説明

電子部品の運搬ケース

【課題】電子部品を確実に保持できると共に、静電気を除去して電子部品の破損や塵埃の付着を防止することができ、しかも、電子部品に有害なガスの発生(アウトガス)を極々微量に低減することもできる電子部品の運搬ケースを提供する。
【解決手段】ケース体1を、本体部11とフタ部材12とから構成する一方、この本体部11の内側底面には、(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物(C)ヒドロシリル化触媒を必須成分として含む硬化性組成物からなる粘着性材料によって作製されたシート材2を貼着し、このシート材2に電子部品を付着させて定置収容することができるようにするという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の運搬ケースの改良、更に詳しくは、電子部品を確実に保持できると共に、静電気を除去して電子部品の破損や塵埃の付着を防止することができ、しかも、収容電子部品に有害なガスの発生(アウトガス)を極々微量に低減することもできる電子部品の運搬ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を運搬するにあっては、この電子部品が微小でデリケートな性質のものであることから、専用のケースに収容して運搬されることが多く、このケースの内部に設けられた粘着性のシート部材に電子部品を貼着することにより保持することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、かかる従来の運搬ケースには、粘着性のシート部材の材料としてシリコンを使用していたため、シロキサンガス(シロキサン結合:−Si−O−Si−O−)などの電子部品に有害なガスが発生(所謂「アウトガス」)するという問題があった。
【0004】
また、収容するケースはプラスチック製であるため、静電気が不可避的に帯電し易く、この静電気が電子部品を損傷するおそれがあり、また、この静電気が塵埃を吸着して、電子部品に付着してしまうという問題もあった。
【特許文献1】特開2006−325633号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の電子部品の運搬ケースに上記問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、電子部品を確実に保持できると共に、静電気を除去して電子部品の破損や塵埃の付着を防止することができ、しかも、電子部品に有害なガスの発生(アウトガス)を極々微量に低減することもできる電子部品の運搬ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0007】
即ち、本発明は、電子部品Pを収容して運搬するための器具であって、
ケース体1を、本体部11とフタ部材12とから構成する一方、この本体部11を少なくとも導電性を有する樹脂材料により有底箱型に作製して、かつ、この本体部11の内側底面には、
(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含む硬化性組成物からなる粘着性材料によって作製されたシート材2を貼着し、
このシート材2に電子部品Pを付着させて定置収容することができるようにするという技術的手段を採用した。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート材2の硬化性組成物における(A)成分を、数平均分子量3,000〜50,000の、アルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体にするという技術的手段を採用することができる。
【0009】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート材2の硬化性組成物における(B)成分を、一般式
【0010】
【化1】

(式中、1<m+n≦40、1<m≦20、0<n≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有していてもよい。)
で表わされるヒドロシリル基を有する化合物にするという技術的手段を採用することができる。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ケース体1の本体部11を少なくとも導電性を有する樹脂材料により有底箱型に作製するという技術的手段を採用することができる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ケース体1の本体部11とフタ部材12との縁部をヒンジ連結して蝶着するという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、フタ部材12における本体部11の対向面側にリブ12aを形成して、このリブ12aが本体部11の内側底面の少なくとも一部に沿って接触させることによって、フタ部材12に帯電した静電気を除去できるようにするという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ケース体1のフタ部材12の側辺部の隅角近傍に一対のヒンジ突起12b・12bをそれぞれ成形する一方、本体部11には軸受け部11a・11aを形成し、これらの軸受け部11aに一方の突起12bを挿嵌して、かつ、略半円断面の他方の突起12bを軸受け部11aの開口部11bからスライド式に差し入れて、フタ部材12の全開時に外側方向に着脱自在に枢支するという技術的手段を採用することができる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、本体部11の側縁部には側壁11cを成形して、かつ、フタ部材12のリブ12aが前記側壁11cに沿って、底面に接触させるとともに、側面を遮蔽可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート材2に、電子部品P毎に配列可能な区画部21を形成するという技術的手段を採用することができる。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ケース体1の本体部11の使用材料を、85℃で3時間加熱したときのGC/MS法におけるアウトガスの発生量が0.8ppm以下である樹脂にするという技術的手段を採用することができる。
【0018】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ケース体1の本体部11の上面に凸部11dを形成して、かつ、底面に凹部11eを形成し、この凹部11eに別のケース体1の凸部11dを挿嵌することによって、複数のケース体1・1…を積み重ね可能にするという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にあっては、ケース体を、本体部とフタ部材とから構成する一方、この本体部の内側底面に、
(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含む硬化性組成物からなる粘着性材料によって作製されたシート材を貼着したことによって、このシート材に電子部品を付着させて定置収容することができる。
【0020】
したがって、本発明の運搬ケースを使用することにより、電子部品を確実に保持できると共に、シロキサンガスなどの電子部品に有害なガスの発生(アウトガス)を極々微量に低減することができる。
【0021】
また、本発明では、必要に応じて、ケース体1の本体部11を少なくとも導電性を有する樹脂材料により有底箱型に作製することによって、フタ部材12に帯電した静電気を速やかに通電して除去することができる。
【0022】
また、本発明では、必要に応じて、ケース体の本体部とフタ部材との縁部をヒンジ連結して蝶着したことによって、開閉操作を容易にすることができる。
【0023】
更にまた、必要に応じて、フタ部材における本体部の対向面側にリブを形成して、このリブを本体部の内側底面の少なくとも一部に沿って接触させることによって、ケース体の構造によりフタ部材に帯電した静電気を除去でき、電子部品の破損や塵埃の付着を防止することができる。
【0024】
更にまた、必要に応じて、ケース体のフタ部材の側辺部の隅角近傍に一対のヒンジ突起をそれぞれ成形する一方、本体部には軸受け部を形成して、これらの軸受け部に一方の突起を挿嵌して、かつ、略半円断面の他方の突起を軸受け部の開口部からスライド式に差し入れて、フタ部材の全開時に外側方向に着脱自在に枢支することによって、本体部のシート材の上に電子部品を載置していく際に、フタ部材を取り外しておくことができるので、フタ部材がジャマにならず、作業の進行を阻害しない。
【0025】
更にまた、必要に応じて、本体部の側縁部には側壁を成形して、かつ、フタ部材のリブが前記側壁に沿って、底面に接触するとともに、側面を遮蔽可能にすることによって、物理的にも、ケースの内側における塵埃の侵入を減少させることができることから、運搬ケースとしての利用価値は頗る大きいと云える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0027】
本発明の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものはケース体であり、このケース体1は、本体部11とフタ部材12とから構成されている。
おり、この本体部11は少なくとも導電性を有する樹脂材料(本実施形態では、スタットコンポリカーボネート)により有底箱型に作製されている。また、フタ部材12における本体部11の対向面側にリブ12aが形成されている。
【0028】
また、符号2で指示するものはシート材であり、このシート材2は、硬化性組成物からなる粘着性材料であり、以下に詳述する。
【0029】
<シート材2について>
本実施形態におけるシート材2は、前記のとおり、
(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含む硬化性組成物(ポリエーテルゴム系材料)である。
【0030】
本実施形態の(A)成分である、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、特に制限はなく、公知のものが挙げられる。具体的には、重合体の主鎖骨格が、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものが挙げられる。
一般式(1):−R−O−
(式中、Rは2価のアルキレン基)
一般式(1)中に記載のRとしては、2価のアルキレン基ならば特に限定されず、この中でも炭素数1〜14のアルキレン基が好ましく、2〜4の、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基がより好ましい。
【0031】
一般式(1)記載の繰り返し単位としては、特に限定されず、例えば、−CHO−、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH(C)O−、−CHC(CHO−、−CHCHCHCHO−等が挙げられる。
【0032】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなるものでも、複数の繰り返し単位を組み合わせたものでもよい。この中でも、入手が容易なこと、作業性に優れることなどから、主な繰り返し単位として、−CHCH(CH)O−からなる重合体が好ましい。
【0033】
また、重合体の主鎖骨格中にはオキシアルキレン単位以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中の含まれるオキシアルキレン単位の総和の割合は、80重量%以上、特には90重量%以上が好ましい。
【0034】
(A)成分の重合体の主鎖骨格は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、また、その混合物でもよい。この中でも良好な弾性を得るため、直鎖状の重合体を50重量%以上含有することが好ましい。
【0035】
(A)成分の重合体の分子量としては、数平均分子量で1,000〜70,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましく、5,000〜30,000が特に好ましい。数平均分子量が1,000未満のものでは、得られる硬化物が脆くなり良好なゴムとしての弾性に欠ける傾向がある。逆に数平均分子量が50,000を超えると高粘度となり組成物の取り扱いが著しく低下する傾向がある。数平均分子量は、各種の方法で測定可能であるが、通常、ポリオキシアルキレン系重合体の末端基分析からの換算や、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
【0036】
(A)成分中のアルケニル基としては、特に限定されず、公知のものが挙げられる。この中でも、下記の一般式(2)で示されるアルケニル基が好ましい。
一般式(2):HC=C(R)−
(式中、Rは水素又はメチル基である)
アルケニル基のポリオキシアルキレン系重合体への結合様式としては特に限定されず、例えば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
【0037】
(A)成分の重合体としては
一般式(3):{HC=C(R)−R−O}−R
(式中、Rは水素又はメチル基である。Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、その中には、1個以上のエーテル基が含まれていてもよい、Rはポリオキシアルキレン系重合体の開始剤残基である。aは正の整数である。)で示される重合体が挙げられる。
【0038】
一般式(3)の中に記載のRは、特に限定されず、例えば、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCHCHCH−、−CHCHOCHCH−、または−CHCHOCHCHCH−などが挙げられる。この中でも、合成が容易なことなどから、−CH−が好ましい。
【0039】
前記以外の、(A)成分の重合体としては
一般式(4):{HC=C(R)−R−OC(=O)}−R
(式中、R,R,R及びaは一般式(3)の表記と同じ)で示されるエステル結合を有する重合体が挙げられる。
【0040】
また、一般式(5):{HC=C(R)}−R
(式中、R、R及びaは一般式(3)(4)の表記上記と同じ)で示される重合体も挙げられる。
【0041】
さらに、一般式(6):{HC=C(R)−R−OC(=O)O}−R
(式中、R、R、R及びaは一般式(3)、(4)、(5)の表記と同じ)で示されるカーボネート結合を有する重合体も挙げられる。
【0042】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の重合方法としては、特に限定されず、例えば、特開昭50−13496号等に開示されているオキシアルキレンの通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)、特開昭50−149797号等に開示されている前記アニオン重合法によって得られた重合体を原料とした鎖延長反応方法による重合法、特開平7−179597号等に開示されているセシウム金属触媒を用いる重合法、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号に開示されているポルフィリン/アルミ錯体触媒を用いる重合法、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等に開示されている複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合法、特開平10−273512号等に開示されているポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法等が挙げられる。
【0043】
この中でも、実用性が高いこと、触媒の入手が容易であること、重合体が安定して得られることなどから、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合方法が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒の製造方法としては、特に限定されず公知の方法が挙げられ、例えば、米国特許第3,278,457号、同3,278,459号、同5,891,818号、同5,767,323号、同5,536,883号、同5,482,908号、同5,158,922号、同4,472,560号、同6,063,897号、同5,891,818号、同5,627,122号、同5,482,908号、同5,470,813号、同5,158,922号等に開示されている製造方法が好ましい。
【0044】
1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(成分(A))の合成方法としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレン系重合体を製造するための通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)や、この重合体を原料とした鎖延長反応方法のほか、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号などに開示されている方法により得ることができる。
【0045】
ポリオキシアルキレン系重合体にアルケニル基を導入する方法としては、特に限定されず公知の方法が挙げられ、例えば、アリルグリシジルエーテルのようなアルケニル基を有する化合物とオキシアルキレン化合物との共重合による方法が挙げられる。
【0046】
また、アルケニル基を主鎖あるいは側鎖に導入する方法としては、特に限定されず、例えば、主鎖あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基等の官能基を有するオキシアルキレン重合体に、これらの官能基に対して反応性を有する官能基及びアルケニル基を有する有機化合物を反応させる方法が挙げられる。なお、アルケニル基が重合体の主鎖末端に存在する重合体を含む硬化性組成物は、得られる硬化物が、大きな有効網目鎖長を有し、機械的特性に優れることから好ましい。
【0047】
水酸基、アルコキシド基等の官能基に対して反応性を有する官能基及びアルケニル基を有する有機化合物としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、アクリル酸クロライド若しくはアクリル酸ブロマイド等の炭素数3〜20の不飽和脂肪酸の酸ハライド、酸無水物、アリルクロロホルメート、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−ブテニル(クロロメチル)エーテル,1−ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0048】
(A)成分である重合体の1分子中に存在するアルケニル基の数としては、1個を超え5個以下が好ましい。重合体(A)1分子中に含まれるアルケニル基の数が1個以下になると、硬化性組成物の硬化が不充分になる傾向があり、得られる降下物は、網目構造が不完全なものとなり、良好な成形体を得られない傾向がある。また、重合体(A)1分子中に存在するアルケニル基が多くなると、得られる硬化物の網目構造があまりに密となるため、成形体は脆くなる傾向がある。特に、5個以上になるとその傾向は顕著となる。
【0049】
本実施形態における(B)成分である1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物としては、ヒドロシリル基を有するものであれば特に限定されず、この中でも、原材料の入手が容易なこと、(A)成分への相溶性が良好なことなどから、有機基で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0050】
前記のヒドロシリル基を有する化合物(B)の数平均分子量としては、400〜3,000が好ましく、500〜1,000がより好ましい。数平均分子量が400未満の(B)成分の化合物を使用した硬化性組成物は、加熱硬化時に(B)成分が揮発して十分な硬化物が得られなくなる傾向があり、数平均分子量が3,000を超える(B)成分の化合物を使用した硬化性組成物は、十分な硬化速度が得られなくなる傾向がある。
【0051】
また、これら(B)成分の化合物は、(A)成分の重合体との相溶性が良好なものが好ましい。特に硬化性組成物の粘度が低い場合には、(B)成分に相溶性の低いものを使用すると、貯蔵中などに相分離が起こり硬化不良を引き起こす傾向がある。
【0052】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては特に限定されず、例えば、下記の構造式等で示される鎖状または環状の化合物が挙げられる。
【0053】
【化2】

(式中、1<b+c≦40、1<b≦20、0<c≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有していてもよい。)
【0054】
【化3】

(式中、0≦d+e≦40、0≦d≦20、0<e≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有していてもよい。)
【0055】
【化4】

(式中、3≦f+g≦20、1<f≦20、0<g≦18である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有していてもよい。)
(A)成分及び(C)成分との相溶性、又は、分散安定性および硬化速度が比較的良好な(B)成分としては、特に限定されず、例えば、下記の構造式で示される化合物が挙げられる。
【0056】
【化5】

(式中、1<k+l≦20、1<k≦19、0<l≦18であり、Rは炭素数8以上の炭化水素基である。)
好ましい(B)成分の具体的例としては、(A)成分との相溶性確保と、SiH量の調整を目的に、メチルハイドロジェンポリシロキサンを、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステル等により変性した化合物が挙げられ、一例として、以下の構造式で示される化合物が挙げられる。
【0057】
【化6】

(式中、1<p+q≦20、1<p≦19、0<q≦18である。)
本実施形態における(B)成分であるヒドロシリル基を有する化合物の使用量は、(A)成分の重合体中に存在するアルケニル基の量と、(B)成分中の化合物中に存在するヒドロシリル基の量の関係において、適宜選択され、この中でも、[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5以上であることが好ましく、0.7以上がより好ましい。
【0058】
[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5を下回る硬化性組成物は、得られる硬化物が、架橋密度が低い軟質ゴム部分を有するため、粘着性が高くなり、複合成形体を作製する際の取り扱いが難しくなる傾向がある。
【0059】
また、[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]が[(A)成分中のアルケニル基の総量]に比較し大過剰の硬化性組成物は、得られる硬化物が三次元の網目骨格を形成するのが困難となり、複合成形体を作製する際の取り扱いが難しくなる傾向がある。このように(B)成分の使用量については、下限、上限の両方に注意する必要がある。
【0060】
本実施形態の(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、特に限定されず、公知のものが挙げられ、例えば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Ptx(ViMeSiOSiMeVi)、Pt〔(MeViSiO)};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh、Pt(PBu};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)、Pt〔P(OBu)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、x、y、zは整数を表す)、Pt(acac)(ただし、acacは、アセチルアセトナトを表す)、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に開示されている白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号に開示されている白金アルコラート触媒等も挙げられる。
【0061】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0062】
これらの触媒は単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。前記の触媒の中でも、触媒活性が高いことなどから、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。
【0063】
触媒(C)の使用量としては、特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−8〜10−1molが好ましく、10−6〜10−2molがより好ましい。10−8mol未満の量を使用した硬化性組成物は、硬化速度が遅く、また硬化が不安定となる傾向がある。逆に10−1molを超える量を使用した硬化性組成物は、ポットライフの確保が困難となる傾向がある。
【0064】
また、本発明の(A)〜(C)成分からなる硬化性組成物には、必要に応じて、各種充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤、シリコン化合物を適宜添加してもよい。上記充填剤の具体例としては、シリカ微粉末、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0065】
<ケースの構造について>
次に、本実施形態における運搬ケースの構造について説明する。当該運搬ケースは、電子部品Pを収容して運搬するための器具であって、ケース体1が、本体部11とフタ部材12とから構成されている(図1参照)。
【0066】
そして、前記本体部11は少なくとも導電性を有する樹脂材料(本実施形態では、スタットコンポリカーボネート)により(有底箱型に)作製されている。そして、この本体部11の内側底面には、前記シート材2が貼着されており、このシート材2に電子部品Pを付着させて定置収容することができる(図2〜4参照)。
【0067】
本実施形態では、ケース体1の本体部11の使用材料を、85℃で3時間加熱したときのGC/MS法におけるトルエンなどのアウトガスの発生量が0.8ppm以下、好ましくは0.6ppm以下である樹脂にすることができる。ここで、「GC/MS」とは、公知のガスクロマトグラフ質量分析計であり、本実施形態では、サンプル試料0.1gを切り出して85℃で3時間加熱した後、発生したガスをトラップして前記GC/MSを用いて測定を行った(「ダイナミックヘッドスペース法」)。更に、この樹脂は、導電性であることが好ましく、10Ω/sq以下の表面抵抗率であることが更に好ましい。この樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種が例示される。導電性とするためにはこれらの樹脂に導電性材料を配合する。
【0068】
また、本実施形態では、ケース体1のフタ部材12の使用材料を熱可塑性樹脂とすることができる。更に透明な熱可塑性樹脂であることが好ましく、帯電防止性能を有することが更に好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種が例示される。
【0069】
また、本実施形態では、ケース体1の本体部11とフタ部材12との縁部をヒンジ連結して蝶着することができ、開閉操作を容易にするとともに、ヒンジを設けた辺部と逆側の辺縁に設けた掛合手段を設けて掛止することにより、フタ部材12を閉じることができる。
【0070】
更にまた、本実施形態では、フタ部材12における本体部11の対向面側にリブ12aが形成されており、このリブ12aが本体部11の内側底面の少なくとも一部に沿って接触することによって、アース作用を奏することができ、フタ部材12に帯電した静電気を除去できる。
【0071】
なお、本実施形態では、ケース体1のフタ部材12の側辺部の隅角近傍に一対のヒンジ突起12b・12bをそれぞれ成形する一方、本体部11には軸受け部11a・11aを形成し、これらの軸受け部11aに一方の突起12bを挿嵌して、かつ、略半円断面の他方の突起12bを軸受け部11aの開口部11bからスライド式に差し入れて、フタ部材12の全開時に外側方向に着脱自在に枢支することができる(図5および6参照)。
【0072】
こうすることにより、本体部11のシート材2の上に電子部品Pを載置していく際に、フタ部材12を取り外しておくことができるので、フタ部材12がジャマにならず、作業の進行を阻害しない。
【0073】
また、本実施形態では、本体部11の側縁部には側壁11cを成形して、かつ、フタ部材12のリブ12aが前記側壁11cに沿って、底面に接触させることによって、側面を遮蔽可能であり、物理的にも、ケースの内側における塵埃の侵入を減少させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、シート材2に、電子部品P毎に配列可能な区画部21を形成することができ、電子部品Pを整然と整列させることができ、取り違え等を防止することができる。
【0075】
更にまた、本実施形態では、図7に示すように、ケース体1の本体部11の上面に凸部11dを形成して、かつ、底面に凹部11eを形成し、この凹部11eに別のケース体1の凸部11dを挿嵌することによって、複数のケース体1・1…を積み重ね可能にすることができ、運搬時および保管時の省スペース化を実現することができる。
【0076】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、ケース体1の本体部11(およびフタ部材12)の形状は、電子部品Pの形状に応じて、深底にしたり、収容個数を増加できるようにしたりすることもでき、また、本発明の運搬ケースは電子部品に限らず、レンズ等の光学部品の運搬にも用いることができ、何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態の運搬ケースを表わす全体分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の運搬ケースを表わす全体斜視図である。
【図3】本発明の実施形態の運搬ケースを表わす説明断面図である。
【図4】本発明の実施形態の運搬ケースを表わす説明断面図である。
【図5】本発明の実施形態の運搬ケースを表わす説明断面図である。
【図6】本発明の実施形態の運搬ケースを表わす説明断面図である。
【図7】本発明の実施形態の運搬ケースを積み重ねた状態を表わす説明断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 ケース本体
11 本体部
11a 軸受け部
11b 開口部
11c 側壁
12 フタ部材
12a リブ
12b ヒンジ突起
2 シート材
21 区画部
P 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品Pを収容して運搬するための器具であって、
ケース体1は、本体部11とフタ部材12とから構成されている一方、この本体部11の内側底面には、
(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含む硬化性組成物からなる粘着性材料によって作製されたシート材2が貼着されており、
このシート材2に電子部品Pを付着させて定置収容することができることを特徴とする電子部品の運搬ケース。
【請求項2】
シート材2の硬化性組成物における(A)成分が、数平均分子量3,000〜50,000の、アルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項3】
シート材2の硬化性組成物における(B)成分が、一般式
【化1】

(式中、1<m+n≦40、1<m≦20、0<n≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有していてもよい。)
で表わされるヒドロシリル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項4】
ケース体1の本体部11は少なくとも導電性を有する樹脂材料により有底箱型に作製されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項5】
ケース体1の本体部11とフタ部材12との縁部がヒンジ連結して蝶着されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項6】
フタ部材12における本体部11の対向面側にリブ12aが形成されており、このリブ12aが本体部11の内側底面の少なくとも一部に沿って接触することによって、フタ部材12に帯電した静電気を除去できることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項7】
ケース体1のフタ部材12の側辺部の隅角近傍に一対のヒンジ突起12b・12bがそれぞれ成形されている一方、
本体部11には軸受け部11a・11aが形成されており、これらの軸受け部11aに一方の突起12bを挿嵌して、かつ、略半円断面の他方の突起12bを軸受け部11aの開口部11bからスライド式に差し入れて、フタ部材12の全開時に外側方向に着脱自在に枢支されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項8】
本体部11の側縁部には側壁11cが成形されており、かつ、フタ部材12のリブ12aが前記側壁11cに沿って、底面に接触するとともに、側面を遮蔽可能であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項9】
シート材2に、電子部品P毎に配列可能な区画部21が形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項10】
ケース体1の本体部11の使用材料が、85℃で3時間加熱したときのGC/MS法におけるアウトガスの発生量が0.8ppm以下である樹脂であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一つに記載の電子部品の運搬ケース。
【請求項11】
ケース体1の本体部11の上面に凸部11dが形成され、かつ、底面に凹部11eが形成されており、この凹部11eに別のケース体1の凸部11dを挿嵌することによって、複数のケース体1・1…を積み重ね可能にしたことを特徴とする請求項1〜10の何れか一つに記載の電子部品の運搬ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−302940(P2008−302940A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149098(P2007−149098)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000105936)サカセ化学工業株式会社 (12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(390000103)SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社 (36)
【Fターム(参考)】