説明

電子部品実装体の製造装置

【課題】電子部品に生じた回転方向における位置ずれを確実に補正することにより、実装体の歩留まりを向上できる電子部品実装体の製造装置を提供する。
【解決手段】電子部品Chを搬送する搬送路211と、前記搬送された電子部品Chを吸着して前記ベース部材F上まで移送する移送手段22と、前記搬送路211上の電子部品Chが前記移送手段22に吸着されてから前記ベース部材F上へと移送されるまでの間に、前記移送手段22に吸着された電子部品Chの吸着方向に交差する仮想面における当該吸着方向周りの回転方向における位置ずれを補正する補正手段23とを備え、前記補正手段23は、前記移送手段22に吸着された電子部品Chに当接しないように、前記移送手段22に対して離反した離反位置に設けられており、前記移送手段に吸着された電子部品Chのうち前記位置ずれをしているものを保持して正しい位置に補正し、補正後に当該保持を解く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路が形成されたベース部材上に電子部品を実装するために用いられる電子部品実装体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電波を利用し非接触で通信するICタグが、例えば交通機関の乗車カードやキャッシュカードなどの様々な用途に用いられている。このICタグは、専用の通信装置を使用し、非接触でデータの読み取り及び書き込みができるもので、一般的にはカード状やシール状の形態とされている。
【0003】
このICタグは、図6に示すような電子部品実装体であるICチップ実装体を備えている。このICチップ実装体は、電子回路としての通信用アンテナF1が形成されたアンテナフィルム上に電子部品であるICチップChが実装されたものである。ICタグは、図6に示すように、このICチップ実装体がいわゆるインレットIとして内蔵されたものが一般的である。
【0004】
この電子部品実装体の製造装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に係る発明の製造装置は、図7に示すように、フィーダ101、同期ローラ102が備えられたものであり、フィーダ101で搬送されるICチップ103を同期ローラ102に設けられた吸着ノズル102aに吸着させて搬送し、アンテナフィルム104の表面に供給するようになっている。この際、アンテナフィルム104に形成されている通信用アンテナの電子回路104aにICチップ103のバンプ(電気接点)が電気的に接続される。
【0005】
この特許文献1に係る発明の製造装置は、CCDカメラ106,107によりアンテナフィルム104及びICチップ103の位置情報を得、この位置情報に応じてステージ(図示しない)をX軸方向(アンテナフィルム104の長手方向)及びY軸方向(アンテナフィルム104の幅方向)に移動させ、位置補正を行う構成を有する(特許文献1の明細書0018段落)。
【0006】
ところで、ICチップ103がフィーダ101からアンテナフィルム104へと移送されていく途中に、ICチップ103に位置ずれが起こる場合がある。この位置ずれとしては、例えば、回転方向における位置ずれ、つまり、ICチップ103の中心を通り、当該ICチップ103の表面に直交する軸を仮想した場合における、前記軸周りに回転するような方向(別の表現では、吸着ノズル102aに吸着されたICチップ103の吸着方向(吸引力の方向)に交差する仮想面における当該吸着方向周りの回転方向)のずれ、また、平面方向における位置ずれ、つまり、吸着ノズル102aの中心とICチップ103の中心とが一致しないようなずれ、また、前記の各ずれが複合した位置ずれが挙げられる。
【0007】
このように、ICチップ103に位置ずれが起こると、実装精度が落ちてしまうという問題がある。つまり、アンテナフィルム104に対する実装可能なICチップ103の位置及び角度は、通常は一通りに定められており、この定められた位置及び角度を外れて実装しようとすると、ICチップ103のバンプがアンテナフィルム104における通信用アンテナの電子回路104aに対してずれてしまい、両者が電気的に接続されず、不良実装体が発生する。ちなみに、回転方向における位置ずれに関しては、定められた角度からのずれがある程度大きくなると、ICチップ103のバンプが通信用アンテナの電子回路104aに対して接続されなくなる場合がある。
【0008】
この回転方向における位置ずれが発生する原因としては、例えば、ICチップ103がフィーダ101の振動の影響を受けること、同期ローラ103に吸着された後のICチップ103がフィーダ101の一部等へ接触してしまうこと、同期ローラ103における吸着がICチップ103の面において均一になされず、同期ローラ103に対して斜めに吸い付いてしまうこと、等が考えられる。
【0009】
この回転方向における位置ずれを放置すると、アンテナフィルム104へのICチップ103の実装精度が低下して不良実装体が発生したり、製造装置に設けられた選別手段が位置ずれのあるICチップ103を実装前に排除することで、ICチップ103不実装の不良品(アンテナフィルムだけのもの)が発生したりする可能性があり、実装体の歩留まり向上の障害となる。
【0010】
しかしながら、特許文献1に係る発明の製造装置で補正できる位置ずれは、平面方向(X軸方向及びY軸方向)についてのみであり、回転方向における位置ずれについては補正不可能であった。
【0011】
そこで、回転方向における位置ずれの補正機能を有するものの例として、特許文献2に係る発明の装置が挙げられる。この装置は、フィーダの上方を覆うフィーダカバーが補正ガイドとなり、フィーダ上のICチップがフィーダカバーに当接しつつ吸着ノズルにより吸着されることにより、ICチップの回転方向における位置ずれを補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−252170号公報
【特許文献2】特開2010−225867号公報
【特許文献3】特開2006−309541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献2に係る発明のフィーダは振動によりICチップを搬送するものであり、フィーダカバーもまた、フィーダの振動を受けて振動してしまうため、このような振動下での補正は不完全であった。また、この装置では、全てのICチップがフィーダカバーに当接するため、回転方向における位置ずれのないICチップが振動しているフィーダカバーに当接することで、位置ずれが新たに発生してしまうこともあり得た。つまり、特許文献2に係る発明の装置では補正精度を高めることが難しかった。
【0014】
また、回転方向における位置ずれの補正機能を備えるものの例として、前記の他に、特許文献3に係る発明の製造装置が挙げられる。この製造装置は、図8に示すように、フィーダ201、ロータリーヘッド部202、同期ローラ203が備えられたものであり、ICチップ204を順次搬送してアンテナフィルム205の表面に供給するようになっている。ICチップ204は、フィーダ201からロータリーヘッド部202へ、次いで、ロータリーヘッド部202から同期ローラ203へ移送されていく。この移送は、ロータリーヘッド部202に複数設けられたノズルユニット202aと同期ローラ203の吸着孔203aの各々が、空気圧(負圧)による吸引力でICチップ204を吸着することによりなされる。
【0015】
この特許文献3に係る発明の製造装置は、ロータリーヘッド部202のノズルユニット202aにおけるシリンダ部が回転する構成を有しており(特許文献3の明細書0027段落)、当該構成が回転方向における位置ずれの補正手段に相当する。つまり、ノズルユニット202aに吸着されたICチップ204を回転させることで、回転方向における位置ずれ補正を行うことができる(同0045段落)。しかしながら、この構成によると、複数設けられたノズルユニット202a全てのシリンダ部を回転できるようにしておく必要があり、製造装置の構成及び補正の制御が複雑になってしまっていた。よって、この構成では、製造装置の製造コストが上昇してしまうため問題があった。
【0016】
そこで本発明は、前記した問題に鑑み、簡素な構成でありながら電子部品に生じた回転方向における位置ずれを確実に補正でき、実装体の歩留まりを向上できる電子部品実装体の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電子部品実装体の製造装置は、電子回路が形成されたベース部材上に電子部品を実装するために用いられる電子部品実装体の製造装置において、ベース部材を搬送するベース部材搬送部と、電子部品を前記ベース部材上に供給する電子部品供給部とを備え、前記電子部品供給部は、電子部品を搬送する搬送路と、前記搬送された電子部品を吸着して前記ベース部材上まで移送する移送手段と、前記搬送路上の電子部品が前記移送手段に吸着されてから前記ベース部材上へと移送されるまでの間に、前記移送手段に吸着された電子部品の吸着方向に交差する仮想面における当該吸着方向周りの回転方向における位置ずれを補正する補正手段とを備え、前記補正手段は、前記移送手段に吸着された電子部品に当接しないように、前記移送手段に対して離反した離反位置に設けられており、前記移送手段に吸着された電子部品のうち前記位置ずれをしているものを保持して正しい位置に補正し、補正後に当該保持を解くことを特徴としている。
【0018】
前記構成によると、補正手段が、移送手段に吸着された電子部品に当接しないように離反位置に設けられており、移送手段に吸着された電子部品のうち前記位置ずれをしているものを保持して正しい位置に補正し、補正後に当該保持を解くことから、正しい位置にある電子部品は補正手段が当接しないために正しい位置が保たれ、位置ずれしている電子部品は補正手段により確実に補正がなされる。よって、補正精度を高めることができる。そして、この補正手段は、移送手段とは別に設けられるものであるから、移送手段で位置ずれ補正を行うものに比べると簡素な構成とできる。
【0019】
そして、前記補正手段は、前記離反位置と当該離反位置よりも前記移送手段に対して接近した接近位置との間を移動可能に構成され、前記移送手段に吸着された電子部品のうち前記位置ずれをしているものを、前記接近位置に位置した以後に正しい位置に補正することが好ましい。
【0020】
前記好ましい構成によると、補正手段が移動可能に構成され、移送手段に吸着された電子部品のうち前記位置ずれをしているものを、接近位置に位置した以後に正しい位置に補正することから、より移送手段に近い位置で電子部品の補正をすることができる、あるいは、より移送手段に近い位置で移送手段から電子部品を受け取った上で補正をすることができる。
【0021】
そして、本発明の電子部品実装体の製造装置は、前記補正手段が設けられた位置よりも、前記移送手段における移送方向上流側に、当該移送手段に吸着された電子部品のうち前記補正手段による補正を必要とするものを判別するための判別手段を備えたものとすることが好ましい。
【0022】
前記好ましい構成によると、判別手段を備えたことから、補正を必要とする電子部品を確実に判別できる。
【0023】
そして、本発明の電子部品実装体の製造装置は、前記移送手段は、電子部品を吸着する吸着部を複数備えたもので、一の吸着部で電子部品を吸着する際には移送を停止するように構成されており、前記補正手段は、前記移送手段が移送を停止している間に、他の吸着部で吸着されている電子部品のうち前記位置ずれをしているものを正しい位置に補正することが好ましい。
【0024】
前記好ましい構成によると、補正手段が、移送手段が移送を停止している間に電子部品の位置ずれを補正することから、補正を確実に行うことができる。
【0025】
なお、以下に説明する各実施形態はいずれもICチップ実装体の製造装置についてのものであるが、本発明の技術的範囲はこれに限定されず、電子回路が形成されたベース部材上に電子部品を供給するために用いられる電子部品実装体の製造装置全般に及ぶ。前記「電子回路」は電子部品に電気的に接続されることで機能を発揮するものであり、以下の各実施形態では通信用アンテナF1の電子回路が相当する。前記「ベース部材」は前記電子回路が形成されたものであり、以下の各実施形態ではアンテナフィルムFが相当する。そして、「電子部品」は以下の各実施形態ではICチップChが相当するが、その他、種々の集積回路やLEDなどの電子部品が例示できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、簡素な構成でありながら電子部品に生じた回転方向における位置ずれを確実に補正でき、実装体の歩留まりを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るICチップ実装体の製造装置を示す概略図である。
【図2】同実施形態に係るICチップ実装体の製造装置の要部を示す概略図である。
【図3】バッファの概念を説明するための略図である。
【図4】補正手段により位置ずれ補正がなされる際のタイミングチャートである。
【図5】位置ずれ補正を行う際の、同期ローラの吸着ノズルと補正手段の補正用吸着ノズルとの位置関係を、順を追って示した概略図である。
【図6】ICタグの構造の一例を示す概略図である。
【図7】特許文献1のICチップ実装体の製造装置を示す概略図である。
【図8】特許文献3のICチップ実装体の製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明につき一実施形態を取り上げて、図面とともに説明を行う。
【0029】
本実施形態のICチップ実装体の製造装置の概略は図1に示すものであって、フィルム搬送部(ベース部材搬送部)1、ICチップ供給部(電子部品供給部)2、アンテナフィルム供給部3、保護紙供給部4、接着剤キュア部5、保護紙巻取部6、製品テスト部7、製品巻取部8を備える。前記のフィルム搬送部1はクロックローラ11を備える。前記のICチップ供給部2は、図2に示すように搬送路211、同期ローラ(移送手段)22、補正手段23、判別手段としての撮像手段(チップ確認カメラ)Ca2、制御手段24の各々を備える。なお、フィルム搬送部1とICチップ供給部2を除いた製造装置の構成要素についての、本明細書における記載は説明上必要な範囲にとどめている。
【0030】
フィルム搬送部1は、図1に示すように、通信用アンテナF1が形成された長尺のアンテナフィルムFを搬送するものである。前記の搬送はアンテナフィルムFの長手方向へ定速でなされる。クロックローラ11は、図2に示すように、後述の同期ローラ22と外周面が対向するように設けられており、図1に示すように、このクロックローラ11の外周面にアンテナフィルムFが巻き付けられ、クロックローラ11が方向R11(図2参照)に回転することでアンテナフィルムFが搬送される。
【0031】
搬送路211は、本実施形態では、パーツフィーダ21のトラフの一部として構成されており、複数のICチップChが搬送面211aに沿って順次搬送される。ICチップChの搬送は、例えば電磁振動によりなされるが、振動以外の種々の原理で搬送がなされるものであって良い。本実施形態で搬送されるICチップChは、扁平な平面視四角形状のものであり、裏面には電気接点であるバンプが突出している。ただし、ICチップChの形状は本実施形態のものに限定されるものではない。
【0032】
本実施形態では、前記搬送面211aが、図2に示すように、水平方向に対して角度を持って設けられている。そして、搬送中のICチップChは、電気接点であるバンプが搬送面211aの方を向く。搬送路211におけるICチップChの表裏は、CCDカメラ(図示しない)によって監視されており、バンプが搬送面211aと反対側を向いているICチップChは、同期ローラ22が吸着する前に搬送路211から排除される。
【0033】
同期ローラ22は円筒状のローラであり、図2に示すように、その外周には円筒状の吸着ノズル221が複数、径外方向に突出している。この吸着ノズル221は同期ローラ22の外周に、周方向に等間隔で設けられている。なお、本実施形態では、パーツフィーダ21により搬送された電子部品であるICチップChを吸着してベース部材であるアンテナフィルムF上まで移送する移送手段が同期ローラ22のみからなるが、例えば、特許文献3に記載された、ロータリーヘッド部202と同期ローラ203のように、複数の手段が組み合わされてなるものであっても良い。このように移送手段が、複数の手段が組み合わされてなる場合には、移送工程の最後に補正を行うようにするため、当該複数の手段のうちでアンテナフィルムFに最も近い位置に設けられた一つの手段に補正手段23を設けることが望ましい。
【0034】
同期ローラ22は方向R22(図2参照)に回転するものであり、前記のクロックローラ11の回転軸に対して同期ローラ22の回転軸が平行に配置されている。この同期ローラ22は特許文献1に記載されたものと同じで、内部が固定されており、外部が回転する構造である。内部には、図2に示すように、大気圧と負圧とを切り替え可能な第1隔室222a、常時負圧の第2隔室222b、大気圧と正圧とを切り替え可能な第3隔室222cが設けられており、各隔室に対して外部が回転することで、吸着ノズル221の空気通路221aが第1隔室222aに一致した際には負圧によりICチップChの吸着がなされ、第2隔室222bに一致している際には負圧により前記の吸着が継続し、第3隔室222cに一致した際にはICチップChが吸着ノズル221から離れる。これにより、同期ローラ22が搬送路211上のICチップChを個々に吸着していき、同期ローラ22の外周に保持しつつ回転し、クロックローラ11の外周面と同期ローラ22の外周面が対向した際に、ICチップChをアンテナフィルムFへと放出する。各隔室222a〜222cの気圧については、各々一定に設定しても良いし、補正手段23の内部気圧に応じて変化させるものとしても良い。
【0035】
この同期ローラ22は間欠的に回転するものであり、停止時において、同期ローラ22がICチップChを吸着ノズル221に吸着させる。なお、この吸着は、ICチップChの表面(バンプが突出している側の面とは反対の面)についてなされる。そして同期ローラ22の回転時には、同期ローラ22がクロックローラ11と同期回転し、クロックローラ11と等速で搬送されているアンテナフィルムFにICチップChを供給する。なお、前記「同期回転」は、同期ローラ22とクロックローラ11の回転速度が一致することまでは要求されず、アンテナフィルムFにICチップChを供給する時点で、アンテナフィルムFと吸着ノズル221に吸着されたICチップChとが等速となるように同期ローラ22が回転するようになされれば良い。なお、アンテナフィルムFの長手方向についてのICチップChの位置ずれは、同期ローラ22の回転を調整することにより補正される。
【0036】
アンテナフィルムFへのICチップCh供給の際には、アンテナフィルムF上に接着剤供給手段12から供給された接着剤Gが塗布されており、前記のようにアンテナフィルムF上に置かれたICチップChが固定され、通信用アンテナF1の電子回路にICチップChのバンプが電気的に接続される。なお、通信用アンテナF1の位置を認識するため、クロックローラ11の径外位置であり、アンテナフィルムFを撮影可能な位置にCCDカメラであるアンテナ確認カメラCa1が設けられている。前記認識された通信用アンテナF1の位置に合わせるように、接着剤供給手段12における接着剤Gの塗布タイミング及び同期ローラ22のクロックローラ11に対する同期回転が制御される。これらの制御は、図2に示す制御手段24によりなされる。
【0037】
また、この同期ローラ22は、クロックローラ11に対して幅方向に移動可能に設けられており、アンテナフィルムF上にICチップChを置く位置を調整できる。この調整は、アンテナ確認カメラCa1で通信用アンテナF1の幅方向における位置を認識し、同期ローラ22の径外位置に設けられたCCDカメラであるチップ確認カメラCa2が同期ローラ22に吸着されたICチップChを撮像して位置を認識し、各カメラCa1,Ca2で認識された位置情報を基に同期ローラ22に設けられた位置調整用モータ(特許文献3及び2に記載されたものと同一構成のもの、図示しない)を駆動することによりなされる。これにより、アンテナフィルムFの幅方向についてのICチップChの位置ずれが補正される。つまり、このチップ確認カメラCa2は、同期ローラ22に吸着されたICチップChのうち幅方向における位置ずれの補正を必要とするものを判別するために用いられる。
【0038】
本実施形態の補正手段23は、前記のように同期ローラ22の回転速度の調整(アンテナフィルムFの長手方向についてのICチップChの位置ずれ補正)、及び、同期ローラ22の幅方向への移動させること(アンテナフィルムFの幅方向についてのICチップChの位置ずれ補正)だけでは対処することのできない、回転方向におけるICチップChの位置ずれ補正を行うために設けられている。なお、前記「回転方向」とは、吸着ノズル221に吸着されたICチップChの吸着方向(吸引力の方向)に交差する仮想面における当該吸着方向周りの回転方向である。前記「交差」は、本実施形態では「直交」であるが、これに限定されない。また、「回転方向」をアンテナフィルムFを基準として表現すると、当該アンテナフィルムFの法線(アンテナフィルムFの表面に直交する方向に延びる仮想の線)を中心とした回転方向である。
【0039】
この補正手段23は、前記チップ確認カメラCa2が設けられた位置よりも、同期ローラ22の回転方向下流側に設けられている。補正手段23は一箇所に設けられている。よって、特許文献3に係る発明のようにノズルユニット102a全てのシリンダ部が回転するような構成とせずに位置ずれ補正を行うことができるため、本実施形態の構造は比較的簡素なものとなり、製造装置のコスト上昇を最小限に抑えることができる。
【0040】
図2に示すように、補正手段23は、軸線が同期ローラ22の径方向に沿うように配置された補正手段本体231と、補正手段本体231の軸方向における同期ローラ寄り先端に位置する、ICチップ保持手段としての補正用吸着ノズル232とを備えている。前記補正手段23の配置につき、より詳しくは、回転停止時における同期ローラ22の吸着ノズル221のうち、所定の吸着ノズル221(具体的には、チップ確認カメラCa2よりも回転方向下流側にある吸着ノズル221のうち一つ)の軸線と補正手段23の軸線とが同軸となる。
【0041】
この補正手段23は、内部気圧を変化(負圧・大気圧・正圧)させることにより、補正用吸着ノズル232がICチップChを吸着したり、補正用吸着ノズル232からICチップChを放出したりできる。また、吸着力を調整することもできる。これにより、同期ローラ22の吸着ノズル221との間でICチップChの授受を行うことができる。
【0042】
また、この補正手段23はアクチュエーターを備えている。このアクチュエーターにより、間欠的に回転する同期ローラ22の停止時における、所定の吸着ノズル221の先端位置を基準として、同軸方向に補正手段23を接近・離反させることができる(当該先端位置に対して前進・後退させることができる)。このように接近・離反をさせるため、補正手段23のうち少なくとも補正用吸着ノズル232が軸方向に移動可能な構成とされている。補正手段23の接近・離反は、制御部24の指示を受けてなされる。
【0043】
また、補正手段23は、前記アクチュエーターにより、軸方向周りに回動可能に構成されている。このように回動をさせるため、補正手段23のうち少なくとも補正用吸着ノズル232が回動可能な構成とされている。補正手段23の回動は、制御部24の指示を受けてなされる。
【0044】
ところで、補正手段23の補正用吸着ノズル232は、吸着ノズル221から離反した際に、当該吸着ノズル221に吸着されたICチップChに接触しない程度に同期ローラ22から距離が保たれる。言い換えると、離反の際に、補正用吸着ノズル232の先端は、吸着ノズル221に吸着されたICチップChの、同期ローラ22の回転に伴う軌跡のうちで最も外側の軌跡よりも外側に位置している。このように離反の際に補正用吸着ノズル232と同期ローラ22との距離を保つことにより、補正用吸着ノズル232が補正の必要がないICチップCh(すなわち、回転方向における位置ずれがない正規姿勢のICチップCh)に接触することがないため、ICチップChの位置ずれを新たに生じさせてしまうことがない。
【0045】
一方、補正用吸着ノズル232は、吸着ノズル221へ接近した際に、吸着ノズル221に吸着されたICチップChの裏面(バンプが突出している側の面)に接することが望ましい(図5(B)(E)参照)。これにより、吸着ノズル221と補正用吸着ノズル232との間でICチップChの授受を行う際にICチップChが空中を移動することがなく、空中移動の途中でICチップChに位置ずれを発生させることがない。
【0046】
ただし、補正用吸着ノズル232と吸着ノズル221との間でICチップChの授受を行う際に、ICチップChに位置ずれが発生しない程度に、吸着ノズル221へ接近した際に補正用吸着ノズル232をICチップChの裏面からわずかに離すことは可能である。
【0047】
次に、制御手段24は、チップ確認カメラCa2が撮像したICチップChの画像を基に、位置ずれを認識して同期ローラ22(回転速度及びクロックローラ11に対する位置)及び補正手段23を制御する。これにより、本実施形態のICチップ実装体の製造装置は、ICチップChの、アンテナフィルムFの長手方向及び幅方向についての位置ずれ補正、及び、回転方向の位置ずれ補正をできる。
【0048】
この制御手段24による補正手段23の制御は、ICチップChの回転方向における位置ずれ補正に関し、正しい位置で吸着ノズル221に吸着されているICチップChに対しては補正手段23を動作させず、回転方向における位置ずれ(許容範囲を超えた位置ずれ)のあるICチップChに対しては補正手段23を動作させて補正を行うものとされており、無駄のない位置ずれ補正が可能である。
【0049】
この制御手段24には、チップ確認カメラCa2の位置から実装位置までの間における同期ローラ22の停止位置毎に、情報格納可能なバッファ(空き領域)が設定されている。このバッファは、図2に示す同期ローラ22を図示の位置関係で用いた場合、図3に(A)〜(H)の縦方向の各列に示したものである。各列にて、チップ確認カメラCa2の位置に対応するバッファが7番バッファとされ、実装位置に向かうにつれ振られたバッファ番号が一つずつ少なくなり、実装位置に対応するバッファが0番バッファとなる。なお、補正手段23の位置に対応するバッファは4番バッファとなる。
【0050】
各バッファには、チップ確認カメラCa2が得たICチップChの画像を基に検出された、同期ローラ22上における個々のICチップChを識別する識別情報が格納される。この識別情報には位置ずれの情報も含まれており、これにより、制御手段24はICチップChの位置ずれを認識することができる。
【0051】
ここで、図3上の(A)の列は、7番バッファにチップ確認カメラCa2の位置にあるICチップChの位置情報(図示○印)が格納された状態を示している(他のバッファにも他のICチップChの識別情報が格納されるが、説明上、図示を省略している)。そして、同期ローラ22の間欠的な回転に伴い、前記の識別情報は6番バッファ、5番バッファの順に順次移動していき(補正手段23による、回転方向における位置ずれの補正は、4番バッファに対応する位置にあるICチップChに対し、必要に応じてなされる)、実装位置に対応する0番バッファに至る。このように各バッファに識別情報を格納することにより、制御手段24は、個々のICチップChが、ある特定の時点においてICチップ供給部2のどの位置にあるかを把握できる。そして、識別情報に含まれる位置ずれの情報を用いることにより、制御手段24が補正手段23を適切に制御して位置ずれ補正をできる。
【0052】
本実施形態の補正手段23によると、従来から行ってきた同期ローラ22の回転速度の調整(アンテナフィルムFの長手方向についてのICチップChの位置ずれ補正)、及び、同期ローラ22の幅方向への移動(アンテナフィルムFの幅方向についてのICチップChの位置ずれ補正)に加え、回転方向におけるICチップChの位置ずれ補正を更に行うため、位置ずれのないICチップChを実装でき、実装体の歩留まり向上が期待できる。
【0053】
次に、補正手段23の動作につき、回転方向における位置ずれ補正がなされる際のタイミングチャート(図4)、及び、吸着ノズル221と補正用吸着ノズル232の位置関係を示す概略図(図5)を参照しつつ説明する。図4は、同期ローラ22の間欠的な回転の一動作(回転を開始してから停止し、次の回転が開始する直前まで)を「1サイクル」として示している。なお、本実施形態では、1サイクルの所要時間を0.12秒としている。
【0054】
まず、回転していた同期ローラ22が停止する(図4中の記号a)。この時点の吸着ノズル221と補正用吸着ノズル232の位置関係は図5(A)に示すようになっている。すなわち、この時点では、吸着ノズル221と補正用吸着ノズル232とは同軸上にあり、各ノズル221,232の先端が対向している。次に、チップ確認カメラCa2が撮像したICチップChの画像を基に、制御手段24がICチップChの吸着ノズル221に対する角度を含む識別情報を認識する(記号i)。前記制御手段24の認識により、回転方向における位置ずれの角度があらかじめ定められた角度よりも大きいために補正の必要があるICチップChが特定される。なお、識別情報は前記のようにバッファに格納され、ICチップ供給部2におけるICチップChの位置把握のために用いられる。
【0055】
制御手段24が位置ずれ補正の必要があるICチップChを特定した場合、補正手段23の補正用吸着ノズル232が吸着ノズル221に向かって前進し、所定距離移動したところで停止する(記号b)。この時点の各ノズル221,232の位置関係は図5(B)に示すようになり、ICチップChの表面が吸着ノズル221に接し、同裏面が補正用吸着ノズル232に接した状態となっている。
【0056】
次に、補正用吸着ノズル232の内部が負圧とされ、ICチップChが補正用吸着ノズル232に吸着される(記号d)。なお、この時点では吸着ノズル221の内部も同じく負圧となっているため、補正用吸着ノズル232の吸着力が吸着ノズル221の吸着力よりも強くなるように圧力を設定しておく必要がある。これにより、ICチップChが補正用吸着ノズル232に保持される。そして、補正用吸着ノズル232が吸着ノズル221から後退し、所定距離移動したところで停止する(記号c)。この時点の各ノズル221,232の位置関係は図5(C)に示すようになる。
【0057】
次に、補正用吸着ノズル232が回転し、補正用吸着ノズル232に吸着されたICチップChが回転方向において正しい位置とされる(記号e)。そして、図5(D)に示すように、補正用吸着ノズル232が吸着ノズル221に向かって前進し、所定距離移動したところで停止する(記号f)。この時点の各ノズル221,232の位置関係は図5(E)に示すようになる(図5(B)に示すのと同じ状態である)。
【0058】
次に、補正用吸着ノズル232の内部が正圧あるいは大気圧とされ、ICチップChが補正用吸着ノズル232から放出される、あるいは補正用吸着ノズル232に吸着されなくなる(記号d,g)。この時点でも吸着ノズル221の内部は依然負圧となっているため、補正用吸着ノズル232の吸着力が吸着ノズル221の吸着力よりも弱くなり、ICチップChは同期ローラ22の吸着ノズル221に再度吸着される。これにより、補正用吸着ノズル232によるICチップChの保持が解かれる。
【0059】
次に、補正用吸着ノズル232が吸着ノズル221から後退し、所定距離移動したところで停止する(記号h)。この時点の各ノズル221,232の位置関係は図5(F)に示すようになる(図5(A)に示すのと同じ状態である)。これで1サイクルが終了となり、停止していた同期ローラ22が再度回転する(記号a)。
【0060】
以上、実施形態をいくつか取り上げて説明してきたが、本発明に係る電子部品実装体の製造装置の具体的構成については、前記の実施形態に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、本実施形態と異なり、同期ローラ22に対して補正用吸着ノズル232が接近・離反しない構成としても良い。この場合では、吸着ノズル221との間にICチップChが触れない程度の間隔を空けておき、補正手段23の内部圧力を変化させることで同期ローラ22の吸着ノズル221との間でICチップChの授受を行うことができる。
【0062】
また、ICチップChの吸着及び放出は、補正用吸着ノズル232の圧力調整だけで行うものでなく、同期ローラ22の吸着ノズル221及び補正手段23の補正用吸着ノズル232の双方の内部圧力を変化させ、両者の圧力バランスにより行うものであっても良い。
【0063】
また、補正手段23は本実施形態のような吸着ではなく、挟持手段等の機械的移動手段により補正を行うものであっても良い。つまり、移送手段(同期ローラ)22に吸着された電子部品(ICチップ)Chのうち回転方向における位置ずれをしているものを保持して正しい位置に補正できる構成であれば種々の構成を採用できる。
【0064】
また、判別手段は、本実施形態のチップ確認カメラCa2のように撮像を行うものに限られず、画像認識、姿勢認識、位置認識等を行うことのできるセンサ等、種々の手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ベース部材搬送部、フィルム搬送部
2 電子部品供給部、ICチップ供給部
211 搬送路
22 移送手段、同期ローラ
221 吸着部、吸着ノズル
23 補正手段
Ca2 撮像手段、チップ確認カメラ
Ch 電子部品、ICチップ
F ベース部材、アンテナフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路が形成されたベース部材上に電子部品を実装するために用いられる電子部品実装体の製造装置において、
ベース部材を搬送するベース部材搬送部と、電子部品を前記ベース部材上に供給する電子部品供給部とを備え、
前記電子部品供給部は、電子部品を搬送する搬送路と、前記搬送された電子部品を吸着して前記ベース部材上まで移送する移送手段と、前記搬送路上の電子部品が前記移送手段に吸着されてから前記ベース部材上へと移送されるまでの間に、前記移送手段に吸着された電子部品の吸着方向に交差する仮想面における当該吸着方向周りの回転方向における位置ずれを補正する補正手段とを備え、
前記補正手段は、前記移送手段に吸着された電子部品に当接しないように、前記移送手段に対して離反した離反位置に設けられており、前記移送手段に吸着された電子部品のうち前記位置ずれをしているものを保持して正しい位置に補正し、補正後に当該保持を解くことを特徴とする電子部品実装体の製造装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記離反位置と当該離反位置よりも前記移送手段に対して接近した接近位置との間を移動可能に構成され、前記移送手段に吸着された電子部品のうち前記位置ずれをしているものを、前記接近位置に位置した以後に正しい位置に補正することを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装体の製造装置。
【請求項3】
前記補正手段が設けられた位置よりも、前記移送手段における移送方向上流側に、当該移送手段に吸着された電子部品のうち前記補正手段による補正を必要とするものを判別するための判別手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品実装体の製造装置。
【請求項4】
前記移送手段は、電子部品を吸着する吸着部を複数備えたもので、一の吸着部で電子部品を吸着する際には移送を停止するように構成されており、
前記補正手段は、前記移送手段が移送を停止している間に、他の吸着部で吸着されている電子部品のうち前記位置ずれをしているものを正しい位置に補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品実装体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−77772(P2013−77772A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218001(P2011−218001)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】