説明

電子部品実装用接合材料

【課題】電子部品の電極と回路基板上の電極との接合の信頼性が高く、対向電極間における導電性に優れ、低コストで電子部品を回路基板に接続できる電子部品実装用接合材料を提供すること。
【解決手段】導電性フィラーと、該導電性フィラーの融点以下では硬化が完了しない熱硬化性樹脂とを含む、電子部品と回路基板との接合に用いられる電子部品実装用接合材料であって、前記熱硬化性樹脂として、(1)エポキシ当量100〜400g/eqのエポキシ樹脂を15〜70モル%、(2)4、4’‐メチレンジ゛アニリンを30〜70モル%、(3)ジカルボン酸系化合物、ヒドロキシ酸系化合物等から選ばれた少なくとも1種の表面活性剤を5〜40モル%含有する組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回路基板上に半導体チップ等の電子部品をフリップチップ等の方法で実装する際に用いる電子部品実装用接合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、パッケージの小型化がなされ、半導体素子等の電子部品を回路基板上に実装する際の、多ピン化、小型化等の高密度実装化が求められている。そして、これらを実現させる実装技術としてCSP(Chip Size Package)、BGA(Ball Grid Array)等のエリアバンプアレイ型のフリップチップ実装が主流となりつつある。
【0003】
従来のフリップチップ実装には、鉛や錫等の低融点金属あるいは低融点金属合金等の半田バンプを実装面に形成し、半田バンプのセルフアライメント効果を利用して実装する方法がとられていた。しかしながら、この実装方法では半田溶融を利用するため、さらなる高密度実装に伴う多ピン化、狭ピッチ化に対しては、流動性の多寡により各種不具合、例えば隣接する半田バンプ同士が、溶融により繋がってしまう半田ブリッジ等の問題点があった。また、半田の鉛フリー化に伴い、半田の溶融には比較的高温を要するようになり、電子部品への熱的ダメージが生じ易いという問題があった。
【0004】
そこで、電子部品への熱的ダメージを低減するため、例えば、熱硬化性樹脂と導電性フィラーとからなる接合材料等を用いて、回路基板に電子部品を実装するといったことがなされており、例えば、下記特許文献1では、金属粒子と、該金属粒子よりも平均粒子径の大きい金属コーティング粒子と、熱硬化性樹脂とを含む接合材料を介して素子電極と回路電極とを接合し、回路基板上に電子部品を実装することが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、回路基板上に接着性を有する樹脂フィルムを配置し、樹脂フィルムを介して電子部品の素子電極と、回路基板の回路電極とを接合し、電子部品の表面と回路基板の表面及び樹脂フィルムの表面を覆うように絶縁性樹脂を塗布・硬化させて回路基板上に電子部品を実装することが開示されている。
【0006】
しかしながら、このような熱硬化性樹脂と導電性フィラーとからなる接合材料を用いて、電子部品を接合した場合、接合材料中の導電性フィラーが導通のために有効的に作用しきれないことがあり、電気的接合に十分な信頼性が得られないことがあった。
【0007】
そこで、例えば、下記特許文献3に開示されているように、導電性フィラーと、該導電性フィラーの融点以下では硬化が終了しないような熱硬化性樹脂と、表面活性剤とを含む接合材料を用いて、回路基板上に電子部品を実装することが知られている。
【0008】
このように、接合材料に表面活性剤を配合することで、電極表面や導電性フィラーの表面状態を活性化させ、酸化被膜が形成されにくくなるので、導電性フィラーの流動性や凝集性を向上させることができる。また、接合材料の熱硬化性樹脂として、接合材料に用いる導電性フィラーの融点以下で硬化が完了しないものを選択することで、電子部品と回路基板との接合時における加熱工程において、導電性フィラーが溶融する時点では、熱硬化性樹脂は完全に硬化完了していないことから、導電性フィラーが熱硬化性樹脂中を流動して広がり、この溶融した導電性フィラー同士が凝集して対向電極間の導電経路となるので、電気的接合に十分な信頼性を得ることができる。
【特許文献1】特開2000‐251536号公報
【特許文献2】特開2001‐35884号公報
【特許文献3】特開2004‐260131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
導電性フィラーと熱硬化性樹脂とを含む接合材料を用いて電子部品を実装する場合、高温特性や熱疲労寿命に問題があり、充分な接合部の信頼性が得られないという問題があった。すなわち、導電性フィラーと熱硬化性樹脂とを含む接合材料を用いた電子部品の実装方法は、熱硬化性樹脂を硬化させて電子部品の素子電極と回路基板の回路電極とを接合させるが、熱硬化性樹脂の急激な加熱・硬化により硬化物中の残留応力が増大し、樹脂硬化物又は電子部品の素子電極に微細なマイクロクラックが生じ、接合の信頼性が低下する虞があるからである。上記特許文献1〜3の接合材料であっても接合の信頼性が十分なものではなかった。
【0010】
また、上記特許文献3のように、接合材料に表面活性剤を配合した場合、樹脂や表面活性剤の種類、又はその配合量によっては、ブリードアウトが生じたり、熱硬化過程でボイドが生じたりすることがあり、それによって電気的接合の信頼性が損なわれる場合があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、電子部品の電極と回路基板上の電極との接合の信頼性が高く、対向電極間における導電性に優れ、低コストで電子部品の電極を回路基板に接続できる電子部品実装用接合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するにあたって、本発明の電子部品実装用接合材料は、導電性フィラーと、該導電性フィラーの融点以下では硬化が完了しない熱硬化性樹脂とを含む、電子部品と回路基板との接合に用いられる電子部品実装用接合材料であって、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ当量100〜400g/eqのエポキシ樹脂を15〜70モル%、4、4’‐メチレンジ゛アニリンを30〜70モル%、下式(a−1)〜(a−5)で表される表面活性剤から選ばれた少なくとも1種を5〜40モル%含有する組成物であることを特徴とする。
【0013】
【化1】



(式中、R、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数1〜10のアルケニレン基、シクロへキシレン基、シクロヘキセニレン基から選ばれた1種を表し、Xは、アミノ基を有しても良い炭素数1〜10のアルキレン基、アミノ基を有しても良い炭素数1〜10のアルケニレン基、フェニレン基、シクロへキシレン基、シクロヘキセニレン基、ピリジレンから選ばれた1種を表す。)
【0014】
上記組成からなる熱硬化性樹脂は、電子部品を回路基板上に実装する際に用いたとしても、硬化した該樹脂組成物中にマイクロクラック等のクラックが生じにくいので、電子部品の素子電極と回路基板の回路電極との接合の信頼性が高い。また、上記配合量であれば、表面活性剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と熱により反応し、樹脂中に取り込まれることとなるので、ブリードアウト等することがなく、絶縁不良を引き起こしにくい。そのため、本発明の接合材料によれば、電子部品の素子電極と回路基板上の回路電極との接合の信頼性を向上させることができ、更には対向電極間における電気的接合の信頼性も向上させることができる。
【0015】
また、本発明の電子部品実装用接合材料において、前記表面活性剤は、こはく酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、2,2‐ジメチルグルタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、L‐グルタミン酸、2,5‐ピリジンジカルボン酸、サリチル酸、乳酸から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。更に、前記導電性フィラーは、平均粒子径が100μm以下であり、かつ、前記接合材料全体に対する該導電性粒子の体積含有率が5〜90%であることが好ましい。更にまた、前記導電性フィラーの種類としては、Sn-In、Sn-Bi、Sn−Zn、Sn−Zn-Bi、Sn-Ag-Cuから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。そして、本発明の接合材料は、エアロゾル状の無機絶縁性材料を更に含有し、接合材料全体に対する該無機絶縁性材料の体積含有率は0.1%〜90%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子部品実装用接合材料によれば、硬化した該樹脂組成物中にマイクロクラック等のクラックが生じにくいので、電子部品の素子電極と回路基板の回路電極との接合の信頼性が高く、また、上式(a−1)〜(a−5)のいずれかの式で表される表面活性剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と、熱により反応し、樹脂中に取り込まれることとなるので、表面活性剤成分がブリードアウト等することがなく、絶縁不良を引き起こしにくい。そのため、この接合材料を電子部品の素子電極と回路基板の回路電極とを接合する際に用いることで、電子部品の素子電極と回路基板の回路電極との接合の信頼性を高め、更には対向電極間における導電性も向上させることができ、容易な方法で、かつ、低コストで電子部品を回路基板に実装することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の電子部品用接合材料は、導電性フィラーと、該導電性フィラーの融点以下では硬化が完了しない熱硬化性樹脂とを含む複合材料である。
【0018】
ここで、導電性フィラーの融点以下では硬化が完了しない熱硬化性樹脂とは、導電性フィラーの融点での硬化率が100%未満である熱硬化性樹脂であり、本発明においては、エポキシ樹脂と、アミン系硬化剤と、表面活性化剤とからなる組成物を用いる。なお、熱硬化性樹脂の硬化率は、示差走査熱量計により計測される発熱量等によって測定することができる。
【0019】
そして、本発明において、熱硬化性樹脂として用いるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が100〜400g/eqであることが必要であり、好ましくは120〜300g/eqである。エポキシ等量が100g/eq未満であると、ペーストの粘度が低くなりすぎ、プリント板へのペースト塗布・加熱実装時にダレ現象が生じ、はんだボール・キャピラリーボールの生成といった不具合が生じる場合があり、400g/eqを超えると、ペーストの粘度が高くなりすぎ、ペーストの塗布印刷時にメタルマスクからの抜け残渣が生じ不具合が生じる場合がある。ここで、エポキシ当量とは、エポキシ樹脂の分子量をそのエポキシ樹脂の分子中に存在するエポキシ基の数で割った値であって、エポキシ基1g当量あたりのエポキシ樹脂の重量(g数)を意味するものである。
【0020】
また、エポキシ樹脂の種類は、上記エポキシ当量を有するものであれば特に限定はなく、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールZ等のビスフェノール型エポキシ樹脂や、臭素化エポキシ等を使用することができ、特に、耐熱性・印刷性・電気的信頼性に優れるという理由からビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂の数平均分子量は、100〜1000であることが好ましく、より好ましくは200〜800である。前記数平均分子量が100未満であると、加熱実装時に揮発量が多く接合面にボイドが多く発生する不具合が発生する傾向にあり、1000を超えると、ペーストをメタルマスクにて印刷する際の抜け残渣が多く、精密な印刷が困難になる傾向にある。
【0022】
エポキシ樹脂の粘度は、25℃において、10〜400Pa・sであることが好ましく、より好ましくは20〜200Pa・sである。前記粘度が10Pa・s未満であると、ペーストの金属フィラーの沈降が早くなり、均一な組成での実装が困難になり、400Pa・sを超えると、基板へのペーストの付着性が低下する傾向にある。
【0023】
そして、本発明において、熱硬化性樹脂中におけるエポキシ樹脂の含有量は、15〜70モル%であることが必要であり、好ましくは20〜60モル%である。前記含有量が15モル%未満であると、ペーストの基板への塗布付着性が不十分になり、前記含有量が70モル%を超えると、熱硬化性が不十分になり、また表面活性剤の濃度によっては接合面にボイドが生成する場合がある。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂に用いるアミン系硬化剤としては、4、4’‐メチレンジ゛アニリンを用いる。
【0025】
上記エポキシ当量を有するエポキシ樹脂と、4、4’‐メチレンジ゛アニリンとからなる樹脂硬化物は、熱硬化物の機械的・電気的信頼性に優れるといった特長がある。
【0026】
そして、熱硬化性樹脂中における硬化剤の含有量は、30〜70モル%であることが必要であり、好ましくは40〜60モル%である。前記含有量が30モル%未満であると、熱硬化性樹脂の硬化性が低く、電子部品の実装に時間を要したり、また、硬化物中にクラック等が生じやすく接合の信頼性が劣りやすい。また、前記含有量が70モル%を超えるとブリードアウトが生じたり、熱硬化過程でボイドが生じやすくなる。
【0027】
本発明の熱硬化性樹脂に用いる表面活性剤としては、下式(a−1)〜(a−5)で表される表面活性剤の少なくとも一種を用いる。
【0028】
【化2】


(式中、R、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数1〜10のアルケニレン基、シクロへキシレン基、シクロヘキセニレン基から選ばれた1種を表し、Xは、アミノ基を有しても良い炭素数1〜10のアルキレン基、アミノ基を有しても良い炭素数1〜10のアルケニレン基、フェニレン基、シクロへキシレン基、シクロヘキセニレン基、ピリジレンから選ばれた1種を表す。)
【0029】
上式(a−1)〜(a−5)のいずれかの式で表されるジカルボン酸系化合物、ヒドロキシ酸系化合物等からなる表面活性剤のうち、こはく酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、2,2‐ジメチルグルタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、L‐グルタミン酸、2,5‐ピリジンジカルボン酸、サリチル酸、乳酸が好ましく、特に熱硬化物の環境試験時の変質が少ないという理由から、サリチル酸が好ましい。なお、表面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いても良い。
【0030】
そして、熱硬化性樹脂中における表面活性剤の含有量は、5〜40モル%であることが必要であり、好ましくは5〜20モル%である。前記含有量が5モル%未満であると、導電性フィラーや各電極表面の酸化被膜の除去効果が乏しく、導電性フィラーが凝集しにくくなるので、対向電極間の導電性が劣りやすく、前記含有量が40モル%を超えると、ブリードアウトが生じたり、熱硬化過程でボイドが生じる場合がある。
【0031】
本発明の電子部品実装用接合材料に用いる導電性フィラーとしては、平均粒子径が100μm以下であるものが好ましく、より好ましくは10〜80μmであり、更に好ましくは20〜50μmである。平均粒子径が100μm以上であると、得られる接合材料の粘度が高くなり、例えばディスペンサ等により該接合材料を電子部品上に供給する上で液詰まりが生じたり、また、ファインピッチに対応した導電パターンを形成できなくなる虞れがある。
【0032】
また、導電性フィラーの材質としては、Ag、Sn、Cu、Bi、In、Al、Au、Zn及びその2元合金、もしくは3元合金が挙げられ、なかでもSn-In、Sn-Bi、Sn−Zn、Sn−Zn-Bi、Sn-Ag-Cuが好ましい。
【0033】
そして、上記組成からなる熱硬化性樹脂と、導電性フィラーを混練することで、本発明の電子部品実装用接合材料(以下、「接合材料」とする)とすることができる。
【0034】
接合材料中における導電性フィラーの体積含有率としては、接合材料全体に対し、5〜90%であることが好ましく、より好ましくは10〜50%である。接合材料中における導電性フィラーの体積含有率が90%以上であると、樹脂液を電子部品上に供給する上で液詰まりが生じる虞れがある。
【0035】
また、未硬化時の接合材料の粘度は、25℃で50〜800Pa・sであることが好ましく、100〜400Pa・sがより好ましい。未硬化時の接合材料の粘度が上記範囲内であれば、導電性フィラーの沈降速度を遅らせ接合材料中における導電性フィラーの分布が不均一になるといったことを抑制でき、かつ回路基板上に塗布した際、接合材料が流出することを回避できる効果等が得られる。
【0036】
また、本発明の接合材料は、更に無機絶縁材料を含有したものであることが好ましい。
【0037】
無機絶縁性材料の材質としては、溶融シリカ粉末、石英ガラス粉末、硝子繊維、タルク、アルミナ粉末、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられ、これらをエアロゾル状の微粒子として用いることが好ましい。ここでエアロゾル状の微粒子とは平均粒子径1nm〜1μm程度の微粒子を意味する。
【0038】
エアロゾル状の無機絶縁性材料を配合することで、樹脂硬化物全体の線膨張係数を、電子部品に用いられるシリコンや銅の線膨張係数に近づけることができ、実装部品の膨張・収縮にともなう熱応力を低減できると同時に樹脂液の粘度増粘調整にも効果が得られる。
【0039】
エアロゾル状の無機絶縁性材料は、例えば、HとOとの混合ガスを燃焼させた1100〜1400℃の炎でSiClガスを酸化、加水分解させることにより作製される一次粒子の平均粒径が5〜50nm程度の非晶質の二酸化ケイ素を主成分とする球状の超微粒子のことで、平均粒径が5〜50nmの範囲にある一次粒子がそれぞれ凝集し、粒径が数〜1μmの二次粒子を形成したもの等、適用する上で特に限定されるものでは無い。
【0040】
接合材料中における無機絶縁性材料の体積含有率としては、接合材料全体に対し、0.1〜90%であることが好ましく、より好ましくは1〜20%である。接合材料中における無機絶縁性材料の体積含有率が0.1%未満であると、粘度増粘調整の効果や樹脂硬化物全体の熱膨張係数調整を行なう上で効果が期待できない虞れがある。
【0041】
また、本発明の接合材料には、平滑性向上のために消泡剤やレベリング剤等を用いてもよい。消泡剤としては、シリコーン系化合物が挙げられる。また、レベリング剤としては、フッ素オイル、シリコーンオイルが挙げられる。
【0042】
そして、本発明の接合材料を用いて回路基板上に電子部品を実装するには、例えば、回路基板の回路電極及び/又は電子部品の素子電極に、スクリーン印刷、ディスペンサ、刷毛塗り等の方法で塗布した後、電子部品の素子電極と対応する回路基板の回路電極とを接触させ、次いでこの状態で加熱することで、接合材料が硬化すると共に、電子部品の素子電極と回路基板上の回路電極とが接合する。このようにして、回路基板上に電子部品を実装することができる。
【0043】
回路基板としては、例えば、従来公知のプリント基板等の配線板が使用でき、特に限定されない。また、回路基板上に形成された金属からなる回路電極は、導電性を有する金属であれば特に限定されないが、Cr、Cu、Ni、Auより選択される一種又はそれらの合金であることが好ましい。
【0044】
電子部品としては、例えば、半導体チップ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、電子部品上に形成される素子電極としては、上記の回路電極と同様に特に限定されないが、Cu、Ni、Auより選択される一種又はそれらの合金であることが好ましい。そして、素子電極は、半導体チップ等の電極パッド上にバンプとして形成されていることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例、比較例を用いて本発明による効果について説明する。
【0046】
(実施例1)
エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.6モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.3モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.1モルを添加混合して、熱硬化性樹脂1を得た。そして、この熱硬化性樹脂に、導電性フィラーとして平均粒子径50μmのSn−In粒子を、接合材料全体における体積含有率が30%となるように添加して接合材料1を得た。
【0047】
次に、この接合材料1を、清浄な厚さ1mmの石英基板上に流延し、被着体として銅箔/ポリイミド(=12/25μm)にNi/Auメッキを施した基板で挟みこんだ。その後、昇温速度20℃/minにて125℃に加温し、125℃で30分温度を保持した後、更に昇温速度20℃/minにて180℃に加温し、180℃で60分保持して、実施例1の試験体を得た。
【0048】
(実施例2)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.3モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.6モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.1モルを添加混合して得られた、熱硬化性樹脂2を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の試験体を得た。
【0049】
(実施例3)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.5モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.4モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.1モルを添加混合して得られた、熱硬化性樹脂3を用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の試験体を得た。
【0050】
(実施例4)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.5モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.2モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.3モルを添加混合して得られた、熱硬化性樹脂4を用いた以外は実施例1と同様にして実施例4の試験体を得た。
【0051】
(実施例5)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.6モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.2モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.2モルを添加混合して得られた、熱硬化性樹脂5を用いた以外は実施例1と同様にして実施例5の試験体を得た。
【0052】
(実施例6)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.6モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.3モルを添加して均一になるまで混合し、更にフタル酸の0.1モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂6を用いた以外は実施例1と同様にして実施例6の試験体を得た。
【0053】
(実施例7)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.3モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.6モルを添加して均一になるまで混合し、更にフタル酸の0.1モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂7を用いた以外は実施例1と同様にして実施例7の試験体を得た。
【0054】
(実施例8)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.5モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.4モルを添加して均一になるまで混合し、更にフタル酸の0.1モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂8を用いた以外は実施例1と同様にして実施例8の試験体を得た。
【0055】
(実施例9)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.5モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.2モルを添加して均一になるまで混合し、更にフタル酸の0.3モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂9を用いた以外は実施例1と同様にして実施例9の試験体を得た。
【0056】
(実施例10)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.6モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.2モルを添加して均一になるまで混合し、更にフタル酸を
0.2モル添加混合して得られた熱硬化性樹脂10を用いた以外は実施例1と同様にして実施例10の試験体を得た。
【0057】
(実施例11)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.6モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.3モルを添加して均一になるまで混合し、更に2、5‐ピリジンジカルボン酸の0.1モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂11を用いた以外は実施例1と同様にして実施例11の試験体を得た。
【0058】
(実施例12)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.3モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.6モルを添加して均一になるまで混合し、更に2、5‐ピリジンジカルボン酸の0.1モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂12を用いた以外は実施例1と同様にして実施例12の試験体を得た。
【0059】
(実施例13)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.5モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.4モルを添加して均一になるまで混合し、更に2、5‐ピリジンジカルボン酸の0.1モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂13を用いた以外は実施例1と同様にして実施例13の試験体を得た。
【0060】
(実施例14)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.5モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.2モルを添加して均一になるまで混合し、更に2、5‐ピリジンジカルボン酸の0.3モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂14を用いた以外は実施例1と同様にして実施例14の試験体を得た。
【0061】
(実施例15)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.6モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.2モルを添加して均一になるまで混合し、更に2、5‐ピリジンジカルボン酸の0.2モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂15を用いた以外は実施例1と同様にして実施例15の試験体を得た。
【0062】
(比較例1)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.8モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.1モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.1モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂16を用いた以外は実施例1と同様にして比較例1の試験体を得た。
【0063】
(比較例2)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.1モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.8モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.1モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂17を用いた以外は実施例1と同様にして比較例2の試験体を得た。
【0064】
(比較例3)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.3モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.1モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.6モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂18を用いた以外は実施例1と同様にして比較例3の試験体を得た。
【0065】
(比較例4)
実施例1において、熱硬化性樹脂1の代わりに、エポキシ当量190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂の0.65モルに対し、4、4’‐メチレンジ゛アニリン(和光純薬工業株式会社製)の0.3モルを添加して均一になるまで混合し、更にアジピン酸の0.05モルを添加混合して得られた熱硬化性樹脂19を用いた以外は実施例1と同様にして比較例4の試験体を得た。
【0066】
上記実施例1〜15、比較例1〜4の試験体において、それぞれ試験体の側面をエミリー紙で断面研磨し、硬化した接合材料中のボイドの有無、クラックの有無、導電経路の形成(フィラー粒子の凝集)の有無、硬化した接合材料割れ及び樹脂の硬化性を評価した。結果を表1に示す。





















【0067】
【表1】

【0068】
上記結果より、接合材料に用いる熱硬化性樹脂として、本発明の組成からなる熱硬化性樹脂を用いた実施例1〜15においては、樹脂が完全に硬化しており、また、硬化した接合材料中に、ボイドやクラックの発生が無く、更には、導電経路の形成も十分形成されており、電子部品実装用の接合材料として好適に用いることのできるものであった。
【0069】
一方、樹脂含有量の多い熱硬化性樹脂を用いた比較例1においては、接合材料が完全に硬化しきれていなかった。
【0070】
また、硬化剤の含有量の多い熱硬化性樹脂を用いた比較例2においては、硬化した接合材料中にクラックが発生しており、接合の信頼性に劣るものであった。
【0071】
また、表面活性剤の多い熱硬化性樹脂を用いた比較例3においては、硬化した接合材料中にボイドが発生しており、また、表面活性剤の少ない熱硬化性樹脂を用いた比較例4においては、導電性フィラーによる導電経路が十分に形成されておらず、電気的接合の信頼性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の電子部品実装用接合材料は、例えば、半導体チップ等の電子部品を回路基板にフリップチップ等の方法で実装する際に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィラーと、該導電性フィラーの融点以下では硬化が完了しない熱硬化性樹脂とを含む、電子部品と回路基板との接合に用いられる電子部品実装用接合材料であって、
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ当量100〜400g/eqのエポキシ樹脂を15〜70モル%、4、4’‐メチレンジ゛アニリンを30〜70モル%、下式(a−1)〜(a−5)で表される表面活性剤から選ばれた少なくとも1種を5〜40モル%含有する組成物であることを特徴とする電子部品実装用接合材料。
【化1】


(式中、R、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数1〜10のアルケニレン基、シクロへキシレン基、シクロヘキセニレン基から選ばれた1種を表し、Xは、アミノ基を有しても良い炭素数1〜10のアルキレン基、アミノ基を有しても良い炭素数1〜10のアルケニレン基、フェニレン基、シクロへキシレン基、シクロヘキセニレン基、ピリジレンから選ばれた1種を表す。)
【請求項2】
前記表面活性剤は、こはく酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、2,2‐ジメチルグルタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、L‐グルタミン酸、2,5‐ピリジンジカルボン酸、サリチル酸、乳酸から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の電子部品実装用接合材料。
【請求項3】
前記導電性フィラーは、平均粒子径が100μm以下であり、かつ、前記接合材料全体に対する該導電性フィラーの体積含有率が5〜90%である請求項1又は2に記載の電子部品実装用接合材料。
【請求項4】
前記導電性フィラーは、Sn-In、Sn-Bi、Sn−Zn、Sn−Zn-Bi、Sn-Ag-Cuから選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一つに記載の電子部品実装用接合材料。
【請求項5】
前記接合材料は、エアロゾル状の無機絶縁性材料を更に含有し、前記接合材料全体に対する該無機絶縁性材料の体積含有率が0.1%〜90%である請求項1〜4のいずれか一つに記載の電子部品実装用接合材料。

【公開番号】特開2007−157373(P2007−157373A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347485(P2005−347485)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】