説明

電子部品用接着剤及び半導体チップ実装体の製造方法

【課題】ボイドの発生を抑制し、かつ、半導体チップ上面への這い上がりを生じにくい電子部品用接着剤を提供する。また、該電子部品用接着剤を用いた半導体チップ実装体の製造方法を提供する。
【解決手段】硬化性化合物と、硬化剤と、無機充填剤とを含有する電子部品用接着剤であって、25℃でE型粘度計を用いて測定した5rpmでの粘度をA1(Pa・s)、0.5rpmでの粘度をA2(Pa・s)としたとき、A1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内(ただし、実線上は含むが破線上は含まない)であり、前記硬化性化合物100重量部に対して、前記硬化剤の配合量が5〜150重量部、前記無機充填剤の配合量が60〜400重量部である電子部品用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイドの発生を抑制し、かつ、半導体チップ上面への這い上がりを生じにくい電子部品用接着剤に関する。また、本発明は、該電子部品用接着剤を用いた半導体チップ実装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ますます進展する半導体装置の小型化、高集積化に対応するために、ハンダ等からなる突起状電極(バンプ)を有する半導体チップを用いたフリップチップ実装が多用されている。例えば、特許文献1には、半導体装置のバンプ電極と基板の端子電極とを電気的に接続した後、封止材を上記半導体装置と基板との間隙に充填する半導体装置の製造方法が記載されている。
特許文献1には、封止材の良好な封止特性を得るために必要な粘度とチクソトロピー特性の限界を究明することを目的としたことが記載されており、粘度が100Pa・s以下でチクソトロピー指数が1.1以下である組成物からなる封止材であれば、封止材の注入時に間隙に速やかにかつ気泡を生じることなく小さな間隙にも十分浸透することが可能となることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、アンダーフィル材料として、実質的に球形の非凝集、非晶質かつ固体である表面処理ナノ粒子を含む硬化性アンダーフィル接着用組成物が記載されている。特許文献2には、表面改質ナノ粒子を使用することにより、望ましい熱膨張率(CTE)を有すると共に毛管アンダーフィル方法に使用するために有用な粘度範囲を提供するアンダーフィル接着剤を提供できることが記載されている。
【0004】
しかしながら、近年、半導体チップの小型化が進行するとともにバンプ間のピッチもますます狭くなっており、また、これらに伴って半導体チップ同士又は半導体チップと基板との間のギャップが狭くなっていることから、封止樹脂(アンダーフィル)の充填時に空気が巻き込まれやすく、ボイドが発生しやすくなっている。
この問題を解決するために、例えば、封止樹脂を電極接合後に充填するのではなく、接合領域に予め封止樹脂を設けておく方法が検討されている。例えば、特許文献3には、無機基板または有機基板の回路形成面の半導体素子を搭載する位置に所定の液状封止樹脂組成物を塗布した後、前記半導体素子の電極と前記基板の回路を、バンプを介して接合すると同時に前記液状封止樹脂組成物の硬化を行う半導体装置の製造方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の方法によっても、ボイドが生じる可能性を充分には排除できていない。また、特許文献3に記載の方法では、半導体チップの上面に封止樹脂が這い上がりやすく、ボンディング装置のアタッチメントを汚染してしまうという問題もある。また、例えば、特許文献2に記載のアンダーフィル材料を特許文献3に記載の方法に適用した場合にも、ボイドが発生しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3093621号公報
【特許文献2】特表2005−527113号公報
【特許文献3】特開2009−96886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ボイドの発生を抑制し、かつ、半導体チップ上面への這い上がりを生じにくい電子部品用接着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該電子部品用接着剤を用いた半導体チップ実装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化性化合物と、硬化剤と、無機充填剤とを含有する電子部品用接着剤であって、25℃でE型粘度計を用いて測定した5rpmでの粘度をA1(Pa・s)、0.5rpmでの粘度をA2(Pa・s)としたとき、A1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内(ただし、実線上は含むが破線上は含まない)であり、前記硬化性化合物100重量部に対して、前記硬化剤の配合量が5〜150重量部、前記無機充填剤の配合量が60〜400重量部である電子部品用接着剤である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、突起状電極を有する半導体チップをフリップチップ実装により基板に接合するとともに封止を行う半導体チップ実装体の製造方法において、予め基板上に設ける電子部品用接着剤として、硬化性化合物と、硬化剤と、無機充填剤とを所定の配合比で含有し、粘度特性及びチクソトロピー特性が所定の範囲内となる電子部品用接着剤を用いることにより、ボイドの発生を抑制し、かつ、電子部品用接着剤の半導体チップ上面への這い上がりを抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の電子部品用接着剤は、硬化性化合物と、硬化剤と、無機充填剤とを含有する電子部品用接着剤であって、25℃でE型粘度計を用いて測定した5rpmでの粘度をA1(Pa・s)、0.5rpmでの粘度をA2(Pa・s)としたとき、A1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内である。ただし、実線上は含むが破線上は含まないものとする。
【0011】
本明細書中、電子部品用接着剤の粘度の測定は、VISCOMETER TV−22(TOKAI SANGYO CO.LTD社製)等のE型粘度測定装置を用いて行われる。また、A2/A1とは、電子部品用接着剤の25℃でE型粘度計を用いて測定した、0.5rpmでの粘度A2(Pa・s)を5rpmでの粘度A1(Pa・s)で除した値を意味し、電子部品用接着剤のチクソトロピー特性を示す指標である。
なお、図1の実線及び破線で囲まれた範囲は、実施例及び比較例で測定した電子部品用接着剤の粘度特性及びチクソトロピー特性から導かれた範囲である。
【0012】
図1において、横軸はA1(Pa・s)であり、縦軸はA2/A1である。A1とA2/A1とを図1の実線及び破線で囲まれた範囲内とすることにより、半導体チップの突起状電極と基板の電極部とを接触させるとともに電子部品用接着剤を封止領域に充填する工程において気泡を噛みこんでしまった場合であってもボイドの発生を抑制することができ、更に、電子部品用接着剤の半導体チップ上面への這い上がりを抑制することができる。なお、このようにボイドの発生を抑制することができるのは、電子部品用接着剤を封止領域に充填する際、上記物性を示す電子部品用接着剤であれば、ぬれ広がりによって封止領域に充填される過程で気泡を押し出す働きをするためと推測される。
【0013】
A1が小さすぎることによりA1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内を満たさない場合には、電子部品用接着剤の流動性が高くなりすぎる。そのため、電子部品用接着剤を基板上に設ける工程において電子部品用接着剤のぬれ広がりが大きくなりすぎて封止領域近傍にあるアライメントマークに重なり、アライメントを行うことが困難となる。また、半導体チップの突起状電極と基板の電極部とを接触させるとともに電子部品用接着剤を封止領域に充填する工程において、フィレットが長くなってしまう。これにより、上記基板の配線部分が汚染されてしまうことがある。
A1が大きすぎることによりA1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内を満たさない場合には、電子部品用接着剤を封止領域に充填する際に電子部品用接着剤が充分にぬれ広がらず、ボイドの発生を抑制することが困難となる。
【0014】
A1の値は、A1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内を満たしていれば特に限定されないが、好ましい下限が25Pa・s、好ましい上限が150Pa・sであり、より好ましい下限が30Pa・s、より好ましい上限が130Pa・sである。
【0015】
A2/A1が小さすぎることによりA1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内を満たさない場合には、ボイドの発生を抑制することが困難となる。また、電子部品用接着剤を基板上に設ける工程と、半導体チップの突起状電極と基板の電極部とを接触させるとともに電子部品用接着剤を封止領域に充填する工程との間において、電子部品用接着剤の形状を維持することが困難となる。
A2/A1が大きすぎることによりA1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内を満たさない場合には、半導体チップの突起状電極と基板の電極部とを接触又は接合する際に電子部品用接着剤の半導体チップ上面への這い上がりを充分に抑制することができず、電子部品用接着剤がボンディング装置のアタッチメントに付着しやすくなる。
【0016】
A2/A1の値は、A1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内を満たしていれば特に限定されないが、好ましい下限が2.2、好ましい上限が4.5であり、より好ましい下限が2.5、より好ましい上限が4であり、更に好ましい上限が3.8、特に好ましい上限が3.5である。
【0017】
A1とA2/A1とは、図1の実線及び破線で囲まれた範囲内のなかでも、図3の実線で囲まれた範囲内であることが好ましい。
なお、図3の実線で囲まれた範囲は、実施例で得られた(A1,A2/A1)の点のうち最も外側に位置する点を繋ぐことにより得られた範囲である。
【0018】
本発明の電子部品用接着剤に含まれる、硬化性化合物、硬化剤、無機充填剤、必要に応じて界面活性剤等の各成分の種類及び配合量を調整することにより、A1とA2/A1とを図1の実線及び破線で囲まれた範囲内とすることができる。
【0019】
上記硬化性化合物を含有することにより、本発明の電子部品用接着剤は、硬化性及び硬化後の信頼性に優れる。上記硬化性化合物は、電子部品用接着剤の粘度特性及びチクソトロピー特性の両方を所望の範囲に調整する観点から、SP値が8〜14程度であることが好ましい。
上記硬化性化合物は特に限定されないが、エポキシ化合物、ビスマレイミド化合物、エピスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含有することが好ましい。
【0020】
上記エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ポリエーテル変性エポキシ化合物、ベンゾフェノン型エポキシ化合物、アニリン型エポキシ化合物、NBR変性エポキシ化合物、CTBN変性エポキシ化合物、及び、これらの水添化物等が挙げられる。なかでも、速硬化性が得られやすいことから、ベンゾフェノン型エポキシ化合物が好ましい。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EXA−830−LVP、EXA−830−CRP(以上、DIC社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ポリエーテル変性エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−931(ナガセケムテックス社製)、EXA−4850−150(DIC社製)、EP−4005(アデカ社製)等が挙げられる。
【0022】
本発明の電子部品用接着剤が上記エポキシ化合物を含有する場合、上記エポキシ化合物の配合量は特に限定されないが、電子部品用接着剤100重量部に占める好ましい下限が15重量部、好ましい上限が60重量部であり、より好ましい下限が25重量部、より好ましい上限が50重量部である。
【0023】
上記ビスマレイミド化合物は特に限定されず、例えば、ケイアイ化成社製、大和化成工業社製、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社製等から市販されている熱開始型フリーラジカル硬化性ビスマレイミド化合物等が挙げられる。
【0024】
本発明の電子部品用接着剤が上記ビスマレイミド化合物を含有する場合、上記ビスマレイミド化合物の配合量は特に限定されないが、電子部品用接着剤100重量部に占める好ましい下限が15重量部、好ましい上限が60重量部であり、より好ましい下限が25重量部、より好ましい上限が50重量部である。
【0025】
上記エピスルフィド化合物は、エピスルフィド基を有していれば特に限定されず、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。
上記エピスルフィド化合物として、具体的には例えば、ビスフェノール型エピスルフィド化合物(ビスフェノール型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド化合物、ビフェニル型エピスルフィド化合物、フェノールノボラック型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、ポリエーテル変性エピスルフィド化合物、ブタジエン変性エピスルフィド化合物、トリアジンエピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、ナフタレン型エピスルフィド化合物が好ましい。これらのエピスルフィド化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、酸素原子から硫黄原子への置換は、エポキシ基の少なくとも一部におけるものであってもよく、すべてのエポキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換されていてもよい。
【0026】
上記エピスルフィド化合物のうち、市販品として、例えば、YL−7007(水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、三菱化学社製)等が挙げられる。また、上記エピスルフィド化合物は、例えば、チオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤を使用して、エポキシ化合物から容易に合成される。
【0027】
本発明の電子部品用接着剤が上記エピスルフィド化合物を含有する場合、上記エピスルフィド化合物の配合量は特に限定されないが、電子部品用接着剤100重量部に占める好ましい下限が3重量部、好ましい上限が12重量部であり、より好ましい下限が6重量部、より好ましい上限が9重量部である。
【0028】
本発明の電子部品用接着剤は、上記硬化性化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)を含有してもよい。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することにより、電子部品用接着剤は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が向上する。
【0029】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合には、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、電子部品用接着剤の硬化物は、優れた可撓性を発現する。即ち、上記硬化性化合物としてのエポキシ化合物に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた可撓性とを兼備することができ、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性及び寸法安定性等に優れ、高い接着信頼性及び高い導通信頼性を発現する。
【0030】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は特に限定されず、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であればよく、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ化合物、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含有することができ、電子部品用接着剤の硬化物の機械的強度及び耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は1万である。上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量が1万未満であると、電子部品用接着剤の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。
【0032】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が200未満であると、電子部品用接着剤の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が1000を超えると、電子部品用接着剤の硬化物の機械的強度及び耐熱性が低下することがある。
【0033】
本発明の電子部品用接着剤が上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有する場合、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が1重量部未満であると、電子部品用接着剤は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が低下することがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が30重量部を超えると、電子部品用接着剤の硬化物は、機械的強度、耐熱性及び耐湿性が低下することがある。
【0034】
上記硬化剤は特に限定されず、従来公知の硬化剤を上記硬化性化合物に合わせて適宜選択することができる。上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合、上記硬化剤として、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記硬化剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対する下限が5重量部、上限が150重量部である。上記硬化剤の配合量が5重量部未満であると、電子部品用接着剤の硬化物が脆弱になったり、上記硬化剤が硬化不足等の不良を起こす原因になったりする。上記硬化剤の配合量が150重量部を超えると、電子部品用接着剤の硬化物の耐熱性が低下する。
【0036】
本発明の電子部品用接着剤は、硬化速度又は硬化温度を調整する目的で、上記硬化剤に加えて硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記硬化促進剤として、例えば、2MZ、2MZ−P、2PZ、2PZ−PW、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNS、2PZCNS−PW、2MZ−A、2MZA−PW、C11Z−A、2E4MZ−A、2MAOK−PW、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2PHZ−PW、2P4MHZ、2P4MHZ−PW、2E4MZ・BIS、VT、VT−OK、MAVT、MAVT−OK(以上、四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0039】
上記硬化促進剤の配合量は特に限定されず、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。
【0040】
上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用い、かつ、上記硬化剤と上記硬化促進剤とを併用する場合、用いる硬化剤の配合量は、用いるエポキシ化合物中のエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。上記硬化剤の配合量が理論的に必要な当量を超えると、電子部品用接着剤を硬化して得られる硬化物から、水分によって塩素イオンが溶出しやすくなることがある。即ち、硬化剤が過剰であると、例えば、電子部品用接着剤の硬化物から熱水で溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度となるため、エポキシ化合物から塩素イオンが多量溶出することがある。従って、電子部品用接着剤の硬化物1gを、100℃の純水10gで2時間浸した後の純水のpHが6〜8であることが好ましく、pHが6.5〜7.5であることがより好ましい。
【0041】
本発明の電子部品用接着剤は、更に、溶解度パラメータ(SP値)が13以上である官能基と、溶解度パラメータ(SP値)が9以上13未満である官能基とを有する界面活性剤(本明細書中、界面活性剤(1)ともいう)を含有し、無機充填剤は、疎水化度(M値)が20以下である(本明細書中、無機充填剤(1)ともいう)ことが好ましい。
或いは、本発明の電子部品用接着剤は、更に、溶解度パラメータ(SP値)が9未満である官能基と、溶解度パラメータ(SP値)が9以上13未満である官能基とを有する界面活性剤(本明細書中、界面活性剤(2)ともいう)を含有し、無機充填剤は、疎水化度(M値)が45以上である(本明細書中、無機充填剤(2)ともいう)ことが好ましい。
【0042】
電子部品用接着剤においては、チクソトロピー特性が大きい方が、ボイドの発生を抑制しやすい。しかしながら、一般的に、信頼性を高めるためにはある程度以上無機充填剤を配合する必要があるところ、無機充填剤をある程度以上配合した電子部品用接着剤は、高粘度になりがちであった。このような高粘度の電子部品用接着剤に、チクソトロピー特性を大きくする目的で更にチクソ付与剤を配合すると、粘度が更に高くなって塗布性が低下してしまい、また、チクソトロピー特性を調整することも困難であった。
【0043】
本発明者は、特定の疎水化度(M値)を示す無機充填剤と、特定の溶解度パラメータ(SP値)を示す官能基を有する界面活性剤とを選択して組み合わせた場合に限り、充分な信頼性が得られる程度に無機充填剤を配合する場合であっても、無機充填剤と界面活性剤との良好な相互作用により粘度特性及びチクソトロピー特性の両方を所望の範囲に調整しやすくなることを見出した。
【0044】
無機充填剤(1)と界面活性剤(1)、又は、無機充填剤(2)と界面活性剤(2)が併用されることにより、低せん断時には界面活性剤が無機充填剤表面に吸着され、無機充填剤同士を繋ぎとめることにより粘度が上昇する一方、高せん断時には界面活性剤が無機充填剤同士の衝突を緩和することにより粘度が低下する。即ち、チクソトロピー特性が大きくなり、ボイドの発生を抑制することができる。
また、無機充填剤(1)と界面活性剤(1)、又は、無機充填剤(2)と界面活性剤(2)を含有する電子部品用接着剤は、このようにチクソトロピー特性が大きくても必要以上に増粘することがなく、塗布性にも優れる。更に、粘度特性とチクソトロピー特性との両方が所望の範囲に調整されるため、電子部品用接着剤の半導体チップ上面への這い上がりを抑制することもできる。
【0045】
なお、疎水化度(M値)は、疎水性を表す指標である。疎水化度(M値)は、無機充填剤を添加した水にメタノールを滴下し、無機充填剤が完全に膨潤したときのメタノール濃度(重量%)を意味する。
無機充填剤のM値を調整する方法としては、例えば、無機充填剤に表面処理を施し、表面に存在する親水性基の数を変化させる方法等が挙げられる。具体的には例えば、シリカ微粒子の表面を−CHで修飾して炭素含有量を調整することによりM値を調整する方法等が挙げられる。このような方法により炭素含有量を調整したシリカ微粒子は、例えば、トクヤマ社等から市販されている。
一方、溶解度パラメータ(SP値)は、親水性を表す指標である。溶解度パラメータ(SP値)は、フェドールの方法により、δ=ΣE/ΣVの式から計算値として求めることができる。ここで、δはSP値、Eは凝集エネルギー、Vはモル体積を意味している。
【0046】
まず、無機充填剤(1)と界面活性剤(1)との組み合わせについて説明する。
上記無機充填剤(1)は、疎水化度(M値)が20以下であり、上記界面活性剤(1)は、溶解度パラメータ(SP値)が13以上である官能基と、溶解度パラメータ(SP値)が9以上13未満である官能基とを有する。
【0047】
M値が20を超える無機充填剤では、上記界面活性剤(1)との良好な相互作用が得られず、チクソトロピー特性を調整する効果が低下する。上記無機充填剤(1)は、M値が18以下であることがより好ましい。
上記無機充填剤(1)としては、例えば、M値が20以下である、シリカ、酸化チタン、ブラックカーボン、アルミナ、グラフェン、マイカ等からなる微粒子が挙げられる。なかでも、M値が20以下であるシリカ微粒子が好ましい。これらの無機充填剤(1)は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記無機充填剤(1)の市販品として、例えば、SE−2050(M値が0、炭素含有量が0重量%、アドマテックス社製)、SE−2050−SET(M値が20、炭素含有量が0重量%、アドマテックス社製)、SE−2050−SEJ(M値が20、炭素含有量が0重量%、アドマテックス社製)、SE−1050(M値が0、炭素含有量が0重量%、アドマテックス社製)、SE−4050(M値が0、炭素含有量が0重量%、アドマテックス社製)、UFP−80(M値が20、電気化学社製)、QS−40(M値が0、炭素含有量が0重量%、トクヤマ社製)等が挙げられる。
【0049】
上記無機充填剤(1)と上記界面活性剤(1)とを含有する電子部品用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、例えば電子部品用接着剤の線膨張率を低下させて信頼性を高めることを目的として、M値が20を超える無機充填剤を含有してもよい。なお、この場合、上記無機充填剤(1)の配合量は、無機充填剤全体のうち、好ましい下限が10重量%である。配合量が10重量%未満であると、チクソトロピー特性を調整する効果が充分に得られないことがある。上記無機充填剤(1)の配合量は、無機充填剤全体のうち、より好ましい下限が15重量%である。
【0050】
一方、上記SP値が13以上である官能基、又は、上記SP値が9以上13未満である官能基をもたない界面活性剤では、上記無機充填剤(1)との良好な相互作用が得られず、チクソトロピー特性を調整する効果が低下する。上記SP値が13以上である官能基は、SP値が16以上であることがより好ましい。また、上記SP値が9以上13未満である官能基は、SP値のより好ましい下限が9.5、より好ましい上限が12.5である。
【0051】
上記SP値が13以上である官能基として、例えば、1級アミン基(SP値16.5)、カルビノール基(SP値16.58)、カルボキシル基(SP値15.28)、リン酸基(SP値13.36)等が挙げられる。また、上記SP値が9以上13未満である官能基として、例えば、エポキシ基(SP値12.04)、プロポキシメチルオキシラン基(SP値9.78)、メルカプト基(SP値11.07)、メタクリロイル基(SP値9.60)、フェノール基(SP値11.5)、ポリエーテル基(SP値9.71)等が挙げられる。
【0052】
上記界面活性剤(1)としては、例えば、上記SP値が13以上である官能基と、上記SP値が9以上13未満である官能基とを有する、シリコーン化合物、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。なかでも、官能基を調整できることから、シリコーン化合物が好ましい。これらの界面活性剤(1)は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記界面活性剤(1)の市販品として、例えば、BYK−W9010(ビッグケミー・ジャパン社製、SP値が13.36のリン酸基と、SP値が9.71のポリエーテル基とを有する)、X−22−3939A(アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、SP値が16.5の1級アミン基と、SP値が9.71のポリエーテル基とを有する)等が挙げられる。
【0054】
上記界面活性剤(1)の配合量は、上記無機充填剤(1)100重量部に対して、好ましい下限が0.4重量部、好ましい上限が4重量部である。配合量が0.4重量部未満であると、チクソトロピー特性を調整する効果が充分に得られないことがある。配合量が4重量部を超えると、得られる電子部品用接着剤を熱硬化する際に上記界面活性剤(1)が揮発して、ボイドの原因となることがある。上記界面活性剤(1)の配合量は、上記無機充填剤(1)100重量部に対して、より好ましい下限が0.8重量部、より好ましい上限が2重量部である。
【0055】
次に、無機充填剤(2)と界面活性剤(2)との組み合わせについて説明する。
上記無機充填剤(2)は、疎水化度(M値)が45以上であり、上記界面活性剤(2)は、溶解度パラメータ(SP値)が9未満である官能基と、溶解度パラメータ(SP値)が9以上13未満である官能基とを有する。
【0056】
M値が45未満である無機充填剤では、上記界面活性剤(2)との良好な相互作用が得られず、チクソトロピー特性を調整する効果が低下する。
上記無機充填剤(2)としては、例えば、M値が45以上である、シリカ、酸化チタン、ブラックカーボン、アルミナ、グラフェン、マイカ等からなる微粒子が挙げられる。なかでも、M値が45以上であるシリカ微粒子が好ましい。これらの無機充填剤(2)は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記無機充填剤(2)の市販品として、例えば、SE−2050−STJ(M値が64、アドマテックス社製)、SE−1050−STT(M値が64、アドマテックス社製)、ヒュームドシリカ(MT−10、M値が47、炭素含有量が0.9重量%、トクヤマ社製)、ヒュームドシリカ(HM−20L、M値が64、炭素含有量が2.4重量%、トクヤマ社製)、ヒュームドシリカ(PM−20L、M値が65、炭素含有量が5.5重量%、トクヤマ社製)等が挙げられる。
【0058】
上記無機充填剤(2)と上記界面活性剤(2)とを含有する電子部品用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、例えば電子部品用接着剤の線膨張率を低下させて信頼性を高めることを目的として、M値が45未満である無機充填剤を含有してもよい。なお、この場合、上記無機充填剤(2)の配合量は、無機充填剤全体のうち、好ましい下限が10重量%である。配合量が10重量%未満であると、チクソトロピー特性を調整する効果が充分に得られないことがある。上記無機充填剤(2)の配合量は、無機充填剤全体のうち、より好ましい下限が15重量%である。
【0059】
一方、上記SP値が9未満である官能基、又は、上記SP値が9以上13未満である官能基をもたない界面活性剤では、上記無機充填剤(2)との良好な相互作用が得られず、チクソトロピー特性を調整する効果が低下する。
【0060】
上記SP値が9未満である官能基として、例えば、メチル基(SP値6.44)、エチル基(SP値6.97)、ブチル基(SP値7.39)、ジメチルシロキサン基(SP値7.40)等が挙げられる。また、上記SP値が9以上13未満である官能基として、例えば、エポキシ基(SP値12.04)、プロポキシメチルオキシラン基(SP値9.78)、メルカプト基(SP値11.07)、メタクリロイル基(SP値9.60)、フェノール基(SP値11.5)、ポリエーテル基(SP値9.71)等が挙げられる。
【0061】
上記界面活性剤(2)としては、例えば、上記SP値が9未満である官能基と、上記SP値が9以上13未満である官能基とを有する、シリコーン化合物、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。なかでも、官能基を調整できることから、シリコーン化合物が好ましい。これらの界面活性剤(1)は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記界面活性剤(2)の市販品として、例えば、エポキシ変性シリコーンオイル(KF−101、信越化学工業社製、SP値が12.04のエポキシ基と、SP値が7.40のジメチルシロキサン基とを有する)、カルボキシル変性シリコーンオイル(X−22−162C、信越化学工業社製、SP値が11.10のカルボキシルエチル基と、SP値が7.40のジメチルシロキサン基とを有する)、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル(X−22−4741、信越化学工業社製、SP値が12.04のエポキシ基と、SP値が9.71のポリエーテル基と、SP値が7.55のジメチルシロキサン基とを有する)等が挙げられる。
【0063】
上記界面活性剤(2)の配合量は、上記無機充填剤(2)100重量部に対して、好ましい下限が0.4重量部、好ましい上限が4重量部である。配合量が0.4重量部未満であると、チクソトロピー特性を調整する効果が充分に得られないことがある。配合量が4重量部を超えると、得られる電子部品用接着剤を熱硬化する際に上記界面活性剤(2)が揮発して、ボイドの原因となることがある。上記界面活性剤(2)の配合量は、上記無機充填剤(2)100重量部に対して、より好ましい下限が0.8重量部、より好ましい上限が2重量部である。
【0064】
本明細書中、無機充填剤(1)及び無機充填剤(2)に共通する事項について述べるときには、単に、無機充填剤という。
上記無機充填剤は、平均粒子径の好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が3μmである。上記平均粒子径が上記範囲内であると、A1とA2/A1とを図1の実線及び破線で囲まれた範囲内に調整しやすくなり、ボイドの発生及び電子部品用接着剤の半導体チップ上面への這い上がりを、より良好に抑制することができる。上記平均粒子径が0.1μm未満であると、電子部品用接着剤が増粘しやすくなり、電子部品用接着剤を封止領域に充填する際に電子部品用接着剤が充分にぬれ広がらず、ボイドの発生を抑制できないことがある。上記平均粒子径が3μmを超えると、電極間に上記無機充填剤を噛みこんでしまうことがある。上記無機充填剤の平均粒子径のより好ましい下限は0.3μm、より好ましい上限は1μm、更に好ましい上限は0.5μmである。
【0065】
上記無機充填剤は、表面処理されていることが好ましく、その結果、表面に表面処理剤に由来する基を有することが好ましい。上記無機充填剤が表面処理されていると、電子部品用接着剤に上記無機充填剤を高充填する場合であっても、A1とA2/A1とを図1の実線及び破線で囲まれた範囲内に調整しやすくなり、ボイドの発生及び電子部品用接着剤の半導体チップ上面への這い上がりを、より良好に抑制することができる。また、電子部品用接着剤に上記無機充填剤を高充填すると、電子部品用接着剤の硬化後の線膨張係数を低く維持することができ、電子部品用接着剤の接合信頼性が向上する。
上記表面処理剤として、例えば、アミノシラン化合物、メチルシラン化合物、ビニルシラン化合物、スチリルシラン化合物、メルカプトシランン化合物、フェニルシラン化合物、(メタ)アクリルシラン化合物、エポキシシラン化合物等が挙げられる。なかでも、フェニルシラン化合物又は(メタ)アクリルシラン化合物が好ましい。
【0066】
上記フェニルシラン化合物として、例えば、N―フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記(メタ)アクリルシラン化合物として、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
上記エポキシシラン化合物として、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリケトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0067】
上記無機充填剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対する下限が60重量部、上限が400重量部である。上記無機充填剤の配合量が60重量部未満であると、電子部品用接着剤が充分な接合信頼性を保持することができない。上記無機充填剤の配合量が400重量部を超えると、電子部品用接着剤が増粘しやすくなり、電子部品用接着剤を封止領域に充填する際に電子部品用接着剤が充分にぬれ広がらず、ボイドの発生を抑制できない。上記無機充填剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が66重量部、好ましい上限が300重量部である。
【0068】
また、上記無機充填剤として表面に上記フェニルシラン化合物又は上記(メタ)アクリルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤のみを用いて高充填を行うと、A1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内とならないことがある。そのような場合には、表面に上記フェニルシラン化合物又は上記(メタ)アクリルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤と、表面に上記エポキシシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤とを併用することにより、A1とA2/A1とを図1の実線及び破線で囲まれた範囲内に調整することが好ましい。
表面に上記フェニルシラン化合物又は上記(メタ)アクリルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤と、表面に上記エポキシシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤とを併用する場合には、表面に上記フェニルシラン化合物又は上記(メタ)アクリルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤100重量部に対する、表面に上記エポキシシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤の配合量の好ましい下限が20重量部、好ましい上限が150重量部である。
【0069】
また、上記無機充填剤として、チクソトロピー付与剤を用いてもよい。
上記チクソトロピー付与剤を含有することで、A1とA2/A1とを図1の実線及び破線で囲まれた範囲内に調整しやすくなり、ボイドの発生及び電子部品用接着剤の半導体チップ上面への這い上がりを、より良好に抑制することができる。
【0070】
上記チクソトロピー付与剤は特に限定されず、例えば、金属微粒子、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウム、窒化硼素、窒化アルミニウム、硼酸アルミ等の無機微粒子等が挙げられる。なかでも、ヒュームドシリカが好ましい。
また、上記チクソトロピー付与剤は、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。上記表面処理が施されたチクソトロピー付与剤は特に限定されないが、表面に疎水基を有する粒子が好ましく、具体的には、例えば、表面を疎水化したヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0071】
上記チクソトロピー付与剤が粒子状である場合、該粒子状チクソトロピー付与剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい上限は1μmである。上記粒子状チクソトロピー付与剤の平均粒子径が1μmを超えると、電子部品用接着剤が所望のチクソトロピー特性を発現できないことがある。
【0072】
本発明の電子部品用接着剤における上記チクソトロピー付与剤の配合量は特に限定されないが、上記チクソトロピー付与剤に表面処理がなされていない場合には、好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が20重量%である。上記チクソトロピー付与剤の配合量が0.5重量%未満であると、電子部品用接着剤に充分なチクソトロピー特性を付与することができないことがある。上記チクソトロピー付与剤の配合量が20重量%を超えると、半導体装置を製造する際に電子部品用接着剤の排除性が低下することがある。上記チクソトロピー付与剤の配合量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0073】
本発明の電子部品用接着剤は、粘度を低減させるために希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は、エポキシ基を有することが好ましく、1分子中のエポキシ基数の好ましい下限が2、好ましい上限が4である。1分子中のエポキシ基数が2未満であると、電子部品用接着剤の硬化後に充分な耐熱性が発現しないことがある。1分子中のエポキシ基数が4を超えると、硬化によるひずみが発生したり、未硬化のエポキシ基が残存したりすることがあり、これにより、接合強度の低下又は繰り返しの熱応力による接合不良が発生することがある。上記希釈剤の1分子中のエポキシ基数のより好ましい上限は3である。
また、上記希釈剤は、芳香環及び/又はジシクロペンタジエン構造を有することが好ましい。
【0074】
上記希釈剤は、120℃での重量減少量及び150℃での重量減少量の好ましい上限が1%である。120℃での重量減少量及び150℃での重量減少量が1%を超えると、電子部品用接着剤の硬化中又は硬化後に未反応物が揮発してしまい、生産性又は得られる半導体装置の性能に悪影響を与えることがある。
また、上記希釈剤は、上記硬化性化合物よりも硬化開始温度が低く、硬化速度が大きいことが好ましい。
【0075】
本発明の電子部品用接着剤が上記希釈剤を含有する場合、本発明の電子部品用接着剤における上記希釈剤の配合量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記希釈剤の配合量が上記範囲外であると、電子部品用接着剤の粘度を充分に低減できないことがある。
【0076】
本発明の電子部品用接着剤は、必要に応じて、溶媒を含有してもよい。
上記溶媒は特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素類、塩化芳香族炭化水素類、塩化脂肪族炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、グリコールエーテル(セロソルブ)類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0077】
本発明の電子部品用接着剤は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。
上記無機イオン交換体のうち、市販品として、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。本発明の電子部品用接着剤が上記無機イオン交換体を含有する場合、上記無機イオン交換体の配合量は特に限定されないが、好ましい上限が10重量%、好ましい下限が1重量%である。
また、本発明の電子部品用接着剤は、必要に応じて、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
【0078】
本発明の電子部品用接着剤は、硬化後の40〜80℃における線膨張係数の好ましい下限が20ppm/℃、好ましい上限が50ppm/℃である。上記線膨張係数が20ppm/℃未満であると、半導体チップの突起状電極及び基板等よりも線膨張係数が低くなることで、突起状電極及び基板等の熱膨張によって接合部に応力が集中し、剥離が生じることがある。即ち、電子部品用接着剤が充分な接合信頼性を保持することができないことがある。上記線膨張係数が50ppm/℃を超えると、熱によるひずみが発生する際、接合された半導体チップへの応力が大きくなり、突起状電極等の導通部分にクラックが発生しやすくなる。即ち、電子部品用接着剤が充分な接合信頼性を保持することができないことがある。本発明の電子部品用接着剤は、硬化後の40〜80℃における線膨張係数のより好ましい下限が25ppm/℃、より好ましい上限が45ppm/℃である。
【0079】
本発明の電子部品用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー等を用いて硬化性化合物、硬化剤、無機充填剤、必要に応じて界面活性剤等の各成分を攪拌混合する方法等が挙げられる。
【0080】
本発明の電子部品用接着剤の用途は特に限定されないが、突起状電極を有する半導体チップをフリップチップ実装により基板に接合するとともに封止を行う半導体チップ実装体の製造方法に好適に使用される。
突起状電極を有する半導体チップをフリップチップ実装により基板に接合するとともに封止を行う半導体チップ実装体の製造方法であって、本発明の電子部品用接着剤を基板上に設ける工程と、前記電子部品用接着剤を介して、半導体チップの突起状電極と前記基板の電極部とを接触させるとともに前記電子部品用接着剤を封止領域に充填する工程と、前記半導体チップの突起状電極と前記基板の電極部とを接合するとともに接合部の前記電子部品用接着剤を硬化させる工程と、前記電子部品用接着剤を完全硬化させる工程とを有する半導体チップ実装体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0081】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法は、突起状電極を有する半導体チップをフリップチップ実装により基板に接合するとともに封止を行う半導体チップ実装体の製造方法である。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、まず、本発明の電子部品用接着剤を基板上に設ける工程を行う。
【0082】
電子部品用接着剤を上記基板上に設ける方法は特に限定されず、例えば、精密ノズルを取り付けたシリンジ等とディスペンサ等とを組み合わせて用い、電子部品用接着剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0083】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、次いで、電子部品用接着剤を介して、半導体チップの突起状電極と上記基板の電極部とを接触させるとともに電子部品用接着剤を封止領域に充填する工程を行う。
上記工程では、上記半導体チップに対して押圧し、上記半導体チップの突起状電極と上記基板の電極部とを接触させるとともに電子部品用接着剤を封止領域に充填することが好ましい。上記押圧する際の圧力は特に限定されないが、突起状電極当たり0.1〜10Nであることが好ましい。上記圧力が0.1N未満であると、上記半導体チップの突起状電極と上記基板の電極とが接触しないことがある。上記圧力が10Nを超えると、上記半導体チップの突起状電極がつぶれすぎて隣の突起状電極と接触し、ショートすることがある。
また、上記半導体チップの突起状電極と上記基板の電極部とを接触させるとともに電子部品用接着剤を封止領域に充填する際の温度及び時間は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば特に限定されず、例えば、120〜220℃、1〜30N、0.1〜60秒等が挙げられる。上記半導体チップの突起状電極等がハンダである場合には、ハンダの溶融温度以下の温度で加熱すればよい。
【0084】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、次いで、上記半導体チップの突起状電極と上記基板の電極部とを接合するとともに接合部の電子部品用接着剤を硬化させる工程を行う。
上記半導体チップの突起状電極と上記基板の電極部とを接合するとともに接合部の電子部品用接着剤を硬化させる際の温度及び時間は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば特に限定されず、例えば、230〜300℃、1〜30N、0.1〜60秒等が挙げられる。上記半導体チップの突起状電極等がハンダである場合には、ハンダの溶融温度以上の温度で加熱すればよい。
【0085】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、更に、電子部品用接着剤を完全硬化させる工程を行う。これにより、電子部品用接着剤が完全に硬化し、上記半導体チップの突起状電極と上記基板の電極部とが接合された半導体チップ実装体が得られる。
電子部品用接着剤を完全硬化させる際の硬化条件は特に限定されず、電子部品用接着剤の硬化特性に合わせた硬化条件を適宜選択して用いることができ、例えば、120℃で30分、170℃で30分等が挙げられる。
【0086】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、A1とA2/A1とを図1の実線及び破線で囲まれた範囲内とすることにより、半導体チップの突起状電極と基板の電極部とを接触させるとともに電子部品用接着剤を封止領域に充填する工程において気泡を噛みこんでしまった場合であってもボイドの発生を抑制することができる。更に、電子部品用接着剤の半導体チップ上面への這い上がりを抑制することができる。
【発明の効果】
【0087】
本発明によれば、ボイドの発生を抑制し、かつ、半導体チップ上面への這い上がりを生じにくい電子部品用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該電子部品用接着剤を用いた半導体チップ実装体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】電子部品用接着剤の25℃でE型粘度計を用いて測定した5rpmでの粘度をA1(Pa・s)、0.5rpmでの粘度をA2(Pa・s)としたとき、本発明で規定するA1とA2/A1との範囲(ただし、実線上は含むが破線上は含まない)を示すグラフである。
【図2】電子部品用接着剤の25℃でE型粘度計を用いて測定した5rpmでの粘度をA1(Pa・s)、0.5rpmでの粘度をA2(Pa・s)としたとき、実施例及び比較例で得られたA1とA2/A1との関係をプロットし、かつ、本発明で規定するA1とA2/A1との範囲(ただし、実線上は含むが破線上は含まない)を示したグラフである。
【図3】電子部品用接着剤の25℃でE型粘度計を用いて測定した5rpmでの粘度をA1(Pa・s)、0.5rpmでの粘度をA2(Pa・s)としたとき、実施例及び比較例で得られたA1とA2/A1との関係をプロットし、かつ、A1とA2/A1との好ましい範囲を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0090】
(実施例1〜33及び比較例1〜20)
(1)電子部品用接着剤の製造
表1〜4に示す組成に従って、ホモディスパーを用いて下記に示す各材料(重量部)を攪拌混合し、電子部品用接着剤を調製した。得られた電子部品用接着剤について、E型粘度測定装置(VISCOMETER TV−22、TOKAI SANGYO CO.LTD社製)を用いて25℃の設定温度にて回転数5rpmにおける粘度A1及び0.5rpmにおける粘度A2を測定した。A1、A2、及び、A2/A1を表1〜4に示す。また、横軸をA1(Pa・s)、縦軸をA2/A1として、実施例1〜33、比較例1〜12及び14〜20で得られたA1とA2/A1との関係をプロットしたグラフを図2に示す。なお、実施例を円形(白抜き)で、比較例を菱形(塗りつぶし)でプロットした。
また、得られた電子部品用接着剤について、170℃、30分間の条件で硬化させた後、TMA/SS6000(Seiko Instruments社製)を用い、引張りモードにて30〜300℃(10℃昇温)伸縮を2サイクル行い、2サイクル目の曲線から、線膨張係数を求めた。
【0091】
1.エポキシ化合物
アニリン型エポキシ化合物(EP−3900S、アデカ社製)
ナフタレン型エポキシ化合物(EXA−4710、アデカ社製)
グリシジルアミン型エポキシ化合物(YH−434L、新日鐵化学社製)
ビスフェノールF型エポキシ化合物(EXA−830CRP、DIC社製)
【0092】
2.エピスルフィド化合物
ナフタレン型エピスルフィド化合物(フラスコ内に、ナフタレン型エポキシ(DIC社製HP−4032D、エポキシ当量=140g/eq.)を100g及びテトラヒドロフランを200g仕込み、室温にて攪拌してエポキシ化合物を溶解させた。溶解後、チオ尿素を100g及びメタノールを200g添加し、温度30〜35℃で、攪拌しながら5時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトンを300g添加した後、純水250gで5回水洗した。水洗後、ロータリーエバポレーターにて減圧下、温度90℃でメチルイソブチルケトンを留去して、無色透明液体のナフタレン型エピスルフィド化合物を101.2g得た)
【0093】
3.ビスマレイミド化合物
ビスマレイミド化合物(BMI−1000、大和化成工業社製)
【0094】
4.硬化剤
酸無水物硬化剤(YH−307、JER社製)
酸無水物硬化剤(YH−306、JER社製)
フェノール硬化剤(MEH−8000H、明和化成社製)
【0095】
5.硬化促進剤
イミダゾール化合物(2MA−OK、四国化成工業社製)
【0096】
6.無機充填剤
6−1.M値が20以下である無機充填剤(無機充填剤(1))
SE−2050(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.5μm、最大粒子径3μm、表面処理なし、M値0)
SE−1050(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.3μm、最大粒子径1μm、表面処理なし、M値0)
SE−4050(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径1μm、最大粒子径5μm、表面処理なし、M値0)
SE−1050―SET(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.3μm、最大粒子径1μm、エポキシシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤、M値20)
【0097】
6−2.M値が45以上である無機充填剤(無機充填剤(2))
MT−10(ヒュームドシリカ、トクヤマ社製、M値47)
SE−2050−STJ(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.5μm、最大粒子径3μm、メチルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤、M値64)
SE−1050−STT(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.3μm、最大粒子径1μm、メチルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤、M値64)
PM−20L(ヒュームドシリカ、トクヤマ社製、M値65)
【0098】
6−3.その他の無機充填剤
SE−2050−SPJ(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.5μm、最大粒子径3μm、フェニルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤、M値30)
SE−1050−SPT(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.3μm、最大粒子径1μm、フェニルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤、M値30)
SE−1050−SMT(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.3μm、最大粒子径1μm、メタクリルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤、M値40)
SE−2050−SMJ(シリカフィラー、アドマテックス社製、平均粒子径0.5μm、最大粒子径3μm、メタクリルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤、M値40)
【0099】
7.界面活性剤
7−1.SP値が13以上である官能基と、SP値が9以上13未満である官能基とを有する界面活性剤(界面活性剤(1))
BYK−W9010(シリコーン化合物、ビッグケミー・ジャパン社製、SP値が13.36のリン酸基と、SP値が9.71のポリエーテル基とを有する)
X−22−3939A(アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、SP値が16.5の1級アミン基と、SP値が9.71のポリエーテル基とを有する)
【0100】
7−2.SP値が9未満である官能基と、SP値が9以上13未満である官能基とを有する界面活性剤(界面活性剤(2))
KF−101(エポキシ変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、SP値が12.04のエポキシ基と、SP値が7.40のジメチルシロキサン基とを有する)
X−22−4741(エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、SP値が12.04のエポキシ基と、SP値が7.55のジメチルシロキサン基とを有する)
【0101】
(2)半導体チップ実装体の製造
得られた電子部品用接着剤を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、基板とニードルとのギャップ200μm、塗布量3.3μLにて基板(WALTS−KIT MB50−0101JY、ウォルツ社製)上に塗布した。
【0102】
塗布した電子部品用接着剤を介して、フリップチップボンダ(FC3000S、東レエンジニアリング社製)を用いて、140℃、20Nで1秒間押圧することにより、ハンダからなる突起状電極を有する半導体チップ(WALTS−TEG MB50−0101JY、ハンダの溶融温度235℃、ウォルツ社製)の突起状電極と基板の電極部とを接触させるとともに電子部品用接着剤を封止領域に充填させた。次いで、260℃、1Nで3秒間加熱することにより接合部の電子部品用接着剤を硬化させた。次いで、170℃のオーブンに30分間養生することで電子部品用接着剤を完全硬化させ、半導体チップ実装体を得た。
【0103】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体チップ実装体について、以下の評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0104】
(1)這い上がり(アタッチメントへの付着)評価
基板への半導体チップの実装中及び実装後の電子部品用接着剤の流動を観察することにより、フリップチップボンダ(FC−3000S、東レエンジニアリング社製)のアタッチメントへの電子部品用接着剤の付着について、下記の基準で評価した。
○ 電子部品用接着剤が半導体チップの厚み以上に這い上がることがなく、アタッチメントに付着しなかった。
× 電子部品用接着剤が半導体チップの厚み以上に這い上がり、アタッチメントに付着した。
【0105】
(2)ボイド発生の有無
超音波探査映像装置(mi−scope hyper II、日立建機ファインテック社製)を用いて、得られた半導体チップ実装体のボイドを観察し、下記の基準で評価した。
○ ボイドがほとんど観察されなかった。
△ ボイドがわずかに観察された。
× ボイドによる目立った剥離が観察された。
【0106】
(3)塗布性
上記の半導体チップ実装体の製造時と同じ条件で電子部品用接着剤を基板上に塗布した。この際、16個の基板に対して連続で塗布を行った際の描線を観察した。
○ 長さ10cmの描線10本を、基板内及び基板間で途切れることなく作製できた。
△ 長さ10cmの描線10本を、基板内及び基板間で途切れることなく作製できたが、線幅が50%以下になってしまった部分又は100%以上になってしまった部分があった。
× 基板内又は基板間で描線が途中で途切れてしまった(線幅が50%以下になってしまった部分又は100%以上になってしまった部分がある場合を含む)。
【0107】
(4)塗布後の電子部品用接着剤の形状保持性
上記で作製した塗布後の電子部品用接着剤を80℃のホットプレート上に置き、接着剤形状の崩れを観察した。
○ 形状保持時間が1時間以上であった。
△ 形状保持時間が30分以上1時間未満であった。
× 形状保持時間が30分未満であった。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、ボイドの発生を抑制し、かつ、半導体チップ上面への這い上がりを生じにくい電子部品用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該電子部品用接着剤を用いた半導体チップ実装体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物と、硬化剤と、無機充填剤とを含有する電子部品用接着剤であって、
25℃でE型粘度計を用いて測定した5rpmでの粘度をA1(Pa・s)、0.5rpmでの粘度をA2(Pa・s)としたとき、A1とA2/A1とが図1の実線及び破線で囲まれた範囲内(ただし、実線上は含むが破線上は含まない)であり、
前記硬化性化合物100重量部に対して、前記硬化剤の配合量が5〜150重量部、前記無機充填剤の配合量が60〜400重量部である
ことを特徴とする電子部品用接着剤。
【請求項2】
無機充填剤は、平均粒子径が0.1〜3μmであることを特徴とする請求項1記載の電子部品用接着剤。
【請求項3】
硬化後の40〜80℃における線膨張係数が20〜50ppm/℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品用接着剤。
【請求項4】
硬化性化合物は、エポキシ化合物、ビスマレイミド化合物、エピスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子部品用接着剤。
【請求項5】
無機充填剤は、表面にフェニルシラン化合物又は(メタ)アクリルシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電子部品用接着剤。
【請求項6】
無機充填剤は、更に、表面にエポキシシラン化合物に由来する基を有する無機充填剤を含有することを特徴とする請求項5記載の電子部品用接着剤。
【請求項7】
突起状電極を有する半導体チップをフリップチップ実装により基板に接合するとともに封止を行う半導体チップ実装体の製造方法であって、
請求項1、2、3、4、5又は6記載の電子部品用接着剤を基板上に設ける工程と、
前記電子部品用接着剤を介して、半導体チップの突起状電極と前記基板の電極部とを接触させるとともに前記電子部品用接着剤を封止領域に充填する工程と、
前記半導体チップの突起状電極と前記基板の電極部とを接合するとともに接合部の前記電子部品用接着剤を硬化させる工程と、
前記電子部品用接着剤を完全硬化させる工程とを有する
ことを特徴とする半導体チップ実装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−110422(P2013−110422A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−279741(P2012−279741)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2012−517016(P2012−517016)の分割
【原出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】