説明

電子部品用樹脂組成物及びそれを用いた液状封止材、電子部品装置

【課題】 接着性と流動性を両立し、信頼性にも優れる電子部品用樹脂組成物及びこれを用いた液状封止材、これにより封止された電子部品装置を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び可とう剤を含む電子部品用樹脂組成物であって、可とう剤が少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体である電子部品用樹脂組成物。エポキシ樹脂の含有量が25〜60質量%であり、少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体の含有量が、1〜10質量%であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属バンプを有する半導体装置を作るために好適な液状封止材に関し、詳細には、少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体を可とう剤として含み、金属バンプ及び基板表面への密着性、及び流動性に優れた硬化物を与える電子部品用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂を主成分とする組成物が広く用いられている。
この理由としては、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性にバランスがとれているためである。
COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等のベアチップ実装した半導体装置においては電子部品用液状樹脂組成物が封止材として広く使用されている(例えば特許文献1参照)。
また、半導体素子を配線基板に直接バンプ接続した半導体装置(フリップチップ)ではアンダーフィル剤として電子部品用液状樹脂組成物が使用されている。
【0003】
上記半導体装置は配線幅と配線間のピッチが狭くなり、最先端のフリップチップ半導体装置ではピッチ幅が30μm以下のものも出てきた。
細線化、狭ピッチ化の進んでいる代表的な半導体装置としてはCOF(Chip On Film)があり、COFの分野では高い耐マイグレーション性、高い接着性と高い流動性が求められている。耐マイグレーション性に関しては酸化防止剤を含有することで改良できることが知られている(例えば特許文献2参照)。接着に関しては、従来から電子部品用液状樹脂組成物中の多くを占める成分であるエポキシ樹脂の種類を最適化することなどが有効であることが知られているが、エポキシ樹脂の最適化だけでは、流動性と接着性の両立は対応出来なくなってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第07/061037号パンフレット
【特許文献2】特開平2010−254951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、接着性と流動性を両立し、信頼性にも優れる電子部品用樹脂組成物及びこれを用いた液状封止材、これにより封止された電子部品装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、可とう材として星型構造を有するアクリルゴムを含む樹脂組成物が、半導体素子等の電子部品と配線基板との接着性で良好であり、かつ、高い流動性を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は以下(1)〜(11)に関する。
【0008】
(1)エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び可とう剤を含む電子部品用樹脂組成物であって、可とう剤が少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体である電子部品用樹脂組成物。
【0009】
(2)エポキシ樹脂の含有量が25〜60質量%であり、少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体の含有量が、1〜10質量%である前記(1)記載の電子部品用樹脂組成物。
【0010】
(3)少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体が、アクリルゴムである前記(1)又は(2)に記載の電子部品用樹脂組成物。
【0011】
(4)少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体のガラス転移点が、60℃以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【0012】
(5)少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体の重量平均分子量が、30000〜1000000である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【0013】
(6)少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体における各重合鎖の重量平均分子量が、10000〜300000である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【0014】
(7)前記(3)記載のアクリルゴムが、ニトリル基を含むアクリルゴムである前記(3)〜(6)のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【0015】
(8)エポキシ樹脂が、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を含む前記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【0016】
(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物を用いた液状封止材。
(10)フィルムを基材とする配線基板上に電子部品を直接バンプ接続した電子部品装置の封止に用いる前記(9)に記載の液状封止材。
(11)前記(9)または(10)に記載の液状封止材を用いて封止された電子部品装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明による電子部品用樹脂組成物は、接着性が良好であり、流動性、信頼性にも優れ、その工業的価値は大である。
特にリジッド及びフレキシブル配線板やガラス上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした半導体装置、具体的にはフリップチップBGAやCOF等の半導体装置用のアンダーフィル材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)実施例2で得られた、COFパッケージ組み立て、PCT処理後(121℃、12時間)のサンプルの状態を示す模式図である。 (B)比較例1、2で得られた、COFパッケージ組み立て、PCT処理後(121℃、12時間)のサンプルの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[星型共重合体]
本発明の電子部品用樹脂組成物において使用される可とう剤の少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体(星型共重合体)は、少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する。ガラス転移点は、好ましくは60℃以下の共重合体であり、具体的には、(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、中でも、アクリルゴムが好ましい。
当該星型共重合体は、樹脂混和物の流動性、硬化物の強靭性という観点から、ガラス転移点Tgが60℃以下のものを用いるが、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは40℃以下である。
【0020】
[ガラス転移点の測定]
合成した星型共重合体をシクロヘキサノンに溶解させ、アプリケーターを用いてフィルム状に薄く引き延ばした後、120℃で20分乾燥させ、星型共重合体のフィルムを得る。粘弾性アナライザー(レオメトリック社製 RSA−2)を用いて、下記の条件で星型共重合体フィルムの貯蔵弾性率、tanδの温度依存を測定し、そのピークトップを星型共重合体のガラス転移点とした。
(測定条件)
昇温速度:5℃/min、周波数:1Hz、測定温度:−50〜100℃
【0021】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体などからなるゴムであって、本発明においては、上述のように星型構造を有する。
【0022】
前記星型共重合体の重量平均分子量は、液状封止材としての高信頼性を得るという観点から、30000〜1000000であることが好ましく、60000〜800000であることがより好ましく、100000〜600000であることがさらに好ましい。
前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値であり、ポンプとして株式会社日立製作所製、商品名:L−6000を使用し、カラムとして日立化成工業株式会社製、商品名:ゲルパック(Gelpack)GL−R440、ゲルパックGL−R450及びゲルパックGL−R400M(各10.7mm(直径)×300mm)をこの順に連結したカラムを使用し、溶離液としてテトラヒドロフラン(以下、「THF」と言う。)を使用し、試料120mgを、THF:5mlに溶解させたサンプルについて、流速1.00mL/分で測定することができる。
また、この場合において、各重合鎖の重量平均分子量は、10000〜300000であることが好ましく、30000〜200000であることがより好ましく、50000〜150000であることがさらに好ましい。
なお、各重合鎖の重量平均分子量は、分子全体の重量平均分子量を重合鎖の数で除した数値である。
重量平均分子量が同程度の星型共重合体同士であって、同様のモノマーから構成される場合、重合鎖の数が多いほど1本当たりの重合鎖が短くなるため、流動性が向上し、ひいては低粘度となると考えられる。
従って、重量平均分子量はそのままとし、より低粘度としたい場合は、重合鎖の数を増やせば低粘度とすることができる。
【0023】
本発明において、星型共重合体の樹脂中に占める割合としては、1〜10重量%であることが好ましく、3〜8重量%であることがより好ましく、4〜6重量%であることがさらに好ましい。
【0024】
以下に、星型共重合体の具体例とその合成方法の一例を挙げるが、本発明に係る星型共重合体は、以下の合成方法に限定されるものではない。
本発明に係る星型共重合体は、例えば、多官能開始剤としてハロゲン化合物と、配位子としてアミン化合物と、触媒として周期律表第7族〜11族元素の遷移金属とを用いて、3種以上のモノマー種を原子移動ラジカル重合により重合することにより合成することができる。
以下に、まず当該合成方法において用いられる各成分について説明する。
【0025】
[モノマー種]
モノマー種としては、例えば、以下のモノマーを挙げることができる。
なお、以下の構造式はアクリル系のものを示すが、メタクリル系のものも使用可能である。すなわち、(1)〜(7)の構造において、CH=CH−を、CH=C(CH)−に置き換えたものも使用可能である。
【0026】
【化1】

【0027】
前記(1)のRは、炭素数1〜20の脂肪族基、又は炭素数6〜20の芳香族基を表し、脂肪族基としては、具体的には、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシアルキル基を表し、直鎖状でも分岐状でもよく、中でも、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数2〜8の直鎖状のアルキル基がより好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−プロポキシエチル基、2−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−メトキシブチル基、4−メトキシブチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
一方、芳香族基としては、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を表し、中でも、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。
具体的には、フェニル基、トルイル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0028】
前記(3)のRは、H又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を表し、中でも、H又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子が好ましく、H又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子がより好ましい。
例えば、炭素数1〜5のアルキル基、塩素、臭素を表し、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0029】
前記(4)のR、Rは、H又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R、Rが表す脂肪族炭化水素基としては、H又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基が好ましい。
例えば、炭素数1〜4のアルキル基を表し、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、R、Rが表すアルキル基はアミノ基で置換されていてもよい。
【0030】
前記(5)のRは、2価の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表すが、Rが表す炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基が好ましい。
例えば、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
また、R、Rは、H又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、R、Rが表す脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基が好ましい。
例えば、炭素数1〜4のアルキル基を表し、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、具体的には、フェニル基、トルイル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0031】
前記(7)のRは、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を表すが、中でも、炭素数2〜4の脂肪族炭化水素基が好ましい。
例えば、炭素数1〜5のアルキレン基を表し、より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、等が挙げられる。
また、R、R、Rは、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基を表し、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
例えば、炭素数1〜5のアルキル基を表し、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
炭素数1〜5のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などを表す。
【0032】
前記(1)〜(7)の中でも、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
なお、「(メタ)アクリル酸」の表記は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を示す。
【0033】
また、本発明に係る星型共重合体の製造方法において用いられるモノマー種としては、架橋性官能基を有するモノマーも好適に用いることができる。
その例を以下に示すが、本発明は以下のものに限定されることはない。
【0034】
【化2】

【0035】
前記(8)、(9)中、Rは、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示し、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられ、中でも、メチレン基が好ましい。
また、以上の(8)、(9)はアクリレート系の例示であるが、メタクリレート系のものも使用可能である。
すなわち、(8)、(9)において、CH=CH−を、CH=C(CH)−に置き換えたものも使用可能である。
以上の(8)〜(10)においては、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。
【0036】
以上の(1)〜(10)のモノマー種のうちの1種として、(メタ)アクリロニトリルを用いることが好ましい。
また、少なくとも1種として、架橋性官能基を有するモノマーを用いることが好ましい。
具体的な組み合わせの例としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、及び(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピルなどを好適に挙げることができる。
【0037】
モノマーの配合量としては、(メタ)アクリロニトリルやアミノ基含有モノマーを除き、特に制限はなく自由に設定することができる。
本発明においては、アクリロニトリルやアミノ基含有モノマーの配合量として、使用するモノマー種の全体量に対してモル分率で、10%以上が可能であり、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、上限は概ね60%である。
なお、ここでいうアミノ基含有モノマーとしては以下のモノマーなどが好適に使用される。
また、以下のモノマー中のRは、−CH又は−Cを表す。
【0038】
【化3】

【0039】
[多官能開始剤]
本合成方法における多官能開始剤は、ハロゲン化合物であり、一般には、1分子中に3個以上のハロゲン原子を含む化合物が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子がBr又はClである化合物であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子がBrである化合物であり、最も好ましくは、臭素化アルキルである。
なお、多官能開始剤の官能数が星型共重合体の重合鎖の数となるため、合成しようとする星型共重合体の重合鎖の数を考慮し多官能開始剤を選択することが好ましい。
以下に、本発明において好適に用いられる多官能開始剤の具体例を官能数別に示すが、本発明は以下のものに限定されることはない。
【0040】
(3官能;R(Br)
【0041】
【化4】

(Rは、グリセリン、又はフロログルシノール等が挙げられる。)
【0042】
(4官能;R(Br)
【0043】
【化5】

(Rは、ペンタエリトリトール又はカリックスアレン[4]等が挙げられる。)
【0044】
(5官能;R(Br)
【0045】
【化6】

(Rは、グルコース、フルクトース、グルコピラノース等が挙げられる。)
【0046】
(6官能;R(Br)
【0047】
【化7】

(Rは、カリックスアレン[6]、又はグルシトール等が挙げられる。)
【0048】
なお、7官能以上の化合物は、1分子中に7個以上のOH基を有する化合物に、所定の酸ハロゲン化物を反応させることにより得ることができる。
ここで、所定の酸ハロゲン化物としては、2−ブロモプロピオン酸クロライド、2−ブロモプロピオン酸ブロマイド、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸クロライド、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸ブロマイドが挙げられる。
但し、ここに挙げた例は一例であり、これらに制限されるものではない。
【0049】
多官能開始剤の使用量としては、モノマーに対して、モル比で200:1〜20000:1であることが好ましい。
【0050】
[配位子]
本合成方法における配位子は、アミン化合物であり、1分子中に2個以上のN原子を有するアミン化合物を用いることが好ましい。
そのようなアミン化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0051】
【化8】

(Rは、炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R、Rは、H又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を示す。)
【0052】
で表される炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられる。
また、R、Rで表される炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
【0053】
配位子の使用量としては、用いる金属に対し、モル比で0.5:1〜2:1であることが好ましい。
【0054】
[触媒]
本合成方法において用いられる触媒は、周期律表第7族〜11族元素の遷移金属であり、具体的には、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金が挙げられ、中でも、銅、ルテニウム、ニッケル、鉄が好ましく、銅が最も好ましい。
特に、銅を使用すると、触媒活性が高く、高重合率、高分子量化を達成しやすい。
【0055】
触媒の使用量としては、開始剤に対し、モル比で1:0.5〜1:10であることが好ましい。
【0056】
[溶媒]
本合成方法において使用し得る溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等のアミド系溶媒などが好適に使用することができる。これらは、単独又は組み合わせて使用してもよい。
但し、ここに挙げた例は一例であり、これらに制限されるものではない。
【0057】
[その他の成分]
本発明に係る星型共重合体において用いられる他の成分としては、触媒活性を上げるためルイス酸(例えば、アルミニウムアルコキシド等)、又は無機塩(例えば、炭酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等)、又は還元剤(例えば、2−エチルヘキサン酸すず等)を添加することも可能である。
【0058】
[原子移動ラジカル重合]
本合成方法において採用される原子移動ラジカル重合は、開始剤としてハロゲン化合物等を、触媒として遷移金属を用い、アクリル系などのモノマーを重合する重合法であり、ラジカル重合でありながら停止反応等の副反応が起こりにくく分子量分布の狭い重合体(Mw/Mn=1.1〜2.2)が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって、製造しようとする重合体の分子量を自由に制御し得るという「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲンを末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する重合体の製造方法として有用である。
この原子移動ラジカル重合法としては、例えば、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁,Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁に記載されている方法を用いることができる。
【0059】
次に、本発明に係る星型共重合体の製造方法における、星型共重合体の合成の手順について説明する。
まず、本合成方法における合成のために用意した容器内に触媒を秤取して、容器内を減圧、窒素雰囲気下とし、各モノマー種と、配位子と、溶媒とを加える。
次いで、窒素によりバブリングし、脱酸素を図る。
再度窒素雰囲気下とし、別途調製した開始剤溶液を加え、重合を進行させる。このときの温度は10〜100℃程度で、最後に、反応溶液を精製し、目的とする星型共重合体を得る。
【0060】
本合成方法において、上記重合においては、酸素、水分の除去が重要である。また、重合反応を潤滑に進行させるため、モノマー、開始剤、配位子、金属、溶媒の純度を上げることが重要である。
【0061】
星型共重合体の全配合量は、電子部品用樹脂組成物に対して1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましく、4〜6質量%であることがさらに好ましい。
1質量%未満では基板と電子部品用樹脂組成物の硬化物の密着性が低下する傾向があり、10質量%を超えるとガラス転移温度や曲げ強度などの物性が低下する傾向がある。
【0062】
本発明において用いられるエポキシ樹脂は、硬化可能な1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限はなく、電子部品用樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができ、組成物が液状であれば固形、液状のどちらか一方を用いても両者を併用しても良い。
たとえば、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、エポキシ樹脂としてナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも用いることが好ましい。
【0063】
なかでも、低粘度化の観点から、液状エポキシ樹脂が好ましく、フェノール樹脂との反応性の観点からはビスフェノール型液状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0064】
また、これらのエポキシ樹脂は、十分に精製されたもので、イオン性不純物が少ないものが好ましい。例えば、遊離Naイオン及び遊離Clイオンは500ppm以下であることがより好ましい。
【0065】
本発明で用いるエポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを用いることができる。
たとえば、無水フタル酸、無水マレイン酸、メチルハイミック酸無水物、ハイミック酸無水物、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の酸無水物化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ラロミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン混合物、N−アミノエチルピペラジン等のアミン化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾイル−(1))エチル−s−トリアジン、2−フェニルイミダゾリン、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール等のイミダゾール化合物、3級アミン、DBU、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、N,N−ジメチル尿素誘導体等が挙げられる。
中でも低粘度化の観点からは液状の酸無水物化合物、アミン化合物が好ましい。
【0066】
本発明において用いられる硬化剤として、常温液状で、無水酸当量が200以上の環状酸無水物が好ましい。常温液体かつ無水酸当量200以上の環状酸無水物としては、特に制限はなく、例えば無水マレイン酸とジエン化合物からディールス・アルダー反応で得られ、複数のアルキル基を有するトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸等の各種環状酸無水物が挙げられる。
【0067】
「環状酸無水物」とは、無水フタル酸に代表されるように「−CO−O−CO−」の二個の炭素原子Cがそれぞれ他の二個の炭素原子と化学結合して環状になっているものを示す。
また、「無水酸当量」は、(酸無水物の分子量)/(酸無水物分子内の無水酸基の数)で示す。
【0068】
このような化合物としては、例えば、無水酸当量が234であるジャパンエポキシレジン株式会社製商品名JERキュアYH306等が市販品として入手可能である。
【0069】
酸無水物の無水酸当量が200未満の場合、硬化物中のエステル結合が多くなるため、高温高湿下で加水分解の影響を受けやすくなり、耐湿性、特に耐マイグレーション性の低下を生じ易い。
また、酸無水物の無水酸当量が200未満の場合はエステル基の影響で吸水率も高くなり、これも耐マイグレーション性の低下の原因となる。
即ち、無水酸当量が大きい環状酸無水物は無水酸当量が小さい環状酸無水物よりもエステル基濃度が小さくなることから、その硬化物は吸水率が低いため、水に溶け出すCl等のイオン性不純物量を低減できる。
【0070】
無水酸当量は好ましくは、200〜400であり、より好ましくは200〜300である。
【0071】
硬化剤成分の環状酸無水物の構造は無水酸当量200以上であれば特に制限は無いが、耐マイグレーション性の観点から分子中に塩素、臭素などのハロゲン原子、エステル結合を含まないことが好ましい。

【0072】
酸無水物成分の常温液体かつ無水酸当量200以上の環状酸無水物の配合量は、その性能を発揮するために酸無水物成分を含む硬化剤全量に対して30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
【0073】
エポキシ樹脂と、酸無水物成分の常温液体かつ無水酸当量200以上の環状酸無水物を含む全硬化剤との当量比は特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂に対して硬化剤を0.6〜1.6当量の範囲に設定することが好ましく、0.7〜1.4当量がより好ましく、0.8〜1.2当量がさらに好ましい。0.6.〜1.6当量の範囲からはずれた場合、硬化反応が不充分となり信頼性が低下する傾向がある。
ここで、当量とは反応当量であり、たとえば、酸無水物の無水酸当量はエポキシ基1個に対し酸無水物基1個が反応するものとして計算され、フェノール樹脂の当量はエポキシ基1個に対しフェノール性水酸基1個が反応するものとして計算され、芳香族アミンの当量はエポキシ基1個に対しアミノ基の活性水素1個が反応するものとして計算される。
【0074】
本発明の電子部品用樹脂組成物には、必要によりカップリング剤や充填剤を配合することができる。
本発明において用いられるカップリング剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、1級及び/又は2級及び/又は3級アミノ基を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。
【0075】
これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられる。
これらの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
カップリング剤の全配合量は、電子部品用樹脂組成物に対して0.037〜5.0質量%であることが好ましく、0.05〜4.75質量%であることがより好ましく、0.1〜2.5質量%であることがさらに好ましい。0.037質量%未満では基板と電子部品用樹脂組成物の硬化物の密着性が低下する傾向があり、5.0質量%を超えるとガラス転移温度や曲げ強度などの物性が低下する傾向がある。
【0077】
本発明の電子部品用液状樹脂組成物には無機充填剤を配合することが好ましい。
無機充填剤としては、電子部品用樹脂組成物に一般に使用されるもので特に制限はないが、たとえば溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化アルミナ等のアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。
さらにはアルコキシド化合物の加水分解・縮合反応により得られるナノシリカ等の無機ナノ粒子を充填剤として用いることも出来る。
これらの無機充填剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
無機充填剤の形状は、流動性等の成形性の観点から球形に近いことが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、5nmから10μmの範囲が好ましい。10μmを超えると充填剤の沈降を起こしやすくなる傾向や、電子部品用樹脂組成物の微細間隙への浸透性・流動性が低下してボイド・未充填を招きやすくなる傾向がある。また、これらの充填剤は、必要に応じて表面をカップリング処理したものを用いてもよい。
無機充填剤の配合量は、電子部品用樹脂組成物の10質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。また、無機充填剤の配合量を0質量%にすることも可能である。10質量%を超えた場合、電子部品用樹脂組成物の硬化物とフィルム基板を用いたフレキシブル配線板との線膨張係数差が大きくなり、両者の界面で剥離が生じやすくなる。また、無機充填剤量が多いと液状樹脂組成物の粘度が高くなり、表面張力が上がるため、流動性が低下する傾向がある。
【0079】
本発明の電子部品用樹脂組成物には、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する硬化促進剤を用いる。
硬化促進剤としては、硬化性とポットライフを両立するためには潜在性硬化促進剤が好ましい。 潜在性硬化促進剤とは、ある特定の温度等の条件で硬化促進機能が発現されるもので、例えば通常の硬化促進剤が、マイクロカプセル等で保護されたり各種化合物と付加した塩の構造となっていたりするものが挙げられる。この場合、特定の温度を超えるとマイクロカプセルや付加物から硬化促進剤が開放され、開放された硬化促進剤によりエポキシ樹脂と硬化剤の反応が促進される。特定の温度以下では、マイクロカプセルや付加物から硬化促進剤が開放されず、硬化が促進されないためポットライフが長く保存安定性に優れる。
【0080】
潜在性硬化促進剤の例としては、常温固体のアミノ基を有する化合物をコアとして、常温固体のエポキシ化合物をシェルとして被覆してなるコア−シェル粒子が挙げられ、市販品としてアミキュア(味の素株式会社製、登録商標)や、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させたノバキュア(旭化成ケミカルズ株式会社製、登録商標)などが使用できる。
【0081】
さらには電子部品用樹脂組成物に不溶な固体粒子で加熱成形時に解離して硬化促進作用を発現するアミン化合物またはリン化合物の塩類及びこれらにπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物が潜在性硬化促進剤として使用できる。
【0082】
これらを例示すれば1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物とπ結合をもつ化合物とを付加してなる分子内分極を有する化合物、
トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物の誘導体、
2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物の誘導体、
トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる、分子内分極を有するリン化合物、及びこれらの誘導体、
トリフェニルホスフィントリフェニルボロン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0083】
なかでも、保存安定性、速硬化性の観点からは、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させたものが好ましい。
【0084】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、非潜在性のものも含めた全量で(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。0.1質量%未満では短時間での硬化性に劣る傾向があり、40質量%を超えると硬化速度が速すぎて制御が困難になったりポットライフ、シェルライフ等の保存安定性が劣ったりする傾向がある。
【0085】
本発明の電子部品用樹脂組成物には、エポキシ樹脂硬化物の強靭化や低弾性率化を図るために、公知の各種ゴム粒子を配合できる。
該ゴム粒子はエポキシ樹脂と非相溶性のものが硬化物のガラス転移温度(耐熱性)を下げずに弾性率を下げるのに有効である。
具体的には例えば、ブタジエン・アクリロニトリル・スチレン系共重合体や該重合体の末端または側鎖にエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等を有する変性共重合体、末端または側鎖にエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基などを有する変性シリコーン系エラストマー等が挙げられる。
ゴム粒子は取り扱い性や樹脂成分との分散性の点から、微粉末状で、予めエポキシ樹脂や硬化剤に細かく分散させたものを用いることが好ましい。
樹脂組成物中に一様に混合できるため、常温(20〜25℃)で液状のゴム変性エポキシ樹脂であることが好ましい。
ゴム粒子の含有によって液状樹脂組成物の硬化物と基板等との密着性が向上し、耐高温高湿性等の信頼性向上が図られる。
【0086】
また、本発明の電子部品用樹脂組成物には、必要に応じてイオントラップ剤をIC等の半導体素子の耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から含有することができる。イオントラップ剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができ、特に下記組成式(I)で表されるハイドロタルサイトまたは(II)で表されるビスマスの含水酸化物が好ましい。
【0087】
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO (I)
(式(I)中、0<X≦0.5、mは正の数。
BiO(OH)(NO (II)
(式(II)中、0.9≦x≦1.1、0.6≦y≦0.8、0.2≦z≦0.4)
これらイオントラップ剤の添加量としてはハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分な量であれば特に制限はないが、耐マイグレーション性の観点から樹脂組成物に対して0.1〜3.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。
イオントラップ剤の平均粒径は0.1〜3.0μmが好ましく、最大粒径は10μm以下が好ましい。なお、上記式(I)の化合物は市販品として協和化学工業株式会社製商品名DHT−4Aとして入手可能である。また、上記式(II)の化合物は市販品として東亜合成株式会社製商品名IXE500として入手可能である。
また必要に応じてその他のイオントラップ剤を添加することもできる。たとえば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等から選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
本発明の電子部品用樹脂組成物には、必要に応じてシリコーン変性エポキシ樹脂を添加することができる。シリコーン変性エポキシ樹脂を添加することで液状封止材のレベリング性、フィレット形成性、ボイド低減に効果が有る。
シリコーン変性エポキシ樹脂はエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができるが、常温で液状であることが好ましい。シリコーン変性エポキシ樹脂は液体の表面に局在化し、液体の表面張力を下げることができる。これにより濡れ性が高く、流動しやすくなるため、狭ギャップへの浸透性向上や巻き込みボイドの低減に効果がある。
【0089】
ここでエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンを例示すれば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等を1分子中に1個以上有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
オルガノシロキサンの重量平均分子量としては、500〜5000の範囲が好ましい。この理由としては500未満では、樹脂系との相溶性が良くなり過ぎて添加剤としての効果が発揮されず、5000を超えると樹脂系に非相溶となるためシリコーン変性エポキシ樹脂が成形時に分離・しみ出しを発生し、接着性や外観を損なうためである。
【0090】
シリコーン変性エポキシ樹脂を得るためのエポキシ樹脂としては電子部品用樹脂組成物の樹脂系に相溶するものであれば特に制限は無く、電子部品用樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができ、たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、常温液状のものが好ましい。
【0091】
本発明の電子部品用樹脂組成物には、その他の添加剤として、染料、カーボンブラック、酸化チタン、鉛丹等の着色剤、難燃剤、希釈剤、他のレベリング剤、他の応力緩和剤、消泡剤、接着促進剤などを必要に応じて配合することができる。
【0092】
難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモンを用いることができるが、ノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤を用いるのが好ましい。たとえば、赤リン、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆された赤リン、リン酸エステル、酸化トリフェニルホスフィン等のリン化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属錯体化合物、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の亜鉛化合物、酸化鉄、酸化モリブデン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、下記組成式(III)で示される複合金属水酸化物などが挙げられる。
【0093】
p(M)・q(M)・r(M)・mHO (III)
(組成式(III)で、M、M及びMは互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、p、q及びmは正の数、rは0又は正の数を示す。
上記組成式(III)中のM、M及びMは互いに異なる金属元素であれば特に制限はないが、難燃性の観点からは、Mが第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族及びIVA族に属する金属元素から選ばれ、MがIIIB〜IIB族の遷移金属元素から選ばれることが好ましく、Mがマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれ、Mが鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれることがより好ましい。
流動性の観点からは、Mがマグネシウム、Mが亜鉛又はニッケルで、r=0のものが好ましい。
p、q及びrのモル比は特に制限はないが、r=0で、p/qが1/99〜1/1であることが好ましい。なお、金属元素の分類は、典型元素をA亜族、遷移元素をB亜族とする長周期型の周期律表に基づいて行った。
上記した難燃剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
希釈剤として、粘度調整のためエポキシ基を有する反応性希釈剤を混合しても良い。エポキシ基を有する反応性希釈剤としては例えばn−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
これらの1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0095】
本発明の電子部品用樹脂組成物は、上記各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等を用いて混合、混練し、必要に応じて脱泡することによって得ることができる。
【0096】
本発明で得られる電子部品用樹脂組成物により素子を封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド及びフレキシブル配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの素子を搭載し、必要な部分を本発明の電子部品用樹脂組成物で封止して得られる電子部品装置などが挙げられる。
特にフィルムを基材とする配線基板上に電子部品を直接バンプ接続した電子部品装置の封止に用いられることが好ましい。例えば、リジッド及びフレキシブル配線板やガラス上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした半導体装置が対象となる。具体的な例としてはフリップチップBGAやCOF(Chip On Film)等の半導体装置が挙げられ、特に本発明で得られる電子部品用液状樹脂組成物は耐マイグレーション性に優れたCOF用のアンダーフィル材として好適である。また、プリント回路板にも本発明の液状樹脂組成物は有効に使用できる。
【0097】
本発明の電子部品用樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
【実施例】
【0098】
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。COFは、近年ファインピッチ化が進んでいる半導体装置の中でも特に端子間ギャップが狭く、電子部品用樹脂組成物に対してさらなる流動性や接着性の向上が要求される半導体装置の一つである。実施例はCOFパッケージによって行ったが、本発明の効果はCOFに限定されるものではなく広くファインピッチな半導体装置に適用しうるものである。
【0099】
[実施例1]
まず、星型アクリルゴムの合成に必要な配位子及び3官能開始剤を以下のようにして合成した。
(配位子の合成)
三方コックを備えたジムロートとセプタムラバとを50ml二口ナスフラスコに装着し、N雰囲気下にした後、蟻酸25.0ml(521.4mmol)を秤取した。
0℃に冷却した後、ホルムアルデヒド10.0ml(123.2mmol)を加え、そのまま0℃の状態で1時間攪拌した。この反応液に、トリス(2−アミノエチル)アミン 1.5ml(10.0mmol)を蒸留水5mlに溶解させた水溶液を約10分かけて滴下した。その後、反応液を室温(25℃)に戻し、窒素気流下とした。
次に95℃に設定したオイルバスにこの反応器を設置し緩やかに10時間還流した。
次いで、室温に戻し、溶媒をエバポレータにて除去した後、残渣を飽和NaOH水溶液で処理した。
有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去し、薄黄色液体のヘキサメチル化トリス(2−アミノエチル)アミン(以下、MeTRENと称す)1.9g(収率86%)を得た。構造はH、13C−NMRより確認した。
【0100】
(3官能開始剤の合成)
三方コック、セプタムラバを備えた100ml二口ナスフラスコにフロログルシノール1.00g(7.93mmol)を秤取した。N雰囲気にした後、脱水テトラヒドロフラン(以下、THFと称す)40.0mlを加えた。さらに、トリエチルアミン(以下、EtNと称す)3.9ml(27.8mmol)を加え、0℃に冷却した。次いで、2−ブロモプロピオン酸クロリド2.8ml(27.8mmol)をゆっくりと滴下した後、室温に戻し2時間反応を進行させた。反応追跡はTLC(薄層クロマトグラフィー)を用いて行い、原料のスポットが消失したとき、反応終了とみなした。反応終了後、ろ過し溶液中の塩酸塩を取り除き、溶媒をエバポレータにて留去した。残渣をMeOHにより再結晶することで白色固体の生成物2.4g(収率57%)で得た。構造はH、13C−NMRより確認した。
【0101】
(星型アクリルゴムの合成)
三方コック、セプタムラバを100ml二口フラスコに装着し、Cu(0) 9.5mg(0.15mmol)、CuBr 3.4mg(0.015mmol)を秤取した。反応容器内をN雰囲気とし、アクリル酸ブチル(BA) 9.9g(77.64mmol)、アクリル酸エチル(EA) 7.4g(73.98mmol)、メタクリル酸グリシジル(GMA) 0.8g(5.43mmol)、アクリロニトリル(AN) 7.6g(142.95mmol)、脱水DMSO(ジメチルスルホキシド) 29.4ml、MeTREN 34.6mg(0.15mmol)の順に加えた。
更に、上記のように合成した3官能開始剤106.2mgを脱水DMSO 4.0mlに溶解させた溶液3.0mlを加えた。
反応系内をNフロー(400ml/min×15min)により脱酸素した後、設定温度30℃のオイルバスに反応容器を設置し、25時間反応を進行させた。反応終了後、MEK 30mlを加え、系内の粘度を落としメンブランフィルター(PTFE、0.2μm)を用いてろ過した。ろ液をMeOH 600mlで再沈殿した後、40℃で減圧乾燥することで薄黄白色ゴム状の生成物13.6g(収率53%)を得た。
合成した星型アクリルゴムの重量平均分子量は20万であった。また、ガラス転移点Tgは44℃であった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により得られた値である。以上実施例1より、星型共重合体を得た。
【0102】
(実施例2及び比較例1、2)
(A)エポキシ樹脂として エポキシ当量160のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(東都化成株式会社製商品名YDF−8170C)、エポキシ当量140のナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製商品名HP−4032)、
(B)可とう材としてアクリロニトリル・ブタジエン共重合体(ニトリルブタジエン系ゴム)、実施例1で合成の星型共重合体(当社合成品名STA)、
(C)レベリング剤として水酸基当量750のフェノール変性シリコーン(東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製商品名BY16−799)とビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(YDF−8170C)を質量比1/1で加熱混融して得られたシリコーン変性エポキシ樹脂、
(D)硬化剤として環状酸無水物である常温液体かつ無水酸当量234の環状酸無水物(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名jERキュアYH306)、
(E)カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製商品名KBM−403)、
(F)硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製商品名2E4MZ)、を用意した。
【0103】
これらをそれぞれ下記表1に示す質量部で配合し、らいかい機にて混練分散した後、真空脱泡して、実施例2及び比較例1、2の電子部品用液状樹脂組成物を作製した。
【0104】
【表1】

【0105】
作製した実施例2及び比較例1、2の電子部品用液状樹脂組成物を次の各試験により評価した。
【0106】
(1)粘度 EMD型回転粘度計(株式会社トキメック製)を用い、25±1℃に保たれた電子部品用(液状)樹脂組成物について、それぞれ100rpmで1分間回転させたときの目盛りに換算係数0.0125を乗じ、これを粘度とした。その結果を表2に示した。
【0107】
【表2】

【0108】
(2)外観接着評価
COF型パッケージを組み、バンプを実施例2および比較例1、2でそれぞれ封止した。PCT(123℃、100%、12時間)後、バンプ/樹脂間での剥離状態を観察した。観察結果、図1(A)の模式図に示したように実施例2のサンプルで剥離が低減した。
剥離がおこると比較例1(図1(B))および比較例2(図1(C))のようなバンプ周辺の滲みとして確認される。
【0109】
可とう剤として星型構造共重合体を用いた実施例2は、液状樹脂組成物の粘度が低く流動性に優れ、また、高温、高湿、高圧条件下での加速試験(PCT)で剥離が見られず接着性が良好である。
これに対し、可とう材としてアクリロニトリル・ブタジエン共重合体を用いた比較例1、2は、PCT加速試験で剥離が見られた。
これより星型構造を持つゴムが、流動性を高め、バンプとの接着性を向上させることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明になる電子部品用樹脂組成物は、高い流動性を示し、その他の成形性、信頼性にも優れ、その工業的価値は大である。特にリジッド及びフレキシブル配線板やガラス上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした半導体装置、具体的にはフリップチップBGAやCOF等の半導体装置用のアンダーフィル材として有用である。
【符号の説明】
【0111】
a:チップ
b:樹脂組成物
c:バンプ
d:フィルム
e:パッケージ剥離部位
f:ソルダレジスト
g:銅配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び可とう剤を含む電子部品用樹脂組成物であって、可とう剤が少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体である電子部品用樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂の含有量が25〜60質量%であり、少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体の含有量が、1〜10質量%である請求項1記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体が、アクリルゴムである請求項1又は2に記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項4】
少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体のガラス転移点が、60℃以下である請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項5】
少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体の重量平均分子量が、30000〜1000000である請求項1〜4のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項6】
少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体における各重合鎖の重量平均分子量が、10000〜300000である請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項3記載のアクリルゴムが、ニトリル基を含むアクリルゴムである請求項3〜6のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂が、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を含む請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の電子部品用樹脂組成物を用いた液状封止材。
【請求項10】
フィルムを基材とする配線基板上に電子部品を直接バンプ接続した電子部品装置の封止に用いる請求項9に記載の液状封止材。
【請求項11】
請求項9または10に記載の液状封止材を用いて封止された電子部品装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−219134(P2012−219134A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84451(P2011−84451)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】