電子部品実装装置
【課題】専用機を設置することなく、部品搭載時に挿入実装型の電子部品のリード端子のクリンチ処理を行うことができる電子部品実装装置を提供する。
【解決手段】部品搭載時に、バックアップ装置のバックアップピン40によって回路基板5を裏面から支持する。バックアップピン40は、リード部品20のリード20aが挿入される挿入穴5aの真下に配置されるクリンチガイド41を備える。クリンチガイド41の上端部には上下方向に延在するリードガイド溝41aが形成されており、このリードガイド溝41aの底面は、水平面に対して傾斜した傾斜面となっている。これにより、リード部品20のリード20aを挿入穴5aに挿入すると同時に、リード20aを上記傾斜面に沿ってクリンチする。
【解決手段】部品搭載時に、バックアップ装置のバックアップピン40によって回路基板5を裏面から支持する。バックアップピン40は、リード部品20のリード20aが挿入される挿入穴5aの真下に配置されるクリンチガイド41を備える。クリンチガイド41の上端部には上下方向に延在するリードガイド溝41aが形成されており、このリードガイド溝41aの底面は、水平面に対して傾斜した傾斜面となっている。これにより、リード部品20のリード20aを挿入穴5aに挿入すると同時に、リード20aを上記傾斜面に沿ってクリンチする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品供給装置から供給された部品を基板上に装着する電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装装置では、X,Y,Z,θ軸方向の動作が可能な吸着ノズルで電子部品を吸着保持し、当該電子部品を基板上に搭載する。このような電子部品実装装置においては、複数のバックアップピンを備えるバックアップ装置によって基板を裏面から支持した状態で、電子部品の実装処理が行われる。
図16は、従来のバックアップ装置の概略構成を示す側面図である。ここで、図16(a)は、基板100が部品搭載位置で停止している状態を示している。基板101の下方にはバックアップ装置102が配置されており、このバックアップ装置102は、部品搭載時に基板101を下面から支持する複数のバックアップピン103が立設されたバックアップテーブル104を備える。
【0003】
バックアップテーブル104は上下方向に昇降可能に構成されており、図16(a)に示すように基板101が部品搭載位置で位置決めされた後、図16(b)に示すようにバックアップテーブル104を上昇することで、バックアップピン103で基板101を持ち上げる。このように、基板101を下面からバックアップピン103の先端部で支持した状態で、搭載ヘッド105の吸着ノズル106によって電子部品107を基板101上に搭載する。
【0004】
バックアップテーブル104に立設されるバックアップピン103の位置は、基板101の種類(大きさ、形状等)に応じて決定される。そのため、このバックアップテーブル104には、バックアップピン103を挿脱可能な多数のピン穴が設けられ、基板の種類に応じてバックアップピン103の配置位置を変更可能な構成となっている。
基板101の種類に応じてバックアップピン103が適正位置に配置されているか否かを自動的に検査するものとして、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、バックアップピン103の挿脱に応じてオン、オフする複数のスイッチを設け、これら複数のスイッチの信号から取得されるバックアップピン103の配置位置データと、予め登録されている適正位置データとを比較するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−221499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板に搭載する電子部品としては、アルミ電解コンデンサや直立搭載が必要な抵抗など、下面に端子となるリードが突出したラジアル部品(リード部品)がある。このようなリード部品は挿入実装型の電子部品であり、基板に搭載する場合には、先ず、図17(a)に示すように基板101に形成された挿入穴101aに基板上面側からリード20aを挿入し、リード20aを基板下面から突出させる。そして、その後、図17(b)に示すように、基板下面においてリード部分を曲げるクリンチ処理を行うことで、リード部品20を基板101に固定する。
【0007】
ところが、上記特許文献1に記載の電子部品実装装置にあっては、リード部分のクリンチ処理を行うための機構が設けられていないため、リード部品の搭載時には、リードを基板に形成された挿入穴に挿入するにとどまり、基板を実装装置外部に搬出後、専用の装置によってクリンチ処理を行うことになる。したがって、基板搬出時における基板の振動等により、リード部品のリードが基板の挿入穴から抜けてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、専用機を設置することなく、部品搭載時に挿入実装型の電子部品のリード端子のクリンチ処理を行うことができる電子部品実装装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電子部品実装装置は、吸着ノズルにより電子部品を吸着し、当該電子部品を部品搭載位置に位置決めされた基板上の所定の搭載点に装着する電子部品実装装置であって、下方に突出したリード端子を前記基板に形成された挿入穴に上方から挿入して実装する挿入実装型の電子部品の前記搭載点の真下に配置され、前記基板を下方から支持する支持部材を有するバックアップピンを備え、前記支持部材は、その上端部に水平面に対して傾斜した傾斜面を備え、前記挿入穴の径方向での前記傾斜面の上端部の位置が、前記挿入穴の範囲内で且つ前記挿入穴の中心位置に対して一方の側にずれた位置となり、前記挿入穴の径方向での前記傾斜面の下端部の位置が、前記挿入穴の範囲外で且つ前記挿入穴の中心位置に対して他方の側にずれた位置となるように配置されていることを特徴としている。
【0009】
これにより、部品搭載時に、挿入実装型の電子部品(リード部品)のリード端子が回路基板の挿入穴の下面から突出したとき、その先端部が支持部材の上端部に形成された傾斜面に当接する。そして、この状態からリード部品を回路基板上に装着すべく更に下降させると、リード端子の先端部は、上記傾斜面に沿って折れ曲がる。このように、部品搭載と同時にリード端子のクリンチ処理を行うことができる。
【0010】
したがって、部品搭載と同時にリード端子を基板の挿入穴から抜け難い状態とすることができ、部品搭載後の搬出時に基板が振動したとしても、リード部品が基板に装着された状態を維持することができる。また、部品搭載時に回路基板を下面から支持するバックアップピンに、リード部品のリード端子をクリンチするクリンチ機能を持たせるので、専用機を新たに設置する必要がなく、その分のスペースを軽減することができる。さらに、当該バックアップピンはクリンチ機能に限定せず使用可能であるため、リード部品の搭載点の真下以外に配置すれば、通常の基板支持ピンとしても使用することができる。
【0011】
また、上記において、前記支持部材は、その上端部に凹状のリードガイド溝を備え、当該リードガイド溝の底面によって前記傾斜面を形成していることを特徴としている。
したがって、リードガイド溝のガイドによって、クリンチ時におけるリードガイド溝の幅方向へのリード端子の逃げを抑制することができ、適切なクリンチ処理を行うことができる。
【0012】
さらに、上記において、前記挿入実装型の電子部品は、複数の前記リード端子が同一方向に所定のリードピッチで配列されたリード群を備え、前記支持部材は、前記リード群に属する前記リード端子の数及び前記リードピッチに対応した複数の前記リードガイド溝を備えることを特徴としている。
このように、リードガイド溝の数および溝幅を調整することで、1つの支持部材で複数のリード端子を同時にクリンチすることができる。
【0013】
また、上記において、前記傾斜面は、水平面に対する傾斜角度が上下で異なる2つの傾斜面から構成されており、上側の前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度が、下側の前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度よりも小さく設定されていることを特徴としている。
これにより、クリンチ処理後のリード端子の水平面に対する角度を、比較的小さい上側の傾斜面の角度とすることができる。また、下側の傾斜面の角度を上側の傾斜面の角度よりも大きくするので、部品搭載時にリード端子の先端部が挿入穴の下に突出する過程において、当該先端部をクリンチ方向へ逃がすことができ、リード端子を適切に曲げることができる。
【0014】
さらにまた、上記において、前記バックアップピンは、対向配置された一対の前記支持部材と、前記一対の前記支持部材を、当該一対の支持部材の対向方向における上端部間の距離を変更可能に連結する連結部材とを備えることを特徴としている。
これにより、両側2列にリード端子を有するリード部品に対応することができる。また、支持部材の上端部の開度を調整する開閉機構を持たせることができるので、両側2列のリード端子のピッチが異なる部品に対応することができる。
【0015】
また、上記において、前記連結部材は、前記一対の支持部材の各下端部を、それぞれ前記対向方向及び上下方向に直交する軸周りに回動可能に連結するように構成されており、前記バックアップピンは、前記連結部材の高さ位置を調整可能な高さ調整手段をさらに備えることを特徴としている。
これにより、比較的簡易な構成で支持部材の開閉機構を実現することができる。また、高さ調整手段によって、支持部材の上端部の開度によらず複数のバックアップピンで高さを一定とすることができるので、部品搭載時に基板を安定して支持することができる。
さらに、上記において、前記高さ調整手段は、上下方向に延在し前記連結部材が螺合されるネジ軸を備えることを特徴としている。
これにより、比較的簡易な構成で連結部材の高さ調整機構を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品搭載時に基板を裏面から支持するバックアップピンに、基板裏面に突出した挿入実装型の電子部品(リード部品)のリード端子をクリンチする機能を持たせるので、専用機を必要とせずにリード部品を基板に固定することができる。そのため、基板搬出時における基板の振動等により、リード部品のリードが基板の挿入穴から抜けるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における電子部品実装装置を示す平面図である。
【図2】電子部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】コントローラ30で実行する部品実装処理手順を示すフローチャートである。
【図4】バックアップピンの構成を示す正面図及び側面図である。
【図5】バックアップピンの開閉機構及び高さ調整機構を説明する図である。
【図6】バックアップピンの構成を示す斜視図である
【図7】リードガイド溝の形状を示す図である。
【図8】バックアップピンの配置例を示す図である。
【図9】リードの挿入穴とバックアップピンの傾斜面との位置関係を示す図である。
【図10】リードのクリンチ方法を示す図である。
【図11】本実施形態におけるリード部品搭載時の動作を示す図である。
【図12】リードガイド溝の別の例を示す図である。
【図13】リードガイド溝の別の例を示す図である。
【図14】部品認識方法の別の例を示す図である。
【図15】部品認識による補正情報を説明する図である。
【図16】従来のバックアップ装置の概略構成を示す側面図である。
【図17】リード部品のクリンチ処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(構成)
図1は、本発明における電子部品実装装置を示す平面図である。
図中、符号1は電子部品実装装置である。この電子部品実装装置1は、基台10の上面にX方向に延在する一対の搬送レール11を備える。この搬送レール11は、回路基板5の両側辺部を支持し、搬送用モータ(図示せず)により駆動されることで回路基板5をX方向に搬送する。
【0019】
また、電子部品実装装置1は搭載ヘッド12を備える。この搭載ヘッド12は、下部に電子部品を吸着する複数の吸着ノズルを備え、X軸ガントリ13及びY軸ガントリ14により、基台10上をXY方向に水平移動可能に構成されている。
この電子部品実装装置1には、搬送レール11のY方向両側に、テープフィーダ等により電子部品を供給する電子部品供給装置15が装着される。そして、電子部品供給装置15から供給された電子部品は、搭載ヘッド12の吸着ノズルによって真空吸着され、回路基板5上に実装搭載される。なお、本実施形態では、搭載ヘッド12のノズルとして吸着ノズルを適用する場合について説明するが、電子部品を把持するノズルを適用することもできる。
【0020】
また、部品供給装置15と回路基板5との間には、CCDカメラからなる認識カメラ21を配置する。この認識カメラ21は、電子部品の吸着位置ずれ(吸着ノズルの中心位置と吸着した部品の中心位置とのずれ)や、吸着角度ずれ(傾き)を検出するために、吸着ノズルで吸着した電子部品を撮像するものである。
また、搭載ヘッド12には、距離センサ22が取り付けられている。この距離センサ22は、センサ光により吸着ノズルと回路基板5とのZ方向の距離(高さ)を測定する。
さらに、電子部品実装装置1には、吸着する部品のサイズや形状に応じて、吸着ノズルを交換するためのノズル交換機16が設けられている。このノズル交換機16内には複数種のノズルが保管、管理されている。
【0021】
図2は、電子部品実装装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
電子部品実装装置1は、装置全体を制御するCPU、RAM及びROMなどを備えるマイクロコンピュータからなるコントローラ30を備える。コントローラ30は、以下に示す各構成31〜35をそれぞれ制御する。
バキューム機構31は真空を発生し、不図示のバキュームスイッチを介して各吸着ノズルに真空の負圧を発生させるものである。
【0022】
X軸モータ32は、搭載ヘッド12をX軸ガントリ13に沿ってX軸方向に移動させるための駆動源であり、Y軸モータ33は、X軸ガントリ13をY軸ガントリ14に沿ってY軸方向に移動させるための駆動源である。コントローラ30がX軸モータ32及びY軸モータ33を駆動制御することで、搭載ヘッド12はXY方向に移動可能となる。
Z軸モータ34は、各吸着ノズルをZ方向に昇降させるための駆動源である。なお、ここではZ軸モータ34を1つしか図示していないが、実際は吸着ノズルの数だけ設けられる。θ軸モータ35は、吸着ノズルを、Z軸を中心にして回転させるための駆動源である。
【0023】
また、コントローラ30は、図3に示す部品実装処理を実行し、電子部品の吸着動作及び搭載動作を行う。
先ずステップS1で、コントローラ30は、搬送用モータを駆動することで、搬送レール11により回路基板5をX方向に搬送する。
次にステップS2で、コントローラ30は、電子部品を搭載する位置決め部(部品搭載位置)で回路基板5を停止し、ステップS3に移行する。
ステップS3では、コントローラ30は、回路基板5を部品搭載位置で固定する。部品搭載位置での回路基板5の下方には、複数のバックアップピンが立設されたバックアップテーブルを備えるバックアップ装置が配置されている。このステップS3では、バックアップテーブルを上昇し、回路基板5をバックアップピンの先端部で下面から支持した状態とする。なお、本実施形態におけるバックアップピンの詳細な構成については後述する。
【0024】
次にステップS4で、コントローラ30は、X軸モータ32及びY軸モータ33を駆動して、搭載ヘッド12を電子部品供給装置15の部品供給位置まで移動する。そして、Z軸モータ34を駆動して吸着ノズルを下降し、電子部品を吸着する。吸着ノズルの下降に際し、吸着ノズルの先端が部品供給位置から所定距離(例えば2mm)上方の位置となるまでは、吸着ノズルを第1の加速度で下降し、一旦吸着ノズルの下降を停止した後、吸着ノズルを上記所定距離分、第1の加速度よりも遅い第2の加速度で下降する。
【0025】
次にステップS5で、コントローラ30は、認識カメラ21によって吸着ノズルで吸着した電子部品を撮像し、部品認識(部品有無、部品照合)を行う。そして、部品認識結果がNGである場合には、ステップS6に移行し、吸着部品の廃棄や保護を行ってから前記ステップS4に移行する。一方、部品認識結果がOKである場合にはステップS7に移行する。
ステップS7では、コントローラ30は、X軸モータ32及びY軸モータ33を駆動して、搭載ヘッド12を回路基板5上における吸着部品の搭載点へ移動する。このとき、部品認識結果をもとに算出した部品吸着時のヘッド回転中心に対する部品中心のずれ量をもとに、搭載座標(X,Y)及び搭載角度(θ)を補正する。
【0026】
次にステップS8で、コントローラ30は、Z軸モータ34を駆動して吸着ノズルを下降し、電子部品を回路基板5に搭載する。吸着ノズルの下降に際し、上述した部品吸着時と同様に、吸着した電子部品の下面が回路基板5上面から所定距離(例えば2mm)上方の位置となるまでは、吸着ノズルを第1の加速度で下降し、一旦吸着ノズルの下降を停止した後、吸着ノズルを上記所定距離分、第1の加速度よりも遅い第2の加速度で再下降する。このように、吸着ノズルを2段階の加速度で下降させて電子部品を搭載する。
【0027】
次にステップS9で、コントローラ30は、回路基板5の部品搭載位置での固定を解除する。すなわち、バックアップテーブルを下降し、バックアップピンによる回路基板5の支持を解除する。
ステップS10では、コントローラ30は、搬送用モータを駆動することで、搬送レール11により回路基板5を搬出し、部品実装処理を終了する。
【0028】
次に、本実施形態におけるバックアップピンの具体的構成について説明する。
図4は、バックアップピンの構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図中、符号40は、本実施形態におけるバックアップピンである。このバックアップピン40は、上下方向に延在し、部品搭載時にその上端部で回路基板5の下面を支持する一対のクリンチガイド(支持部材)41を備える。一対のクリンチガイド41は、図4(a)における左右方向で対向配置されており、その下端部が所定間隔をおいてガイドフランジ42に連結されている。ここで、各クリンチガイド41は、図4(a)における紙面垂直方向(上下方向及びクリンチガイド41の対向方向に直交する方向)に延在する軸43を中心に、ガイドフランジ42に対して回動可能に連結する。その際、クリンチガイド41は、カシメ等によりガイドフランジ42に対してきつめの取り付けとする。
これにより、図5(a)〜(c)に示すように、クリンチガイド41の上端部の間隔αを可変とすることができる。このように、ガイドフランジ42及び軸43でクリンチガイド41の開閉機構を実現する。
【0029】
さらに、各クリンチガイド41の上端部には、対向するクリンチガイド41の配置側とは反対側の側面に、リードガイド溝41aが形成されている。このリードガイド溝41aは、延在方向で一定の溝幅を有し、当該リードガイド溝41aの底面は、水平面に対して傾斜した傾斜面となっている。
各クリンチガイド41は、部品搭載時には、図6に示す上面41bによって回路基板5の下面を支持する。ここで、クリンチガイド41の上面41bは、水平な面となっている。
【0030】
図7は、リードガイド溝41aの形状を示す図である。この図7に示すように、リードガイド溝41aによって形成される傾斜面は、水平面に対する傾斜角度が上下で異なる2つの傾斜面から構成されている。すなわち、傾斜面の傾斜角度が上下方向の途中の点Pで変化する形状となっており、上側の傾斜面Q−Pの傾斜角度はなだらかであり(傾斜角度=θ1)、下側の傾斜面P−Rの傾斜角度は急峻となっている(傾斜角度=θ1+θ2)。角度θ1及びθ2は、例えばθ1=30°、θ2=30°とする。
なお、図7において、点Qはリードガイド溝41a底面(傾斜面)の上端部、点Rはリードガイド溝41a底面(傾斜面)の下端部である。
【0031】
図4に戻って、ガイドフランジ42は、上下方向に延在するネジ軸44に螺合されており、その高さ位置が調整可能となっている。さらに、ネジ軸44には、ガイドフランジ42の下方にナット45も螺合されており、ダブルナット方式でガイドフランジ42の高さ位置をロック可能としている。ネジ軸44は、その下端部がバックアップテーブルに設置される基台46に固定されている。このように、ガイドフランジ43、ネジ軸44及びナット45でクリンチガイド41の高さ調整機構(高さ調整手段)を実現する。
【0032】
そして、バックアップピン40をバックアップテーブルに立設する際には、図5(a)〜(c)に示すように、バックアップピン40の高さ(基台46の底面からクリンチガイド41の先端部までの高さ)βが、クリンチガイド41の上端部の間隔α(図7に示す点Q間の距離)によらずに常に一定となるように調整する。
このようなバックアップピン40のバックアップテーブル上における配置位置は、回路基板5の種類(基板搭載パターン)をもとに予め決定されている。そのため、部品実装処理を開始する前に、基板搭載パターンに応じてバックアップピン40の配置位置を記した配置図をバックアップテーブル50上に貼り付け、その配置図に沿ってバックアップピン40を配置するようにする。
なお、バックアップピン40は、マグネットによりバックアップテーブル50に吸着させたり、バックアップテーブル50に設けた穴に挿入したりすること等により、バックアップテーブル50に立設する。
【0033】
図8は、バックアップピン40の配置例を示す図である。この図8に示すように、バックアップテーブル50上に複数のバックアップピン40が配置される。このとき、図17に示すような挿入実装型のリード部品20の搭載点に対応する位置には、必ずバックアップピン40を配置する。また、それ以外の領域には、クリンチガイド41の上端部を閉じた状態のバックアップピン40を、部品搭載時に回路基板5が撓まない程度に支持することができる位置に適宜配置する。
【0034】
リード部品20は、下面から両側に1本ずつ下方に突出したリード端子20aを備える。回路基板5には、リード部品20のリード20aを挿入するための複数の挿入穴が形成されており、リード部品20を回路基板5に搭載する際には、先ず、回路基板5の挿入穴の上方からリード20aを挿入し、当該リード20aを回路基板5の下面から突出させる。そして、回路基板5の下面においてリード20aを曲げるクリンチ処理を行うことで、リード部品20を回路基板5に固定する。
【0035】
本実施形態では、バックアップピン40をリード部品20の搭載点に対応する位置に配置する際、リード20aの挿入穴とクリンチガイド41との位置関係が、図9に示す関係となるようにする。図9において、(a)は平面図、(b)は正面断面図であり、ここではバックアップピン40の先端部を簡略化して示している。
この図9に示すように、リード部品20の搭載点に対応する位置に配置するバックアップピン40は、その先端径A(クリンチガイド41の上端部の間隔α)が、リード部品20のリード20aを挿入するための挿入穴5aの中心間距離Bよりも小さくなるように、開閉機構によりクリンチガイド41の開度を調整する。また、クリンチガイド41は、バックアップピン40の外径C(各クリンチガイド41の点R間の距離)が、挿入穴5aの中心間距離Bと挿入穴5aの径との和Dよりも大きくなるように、その厚さが設定されている。
【0036】
すなわち、図9(b)に示すように、正面視において、上記傾斜面の上端部の水平方向(挿入穴5aの径方向)での位置Qは、挿入穴5aの範囲内で且つ挿入穴5aの中心位置よりもバックアップピン40内側にずれた位置にある。また、正面視において、上記傾斜面の下端部の水平方向(挿入穴5aの径方向)での位置Rは、挿入穴5aの範囲外で且つ挿入穴5aの中心位置よりもバックアップピン40外側にずれた位置にある。
【0037】
また、特に図示しないが、側面視において、上記傾斜面の上端部の水平方向(挿入穴5aの径方向)での中央位置は、挿入穴5aの中心位置と一致する。さらに、当該傾斜面の上端部の幅(リードガイド溝41aの上端部の溝幅)は、挿入穴5aの径と同等かそれ以上に設定されている。
このような構成により、リード部品20を回路基板5へ搭載する際、リード20aを挿入穴5aに挿入してリード部品20を下降させると、リード20aの先端部はバックアップピン40の上端部に形成された傾斜面に接触し、図10に示すように傾斜面に沿って曲げられる。このように、リード部品20の回路基板5への搭載と同時に、リード20aのクリンチ処理を行うことができる。
【0038】
(動作)
次に、本実施形態におけるリード部品20の回路基板5への搭載方法について、図11を参照しながら説明する。
先ず、搭載ヘッド12を移動し、吸着ノズルにて部品供給装置15からリード部品20の上面を吸着する。そして、認識カメラ21による部品認識を行った後、吸着したリード部品20の搭載点まで搭載ヘッド12を移動する。このとき、図11(a)に示すように、リード部品20のリード20aが、回路基板5に形成された挿入穴5aの真上にくる位置で搭載ヘッド12を停止する。
【0039】
次に、搭載ヘッド12の吸着ノズルを下降する。このとき、図11(b)に示すように、リード20aは挿入穴5aに挿入される。クリンチガイド41の先端径A(上端部の間隔α)は、挿入穴5aの中心間距離Bよりも小さく設定されているため、この図11(b)に示す状態からさらに吸着ノズルを下降すると、図11(c)に示すようにリード20aの下端部がバックアップピン40の上端部に形成されたリードガイド溝41aの底面に当接する。
【0040】
リードガイド溝41aの底面は、水平面に対して傾斜した傾斜面であるため、図11(c)に示す状態からさらに吸着ノズルを下降すると、リード部品20上面からの吸着ノズルの圧力により、リード20aの下端部は、図11(d)に示すようにリードガイド溝41aの形状に沿って折れ曲がる。その後、吸着ノズルは、図11(e)に示すように、リード部品20の下面が回路基板5の上面に当接するまで下降し、リード部品20の吸着を解除する。
このときのリード20a先端部の水平面に対する角度は、リードガイド溝41aの底面における上側の傾斜面の角度θ1となる。上側の傾斜面の角度θ1は比較的小さい角度に設定されているため、この上側の傾斜面でクリンチすることで、リード部品20は回路基板5から抜けない状態となる。
【0041】
ところで、本実施形態では、リードガイド溝41aの底面によって形成される傾斜面を、上下で傾斜角度の異なる2つの傾斜面で構成している。仮に水平面に対する傾斜角度が比較的大きい下側の傾斜面を設けず、水平面に対する傾斜角度が比較的小さい上側の傾斜面のみでクリンチ加工を行おうとすると、リード20aの先端部が挿入穴5aの下に突出する過程において、当該先端部がクリンチガイド41の外側に広がらず、適切にクリンチ加工が行われないおそれがある。
【0042】
これに対して、本実施形態では、リード20aの先端部が挿入穴5aの下に突出する過程において、当該先端部を下側の傾斜面によってクリンチガイド41の外側に逃がすことができるので、リード20aを適切に広げることができる。また、このとき、凹状のリードガイド溝41aの側面によってリード20aをガイドしながらクリンチすることができるので、クリンチ時におけるリード20aのリードガイド溝41aの幅方向への逃げを抑制することができる。
【0043】
そして、回路基板5上にすべての電子部品が搭載されると、バックアップテーブルが下降し、図11(f)に示すようにバックアップピン40が回路基板5から離反する。このようにバックアップ装置による回路基板5の支持が解除された後は、回路基板5は電子部品実装装置1から搬出され、リード部品20のリード20aはリフロー方式のはんだ付け等により完全固定される。
以上のように、回路基板5への搭載時にリード部品20のリード20aをクリンチするので、回路基板5を搬出する際に当該回路基板5が振動したとしても、リード部品20に直接外力が加わらない限り、リード20aが挿入穴5aに挿入された状態を維持することができる。
【0044】
(効果)
このように、上記実施形態では、部品搭載時に回路基板を裏面から支持するバックアップピンの上端部に、水平面に対して傾斜する傾斜面を形成し、このバックアップピンを少なくともリード部品の搭載点の真下に配置する。このとき、回路基板に形成されたリードの挿入穴の径方向での傾斜面の上端部の位置が、挿入穴の範囲内で且つ挿入穴の中心位置に対して一方の側にずれた位置となるように配置する。さらに、挿入穴の径方向での傾斜面の下端部の位置が、挿入穴の範囲外で且つ挿入穴の中心位置に対して他方の側にずれた位置となるように配置する。
【0045】
これにより、部品搭載時に、リード部品のリードが回路基板の挿入穴の下面から突出したとき、その先端部を上記傾斜面に当接させることができる。そのため、この状態からリード部品を下降させることで、リード端子の先端部を上記傾斜面に沿って折れ曲げることができる。このように、部品搭載と同時にリード端子のクリンチ処理を行い、リード端子を基板の挿入穴から抜け難い状態とすることができる。したがって、部品搭載後の搬出時に基板が振動したとしても、リード部品が基板に装着された状態を維持することができる。
【0046】
また、バックアップピンにリードのクリンチ機能を持たせるので、クリンチ処理のために新たに専用機を設置する必要がなく、その分のスペースを軽減することができる。また、当該バックアップピンはクリンチ機能に限定せず使用可能であるため、リード部品の搭載点の真下以外に配置すれば、通常の基板支持ピンとしても使用することができる。
さらに、クリンチガイドの上端部に上下方向に延在のするリードガイド溝を設け、当該リードガイド溝の底面によって上記傾斜面を構成するので、リードガイド溝のガイドによってリード端子の逃げを抑制し、適切なクリンチ処理を行うことができる。
【0047】
また、上記傾斜面を、水平面に対する傾斜角度が上下で異なる2つの傾斜面から構成し、上側の傾斜面の角度を下側の傾斜面の角度よりも小さく設定するので、部品搭載時にリード端子の先端部が挿入穴の下に突出する過程において、下側の傾斜面によってリード先端部をクリンチ方向へ逃がすことができる。したがって、リード端子をスムーズに曲げることができる。さらに、クリンチ処理後のリード端子の水平面に対する角度を、比較的小さい上側の傾斜面の角度とすることができるので、クリンチ処理後のリード部品を回路基板に安定して固定することができる。
【0048】
また、クリンチガイドの上端部の開度を調整可能な開閉機構を備えるので、1種類のバックアップピンでリードピッチが異なる複数のリード部品のクリンチ処理に対応することができる。このとき、一対のクリンチガイドの下端部をガイドフランジに回動可能に連結するので、比較的簡易な構成で上記開閉機構を実現することができる。
さらに、クリンチガイドの高さ調整機構を備えるので、クリンチガイドの上端部の開度によらずに複数のバックアップピンの高さを一定とすることができ、安定して回路基板を支持することができる。このとき、ダブルナット方式でクリンチガイドの高さ位置をロックすることで、部品搭載中の高さ変化に耐性を持つことができる。
【0049】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、クリンチガイド41にリードガイド溝41aを1本のみ設ける場合について説明したが、図12に示すようにリードガイド溝41aを2本設けることもできる。これにより、挿入実装型の電子部品として、図17に示すような片側1本のリード20aを備えるリード部品20ではなく、片側2本のリードを備えるリード部品に対応することができる。また、片側2本以上のリードを備えるリード部品に対しても、リードの本数及びリードピッチに応じてリードガイド溝41aの溝数や溝の間隔、溝幅等を調整することで対応可能である。
【0050】
さらに、上記実施形態においては、リードガイド溝41aの溝幅を延在方向で一定とする場合について説明したが、図13に示すように、延在方向において、クリンチガイド41の先端部から離れるほど当該溝幅が狭くなるようにしてもよい。これにより、クリンチ時のリード逃げをより効果的に抑制することができる。
また、上記実施形態においては、認識カメラ21を用いて部品認識を行う場合について説明したが、搭載ヘッド12に部品認識用のレーザー装置を設け、当該レーザー装置によって部品認識を行うこともできる。この場合、レーザー装置は、水平方向にレーザー光を照射するレーザー照射部と、レーザー照射部により照射されたレーザー光を受光するレーザー受光部とを備える。
【0051】
図14は、レーザー装置による部品認識時の状態を示す図であり、(a)はリード部品20の側面図、(b)はリード部品20の下面図である。この図14(a)に示すように、リード部品20の認識を行う場合には、リード20aがレーザー面にかかる位置まで吸着ノズルを移動した状態で部品認識を行う。
レーザーによる部品認識方法としては、例えば以下の方法を用いる。先ず、レーザー照射部から照射されたレーザー光をレーザー受光部で受光しながら吸着部品を回転させ、所定の回転角度毎に影となる部分を記憶する。そして、回転終了と共にレーザーの光軸と影とにより部品外形を描き出す。この方法により、図15に示すように、リード部のX方向寸法(リード20a間の距離X)及びY方向寸法(リード20aの直径Y)を認識することができる。
【0052】
次に、リード部の外形認識結果をもとに部品中心位置を算出し、予めパラメータとして記憶してあるヘッド回転中心(部品吸着中心)に対する部品中心のずれ量を算出する。ここで、上記ずれ量としては、ヘッド回転中心に対する部品中心のX方向のずれ量(dX)、ヘッド回転中心に対する部品中心のY方向のずれ量(dY)、ヘッド回転中心に対する部品中心の角度のずれ量(dθ)を算出する。そして、算出した各ずれ量dX、dY及びdθを、X方向補正値、Y方向補正値及びθ方向補正値として部品搭載座標の位置を補正し、部品搭載を行う。これにより、リード部品20を適正位置に適正角度で回路基板5上に搭載することができる。
【0053】
さらに、上記実施形態においては、両側のリード20aを互いに逆方向にクリンチする場合について説明したが、リード20aをクリンチする方向はこれに限定されるものではない。すなわち、クリンチガイド41におけるリードガイド溝41aを形成する面は適宜選択可能である。
さらに、クリンチガイド41の各下端部をガイドフランジ42にカシメにより取り付けることで回転位置を調整維持するようにしたが、ネジ等により締緩可能にして回転位置を調整し維持するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、一対のクリンチガイド41の各下端部をガイドフランジ42に回動可能に連結することで開閉機構を実現する場合について説明したが、一対のクリンチガイド41の上端部の間隔αを可変とする構造であれば、これに限定されるものではない。また、ガイドフランジ42を上下方向に延在するネジ軸44に螺合させることで高さ調整機構を実現する場合について説明したが、クリンチガイド41の高さを調整可能な構造であれば、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1…電子部品実装装置、5…回路基板、5a…挿入穴、11…搬送レール、12…搭載ヘッド、13…X軸ガントリ、14…Y軸ガントリ、15…部品供給装置、16…ノズル交換機、20…リード部品、20a…リード、30…コントローラ、31…バキューム機構、32…X軸モータ、33…Y軸モータ、34…Z軸モータ、35…θ軸モータ、40…バックアップピン、41…クリンチガイド(支持部材)、41a…リードガイド溝、41b…水平面、42…ガイドフランジ(連結部材)、43…軸、44…ネジ軸、45…ナット、46…基台、50…バックアップテーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品供給装置から供給された部品を基板上に装着する電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装装置では、X,Y,Z,θ軸方向の動作が可能な吸着ノズルで電子部品を吸着保持し、当該電子部品を基板上に搭載する。このような電子部品実装装置においては、複数のバックアップピンを備えるバックアップ装置によって基板を裏面から支持した状態で、電子部品の実装処理が行われる。
図16は、従来のバックアップ装置の概略構成を示す側面図である。ここで、図16(a)は、基板100が部品搭載位置で停止している状態を示している。基板101の下方にはバックアップ装置102が配置されており、このバックアップ装置102は、部品搭載時に基板101を下面から支持する複数のバックアップピン103が立設されたバックアップテーブル104を備える。
【0003】
バックアップテーブル104は上下方向に昇降可能に構成されており、図16(a)に示すように基板101が部品搭載位置で位置決めされた後、図16(b)に示すようにバックアップテーブル104を上昇することで、バックアップピン103で基板101を持ち上げる。このように、基板101を下面からバックアップピン103の先端部で支持した状態で、搭載ヘッド105の吸着ノズル106によって電子部品107を基板101上に搭載する。
【0004】
バックアップテーブル104に立設されるバックアップピン103の位置は、基板101の種類(大きさ、形状等)に応じて決定される。そのため、このバックアップテーブル104には、バックアップピン103を挿脱可能な多数のピン穴が設けられ、基板の種類に応じてバックアップピン103の配置位置を変更可能な構成となっている。
基板101の種類に応じてバックアップピン103が適正位置に配置されているか否かを自動的に検査するものとして、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、バックアップピン103の挿脱に応じてオン、オフする複数のスイッチを設け、これら複数のスイッチの信号から取得されるバックアップピン103の配置位置データと、予め登録されている適正位置データとを比較するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−221499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板に搭載する電子部品としては、アルミ電解コンデンサや直立搭載が必要な抵抗など、下面に端子となるリードが突出したラジアル部品(リード部品)がある。このようなリード部品は挿入実装型の電子部品であり、基板に搭載する場合には、先ず、図17(a)に示すように基板101に形成された挿入穴101aに基板上面側からリード20aを挿入し、リード20aを基板下面から突出させる。そして、その後、図17(b)に示すように、基板下面においてリード部分を曲げるクリンチ処理を行うことで、リード部品20を基板101に固定する。
【0007】
ところが、上記特許文献1に記載の電子部品実装装置にあっては、リード部分のクリンチ処理を行うための機構が設けられていないため、リード部品の搭載時には、リードを基板に形成された挿入穴に挿入するにとどまり、基板を実装装置外部に搬出後、専用の装置によってクリンチ処理を行うことになる。したがって、基板搬出時における基板の振動等により、リード部品のリードが基板の挿入穴から抜けてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、専用機を設置することなく、部品搭載時に挿入実装型の電子部品のリード端子のクリンチ処理を行うことができる電子部品実装装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電子部品実装装置は、吸着ノズルにより電子部品を吸着し、当該電子部品を部品搭載位置に位置決めされた基板上の所定の搭載点に装着する電子部品実装装置であって、下方に突出したリード端子を前記基板に形成された挿入穴に上方から挿入して実装する挿入実装型の電子部品の前記搭載点の真下に配置され、前記基板を下方から支持する支持部材を有するバックアップピンを備え、前記支持部材は、その上端部に水平面に対して傾斜した傾斜面を備え、前記挿入穴の径方向での前記傾斜面の上端部の位置が、前記挿入穴の範囲内で且つ前記挿入穴の中心位置に対して一方の側にずれた位置となり、前記挿入穴の径方向での前記傾斜面の下端部の位置が、前記挿入穴の範囲外で且つ前記挿入穴の中心位置に対して他方の側にずれた位置となるように配置されていることを特徴としている。
【0009】
これにより、部品搭載時に、挿入実装型の電子部品(リード部品)のリード端子が回路基板の挿入穴の下面から突出したとき、その先端部が支持部材の上端部に形成された傾斜面に当接する。そして、この状態からリード部品を回路基板上に装着すべく更に下降させると、リード端子の先端部は、上記傾斜面に沿って折れ曲がる。このように、部品搭載と同時にリード端子のクリンチ処理を行うことができる。
【0010】
したがって、部品搭載と同時にリード端子を基板の挿入穴から抜け難い状態とすることができ、部品搭載後の搬出時に基板が振動したとしても、リード部品が基板に装着された状態を維持することができる。また、部品搭載時に回路基板を下面から支持するバックアップピンに、リード部品のリード端子をクリンチするクリンチ機能を持たせるので、専用機を新たに設置する必要がなく、その分のスペースを軽減することができる。さらに、当該バックアップピンはクリンチ機能に限定せず使用可能であるため、リード部品の搭載点の真下以外に配置すれば、通常の基板支持ピンとしても使用することができる。
【0011】
また、上記において、前記支持部材は、その上端部に凹状のリードガイド溝を備え、当該リードガイド溝の底面によって前記傾斜面を形成していることを特徴としている。
したがって、リードガイド溝のガイドによって、クリンチ時におけるリードガイド溝の幅方向へのリード端子の逃げを抑制することができ、適切なクリンチ処理を行うことができる。
【0012】
さらに、上記において、前記挿入実装型の電子部品は、複数の前記リード端子が同一方向に所定のリードピッチで配列されたリード群を備え、前記支持部材は、前記リード群に属する前記リード端子の数及び前記リードピッチに対応した複数の前記リードガイド溝を備えることを特徴としている。
このように、リードガイド溝の数および溝幅を調整することで、1つの支持部材で複数のリード端子を同時にクリンチすることができる。
【0013】
また、上記において、前記傾斜面は、水平面に対する傾斜角度が上下で異なる2つの傾斜面から構成されており、上側の前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度が、下側の前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度よりも小さく設定されていることを特徴としている。
これにより、クリンチ処理後のリード端子の水平面に対する角度を、比較的小さい上側の傾斜面の角度とすることができる。また、下側の傾斜面の角度を上側の傾斜面の角度よりも大きくするので、部品搭載時にリード端子の先端部が挿入穴の下に突出する過程において、当該先端部をクリンチ方向へ逃がすことができ、リード端子を適切に曲げることができる。
【0014】
さらにまた、上記において、前記バックアップピンは、対向配置された一対の前記支持部材と、前記一対の前記支持部材を、当該一対の支持部材の対向方向における上端部間の距離を変更可能に連結する連結部材とを備えることを特徴としている。
これにより、両側2列にリード端子を有するリード部品に対応することができる。また、支持部材の上端部の開度を調整する開閉機構を持たせることができるので、両側2列のリード端子のピッチが異なる部品に対応することができる。
【0015】
また、上記において、前記連結部材は、前記一対の支持部材の各下端部を、それぞれ前記対向方向及び上下方向に直交する軸周りに回動可能に連結するように構成されており、前記バックアップピンは、前記連結部材の高さ位置を調整可能な高さ調整手段をさらに備えることを特徴としている。
これにより、比較的簡易な構成で支持部材の開閉機構を実現することができる。また、高さ調整手段によって、支持部材の上端部の開度によらず複数のバックアップピンで高さを一定とすることができるので、部品搭載時に基板を安定して支持することができる。
さらに、上記において、前記高さ調整手段は、上下方向に延在し前記連結部材が螺合されるネジ軸を備えることを特徴としている。
これにより、比較的簡易な構成で連結部材の高さ調整機構を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品搭載時に基板を裏面から支持するバックアップピンに、基板裏面に突出した挿入実装型の電子部品(リード部品)のリード端子をクリンチする機能を持たせるので、専用機を必要とせずにリード部品を基板に固定することができる。そのため、基板搬出時における基板の振動等により、リード部品のリードが基板の挿入穴から抜けるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における電子部品実装装置を示す平面図である。
【図2】電子部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】コントローラ30で実行する部品実装処理手順を示すフローチャートである。
【図4】バックアップピンの構成を示す正面図及び側面図である。
【図5】バックアップピンの開閉機構及び高さ調整機構を説明する図である。
【図6】バックアップピンの構成を示す斜視図である
【図7】リードガイド溝の形状を示す図である。
【図8】バックアップピンの配置例を示す図である。
【図9】リードの挿入穴とバックアップピンの傾斜面との位置関係を示す図である。
【図10】リードのクリンチ方法を示す図である。
【図11】本実施形態におけるリード部品搭載時の動作を示す図である。
【図12】リードガイド溝の別の例を示す図である。
【図13】リードガイド溝の別の例を示す図である。
【図14】部品認識方法の別の例を示す図である。
【図15】部品認識による補正情報を説明する図である。
【図16】従来のバックアップ装置の概略構成を示す側面図である。
【図17】リード部品のクリンチ処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(構成)
図1は、本発明における電子部品実装装置を示す平面図である。
図中、符号1は電子部品実装装置である。この電子部品実装装置1は、基台10の上面にX方向に延在する一対の搬送レール11を備える。この搬送レール11は、回路基板5の両側辺部を支持し、搬送用モータ(図示せず)により駆動されることで回路基板5をX方向に搬送する。
【0019】
また、電子部品実装装置1は搭載ヘッド12を備える。この搭載ヘッド12は、下部に電子部品を吸着する複数の吸着ノズルを備え、X軸ガントリ13及びY軸ガントリ14により、基台10上をXY方向に水平移動可能に構成されている。
この電子部品実装装置1には、搬送レール11のY方向両側に、テープフィーダ等により電子部品を供給する電子部品供給装置15が装着される。そして、電子部品供給装置15から供給された電子部品は、搭載ヘッド12の吸着ノズルによって真空吸着され、回路基板5上に実装搭載される。なお、本実施形態では、搭載ヘッド12のノズルとして吸着ノズルを適用する場合について説明するが、電子部品を把持するノズルを適用することもできる。
【0020】
また、部品供給装置15と回路基板5との間には、CCDカメラからなる認識カメラ21を配置する。この認識カメラ21は、電子部品の吸着位置ずれ(吸着ノズルの中心位置と吸着した部品の中心位置とのずれ)や、吸着角度ずれ(傾き)を検出するために、吸着ノズルで吸着した電子部品を撮像するものである。
また、搭載ヘッド12には、距離センサ22が取り付けられている。この距離センサ22は、センサ光により吸着ノズルと回路基板5とのZ方向の距離(高さ)を測定する。
さらに、電子部品実装装置1には、吸着する部品のサイズや形状に応じて、吸着ノズルを交換するためのノズル交換機16が設けられている。このノズル交換機16内には複数種のノズルが保管、管理されている。
【0021】
図2は、電子部品実装装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
電子部品実装装置1は、装置全体を制御するCPU、RAM及びROMなどを備えるマイクロコンピュータからなるコントローラ30を備える。コントローラ30は、以下に示す各構成31〜35をそれぞれ制御する。
バキューム機構31は真空を発生し、不図示のバキュームスイッチを介して各吸着ノズルに真空の負圧を発生させるものである。
【0022】
X軸モータ32は、搭載ヘッド12をX軸ガントリ13に沿ってX軸方向に移動させるための駆動源であり、Y軸モータ33は、X軸ガントリ13をY軸ガントリ14に沿ってY軸方向に移動させるための駆動源である。コントローラ30がX軸モータ32及びY軸モータ33を駆動制御することで、搭載ヘッド12はXY方向に移動可能となる。
Z軸モータ34は、各吸着ノズルをZ方向に昇降させるための駆動源である。なお、ここではZ軸モータ34を1つしか図示していないが、実際は吸着ノズルの数だけ設けられる。θ軸モータ35は、吸着ノズルを、Z軸を中心にして回転させるための駆動源である。
【0023】
また、コントローラ30は、図3に示す部品実装処理を実行し、電子部品の吸着動作及び搭載動作を行う。
先ずステップS1で、コントローラ30は、搬送用モータを駆動することで、搬送レール11により回路基板5をX方向に搬送する。
次にステップS2で、コントローラ30は、電子部品を搭載する位置決め部(部品搭載位置)で回路基板5を停止し、ステップS3に移行する。
ステップS3では、コントローラ30は、回路基板5を部品搭載位置で固定する。部品搭載位置での回路基板5の下方には、複数のバックアップピンが立設されたバックアップテーブルを備えるバックアップ装置が配置されている。このステップS3では、バックアップテーブルを上昇し、回路基板5をバックアップピンの先端部で下面から支持した状態とする。なお、本実施形態におけるバックアップピンの詳細な構成については後述する。
【0024】
次にステップS4で、コントローラ30は、X軸モータ32及びY軸モータ33を駆動して、搭載ヘッド12を電子部品供給装置15の部品供給位置まで移動する。そして、Z軸モータ34を駆動して吸着ノズルを下降し、電子部品を吸着する。吸着ノズルの下降に際し、吸着ノズルの先端が部品供給位置から所定距離(例えば2mm)上方の位置となるまでは、吸着ノズルを第1の加速度で下降し、一旦吸着ノズルの下降を停止した後、吸着ノズルを上記所定距離分、第1の加速度よりも遅い第2の加速度で下降する。
【0025】
次にステップS5で、コントローラ30は、認識カメラ21によって吸着ノズルで吸着した電子部品を撮像し、部品認識(部品有無、部品照合)を行う。そして、部品認識結果がNGである場合には、ステップS6に移行し、吸着部品の廃棄や保護を行ってから前記ステップS4に移行する。一方、部品認識結果がOKである場合にはステップS7に移行する。
ステップS7では、コントローラ30は、X軸モータ32及びY軸モータ33を駆動して、搭載ヘッド12を回路基板5上における吸着部品の搭載点へ移動する。このとき、部品認識結果をもとに算出した部品吸着時のヘッド回転中心に対する部品中心のずれ量をもとに、搭載座標(X,Y)及び搭載角度(θ)を補正する。
【0026】
次にステップS8で、コントローラ30は、Z軸モータ34を駆動して吸着ノズルを下降し、電子部品を回路基板5に搭載する。吸着ノズルの下降に際し、上述した部品吸着時と同様に、吸着した電子部品の下面が回路基板5上面から所定距離(例えば2mm)上方の位置となるまでは、吸着ノズルを第1の加速度で下降し、一旦吸着ノズルの下降を停止した後、吸着ノズルを上記所定距離分、第1の加速度よりも遅い第2の加速度で再下降する。このように、吸着ノズルを2段階の加速度で下降させて電子部品を搭載する。
【0027】
次にステップS9で、コントローラ30は、回路基板5の部品搭載位置での固定を解除する。すなわち、バックアップテーブルを下降し、バックアップピンによる回路基板5の支持を解除する。
ステップS10では、コントローラ30は、搬送用モータを駆動することで、搬送レール11により回路基板5を搬出し、部品実装処理を終了する。
【0028】
次に、本実施形態におけるバックアップピンの具体的構成について説明する。
図4は、バックアップピンの構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図中、符号40は、本実施形態におけるバックアップピンである。このバックアップピン40は、上下方向に延在し、部品搭載時にその上端部で回路基板5の下面を支持する一対のクリンチガイド(支持部材)41を備える。一対のクリンチガイド41は、図4(a)における左右方向で対向配置されており、その下端部が所定間隔をおいてガイドフランジ42に連結されている。ここで、各クリンチガイド41は、図4(a)における紙面垂直方向(上下方向及びクリンチガイド41の対向方向に直交する方向)に延在する軸43を中心に、ガイドフランジ42に対して回動可能に連結する。その際、クリンチガイド41は、カシメ等によりガイドフランジ42に対してきつめの取り付けとする。
これにより、図5(a)〜(c)に示すように、クリンチガイド41の上端部の間隔αを可変とすることができる。このように、ガイドフランジ42及び軸43でクリンチガイド41の開閉機構を実現する。
【0029】
さらに、各クリンチガイド41の上端部には、対向するクリンチガイド41の配置側とは反対側の側面に、リードガイド溝41aが形成されている。このリードガイド溝41aは、延在方向で一定の溝幅を有し、当該リードガイド溝41aの底面は、水平面に対して傾斜した傾斜面となっている。
各クリンチガイド41は、部品搭載時には、図6に示す上面41bによって回路基板5の下面を支持する。ここで、クリンチガイド41の上面41bは、水平な面となっている。
【0030】
図7は、リードガイド溝41aの形状を示す図である。この図7に示すように、リードガイド溝41aによって形成される傾斜面は、水平面に対する傾斜角度が上下で異なる2つの傾斜面から構成されている。すなわち、傾斜面の傾斜角度が上下方向の途中の点Pで変化する形状となっており、上側の傾斜面Q−Pの傾斜角度はなだらかであり(傾斜角度=θ1)、下側の傾斜面P−Rの傾斜角度は急峻となっている(傾斜角度=θ1+θ2)。角度θ1及びθ2は、例えばθ1=30°、θ2=30°とする。
なお、図7において、点Qはリードガイド溝41a底面(傾斜面)の上端部、点Rはリードガイド溝41a底面(傾斜面)の下端部である。
【0031】
図4に戻って、ガイドフランジ42は、上下方向に延在するネジ軸44に螺合されており、その高さ位置が調整可能となっている。さらに、ネジ軸44には、ガイドフランジ42の下方にナット45も螺合されており、ダブルナット方式でガイドフランジ42の高さ位置をロック可能としている。ネジ軸44は、その下端部がバックアップテーブルに設置される基台46に固定されている。このように、ガイドフランジ43、ネジ軸44及びナット45でクリンチガイド41の高さ調整機構(高さ調整手段)を実現する。
【0032】
そして、バックアップピン40をバックアップテーブルに立設する際には、図5(a)〜(c)に示すように、バックアップピン40の高さ(基台46の底面からクリンチガイド41の先端部までの高さ)βが、クリンチガイド41の上端部の間隔α(図7に示す点Q間の距離)によらずに常に一定となるように調整する。
このようなバックアップピン40のバックアップテーブル上における配置位置は、回路基板5の種類(基板搭載パターン)をもとに予め決定されている。そのため、部品実装処理を開始する前に、基板搭載パターンに応じてバックアップピン40の配置位置を記した配置図をバックアップテーブル50上に貼り付け、その配置図に沿ってバックアップピン40を配置するようにする。
なお、バックアップピン40は、マグネットによりバックアップテーブル50に吸着させたり、バックアップテーブル50に設けた穴に挿入したりすること等により、バックアップテーブル50に立設する。
【0033】
図8は、バックアップピン40の配置例を示す図である。この図8に示すように、バックアップテーブル50上に複数のバックアップピン40が配置される。このとき、図17に示すような挿入実装型のリード部品20の搭載点に対応する位置には、必ずバックアップピン40を配置する。また、それ以外の領域には、クリンチガイド41の上端部を閉じた状態のバックアップピン40を、部品搭載時に回路基板5が撓まない程度に支持することができる位置に適宜配置する。
【0034】
リード部品20は、下面から両側に1本ずつ下方に突出したリード端子20aを備える。回路基板5には、リード部品20のリード20aを挿入するための複数の挿入穴が形成されており、リード部品20を回路基板5に搭載する際には、先ず、回路基板5の挿入穴の上方からリード20aを挿入し、当該リード20aを回路基板5の下面から突出させる。そして、回路基板5の下面においてリード20aを曲げるクリンチ処理を行うことで、リード部品20を回路基板5に固定する。
【0035】
本実施形態では、バックアップピン40をリード部品20の搭載点に対応する位置に配置する際、リード20aの挿入穴とクリンチガイド41との位置関係が、図9に示す関係となるようにする。図9において、(a)は平面図、(b)は正面断面図であり、ここではバックアップピン40の先端部を簡略化して示している。
この図9に示すように、リード部品20の搭載点に対応する位置に配置するバックアップピン40は、その先端径A(クリンチガイド41の上端部の間隔α)が、リード部品20のリード20aを挿入するための挿入穴5aの中心間距離Bよりも小さくなるように、開閉機構によりクリンチガイド41の開度を調整する。また、クリンチガイド41は、バックアップピン40の外径C(各クリンチガイド41の点R間の距離)が、挿入穴5aの中心間距離Bと挿入穴5aの径との和Dよりも大きくなるように、その厚さが設定されている。
【0036】
すなわち、図9(b)に示すように、正面視において、上記傾斜面の上端部の水平方向(挿入穴5aの径方向)での位置Qは、挿入穴5aの範囲内で且つ挿入穴5aの中心位置よりもバックアップピン40内側にずれた位置にある。また、正面視において、上記傾斜面の下端部の水平方向(挿入穴5aの径方向)での位置Rは、挿入穴5aの範囲外で且つ挿入穴5aの中心位置よりもバックアップピン40外側にずれた位置にある。
【0037】
また、特に図示しないが、側面視において、上記傾斜面の上端部の水平方向(挿入穴5aの径方向)での中央位置は、挿入穴5aの中心位置と一致する。さらに、当該傾斜面の上端部の幅(リードガイド溝41aの上端部の溝幅)は、挿入穴5aの径と同等かそれ以上に設定されている。
このような構成により、リード部品20を回路基板5へ搭載する際、リード20aを挿入穴5aに挿入してリード部品20を下降させると、リード20aの先端部はバックアップピン40の上端部に形成された傾斜面に接触し、図10に示すように傾斜面に沿って曲げられる。このように、リード部品20の回路基板5への搭載と同時に、リード20aのクリンチ処理を行うことができる。
【0038】
(動作)
次に、本実施形態におけるリード部品20の回路基板5への搭載方法について、図11を参照しながら説明する。
先ず、搭載ヘッド12を移動し、吸着ノズルにて部品供給装置15からリード部品20の上面を吸着する。そして、認識カメラ21による部品認識を行った後、吸着したリード部品20の搭載点まで搭載ヘッド12を移動する。このとき、図11(a)に示すように、リード部品20のリード20aが、回路基板5に形成された挿入穴5aの真上にくる位置で搭載ヘッド12を停止する。
【0039】
次に、搭載ヘッド12の吸着ノズルを下降する。このとき、図11(b)に示すように、リード20aは挿入穴5aに挿入される。クリンチガイド41の先端径A(上端部の間隔α)は、挿入穴5aの中心間距離Bよりも小さく設定されているため、この図11(b)に示す状態からさらに吸着ノズルを下降すると、図11(c)に示すようにリード20aの下端部がバックアップピン40の上端部に形成されたリードガイド溝41aの底面に当接する。
【0040】
リードガイド溝41aの底面は、水平面に対して傾斜した傾斜面であるため、図11(c)に示す状態からさらに吸着ノズルを下降すると、リード部品20上面からの吸着ノズルの圧力により、リード20aの下端部は、図11(d)に示すようにリードガイド溝41aの形状に沿って折れ曲がる。その後、吸着ノズルは、図11(e)に示すように、リード部品20の下面が回路基板5の上面に当接するまで下降し、リード部品20の吸着を解除する。
このときのリード20a先端部の水平面に対する角度は、リードガイド溝41aの底面における上側の傾斜面の角度θ1となる。上側の傾斜面の角度θ1は比較的小さい角度に設定されているため、この上側の傾斜面でクリンチすることで、リード部品20は回路基板5から抜けない状態となる。
【0041】
ところで、本実施形態では、リードガイド溝41aの底面によって形成される傾斜面を、上下で傾斜角度の異なる2つの傾斜面で構成している。仮に水平面に対する傾斜角度が比較的大きい下側の傾斜面を設けず、水平面に対する傾斜角度が比較的小さい上側の傾斜面のみでクリンチ加工を行おうとすると、リード20aの先端部が挿入穴5aの下に突出する過程において、当該先端部がクリンチガイド41の外側に広がらず、適切にクリンチ加工が行われないおそれがある。
【0042】
これに対して、本実施形態では、リード20aの先端部が挿入穴5aの下に突出する過程において、当該先端部を下側の傾斜面によってクリンチガイド41の外側に逃がすことができるので、リード20aを適切に広げることができる。また、このとき、凹状のリードガイド溝41aの側面によってリード20aをガイドしながらクリンチすることができるので、クリンチ時におけるリード20aのリードガイド溝41aの幅方向への逃げを抑制することができる。
【0043】
そして、回路基板5上にすべての電子部品が搭載されると、バックアップテーブルが下降し、図11(f)に示すようにバックアップピン40が回路基板5から離反する。このようにバックアップ装置による回路基板5の支持が解除された後は、回路基板5は電子部品実装装置1から搬出され、リード部品20のリード20aはリフロー方式のはんだ付け等により完全固定される。
以上のように、回路基板5への搭載時にリード部品20のリード20aをクリンチするので、回路基板5を搬出する際に当該回路基板5が振動したとしても、リード部品20に直接外力が加わらない限り、リード20aが挿入穴5aに挿入された状態を維持することができる。
【0044】
(効果)
このように、上記実施形態では、部品搭載時に回路基板を裏面から支持するバックアップピンの上端部に、水平面に対して傾斜する傾斜面を形成し、このバックアップピンを少なくともリード部品の搭載点の真下に配置する。このとき、回路基板に形成されたリードの挿入穴の径方向での傾斜面の上端部の位置が、挿入穴の範囲内で且つ挿入穴の中心位置に対して一方の側にずれた位置となるように配置する。さらに、挿入穴の径方向での傾斜面の下端部の位置が、挿入穴の範囲外で且つ挿入穴の中心位置に対して他方の側にずれた位置となるように配置する。
【0045】
これにより、部品搭載時に、リード部品のリードが回路基板の挿入穴の下面から突出したとき、その先端部を上記傾斜面に当接させることができる。そのため、この状態からリード部品を下降させることで、リード端子の先端部を上記傾斜面に沿って折れ曲げることができる。このように、部品搭載と同時にリード端子のクリンチ処理を行い、リード端子を基板の挿入穴から抜け難い状態とすることができる。したがって、部品搭載後の搬出時に基板が振動したとしても、リード部品が基板に装着された状態を維持することができる。
【0046】
また、バックアップピンにリードのクリンチ機能を持たせるので、クリンチ処理のために新たに専用機を設置する必要がなく、その分のスペースを軽減することができる。また、当該バックアップピンはクリンチ機能に限定せず使用可能であるため、リード部品の搭載点の真下以外に配置すれば、通常の基板支持ピンとしても使用することができる。
さらに、クリンチガイドの上端部に上下方向に延在のするリードガイド溝を設け、当該リードガイド溝の底面によって上記傾斜面を構成するので、リードガイド溝のガイドによってリード端子の逃げを抑制し、適切なクリンチ処理を行うことができる。
【0047】
また、上記傾斜面を、水平面に対する傾斜角度が上下で異なる2つの傾斜面から構成し、上側の傾斜面の角度を下側の傾斜面の角度よりも小さく設定するので、部品搭載時にリード端子の先端部が挿入穴の下に突出する過程において、下側の傾斜面によってリード先端部をクリンチ方向へ逃がすことができる。したがって、リード端子をスムーズに曲げることができる。さらに、クリンチ処理後のリード端子の水平面に対する角度を、比較的小さい上側の傾斜面の角度とすることができるので、クリンチ処理後のリード部品を回路基板に安定して固定することができる。
【0048】
また、クリンチガイドの上端部の開度を調整可能な開閉機構を備えるので、1種類のバックアップピンでリードピッチが異なる複数のリード部品のクリンチ処理に対応することができる。このとき、一対のクリンチガイドの下端部をガイドフランジに回動可能に連結するので、比較的簡易な構成で上記開閉機構を実現することができる。
さらに、クリンチガイドの高さ調整機構を備えるので、クリンチガイドの上端部の開度によらずに複数のバックアップピンの高さを一定とすることができ、安定して回路基板を支持することができる。このとき、ダブルナット方式でクリンチガイドの高さ位置をロックすることで、部品搭載中の高さ変化に耐性を持つことができる。
【0049】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、クリンチガイド41にリードガイド溝41aを1本のみ設ける場合について説明したが、図12に示すようにリードガイド溝41aを2本設けることもできる。これにより、挿入実装型の電子部品として、図17に示すような片側1本のリード20aを備えるリード部品20ではなく、片側2本のリードを備えるリード部品に対応することができる。また、片側2本以上のリードを備えるリード部品に対しても、リードの本数及びリードピッチに応じてリードガイド溝41aの溝数や溝の間隔、溝幅等を調整することで対応可能である。
【0050】
さらに、上記実施形態においては、リードガイド溝41aの溝幅を延在方向で一定とする場合について説明したが、図13に示すように、延在方向において、クリンチガイド41の先端部から離れるほど当該溝幅が狭くなるようにしてもよい。これにより、クリンチ時のリード逃げをより効果的に抑制することができる。
また、上記実施形態においては、認識カメラ21を用いて部品認識を行う場合について説明したが、搭載ヘッド12に部品認識用のレーザー装置を設け、当該レーザー装置によって部品認識を行うこともできる。この場合、レーザー装置は、水平方向にレーザー光を照射するレーザー照射部と、レーザー照射部により照射されたレーザー光を受光するレーザー受光部とを備える。
【0051】
図14は、レーザー装置による部品認識時の状態を示す図であり、(a)はリード部品20の側面図、(b)はリード部品20の下面図である。この図14(a)に示すように、リード部品20の認識を行う場合には、リード20aがレーザー面にかかる位置まで吸着ノズルを移動した状態で部品認識を行う。
レーザーによる部品認識方法としては、例えば以下の方法を用いる。先ず、レーザー照射部から照射されたレーザー光をレーザー受光部で受光しながら吸着部品を回転させ、所定の回転角度毎に影となる部分を記憶する。そして、回転終了と共にレーザーの光軸と影とにより部品外形を描き出す。この方法により、図15に示すように、リード部のX方向寸法(リード20a間の距離X)及びY方向寸法(リード20aの直径Y)を認識することができる。
【0052】
次に、リード部の外形認識結果をもとに部品中心位置を算出し、予めパラメータとして記憶してあるヘッド回転中心(部品吸着中心)に対する部品中心のずれ量を算出する。ここで、上記ずれ量としては、ヘッド回転中心に対する部品中心のX方向のずれ量(dX)、ヘッド回転中心に対する部品中心のY方向のずれ量(dY)、ヘッド回転中心に対する部品中心の角度のずれ量(dθ)を算出する。そして、算出した各ずれ量dX、dY及びdθを、X方向補正値、Y方向補正値及びθ方向補正値として部品搭載座標の位置を補正し、部品搭載を行う。これにより、リード部品20を適正位置に適正角度で回路基板5上に搭載することができる。
【0053】
さらに、上記実施形態においては、両側のリード20aを互いに逆方向にクリンチする場合について説明したが、リード20aをクリンチする方向はこれに限定されるものではない。すなわち、クリンチガイド41におけるリードガイド溝41aを形成する面は適宜選択可能である。
さらに、クリンチガイド41の各下端部をガイドフランジ42にカシメにより取り付けることで回転位置を調整維持するようにしたが、ネジ等により締緩可能にして回転位置を調整し維持するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、一対のクリンチガイド41の各下端部をガイドフランジ42に回動可能に連結することで開閉機構を実現する場合について説明したが、一対のクリンチガイド41の上端部の間隔αを可変とする構造であれば、これに限定されるものではない。また、ガイドフランジ42を上下方向に延在するネジ軸44に螺合させることで高さ調整機構を実現する場合について説明したが、クリンチガイド41の高さを調整可能な構造であれば、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1…電子部品実装装置、5…回路基板、5a…挿入穴、11…搬送レール、12…搭載ヘッド、13…X軸ガントリ、14…Y軸ガントリ、15…部品供給装置、16…ノズル交換機、20…リード部品、20a…リード、30…コントローラ、31…バキューム機構、32…X軸モータ、33…Y軸モータ、34…Z軸モータ、35…θ軸モータ、40…バックアップピン、41…クリンチガイド(支持部材)、41a…リードガイド溝、41b…水平面、42…ガイドフランジ(連結部材)、43…軸、44…ネジ軸、45…ナット、46…基台、50…バックアップテーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ノズルにより電子部品を吸着し、当該電子部品を部品搭載位置に位置決めされた基板上の所定の搭載点に装着する電子部品実装装置であって、
下方に突出したリード端子を前記基板に形成された挿入穴に上方から挿入して実装する挿入実装型の電子部品の前記搭載点の真下に配置され、前記基板を下方から支持する支持部材を有するバックアップピンを備え、
前記支持部材は、その上端部に水平面に対して傾斜した傾斜面を備え、前記挿入穴の径方向での前記傾斜面の上端部の位置が、前記挿入穴の範囲内で且つ前記挿入穴の中心位置に対して一方の側にずれた位置となり、前記挿入穴の径方向での前記傾斜面の下端部の位置が、前記挿入穴の範囲外で且つ前記挿入穴の中心位置に対して他方の側にずれた位置となるように配置されていることを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記支持部材は、その上端部に凹状のリードガイド溝を備え、当該リードガイド溝の底面によって前記傾斜面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記挿入実装型の電子部品は、複数の前記リード端子が同一方向に所定のリードピッチで配列されたリード群を備え、
前記支持部材は、前記リード群に属する前記リード端子の数及び前記リードピッチに対応した複数の前記リードガイド溝を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、水平面に対する傾斜角度が上下で異なる2つの傾斜面から構成されており、
上側の前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度が、下側の前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
前記バックアップピンは、対向配置された一対の前記支持部材と、前記一対の前記支持部材を、当該一対の支持部材の対向方向における上端部間の距離を変更可能に連結する連結部材とを備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項6】
前記連結部材は、前記一対の支持部材の各下端部を、それぞれ前記対向方向及び上下方向に直交する軸周りに回動可能に連結するように構成されており、
前記バックアップピンは、前記連結部材の高さ位置を調整可能な高さ調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の電子部品実装装置。
【請求項7】
前記高さ調整手段は、上下方向に延在し前記連結部材が螺合されるネジ軸を備えることを特徴とする請求項6に記載の電子部品実装装置。
【請求項1】
吸着ノズルにより電子部品を吸着し、当該電子部品を部品搭載位置に位置決めされた基板上の所定の搭載点に装着する電子部品実装装置であって、
下方に突出したリード端子を前記基板に形成された挿入穴に上方から挿入して実装する挿入実装型の電子部品の前記搭載点の真下に配置され、前記基板を下方から支持する支持部材を有するバックアップピンを備え、
前記支持部材は、その上端部に水平面に対して傾斜した傾斜面を備え、前記挿入穴の径方向での前記傾斜面の上端部の位置が、前記挿入穴の範囲内で且つ前記挿入穴の中心位置に対して一方の側にずれた位置となり、前記挿入穴の径方向での前記傾斜面の下端部の位置が、前記挿入穴の範囲外で且つ前記挿入穴の中心位置に対して他方の側にずれた位置となるように配置されていることを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記支持部材は、その上端部に凹状のリードガイド溝を備え、当該リードガイド溝の底面によって前記傾斜面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記挿入実装型の電子部品は、複数の前記リード端子が同一方向に所定のリードピッチで配列されたリード群を備え、
前記支持部材は、前記リード群に属する前記リード端子の数及び前記リードピッチに対応した複数の前記リードガイド溝を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、水平面に対する傾斜角度が上下で異なる2つの傾斜面から構成されており、
上側の前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度が、下側の前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
前記バックアップピンは、対向配置された一対の前記支持部材と、前記一対の前記支持部材を、当該一対の支持部材の対向方向における上端部間の距離を変更可能に連結する連結部材とを備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項6】
前記連結部材は、前記一対の支持部材の各下端部を、それぞれ前記対向方向及び上下方向に直交する軸周りに回動可能に連結するように構成されており、
前記バックアップピンは、前記連結部材の高さ位置を調整可能な高さ調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の電子部品実装装置。
【請求項7】
前記高さ調整手段は、上下方向に延在し前記連結部材が螺合されるネジ軸を備えることを特徴とする請求項6に記載の電子部品実装装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−93427(P2013−93427A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234213(P2011−234213)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】
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