説明

電子部品包装用カバーテープ

【課題】好適な透明性を有するとともにキャリアテープからの剥離の際に発生する帯電を抑えることが可能な電子部品包装用カバーテープが提供する。
【解決手段】本発明の電子部品包装用カバーテープは、基材層上にヒートシーラント層を備え、前記ヒートシーラント層がポリオレフィン系樹脂とポリエーテル/ポリオレフィン共重合体とを含む。前記ヒートシーラント層中のポリエーテル/ポリオレフィン共重合体の重量比率は、10重量%以上70重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品包装用カバーテープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICを始めとして、トランジスター、ダイオード、コンデンサー、圧電素子レジスターなどの表面実装用電子部品は、電子部品の形状に合わせて収納することができるエンボス加工が施されたポケットを有するトレーや、このようなポケットを連続的に形成したキャリアテープとキャリアテープにヒートシールしうるカバーテープとからなる包装体に包装されて供給されている。電子部品を包装したキャリアテープは通常、紙製或いはプラスチック製のリールに巻かれ、実装工程前までは、その状態が維持される。実装工程において、内容物の電子部品はトレーや、カバーテープを剥離した後のキャリアテープから自動的に取り出され電子回路基板に表面実装されている。
【0003】
近年、総じて電子部品の小型化・高機能化が進むにつれて、静電気敏感性部品が増加し、静電気に起因する工程トラブルが生じている。電子部品の中でも特に半導体分野においては、高集積化・微細化、低動作電圧化に伴い、従来の静電気破壊特性を維持することが困難になってきている。その為、半導体部品メーカーの生産工程内や半導体部品ユーザーの組み立て工程内において、静電気放電(ELECTRO STATIC DISCHARGE、以下ESDという。)による部品の破壊が問題となっている。
【0004】
半導体部品分野以外においてはESDに起因する電子部品の破壊はまれであるが、近
年の電子機器の小型化・高機能化に伴い、実装される電子部品についても小型化・軽量化が急激に進んでおり、搬送中の摩擦によるカバーテープと部品との間の帯電や、カバーテープを剥離する際に発生する静電気によって、帯電したカバーテープに電子部品が付着してしまい、ピックアップ不良等の工程トラブルを引き起こすことが問題となってきている。このため、静電気トラブルを防止できるような電子部品包装体が強く求められている。
【0005】
これらで問題となっている静電気については特許文献1では、中間層に低分子の界面活性剤等を練り込むことを前提として、外部帯電物からの静電誘導現象防止を図る手法をとっているが、この方法であるとフィルムの保管環境によっては中間層からの界面活性剤のブリード等がフィルム自体の物性に影響を及ぼし、シール性を悪くする。また、特許文献2ではカバーテープの基材層の上面および下面にπ電子共役系導電性ポリマー層を設けているが、該導電性ポリマー層をカバーテープの上面に積層した場合にはカバーテープをシールする際にシール条件によっては熱コテの熱によって導電層が剥がれてしまい、また、下面に積層した場合にはシール性に影響を及ぼしてしまう。また特許文献3では層間に酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボン等の無機材料を分散させて導電特性を発現させる旨の記載がされているが、無機系材料を添加すると、無機系材料が透明性を阻害する要因となり、カバーテープをシールした上から目視検査等をする際の妨げになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000‐142786号公報
【0007】
【特許文献2】特開2001‐301819号公報
【0008】
【特許文献3】特開2006‐312489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、静電気に起因する電子部品の貼り付きや破壊の問題を解決すべく、好適な透明性を有するとともにキャリアテープからの剥離の際に発生する帯電を抑えることが可能な電子部品包装用カバーテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、基材層上に、ヒートシーラント層を備え、前記ヒートシーラント層がポリオレフィン系樹脂とポリエーテル/ポリオレフィン共重合体とを含むものである。
【0011】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記ヒートシーラント層中のポリエーテル/ポリオレフィン共重合体の重量比率が10重量%以上70重量%以下であるとすることができる。
【0012】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記ヒートシーラント層中のポリエーテル/ポリオレフィン共重合体の重量比率が20重量%以上50重量%以下とすることができる。
【0013】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体のメルトフローレート(測定方法:JIS K6921−2、測定条件:温度190℃−荷重21.18N)を10〜35g/10minとすることができる。
【0014】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記ポリオレフィン系樹脂を、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体の群から選ばれる1種以上の樹脂とすることができる。
【0015】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体をブロック共重合体とすることができる。
【0016】
本発明の電子部品放送用カバーテープは、前記ヒートシーラント層がポリスチレン系樹脂をさらに含むものとすることができる。
【0017】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記基材層とヒートシーラント層の間に更に1以上中間層を有するものとすることができる。
【0018】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記中間層が帯電防止剤を含むものとすることができる。
【0019】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記帯電防止剤を炭酸プロピレンおよび界面活性剤を含むものであるとすることができる。
【0020】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記帯電防止剤を含む中間層の表面抵抗値(測定方法:JIS K6911、測定条件:湿度30%RH−温度23℃)を1.0E+12Ω未満であるとすることができる。
【0021】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記界面活性剤がカチオン系界面活性剤であるとすることができる。
【0022】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、前記カチオン系界面活性剤がアルキル4級アンモニウムエトサルフェートであるとすることができる。
【0023】
本発明の電子部品包装体は、前記電子部品包装用カバーテープと電子部品包装用キャリアテープとがヒートシールされて得られる電子部品包装体であって、前記ヒートシーラント層と前記キャリアテープとが所定の領域でヒートシールされているものである。
【0024】
本発明の電子部品包装体は、前記電子部品包装用カバーテープを前記電子部品包装用キャリアテープから剥離するときの剥離帯電が300V以下であるとすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、好適な透明性を有するとともにキャリアテープからの剥離の際に発生する帯電を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の電子部品包装用カバーテープの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の電子部品包装用カバーテープの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の電子部品包装用カバーテープの一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の電子部品包装体の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すように本発明のカバーテープ11は、基材層1上に少なくともヒートシーラント層2を備えたものである。
【0028】
(基材層)
本発明に係る電子部品包装用カバーテープ11に用いられる基材層1としては、テープ加工時やキャリアテープへのヒートシール時等に加わる外力に耐えうる機械的強度、ヒートシール時に耐えうる耐熱性があれば用途に応じて適宜種々の材料を加工したフィルムを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ABS樹脂などが基材層フィルム用素材の例として挙げられる。機械的強度を向上させるにはポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66が好ましい。また、基材層としては前記例示された樹脂より選ばれた2層以上の積層体を用いても良い。
【0029】
基材層1には未延伸のフィルムが用いられてもかまわないが、カバーテープ11全体としての機械的強度を高めるためには一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムを用いることが好ましい。基材層1の厚さは12μm以上30μm以下であることが好ましく、より好ましくは16μm以上28μm以下である。基材層1の厚さが上記範囲上限より小さいものであればカバーテープ11の剛性が高くなりすぎず、ヒートシール後のキャリアテープに対して捻り応力がかかった場合であってもカバーテープ11がキャリアテープの変形に追従し剥離が生じるおそれが少ない。また上記範囲下限より大きいものであればカバーテープ11の機械的強度が好適なものとなり、収納された電子部品を取り出す際の高速剥離時にカバーテープ11が破断するという問題を抑制することができる。
【0030】
(ヒートシーラント層)
ヒートシーラント2はカバーテープ11の最も外層にあり、通常は1層のみである。本発明の電子部品包装用カバーテープ11においては、ヒートシーラント層2は、ポリオレフィン系樹脂とポリエーテル/ポリオレフィン共重合体とを含むものである。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。このうち、被着体となるキャリアテープとの密着性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体が好ましく、特に熱安定性の観点から、エチレン−アクリル酸メチル共重合体またはエチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体であることが好ましい。
【0032】
ヒートシーラント層2には、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体を用いることで導電性を付与すること可能となる。ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体は、ポリオレフィン系樹脂に対して非相溶性であり、製膜時には海島構造を形成することから筋状の導電回路が形成される。したがって成形直後から持続性に優れた帯電防止性を発揮する。ポリオレフィン系樹脂に対して相溶性を有する樹脂の場合は、すぐれた導電性を発揮することができない。なお、安定した導電性の観点からポリエーテル/ポリオレフィン共重合体は、ブロック共重合体であることが好ましい。仮にランダム共重合であった場合には導電性を発現するエーテル部の存在が分散し、不均一になるため、導電性が劣る場合がある。また、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体としてリチウムイオンを添加したポリエーテル/ポリオレフィン共重合体を使用することも可能である。
【0033】
ヒートシーラント層2に帯電防止剤として加える樹脂としては、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体以外にもポリエーテルエステルアミドブロック共重合体が挙げられる。しかしながらポリオレフィン系樹脂に対して非相溶性でなければ、製膜時に海島構造を形成し性能を発現させることが容易でない。即ち、ベース樹脂であるポリオレフィン系樹脂と相溶する場合には帯電防止樹脂が分散してしまい、帯電防止性能を効果的に発現することができないものとなる。したがって、効果的に帯電防止性を付与するためにもポリエーテル/ポリオレフィン共重合体であることが好ましい。この点、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体は、上記ポリオレフィン系樹脂とアロイ化した筋状の導電回路を形成し、成形直後から持続性に優れた帯電防止性を発揮する。
【0034】
前記ヒートシーラント層2中に含まれるポリエーテル/ポリオレフィン共重合体の重量比率は、ヒートシーラント層2中に10重量%以上70重量%以下であることが望ましく、更には20重量%以上50重量%以下、特に30重量%以上40重量%以下であることがより望ましい。
ヒートシーラント層2中のポリエーテル/ポリオレフィン共重合体の重量比率を前記範囲下限値以上とすることにより好適な帯電防止性を得ることが可能となり、前記範囲上限値以下とすることによりフィルム化が容易なものとなる。
【0035】
ヒートシーラント層2は、表面抵抗値で10〜1010Ω/□(測定条件:23℃−50%RH)になるように調整することが好ましい。また、使用前の輸送中等に生じるブロッキング防止のためにケイ素、マグネシウム、カルシウムのいずれかを主成分とする酸化物粒子、例えば、シリカ、タルク等、又はポリエチレン粒子、ポリアクリレート粒子、ポリスチレン粒子のうち、いずれか1種もしくはこれらのアロイを上記配合に添加しても良い。該層の形成方法としては押出ラミネート法が望ましい。さらに本電子部品包装用カバーテープ11を用いて梱包するデバイス(電子部品)の種類に応じて、電子部品包装用カバーテープ11とデバイスの摩擦帯電特性を抑制するために、異なる帯電特性を有する樹脂を添加しても良い。
【0036】
本発明の電子部品包装用カバーテープ11をキャリアテープから剥離する方法として、ヒートシーラント層2を凝集破壊させる方法をとることができる。凝集破壊とは、キャリアテープから剥離される際にヒートシーラント樹脂自身が破れる現象である。凝集破壊は、転写剥離機構や界面剥離機構に比べて同種の樹脂間で剥離を生じるために、剥離時の帯電を抑えることができる。上記ヒートシーラント層2の配合樹脂に、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体から選ばれる1種以上の樹脂を加えることで、凝集破壊可能のヒートシーラント層2とすることができる。さらに水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を加えても良い。該層の形成方法としては、共押出し法、押出ラミネート法が挙げられる。
【0037】
上記ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体をヒートシーラント層2に添加して帯電防止性能を発現させるには、上記相溶性の要素に加え流動性の要素が寄与する。ヒートシーラント層を形成する樹脂を高流動性にするほど、海島構造で製膜した際に島として存在する帯電防止樹脂が形成されやすくなり、帯電防止性能も発現しやすくなる。帯電防止性を効果的に発現させるという観点からは、JIS K6921−2(測定条件:温度190℃−荷重21.18N)におけるメルトフローレートが10g/min以上35g/min以下であることが好ましい。さたに製膜性の観点からは10g/min以上20g/min以下であることが好ましい。
【0038】
(中間層)
本発明の電子部品包装用カバーテープ12は目的に応じて、図2に示すように、基材1とヒートシーラント層2との間に中間層3を設けることができる。
【0039】
(クッション層)
ヒートシール時のクッション性の付与を目的とする場合は、柔軟性を有する樹脂、例えば直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エラストマー系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を用いてクッション層として中間層3を形成することができる。
【0040】
(接着層)
電子部品包装用カバーテープ12の各層間の接着性を高めることを目的とする場合には、マレイン酸変性の接着樹脂の熱溶融加工や、イソシアネート系、イミン系、チタネート系などの接着材料の塗布加工により、接着層として中間層3を形成することができる。その際、塗布加工による場合には、塗布液に帯電防止剤を添加することで、カバーテープの帯電防止性能を向上させることができる。
【0041】
上記接着層に帯電防止性能を付与する際に添加する帯電防止剤としては、炭酸プロピレンにカチオン系界面活性剤を溶解させたものが好ましい。この場合湿度が低くなっても炭酸プロピレンがイオン解離剤として働き、湿度依存性が少ないため、湿度30%RH下においても該塗布膜表面の帯電防止性能を1.0×1012Ω/□以下に抑えることができる。
【0042】
上記界面活性剤としては炭酸プロピレンに溶解し透明であるものが好ましく、例えばカチオン型帯電防止剤の非水系イオン電解液等が挙げられる。非イオン系電解液の中でも帯電防止特性の観点からはアルキル4級アンモニウムエトサルフェートが好ましい。
【0043】
上記のように中間層に帯電防止性能を付与することにより、カバーテープ外部で発生した静電気を効率的に抑えることができる。外部で静電気が発生した場合でも、中間層の帯電防止効果により分極を緩和し、外部の電位をキャンセルするように作用する。例えば、湿度30%RH以下において0.1sec/tactで剥離した際の帯電についても、中間層3の帯電防止効果がなければ発生電圧が150V程度であるのに対して、50V程度まで抑制できる。
【0044】
また中間層は、必要な特性に応じて2以上としてもよい。例えば図3に示すように接着層として中間層4を、クッション層として中間層5を形成し全体として4層となる電子部品包装用カバーテープ13とすると、クッション性と層間強度の向上を同時に達成することができる。
【0045】
(電子部品包装用カバーテープの製造方法)
本発明の電子部品包装用カバーテープの基材層1は、押出による二軸延伸フィルム単層やそれら二軸延伸をラミネートにより積層したフィルムにより形成することができる。ヒートシーラント層2および中間層3は、基材フィルム上にドライラミネート法または押出ラミネート法によって形成することができる。
【0046】
(電子部包装用カバーテープの使用方法)
本発明のカバーテープは、例えば、図4に示すように電子部品の形状に合わせ凹状ポケットが連続的に設けられた電子部品搬送用キャリアテープ6の蓋材7として用いられる。具体的には、カバーテープは、前記凹状ポケットの開口部を密封するようにヒートシールされることにより電子部品包装体20として用いられる。これによりキャリアテープポケット内に収められた電子部品の搬送時の落下防止や、環境異物からの保護が可能となる。
【0047】
電子部品搬送用キャリアテープ6と電子部品包装用カバーテープとから得られる電子部品包装体20は、内容物である電子部品の電気的な破壊防止および開封時のカバーテープへの付着防止の観点から、電子部品包装用カバーテープを電子部品搬送用キャリアテープ6から剥離するときの剥離帯電が300V以下であることが好ましい。
【実施例】
【0048】
本発明の実施例を以下に示すが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(基材層)
基材層として膜厚16μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡、E7415)を使用した。
【0049】
(中間層)
基材層上には、ウレタン−イソシアネート系の2液硬化タイプの接着剤(主剤:三井化学、タケラックA385、硬化剤:タケネートA50)をコーティングすることにより接着層を形成し、さらに接着層上に低密度ポリエチレン(東ソー、ペトロセン203)を押出しラミネート法(押出し温度:300℃)により積層することでクッション層を形成した。
【0050】
(ヒートシーラント層)
表1の配合に従い二軸混練押出機によりヒートシーラント層用の樹脂組成物を作製し、押出ラミネート法によりクッション層上に10μmとなるよう製膜し、電子部品包装用カバーテープを得た。
【0051】
(実施例2)
ヒートシーラント層を表1の配合に従うものとした以外は、実施例1と同じとした。
【0052】
(実施例3)
中間層の接着層として、前記ウレタンアクリレート系接着剤と帯電防止剤(炭酸プロピレンと界面活性剤(日油株式会社製 カチオン系界面活性剤 エレガン 264−WAX)とを50/50の重量比で配合した帯電防止剤)とを表1に示す配合に従い作製した接着剤を用いた以外は、実施例1と同じとした。なお実施例3については、中間層の接着層について表面抵抗値(測定条件23℃−30RH)を測定し、その結果は1.0×1010Ω/□であった。
【0053】
(実施例4)
ヒートシーラント層を表1の配合に従うものとした以外は、実施例1と同じとした。
【0054】
(実施例5)
中間層の接着層を表1の配合に従うものとした以外は、実施例3と同じとした。
【0055】
(比較例1)
ヒートシーラント層をエチレン−アクリル酸メチル共重合体のみからなるものとした以外は実施例1と同じとした。
【0056】
(比較例2)
ヒートシーラント層を表1の配合に従うものとした以外は、実施例1と同じとした。
【0057】
(ヒートシーラント層に用いた原料)
実施例および比較例のヒートシーラント層に用いた原料は以下のとおりである。
・ エチレン−アクリル酸メチル共重合体
:三井・デュポンポリケミカル株式会社製 エルバロイAC 1820
・ スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体
:新日鐵化学株式会社製 エスチレンMS−600
・ ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体
:三洋化成工業株式会社製 ペレスタット212(MFR:12g/10min)
・ アンチモンドープ酸化スズ
:三菱マテリアル電子化成株式会社製 T−1
【0058】
各実施例および比較例について以下の評価を行った。結果は表1に示す。
【0059】
(剥離帯電圧)
カバーテープを5.5mm幅にスリット後、8mm幅のキャリアテープ(素材:カーボン練りこみポリスチレン)に、剥離時の強度が40cNとなるようにヒートシール温度を調整してヒートシール(ヒートシール時の熱コテのサイズ:0.5mm巾×16mm長 2列・4度打ち)を行った。その後、0.1sec/1タクト(4mmピッチ)=平均2,400mm/minでカバーテープを剥離した際のカバーテープ上の帯電圧を測定した。なお、帯電圧の測定はTREK株式会社製の表面電位計を用いて、サンプルとプローブとの間の距離を1mmに設定して実施したものである。剥離帯電圧は絶対値で示す。
【0060】
(ヒートシーラント層の表面抵抗値)
ヒートシーラント層の表面抵抗値(以下単に表面抵抗値という)をJIS K6911に従い測定した。
【0061】
(曇度)
曇度をJIS K7105に従い測定した。
【0062】
【表1】

【0063】
評価結果が示すとおり本件発明の構成を有する実施例は剥離帯電圧、表面抵抗値および曇度において優れたものとなっており、剥離帯電圧に関しては実施例3が特に優れたものとなっている。一方、ヒートシーラント層にポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体およびスチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体を含まない比較例1は、剥離帯電圧および表面抵抗値が大きくなり、ヒートシーラント層にアンチモンドープ酸化スズを含む比較例2は、剥離帯電圧と表面抵抗値は低くなる傾向にあるが曇度が高くなる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の電子部品包装用カバーテープは帯電防止性および透明性に優れるため、内容物の帯電防止性と視認性が求められる電子部品包装用途に好適に用いることができ、特に、電子部品の搬送、保管の際に使用されるキャリアテープのカバーテープとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1・・・基材層
2・・・ヒートシーラント層
3・・・中間層
4・・・中間層(接着層)
5・・・中間層(クッション層)
6・・・電子部品包装用キャリアテープ
7・・・蓋材
11、12、13・・・電子部品包装用カバーテープ
20・・・電子部包装体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に、ヒートシーラント層を備えた電子部品包装用カバーテープであって、
前記ヒートシーラント層がポリオレフィン系樹脂とポリエーテル/ポリオレフィン共重合体とを含むものである電子部品包装用カバーテープ。
【請求項2】
前記ヒートシーラント層中のポリエーテル/ポリオレフィン共重合体の重量比率が10重量%以上70重量%以下である請求項1記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
前記ヒートシーラント層中のポリエーテル/ポリオレフィン共重合体の重量比率が20重量%以上50重量%以下である請求項2記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
前記ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体のメルトフローレート(測定方法:JIS K6921−2、測定条件:温度190℃−荷重21.18N)が10〜35g/10minである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体の群から選ばれる1種以上の樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項6】
前記ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体がブロック共重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項7】
前記ヒートシーラント層がポリスチレン系樹脂をさらに含むものである請求項1〜6に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項8】
前記基材層とヒートシーラント層の間に更に1以上中間層を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項9】
前記中間層が帯電防止剤を含むものである請求項8に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項10】
前記帯電防止剤が炭酸プロピレンおよび界面活性剤を含むものである請求項9記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項11】
前記帯電防止剤を含む中間層の表面抵抗値(測定方法:JIS K6911、測定条件:湿度30%RH−温度23℃)が、1.0E+12Ω未満である請求項9または10に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項12】
前記界面活性剤がカチオン系界面活性剤である請求項10に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項13】
前記カチオン系界面活性剤がアルキル4級アンモニウムエトサルフェートである請求項12記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープと電子部品包装用キャリアテープとがヒートシールされて得られる電子部品包装体であって、前記ヒートシーラント層と前記キャリアテープとが所定の領域でヒートシールされている電子部品包装体。
【請求項15】
前記電子部品包装用カバーテープを前記電子部品包装用キャリアテープから剥離するときの剥離帯電が300V以下である請求項14記載の電子部品包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−214252(P2012−214252A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208649(P2011−208649)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】