基板1の主面上のレジストパターン2aが形成されていない部分にIDT電極4を薄膜技術により形成する電極形成工程と、レジストパターン2aを除去するレジストパターン除去工程とを含み、電極形成工程は、基板1を、電極が形成される側の主面が凹むように反らせておこなうようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関し、さらに詳しくは、基板上に、高い精度で、形成不良なく電極を形成し得る電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弾性表面波素子、弾性境界波素子などの圧電部品や、半導体部品などの電子部品の製造工程においては、圧電ウエハ、半導体ウエハなどの基板上に、蒸着、スパッタリングなどの薄膜技術を用いて、精度高く、電極を形成することがおこなわれている。
【0003】
たとえば、特許文献1(WO2008/044411)には、電子部品の製造方法の一例として、蒸着により基板上に電極を形成した、弾性境界波素子の製造方法が開示されている。
【0004】
図6(A)〜(E)に、特許文献1に開示された、弾性境界波素子の製造方法を示す。
【0005】
この従来の方法においては、まず、図6(A)に示すように、基板(たとえばLiNbO3からなる圧電基板)101の上側の主面の全面に、フォトレジスト102を形成する。
【0006】
次に、図6(B)に示すように、フォトレジスト102を感光し、現像して、所望の形状からなるレジストパターン102aを形成する。
【0007】
次に、図6(C)に示すように、反応性イオンエッチングをおこない、基板101のレジストパターン102aが形成されていない部分に、溝101aを形成する。この結果、複数本の溝が形成される。
【0008】
次に、図6(D)に示すように、たとえばAlを蒸着源にして、真空装置内での蒸着により、基板101に形成された溝101a内に電極104を形成する。このとき、レジストパターン102a上にも金属膜105が形成される。
【0009】
次に、図6(E)に示すように、基板101をアセトンなどの剥離溶液に浸漬し、レジストパターン102a、およびレジストパターン102a上に形成された金属膜105を除去する。この結果、基板101の上側の主面には、埋め込まれた状態で電極104が形成される。
【0010】
この弾性境界波素子は、この後、基板101上に誘電体層(図示せず)を形成するなどして完成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2008/044411
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した従来の電子部品の製造方法は、高い精度で電極を形成することができるため、精密な構造からなる電子部品の製造に適したものである。しかしながら、蒸着などの薄膜技術により電極を形成する際に、蒸着源から基板への蒸着金属の垂直入射性が悪いと、電極の形成不良をまねいてしまうという問題があった。すなわち、電極の形成される基板が大きい場合、複数本の溝が形成されているため、蒸着源から基板の直下部分へは、蒸着金属が垂直に入射するが、蒸着源から基板の外周近傍部分へは、蒸着金属が斜めに入射してしまう。このため、基板の外周近傍部分において、電極が圧電基板に乗り上げたような、電極の形成不良が発生してしまうことがあった。また、電極がウエハ内で対称に形成されないため、得られる電子部品の製造ばらつきが大きくなる、という問題もあった。
【0013】
なお、蒸着源から基板への蒸着金属の垂直入射性を高めるためには、蒸着源から基板までの距離を大きくすれば良いが、この場合には、蒸着をおこなう真空装置が大型化してしまうという別の問題が発生する。
【0014】
図7(A)は、基板上に蒸着により電極を形成した際に、基板の外周近傍部分において、電極の形成不良が発生した状態を示す。すなわち、基板101の上側の主面には、所望の形状からなるレジストパターン102aが形成され、またレジストパターン102aが形成されていない部分に溝101aが形成されており、蒸着により溝101aの内部に電極104が形成されているが、基板101の外周近傍部分においては、矢印Xで示す蒸着金属の入射角度が、基板101の主面に対して垂直ではなく、斜めになってしまう。このため、本来、溝101a内のみに形成されるべき電極104が、溝101aからはみ出し、図中、溝101aの左側壁部から基板101の上側の主面にかけて乗り上げ、電極乗り上げ部104aが形成されることとなる。
【0015】
そして、図7(B)に示すように、電極104の電極乗り上げ部104aは、基板101から、レジストパターン102a、およびレジストパターン102a上に形成された金属膜105を除去した後も残存する。
【0016】
このように、電子部品(弾性境界波素子)において、電極104が不良形成され、電極乗り上げ部104aが形成されると、電子部品の電気的特性が劣化してしまうという問題があった。あるいは、その電子部品が不良品になってしまい、廃棄しなければならないという問題があった。
【0017】
なお、特許文献1に開示された、弾性境界波素子の製造方法では、溝101a内に電極104を形成しているが、この場合に限らず、基板の平坦な主面に電極を形成する場合においても、基板の外周近傍部分において、蒸着金属が垂直に入射せず、電極が不良形成されるという問題があった。すなわち、電極が、設計上形成されるべき位置よりも弾性波伝搬方向にずれて形成されてしまい、電気的特性が劣化してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上述した従来の電子部品の製造方法の有する課題を解決するためになされたものであり、その手段として本発明の電子部品の製造方法は、1対の主面を有する平板状の基板を準備する基板準備工程と、基板の一方の主面上に、所望の形状からなるレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、基板の一方の主面上の、レジストパターンが形成されていない部分に、電極を薄膜技術により形成する電極形成工程と、基板の一方の主面上から、レジストパターンを除去するレジストパターン除去工程とを含み、電極形成工程は、基板を、電極が形成される側の主面が凹むように反らせておこなう工程を備える。
【0019】
電極形成工程における薄膜技術としては、たとえば、蒸着またはスパッタリングなどを用いることができる。
【0020】
基板には、たとえば、圧電基板または半導体基板などを用いることができる。
【0021】
また、電極形成工程に先立ち、基板の一方の主面上のレジストパターンが形成されていない部分に複数本の溝を形成し、電極形成工程においては、その溝の内部に前記電極を形成するようにしても良い。
【0022】
また、基板を反らせる方法としては、たとえば、電極形成工程に先立ち、基板の電極が形成されない側の主面上に応力の大きな膜を形成することにより、基板を、電極が形成される側の主面が凹むように反らせることができる。この場合において、応力の大きな膜に紫外線を吸収する特性のものを用い、レジストパターン形成工程に先立ち、基板の電極が形成されない側の主面上に形成するようにすれば、その応力の大きな膜を、レジストパターン形成工程における紫外線反射防止膜としても利用することができる。
【0023】
また、電極形成工程において基板を反らせる別の方法としては、たとえば、基板を、保持面が曲面状に凹んだ基板保持冶具で吸着することにより、電極が形成される側の主面が凹むように反らせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電子部品の製造方法によれば、基板上に、精度の高い電極を、形成不良を発生させることなく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(A)〜(G)は、本発明の第1実施形態にかかる電子部品の製造方法において適用される各工程を示す断面図である。
【図2】図1(A)〜(G)において示した、本発明の第1実施形態にかかる電子部品の製造方法における、電極形成工程を示す説明図である。
【図3】図3(A)〜(G)は、本発明の第2実施形態にかかる電子部品の製造方法において適用される各工程を示す断面図である。
【図4】図4(A)〜(F)は、本発明の第3実施形態にかかる電子部品の製造方法において適用される各工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態にかかる電子部品の製造方法における、電極形成工程を示す説明図である。
【図6】図6(A)〜(E)は、従来の電子部品の製造方法を示す断面図である。
【図7】図7(A)、(B)は、それぞれ、図6(A)〜(E)に示した従来の電子部品の製造方法において、電極の形成不良が発生した場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1(A)〜(F)は、本発明の第1実施形態にかかる、電子部品の製造方法において適用される各工程を示す。なお、以下の説明では、電子部品として、弾性境界波素子の製造方法を例に説明する。
【0028】
本実施形態にかかる電子部品の製造方法においては、図1(A)に示すように、まず1対の主面を有する平板状の基板1を準備し、基板1の一方の主面(図面における上側の主面)上に、全面にわたってフォトレジスト2を形成する。基板1としては、たとえば、LiNbO3やLiTaO3からなる圧電基板を用いることができる。また、フォトレジスト2としては、たとえば、KrFレジストやi線レジストを用い、形成方法としては、たとえば、スピンコータを用いることができる。
【0029】
次に、図1(B)に示すように、フォトレジスト2を、マスクパターン(図示せず)を用い、紫外線を照射して感光し、現像して、基板1の一方の主面に、レジストパターン2aを形成する。後に、レジストパターン2aを形成した部分には電極(後述するIDT電極4)は形成されず、レジストパターン2aを形成しなかった部分に電極が形成されるため、形成したい電極の形状に合わせてマスクパターンを形成する。なお、マスクパターンの形状は、フォトレジスト2が、ポジ型である場合と、ネガ型である場合とで、異なる形状(裏返しの形状)になる。
【0030】
次に、図1(C)に示すように、真空装置内において、レジストパターン2aを用いて反応性イオンエッチングをおこない、基板1の一方の主面上に、溝1aを形成する。このエッチング深さは電極の膜厚よりも若干大きくともよく、小さくともよい。
【0031】
次に、図1(D)に示すように、基板1の他方の主面上に、応力の大きな膜3を形成する。応力の大きな膜としては、たとえば、SiNなど用いることができ、形成方法としては、たとえば、スパッタを用いることができる。この結果、基板1は、一方の主面側が凹むように反る。凹み量は、0.7μmであった。
【0032】
次に、図1(E)に示すように、真空装置内において、蒸着をおこない、基板1の溝1a内に、IDT電極4を形成する。このとき、レジストパターン2a上にも、金属膜5が形成される。ここで、形成されたIDT電極は、圧電基板の主面と面一であってもよいし、溝から突き出していてもよい。また、圧電基板の主面の面一から凹んでいてもよい。蒸着金属としては、たとえば、Al,AlCu,Ti,Pt,NiCr,Cuからなる群から選ばれた金属、もしくは、Al,AlCu,Ti,Pt,NiCr,Cuからなる群から選ばれた一種以上の金属を含む合金を用いることができる。また、IDT電極4は、上記金属や合金からなる複数の導電層の積層体により構成されていてもよい。また、密着層や拡散防止層が積層されていてもよい。
【0033】
この蒸着による電極形成工程においては、図2に示すように、他方の主面上に形成された応力の大きな膜3により、基板1が、IDT電極4が形成される一方の主面側が凹むように反っているため、矢印Yで示す蒸着源6から基板1への蒸着金属の入射角度が、基板1の一方の主面の全面において、ほぼ垂直となる。この結果、IDT電極4は、複数の溝1a内に高い精度で形成され、電極乗り上げ部が形成されることがない。
【0034】
特に、電極乗り上げ部が形成されてしまうと、電極形成不良となって、弾性波素子の特性に大きな影響を及ぼす。また、溝1a内に密着層や拡散防止層などを積層する場合、従来のような電極形成方法では、電極の端部においてはこれらの層が形成されず、密着層や拡散防止層の役割を果たさない、という不具合が発生してしまうことがあった。しかし、本実施形態によれば、電極が高い精度で溝内に形成されるため、電極乗り上げ部が形成されたり、積層電極が形成されないような不具合は発生せず、特性の良好な弾性波素子を得ることができる。
【0035】
次に、図1(F)に示すように、基板1から、応力の大きな膜3と、レジストパターン2aと、レジストパターン2a上に形成された金属膜5とを除去する。これらの除去は、基板1をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)などの剥離溶液に浸漬し、一括しておこなっても良い。あるいは、応力の大きな膜3の除去と、レジストパターン2aおよびレジストパターン2a上に形成された金属膜5の除去とを別々におこなっても良く、その前後は問わない。
【0036】
基板1の他方の主面から応力の大きな膜3を除去したことにより、基板1は反りがなくなり平坦な板状となる。そして、平坦となった基板1の一方の主面には、埋め込まれた状態で、IDT電極4が精度よく形成されている。
【0037】
その後、図1(G)に示すように、基板1の主面を覆うように絶縁膜8を蒸着やスパッタなどにより形成する。このようにして、弾性境界波素子が製造される。
【0038】
以上、本発明の第1実施形態にかかる、電子部品の製造方法について説明した。しかしながら、本発明が本実施形態の内容に限定されることはなく、発明の主旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0039】
たとえば、基板1として、多数個分の子基板が一括して形成された、大きな母基板を用い、IDT電極4形成後に、個々の子基板に分割するようにしても良い。
【0040】
また、IDT電極4は、基板1の一方の主面だけに形成するのではなく、他方の主面にも形成するようにしても良い。この場合には、一方の主面にIDT電極4を形成した後、他方の主面に、同様の工程を施すなどの方法をとることができる。
【0041】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態にかかる、電子部品の製造方法について説明する。
【0042】
図3(A)〜(F)は、本発明の第2実施形態にかかる、電子部品の製造方法において適用される各工程を示す。以下の説明では、電子部品として、弾性境界波素子の製造方法を例に説明する。
【0043】
本実施形態にかかる電子部品の製造方法においては、図3(A)に示すように、まず、基板1の他方の主面(図面における下側の主面)上に、応力の大きい膜13を形成する。この結果、基板1は、一方の主面側が凹むように反る。なお、本実施形態においては、応力の大きな膜13に、酸化膜(ZnO,SiO2,SiON)や窒化膜(SiN,AlN,TiN)などの、紫外線を吸収する特性のものを用いる。
【0044】
次に、図3(B)に示すように、基板1の一方の主面(図面における上側の主面)上に、全面にわたってフォトレジスト2を形成する。なお、図3(A)に示す基板1の他方の主面上への応力の大きな膜13の形成と、図3(B)に示す基板1の一方の主面上へのフォトレジスト2の形成とは、順序を逆にしても良い。
【0045】
次に、図3(C)に示すように、フォトレジスト2を、マスクパターン(図示せず)を用い、紫外線を照射して感光し、現像して、基板1の一方の主面に、レジストパターン2aを形成する。なお、紫外線を照射して感光する際には、基板1の他方の主面に形成された、紫外線を吸収する特性を備えた、応力の大きな膜13が紫外線反射防止膜としても機能する。この結果、フォトレジスト2は、基板1の他方の主面側からの、反射による不要な照射を受けることが抑制されるため、レジストパターン2aは、所望するどおりの正確な形状になる。
【0046】
次に、図3(D)に示すように、真空装置内において、レジストパターン2aを用いて反応性イオンエッチングをおこない、基板1の一方の主面上に、溝1aを形成する。
【0047】
次に、図3(E)に示すように、真空装置内において、蒸着をおこない、基板1の溝1a内に、IDT電極4を形成する。この蒸着による電極形成工程においては、他方の主面上に形成された応力の大きな膜13により、基板1が、IDT電極4が形成される一方の主面側が凹むように反っているため、蒸着源から基板1への蒸着金属の入射角度が、基板1の一方の主面の全面において、ほぼ垂直となる。この結果、IDT電極4は、複数の溝1a内に高い精度で形成される。
【0048】
次に、図3(F)に示すように、基板1から、応力の大きな膜13と、レジストパターン2aと、レジストパターン2a上に形成された金属膜5とを除去する。 基板1の他方の主面から応力の大きな膜13を除去したことにより、基板1は反りがなくなり平坦な板状となる。そして、平坦となった基板1の一方の主面には、埋め込まれた状態で、IDT電極4が形成されている。
【0049】
その後、図3(G)に示すように、基板1の主面を覆うように絶縁膜8を蒸着やスパッタなどにより形成し、弾性境界波素子が製造される。
【0050】
本実施形態においては、基板1の他方の主面上に形成される応力の大きな膜13に、紫外線を吸収する特性のものを用いており、フォトレジスト2に紫外線を照射して感光する際に、応力の大きな膜13により、基板1の他方の主面側から不要な紫外線が反射するのを抑制することができる。したがって、本実施形態においては、レジストパターン2aをより正確に形成することができ、基板1に形成されるIDT電極4を、より精度の高いものとすることができる。
【0051】
[第3実施形態]
図4(A)〜(E)は、本発明の第3実施形態にかかる、電子部品の製造方法において適用される各工程を示す。以下の説明では、電子部品として、弾性境界波素子の製造方法を例に説明する。
【0052】
本実施形態にかかる電子部品の製造方法においては、図4(A)に示すように、まず基板1を準備し、基板1の一方の主面上に、全面にわたってフォトレジスト2を形成する。
【0053】
次に、図4(B)に示すように、フォトレジスト2を、マスクパターン(図示せず)を用い、紫外線を照射して感光し、現像して、基板1の一方の主面に、レジストパターン2aを形成する。
【0054】
次に、図4(C)に示すように、基板1の他方の主面上に、応力の大きな膜3を形成する。この結果、基板1は、一方の主面側が凹むように反る。
【0055】
次に、図4(D)に示すように、真空装置内において、蒸着をおこない、基板1の一方の主面上に、IDT電極14を形成する。このとき、レジストパターン2a上にも、金属膜5が形成される。第1実施形態および第2実施形態においては、基板1の一方の主面上に溝を形成し、その溝の内部に電極を形成しているが、本実施形態においては、溝を形成することなく、基板1の平坦な一方の主面上にIDT電極14を形成している。
【0056】
次に、図4(E)に示すように、基板1から、応力の大きな膜3と、レジストパターン2aと、レジストパターン2a上に形成された金属膜5とを除去する。
【0057】
基板1の他方の主面から応力の大きな膜3を除去したことにより、基板1は反りがなくなり平坦な板状となる。そして、平坦となった基板1の一方の主面上には、IDT電極14が弾性波伝搬方向にずれることなく、精度よく形成されている。
【0058】
その後、図4(F)に示すように、基板1の主面を覆うように絶縁膜8を蒸着やスパッタなどにより形成し、弾性境界波素子が製造される。
【0059】
このように、第3実施形態においては、溝を形成することなく、基板1の平坦な一方の主面上にIDT電極14を形成している。
【0060】
[第4実施形態]
図5に、本発明の第4実施形態かかる電子部品の製造方法における、電極形成工程を示す。以下の説明では、電子部品として、弾性境界波素子の製造方法を例に説明する。
【0061】
第1実施形態〜第3実施形態においては、図1(D)、図3(A)、図4(C)などに示すように、基板1の他方の主面上に、応力の大きな膜3または13を形成することによって、基板1を一方の主面側が凹むように反らせ、その上で、図1(E)、図3(E)、図4(D)などに示すように、基板1の一方の主面上にIDT電極4を形成している。
【0062】
これに対し、本実施形態においては、応力の大きな膜3を使用することなく、図5に示すように、上側に凹んだ曲面7aを備え、曲面7aの全面にわたって、複数の真空吸着孔7bが形成された基板保持冶具7を用い、基板保持冶具7の曲面7aに基板1を吸着させて、基板1を一方の主面側が凹むように反らせる。そして、基板1を一方の主面側が凹むように反らせた上で、基板1の一方の主面上にIDT電極4を形成する。本実施形態においても、蒸着源から基板1への蒸着金属の入射角度(図5において矢印Yで示す)が、基板1の一方の主面の全面において、ほぼ垂直となるため、IDT電極4は、複数の溝1a内に高い精度で形成され、電極乗り上げ部が形成されたり、溝1a内に電極非形成部が形成されることがない。
【0063】
本実施形態における他の工程は、たとえば、図1(A)〜(F)に示した第1実施形態の工程と同様にすることができる。
【0064】
すなわち、まず、図1(A)に示すように、基板1の一方の主面上に、全面にわたってフォトレジスト2を形成し、図1(B)に示すように、フォトレジスト2を感光し、現像して、レジストパターン2aを形成し、図1(C)に示すように、反応性イオンエッチングをおこない、基板1の一方の主面上に、溝1aを形成する。そして、上述したとおり、図5に示すように、基板保持冶具7を用い、基板保持冶具7の曲面7aに基板1を吸着させて、基板1を一方の主面側が凹むように反らせた上で、基板1の一方の主面上の溝1a内に、蒸着などによりIDT電極4を形成する。この後、基板1を基板保持冶具7から取出した上で、図1(F)に示すように、基板1から、レジストパターン2aと、レジストパターン2a上に形成された金属膜5とを除去し、埋め込まれた状態でIDT電極4が形成された基板1を得る。その後、基板1の主面を覆うように絶縁膜を蒸着やスパッタなどにより形成し、弾性境界波素子が製造される。
【0065】
本実施形態においては、基板1の他方の主面上に応力の大きな膜を形成するのではなく、基板保持冶具7を用いて基板1を一方の主面側が凹むように反らせ、その上で基板1の一方の主面上にIDT電極4を形成している。したがって、製造が容易であり、生産性の高い、電子部品の製造方法となっている。
【0066】
なお、上述の実施形態においては、電子部品として弾性境界波素子を製造したが、本発明は弾性境界波素子以外にも、例えば弾性表面波素子などに適用でき、形成される電極もIDT電極には限定されない。また、上述の実施形態における電極構造も特に限定されず、たとえば1ポート型の弾性波共振子を構成してもよいし、弾性波フィルタを構成してもよい。1ポート型の弾性波共振子を構成した場合は、IDT電極を構成している電極の弾性波伝搬方向両側に、同じく電極膜により反射器が形成される。
【符号の説明】
【0067】
1:基板
1a:溝
2:フォトレジスト
2a:レジストパターン
3、13:応力の大きな膜
4、14:IDT電極
5:金属膜
6:蒸着源
7:基板保持冶具
7a:曲面
7b:真空吸着孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の主面を有する平板状の基板を準備する基板準備工程と、
前記基板の一方の主面上に、所望の形状からなるレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記基板の一方の主面上の、前記レジストパターンが形成されていない部分に、電極を薄膜技術により形成する電極形成工程と、
前記基板の一方の主面上から、前記レジストパターンを除去するレジストパターン除去工程と、を含んでなる電子部品の製造方法であって、
前記電極形成工程は、前記基板を、前記電極が形成される側の主面が凹むように反らせておこなう、電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記電極形成工程における前記薄膜技術が、蒸着またはスパッタリングである、請求項1に記載された電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記基板が、圧電基板または半導体基板である、請求項1または2に記載された電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記電極形成工程に先立ち、前記基板の一方の主面上の前記レジストパターンが形成されていない部分に溝を形成し、前記電極形成工程においては、前記溝の内部に前記電極を形成する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記電極形成工程に先立ち、前記基板の前記電極が形成されない側の主面上に応力の大きな膜を形成し、前記基板を、前記電極が形成される側の主面が凹むように反らせる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記応力の大きな膜が、前記レジストパターン形成工程に先立ち、前記基板の前記電極が形成されない側の主面上に形成され、当該応力の大きな膜は、前記レジストパターン形成工程において紫外線反射防止膜としても利用される、請求項5に記載された電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記電極形成工程において、前記基板を、保持面が曲面状に凹んだ基板保持冶具で吸着し、前記電極が形成される側の主面が凹むように反らせる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−167322(P2012−167322A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28963(P2011−28963)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】