説明

電子部品収納容器用蓋材及び電子部品収納容器

【課題】保管安定性及び収納部に対するシール性が良好な電子部品収納容器用蓋材を提供する。
【解決手段】電子部品を収納するための凹部を有する収納部と、この収納部に貼合される蓋部と、を有する電子部品収納容器用蓋材であって、シール層と基材層とを有し、前記シール層は、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を10質量%以上35質量%以下含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)50質量%を超えて90質量%未満と、密度が0.91g/cm以上0.93g/cm未満の低密度ポリエチレン(B)10質量%を超えて50質量%未満と、を含有する熱可塑性樹脂組成物からなり、前記シール層表面の算術平均粗さRaを300nm以上とする(但し、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)及び低密度ポリエチレン(B)の含有量の合計を100質量%とする)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品収納容器用蓋材及び電子部品収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、トランジスタ、コンデンサー等の電子部品の保管や搬送等に際し、電子部品を汚染から保護するための収納容器は、電子部品の形状に合わせた凹部が一定の幅で連続的に設けられた収納部と、この収納部を被覆するための蓋部とからなる。収納部にはポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂が使用されており、蓋部にはポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる単層又は多層フィルムが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材層がポリエステル、ナイロンのいずれかであり、シール層がエチレンとα-オレフィンの重量比率が異なる2種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体からなることを特徴とする電子部品包装用カバーテープが記載されている。
また、特許文献2には、支持体が接着剤層と帯電防止層の積層物であり、接着剤層が、(A)ベースポリマーとしてポリオレフィン系樹脂90〜50重量%と(B)10〜50重量%のモノマー含量5重量%以上のエチレンエチルアクリレート共重合樹脂、エチレンメチルメタアクリレート共重合樹脂、エチレンエチルメタクリレート共重合樹脂のいずれか1種か、又はそれらの混合物である共重合樹脂からなり、帯電防止層がアルキルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートからなることを特徴とする電子部品収納容器用蓋材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−337975
【特許文献2】特開2006−307032
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの蓋材の保管安定性(巻いた状態で保管する場合、夏場のような高温の保管条件下でもシール層と基材層がブロッキングしない)及び収納部に対するシール性に関しては、更なる改良が求められている。
以上の課題に鑑み、本発明では保管安定性及び収納部に対するシール性が良好な電子部品収納容器用蓋材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、電子部品を収納するための凹部を有する収納部と、この収納部に貼合される蓋部と、を有する電子部品収納容器用蓋材であって
シール層と基材層とを有し、
前記シール層は、
不飽和エステル化合物に由来する構成単位を10質量%以上35質量%以下含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)50質量%を超えて90質量%未満と、
密度が0.91g/cm以上0.93g/cm未満の低密度ポリエチレン(B)10質量%を超えて50質量%未満と、を含有する熱可塑性樹脂組成物からなり、
前記シール層表面の算術平均粗さRaが300nm以上であることを特徴とする電子部品収納容器用蓋材(但し、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)及び低密度ポリエチレン(B)の含有量の合計を100質量%とする)を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保管安定性及び収納部に対するシール性が良好な電子部品収納容器用蓋材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る電子部品収納容器用蓋材は、所定のシール層と所定の基材層とを有し、前記シール層が一方の表層を、前記基材層がもう一方の表層を構成するものである。
【0009】
[シール層]
シール層は、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を10質量%以上35質量%以下含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、低密度ポリエチレン(B)と、を含有する熱可塑性樹脂組成物からなり、シール層表面の算術平均粗さRaが300nm以上であることを特徴とするものである。
【0010】
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)とは、エチレンと不飽和エステル化合物とを共重合して得られる重合体をいう。不飽和エステルとしては、ビニルエステル化合物や、不飽和カルボン酸エステル化合物等が挙げられる。ビニルエステル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。不飽和カルボン酸エステル化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等が挙げられる。このうち、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルから選ばれる不飽和カルボン酸エステル化合物であることが特に好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)成分は、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を10質量%以上35質量%以下、好ましくは13質量%以上35質量%以下含有する。
なお、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)における不飽和エステル化合物に由来する構成単位の含有量とは、各エチレン・不飽和エステル共重合体の質量を100%としたときの値をいう。
【0011】
不飽和エステル化合物に由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のプレスシートを用い、赤外線吸収スペクトル分析法により行われる。例えば、不飽和エステルが酢酸ビニルの場合、エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位の含有率はJIS K7192に従い測定することができる。
赤外吸収スペクトルの特性吸収としては、不飽和エステル化合物に帰属されるピークを用い、吸光度をプレスシート厚みで補正して、コモノマー含量を求める。例えば、不飽和エステルが、メタクリル酸メチルの場合、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体のメタクリル酸メチル単位の含有量は、厚み0.3mmのプレスシートを作成し、赤外分光装置を用いて、赤外線吸収スペクトル分析法により測定することができる。赤外吸収スペクトルの特性吸収としては、メタクリル酸メチルに帰属される3448cm−1のピークを用い、下記式に従い、吸光度を厚みで補正して、コモノマー含量を求める。
MMA=4.1×log(I0/I)/t−5.3
〔式中、MMAはメタクリル酸メチル単位の含量(質量%)、Iは周波数3448cm−1での透過光強度、I0は周波数3448cm−1での入射光強度、tは測定試料シートの厚み(cm)を表わす。〕
【0012】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の製造は、特に限定されるものではなく、公知の液相重合方法や高圧ラジカル重合方法などを挙げることができる。高圧ラジカル重合法による成分(A)の製造方法としては、一般に槽型反応器又は管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140MPa以上300MPa以下、重合温度100℃以上300℃以下の条件下でエチレンと不飽和カルボン酸エステルを重合する方法があげられる。また、メルトフローレートの調節には、分子量調節剤として水素やメタン、エタンなどの炭化水素を用いることができる。
エチレン・不飽和エステル共重合体のメルトフローレートは、1g/10分以上30g/10分以下であることがシール性、加工性の観点から好ましい。なお、このメルトフローレートは、JIS K7210に準拠して測定される190℃、2.16kg荷重で測定された値を用いる。
【0013】
<低密度ポリエチレン(B)>
本発明における低密度ポリエチレン(B)とは、JIS K6922−1に準拠して測定される密度が、0.91g/cm以上0.93g/cm未満のポリエチレンをいう。低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合法により製造されたエチレン単独重合体を用いることが好ましい。この低密度ポリエチレン(B)は、加工性の観点から密度が0.915g/cm以上であることが好ましく、耐ブロッキングの観点から、スウェル比が1.5以上であることが好ましい。
【0014】
シール層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量は、シール層のシール性及び加工性の観点から、50質量%を超えて90質量%未満であり、好ましくは55質量%以上85質量%以下である(但し、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)及び低密度ポリエチレン(B)の含有量の合計を100質量%とする)。また、上記熱可塑性樹脂組成物中の低密度ポリエチレン(B)の含有量は、加工性、蓋材の耐ブロッキング性の観点から、10質量%を超えて50質量%未満であり、好ましくは15質量%以上45質量%以下である(但し、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)及び低密度ポリエチレン(B)の含有量の合計を100質量%とする)。
【0015】
また、シール層表面の算術平均粗さRaは300nm以上であり、好ましくは320nm以上である。シール層がこのようなRa値を有することにより、蓋材のシール層と基材層とのブロッキングが抑制され、保管安定性が向上する。本発明におけるシール層表面の算術平均粗さRa(nm)とは、JIS B 0601によって算出された値をいう。具体的には原子間力顕微鏡を用いて計測されたシール層表面の測定断面曲線のデジタルデータを解析することによって求められた値である。Raの調整方法は、低密度ポリエチレンのスウェル比を調節することにより調整することができる。
【0016】
<高分子型帯電防止剤(C)>
また、上記熱可塑性樹脂組成物は高分子型帯電防止剤(C)を含有していることが好ましい。本発明における高分子型帯電防止剤(C)とは、導電性ユニットと非導電性ユニットを有する共重合体からな帯電防止剤であって、導電性ユニットとして、親水性セグメントを有し、非導電性ユニットとして、ポリアミドやポリオレフィン等のユニットを有する高分子化合物よりなる帯電防止剤をいう。
この高分子型帯電防止剤(C)の好ましい含有量は、5質量%〜30質量%であり、より好ましくは5質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは5質量%〜15質量%である。
【0017】
高分子型帯電防止剤(C)としては、例えば特開平1−163234号公報に記載されているポリエーテルエステルアミド系共重合体や、特開2001−278985号公報に記載されているポリオレフィンのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロック共重合体、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する共重合体等が挙げられる。
【0018】
中でも、シール層を形成するエチレン・不飽和エステル共重合体成分(A)及び低密度ポリエチレン(B)との分散性の観点から、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する共重合体を用いることが好ましい。この共重合体のうち、数平均分子量が2,000〜60,000の範囲のものが帯電防止性に特に優れる。また、この高分子型帯電防止剤(C)は、融点が110℃以上180℃以下であることが好ましい。
このような高分子型帯電防止剤(C)を用いることにより、シール層を形成するエチレン・不飽和エステル共重合体成分(A)及び低密度ポリエチレン(B)との分散性が良好となる。このような高分子型帯電防止剤としては、例えば商品名「ペレスタット230」(三洋化成工業(株)製)で市販されている樹脂等が挙げられる。
【0019】
なお、上記熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)以外のエチレン系樹脂や、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ワックスなどを含んでいてもよい。また、相溶化剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防曇剤、抗ブロッキング剤、滑剤などを含んでいてもよい。
【0020】
[基材層]
本発明に係る電子部品収納容器用蓋材で用いられる基材層には、二軸延伸フィルムを用いることが好ましい。二軸延伸フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂より製膜された二軸延伸フィルムが挙げられる。基材層の厚さは好ましくは5μm〜50μmであり、12μm〜35μmであることがより好ましい。この二軸延伸フィルムは公知の帯電防止剤を含有していてもよい。
【0021】
[カバーテープの製造方法]
本発明に係るカバーテープは、基材にシール層を積層させ積層体を製造した後、を所定の形状に成形することにより得られる。積層方法としては、共押出によるインフレーション法、Tダイ法、プレス法等の従来公知の加工方法によって製造することができる。また、基材とシール層を別々にフィルム状に形成し、別々に製造してからラミネーター等により接合して得てもよい。積層体の各層用のフィルムは、例えば、インフレーション法、Tダイ法、プレス法等、種々の方法で製造することができる。そして、積層体を所定幅にスリットすることでカバーテープが得られる。なお、このときシール層は内側に位置するように成形される。
【0022】
シール層は、上記熱可塑性樹脂組成物単独の単独層であっても、シール層とは異なる樹脂組成物よりなる層をさらに積層した積層フィルムであってもよい。積層フィルムとする場合には、前記シール層に隣接する隣接層が1種又は2種以上のオレフィン系樹脂から構成されることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂を用いることがより好ましい。隣接層には本発明の効果を損なわない範囲において相溶化剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、耐抗菌剤、防曇剤、粘着付与剤、抗ブロッキング剤、滑剤等を含んでいてもよい。
【0023】
さらに、本発明の効果が顕著に阻害されない限り、接着剤層、耐熱保護層、印刷層、ガスバリア層、遮光層等を有していてもよい。接着剤層には、ポリエーテル系やポリエステル系の接着剤等を使用することができる。耐熱保護層には、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン等を使用することができる。ガスバリア層には、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等を使用することができる。遮光層には酸化チタン粒子等を使用することができる。
【0024】
本発明に係る電子部品収納容器用蓋材の厚さは、10μm以上300μm以下であることが好ましく、30μm以上200μm以下であることがより好ましい。そして基材層の厚さは5μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上35μm以下であることがより好ましい。シール層の厚さは、3μm以上140μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。シール層、基材層以外の層を設ける場合には、当該層の厚さは電子部品収納容器用蓋材の厚みに対して3%以上70%以下であることが好ましく、5%以上65%以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明の電子部品収納容器用蓋材は、シール性、易剥離性、剥離外観を有し、かつ、耐ブロッキング性に優れる電子部品収納容器用蓋材として好適である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
シール層を形成する熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・不飽和エステル共重合体成分(A)として、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(住友化学(株)製 商品名アクリフト:WH303、メタクリル酸メチル由来の構成単位の含有量18質量%、メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=7g/10分)64質量%、低密度ポリエチレン(B)として(住友化学(株)製 商品名スミカセン:G201−F、密度=919kg/m、メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=2g/10分)19質量%、高分子型帯電防止剤(C)として、商品名ペレスタット230(三洋化成工業製、融点160℃)7質量%を用いた。さらに、抗ブロッキング剤マスターバッチ(住友化学(株)製、EMB−21)8質量%、酸化防止剤マスターバッチ(住友化学(株)製、CMB−719)2質量%を用いた(但し、上記全ての成分の合計を100質量%とする)。
【0028】
上記熱可塑性樹脂組成物を、3種3層共押出インフレーション加工機(押出機A:50mmφ、押出機B:50mmφ、押出機C:50mmφ、層構成=押出機A/押出機B/押出機C)を用い、押出機Aにシール層用の熱可塑性樹脂組成物、押出機B及び押出機Cに直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製、商品名:スミカセンE FV202、密度=925kg/m、メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=1.9g/10分)入れ、押出温度160℃で成形し、シール層、隣接層が順に積層されてなる積層フィルムを製造した。
さらにこの積層フィルムの外層側に、濡れ張力45dyn/cmとなるようにコロナ放電処理を行った。得られた積層フィルムのシール層厚みは14μm、隣接層厚みは19μm、全体厚みは33μmであった。
【0029】
[比較例1]
エチレン・不飽和エステル共重合体成分(A)として、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(住友化学(株)製 商品名アクリフト:WK307、メタクリル酸メチル由来の構成単位の含有量25質量%,メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=7g/10分)56質量%、低密度ポリエチレン(B)として(住友化学(株)製 商品名スミカセン:F208−3、密度=924kg/m、メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=1g/10分))19質量%を用いた。さらに、高分子型帯電防止剤(C)として、商品名ペレスタット230(三洋化成工業製、融点160℃)7質量%、抗ブロッキング剤マスターバッチ(住友化学(株)製、EMB−21)6質量%、滑剤マスターバッチ(住友化学(株)製、EMB−10)9質量%、酸化防止剤マスターバッチ(住友化学(株)製、CMB−719)3質量%からなる熱可塑性樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてシール層と隣接層からなる積層フィルムを得た。得られた積層フィルムのシール層厚みは14μm、隣接層厚みは19μm、全体厚みは33μmであった。
【0030】
[比較例2]
エチレン・不飽和エステル共重合体成分(A)として、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(住友化学(株)製 商品名アクリフト:WK307、メタクリル酸メチル由来の構成単位の含有量25質量%,メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=7g/10分)33質量%、低密度ポリエチレン(B)として(住友化学(株)製 商品名スミカセン:L705、密度=919kg/m、メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=7g/10分))16質量%、高分子型帯電防止剤(C)として、商品名ペレスタット230(三洋化成工業製、融点160℃)5質量%、直鎖状ポリエチレン(住友化学(株)製、商品名スミカセンE:FV402、密度=913kg/m、メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=3.8g/10分))29質量%、抗ブロッキング剤マスターバッチ(住友化学(株)製、EMB−21)6質量%、滑剤マスターバッチ(住友化学(株)製、EMB−10)9質量%、酸化防止剤マスターバッチ(住友化学(株)製、CMB−719)2質量%をからなる熱可塑性樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてシール層と隣接層からなる積層フィルムを得た。得られた積層フィルムのシール層厚みは14μm、隣接層厚みは19μm、全体厚みは33μmであった。
【0031】
実施例1及び比較例1、2で得られた積層フィルムを、下記の方法により評価した。結果を表1に示した。
(1)剥離強度(シール性の評価)
康井精機(株)製コーターを用い、脂肪族エステル系コート剤(主剤=三井武田ケミカル(株)、商品名:タケラックA−515、硬化剤=三井武田ケミカル(株)、商品名:タケネートA−50、酢酸エチルをそれぞれ10対1対15の質量比で配合し十分に混合したもの)を基材層としてポリエステルフィルム(ユニチカ(株)製、商品名:PTMX、厚さ25μm、幅330mm)に塗布し、上記実施例及び比較例で得られた各積層フィルムのコロナ処理面と圧着させた後、40℃のオーブンにて24時間加熱し、評価用フィルムを得た。
【0032】
被着体として、耐衝撃性ポリスチレンHIPS(日本ポリスチレン(株)製:H550、厚み=300μm)、ポリカーボネート(帝人化成製:PC−2151、厚み=200μm)を70×90mmに切り出したものを用い、該被着体と得られた積層フィルムのシール層とを密着させ、圧力3kg/cm2、時間1秒及びシール温度160℃にて巾20mmの帯状(被着体の90mm長さと平行方向に)にヒートシールした。この帯状のシール部分と垂直に、該シール部分を含むように15mm巾間隔に切り出し15mm×70mmの試験片を作製した。
この試験片を、東洋精機(株)オートグラフAGS500D型引張試験機を用いて、23℃雰囲気下、300mm/分の引張速度で180度剥離させたときの剥離強度を測定した。易剥離性は、剥離強度が5〜30N/15mmであれば、シール強度と剥離時のバランスに優れると判断した。
【0033】
(2)ブロッキング性の評価
積層フィルムのブロッキング性は、ASTM d 3354―74,ASTM d 1893―67に準じた方法で、ブロッキング測定を行ない判断した。試験片は、幅10cm×長さ22cmに切出した積層フィルムのシール層と基材層(ポリエステルフィルム層)を重ね合わせ、荷重7kgf、温度40℃雰囲気下で3日間の状態調整を行った。その後、試験片を剥離速度200mm/minで剥離させ、剥離面積100cmあたりの剥離荷重をブロッキング値(g/100cm)とした。ブロッキング値が100g/cm以下のものを○、100g/cmより大きいものを×とした。
【0034】
(3)シール層表面の算術平均粗さ(Ra)
原子間力顕微鏡(AFM)D3000型大型サンプル観測システム(Digital Instruments社製)を使用し、シール層表面の算術平均粗さ(Ra)を求めた。
測定条件
・測定モード :Tapping
・データタイプ :Height
・Scan Rate :0.5Hz
・ライン数 :512ライン
・データポイント数 :512点/ライン
測定領域 :100μm×100μm
【0035】
データ処理
AFM制御ソフトの「Flatten」機能を使用して湾曲補正、ノイズ除去を行って得られた画像から、AFM制御ソフト(NanoScopellla, Digital Instruments社製) の計測機能「Roughness Analysis」を使用してフィルム表面の平均粗さ(Ra)を計算した。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納するための凹部を有する収納部と、この収納部に貼合される蓋部と、を有する電子部品収納容器用蓋材であって
シール層と基材層とを有し、
前記シール層は、
不飽和エステル化合物に由来する構成単位を10質量%以上35質量%以下含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)50質量%を超えて90質量%未満と、
密度が0.91g/cm以上0.93g/cm未満の低密度ポリエチレン(B)10質量%を超えて50質量%未満と、を含有する熱可塑性樹脂組成物からなり、
前記シール層表面の算術平均粗さRaが300nm以上であることを特徴とする電子部品収納容器用蓋材(但し、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)及び低密度ポリエチレン(B)の含有量の合計を100質量%とする)。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、高分子型帯電防止剤(C)を5質量%以上30質量%以下更に含有する請求項1記載の電子部品収納容器用蓋材。
【請求項3】
前記高分子型帯電防止剤(C)は、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックと、を繰り返し構造単位に有する重合体からなるものである請求項1又は2に記載の電子部品収納容器用蓋材。
【請求項4】
前記重合体の数平均分子量は、2,000以上60,000以下である請求項3に記載の電子部品収納容器用蓋材。
【請求項5】
前記基材層が、二軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項1から請求項4いずれかに記載の電子部品収納容器用蓋材。
【請求項6】
請求項1から請求項5いずれかに記載の電子部品収納容器用蓋材とからなる蓋部と、収納部と、からなる電子部品収納容器。

【公開番号】特開2010−215256(P2010−215256A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62523(P2009−62523)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】