説明

電子部品搬送用リール

【課題】 本発明は、複数の電子部品が順次連結されてなる長尺部材が巻芯の囲りに多重に巻回されてその長尺部材の搬送の用に供する電子部品搬送用リールに関し、輸送中の長尺部材の荷崩れを防止しつつ輸送効率を高める。
【解決手段】 フランジ11が、円形を基準とし、その円形の一部の円弧が、巻芯12が存在する表面側に折り曲げられた折曲片111が、その円形の90°ずつ回転した位置に合計4箇所形成された周縁形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子部品が順次連結されてなる長尺部材が巻芯の囲りに多重に巻回されてその長尺部材の搬送の用に供する電子部品搬送用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気コネクタに組み込まれるコンタクトが順次複数連結された長尺部材等、複数の電子部品が順次連結された長尺部材を搬送するにあたっては、その長尺部材を、巻芯とその巻芯の両端に広がる一対のフランジとを有するリールに巻回し、そのようなリールを段ボール箱に複数台積載して輸送することが行なわれている。
【0003】
ここで、リールの積載数を増やして輸送コストを低減する目的で、巻芯の一方の端にのみフランジを備えたリールが提案されている(特許文献1)。
【0004】
図1は、特許文献1に開示されているリールとは異なるが、巻芯の一方にのみフランジを有するリールを示した、平面図(A)および側面図(B)である。
【0005】
ただし、平面図(A)には、巻芯を取り付ける前のフランジのみが示されており、側面図(B)には、そのフランジに巻芯を取り付けた状態が示されている。
【0006】
また、図2は、図1に示すリールを構成するフランジの展開図である。
【0007】
ここでは、図2に示すような、円形の一部が切り欠かれた段ボールを用意し、破線で示すような、中央の円および放射状に延びる直線からなる折れ目を形成し、切欠きの両辺11a,11bを互いに接するように引き寄せて、図1(A)に示すように粘着テープ121を貼り付ける。こうすることにより、図1(A)に示すように平面視で円形、かつ図1(B)に示すように傘状(コーン型)のフランジ11が作られる。尚、図2に示すようにこの段ボールには中央部分に複数本のスリット11cや複数の丸孔11dが形成されている。これらのうちの複数本のスリット11cは、両辺11a,11bを引き寄せたときに中央部分の段ボールどうしの重なりを避けるためであり、丸孔11dは、以下に説明する巻芯12(図1(B))を取り付けたときにその巻芯に形成しておいた貫通孔と連通する丸孔である。このフランジ11と巻芯12とからなるリール10には、コネクタのコンタクト等の電子部品が順次に複数連結された長尺部材が多重に巻回されて運搬され、運搬先で、このリール10からその巻回された長尺部材が巻きほどかれる。フランジ11の丸孔11dを含む巻芯12の貫通孔は、このリール10に長尺部材を巻回したり巻きほどいたりするときに装着される装置への装着用として使用される孔である。
【0008】
コーン型(傘状)のフランジ11が作られると、そのフランジの中央部分表側に、巻芯12が接着される。この巻芯には、複数枚の段ボールを積み重ねて接着したものが使用され、フランジ11の裏側にも1枚の段ボール(図示せず)が接着されている。
【0009】
巻芯12には、フランジ11の中央部分に形成された丸孔11dと連通する貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔は、前述したように、このリール10を装置に装着するときに利用される孔である。
【0010】
図3は、図2に示すリール10が輸送用の段ボール箱内に収容された状態を示す模式図である。
【0011】
段ボール箱40の内底には、下敷きとして一枚の段ボール板41が置かれている。この段ボール板41の中央に孔41aが形成されており、その孔41aを通って、段ボール箱40の内側に円筒形の柱42が立設している。この段ボール箱40内には柱42に支持させるようにして、一例として4台のリール10が積み重ねられている。これら4台のリール10のそれぞれには、長尺部材20が多重に巻回されている。この図では一番上のリール10に巻回されている長尺部材のみ示されている。また、この段ボール箱40内には、積み重ねられた4台のリール10の上に、リール10のフランジ11(図1(A)参照)とほぼ同型のカバー部材30が被せられ、その状態で段ボール箱40の蓋43が閉じられ、その状態で輸送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−359280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、リールが中に積み重ねられた状態の段ボール箱は、輸送中に振動を受けることになる。この段ボール箱が振動を受けると、その段ボール箱内のリール10は、その振動の状態によっては段ボール箱内で回転し、その回転の方向によっては巻回された長尺部材の巻回が緩み、その緩んだ状態で横向きの衝撃を受けると巻回された長尺部材の一部がフランジ11の外側に外れるなど荷崩れしてしまい、輸送先でこのリールを取り出す際に不都合を生じることがある。このため、このような事故を減らすために、長尺部材はフランジ11の最外径部分には巻かずに、フランジ11の最外径の一部に長尺部材が巻回されていない、一周に渡る帯状のゾールを残しておくことが一般に行なわれる。
【0014】
しかしながら、その場合、段ボール箱内に置かれるリールの寸法に比べて1つのリールに巻回される長尺部材の長さが短かくなり、輸送効率上問題がある。
【0015】
本発明は、上記事情を鑑み、輸送中の長尺部材の荷崩れを防止しつつ輸送効率が高められた電子部品搬送用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する本発明の電子部品搬送用リールのうちの第1の電子部品搬送用リールは、柱状の巻芯と、巻芯の一方の端に固定され巻芯の周囲に面状に広がるフランジとを有し、複数の電子部品が順次連結されてなる長尺部材がその巻芯の囲りに多重に巻回されて長尺部材の搬送の用に供する電子部品搬送用リールにおいて、上記フランジが、円形を基準とし、その円形の一部の円弧が切断された切断片が、その円形の90°ずつ回転した位置に合計4箇所形成された周縁形状を有するものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の第1の電子部品搬送用リールは、フランジが、円形を基準とし、その円形の一部の円弧が切断された切断片が、その円形の90°ずつ回転した位置に合計4箇所形成された周縁形状を有するものであるため、その分、小型、小容積の段ボール箱を使って輸送することができ、例えば1台のトラックの荷台に積載される段ボール箱の個数を増やすことができるなど、輸送効率が向上すると共に、段ボール箱の材料コストを削減できる。
【0018】
また、この第1の電子部品搬送用リールの寸法に適合した寸法の段ボール箱を使用すると、輸送中に段ボール箱が振動を受けても、フランジの切断片と段ボール箱内壁との干渉により段ボール箱内のリールの回転が防止される。したがってそのリールに巻回された長尺部材の巻回の緩みが防止されて長尺部材の荷崩れが防止される。
【0019】
また、上記目的を達成する本発明の電子部品搬送用リールのうちの第2の電子部品搬送用リールは、柱状の巻芯と、巻芯の一方の端に固定され巻芯の周囲に面状に広がるフランジとを有し、複数の電子部品が順次連結されてなる長尺部材が巻芯の囲りに多重に巻回されて長尺部材の搬送の用に供する電子部品搬送用リールにおいて、上記フランジが、円形を基準とし、その円形の一部の円弧が巻芯が存在する表面側に折り曲げられた折曲片が、その円形の、90°ずつ回転した各位置に合計4箇所形成された周縁形状を有するものであることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の電子部品搬送用リールは、第1の電子部品搬送用リールにおける切断片に代わる折曲片が設けられたものであり、第1の電子部品搬送用リールと同様、輸送効率が向上し、リールを収容する段ボール箱の材料コストを削減できると共に、切断片ではなく折曲片であることから第1の電子部品搬送用リールよりも一層確実に、長尺部材の荷崩れが防止される。
【0021】
さらに、上記目的を達成する本発明の電子部品搬送用リールのうちの第3の電子部品搬送用リールは、柱状の巻芯と、巻芯の一方の端に固定され巻芯の周囲に面状に広がるフランジとを有し、複数の電子部品が順次連結されてなる長尺部材が巻芯の囲りに多重に巻回されて長尺部材の搬送の用に供する電子部品搬送用リールにおいて、上記フランジが、円形を基準とし、その円形の一部の円弧が巻芯が存在する側の表面に対する裏面側に折り曲げられた折曲片が、その円形の、90°ずつ回転した各位置に合計4箇所形成された周縁形状を有するものであることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の電子部品搬送用リールは、第1の電子部品搬送用リールにおける切断片、あるいは、第2の電子部品搬送用リールにおける折曲片に代わり、円形の一部の円弧が巻芯が存在する側の表面に対する裏面側に折り曲げられた折曲片が設けられたものであり、長尺部材の荷崩れを防止しつつ輸送効率の向上が図られると共に、リールを収容する段ボール箱の材料コストを削減できる。
【0023】
ここで、本発明の第1〜第3のいずれの電子部品搬送用リールにおいても、上記フランジが、巻芯から上記円形の半径方向に離れるに従って巻芯の中心軸方向にも巻芯から離れたコーン型を有するものであることが好ましい。
【0024】
コーン型のフランジの場合、フランジが巻芯の一方にしかない形状のリールであっても、長尺部材をそのフランジに安定的に支持させることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明によれば、リールに巻回された長尺部材が輸送中にリールから外れることを防止しつつ輸送効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】巻芯の一方にのみフランジを有するリールを示した、平面図(A)および側面図(B)である。
【図2】図1に示すリールを構成するフランジの展開図である。
【図3】図2に示すリールが輸送用の段ボール箱内に収容された状態を示す模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態の電子部品搬送用リールを示す、平面図(A)および側面図(B)である。
【図5】図4に示す第1実施形態としての電子部品搬送用リールが輸送用の段ボール箱内に積み重ねられた状態を示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態の電子部品搬送用リールを示す、平面図(A)および側面図(B)である。
【図7】本発明の第3実施形態の電子部品搬送用リールを示す平面図(A)および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
以下に説明する各実施形態において、図1〜図3を参照して説明した従来例と同一概念の構成要素には多少の形状の相違等があっても同一の符号を付して示し、従来例との相違点を中心に説明する。
【0029】
図4は、本発明の第1実施形態の電子部品搬送用リールを示す、平面図(A)および側面図(B)である。但し、平面図(A)には、フランジ11のみが示されており、巻芯12は図示省略されている。
【0030】
この第1実施形態は、従来例と同様にして、平面図上円形の外形を有するフランジが作成された後、そのフランジの円形の一部の円弧が巻芯12が存在する表面側に平面視で直線状に折り曲げられて折曲片111が形成される。この折曲片111は、そのフランジ11の円形の、90°ずつ回転した各位置に合計4箇所形成されている。
【0031】
この第1実施形態の他の点は、図1〜図3に示す従来例と同様である。
【0032】
図5は、図4に示す第1実施形態としての電子部品搬送用リール10が輸送用の段ボール箱内に積み重ねられた状態を示した図である。
【0033】
この図5に示す段ボール箱40は、従来例のもの(図3参照)と比べ、リール10のフランジ11に折曲片111が形成されている分、内容積の小さい小型の段ボール箱となっている。小型の段ボール箱で済むので、輸送効率が向上している。
【0034】
また、この第1実施形態の電子部品搬送用リール10の場合、直線状に折り曲げられた折曲片111と段ボール箱40の内壁との干渉により輸送中に振動を受けても電子部品搬送用リール10が段ボール箱40内で回転することが防止される。したがって、その電子部品搬送用リール10に巻回された長尺部材の緩みが防止され、段ボール箱内のリールが横向きの衝撃を受けても、緩みが防止されていることと、さらに折曲片111が最外周の長尺部材に対するストッパとして機能することで、長尺部材の、リールからの外れ等による荷崩れが確実に防止される。
【0035】
図6は、本発明の第2実施形態の電子部品搬送用リールを示す、平面図(A)および側面図(B)である。但し、ここでも、平面図(A)には、フランジ11のみが示されており、巻芯12は図示省略されている。
【0036】
この第2実施形態の電子部品搬送用リールは、従来例と同様にして平面図上円形の外径を有するフランジが作成された後、そのフランジの円形の一部が巻芯12が存在する表面に対する裏面側に、平面視で直線状に折り曲げられた折曲片112が形成される。この折曲片112は、図4に示す第1実施形態の電子部品搬送用リールにおけるフランジの折曲片111と同様、そのフランジ11の円形の、90°ずつ回転した各位置に合計4箇所形成されている。
【0037】
このような、裏面側への折曲片112を形成した場合も、段ボール箱を小型化できるため輸送効率が向上し、また、段ボール箱内壁と折曲片112との干渉による段ボール箱内でのリールの回転の防止により、長尺部材の巻回の緩みやリールからの外れが防止される。
【0038】
尚、折曲片112は、巻芯12の裏面側に折り曲げられているが、段ボール箱内の底面に敷かれた段ボール板41(図5参照)の形状や厚みを変えることにより、折曲片112と段ボール箱底面との干渉を避けることができる。
【0039】
図7は、本発明の第3実施形態の電子部品搬送用リールを示す平面図(A)および側面図である。但し、ここでも、平面図(A)には、フランジ11のみが示されており、巻芯12は図示省略されている。
【0040】
この第3実施形態の電子部品搬送用リールには、そのフランジ11に、直線状の切断片113が90°ずつ回転した各位置に合計4箇所形成されている。
【0041】
この切断片113は、コーン型(傘状)のフランジを作成してから切断したものではなく、フランジをコーン型(傘状)に形成する前において、従来例の図2に示す形状ではなくて、コーン型(傘状)に形成したときに平面視で直線状の切断片113が形成される曲線形状に切断しておき、その形状の平板の段ボールの両辺11a,11b(図2参照)を互いに引き寄せてコーン型(傘状)に形成したものである。
【0042】
この図7に示すような直線状の切断片113を形成した場合も、輸送用の段ボール箱の小型化により輸送効率が向上し、さらに、切断片113と段ボール箱内壁との干渉による回転防止による長尺部材の緩みが防止されて長尺部材がリールから外れてしまうこと等の荷崩れが防止される。
【0043】
尚、以上の各実施形態ではコーン型のフランジを有する電子部品搬送用リールについて説明したが、本発明は、コーン型ではなく、引用文献1にあるような平板状のフランジであってもよい。平板状のフランジであっても、本発明を適用することにより、輸送効率の向上と長尺部材の巻回の緩みによる荷崩れを防止することができる。
【0044】
また、以上の各実施形態では、コネクタのコンタクトが順次連結された長尺部材を念頭において説明したが、本発明は、コネクタのコンタクト以外の、順次連なった状態で輸送される電子部品の輸送のためのリールとして広く適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 電子部品搬送用リール
11 フランジ
11a,11b 辺
11c スリット
11d 丸孔
12 巻芯
20 長尺部材
30 カバー部材
40 段ボール箱
41 段ボール板
41a 孔
42 柱
43 蓋
111,112 折曲片
113 切断片
121 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の巻芯と、該巻芯の一方の端に固定され該巻芯の周囲に面状に広がるフランジとを有し、複数の電子部品が順次連結されてなる長尺部材が該巻芯の囲りに多重に巻回されて該長尺部材の搬送の用に供する電子部品搬送用リールにおいて、
前記フランジが、円形を基準とし、該円形の一部の円弧が前記巻芯が存在する表面側に折り曲げられた折曲片が、該円形の、90°ずつ回転した各位置に合計4箇所形成された周縁形状を有するものであることを特徴とする電子部品搬送用リール。
【請求項2】
柱状の巻芯と、該巻芯の一方の端に固定され該巻芯の周囲に面状に広がるフランジとを有し、複数の電子部品が順次連結されてなる長尺部材が該巻芯の囲りに多重に巻回されて該長尺部材の搬送の用に供する電子部品搬送用リールにおいて、
前記フランジが、円形を基準とし、該円形の一部の円弧が前記巻芯が存在する側の表面に対する裏面側に折り曲げられた折曲片が、該円形の、90°ずつ回転した各位置に合計4箇所形成された周縁形状を有するものであることを特徴とする電子部品搬送用リール。
【請求項3】
前記フランジが、前記巻芯から前記円形の半径方向に離れるに従って該巻芯の中心軸方向にも該巻芯から離れたコーン型を有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品搬送用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67434(P2013−67434A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−344(P2013−344)
【出願日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【分割の表示】特願2008−21090(P2008−21090)の分割
【原出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】