説明

電子部品モジュール、電子部品およびその製造方法

【課題】電子部品を基板に接合するリフロー時に、電子部品が起き上がる、いわゆる起き上がり現象が生じる可能性がある。
【解決手段】本発明の一つの態様に基づく電子部品モジュールは、下面、第1の側面および該第1の側面と反対側に位置する第2の側面を有するとともに、前記下面と前記第1の側面との間に形成された第1の凹部および前記下面と前記第2の側面との間に形成された第2の凹部を有した絶縁体、該絶縁体に埋設されたコイル状内部導体、前記第1の凹部に配設された、前記コイル状内部導体の一方の端部と電気的に接続された第1の外部電極、ならびに前記第2の凹部に配設された、前記コイル状内部導体の他方の端部と電気的に接続された第2の外部電極を具備した電子部品を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状の内部導体が内部に埋設された電子部品およびこれを備えた電子部品モジュールに関するものである。このような電子部品は、産業用電子機器および民生用電気製品に代表される多種多様な電子機器において、例えばインダクタ、トランス、コイル部品、LC部品または貫通コンデンサとして用いることができる。
【背景技術】
【0002】
コイル状の内部導体が内部に埋設された電子部品としては、例えば、特許文献1に記載された積層チップインダクタが知られている。特許文献1に記載された積層チップインダクタは、絶縁性のグリーンシートを所定数積層するとともに、この積層されたグリーンシート内部の所定位置にコイル状内部導体が印刷された生積層体を焼成することによって形成されている。
【0003】
また、特許文献1に記載の積層チップインダクタは、焼成された積層体の、互いに反対側に位置する2つの側面側にそれぞれ配設され、コイル状内部導体と接続された2つの外部電極を備えている。電子部品は、はんだ材のような接合部材を用いて外部電極を絶縁性の実装基板に接合することによって実装基板に実装される。また、実装基板上に配設された配線導体と外部導体とがはんだ材のような接合部材によって電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−232617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層チップインダクタ201(電子部品)を絶縁性の実装基板211(絶縁性基板)に接合する上記のリフロー時に、図8に示すように、電子部品201が起き上がる、いわゆる起き上がり現象が生じる可能性がある。これは、外部電極209と接合部材215とが接合する際に電子部品201に対して接合部材215からの引っ張り応力が加わるからである。特に、接合部材215における外部電極209の側方に位置して外部電極209の側面と接合する部分から電子部品201に対して相対的に大きな引っ張り応力が加わる。
【0006】
電子部品201と絶縁性基板211とを接合する接合部材215の使用量を少なくすることによって、上記の起き上がり現象を抑制することができる。しかしながら、接合部材215の使用量が少なくなることによって電子部品201と絶縁性基板211との接合性が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、電子部品と絶縁性基板との接合性の低下を抑制しつつも起き上がり現象が生じる可能性を低減することができる電子部品モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様に基づく電子部品モジュールは、下面、第1の側面および該第1の側面と反対側に位置する第2の側面を有するとともに、前記下面と前記第1の側面との間に形成された第1の凹部および前記下面と前記第2の側面との間に形成された第2の凹部を有した絶縁体、該絶縁体に埋設されたコイル状内部導体、前記第1の凹部に配設された、前記コイル状内部導体の一方の端部と電気的に接続された第1の外部電極、ならびに前記第2の凹部に配設された、前記コイル状内部導体の他方の端部と電気的に接続された第2の外部電極を具備した電子部品を備えている。また、上記態様に基づく電子部品モジュールは、前記電子部品が配設された主面を有する絶縁性基板と、該絶縁性基板の前記主面に配設された回路配線と、前記第1の外部電極および前記回路配線を接続する第1の接合部材と、前記第2の外部電極および前記回路配線を接続する第2の接合部材とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様に基づく電子部品モジュールは、絶縁体が第1の凹部および第2の凹部を有している。そして、第1の凹部に配設された第1の外部電極および第2の凹部に配設された第2の外部電極が、第1の接合部材または第2の接合部材を介して絶縁性基板の主面に配設された回路配線にそれぞれ接続されている。
【0010】
このように、絶縁性基板に対する電子部品の接合部分に第1の凹部および第2の凹部が形成されていることから、この第1の凹部および第2の凹部(以下、これらの凹部をまとめて単に凹部ともいう。)にそれぞれ第1の接合部材および第2の接合部材(以下、これらの接合部材をまとめて単に接合部材ともいう。)を溜めることができる。そのため、絶縁体の側方に接合部材が過度に溜まることが抑制できる。結果、絶縁体の側方に位置する接合部材から絶縁体に加わる引っ張り応力を小さくすることができるので、電子部品が起き上がる可能性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の電子部品モジュールを示す斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す電子部品モジュールにおける電子部品を示す斜視図である。(b)は、図2(a)に示す電子部品の上下を反転させた斜視図である。
【図3】図2に示す電子部品の分解斜視図である。
【図4】図2に示す電子部品のA−A断面図である。
【図5】(a)は図2に示す電子部品におけるコイル状内部配線の構成を示す概略斜視図である。(b)は、図2に示す電子部品の変形例におけるコイル状内部配線の構成を示す概略斜視図である。
【図6】図5(b)に示す電子部品の分解斜視図である。
【図7】図5(b)に示す電子部品のB−B断面図である。
【図8】電子部品の起き上がり現象を示す概略図である。(a)は、電子部品を絶縁性基板に実装する状態を示す斜視図である。(b)は、電子部品の実装時に起き上がり現象が生じた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の電子部品モジュール、電子部品モジュールが備える電子部品およびその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態の電子部品モジュールは、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0013】
図1〜4に示すように、本実施形態の電子部品モジュール101は、下面、第1の側面3aおよび第1の側面3aと反対側に位置する第1の側面3bを有するとともに、下面と第1の側面3aとの間に形成された第1の凹部5aおよび下面と第1の側面3bとの間に形成された第2の凹部5bを有した絶縁体3、絶縁体3に埋設されたコイル状内部導体7、第1の凹部5aに配設された、コイル状内部導体7の一方の端部と電気的に接続された第1の外部電極9a、ならびに第2の凹部5bに配設された、コイル状内部導体7の他方の端部と電気的に接続された第2の外部電極9bを具備した電子部品1を備えている。
【0014】
また、上記態様に基づく電子部品モジュール101は、電子部品1が配設された主面を有する絶縁性基板11と、絶縁性基板11の主面に配設された回路配線13と、第1の外部電極9aおよび回路配線13を接続する第1の接合部材15と、第2の外部電極9bおよび回路配線13を接続する第2の接合部材17とを備えている。
【0015】
本実施形態の電子部品モジュール101は、絶縁体3が第1の凹部5aおよび第2の凹部5bを有している。そして、第1の凹部5aに配設された第1の外部電極9aおよび第2の凹部5bに配設された第2の外部電極9bが、第1の接合部材15または第2の接合部材17を介して絶縁性基板11の主面に配設された回路配線13にそれぞれ接続されている。
【0016】
このように、絶縁性基板11に対する電子部品1の接合部分に凹部5が形成されていることから、これらの凹部5にそれぞれ接合部材15,17を溜めることができる。そのため、絶縁体3の側方に、これらの接合部材15,17が過度に溜まることが抑制できる。結果、絶縁体3の側方に位置する接合部材15,17から絶縁体3に加わる引っ張り応力を小さくすることができるので、電子部品1が起き上がる可能性を抑制することができる。
【0017】
本実施形態の電子部品1は、上面および下面に開口するビアホールをそれぞれ有する複数の絶縁体層(第1の絶縁体層3c)を積層してなる絶縁体3と、複数の第1の絶縁体層3c間にそれぞれ位置する複数のコイル配線導体19と、ビアホールに充填された、第1の絶縁体層3cを介して積層方向に隣り合うコイル配線導体19をそれぞれ電気的に接続する複数のビア導体21とを備えている。複数のコイル配線導体19および複数のビア導体21によってコイル状内部導体7が形成されている。
【0018】
このように、積層方向から平面透視した際に、線状に配設されることによって互いに重なり合った場合であっても熱膨張差の影響の小さいコイル配線導体19は、少なくとも複数のビア導体21と接する部分が互いに重なり合っている。そのため、コイル状内部導体7のインダクタンスを高いものとすることができる。
【0019】
電子部品1は、複数の第1の絶縁体層3cと複数のコイル配線導体19とを交互に積層してなる構成であってもよいが、本実施形態の電子部品1のように、絶縁体3が、第1の絶縁体層3cと、上面および下面に開口する配線形成領域を有する第2の絶縁体層3dとを交互に積層してなり、コイル配線導体19が上記の配線形成領域に位置していることが好ましい。
【0020】
複数の第1の絶縁体層3cと複数のコイル配線導体19を交互に積層してなる構成である場合、コイル配線導体19の厚みによって第1の絶縁体層3cの上面には段差が形成されやすい。しかしながら、コイル配線導体19が第2の絶縁体層3dの配線形成領域に位置してなり、コイル配線導体19および第2の絶縁体層3dからなる層を第1の絶縁体層3cに重ね合わせるとともにこれらの層を積層することによって電子部品1を形成している場合、上記の段差を小さくすることができる。そのために積層による変形や、第1の絶縁体層3cと第2の絶縁体層3dの密着不良が生じる可能性を低減できるとともに、コイル状内部導体7の熱膨張に起因する絶縁体3への応力を緩和することができる。
【0021】
また、本実施形態の電子部品1のように、第1の絶縁体層3cおよびビア導体21の積層方向の厚みが、第2の絶縁体層3dおよびコイル配線導体19の積層方向の厚みよりも小さいことが好ましい。このように、積層方向に隣り合う第1の絶縁体層3cおよびコイル配線導体19の間に位置する第2の絶縁体層3dおよびビア導体21の厚みが相対的に小さいことから、電子部品1全体の厚みを小さくすることができる。また、電子部品1全体の厚みを小さくすることができることから、許容される電子部品1の厚みの範囲内にてコイル状内部導体7によるインダクタの巻き数を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることが可能となる。
【0022】
なお、図3は図2に示す実施形態の積層構造を明確にするため、図2に示す実施形態の積層構造の一部を分解斜視図にて示したものである。そのため、複数の第1の絶縁体層3cおよび複数の第2の絶縁体層3dの数はそれぞれ図3に示す分解斜視図に示す数に限られるものではない。また、絶縁体3の積層方向の上端部には、第1の絶縁体層3cと同組成の印刷ペーストによるコーティング層を形成し、導通用ビア部についても導体ペーストの印刷により構成しても良い。
【0023】
本実施形態における第1の絶縁体層3cおよび第2の絶縁体層3dとしては、それぞれ高い絶縁性を有している部材を用いることができる。第1の絶縁体層3cおよび第2の絶縁体層3dとしては、例えば、フェライト質焼結体、フォルステライト質焼結体およびガラスセラミック材料等のセラミック材料を用いることができる。あるいは、第1の絶縁体層3cおよび第2の絶縁体層3dとして絶縁性の樹脂を用いてもよい。また、コイル状内部導体7をインダクタとして用いることから、第1の絶縁体層3cおよび第2の絶縁体層3dとして、磁性を有することが好ましく、具体的には、例えば、フェライトから成る材料やフェライト等の磁性材料を含有していることが好ましい。また、第1の絶縁体層3cおよび第2の絶縁体層3dが非磁性絶縁材料と磁性絶縁材料の組合せであっても良い。
【0024】
本実施形態における絶縁体3は、平面視した場合の外周形状が矩形状となっているが特にこれに限られるものではない。たとえば、平面視した場合の外周形状が、六角形または八角形のような多角形状、或いは、楕円形状または円形状のような曲面形状であってもよい。
【0025】
本実施形態における第1の絶縁体層3cは、上面および下面に開口するビアホールを有している。そして、このビアホールには積層方向に隣り合うコイル配線導体19を電気的に接続するビア導体21が充填されている。また、第1の絶縁体層3cは、積層方向に隣り合うコイル配線導体19の間であって、これらのコイル配線導体19が互いに離隔するように位置している。そのため、第1の絶縁体層3cは、第2の絶縁体層3dよりも厚みが小さい一方で、積層方向に隣り合うコイル配線導体19が電気的に短絡しない程度の絶縁性を確保できる厚みを有していることが求められる。
【0026】
ビア導体21としては、導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金およびニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体をビア導体21として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0027】
本実施形態の電子部品1における絶縁体3は、下面と第1の側面3aとの間に形成された第1の凹部5aおよび下面と第1の側面3bとの間に形成された第2の凹部5bを有している。絶縁体3は、複数の絶縁体層を積層することによって形成されている。第1の凹部5aおよび第2の凹部5bは、複数の絶縁体層を積層してなる積層体における第1の凹部5aおよび第2の凹部5bが形成される箇所を部分的に切削することによって形成することができる。
【0028】
また、第1の凹部5aおよび第2の凹部5bは上記のように積層体を部分的に切削することにより形成してもよいが、例えば、絶縁体3を構成する複数の絶縁体層を積層する際に、複数の絶縁体層のなかで最も絶縁体3の下面側に位置する絶縁体層3eの側面に上面および下面に開口する溝を予め形成することによって第1の凹部5aおよび第2の凹部5bを形成してもよい。
【0029】
また、絶縁体層となるセラミックグリーンシートを積層する際に、複数のセラミックグリーンシートのなかで最も下面側に位置するセラミックグリーンシートの側面に上面および下面に開口する溝を予め形成することによって第1の凹部5aおよび第2の凹部5bを形成してもよい。
【0030】
図4に示すように、下面および第1の側面3aに対して垂直な第1の凹部5aおよび第2の凹部5bの断面において、第1の凹部5aの、絶縁体3の下面と平行な方向の幅W1が絶縁体3の第1の側面3aと平行な方向の幅W2よりも大きく、かつ、第2の凹部5bの、絶縁体3の下面と平行な方向の幅W3が絶縁体3の第1の側面3bと平行な方向の幅W4よりも大きいことが好ましい。凹部5がこのような構成である場合には、凹部5における絶縁体3の下面と平行な面での接合面積が相対的に大きくなる。そのため、接合部材15,17から絶縁体3に対して下面方向に加わる引っ張り応力が相対的に大きくなるとともに、接合部材15,17から絶縁体3に対して側面方向に加わる引っ張り応力が相対的に小さくなるので、電子部品1が起き上がる可能性をさらに抑制することができる。
【0031】
また、第1の凹部5aが、絶縁体3の下面と第1の側面3aとの間のみに形成され、第1の側面3aを除く絶縁体3の他の側面に開口しておらず、かつ、第2の凹部5bが、絶縁体3の下面と第1の側面3bとの間のみに形成され、第1の側面3bを除く絶縁体3の他の側面に開口していないことが好ましい。接合部材15,17が絶縁体3の他の側面方向に過度に広がることを抑制して、凹部5に接合部材15,17を安定して溜めておくことができる。そのため、電子部品1と絶縁性基板11の接合性を良好に保つことができる。
【0032】
本実施形態における第2の絶縁体層3dは、上面および下面に開口する配線形成領域を有している。そして、この配線形成領域にはコイル配線導体19が充填されている。積層方向に隣り合うコイル配線導体19はビア導体21を介して電気的に接続され、第1の絶縁体層3cおよび第2の絶縁体層3dの積層方向に向かって巻回されたコイル状内部導体7を形成している。このように絶縁体3に埋設されたコイル状内部導体7が形成されることによって電子部品1をチップインダクタとして作用させることができる。
【0033】
本実施形態の電子部品1においては、図5(a)に示すように、コイル状内部導体7が電子部品1の下面および上面に対して垂直な方向に向かって巻回するように形成されているが、特にこれに限られるものではない。例えば、図5(b)に示すように、電子部品1の第1の側面3aおよび第1の側面3bに対して垂直な方向に向かってコイル状内部導体7が巻回するように形成されていてもよい。
【0034】
図5(b)に示すように電子部品1の第1の側面3aおよび第1の側面3bに対して垂直な方向に向かってコイル状内部導体7が巻回するように形成されている場合には、図6に示すように、絶縁体3を構成する複数の絶縁体層を積層する際に、複数の絶縁体層のなかで最も絶縁体3の下面側、および上面側に位置する絶縁体層3eの側面に上面および下面に開口する溝を予めそれぞれ形成することによって第1の凹部5aおよび第2の凹部5bを形成すればよい。
【0035】
なお、積層方向に隣り合うコイル配線導体19がビア導体21を介して電気的に接続されることによってコイル状内部導体7を形成していることから、本実施形態においては便宜的にコイル配線導体19と表している。そのため、それぞれのコイル配線導体19そのものがコイル形状であることを意味するものに限られない。
【0036】
つまり、積層方向に隣り合うコイル配線導体19がビア導体21を介して電気的に接続されることによってコイル状の内部配線を形成していることから、それぞれのコイル配線導体19としては1つの線分からなる直線形状、2つの線分からなるL形状あるいは3つの線分からなるコ字形状であってもよい。
【0037】
コイル配線導体19としては、ビア導体21と同様に導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金、やニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体をコイル配線導体19として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0038】
本実施形態の電子部品1は、第1の凹部5aに配設された、コイル状内部導体7の一方の端部と電気的に接続された第1の外部電極9a、および第2の凹部5bに配設された、コイル状内部導体7の他方の端部と電気的に接続された第2の外部電極9bを具備している。
【0039】
本実施形態の電子部品1においては、コイル配線導体19およびビア導体21からなるコイル状内部導体7の一方の端部として、最も上面側に位置するコイル配線導体19が、第1の外部電極9aが配設される絶縁体3の表面にまで引き出され、第1の外部電極9aと電気的に接続されている。また、コイル状内部導体7の他方の端部として、最も下面側に位置するコイル配線導体19が、第2の外部電極9bが配設される絶縁体3の表面にまで引き出され、第2の外部電極9bと電気的に接続されている。
【0040】
第1の外部電極9aは、少なくとも第1の凹部5aの表面に配設されていることが肝要である。そのため、第1の外部電極9aは第1の凹部5aの表面のみに配設されている構成に限られるものではない。例えば、本実施形態の電子部品1のように、第1の凹部5aの表面に加えて、第1の側面3a全体、並びに、絶縁体3における第1の側面3aと隣り合う側面、上面および下面における第1の側面3aの近傍に位置する部分にも第1の外部電極9aが形成されていてもよい。
【0041】
また、第2の外部電極9bは、少なくとも第2の凹部5bの表面に配設されていることが肝要である。そのため、第2の外部電極9bは第2の凹部5bの表面のみに配設されている構成に限られるものではない。例えば、本実施形態の電子部品1のように、第2の凹部5bの表面に加えて、第1の側面3b全体、並びに、絶縁体3における第1の側面3bと隣り合う側面、上面および下面における第1の側面3bの近傍に位置する部分にも第2の外部電極9bが形成されていてもよい。
【0042】
しかしながら、図7に示すように、第1の外部電極9aが、第1の凹部5aおよび下面のみに配設されているとともに、第2の外部電極9bが、第2の凹部5bおよび下面のみに配設されていることが好ましい。接合部材15,17から絶縁体3に対して側面方向に加わる引っ張り応力を相対的に小さくすることができるので、電子部品1が起き上がる可能性をさらに抑制することができるからである。
【0043】
第1の外部電極9aおよび第2の外部電極9bとしては、ビア導体21と同様に導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金、やニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体を第1の外部電極9aおよび第2の外部電極9bとして用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0044】
また、外部電極9の積層体(絶縁体3)から露出する表面には、メッキ(不図示)を形成することが好ましい。外部に露出する外部電極9が劣化することを抑制できるからである。メッキとしては、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、金メッキおよび錫めっきを用いることができる。具体的には、例えば、外部電極9の積層体から露出する表面にニッケルメッキを形成した後、さらにニッケルメッキの表面に金メッキを形成すればよい。
【0045】
本実施形態の電子部品モジュール101は、電子部品1が配設された主面を有する絶縁性基板11を備えている。絶縁性基板11としては、高い絶縁性を有している部材を用いることができる。具体的には、絶縁体3と同様に、フェライト質焼結体、フォルステライト質焼結体およびガラスセラミック材料等のセラミック材料を用いることができる。あるいは、絶縁性基板11として絶縁性の樹脂を用いてもよい。
【0046】
絶縁性基板11の主面には回路配線13が配設されている。回路配線13は、外部配線(不図示)からコイル状内部導体7に電力を供給するために設けられている。そのため、回路配線13としては、具体的には、例えば、タングステン、モリブデン、銅、銀、金、白金およびニッケルのような金属材料を用いることができる。
【0047】
本実施形態の電子部品モジュール101は、第1の外部電極9aおよび回路配線13を接続する第1の接合部材15と、第2の外部電極9bおよび回路配線13を接続する第2の接合部材17とを備えている。本実施形態の電子部品モジュール101においては、絶縁体3の第1の凹部5aおよび第2の凹部5bにそれぞれ第1の接合部材15および第2の接合部材17を溜めることができる。そのため、絶縁体3の側方にこれらの接合部材15,17が過度に溜まることが抑制できる。結果、電子部品1が起き上がる可能性を抑制することができる。本実施形態における接合部材15,17は、電子部品1と絶縁性基板11とを接合するとともに、第1の外部電極9aおよび第2の外部電極9bと回路配線13とを電気的に接続するために用いられている。そのため、接合部材15,17としては、ロウ材、または、はんだを用いることが好ましい。例示的なロウ材は、銀ロウである。
【0048】
次に、上記実施形態にかかる電子部品1の製造方法について説明する。
【0049】
まず、絶縁体3におけるコイル状内部導体7が埋設される部分となる第1のセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤並びにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、例えば、酸化鉄(Fe)、酸化ニッケル(NiO)、酸化珪素(SiO)、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化硼素(B)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化銅(CuO)を用いることができる。混合部材をシート状に成形することにより複数の第1のセラミックグリーンシートを作製することができる。
【0050】
また、コイル状内部導体7となる第1の導体ペーストを準備する。第1の導体ペーストとしては、例えば、銅、銀、金、白金およびニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加したペーストを用いることができる。上記の金属材料は単一、合金、混合物として用い、有機溶剤並びにバインダを混ぜたものを第1の導体ペーストとして用いることができる。
【0051】
第1の導体ペーストが内部に埋設されるように複数の第1のセラミックグリーンシートを積層して生積層体を形成する。具体的には、コイル配線導体19を形成するため、第1のセラミックグリーンシート間に第1の導体ペーストを配設する。また、ビア導体21を形成するため、第1のセラミックグリーンシートにビアホールを設けて、この貫通孔に第1の導体ペーストを充填する。貫通孔に充填された第1の導体ペーストと第1のセラミックグリーンシート間に配設された第1の導体ペーストを接合することによって、複数の第1のセラミックグリーンシートを積層してなる生積層体の内部にコイル状内部導体7となる第1の導体ペーストを埋設させることができる。
【0052】
次に、絶縁体3の下面側に第1の凹部5aおよび第2の凹部5bを形成するための第2のセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、第1のセラミックグリーンシートと同様に、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤並びにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。混合部材をシート状に成形することにより第2のセラミックグリーンシートを作製することができる。
【0053】
上記のように作製した第2のセラミックグリーンシートの第1の側面3aおよび第1の側面3bに上面および下面に開口する溝をそれぞれ形成する。上面および下面に開口する溝は、第2のセラミックグリーンシートの第1の側面3aおよび第1の側面3bの一部を部分的に除去することによって形成すればよい。あるいは、第1の側面3aおよび第1の側面3bに上面および下面に開口する溝が予め形成されるように混合部材をシート状に成形して第2のセラミックグリーンシートを作製してもよい。
【0054】
上記のように作製した第2のセラミックグリーンシートを生積層体の積層方向の端面に積層する。このように第2のセラミックグリーンシートを生積層体に積層することによって、第2のセラミックグリーンシートに形成された溝および生積層体の端面であって溝に囲まれた領域に第1の凹部5aおよび第2の凹部5bが形成される。
【0055】
次に、第1の凹部5aおよび第2の凹部5bとなる、溝および生積層体の端面であって溝に囲まれた領域に、第1の外部電極9aおよび第2の外部電極9bとなる第2の導体ペーストを配設する。第2の導体ペーストとしては、第1の導体ペーストと同様に、例えば、銅、銀、金、白金およびニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加したペーストを用いることができる。
【0056】
第1の外部電極9aおよび第2の外部電極9bは、少なくとも第1の凹部5aの表面および第2の凹部5bの表面にそれぞれ配設されていることが肝要である。そのため、第2の導体ペーストは凹部5の表面のみに配設されている構成に限られるものではない。例えば、凹部5の表面に加えて、第2のセラミックグリーンシートの下面および生積層体の側面にも第2の導体ペーストが配設されていてもよい。
【0057】
上記の通り作製された生積層体を焼成することによって本実施形態の電子部品1を作製することができる。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の電子部品1の製造方法においては約850℃〜1000℃の温度で焼成すればよい。
【0058】
このように、本実施形態の電子部品1の製造方法は、コイル状内部導体7となる第1の導体ペーストが内部に埋設されるように複数の第1のセラミックグリーンシートを積層して生積層体を形成する工程と、上面および下面に開口する溝が第1の側面3aに形成された第2のセラミックグリーンシートを生積層体の積層方向の端面に積層する工程と、溝および生積層体の端面であって溝に囲まれた領域に第2の導体ペーストを配設する工程と、生積層体を焼成する工程と、を備えている。
【0059】
また、上記の実施形態においては、生積層体の上面に第2の導体ペーストを配設しているが特にこれに限られるものではない。例えば、生積層体を焼成した後に、コイル状内部導体7と電気的に接続されるように焼成済みの積層体の表面に第1の外部電極9aおよび第2の外部電極9bを配設してもよい。これらの外部電極9を焼成済みの積層体の表面に配設する方法としては、例えば、周知の蒸着またはスパッタリングの手法を用いればよい。
【0060】
なお、単体の電子部品1の製造方法について示したが、積層方向に向かって巻回されたコイル状内部導体7となる第1の導体ペーストが複数併設された生積層体の集合体を形成してもよい。このような生積層体の集合体を作製した後、それぞれの生積層体に分割するとともにそれぞれの生積層体を焼成することによって複数の電子部品1を同時に作製することができる。また、上記する生積層体の集合体を同時焼成した後に、それぞれの電子部品1に分割してもよい。
【0061】
上述の通り、本実施形態の電子部品モジュール101、電子部品1およびその製造方法について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。例えば、第1の絶縁体層3cを絶縁体ペーストのコーティング手法によりコイル導体充填後の第2の絶縁体層3dのVIA相当位置を除き形成した後に、VIA位置に導体ペーストを印刷し、その上に隣接するコイル配線導体を充填後の第2の絶縁体層3dを積層しても良い。
【0062】
上述の通り、本実施形態の電子部品モジュール、電子部品およびその製造方法について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。例えば、第1の絶縁体層を絶縁体ペーストのコーティング手法によりコイル導体充填後の第2の絶縁体層のVIA相当位置を除き形成した後に、VIA位置に導体ペーストを印刷し、その上に隣接する第2のコイル導体充填後の絶縁体層を積層しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1・・・電子部品
101・・・電子部品モジュール
3・・・絶縁体
3a・・・第1の側面
3b・・・第2の側面
3c・・・第1の絶縁体層
3d・・・第2の絶縁体層
5a・・・第1の凹部
5b・・・第2の凹部
7・・・コイル状内部導体
9a・・・第1の外部電極
9b・・・第2の外部電極
11・・・絶縁性基板
13・・・回路配線
15・・・第1の接合部材
17・・・第2の接合部材
19・・・コイル配線導体
21・・・ビア導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面、第1の側面および該第1の側面と反対側に位置する第2の側面を有するとともに、前記下面と前記第1の側面との間に形成された第1の凹部および前記下面と前記第2の側面との間に形成された第2の凹部を有した絶縁体、該絶縁体に埋設されたコイル状内部導体、前記第1の凹部に配設された、前記コイル状内部導体の一方の端部と電気的に接続された第1の外部電極、ならびに前記第2の凹部に配設された、前記コイル状内部導体の他方の端部と電気的に接続された第2の外部電極を具備した電子部品と、
該電子部品が配設された主面を有する絶縁性基板と、
該絶縁性基板の前記主面に配設された回路配線と、
前記第1の外部電極および前記回路配線を接続する第1の接合部材と、
前記第2の外部電極および前記回路配線を接続する第2の接合部材とを備えた電子部品モジュール。
【請求項2】
前記下面および前記第1の側面に対して垂直な前記第1の凹部および前記第2の凹部の断面において、前記第1の凹部の、前記下面と平行な方向の幅が前記第1の側面と平行な方向の幅よりも大きく、かつ、前記第2の凹部の、前記下面と平行な方向の幅が前記第2の側面と平行な方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子部品モジュール。
【請求項3】
前記第1の外部電極が、前記第1の凹部および前記下面のみに配設されているとともに、前記第2の外部電極が、前記第2の凹部および前記下面のみに配設されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品モジュール。
【請求項4】
前記第1の凹部が、前記下面と前記第1の側面との間のみに形成され、前記第1の側面を除く前記絶縁体の他の側面に開口しておらず、かつ、前記第2の凹部が、前記下面と前記第2の側面との間のみに形成され、前記第2の側面を除く前記絶縁体の他の側面に開口していないことを特徴とする請求項1に記載の電子部品モジュール。
【請求項5】
下面、第1の側面および該第1の側面と反対側に位置する第2の側面を有するとともに、前記下面と前記第1の側面との間に形成された第1の凹部および前記下面と前記第2の側面との間に形成された第2の凹部を有した絶縁体、
該絶縁体に埋設されたコイル状内部導体、
前記第1の凹部に配設された、前記コイル状内部導体の一方の端部と電気的に接続された第1の外部電極、
前記第2の凹部に配設された、前記コイル状内部導体の他方の端部と電気的に接続された第2の外部電極を備えた電子部品。
【請求項6】
コイル状内部導体となる第1の導体ペーストが内部に埋設されるように複数の第1のセラミックグリーンシートを積層して生積層体を形成する工程と、
上面および下面に開口する溝が第1の側面に形成された第2のセラミックグリーンシートを前記生積層体の積層方向の端面に積層する工程と、
前記溝および前記生積層体の端面であって前記溝に囲まれた領域に第2の導体ペーストを配設する工程と、
前記生積層体を焼成する工程と、を備えた電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−60013(P2012−60013A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203370(P2010−203370)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】