説明

電子部品搬送装置

【課題】内部電極の位置が揃うように複数の電子部品の向きを揃えて順次搬送することを可能とする、電子部品搬送装置を提供する。
【解決手段】強磁性の内部電極を有する直方体状の電子部品1を搬送するための搬送装置であっても、第1の搬送経路13、回転経路14及び第2の搬送経路15を有し、第1〜第3の搬送経路が、それぞれ、第1〜第3の搬送床面を有し、回転経路14において、電子部品1の内部電極面が所定の方向を向くように電子部品に磁力線を印加するように、第1の磁石21が設けられている、電子部品搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を所定の向きに整列して搬送するための電子部品搬送装置に関し、特に、内部電極が強磁性である電子部品を搬送し、整列するための電子部品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来セラミック電子部品などの電子部品の製造に際しては、電子部品を所定の方向に整列させることが求められる。例えば、電子部品の外表面にマーキングを施したり、外観検査を行ったり、あるいは特性を検査したりする場合、電子部品を所定の方向に整列させることが必要なことがある。
【0003】
また、最終的に得られた電子部品をプリント回路基板などに実装するに際しても、電子部品を整列する必要があった。例えば、積層セラミックコンデンサは、複数の内部電極がセラミック焼結体内においてセラミック層を介して配置されている。積層セラミックコンデンサにおいて、厚み及び幅にほとんど寸法差がない場合、厚みと幅の方向を誤って実装するおそれがあり、実装方向を誤った場合、機械的強度に差があったり、浮遊容量値が異なったりすることがある。従って、積層セラミックコンデンサなどの電子部品においては、所定の向きに整列された状態で、プリント回路基板などに実装する必要があった。
【0004】
そこで、下記の特許文献1には、内部電極を有する電子部品を所定の向きに整列する装置が開示されている。図12は、特許文献1に記載の電子部品の整列装置を示す概略斜視図である。
【0005】
整列装置1001は、搬送経路を形成する円筒状部材1002を有する。円筒状部材1002内が電子部品1003をその長さ方向に搬送する搬送経路を構成している。電子部品1003は、複数の内部電極1004を有する。複数の内部電極1004は、ニッケルなどの強磁性材料を用いて構成されている。円筒状部材1002の外側に、磁石1006が配置されている。磁石1006により生じる磁力線X,Yが、円筒状部材1002内において上下方向及び搬送方向に延びている。そのため、強磁性を有する複数の内部電極1004の面方向が磁力線の向きに応じるように、電子部品1003が回転する。このようにして、複数の内部電極1004の面方向が揃えられるように、電子部品1003が所定の向きに配置される。
【0006】
なお、上記円筒状の搬送部材1002は、搬送路として形成されているだけでなく、その内周面が電子部品の所望でない旋回や立ち上がりを防止するためのガイド部として機能としている。ここでは、円筒状部材1002の直径が、電子部品1003の小さい方の2つの辺の長さの辺方向の和の平方根より大きく、最も大きい辺の長さよりも小さくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3430854号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の電子部品の整列装置1001では、磁石1006により生じる磁力線が、磁力線Xと磁力線Yとを有し、搬送経路内において、互いに直交する方向に延びる2種類の磁力線が発生していた。そのため、内部電極1004の面方向を確実に図示のように上下方向に延びるように整列させ得ないことがあった。また、円筒状部材1002の横断面が円筒状であるため、磁石1006を用いて電子部品1003を所定の向きに整列させたとしても、磁石1006が設けられている部分の下流側において、電子部品1003の向きが整列された向きのまま維持され難いという問題があった。すなわち、上記円筒状部材1002の直径が所定の範囲とされていたとしても、振動によって、所定の向きに整列されていた電子部品1003が再度所定の向きからずれるおそれがあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、内部電極を有する電子部品を所定の向きに整列させ、確実に所定の向きのまま搬送することを可能とする電子部品搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、強磁性の内部電極を有する直方体状の電子部品を搬送するための電子部品搬送装置であって、前記電子部品が長手方向を有し、前記電子部品を該電子部品の長手方向に搬送するための搬送経路が備えられた搬送部材と、前記搬送部材の搬送経路において前記電子部品を移動させるための搬送手段とを備え、前記搬送経路が、第1の搬送経路と、前記第1の搬送経路の下流側に接続されている回転経路と、前記回転経路の下流側に接続されている第2の搬送経路とを有し、前記第1の搬送経路が、電子部品が載置される搬送床面と、前記搬送床面の上方に設けられており、間隔W1をあけて隔てられた一対の第1の搬送ガイド面とを有し、前記回転経路が、前記電子部品を搬送するために電子部品が載置される第2の搬送床面と、第2の搬送床面の上方に配置されており、前記間隔W1よりも広い間隔W2をあけて隔てられた一対のガイド壁とを有し、前記第2の搬送経路が、前記電子部品を搬送するために電子部品が載置される第3の搬送床面と、第3の搬送床面の上方に設けられており、前記間隔W2よりも狭い間隔W3をあけて隔てられた一対の第2の搬送ガイド面とを有し、前記回転経路内において前記電子部品の内部電極面が所定の方向を向くように前記電子部品に磁力線を印加するように設けられた第1の磁石を備える、電子部品搬送装置が提供される。
【0011】
本発明に係る電子部品搬送装置のある特定の局面では、前記回転経路内において第1の磁石から与えられた磁力線によって方向が整列された磁石を前記第1の磁石よりも下流側において、前記第2の搬送床面及び/または前記一対のガイド壁の内の少なくとも1つの面に吸着させるように、前記回転経路の外側に設けられた第2の磁石がさらに備えられている。この場合には、第2の磁石により、第2の搬送床面、及び/またはガイド壁に吸着されながら搬送されるため、正しい向きに整列された磁石が正しい向きに確実に維持される。
【0012】
本発明に係る電子部品搬送装置の他の特定の局面では、前記電子部品の長手方向の寸法をL、幅方向の寸法をW、厚み方向の寸法をTとしたとき、W2が、1.03×(W+T1/2〜1.06×(W+T1/2の範囲内とされている。この場合には、充分なスペースが与えられているので整列された電子部品を安定して新しい向きに確実に維持される。
【0013】
本発明に係る電子部品搬送装置の別の特定の局面によれば、前記電子部品の長手方向の寸法をL、幅方向の寸法をW、厚み方向の寸法をTとしたときに、前記回転経路の長さが、2.0L以上である。この場合には、回転経路の長さが十分長いため、回転するスペースが充分に与えられているため回転経路内において、電子部品をより一層確実に正しい向きとすることができる。
【0014】
本発明に係る電子部品搬送装置のさらに他の特定の局面によれば、前記第2の磁石の磁力の強さが、前記第1の磁石の磁力よりも弱くされている。この場合、第2の磁石により第1の磁石の磁力による第3搬送経路直前での回りすぎを緩和し、姿勢が安定されるため、回転経路内で部品が詰まらず正しい向きの電子部品を確実に下流側に搬送することができる。
【0015】
本発明に係る電子部品搬送装置のさらに他の特定の局面では、前記第1の磁石が、前記回転経路の前記第1の搬送床面の下方に設けられている。この場合には、磁力線を第1の搬送床面と平行な方向に搬送経路内において延ばし、電子部品の向きを揃えることができる。
【0016】
本発明に係る電子部品搬送装置のさらに別の特定の局面では、前記第1の磁石の磁力線における極性の境界が、前記回転経路の前記第1の搬送床面から前記回転経路内の前記電子部品の最上部の位置までの間に位置している。この場合には、磁力線が上下方向に延びる部分が搬送経路内の電子部品が配置されている部分に確実に位置されるため、内部電極面が上下方向に延びるように確実に電子部品の向きを揃えることができる。
【0017】
本発明に係る電子部品搬送装置のさらに他の特定の局面では、前記第1の磁石が複数設けられており、複数の第1の磁石が、前記搬送経路を挟むように配置されている。この場合には、電子部品の向きをより一層確実に揃えることができる。
【0018】
本発明のさらに別の特定の局面によれば、前記回転経路が、前記第2の搬送経路に接続されている端部に向かって前記一対のガイド壁の間隔が徐々に狭くなるガイド部分をさらに備えられている。この場合には、正しい向きに揃えられた電子部品を、その状態のまま無理なく回転経路から第2の搬送経路に導くことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電子部品搬送装置では、回転経路における一対のガイド壁間の間隔W2が、第1,第2の搬送経路における第1の搬送ガイド間の間隔W1及び第2の搬送ガイド間の間隔W3よりも大きくされていたので、回転経路内においては、第1の磁石から生じた磁力線によって電子部品の向きを確実に揃えることができる。しかも、回転経路及び第2の搬送経路は、第2の搬送床面及び第2の搬送床面を有するため、向きを揃えられた電子部品がその向きを確実に維持したまま回転経路から第2の搬送経路に向かって搬送される。従って、例えば搬送経路に振動を与えて電子部品を移動させる搬送手段などを用いた場合であっても、正しい向きに揃えられた電子部品のその向きのまま確実に搬送し、供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品搬送装置を説明するための略図的斜視図であり、(b)は、(a)中のB−B線に沿う図であり、かつ第1の実施形態の電子部品搬送装置において、第1の搬送経路を説明するための模式的横断面図であり、(c)は、(a)中のC−C線に沿う図であり、かつ第1の実施形態の電子部品搬送装置において、第1の磁石により電子部品の向きが揃えられる原理を説明するための模式的横断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電子部品搬送装置において電子部品を搬送するための搬送手段を説明するための略図的側面図である。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施形態で搬送される電子部品を示す斜視図であり、(b)は(a)中のA−A線に沿う部分の断面図であり、(c)は(a)に示した電子部品の正面断面図である。
【図4】第1の実施形態の電子部品搬送装置において、第2の磁石により向きが揃えられた電子部品の姿勢を安定化する工程を説明するための模式的横断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る電子部品搬送装置を説明するための略図的斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の電子部品搬送装置において、第1の磁石により電子部品の向きが揃えられる原理を説明するための模式図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る電子部品搬送装置の概略構成を示す模式的斜視図である。
【図8】第3の実施形態の電子部品搬送装置において電子部品の向きが揃えられる原理を説明するための模式的横断面図である。
【図9】本発明の電子部品搬送装置の他の変形例を説明するための略図的斜視図である。
【図10】本発明の電子部品搬送装置のさらに他の変形例を説明するための略図的斜視図である。
【図11】本発明の電子部品搬送装置のさらに別の変形例を説明するための模式図である。
【図12】従来の電子部品の整列装置を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
(第1の実施形態)
図3(a)は、本発明の第1の実施形態において搬送される電子部品を示す斜視図である。電子部品1は、積層セラミックコンデンサであり、直方体状の形状を有する。すなわち、電子部品1は、直方体状のセラミック焼結体2を有する。図3(b),(c)に示すように、セラミック焼結体2内においては、複数の内部電極3がセラミック層を介して重なり合っている。本実施形態では、内部電極3は、ニッケルを主体とし、強磁性を有する。なお、本発明が対象とする電子部品は、内部電極が強磁性を有する限り、適宜の材料で形成され得る。
【0023】
セラミック焼結体2の向かい合う第1,第2の端面2a,2bを覆うように、第1,第2の外部電極4,5が形成されている。いま電子部品1の第1,第2の端面2a,2bを結ぶ方向である長手方向の寸法を長さLとする。また、複数の内部電極3がセラミック層を介して積層されている方向すなわち高さ方向の寸法を厚みTとする。そして、一対の側面間を結ぶ方向の寸法を幅Wとする。従って、複数の内部電極3は、その面方向が、上記電子部品1の長さL及び幅Wの方向と平行な方向とされており、上記厚みTの方向は、内部電極3と直交する方向となっている。
【0024】
電子部品1では、長さLに比べて、幅W及び厚みTが小さく、幅Wと厚みTはほぼ等しい。
【0025】
電子部品搬送装置11では、上記複数の内部電極3の向きが揃うように複数の電子部品1が整列されて供給される必要がある。
【0026】
図1に示す電子部品搬送装置11は、複数の電子部品1が供給された場合、複数の電子部品1を、内部電極3の向きが揃うように整列させ、搬送することを可能とする。
【0027】
電子部品搬送装置11は、搬送経路構成部材12を有する。この搬送経路構成部材12は、上流側から、第1の搬送経路13、回転経路14、第2の搬送経路15を構成するように設けられている。
【0028】
第1の搬送経路13は、電子部品1が載置される平面状の第1の搬送床面13aと、第1の搬送床面13a上に立設され、間隔W1を隔てて設けられた一対の第1の搬送ガイド面13b,13cとを有する。
【0029】
回転経路14もまた、平面状である。第1の搬送床面13aに連なるように設けられた第2の搬送床面14aを有する。第2の搬送床面14a上に、間隔W2を隔てて、一対のガイド壁14b,14cが設けられている。
【0030】
第2の搬送経路15は、電子部品1が載置される平面状の第3の搬送床面15aと、第3の搬送床面15a上に立設されており、間隔W3を介して隔てられた一対の第2の搬送ガイド面15b,15cとを有する。
【0031】
第1の搬送床面13a、第2の搬送床面14a及び第3の搬送床面15aは連ねられており、1つの平面を構成している。
【0032】
第1の搬送経路13、回転経路14、及び第2の搬送経路15により全体としての搬送経路が構成されており、該搬送経路において、電子部品1がその長手方向に搬送される。この搬送可能とするために、搬送手段として、図2に示すように、搬送経路構成部材12の下面に振動源16が連結されている。振動源16は、搬送経路構成部材12に振動を与え、その振動により、供給された電子部品1が第1の搬送経路13から回転経路14及び第2の搬送経路15に向かって移動される。この移動を円滑に行うために、好ましくは、第1の搬送床面13aから第3の搬送床面15aに向かって高さが低くなるように、第1〜第3の搬送床面13a〜15aに傾斜が付けられていてもよい。もっとも、上記傾斜は必ずしも必要ではない。
【0033】
また、第1の搬送床面13aのみに、回転経路14側に向かってその高さが低くなるように傾斜が設けられていてもよく、第1の搬送床面13a及び第2の搬送床面14aにのみ下流側に向かって高さが低くなるように傾斜が設けられていてもよい。すなわち、第3の搬送床面15aよりも上流側において、一部においてのみ上記のような傾斜が設けられていてもよい。
【0034】
上記のように、第1の搬送経路13、回転経路14及び第2の搬送経路15においては、電子部品は、平面状の第1〜第3の搬送床面13a〜15a上に面接触的に接触された状態で移動されるため、電子部品1は、その向きが安定な状態で搬送される。
【0035】
他方、電子部品1では、長さLに比べて、幅W及び厚みTが小さく、幅Wと厚みTはほぼ等しい。製造された多数の電子部品1を第1の搬送経路13の上流側から供給した場合を考える。この場合、供給されてきた電子部品1としては、内部電極3の面方向が水平方向を向いている電子部品1と、内部電極3の面方向が垂直方向を向いている電子部品1とが存在する。本実施形態では、このような電子部品1の内部電極3の向きが回転経路14で揃えられる。
【0036】
なお、第1の搬送経路13においては、上記電子部品1を長手方向にスムーズに搬送するために、間隔W1は、長さLよりも短くされていることが必要である。さもないと、電子部品1の長手方向が一対の第1の搬送ガイド面13b,13cを結ぶ方向となる向きに電子部品1が位置されるおそれがある。
【0037】
第2の搬送経路15においても同様に、W3は、長さLよりも短いことが必要である。
【0038】
他方、電子部品1の倒立を防止するには、第1の搬送経路13、回転経路14及び第2の搬送経路15の高さ、すなわち図1(b)における高さHもまた、電子部品1の長さLよりも低いことが必要である。
【0039】
図1では、天板は図示を省略しているが、実際には、図1の第1の搬送経路13、回転経路14及び第2の搬送経路15の上方開口部分を覆うように、天板17(図2参照)が設けられている。なお、天板17は、搬送経路の上方開口の全体を覆う必要は必ずしもない。上記電子部品1の倒立を防止し得る限り、部分的にのみ天板が設けられてもよく、メッシュ状の天板が設けられてもよい。
【0040】
回転経路14は、電子部品1をその長手方向を軸に回転させることを可能とする部分であり、それによって、電子部品1の向きが揃えられる。回転経路14においては、一対のガイド壁14b,14c間の間隔W2は、間隔W1やW3よりも大きくされている。これは、電子部品1の長手方向を軸に電子部品1を容易に回転させるためでもある。
【0041】
そして、一方のガイド壁14bの外側に、第1の磁石21が配置されている。第1の磁石21は、図1(c)に示すように、N極が上方に、S極が下方に位置するように設けられている。従って、磁力線Zは、回転経路14内に延ばされている部分において、上方から下方に向かって延ばされている。
【0042】
従って、回転経路14に導かれてきた電子部品1は、内部電極3が強磁性を有するため、内部電極3の面方向が上記磁力線Zの延びる方向に一致するように、向きを変えられる。例えば、内部電極3が上下方向に延びている場合には、上記磁力線Zが延びる方向と内部電極3の延びる方向がほぼ一致しているため、その向きのまま、電子部品1は、回転経路14内を搬送されることとなり、第2の搬送経路15に供給される。
【0043】
他方、電子部品1の内部電極3が水平方向を向いている場合には、上記磁力線Zの作用により、内部電極3が図1(c)に示す向きとなるように電子部品1が長さ方向周りに回転される。すなわち、長手方向に延びる中心軸周りにおいて、電子部品1が90°回転され、内部電極3の向きが図1(c)に示す向きとされる。
【0044】
従って、回転経路14内において、供給されてきた電子部品1の内部電極3が全て上下方向を向くように、電子部品1の向きが揃えられる。
【0045】
回転経路14においては、間隔W2がLよりも短いため、電子部品1が誤ってその長手方向がガイド壁14b,14cを結ぶ方向に一致することもない。
【0046】
他方、回転経路14において、間隔W2が、間隔W1や間隔W3よりも広いため、正しい向きにされた電子部品1は、内部電極3の向きは正しいものの、その長手方向が、搬送方向と交差するおそれがある。
【0047】
これに対して、本実施形態では、第2の磁石22が第1の磁石21の下流側に設けられているため、内部電極3の向きが揃えられた電子部品1を正しい向きのまま確実に第2の搬送経路15に供給することが可能とされている。第2の磁石22は、本実施形態では、回転経路14において、第1の磁石21が設けられている部分よりも下流側において、第1の磁石21が設けられている側とは反対側、すなわち、ガイド壁14c側において、ガイド壁14cの外側に設けられている。この第2の磁石22の磁力により、正しい向きにされた電子部品1が、図4に示すように、ガイド壁14c側に寄せられ、第2のガイド壁14cの内面に吸着される。そのため、正しい向きとされた電子部品1は、ガイド壁14cの内面に吸着され、その向きが安定なまま、下流側に移動されることとなる。
【0048】
この場合、第2の磁石22の磁力が強すぎると、搬送手段としての振動源16により電子部品1を移動させることができなくなる。そのため、第2の磁石22の磁力は、搬送手段によって電子部品1を下流側に移動させる力を妨げない程度の大きさとすることが必要である。
【0049】
上記回転経路14の搬送方向に沿う長手方向寸法は、好ましくは、上記電子部品1の長さLの2.0倍以上とされる。回転経路14内において、電子部品1の向きを揃える間も、電子部品1が下流側に向かって移動し続けている。そのため、回転経路14においても、搬送方向に沿う長手方向寸法はある程度必要であるが、その長さは第1の磁石の磁力により上記電子部品の姿勢が維持される程度の長さであればよく、それよりも長い場合は第2の磁石により姿勢が維持される。
【0050】
回転経路14の搬送方向に沿う長手方向寸法が、Lの2.0倍以上であれば、回転経路14内において、電子部品1をその長手方向に沿う中心軸周りに容易に回転させ、正しい向きとすることができる。回転経路14の長手方向寸法が2.0×Lよりも短い場合には、電子部品1の搬送速度及び第1の磁石21による磁力にもよるが、電子部品1を正しい向きに確実に揃えることが困難となることがある。
【0051】
好ましくは、間隔W2を、電子部品の幅Wに対し、1.03×(W+T1/2〜1.06×(W+T1/2の範囲内とすることが望ましい。この範囲内であれば、電子部品1の振動による移動を阻害することなく、電子部品1をその長手方向を軸に無理なく回転させ、その向きを揃えることができる。間隔W2が上記範囲よりも小さい場合には、回転経路14における幅方向寸法が十分でないため、電子部品1の向きを確実に揃えることが困難となることがある。間隔W2が上記範囲よりも大きい場合には、電子部品1をその長手方向を軸に回転させることは容易であるものの、向きを揃えたとしても、電子部品1の動きが不安定となり、姿勢が崩れたり、回転経路14内で複数の電子部品が集合し、回転経路が詰まったりするおそれがある。
【0052】
回転経路14においては、ガイド壁14b及びガイド壁14cが間隔W2を隔てて対向しているが、ガイド壁14b,14cは、上流側において、移行ガイド面14b1,14c1を有する。移行ガイド面14b1,14c1では、間隔W2から上流に向かうにつれて間隔が徐々に狭くなり、間隔W1に至る。従って、第1の搬送経路13から回転経路14に向かって供給される電子部品1が無理なく回転経路14に導かれる。
【0053】
もっとも、上記移行ガイド面14b1,14c1は、上記のように、徐々にその間隔が変化するものではなく、搬送経路と直交する方向に延ばされていてもよい。その場合には、第1の搬送経路13と回転経路14との接続部分において、幅方向に延びる移行ガイド壁が設けられることとなる。
【0054】
また、回転経路14の下流側部分においても、上記第1,第2のガイド壁14b,14cは、移行ガイド面14b2,14c2を有する。移行ガイド面14b2,14c2間の間隔は、上流端においてW2であり、下流に向かうにつれW2から徐々に狭くなり、間隔W3に至る。移行ガイド面14b2,14c2により一対のガイド壁間の間隔が下流側に向かうにつれて徐々に狭くなる。この移行ガイド壁により、電子部品1が間隔W2に比べて狭い間隔W3の第2の搬送経路15に正しい向きのまま無理なく導かれる。
【0055】
そして、正しい向きの電子部品1は、間隔W3の第2の搬送経路15内では、もはや長手方向を軸に回転しない。従って、正しい向きの電子部品1が第2の搬送経路15の下流側に導かれていく。
【0056】
よって、本実施形態によれば、複数の電子部品1をその長手方向に搬送するに際し、内部電極の厚みが一定方向となるように電子部品の向きを確実に揃えることが可能となる。
【0057】
しかも、向きが揃えられた多数の電子部品1を安定に順次供給することが可能となる。
【0058】
次に、具体的な実験例につき説明する。第1の実施形態において、以下の5種類のチップサイズの電子部品1を用意し、搬送した。
【0059】
用意した電子部品のチップサイズ
(1)1005:L=1.05mm、W=0.5mm、T=0.5mm
1608:L=1.6mm、W=0.8mm、T=0.8mm
2012:L=2.0mm、W=1.25mm、T=1.25mm
3216:L=3.2mm、W=1.6mm、T=1.6mm
3225:L=3.2mm、W=2.5mm、T=2.5mm
上記5種類のチップサイズの電子部品1を多数用意し、第1の磁石21の磁力を種々変化させ、搬送速度3m/分〜7m/分程度で電子部品1を搬送した。この場合の搬送性と電子部品1の回転性とを評価した。なお、搬送性とは、電子部品搬送装置において、第1の搬送経路の上流から第2の搬送経路の下流端まで次々に電子部品1を無理なく搬送させたか否かを評価したものである。回転性については、磁力により、電子部品が回転し、その向きが正確に揃えられたか否かを評価したものである。実際の評価に際しては、第2の搬送経路の下流に到達した電子部品の向きを選別することにより行った。
【0060】
結果を下記の表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、磁力が1G未満の場合には、搬送性は優れているものの回転性が悪かった。磁力が1500Gを越えると、搬送性及び回転性の双方が十分でないことが多かった。これは、磁力が強すぎ、電子部品1が上記により吸着され、下流側に移動されず、また方向選別のための電子部品1の回転も生じ難かったことによる。磁力が1〜1000Gの場合には、サイズにもよるが、電子部品1を無理なく搬送し、かつ回転経路内で回転させ、その方向を揃えることがわかる。
【0063】
もっとも、電子部品1の搬送性は、上記第1の磁石21の磁力の大きさだけに依存するものではなく、電子部品のチップサイズや内部電極を構成する材料の強磁性の程度、内部電極の積層数等によっても異なるため、また電子部品1の搬送手段による搬送速度によっても異なるため、一義的に定め得るものではない。すなわち、表1に結果は、あくまでも、上記5種類のチップサイズの電子部品1の搬送に際し、第1の磁石21の磁力を調整すれば、搬送性及び反転性を高め得ることを示しているものであり、1G未満や、1500G以上の磁力であっても、チップサイズ、搬送速度によっては、十分に本発明の効果を期待し得るものである。
【0064】
もっとも、上記5種類の一般的に使用されるチップサイズにおいては、磁力を1G以上の範囲とすれば、電子部品1の方向を確実に揃えることができ、また磁力Gを1000以下とすれば、電子部品1を確実に搬送し得ることがわかる。さらに好ましくは、チップサイズが1005の場合には、磁力を1〜50G、1608サイズの場合には、100〜200G、2012サイズの場合及び3216サイズの場合には磁力を300〜500G、3225サイズの場合には磁力を700〜1000Gとすれば、搬送性及び反転性の双方を容易に高め得ることがわかる。
【0065】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、第1の磁石21は、ガイド壁14bの外側において、N極が上方、S極が上方となる向きに設けられていた。
【0066】
これに対して、図5に示すように、第2の実施形態では、第1の磁石21Aは、回転経路14の下方、より具体的には、第2の搬送床面14aの下方に配置されている。この第1の磁石21Aは上面がN極、下面がS極となっている。そのため、磁力線Zは、図6に示すように生じることとなる。従って、ガイド壁14b側及びガイド壁14c側のいずれの側においても磁力線Zがほぼ上下方向に延びるように生じるため、第1の実施形態の場合と同様に、内部電極3の面方向が上下方向に延びるように複数の電子部品1の向きが揃えられる。
【0067】
また、第1の磁石21Aが第2の搬送床面14aの幅方向中央位置下方に位置しているため、図6に示したように、ガイド壁14b側及びガイド壁14c側の双方に磁力線が生じ、双方の磁力線Z,Zの作用により、電子部品1をより確実に回転させることができる。また、第2の搬送床面14aの下方に第1の磁石21Aが設けられているため、搬送経路の側方における作業を速やかに行うことができるとともに、搬送装置の幅方向寸法を小さくすることができる。
【0068】
(第3の実施形態)
図7に示すように、第3の実施形態の電子部品搬送装置では、第1の磁石21Aに加えて、もう1つの第1の磁石21Bが設けられている。すなわち、第2の実施形態では、回転経路14の下方に第1の磁石21Aが設けられていたが、第3の実施形態では、さらに上方にも第1の磁石21Bが設けられている。よって、回転経路14が、上下の第1,第2の磁石21A,21Bより挟まれている。
【0069】
図8に示すように、第1の磁石21Bは、上面がN極、下面がS極となっている。
【0070】
このように、回転経路14の上方に第1の磁石21Bを設けることにより、図8に示すように、第1の磁石21Bからの磁力線Zも作用するため、電子部品1をより確実に回転させ、その向きを揃えることができる。
【0071】
また、第1の磁石21Aの位置に対し、第1の磁石21Bの位置を調整することにより、磁力線の配置を変化させることもできる。従って、それによっても、電子部品1の回転をより確実に行わせ得る。
【0072】
(他の変形例)
図9は、第1の実施形態の変形例を説明するための略図的斜視図である。本変形例の電子部品搬送装置31では、第1の磁石21が、第2の磁石と同様に、ガイド壁14c側に配置されている。このように、第1の磁石21は、第2の磁石22と同じ側に配置されていてもよい。さらに、図10に示すように、回転経路14において、幅方向両側に第1の磁石21,21が配置されてもよい。
【0073】
なお、上記実施形態では、積層セラミックコンデンサである電子部品1につき説明したが、本発明は、強磁性の内部電極を有する直方体状の電子部品の搬送に広く適用することができる。
【0074】
図11は、第2の実施形態の変形例を説明するための模式図である。第2の実施形態では、図6に示したように、第1の磁石21Aの上面がN極、下面がS極とされていた。これに対して、図11に示す変形例のように、回転経路14の下方に配置された第1の磁石21Bにおいて、回転経路14の搬送方向と直交する方向すなわち図11の図面上横方向における一端がN極であり、他端がS極とされてもよい。磁力線Zは、回転経路14内において、回転経路14を横切る方向であって搬送方向と直交する方向に延びている。この場合、回転経路14内においては、内部電極3の面方向が磁力線Zの延びる方向に、すなわち回転経路14の底面と略平行に延びるように複数の電子部品1の向きが揃えられる。
【符号の説明】
【0075】
1…電子部品
2…セラミック焼結体
2a,2b…第1,第2の端面
3…内部電極
4,5…第1,第2の外部電極
11…電子部品搬送装置
12…搬送経路構成部材
13…第1の搬送経路
13a〜15a…第1〜第3の搬送床面
13b,13c…第1の搬送ガイド面
14…回転経路
14b,14c…ガイド壁
14b1,14c1…移行ガイド面
14b2,14c2…移行ガイド面
15…第2の搬送経路
15b,15c…第1の搬送ガイド面
16…振動源
17…天板
21…第1の磁石
21A,21B…第1,第2の磁石
22…第2の磁石
31…電子部品搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性の内部電極を有する直方体状の電子部品を搬送するための電子部品搬送装置であって、
前記電子部品が長手方向を有し、
前記電子部品を該電子部品の長手方向に搬送するための搬送経路が備えられた搬送部材と、
前記搬送部材の搬送経路において前記電子部品を移動させるための搬送手段とを備え、
前記搬送経路が、
第1の搬送経路と、
前記第1の搬送経路の下流側に接続されている回転経路と、
前記回転経路の下流側に接続されている第2の搬送経路とを有し、
前記第1の搬送経路が、電子部品が載置される搬送床面と、前記搬送床面の上方に設けられており、間隔W1をあけて隔てられた一対の第1の搬送ガイド面とを有し、
前記回転経路が、前記電子部品を搬送するために電子部品が載置される第2の搬送床面と、前記第2の搬送床面の上方に配置されており、前記間隔W1よりも広い間隔W2をあけて隔てられた一対のガイド壁とを有し、
前記第2の搬送経路が、前記電子部品を搬送するために電子部品が載置される第3の搬送床面と、第3の搬送床面の上方に設けられており、前記間隔W2よりも狭い間隔W3をあけて隔てられた一対の第2の搬送ガイド面とを有し、
前記回転経路内において前記電子部品の内部電極面が所定の方向を向くように前記電子部品に磁力線を印加するように設けられた第1の磁石をさらに備える、電子部品搬送装置。
【請求項2】
前記回転経路内において第1の磁石から与えられた磁力線によって方向が整列された磁石を前記第1の磁石よりも下流側において、前記第2の搬送床面及び/または前記一対のガイドの内の少なくとも1つの面に吸着させるように、前記回転経路の外側に設けられた第2の磁石をさらに備える、請求項1に記載の電子部品搬送装置。
【請求項3】
前記電子部品の長手方向の寸法をL、幅方向の寸法をW、厚み方向の寸法をTとしたとき、W2が、1.03×(W+T1/2〜1.06×(W+T1/2の範囲内とされている、請求項1または2に記載の電子部品搬送装置。
【請求項4】
前記電子部品の長手方向の寸法をL、幅方向の寸法をW、厚み方向の寸法をTとしたときに、前記回転経路の長さが、2.0L以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品搬送装置。
【請求項5】
前記第2の磁石の磁力の強さが、前記第1の磁石の磁力よりも弱い、請求項2に記載の電子部品搬送装置。
【請求項6】
前記第1の磁石が、前記回転経路の前記第1の搬送床面の下方に設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子部品搬送装置。
【請求項7】
前記第1の磁石の磁力線における極性の境界が、前記回転経路の前記第1の搬送床面から前記回転経路内の前記電子部品の最上部の位置までの間に位置している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子部品搬送装置。
【請求項8】
前記第1の磁石が複数設けられており、複数の第1の磁石が、前記搬送経路を挟むように配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子部品搬送装置。
【請求項9】
前記回転経路が、前記第2の搬送経路に接続されている端部に向かって前記一対のガイド壁の間隔が徐々に狭くなる移行ガイド壁をさらに有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子部品搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−18698(P2011−18698A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160963(P2009−160963)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【出願人】(000227397)日東工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】