説明

電子部品パッケージ、電子部品パッケージ用封止部材、および前記電子部品パッケージ用封止部材の製造方法

【課題】キャビティにおける電子部品素子の実装領域を増やす。
【解決手段】複数の封止部材により電子部品素子2の電極を気密封止する電子部品パッケージ用封止部材において、ベース4に電子部品素子2を搭載するキャビティ45が形成され、キャビティ45の壁面451に、キャビティ45の予め設定した基準点から放射上に拡がった点の集合体からなる、幅方向外方に膨らむ曲面(第2壁面454,第3壁面455の曲面4552)が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の封止部材により電子部品素子の電極が封止された電子部品パッケージ、電子部品パッケージの封止部材として使用される電子部品パッケージ用封止部材、および前記電子部品パッケージ用封止部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイス等の電子部品のパッケージ(以下、電子部品パッケージという)の内部空間は、この内部空間に搭載した電子部品素子の電極の特性が劣化するのを防ぐために気密封止される。
【0003】
この種の電子部品パッケージとしては、2つの封止部材(ベースや蓋)から構成され、その筐体が直方体のパッケージに構成されたものがある。このような電子部品パッケージの内部空間では、圧電振動片等の電子部品素子がベースに保持接合される。そして、ベースと蓋とが接合されることで、電子部品パッケージの内部空間の電子部品素子の電極が気密封止される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−114836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の水晶振動子(本発明でいう電子部品)のベースは、底部と壁部とから箱状体に成形され、底部と壁部とによって囲まれたキャビティが形成されている。このベースのキャビティの壁面(壁部の内側面)はテーパー状に形成されている。そのため、壁面が垂直に成形された形態に比較して、テーパー成形された部分だけ、キャビティにおける電子部品素子の実装領域(実装面積)が減少する。
【0006】
そこで、上記の課題を解決するために、本発明は、キャビティにおける電子部品素子の実装領域を増やすことができる電子部品パッケージ用封止部材、電子部品パッケージ、および電子部品パッケージ用封止部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品パッケージ用封止部材は、複数の封止部材によって電子部品素子の電極を気密封止する電子部品パッケージの前記封止部材として使用される電子部品パッケージ用封止部材において、電子部品素子を搭載するキャビティが形成され、前記キャビティの壁面には、前記キャビティの幅方向外方に膨らむ曲面が含まれたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記キャビティの壁面に前記キャビティの幅方向外方に膨らむ曲面が含まれるので、上記の従来技術のような前記キャビティの壁面全てがテーパー形成された形態に対して、前記キャビティにおける電子部品素子の実装領域を増やすことが可能となる。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品パッケージ用封止部材は、複数の封止部材によって電子部品素子の電極を気密封止する電子部品パッケージの前記封止部材として使用される電子部品パッケージ用封止部材において、電子部品素子を搭載するキャビティが形成され、前記キャビティの壁面には、前記キャビティ内の予め設定した基準点から放射状に拡がった点の集合体からなる曲面が含まれ、前記予め設定した基準点は複数有り、前記複数の基準点は1つの面上に配されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記キャビティの壁面には、前記キャビティ内の予め設定した基準点から放射状に拡がった点の集合体からなる曲面が含まれ、前記予め設定した基準点は複数有り、前記複数の基準点は1つの面上に配されるので、上記の従来技術のような前記キャビティの壁面全てがテーパー形成された形態に対して、前記キャビティにおける電子部品素子の実装領域を増やすことが可能となる。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品パッケージは、複数の封止部材によって電子部品素子の電極を気密封止する電子部品パッケージにおいて、少なくとも1つの前記封止部材が、本発明の電子部品パッケージ用封止部材であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、少なくとも1つの前記封止部材が、本発明の電子部品パッケージ用封止部材であるので、上記の本発明の電子部品パッケージ用封止部材による作用効果を有する。
【0013】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品パッケージ用封止部材の製造方法は、複数の封止部材によって電子部品素子の電極を気密封止する電子部品パッケージの前記封止部材として使用される電子部品パッケージ用封止部材の製造方法において、当該電子部品パッケージ用封止部材を構成する基材に、電子部品素子を搭載するキャビティを形成する形成工程を有し、前記形成工程では、ウエットエッチングによって底面を有する凹部を前記基材に形成し、前記凹部の底面をエッチング対象としてウエットエッチングによって前記キャビティの壁面の少なくとも一部を曲面に形成することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、前記キャビティの壁面の少なくとも一部を曲面にする前記形成工程を有するので、上記の従来技術のような前記キャビティの壁面全てがテーパー形成された形態に対して、前記キャビティにおける電子部品素子の実装領域を増やすことが可能となる。
【0015】
前記製造方法において、前記形成工程では、電着レジストにより前記基材にレジスト層を形成し、形成した前記レジスト層を用いてエッチングを行ってもよい。
【0016】
この場合、電着レジストによる前記レジスト層を前記基材に形成するので、前記凹部の内側面および内側の底面にまで、前記レジスト層を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、キャビティにおける電子部品素子の実装領域を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施の形態1に係る水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図であり、図3に示すベースのA1−A1線に沿って全体を切断した時の水晶振動子の概略断面図である。
【図2】図2は、図3に示すA1−A1線断面図である。
【図3】図3は、本実施の形態1に係るベースの概略平面図である。
【図4】図4は、本実施の形態1に係るベースの概略裏面図である。
【図5】図5は、図2に示すベースの貫通孔部分を拡大した概略断面図である。
【図6】図6は、本実施の形態1に係る蓋の概略裏面図である。
【図7】図7は、本実施の形態1に係る水晶振動片の概略平面図である。
【図8】図8は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図9】図9は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図10】図10は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図11】図11は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図12】図12は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図13】図13は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図14】図14は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図15】図15は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図16】図16は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図17】図17は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図18】図18は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図19】図19は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図20】図20は、本実施の形態1に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図21】図21は、本実施の形態2に係る水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図であり、図3に示すベースのA2−A2線に沿って全体を切断した時の水晶振動子の概略断面図である。
【図22】図22は、図23に示すA2−A2線断面図である。
【図23】図23は、本実施の形態2に係るベースの概略平面図である。
【図24】図24は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図25】図25は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図26】図26は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図27】図27は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図28】図28は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図29】図29は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図30】図30は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図31】図31は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図32】図32は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図33】図33は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図34】図34は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図35】図35は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図36】図36は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図37】図37は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図38】図38は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図39】図39は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図40】図40は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図41】図41は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図42】図42は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【図43】図43は、本実施の形態2に係るベースの製造工程の一工程を示すウエハの一部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、電子部品パッケージとして圧電振動デバイスである水晶振動子のパッケージに本発明を適用し、さらに電子部品素子として圧電振動片である音叉型水晶振動片に本発明を適用した場合を示す。
【0020】
<実施の形態1>
本実施の形態1に係る水晶振動子1には、図1に示すように、音叉型水晶片からなる図7に示す水晶振動片2(本発明でいう電子部品素子)と、この水晶振動片2を保持し、水晶振動片2を気密封止するためのベース4(本発明でいう封止部材としての電子部品パッケージ用封止部材)と、ベース4と対向するように配置され、ベース4に保持した水晶振動片2の励振電極31,32(図7に示す電極であり、本発明でいう電子部品素子の電極)を気密封止するための蓋7とが設けられている。
【0021】
この水晶振動子1では、ベース4と蓋7とが、AuとSnの合金からなる接合材12と、下記の第1接合層48と、下記の第2接合層74とにより接合され、これらの接合により、気密封止された内部空間11を備える本体筐体が構成される。この内部空間11では、ベース4に、水晶振動片2が、金バンプ等の導電性バンプ13を用いたFCB法(Flip Chip Bonding)により電気機械的に超音波接合されている。なお、本実施の形態1において、導電性バンプ13には、金バンプ等の非流動性部材のメッキバンプが用いられている。
【0022】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0023】
ベース4は、等方性材料であるホウケイ酸ガラス等のガラス材料の基材からなり、図1〜4に示すように、底部41と、ベース4の一主面42の外周に沿って底部41から上方に延出した壁部44とから構成された箱状体に成形されている。このようなベース4は、直方体の一枚板の基材をウエットエッチングして箱状体に成形される。
【0024】
ベース4の壁部44の天面は、蓋7との接合面であり、この接合面には、蓋7と接合するための第1接合層48が設けられている。第1接合層48は、複数の層の積層構造からなり、ベース4の壁部44の天面にスパッタリング法によりスパッタリング形成された第1スパッタ膜93と、第1スパッタ膜93の上にスパッタ形成された第2スパッタ膜94と、第2スパッタ膜94の上にメッキ形成された第1メッキ膜95と、第1メッキ膜95の上にメッキ形成された第2メッキ膜96と、第2メッキ膜96の上にメッキ形成された第3メッキ膜97と、第3メッキ膜97の上にメッキ形成された第4メッキ膜98とからなる。
【0025】
第1スパッタ膜93は、ベース4の壁部44の天面にスパッタリング法によりスパッタリング形成されたMoからなるMo膜であり、5〜10nmの厚みを有する。第2スパッタ膜94は、第1スパッタ膜93上にスパッタリング法によりスパッタリング形成されたCuからなるCu膜であり、0.3μmの厚みを有する。第1メッキ膜95は、第2スパッタ膜94上にメッキ形成されたCuからなるCu膜であり、2〜6μmの厚みを有する。第2メッキ膜96は、第1メッキ膜95上にメッキ形成されたNiからなるNi膜であり、1〜3μmの厚みを有する。第3メッキ膜97は、第2メッキ膜96上にメッキ形成されたAuからなるAuストライクメッキ膜もしくはPdからなるPdメッキ膜であり、0.1〜0.3μmの厚みを有する。第4メッキ膜98は、第3メッキ膜97上にメッキ形成されたAuからなるAuメッキ膜であり、0.1〜0.3μmの厚みを有する。
【0026】
また、ベース4の一主面42には、底部41と壁部44とによって囲まれた平面視長方形のキャビティ45が成形されている。キャビティ45には、その長手方向の一端部452の全体に沿って台座部46がエッチング成形されている。この台座部46に、水晶振動片2が搭載される。
【0027】
キャビティ45の壁面451は、壁部44の内側面であり、キャビティ45は、ベース4をフォトリソグラフィ法によりエッチングして成形する際、下記の貫通孔49の成形と同時に形成される。このキャビティ45の壁面451は、図1〜3に示すように、平坦面(壁面451の一部)と曲面(壁面451の一部)とから構成されている。具体的には、壁面451は、台座部46上に立ち上げ形成された第1壁面453と、キャビティ45の底面456(一主面42)上に立ち上げ形成された、台座部46の壁面となる第2壁面454と、キャビティ45の底面456(一主面42)上に立ち上げ形成され、第1壁面453,第2壁面454以外の壁面となる第3壁面455とから構成される。
【0028】
第1壁面453は、平坦面であり、図1,2に示すように、壁部44の天面441に対して傾斜を有し、テーパー状に形成されている。なお、壁部44の天面441とキャビティ45の第1壁面453とがなす角度は、約45度である。
【0029】
第2壁面454は、曲面であり、図1,2に示すように、キャビティ45の幅方向の外方に膨らみ凸状に成形された曲形状とされている。この曲面は、キャビティ45内の予め設定した基準点457(図12参照)から放射状に拡がった点の集合体からなる。このように、第2壁面454は、基準点457を中心(中心点)とした球体の曲面(球面)であり、また、基準点457(図12参照)を中心とした球面の法線が面B1(図2,12に示す二点鎖線の仮想面)上に配される。ここでいう予め設定した基準点457は複数有り、複数の基準点457は、1つの面B1上に配され、面B1上において不図示の円形の線(無端状の平面視円形の線)となる。また、面B1は、ベース4の両主面42,43と同じ面方向とされ、図2に示すベース4の断面視を参照して、ベース4の両主面42,43と平行な面となる。また、第2壁面454は、上記の通り、複数の基準点457(図12参照)を中心した曲面となり、基準点457を中心とした法線が面B1上に配されるので、キャビティ45では、面B1に沿った径が最大幅寸法となり、台座部46の主面461は、上記の面B1上にあり、台座部46の主面461と第2壁面454との角度が直角となる。
【0030】
第3壁面455は、平坦面4551と曲面4552とから構成され、キャビティ45の底面456(一主面42)に連続して曲面4552が形成され、曲面4552に連続して平坦面4551が形成され、平坦面4551に連続して壁部44の天面441が形成される。第3壁面455の平坦面4551は、図1,2に示すように、壁部44の天面441に対して傾斜を有し、テーパー状に形成されている。なお、壁部44の天面441と第3壁面455の平坦面4551とがなす角度は、約45度である。また、第3壁面455の曲面4552は、図1,2に示すように、キャビティ45の幅方向の外方に膨らみ凸状に成形された曲形状とされている。この曲面4552は、キャビティ45内の予め設定した基準点457(図12参照)から放射状に拡がった点の集合体からなる。このように、曲面4552は、基準点457を中心(中心点)とした球体の曲面(球面)であり、また、基準点457(図12参照)を中心とした球面の法線が面B1(図2,12に示す二点鎖線の仮想面)上に配される。ここでいう予め設定した基準点457は複数有り、複数の基準点457は、1つの面B1上に配され、面B1上において不図示の円形の線(無端状の平面視円形の線)となる。また、面B1は、ベース4の両主面42,43と同じ面方向とされ、図2に示すベース4の断面視を参照して、ベース4の両主面42,43と平行な面となる。また、曲面4552は、上記の通り、複数の基準点457(図12参照)を中心した曲面となり、基準点457を中心とした法線が面B1上に配されるので、キャビティ45では、面B1に沿った径が最大幅寸法となる。また、第3壁面455には、キャビティ45内に突出する突起部458が形成されている。突起部458の突起端縁4581は、曲面4552の端縁である。
【0031】
また、ベース4には、図3に示すように、水晶振動片2の励振電極31,32それぞれと電気機械的に接合する一対の電極パッド51,52と、外部部品や外部機器と電気的に接続する外部端子電極53,54と、電極パッド51と外部端子電極54、及び電極パッド52と外部端子電極53を電気的に接続させる配線パターン55とが形成されている。これら電極パッド51,52と外部端子電極53,54と配線パターン55とにより、ベース4の電極5が構成される。電極パッド51,52は、台座部46の表面に形成されている。また、2つの外部端子電極53,54は、図4に示すように、ベース4の他主面43において、長手方向の両端部にそれぞれ形成され、長手方向に沿って離間して並設されている。また、外部端子電極54の一隅部(外部端子電極53に対面する側の1つの隅部)には切り欠き部541が形成され、この切り欠き部541は、当該水晶振動子1の製造工程におけるベースの位置決めや、当該水晶振動子1を外部部品や外部機器へ搭載する際の位置決めを行うサポートの役割を果たす。
【0032】
電極パッド51,52は、第1接合層48と同様に、複数の層の積層構造からなり、ベース4の基板上に、第1スパッタ膜93と、第2スパッタ膜94と、第1メッキ膜95と、第2メッキ膜96と、第3メッキ膜97と、第4メッキ膜98とが順に積層されてなる。
【0033】
配線パターン55は、電極パッド51,52と外部端子電極53,54とを電気的に接続させるように、ベース4の一主面42から貫通孔49(下記参照)の内側面491を介してベース4の他主面43に形成されている。
【0034】
また、配線パターン55のうち貫通孔49およびその近傍に形成された部分と、基板の他主面43に形成された部分では、第1シード膜91と第2シード膜92とが、第1スパッタ膜93下の下層膜として形成されている。第1シード膜91はベース4上にスパッタリング法によりスパッタリング形成されたMoからなるMo膜であり、5〜10nmの厚みを有する。また、第2シード膜92は、第1シード膜91上にスパッタリング法によりスパッタリング形成されたCuからなるCu膜であり、0.3μmの厚みを有する。
【0035】
また、ベース4の一主面42では、配線パターン55は、第2シード膜92および基板上に、第1スパッタ膜93、第2スパッタ膜94、第1メッキ膜95、第2メッキ膜96、第3メッキ膜97、および第4メッキ膜98が順に積層されてなる。
【0036】
一方、ベース4の他主面43では、感光性を有する樹脂材からなる樹脂パターン61(下記参照)が、第2シード膜92、貫通孔49および基板上に形成されている。すなわち、ベース4の他主面43の一部(接触領域58,59)を除く全面に樹脂パターン61が形成されている。なお、樹脂パターン61が形成されていない他主面43の一部(接触領域58,59)には、図1に示すように、配線パターン55(第2シード膜92)が形成されている。そして、ベース4の他主面43の樹脂パターン61および接触領域58,59の第2シード膜92上に、第1スパッタ膜93、第2スパッタ膜94、第1メッキ膜95、第2メッキ膜96、第3メッキ膜97、および第4メッキ膜98が順に積層されて、外部端子電極53,54が構成されている。
【0037】
また、ベース4には、図1〜4に示すように、水晶振動片2の励振電極31,32を電極パッド51,52を介して配線パターン55により、キャビティ45内からキャビティ45外に導出させるための貫通孔49が形成されている。
【0038】
貫通孔49は、ベース4をフォトリソグラフィ法によりエッチングして成形する際、キャビティ45の成形と同時に形成され、図1〜図5に示すように、ベース4に2つの貫通孔49が両主面(一主面42、他主面43)間を貫通して形成されている。この貫通孔49の内側面491は、図5に示すように、平坦面494(内側面491の一部)と曲面495(内側面491の一部)とから構成され、ベース4(基材)の一主面42に連続して曲面495が形成され、ベース4(基材)の他主面43に連続して平坦面494が形成され、平坦面494に連続して曲面495が形成されている。本実施の形態1では、貫通孔49のアスペクト比(長さと幅の比率)は1.3(長さ:145μm、幅:110μm)である。
【0039】
平坦面494は、図5に示すように、ベース4の一主面42及び他主面43に対して傾斜を有し、テーパー状に形成されている。また、ベース4の一主面42と貫通孔49の内側面491の平坦面494とがなす角度は、約45度である。なお、本実施の形態1では、ベース4の一主面42と貫通孔49の内側面491とがなす角度θは、約45度であるが、これに限定されない。例えば、ベース4の一主面42と貫通孔49の内側面491とがなす角度θは、45度より大きく、具体例としては、70度〜90度であってもよい。
【0040】
また、曲面495は、図5に示すように、貫通孔49の幅方向の外方に膨らみ凸状に成形された曲形状とされている。この曲面495は、貫通孔49の孔内の予め設定した基準点499(図12参照)から放射状に拡がった点の集合体からなる。曲面495は、基準点499を中心(中心点)とした球体の曲面(球面)であり、また、基準点499(図12参照)を中心とした球面の法線が面B2(図5に示す二点鎖線の仮想面)上に配される。ここでいう予め設定した基準点499は複数有り、複数の基準点499は、1つの面B2上に配され、面B2上において不図示の円形の線(無端状の平面視円形の線)となる。また、面B2は、ベース4の両主面42,43と同じ面方向とされ、図5に示すベース4の断面視を参照して、ベース4の両主面42,43と平行な面となる。また、面B2は、ベース4の他主面43よりも一主面42に近い側に位置する。
【0041】
また、曲面495は、上記の通り、複数の基準点499(図12参照)を中心した曲面となるので、基準点499を中心とした法線が面B2上に配される。そのため、貫通孔49では、面B2に沿った径が最大幅寸法となる。
【0042】
また、貫通孔49の内側面491には、孔内に突出する2つの突起部498が形成されている。突起部498の突起端縁4981は、曲面495の端縁である。なお、本実施の形態1にかかる2つの突起部498は、それぞれ環状(図3,4に示す平面視の貫通孔49参照)に成形されている。また、2つの突起部498の間の貫通孔49の内側面491が、曲面495で形成されている。なお、本実施の形態1では、2つの突起部498を形成しているが、これに限定されるものではなく、複数個であればよい。
【0043】
貫通孔49は、図5に示すように、ベース4の他主面43の側にある貫通孔49の他端開口端493の径と、ベース4の一主面42の側にある貫通孔49の一端開口端492の径とが同じもしくは略同等となる。本実施の形態1では、貫通孔49の両開口端(一端開口端492と他端開口端493)の開口寸法比は0.9(一端開口端492:φ100μm、他端開口端493:φ110μm)である。
【0044】
このような貫通孔49の内側面491には、配線パターン55の一部である第1シード膜91および第2シード膜92が形成されている。さらに、貫通孔49の内部には、樹脂パターン61と同材料の樹脂材(便宜上符号61とする)が充填されている。この樹脂材61により貫通孔49が塞がれている。なお、樹脂材61では、図5に示すように、ベース4の一主面42の側の一端面が、ベース4の一主面42の表面と面一で、他主面43の側の他端面が、一主面42の側に凹むように形成されている。
【0045】
また、貫通孔61の内側面491に曲面495が含まれているため、貫通孔49の内部の樹脂材61が曲面495に沿って充填されるので、樹脂材が入り込んでアンカー効果が生じる。このようにアンカー効果を発揮することにより、樹脂材61及び貫通孔49の内側面491との間の密着性が確保されている。このように、樹脂材61が貫通孔49にくい込んでいる構成により、アンカー効果を得て、樹脂パターン61の貫通孔49への密着強度が向上する。
【0046】
上記のように、ベース4を構成する基材の他主面43には、外部端子電極53,54と配線パターン55と樹脂パターン61とが形成され、他主面43の基材および配線パターン55上に樹脂パターン61が積層され、配線パターン55および樹脂パターン61上に外部端子電極53,54が積層されている。そして、他主面43には、図4に示すように、外部電子電極53,54と配線パターン55とを接触させる接触領域58,59がそれぞれ1つ設けられ、これら接触領域58,59にて外部端子電極53,54と配線パターン55とが接触される(積層される)。つまり、接触領域58,59にて外部電子電極53,54と配線パターン55とが電気的に接続される。なお、図4に示すように、本実施の形態1では、樹脂パターン形成領域47内に接触領域58,59がそれぞれ1つ設けられているが、接触領域58,59の個数はこれに限定されるものではなく、樹脂パターン形成領域47内(外部端子電極53,54の積層下)に任意の個数の接触領域58,59をそれぞれ設けてもよい。
【0047】
また、樹脂材61や樹脂パターン61には、ポリベンズオキサゾール(PBO)が使用されている。なお、樹脂材61や樹脂パターン61は、ポリベンズオキサゾール(PBO)に限定されず、ベース4を構成する材料(例えば、ガラス材料)との密着性が良好な樹脂材をいずれも使用することができる。よって、樹脂パターン61を構成する樹脂材には、例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)、エポキシ、ポリイミド、又はフッ素系樹脂からなる樹脂材を使用してもよい。また、本実施の形態1で使用した樹脂パターン61を構成する樹脂材、即ち、ポリベンズオキサゾール(PBO)は、感光性を有する樹脂材であり、フォトリソグラフィ法によるパターン形成が可能な樹脂材である。ここで、本発明でいう感光性を有する樹脂材とは、感光性を有する樹脂からなる樹脂材の他、感光剤と樹脂とを含む感光性樹脂組成物を含む広い概念とする。
【0048】
蓋7は、ホウケイ酸ガラス等のガラス材料からなり、図1及び図6に示すように、頂部71と、蓋7の一主面72の外周に沿って頂部71から下方に延出した壁部73とから構成されている。このような蓋7は、直方体の一枚板の基材をウエットエッチングして成形される。
【0049】
蓋7の壁部73の両側面(内側面731及び外側面732)は、テーパー状に成形されている。また、壁部73には、ベース4と接合するための第2接合層74が形成されている。
【0050】
蓋7の第2接合層74は、図1に示すように、蓋7の壁部73の天面733から外側面732にかけて形成されている。この第2接合層74は、TiからなるTi膜(図示省略)が形成され、Ti膜の上にAuからなるAu膜(図示省略)が形成された複数の積層構造からなり、これらTi膜及びAu膜は、スパッタリング法によりスパッタリング形成されている。なお、本実施の形態1では、Ti膜及びAu膜とから第2接合層74を構成しているが、Au膜の代わりにCuからなるCu膜を用いてもよい。
【0051】
上記のベース4と蓋7とを接合させるための接合材12は、蓋7の第2接合層74に積層されている。この接合材12は、蓋7の第2接合層74の上にAuとSnとの合金からなるAu/Sn膜(図示省略)がメッキ形成され、このAu/Sn膜の上にAu膜(図示省略)がメッキ形成された複数の積層構造からなる。なお、Au膜は、Auストライクメッキ膜がメッキ形成され、Auストライクメッキ膜の上にAuメッキ膜がメッキ形成された複数の層の積層構造からなる。このような接合材12では、Au/Sn膜が、加熱により溶融して、AuSn合金膜となる。なお、接合材12は、蓋7の第2接合層74の上にAuSn合金膜をメッキ形成することにより構成されたものであってもよい。また、本実施の形態1において、接合材12は、蓋7の第2接合層74に積層されているが、ベース4の第1接合層48に積層されていてもよい。
【0052】
水晶振動片2は、異方性材料の水晶片である水晶素板(図示省略)から、ウエットエッチング形成された水晶Z板である。
【0053】
この水晶振動片2は、図7に示すように、振動部である2本の脚部21,22と、基部23と、ベース4の電極パッド51,52に接合される接合部24とから構成されており、基部23の一端面231に2本の脚部21,22が突出して設けられ、基部23の他端面232に接合部24が突出して設けられた圧電振動素板20からなる。
【0054】
基部23は、図7に示すように、平面視左右対称形状とされている。また、基部23の側面233は、一端面231の側の部位が一端面231と同一幅で、他端面232の側の部位が一端面231の側から他端面232の側にかけて漸次幅狭になるように形成されている。
【0055】
2本の脚部21,22は、図7に示すように、基部23の一端面231から、同一方向に突出して設けられている。これら2本の脚部21,22の先端部211,221は、脚部21,22の他の部位と比べて幅広(突出方向に対して直交する方向に幅広)に形成され、さらに、それぞれの先端隅部は曲面形成されている。また、2本の脚部21,22の両主面には、CI値を改善させるために、溝部25が形成されている。
【0056】
接合部24は、図7に示すように、基部23の他端面232の幅方向の中央部から突出して設けられている。この接合部24は、基部23の他端面232に対して平面視垂直方向に突出した短辺部241と、短辺部241の先端部と連なり基部23の幅方向に延出する長辺部242とから構成され、長辺部242の先端部243は、基部23の幅方向に向いている。すなわち、接合部24は、平面視直角に折曲された平面視L字状に成形されている。また、接合部24には、ベース4の電極パッド51,52と導電性バンプ13を介して接合される2つの接合箇所27が設けられている。
【0057】
上記した構成からなる水晶振動片2には、異電位で構成された第1及び第2の励振電極31,32と、これら第1及び第2の励振電極31,32をベース4の電極パッド51,52に電気的に接合させるために第1及び第2励振電極31,32から引き出された引出電極33,34とが形成されている。
【0058】
また、第1及び第2の励振電極31,32の一部は、脚部21,22の溝部25の内部に形成されている。このため、水晶振動片2を小型化しても脚部21,22の振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。
【0059】
第1の励振電極31は、一方の脚部21の両主面と、他方の脚部22の両側面及び先端部221の両主面とに形成されている。同様に、第2の励振電極32は、他方の脚部22の両主面と、一方の脚部21の両側面及び先端部211の両主面に形成されている。
【0060】
また、引出電極33,34は、基部23及び接合部24に形成されており、基部23に形成された引出電極33により、一方の脚部21の両主面に形成された第1の励振電極31が、他方の脚部22の両側面及び先端部221の両主面に形成された第1の励振電極31に繋げられ、基部23に形成された引出電極34により、他方の脚部22の両主面に形成された第2の励振電極32が、一方の脚部21の両側面及び先端部211の両主面に形成された第2の励振電極32に繋げられている。
【0061】
なお、基部23には、圧電振動素板20の両主面を貫通する2つの貫通孔26が形成されており、これら貫通孔26内には、導電性材料が充填されている。これらの貫通孔26を介して、引出電極33,34が基部23の両主面間に引回されている。
【0062】
上記構成からなる水晶振動子1では、図1に示すように、ベース4の一主面42に形成された台座部46に水晶振動片2の接合部24が導電性バンプ13を介してFCB法により電気機械的に超音波接合される。この接合により、水晶振動片2の励振電極31,32が、引出電極33,34と、導電性バンプ13とを介してベース4の電極パッド51,52に電気機械的に接合され、ベース4に水晶振動片2が搭載される。そして、水晶振動片2が搭載されたベース4に、蓋7がFCB法により仮接合され、その後、真空雰囲気下で加熱されることにより、接合材12と第1接合層48と第2接合層74とが溶融し、これにより、ベース4の第1接合層48に蓋7の第2接合層74が接合材12を介して接合されて、水晶振動片2を気密封止した水晶振動子1が製造される。なお、導電性バンプ13には、非流動性部材のメッキバンプが用いられている。
【0063】
次に、この水晶振動子1及びベース4の製造方法について図8〜図20を用いて説明する。
【0064】
本実施の形態1では、ベース4を多数個形成するガラス材料からなる一枚板のウエハ8を用いる。
【0065】
まず、ウエハ8の両主面81,82に、図8に示すように、CrからなるMo膜910(もしくはCr膜)をスパッタ形成し、Mo膜910上にAuからなるAu膜911をスパッタ形成し、Au膜911上にレジストをディップコート法により塗布して、ポジレジスト層912を形成する。
【0066】
ポジレジスト層912を形成した後、キャビティ45を構成するための凹部459(以下、キャビティ45の凹部459という)と、貫通孔49の平坦面494を構成するための凹部496(以下、貫通孔94の凹部496という)とを形成するために、ウエハ8の両主面81,82のポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行い、露出したMo膜910とAu膜911とをメタルエッチングして、図9に示すように、所定のパターン(台座部46を含むキャビティ45と、貫通孔49の平坦面494を構成するための凹部496)を形成する。
【0067】
図9に示す所定のパターンを形成した後に、フォトリソグラフィ技術を用いたウェットエッチング法によりウエハ8をエッチングして、図10に示すように、ウエハ8に、キャビティ45の凹部459と、貫通孔94の凹部496とを形成したベース4とを多数個成形する。
【0068】
なお、図10に示すキャビティ45の凹部459の内側の底面は、面B1(図2に示す二点鎖線の仮想面)を設定するための基準面となる。また、キャビティ45の凹部459の内側面は平坦面とされているが、これに限定されるものではなく、ウエハ8の一主面81(ベース4の一主面42参照)に対してテーパー状に形成されたテーパー面であればよい。そのため、テーパー面には、ウエットエッチングのエッチング方向に膨らむ曲面が少なくとも一部に含まれてもよい。
【0069】
また、図10に示す貫通孔49の凹部496の内側の底面は、面B2(図5に示す二点鎖線の仮想面)を設定するための基準面となる。また、貫通孔49の凹部496の内側面は平坦の面(平坦面494)とされているが、これに限定されるものではなく、ウエハ8の他主面82(ベース4の他主面43参照)に対してテーパー状に形成されたテーパー面であればよい。そのため、テーパー面には、ウエットエッチングのエッチング方向に膨らむ曲面が少なくとも一部に含まれてもよい。
【0070】
ウエハ8に、キャビティ45の凹部459と、貫通孔49の凹部496を形成した後に、図11に示すように、ポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去して、ウエハ8素板にする。
【0071】
図11に示すウエハ8に対して、キャビティ45と貫通孔49とベース4の他主面43の外周縁とを形成するために、ウエハ8の両主面81,82に、新たなMo膜910をスパッタ形成し、Mo膜910上に新たなAu膜911をスパッタ形成し、Au膜911上にレジストを電着コート法(もしくはスプレーコート法)により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。本実施の形態1では、新たなポジレジスト層912を形成するために、電着コート法(もしくはスプレーコート法)を用いているため、キャビティ45の凹部459の内面4592(内側面および内側の底面)および、貫通孔49の凹部496の内面497(内側面および内側の底面)にまで新たなポジレジスト層912を形成することができる。
【0072】
そして、新たなポジレジスト層912を形成した後、キャビティ45と貫通孔49とベース4の他主面43の外周縁とを成形するために、ウエハ8の両主面81,82のポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行い、露出したMo膜910とAu膜911とをエッチングして、図12に示すように、所定のパターン(キャビティ45と貫通孔49とベース4の他主面43の外周縁)を形成する。
【0073】
この時、キャビティ45の凹部459では、内側の底面の外周縁部を除き、中央部を含む部分のポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去している。なお、ここでいうキャビティ45の凹部459の内側の底面上に形成されたポジレジスト層912(Mo膜910とAu膜911も含む)から露出した露出端縁(図12の符号457で示すポイント参照)が、上記の複数の基準点457で構成される線(無端状の平面視円形の線)となる。複数の基準点457は、面B1(図12に示す二点鎖線の仮想面)上にある。
【0074】
また、貫通孔49の凹部496では、内側の底面の中央部のみのポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去している。なお、ここでいう貫通孔49の凹部496の内側の底面上に形成されたポジレジスト層912(Mo膜910とAu膜911も含む)から露出した中央部の露出端縁(図12の符号499で示すポイント参照)が、上記の複数の基準点499で構成される線(無端状の平面視円形の線)となる。複数の基準点499は、面B2(図12に示す二点鎖線の仮想面)上にある。
【0075】
図12に示す所定のパターンを形成した後に、フォトリソグラフィ技術を用いたウェットエッチング法によりエッチングして、図13に示すように、ウエハ8に、キャビティ45と貫通孔49と他主面43の外周縁とを形成したベース4を多数個成形する。
【0076】
ウエハ8に、キャビティ45と貫通孔49と他主面43の外周縁とを形成した後に、図14に示すように、ポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去して、複数のベース4を成形したウエハ8素板にする。ここまでのウエハ8のエッチング形成工程が本発明でいう形成工程に対応する。なお、出願時において、水晶振動子1(ベース4)が小型化されたベース4における曲面495の形成に物理的なエッチング(ドライエッチングなど)を用いることは、面形成の精度や費用の面から考えられていない。
【0077】
そして、図14に示すウエハ8に対して、ウエハ8(両主面81,82や貫通孔49の内側面491など)に、MoからなるMo層(第1シード膜91)をスパッタリング法によりスパッタリング形成する。第1シード膜91の形成後に、第1シード膜91上に、CuからなるCu層(第2シード膜92)をスパッタリング法によりスパッタリング形成する。
【0078】
第1シード膜91及び第2シード膜92を形成した後、第2シード膜92上にレジストをディップコート法により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。その後、貫通孔49の内側面491およびその近傍と、ベース4の他主面43の配線パターンとに対応した所定のパターンを形成するために、ポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行い、その後、露光および現像により露出した部分に対して、第1シード膜91と第2シード膜92とをメタルエッチングする。第1シード膜91と第2シード膜92とのメタルエッチング後に、ポジレジスト層912を剥離除去する(図15参照)。ここで形成した第1シード膜91および第2シード膜92により、図1に示すベース4の配線パターン55の一部を構成する。
【0079】
図15に示すウエハ8に対して、レジストをディップコート法により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する(図示省略)。その後、貫通孔49の内側面491およびその近傍と、ベース4の他主面43の所定のパターンを形成するために、ポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行う。その後、Cuからなる樹脂層をウエハ8の両主面81,82にメッキ形成する。樹脂層を形成した後に、ポジレジスト層912を剥離除去して、図16に示すように、貫通孔49およびベース4の他主面43に樹脂パターン61を形成する。
【0080】
樹脂パターン61を形成した後に、ウエハ8の両主面81,82に、MoからなるMo層(第1スパッタ膜93)をスパッタリング法によりスパッタリング形成する。第1スパッタ膜93の形成後に、第1スパッタ膜93上に、CuからなるCu層(第2スパッタ膜94)をスパッタリング法によりスパッタリング形成する(図17参照)。
【0081】
第1スパッタ膜93及び第2スパッタ膜94を形成した後、第2シード膜92上にレジストをディップコート法により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。その後、第1メッキ層95〜第4メッキ層98を形成するために、第1メッキ層95〜第4メッキ層98に対応した所定のパターンのポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行う(図18参照)。
【0082】
ポジレジスト層912の露光及び現像を行った後に、ウエハ8の両主面81,82に第1メッキ層95を形成し、第1メッキ層95上に第2メッキ層96を形成し、第2メッキ層96上に第3メッキ層97を形成し、第3メッキ層97上に第4メッキ層98を形成する(図19参照)。
【0083】
図19に示すように、第1メッキ層95〜第4メッキ層98を形成した後に、ポジレジスト層912およびポジレジスト層912下の第1スパッタ膜93と第2スパッタ膜94とを除去して、ベース4をウエハ8に多数個形成する(図20参照)。ここで形成した第1スパッタ膜93、第2スパッタ膜94、第1メッキ層95〜第4メッキ層98により、図1に示すベース4の電極パッド51,52、配線パターン55の一部、および第1接合層48を構成する。
【0084】
ベース4をウエハ8に多数個形成した後、多数個のべース4を個別分割して多数個のベース4を個片化し、多数個の図2に示すベース4を製造する。
【0085】
そして、図2に示すベース4に、切り欠き部541の位置に基づいて図7に示す水晶振動片2を配し、導電性バンプ13を介してベース4に水晶振動片2をFCB法により電気機械的に超音波接合して、ベース4に水晶振動片2を搭載保持する。また、別工程で、図6に示す蓋7の第2接合層74上に接合材12を積層する。その後、水晶振動片2を搭載保持したベース4に蓋7を配し、ベース4の第1接合層48と蓋7の第2接合層74とを接合材12を介してFCB法により電気機械的に超音波接合して、図1に示す水晶振動子1を製造する。
【0086】
本実施の形態1にかかる水晶振動子1、およびベース4、ベース4の製造方法によれば、キャビティ45の壁面451に曲面(第2壁面454,第3壁面455)が含まれるので、上記の従来技術のようなキャビティの壁面全てがテーパー形成された形態に対して、キャビティ45における水晶振動片2の実装領域を増やすことができる。ここでいう曲面(第2壁面454,第3壁面455)は、キャビティ45の幅方向外方に膨らむ面であり、キャビティ45内の予め設定した基準点457から放射状に拡がった点の集合体からなる。また、基準点457は複数有り、複数の基準点は1つの面B1上に配される。
【0087】
また、本実施の形態1にかかる水晶振動子1、およびベース4、ベース4の製造方法によれば、貫通孔49の内側面491に曲面495が含まれるので、上記の従来技術のような内側面全てがテーパー形成された貫通孔に対して、貫通孔49の両方の開口端(一端開口端492,他端開口端493)の幅を狭くしても貫通孔49を形成することができる。その結果、貫通孔49の開口端(一端開口端492,他端開口端493)を小さくして、ベース4の両主面42,43において49の開口端(一端開口端492,他端開口端493)が占める占有面積を小さくすることができる。また、本実施の形態1によれば、貫通孔49に充填する部材に対してアンカー効果を生じさせることができる。特に、曲面によるアンカー効果は、平坦面によるアンカー効果よりも有効である。
【0088】
また、貫通孔49の内側面491に2つの突起部498が形成され、突起部498の突起端縁4981は、曲面495の端縁であるので、突起端縁4981および曲面495により貫通孔49に充填する部材に対して効率よくアンカー効果を生じさせることができる。
【0089】
また、2つの突起部498の間に曲面495が形成されるので、ベース4(基材)の両主面42,43に直交する直交方向(両方向)に対して2つの突起部498および曲面495によりアンカー効果を生じさせることができる。
【0090】
また、ベース4(基材)の一主面42に連続して貫通孔49の曲面495が形成され、ベース4(基材)の他主面43に連続して貫通孔49のテーパー状の平坦面494が形成され、平坦面494に連続して曲面495が形成されるので、ベース4の両主面42,43において49の開口端(一端開口端492,他端開口端493)が占める占有面積を小さくすることができるだけでなく、曲面495により貫通孔49に充填する部材がベース4(基材)の一主面42から出るのを抑えることができる。また、ベース4(基材)の他主面43に連続して平坦面494が形成されるので、平坦面494から貫通孔49に充填物(本実施の形態1では、樹脂材61)を充填することで、貫通孔49への充填物の充填を容易にすることができる。
【0091】
なお、本実施の形態1に係る水晶振動子1において、樹脂材61は、貫通孔49の内側面の第1シード膜91および第2シード膜92にメッキ形成されたCuメッキ層により構成されているが、樹脂材61は、貫通孔49に導電性材料を充填して構成されるものであれば、これに限定されるものではない。つまり、樹脂材61は、貫通孔49に金属ペースト(導電性フィラーの添加されたペースト状樹脂材)を充填することにより構成されてもよい。
【0092】
また、本実施の形態1に係る水晶振動子1のベース4では、第1シード膜91をMo膜で構成しているが、これに限定されるものではなく、Mo膜の代わりにTiからなるTi膜を用いてもよい。
【0093】
また、本実施の形態1では、ベース4及び蓋7の材料としてガラスを用いているが、ベース4及び蓋7は、いずれも、ガラスを用いて構成されたものに限定されるものではなく、等方性材料であればよい。
【0094】
また、本実施の形態1では、接合材12として、主にAuSnを用いているが、接合材12は、ベース4と蓋7とを接合させることができるものであれば特に限定されず、例えば、CuSn等のSn合金ろう材を用いて構成されたものであってもよい。
【0095】
また、上記した実施の形態1に係る水晶振動子1では、水晶振動片として、図7に示す音叉型水晶振動片2を使用したが、ATカット水晶振動片を使用してもよい。
【0096】
また、本実施の形態1に係るベース4に、水晶振動片2に加えて、ICチップを搭載し、発振器を構成してもよい。ベース4にICチップを搭載する場合には、ICチップの電極構成に合わせた電極がベース4に形成される。
【0097】
また、本実施の形態1では、2端子の水晶振動子1を用いているが、これに限定されるものではなく、4端子の水晶振動子1にも適用できる。
【0098】
また、本実施の形態1では、壁部44の天面441と第1壁面453や第3壁面455とがなす角度θは、約45度であるが、これに限定されない。例えば、壁部44の天面441と第1壁面453や第3壁面455とがなす角度θは、45度より大きく、具体例としては、70度〜90度であってもよい。
【0099】
また、本実施の形態1では、台座部46上に立ち上げ形成された第1壁面453が、テーパー状に形成された平坦面とされているが、これに限定されるものではなく、曲面を有してもよい。そこで、第1壁面453に曲面を含めた形態を実施の形態2として、以下に図面を用いて説明する。
【0100】
<実施の形態2>
次に、本実施の形態2にかかる水晶振動子1を図面を用いて説明する。なお、本実施の形態2にかかる水晶振動子1は、上記の実施の形態1に対して、ベース4のキャビティ45の形状が異なる。そのため、同一構成による作用効果及び変形例は、上記の実施の形態1と同様の作用効果及び変形例を有する。そこで、本実施の形態2では、上記の実施の形態1と異なる構成(ベース4のキャビティ45)について説明し、同一の構成についての説明を省略する。
【0101】
本実施の形態2に係る水晶振動子1には、図21に示すように、図7に示す水晶振動片2と、図22に示すベース4と、図6に示す蓋7とが設けられている。
【0102】
以下、上記の実施の形態1と異なる構成であるベース4のキャビティ45について、図21〜23を用いて説明する。
【0103】
ベース4の一主面42には、底部41と壁部44とによって囲まれた平面視長方形のキャビティ45が成形されている。キャビティ45には、その長手方向の一端部452の全体に沿って台座部46がエッチング成形されている。
【0104】
キャビティ45の壁面451は、壁部44の内側面であり、キャビティ45は、ベース4をフォトリソグラフィ法によりエッチングして成形する際、下記の貫通孔49の成形と同時に形成される。このキャビティ45の壁面451は、図21〜23に示すように、平坦面(壁面451の一部)と曲面(壁面451の一部)とから構成されている。具体的には、壁面451は、台座部46上に立ち上げ形成された第1壁面453と、キャビティ45の底面456(一主面42)上に立ち上げ形成された、台座部46の壁面となる第2壁面454と、キャビティ45の底面456(一主面42)上に立ち上げ形成され、第1壁面453,第2壁面454以外の壁面となる第3壁面455とから構成される。
【0105】
第1壁面453は、平坦面4531と曲面4532とから構成され、台座部46の主面461に連続して曲面4532が形成され、曲面4532に連続して平坦面4531が形成され、平坦面4531に連続して壁部44の天面441が形成される。第1壁面453の平坦面4531は、図21〜23に示すように、壁部44の天面441に対して傾斜を有し、テーパー状に形成されている。なお、壁部44の天面441と第1壁面453の平坦面4531とがなす角度は、約45度である。また、第1壁面453の曲面4532は、図21,22に示すように、キャビティ45の幅方向の外方に膨らみ凸状に成形された曲形状とされている。この曲面4532は、キャビティ45内の予め設定した基準点4571(図29参照)から放射状に拡がった点の集合体からなる。このように、曲面4532は、基準点4571を中心(中心点)とした球体の曲面(球面)であり、また、基準点4571(図29参照)を中心とした球面の法線が面B3(図22,29に示す二点鎖線の仮想面)上に配される。ここでいう予め設定した基準点4571は複数有り、複数の基準点4571は、1つの面B3上に配され、面B3上において不図示の円形の線(無端状の平面視円形の線)となる。また、面B3は、ベース4の両主面42,43と同じ面方向とされ、図22に示すベース4の断面視を参照して、ベース4の両主面42,43と平行な面となる。また、曲面4532は、上記の通り、複数の基準点4571(図29参照)を中心した曲面となり、基準点4571を中心とした法線が面B3上に配されるので、キャビティ45では、面B3に沿った径が最大幅寸法となる。また、第1壁面453には、キャビティ45内に突出する突起部458が形成されている。突起部458の突起端縁4581は、曲面4532の端縁である。
【0106】
第2壁面454は、曲面であり、図21,22に示すように、キャビティ45の幅方向の外方に膨らみ凸状に成形された曲形状とされている。この曲面は、キャビティ45内の予め設定した基準点4572(図35参照)から放射状に拡がった点の集合体からなる。このように、第2壁面454は、基準点4572を中心(中心点)とした球体の曲面(球面)であり、また、基準点4572(図35参照)を中心とした球面の法線が面B4(図22,35に示す二点鎖線の仮想面)上に配される。ここでいう予め設定した基準点4572は複数有り、複数の基準点4572は、1つの面B4上に配され、面B4上において不図示の円形の線(無端状の平面視円形の線)となる。また、面B4は、ベース4の両主面42,43と同じ面方向とされ、図22に示すベース4の断面視を参照して、ベース4の両主面42,43と平行な面となる。また、第2壁面454は、上記の通り、複数の基準点4572(図35参照)を中心した曲面となり、基準点4572を中心とした法線が面B4上に配されるので、キャビティ45では、面B4に沿った径が最大幅寸法となり、台座部46の主面461は、上記の面B4上にあり、台座部46の主面461と第2壁面454との角度が直角となる。
【0107】
第3壁面455は、平坦面4551と曲面4552とから構成されている。曲面4552は、第1曲面4553と第2曲面4554とからなる。第3壁面455に関して、キャビティ45の底面456(一主面42)に連続して第2曲面4554が形成され、第2曲面4554に連続して第1曲面4553が形成され、第1曲面4553に連続して平坦面4551が形成され、平坦面4551に連続して壁部44の天面441が形成される。
【0108】
第3壁面455の平坦面4551は、図1,2に示すように、壁部44の天面441に対して傾斜を有し、テーパー状に形成されている。なお、壁部44の天面441と第3壁面455の平坦面4551とがなす角度は、約45度である。
【0109】
第3壁面455の第1曲面4553は、図21,22に示すように、キャビティ45の幅方向の外方に膨らみ凸状に成形された曲形状とされている。この第1曲面4553は、キャビティ45内の予め設定した基準点4571(図29参照)から放射状に拡がった点の集合体からなる。このように、第1曲面4553は、基準点4571を中心(中心点)とした球体の曲面(球面)であり、また、基準点4571(図29参照)を中心とした球面の法線が面B3(図22,29に示す二点鎖線の仮想面)上に配される。ここでいう予め設定した基準点4571は複数有り、複数の基準点4571は、1つの面B3上に配され、面B3上において不図示の円形の線(無端状の平面視円形の線)となる。また、面B3は、ベース4の両主面42,43と同じ面方向とされ、図22に示すベース4の断面視を参照して、ベース4の両主面42,43と平行な面となる。また、第1曲面4553は、上記の通り、複数の基準点4571(図29参照)を中心した曲面となり、基準点4571を中心とした法線が面B3上に配されるので、キャビティ45では、面B3に沿った径が最大幅寸法となる。
【0110】
第3壁面455の第2曲面4554は、図21,22に示すように、キャビティ45の幅方向の外方に膨らみ凸状に成形された曲形状とされている。この第2曲面4554は、キャビティ45内の予め設定した基準点4572(図35参照)から放射状に拡がった点の集合体からなる。このように、第2曲面4554は、基準点4572を中心(中心点)とした球体の曲面(球面)であり、また、基準点4572(図35参照)を中心とした球面の法線が面B4(図22,35に示す二点鎖線の仮想面)上に配される。ここでいう予め設定した基準点4572は複数有り、複数の基準点4572は、1つの面B4上に配され、面B4上において不図示の円形の線(無端状の平面視円形の線)となる。また、面B4は、ベース4の両主面42,43と同じ面方向とされ、図22に示すベース4の断面視を参照して、ベース4の両主面42,43と平行な面となる。また、第2曲面4554は、上記の通り、複数の基準点4572(図35参照)を中心した曲面となり、基準点4572を中心とした法線が面B4上に配されるので、キャビティ45では、面B4に沿った径が最大幅寸法となる。
【0111】
また、第3壁面455には、キャビティ45内に突出する突起部458が2つ形成されている。2つの突起部458の突起端縁4581は、第1曲面4553と第2曲面4554との端縁である。
【0112】
次に、ベース4の製造方法について図24〜図43を用いて説明する。
【0113】
本実施の形態2では、ベース4を多数個形成するガラス材料からなる一枚板のウエハ8を用いる。
【0114】
まず、ウエハ8の両主面81,82に、図24に示すように、CrからなるMo膜910(もしくはCr膜)をスパッタ形成し、Mo膜910上にAuからなるAu膜911をスパッタ形成し、Au膜911上にレジストをディップコート法により塗布して、ポジレジスト層912を形成する。
【0115】
ポジレジスト層912を形成した後、キャビティ45を構成するための凹部459(以下、キャビティ45の凹部459という)を形成するために、ウエハ8の一主面81のポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行い、露出したMo膜910とAu膜911とをメタルエッチングして、図25に示すように、所定のパターン(キャビティ45の凹部459)を形成する。
【0116】
図25に示す所定のパターンを形成した後に、フォトリソグラフィ技術を用いたウェットエッチング法によりウエハ8をエッチングして、図26に示すように、ウエハ8に、キャビティ45の凹部459を形成したベース4とを多数個成形する。
【0117】
なお、図26に示すキャビティ45の凹部459の内側の底面は、面B3(図22に示す二点鎖線の仮想面)を設定するための基準面となる。また、キャビティ45の凹部459の内側面は平坦面とされているが、これに限定されるものではなく、ウエハ8の一主面81(ベース4の一主面42参照)に対してテーパー状に形成されたテーパー面であればよい。そのため、テーパー面には、ウエットエッチングのエッチング方向に膨らむ曲面が少なくとも一部に含まれてもよい。
【0118】
ウエハ8に、キャビティ45の凹部459を形成した後に、図27に示すように、ポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去して、ウエハ8素板にする。
【0119】
図27に示すウエハ8に対して、ウエハ8の両主面81,82に、図28に示すように、CrからなるMo膜910をスパッタ形成し、Mo膜910上にAuからなるAu膜911をスパッタ形成し、Au膜911上にレジストを電着コート法(もしくはスプレーコート法)により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。本実施の形態2では、新たなポジレジスト層912を形成するために、電着コート法(もしくはスプレーコート法)を用いているため、キャビティ45の凹部459の内面4592(内側面および内側の底面)にまで新たなポジレジスト層912を形成することができる。
【0120】
ポジレジスト層912を形成した後、キャビティ45(台座部46)を形成するために、ウエハ8の一主面81のポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行い、露出したMo膜910とAu膜911とをメタルエッチングして、図29に示すように、所定のパターン(台座部46を含むキャビティ45)を形成する。
【0121】
ここでいうキャビティ45の凹部459の内側の底面上に形成されたポジレジスト層912(Mo膜910とAu膜911も含む)から露出した露出端縁(図29の符号4571で示すポイント参照)が、上記の複数の基準点4571で構成される線(無端状の平面視円形の線)となる。なお、複数の基準点4571は、面B3(図22に示す二点鎖線の仮想面)上にある。
【0122】
図29に示す所定のパターンを形成した後に、フォトリソグラフィ技術を用いたウェットエッチング法によりウエハ8をエッチングして、図30に示すように、ウエハ8に、台座部46(主面461)と第1壁面453(平坦面4531,曲面4532)と第3壁面455の平坦面4551,第1曲面4553とを形成したベース4とを多数個成形する。
【0123】
ウエハ8に、台座部46(主面461)と第1壁面453と第3壁面455の平坦面4551,第1曲面4553とを形成した後に、図31に示すように、ポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去して、ウエハ8素板にする。
【0124】
図31に示すウエハ8に対して、ウエハ8の両主面81,82に、図32に示すように、CrからなるMo膜910をスパッタ形成し、Mo膜910上にAuからなるAu膜911をスパッタ形成し、Au膜911上にレジストを電着コート法(もしくはスプレーコート法)により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。本実施の形態2では、新たなポジレジスト層912を形成するために、電着コート法(もしくはスプレーコート法)を用いているため、キャビティ45の凹部459にまで新たなポジレジスト層912を形成することができる。
【0125】
ポジレジスト層912を形成した後、キャビティ45と、貫通孔49の平坦面494を構成するための凹部496(以下、貫通孔94の凹部496という)とを形成するために、ウエハ8の両主面81,82のポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行い、露出したMo膜910とAu膜911とをメタルエッチングして、図33に示すように、所定のパターン(キャビティ45の凹部459と、貫通孔49の凹部496)を形成する。
【0126】
図33に示す所定のパターンを形成した後に、フォトリソグラフィ技術を用いたウェットエッチング法によりウエハ8をエッチングして、ウエハ8に、キャビティ45の凹部459と、貫通孔94の凹部496とを形成したベース4(図34参照)を多数個成形する。
【0127】
なお、キャビティ45の凹部459の内側の底面(図34参照)は、面B4(図22に示す二点鎖線の仮想面)を設定するための基準面となる。また、キャビティ45の凹部459の内側面は平坦面とされているが、これに限定されるものではなく、ウエハ8の一主面81(ベース4の一主面42参照)に対してテーパー状に形成されたテーパー面であればよい。そのため、テーパー面には、ウエットエッチングのエッチング方向に膨らむ曲面が少なくとも一部に含まれてもよい。
【0128】
また、貫通孔49の凹部496の内側の底面(図34参照)は、面B2(図22に示す二点鎖線の仮想面)を設定するための基準面となる。また、貫通孔49の凹部496の内側面は平坦の面(平坦面494)とされているが、これに限定されるものではなく、ウエハ8の他主面82(ベース4の他主面43参照)に対してテーパー状に形成されたテーパー面であればよい。そのため、テーパー面には、ウエットエッチングのエッチング方向に膨らむ曲面が少なくとも一部に含まれてもよい。
【0129】
ウエハ8に、キャビティ45の凹部459と、貫通孔49の凹部496とを形成した後に、図34に示すように、ポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去して、ウエハ8素板にする。
【0130】
図34に示すウエハ8に対して、キャビティ45と貫通孔49とベース4の他主面43の外周縁とを形成するために、ウエハ8の両主面81,82に、新たなMo膜910をスパッタ形成し、Mo膜910上に新たなAu膜911をスパッタ形成し、Au膜911上にレジストを電着コート法(もしくはスプレーコート法)により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。本実施の形態2では、新たなポジレジスト層912を形成するために、電着コート法(もしくはスプレーコート法)を用いているため、キャビティ45の凹部459の内面4592(内側面および内側の底面)および、貫通孔49の凹部496の内面497(内側面および内側の底面)にまで新たなポジレジスト層912を形成することができる。
【0131】
そして、新たなポジレジスト層912を形成した後、キャビティ45と貫通孔49とベース4の他主面43の外周縁とを成形するために、ウエハ8の両主面81,82のポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行い、露出したMo膜910とAu膜911とをエッチングして、図35に示すように、所定のパターン(キャビティ45と貫通孔49とベース4の他主面43の外周縁)を形成する。この時、キャビティ45の凹部459では、内側の底面の外周縁部を除き、中央部を含む部分のポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去している。また、貫通孔49の凹部496では、内側の底面の中央部のみのポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去している。
【0132】
ここでいうキャビティ45の凹部459の内側の底面上に形成されたポジレジスト層912(Mo膜910とAu膜911も含む)から露出した露出端縁(図35の符号4572で示すポイント参照)が、上記の複数の基準点4572で構成される線(無端状の平面視円形の線)となる。なお、複数の基準点4572は、面B4(図22に示す二点鎖線の仮想面)上にある。
【0133】
また、貫通孔49の凹部496の内側の底面上に形成されたポジレジスト層912(Mo膜910とAu膜911も含む)から露出した中央部の露出端縁(図35の符号499で示すポイント参照)が、上記の複数の基準点499で構成される線(無端状の平面視円形の線)となる。なお、複数の基準点499は、面B2(図22に示す二点鎖線の仮想面)上にある。
【0134】
図35に示す所定のパターンを形成した後に、フォトリソグラフィ技術を用いたウェットエッチング法によりエッチングして、図36に示すように、ウエハ8に、キャビティ45と貫通孔49と他主面43の外周縁とを形成したベース4を多数個成形する。
【0135】
ウエハ8に、キャビティ45と貫通孔49と他主面43の外周縁とを形成した後に、図37に示すように、ポジレジスト層912とMo膜910とAu膜911を剥離除去して、複数のベース4を成形したウエハ8素板にする。ここまでのウエハ8のエッチング形成工程が本発明でいう形成工程に対応する。なお、出願時において、水晶振動子1(ベース4)が小型化されたベース4における曲面(キャビティ45や貫通孔49の曲面)の形成に物理的なエッチング(ドライエッチングなど)を用いることは、面形成の精度や費用の面から考えられていない。
【0136】
そして、図37に示すウエハ8に対して、ウエハ8(両主面81,82や貫通孔49の内側面491など)に、MoからなるMo層(第1シード膜91)をスパッタリング法によりスパッタリング形成する。第1シード膜91の形成後に、第1シード膜91上に、CuからなるCu層(第2シード膜92)をスパッタリング法によりスパッタリング形成する。
【0137】
第1シード膜91及び第2シード膜92を形成した後、第2シード膜92上にレジストをディップコート法により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。その後、貫通孔49の内側面491およびその近傍と、ベース4の他主面43の配線パターンとに対応した所定のパターンを形成するために、ポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行い、その後、露光および現像により露出した部分に対して、第1シード膜91と第2シード膜92とをメタルエッチングする。第1シード膜91と第2シード膜92とのメタルエッチング後に、ポジレジスト層912を剥離除去する(図38参照)。ここで形成した第1シード膜91および第2シード膜92により、図21に示すベース4の配線パターン55の一部を構成する。
【0138】
図38に示すウエハ8に対して、レジストをディップコート法により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。その後、貫通孔49の内側面491およびその近傍と、ベース4の他主面43の所定のパターンを形成するために、ポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行う。その後、Cuからなる樹脂層61をウエハ8の両主面81,82にメッキ形成する。樹脂層61を形成した後に、ポジレジスト層912を剥離除去して、図39に示すように、貫通孔49およびベース4の他主面43に樹脂パターン61を形成する。
【0139】
樹脂パターン61を形成した後に、ウエハ8の両主面81,82に、MoからなるMo層(第1スパッタ膜93)をスパッタリング法によりスパッタリング形成する。第1スパッタ膜93の形成後に、第1スパッタ膜93上に、CuからなるCu層(第2スパッタ膜94)をスパッタリング法によりスパッタリング形成する(図40参照)。
【0140】
第1スパッタ膜93及び第2スパッタ膜94を形成した後、第2シード膜92上にレジストをディップコート法により塗布して、新たなポジレジスト層912を形成する。その後、第1メッキ層95〜第4メッキ層98(下記の図42参照)を形成するために、第1メッキ層95〜第4メッキ層98に対応した所定のパターンのポジレジスト層912に対してフォトリソグラフィ法により露光及び現像を行う(図41参照)。
【0141】
ポジレジスト層912の露光及び現像を行った後に、ウエハ8の両主面81,82に第1メッキ層95を形成し、第1メッキ層95上に第2メッキ層96を形成し、第2メッキ層96上に第3メッキ層97を形成し、第3メッキ層97上に第4メッキ層98を形成する(図42参照)。
【0142】
図42に示すように、第1メッキ層95〜第4メッキ層98を形成した後に、ポジレジスト層912およびポジレジスト層912下の第1スパッタ膜93と第2スパッタ膜94とを除去して、ベース4をウエハ8に多数個形成する(図43参照)。ここで形成した第1スパッタ膜93、第2スパッタ膜94、第1メッキ層95〜第4メッキ層98により、図21に示すベース4の電極パッド51,52、配線パターン55の一部、および第1接合層48を構成する。
【0143】
ベース4をウエハ8に多数個形成した後、多数個のべース4を個別分割して多数個のベース4を個片化し、多数個の図22に示すベース4を製造する。
【0144】
そして、図22に示すベース4に、切り欠き部541の位置に基づいて図7に示す水晶振動片2を配し、導電性バンプ13を介してベース4に水晶振動片2をFCB法により電気機械的に超音波接合して、ベース4に水晶振動片2を搭載保持する。また、別工程で、図6に示す蓋7の第2接合層74上に接合材12を積層する。その後、水晶振動片2を搭載保持したベース4に蓋7を配し、ベース4の第1接合層48と蓋7の第2接合層74とを接合材12を介してFCB法により電気機械的に超音波接合して、図21に示す水晶振動子1を製造する。
【0145】
本実施の形態2にかかる水晶振動子1、およびベース4、ベース4の製造方法によれば、上記の実施の形態1にかかる水晶振動子1、およびベース4、ベース4の製造方法による作用効果と同様の作用効果を有する。
【0146】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、電子部品素子を搭載する電子部品パッケージに適用できる。
【符号の説明】
【0148】
1 水晶振動子
11 内部空間
12 接合材
13 導電性バンプ
2 水晶振動片(電子部品素子)
20 圧電振動素板
21,22 脚部
211,221 先端部
23 基部
231 一端面
232 他端面
233 側面
24 接合部
241 短辺部
242 長辺部
243 先端部
25 溝部
26 貫通孔
27 接合箇所
31,32 励振電極
33,34 引出電極
4 ベース(封止部材としての電子部品パッケージ用封止部材)
41 底部
42 一主面
43 他主面
44 壁部
441 天面
45 キャビティ
451 壁面
452 一端部
453 第1壁面
4531 平坦面
4532 曲面
454 第2壁面
455 第3壁面
4551 平坦面
4552 曲面
4553 第1曲面
4554 第2曲面
456 キャビティの底面
457,4571,4572 基準点
458 突起部
4581 突起端縁
459 凹部
4591 平坦面
4592 内面
46 台座部
461 主面
48 第1接合層
49 貫通孔
491 内側面
492 一端開口端
493 他端開口端
494 平坦面
4941 第1平坦面
4942 第2平坦面
495 曲面
496 凹部
497 内面
498 突起部
4981 突起端縁
499 基準点
51,52 電極パッド
53,54 外部端子電極
541 切り欠き部
55 配線パターン
58,59 接触領域
61 樹脂パターン,樹脂材,樹脂層
7 蓋
71 頂部
72 一主面
73 壁部
731 内側面
732 外側面
733 天面
74 第2接合層
8 ウエハ
81,82 主面
91 第1シード膜(第1メタル層)
92 第2シード膜(第2メタル層)
93 第1スパッタ膜(第1スパッタ層)
94 第2スパッタ膜(第2スパッタ層)
95 第1メッキ膜(第1メッキ層)
96 第2メッキ膜(第2メッキ層)
97 第3メッキ膜(第3メッキ層)
98 第4メッキ膜(第4メッキ層)
910 Mo膜(もしくはCr膜)
911 Au膜
912 ポジレジスト層
B1,B2,B3,B4 面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の封止部材によって電子部品素子の電極を気密封止する電子部品パッケージの前記封止部材として使用される電子部品パッケージ用封止部材において、
電子部品素子を搭載するキャビティが形成され、
前記キャビティの壁面には、前記キャビティの幅方向外方に膨らむ曲面が含まれたことを特徴とする電子部品パッケージ用封止部材。
【請求項2】
複数の封止部材によって電子部品素子の電極を気密封止する電子部品パッケージの前記封止部材として使用される電子部品パッケージ用封止部材において、
電子部品素子を搭載するキャビティが形成され、
前記キャビティの壁面には、前記キャビティ内の予め設定した基準点から放射状に拡がった点の集合体からなる曲面が含まれ、
前記予め設定した基準点は複数有り、前記複数の基準点は1つの面上に配されることを特徴とする電子部品パッケージ用封止部材。
【請求項3】
複数の封止部材によって電子部品素子の電極を気密封止する電子部品パッケージにおいて、
少なくとも1つの前記封止部材が、請求項1または2に記載の電子部品パッケージ用封止部材であることを特徴とする電子部品パッケージ。
【請求項4】
複数の封止部材によって電子部品素子の電極を気密封止する電子部品パッケージの前記封止部材として使用される電子部品パッケージ用封止部材の製造方法において、
当該電子部品パッケージ用封止部材を構成する基材に、電子部品素子を搭載するキャビティを形成する形成工程を有し、
前記形成工程では、ウエットエッチングによって底面を有する凹部を前記基材に形成し、前記凹部の底面をエッチング対象としてウエットエッチングによって前記キャビティの壁面の少なくとも一部を曲面に形成することを特徴とする電子部品パッケージ用封止部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電子部品パッケージ用封止部材の製造方法において、
前記形成工程では、電着レジストにより前記基材にレジスト層を形成し、形成した前記レジスト層を用いてエッチングを行うことを特徴とする電子部品パッケージ用封止部材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate


【公開番号】特開2013−105788(P2013−105788A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246754(P2011−246754)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】