説明

電子部品搭載用基板への金属放熱板の接着方法

【目的】多層基板に形成された金属放熱板収容凹部の深さ及び金属放熱板の高さがばらついても、金属放熱板を多層基板に接着した際、アウターリード表面から放熱板表面までの高さを精度よく所定の値とすること。
【構成】電子部品搭載部2に搭載される電子部品3と接続される導体回路を有する多層基板1に、導体回路の一部とスルーホールを介して接続されるインナーリード4が挿入された電子部品搭載用基板への金属放熱板6の接着方法において、放熱板6の接着面にダイペースト12を接着に必要な厚さより厚く塗布した後、基板の収容凹部9の底面に、ダイペースト12が塗布された放熱板6の接着面が対向する状態で両者を圧着機の固定台13上に設置し、圧着機の可動台14を放熱板6の接着面と反対側の面とアウターリード8の面との距離が所定の値Aとなる位置まで移動させ、次にダイペーストを熱硬化させて基板に放熱板6が接着する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子部品搭載部に搭載される電子部品と接続される複数の導体回路を有する多層基板に、該導体回路の一部とスルーホールを介して接続されるインナーリードが挿入された電子部品搭載用基板への金属放熱板の接着方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より種々の形式の電子部品搭載用基板を用いた電子部品搭載装置が提案されている。そして、電子機器の小型化を図るため、電子部品のより高密度実装が要求され、その要求に答えるためにインナーリードが挿入された複数の導体回路を有する多層基板に電子部品を実装し、導体回路の一部と前記インナーリードとがスルーホールを介して接続されている電子部品搭載装置が提案されている。
【0003】また、動作中に電子部品から発生する熱を効率よく放熱するものとして図4に示すものが提案されている。この電子部品搭載装置は複数の導体回路(図示せず)が形成された多層基板1に形成された電子部品搭載部2に電子部品3が搭載され、金属細線(図示せず)により電子部品と接続された導体回路の一部と、多層基板1に挿入されたインナーリード4とがスルーホール5を介して接続されている。また、電子部品搭載部2の底部に金属放熱板(以下ヒートシンクという)6が配設され、ヒートシンク6の表面6aがトランスファモールドにより全体を封止する封止樹脂7の外部に露出している。
【0004】図5及び図6に示すように、前記多層基板1の四側面からは前記インナーリード4に連続するアウターリード8が多数本延出している。また、多層基板1の中央部には金属放熱板収容凹部9と電子部品搭載部2を構成する透孔10とがそれぞれ方形状に形成されている。
【0005】前記多層基板1に対してヒートシンク6を接着する際には、図7に示すように、多層基板1に形成された金属放熱板収容凹部9の底部9aに、底部9aと略同形状に形成された接着シート11を載置する。そして、その接着シート11上面にヒートシンク6を載置し、その状態でヒートシンク6と多層基板1とに所定の温度及び圧力を加えてヒートシンク6を接着シート11を介して多層基板1に熱圧着する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記の多層基板1をトランスファモールドにより樹脂封止して使用する場合は、アウターリード8の表面8aからヒートシンク6の表面6aまでの高さHの精度が重要となる。そして、接着シート11は熱圧着後の厚さが略一定(数十μm)であるため、多層基板1に形成される金属放熱板収容凹部9の深さ及びヒートシンク6の厚さの精度が高さHの精度を左右する主要な要因となる。そして、底部9aを形成する際の切削加工の深さ精度がσ=30μmほどであるため、従来の接着方法では高さHの精度を高くした場合に歩留りが低下するという問題がある。
【0007】本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は多層基板に形成された金属放熱板収容凹部の深さ及び金属放熱板の高さがばらついても、金属放熱板を多層基板に接着した際、アウターリード表面から金属放熱板表面までの高さを精度よく所定の値とすることができる電子部品搭載用基板への金属放熱板の接着方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明では、電子部品搭載部に搭載される電子部品と接続される複数の導体回路を有する多層基板に、該導体回路の一部とスルーホールを介して接続されるインナーリードが挿入された電子部品搭載用基板への金属放熱板の接着方法において、金属放熱板の接着面にダイペーストを接着に必要な厚さより厚く塗布した後、前記多層基板に形成された金属放熱板収容凹部の底面に、前記ダイペーストが塗布された金属放熱板の接着面が対向する状態で両者を圧着機の固定台上に設置し、圧着機の可動台を前記金属放熱板の接着面と反対側の面と前記アウターリードの面との距離が所定の値となる位置まで移動させ、次にダイペーストを熱硬化させて前記多層基板に前記金属放熱板が接着するようにした。
【0009】
【作用】まず、金属放熱板の接着面にダイペーストが必要な厚さより厚く塗布される。次に、多層基板に形成された金属放熱板収容凹部の底面に、ダイペーストが塗布された金属放熱板の接着面が対向する状態で両者を圧着機の固定台上に設置される。そして、圧着機の可動台が金属放熱板の接着面と反対側の面とアウターリードの面との距離が所定の値となる位置まで移動され、最後にダイペーストが熱硬化されることによって多層基板に金属放熱板を接着される。
【0010】
【実施例】(第1実施例)以下、本発明を具体化した第1実施例を図1及び図2に基づいて説明する。なお、従来技術で説明した部分と同様な部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0011】まず、ヒートシンク6の裏面、即ち多層基板1との接着面側に、金属放熱板収容凹部9の底面9aと略同形状にダイペースト12をスクリーン印刷により所定の厚さ(100μm)に塗布する。前記スクリーン印刷に使用されるメタルマスク(図示せず)の厚さはダイペースト12の塗布厚により変更され、100μmのダイペースト12の塗布厚を得る場合には、100μmの厚さのメタルマスクを使用する。また、前記ダイペースト12としては電子部品3をヒートシンク6に接着する際に使用する不純物の少ない無溶剤の銀ペーストを使用する。
【0012】なお、ヒートシンク6と多層基板1との接着に必要なダイペースト12の最小の厚さはほぼ5μmであるが、金属放熱板収容凹部9を形成する際の切削加工の深さの精度σ=±30μm、ヒートシンク6の厚さ精度σ=±10μmを考慮して100μmの厚さに設定した。
【0013】次に、ダイペースト12が塗布されたヒートシンク6を、接着面側が底部9aと対向する状態で前記多層基板1に形成された金属放熱板収容凹部9に収容する。そして、そのヒートシンク6が収容された多層基板1を図1に示すように、加熱圧着機の固定台13上に載置する。なお、加熱圧着機は可動台14の停止位置を、前記多層基板1に設けられたアウターリード8の表面8aを基準として設定することができる。また、可動台14は内蔵ヒーター(図示せず)により加熱可能となっている。
【0014】そして、可動台14がダイペースト12の硬化温度(約180℃)に加熱された状態で下降される。前記可動台14は下降途中で可動台14の下面が前記ヒートシンク6の表面6aに当接し、その状態で可動台14が下降を続けることによりヒートシンク6が金属放熱板収容凹部9の底面9a側へ移動する。このとき、前記ヒートシンク6と金属放熱板収容凹部9の底面9aとの間に介在する厚さ100μmのダイペースト12は可動台14の下降にともなって底面9aとヒートシンク6の裏面とによって押しつぶされ、余分なダイペースト12が底面9aと対応する位置から流れ出す。
【0015】アウターリード8の表面8aから可動台14の下面、即ちヒートシンク6の表面6aまでの距離が所定の設定値となる位置まで可動台14が下降したとき、その位置で可動台14は停止され、さらに、一定時間その位置に停止されることによって、可動台14の熱がヒートシンク6に伝達される。従って、前記ダイペースト12が熱硬化してヒートシンク6が多層基板1に接着される。そして、一定時間経過した後、可動台14を上昇させることによって多層基板1へのヒートシンク6の接着が完了する。
【0016】従って、金属放熱板収容凹部9の深さ及びヒートシンク6の厚さの精度を高くしなくても、ダイペースト12の厚さが変化することによってアウターリード8の表面8aからヒートシンク6の表面6aまでの高さHが所定の値Aとなるように精度よく形成することが可能となり、高精度を要求された場合にも歩留りの向上を図ることができる。
【0017】また、ダイペースト12は接着に必要な厚さより厚く形成されているため、可動台14が所定位置まで下降されると余分なダイペースト12がヒートシンク6の裏面や電子部品挿通孔2の側面に付着する。しかし、ダイペースト12は電子部品3を接着するのに使用されるものと同じものであるため、悪影響を与えることがない。
【0018】また、無溶剤のダイペースト12が使用されているため、従来の溶剤系の接着シート11を使用した場合と異なり、熱硬化時にボイドが発生しない。さらに、熱圧着の際に熱伝導の良いヒートシンク6に接触する可動台14が加熱されるため、ヒートシンク6及び多層基板1の両者に熱を加えて圧着していた従来方法と比較して多層基板1の劣化が防止される。
【0019】(第2実施例)次に、第2実施例を図3に従って説明する。この実施例では加熱圧着機の固定台13側が加熱可能に構成され、ヒートシンク6が固定台13と接触する状態で加圧及び加熱を行うようにした点と、可動台14の停止位置の位置決め方法が前記実施例と異なっている。
【0020】即ち、図3に示すように、ダイペースト12が塗布された面が上側となるように、ヒートシンク6及び多層基板1を固定台13上に載置した状態で、可動台14を所定位置まで下降させる。加熱圧着機は固定台13の上面からアウターリード8の表面8aまでの距離を測定するセンサを有し、可動台14は前記センサにより測定された距離が所定の値Aとなったときに停止される。
【0021】従って、この実施例においても金属放熱板収容凹部9の深さ及びヒートシンク6の厚さのばらつきに関係なく高さHが所定値Aとなるように、多層基板1へヒートシンク6が精度良く接着される。
【0022】なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば銀ペースト12以外のダイペースト12を使用したり、スクリーン印刷以外の方法でダイペースト12の塗布を行ってもよい。また、ダイペースト12の加熱硬化が完了するまで加熱圧着機で加熱圧着する代わりに、ダイペースト12が半硬化した状態で加熱圧着機から取り外して別の加熱装置でダイペースト12を完全硬化させてもよい。
【0023】また、第2実施例において金属放熱板収容凹部9をヒートシンク6より大きく形成し、流れ出すダイペースト12を金属放熱板収容凹部9とヒートシンク6との隙間に入るようにしてもよい。
【0024】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の接着方法によれば、多層基板に形成された金属放熱板収容凹部の深さ及び金属放熱板の厚さの精度が悪くても、多層基板の所定位置に接着剤を介して金属放熱板を接着した際、アウターリードの表面から金属放熱板の表面までの高さを精度良く所定の値にすることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1実施例を示し、固定台に多層基板及びヒートシンクを載置した状態を示す側断面図である。
【図2】図1の状態から可動台が下降されてヒートシンクが押圧された状態を示す側断面図である。
【図3】第2実施例を示し、固定台にヒートシンク及び多層基板を載置した状態を示す側断面図である。
【図4】トランスファモールドされた電子部品搭載装置の側断面図である。
【図5】多層基板の平面図である。
【図6】多層基板の側断面図である。
【図7】従来技術の接着シートを使用して多層基板へヒートシンクを接着した状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1…多層基板、6…金属放熱板としてのヒートシンク、8…アウターリード、8a…面としての表面、9…金属放熱板収容凹部、9a…底面、12…ダイペースト、13…固定台、14…可動台

【特許請求の範囲】
【請求項1】電子部品搭載部(2)に搭載される電子部品と接続される複数の導体回路を有する多層基板(1)に、該導体回路の一部とスルーホールを介して接続されるインナーリード(4)が挿入された電子部品搭載用基板への金属放熱板の接着方法において、前記金属放熱板(6)の接着面にダイペースト(12)を接着に必要な厚さより厚く塗布した後、前記多層基板(1)に形成された金属放熱板収容凹部(9)の底面(9a)に、前記ダイペースト(12)が塗布された金属放熱板(6)の接着面が対向する状態で両者を圧着機の固定台(13)上に設置し、圧着機の可動台(14)を前記金属放熱板(6)の接着面と反対側の面とアウターリードの面(8a)との距離が所定の値となる位置まで移動させ、次にダイペースト(12)を熱硬化させて前記多層基板(1)に前記金属放熱板(6)を接着することを特徴とする電子部品搭載用基板への金属放熱板の接着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開平5−102339
【公開日】平成5年(1993)4月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−256718
【出願日】平成3年(1991)10月3日
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)