説明

電子部品用液状エポキシ樹脂組成物とそれを用いた電子装置

【課題】硬化物が耐薬品性を有し、保存安定性が良く1液型で用いることができ、硬化収縮も抑制することができる電子部品用液状エポキシ樹脂組成物とそれを用いた電子装置を提供すること。
【解決手段】常温で液状のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、エポキシ樹脂の硬化促進剤、および主剤成分と硬化剤成分との2液を混合して得られる室温硬化型の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のヒドロシリル化反応生成物を含有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の封止、接着、保護等に用いられる電子部品用液状エポキシ樹脂組成物とそれを用いた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子をはじめとする電子部品では、様々な電子装置への実装においてその封止や保護、基板等への接着のための樹脂組成物が用いられている。
例えば、近年、その採用が増加している半導体素子のフリップチップ実装では、半導体素子とインターポーザとの間は、液状の樹脂組成物のアンダーフィル材を充填、硬化したアンダーフィルにより封止される。
【0003】
このアンダーフィルによりバンプが保護され、半導体素子とインターポーザとの接合強度を高め、また、大気中の水分が半導体素子とインターポーザとの間に侵入するのを防止して半導体装置のパッケージの耐湿性を向上させることができる。
【0004】
このような構造のフリップチップ実装型の半導体装置は、実装面積が小さく、ワイヤボンディング接続の場合のようにワイヤまで樹脂封止する必要がないので実装後の高さも低くすることができ、小型化、薄型化等の要求に応えることができる。
【0005】
このようなフリップチップ実装に用いられるアンダーフィル材としては液状エポキシ樹脂組成物が広く用いられている(特許文献1、2参照)。
【0006】
その他、液状エポキシ樹脂組成物はウェハーレベルCSPの封止材としても用いられている。
【0007】
このような液状エポキシ樹脂組成物は、電子部品を封止した電子装置の用途によっては高い耐薬品性が要求される場合がある。このような事情は、封止の用途だけでなく、様々な電子部品の接着や保護等の場合にも同様である。
そこで、従来、耐薬品性が要求される場合には2液型の反応性の高い液状エポキシ樹脂組成物が主に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−144144号公報
【特許文献2】特開2004−027005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、2液型のものは、保存安定性が低く作業性に制限がある。また硬化収縮率が大きく部材に与えるストレスが大きくなりやすい。
【0010】
そして耐薬品性を満足する1液型の液状エポキシ樹脂組成物を調製しても、硬化物に必要な物性、例えば硬化収縮の抑制等も満足することは難しい。
【0011】
硬化収縮の抑制は、様々な電子部品の接着、保護においても同様であるが、特に、電子部品の封止に重要である。例えば、はんだバンプはフリップチップ実装工程において、液状エポキシ樹脂組成物の充填、硬化時の硬化収縮による影響で半導体素子の反りが助長されてストレスが掛かり、バンプクラック等の不良が起こる要因となり得る。
【0012】
特に、近年では半導体素子の高集積、高速化によるLow−k(低誘電率)化が進んでいる。また環境保護の観点から、鉛フリーの要求が高まっており、はんだバンプの脱鉛化が進み、端子の接続温度も上昇している。そのためはんだ端子材質が脆性化し、接続性の確保が難しくなってきており、アンダーフィル材の選定によっては温度サイクル試験等で繰り返し熱衝撃を受ける場合に接合部の保護が不十分なため、低サイクルで接合部が疲労破壊することがある。このようなLow−k用途や鉛フリーはんだ用途等のものは、硬化収縮により発生するバンプ接合部のストレスをより一層抑制することが要求されている。
【0013】
また、液状エポキシ樹脂組成物以外で、耐薬品性を持つ1液型の熱硬化性樹脂組成物としては、液状シリコーン樹脂組成物等が開発されているが、液状エポキシ樹脂組成物に比べると耐熱性や接着性の点で劣る。
【0014】
そこで、本発明は、電子部品の封止、接着、保護等に有用な、硬化物が耐薬品性を有し、保存安定性が良く1液型で用いることができ、硬化収縮も抑制することができる電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を提供することを課題としている。また、本発明は、このような電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を用いた電子装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物は、常温で液状のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、エポキシ樹脂の硬化促進剤、および主剤成分と硬化剤成分との2液を混合して得られる室温硬化型の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のヒドロシリル化反応生成物を含有することを特徴としている。
【0016】
この電子部品用液状エポキシ樹脂組成物においては、2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のヒドロシリル化反応生成物の含有量は、常温で液状のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤との合計量に対して30〜60質量%であることが好ましい。
【0017】
この電子部品用液状エポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂の硬化剤は、フェノール系硬化剤であることが好ましい。
【0018】
また本発明の電子装置は、電子部品と、この電子部品の表面の少なくとも一部に形成された前記の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の硬化層とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物によれば、硬化物が耐薬品性を有し、保存安定性が良く1液型で用いることができ、硬化収縮も抑制することができる。
本発明の電子装置によれば、耐薬品性を有し、電子部品の表面の少なくとも一部に硬化層を形成する際の作業性に優れ、硬化収縮による硬化層のストレスも抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂として常温で液状のエポキシ樹脂が配合される。
【0022】
常温で液状のエポキシ樹脂は、大気圧下での5〜28℃の温度範囲、特に室温18℃前後において液状の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0023】
常温で液状のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリアルキレングリコール骨格含有エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記したような常温で液状のエポキシ樹脂を用いることにより、リフロー耐熱性等の信頼性を高めることができる。
【0025】
また上記したような常温で液状のエポキシ樹脂を適宜に組み合わせて用いることにより、作業性に影響する粘度や硬化後の反りに影響するガラス転移温度(Tg)を適切に調整することができる。
【0026】
特に、常温で液状のエポキシ樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂および水添ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。これらを用いることにより、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが可能であり、かつ硬化物のTgを適切な範囲に調整することができ、硬化物の密着性を良好な水準に維持できる。ビスフェノール型エポキシ樹脂および水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜200が好ましい。
【0027】
また、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の全体として常温で液状となれば、常温で固形のエポキシ樹脂を併用してもよい。
【0028】
なお、半導体装置等の電子装置の信頼性を考慮すると、NaイオンやClイオン、Brイオン等の不純物ができるだけ少ないエポキシ樹脂を用いることが望ましい。
【0029】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂の硬化剤が配合される。エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤等を用いることができる。
【0030】
これらの中でも、耐薬品性を考慮すると、フェノール系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤は、硬化物の加水分解が起こらないため耐湿性が向上し、例えばウェハーレベルCSPの場合には、ウェハー表面から突き出したポスト電極の補強効果を維持しやすい。また、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物が薄く塗り広げられた状態で硬化するような場合には硬化剤成分が揮発し硬化不良を起こすおそれがあるが、フェノール系硬化剤では気化を抑制することができる。
【0031】
フェノール系硬化剤としては、フェノール性水酸基を1分子中に複数個有する化合物、特に液状のものを用いることができる。例えば、フェノールノボラックやクレゾールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノール類、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記のようなフェノール系硬化剤を用いると、硬化物の密着性に優れ、高い封止性能を実現できる。
【0033】
フェノール系硬化剤として、アリル化フェノールの構造を持つ化合物を特に好ましく用いることができる。アリル化フェノールの構造を持つ化合物は、アリル化フェノールノボラックに代表される化合物であるが、硬化物の密着性に優れ、高い封止性能を実現でき、さらに電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることができる。
【0034】
アリル化フェノールノボラックとしては、例えば、次式の構造単位が2〜4個結合したものを用いることができる。
【0035】
【化1】

【0036】
酸無水物系硬化剤としては、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の粘度を下げて作業性を向上させる点を考慮すると、常温で液状の酸無水物系硬化剤が好ましい。常温で液状の酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の無水フタル酸化合物、メチルナジック酸無水物、ドデセニル無水コハク酸等を用いることができる。アミン系硬化剤としては、例えば液状芳香族アミンを用いることができる。
【0037】
電子部品用液状エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量は、特に限定されないが、常温で液状のエポキシ樹脂に対する割合(硬化剤/エポキシ樹脂)が、当量比で0.6〜1.4となる範囲が好ましい。硬化剤の含有量をこのような範囲内とすると、硬化性、硬化物の強度、密着性を良好なものとすることができる。
【0038】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂の硬化促進剤が配合される。エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、潜在性の硬化促進剤を用いるのが好ましい。潜在性の硬化促進剤は、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物において熱時のある温度域では大きな反応性を発現するものの、それ以下の温度域、一般には室温あるいはそれ以下の温度域においては優れた貯蔵安定性を有するものを意味する。
【0039】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系化合物、第3級アミン系化合物、有機リン系化合物、第4級アンモニウム系化合物等を用いることができる。
【0040】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1-シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェノルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)] −エチル−sトリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル-s−トリアジン イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール等を用いることができる。
【0041】
なお、イミダゾール系マイクロカプセル型潜在性触媒(マイクロカプセル化イミダゾール)を用いることもできる。ここでイミダゾール系マイクロカプセル型潜在性触媒とは、イミダゾール骨格を有する化合物を核として、この核の周囲をフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂による被膜で被覆することにより得られる微細球粒子のことをいう。
【0042】
第3級アミン系化合物としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン(DBU)等を用いることができる。また、アミンアダクトの粒子等を用いることもできる。
【0043】
有機リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類を用いることができる。また、第4アンモニウム系化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムホスホニウム塩、テラトブチルアンモニウム塩等を用いることができる。
【0044】
これらの中でも、エポキシ樹脂の硬化促進剤としてイミダゾール系化合物、第3級アミン系化合物が好ましい。これらはポットライフの低下を抑制し、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を1液型とするのに適している。
【0045】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂および硬化剤の合計100質量部に対して0.1〜5.0質量部が好ましい。硬化促進剤の含有量をこのような範囲内とすることで、ゲル化時間の遅延をもたらすことがなく、硬化の進行が早くなりすぎることも抑制できる。
【0046】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物には、主剤成分と硬化剤成分との2液を混合して得られる室温硬化型の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のヒドロシリル化反応生成物が配合される。
【0047】
室温硬化型の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物としては、一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを含有する主剤成分と、一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有する硬化剤成分との2液型のものを用いることができる。このシリコーンゴム組成物には、ヒドロシリル化反応用硬化促進剤が配合される。
【0048】
一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンは、シリコーンゴム組成物の主剤成分を構成する。ジオルガノポリシロキサン中のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等を挙げることができる。これらの中でもビニル基が好ましい。
【0049】
ジオルガノポリシロキサン中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、脂肪族不飽和結合を除く、炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換またはハロゲン置換の1価炭化水素基等を挙げることができる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等を挙げることができる。中でも、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0050】
ジオルガノポリシロキサンの分子構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しから構成され、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された実質的に直鎖状であるが、本発明の効果を損なわない範囲内で分子鎖の一部が多少分岐していてもよい。
【0051】
ジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、特に限定されないが、回転粘度計により測定した値で100〜1,000,000mPa・sが好ましく、100〜500,000mPa・sがより好ましい。
【0052】
このようなジオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、これらのジオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したジオルガノポリシロキサン、これらのジオルガノポリシロキサンのビニル基の一部または全部をアリル基、プロペニル基等のアルケニル基で置換したジオルガノポリシロキサン等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、シリコーンゴム組成物の硬化剤成分を構成する。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に平均2個以上(通常2〜300個程度)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個程度)のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有する。
【0054】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状、環状、三次元網状構造の樹脂状物のいずれであってもよい。
【0055】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合している有機基としては、例えば、脂肪族不飽和結合を除く、炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換またはハロゲン置換の1価炭化水素基等を挙げることができる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等を挙げることができる。中でも、メチル基が好ましい。
【0056】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は限定されないが、0.5〜1,000,000mPa・sが好ましく、1〜100,000mPa・sがより好ましい。またオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中のケイ素原子数(または重合度)が2〜500個であることが好ましく、3〜300個であることがより好ましい。
【0057】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、H(CH32SiO1/2単位とSiO2単位との共重合体、H(CH32SiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO2単位との共重合体等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
シリコーンゴム組成物中、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量はジオルガノポリシロキサン中のアルケニル基に対するオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子のモル数の比が0.01〜20の範囲内となる量が好ましく、0.1〜10の範囲内となる量がより好ましく、0.1〜5の範囲内となる量がさらに好ましい。このような範囲内とするとシリコーンゴム組成物の硬化を十分に進行させることができ、得られるシリコーンゴムの物理的特性も向上させることができる。
【0059】
シリコーンゴム組成物には、シリコーンゴム組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用硬化促進剤が配合される。ヒドロシリル化反応用硬化促進剤としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、イリジウム系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒等を用いることができる。中でも、白金系触媒が好ましい。
【0060】
このようなヒドロシリル化反応用硬化促進剤として、具体的には、例えば、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末等の白金系触媒;式:[Rh(O2CCH322、Rh(O2CCH33、Rh2(C81524、Rh(C5723、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX3[(R)2S]3、(R23P)2Rh(CO)X、(R23P)2Rh(CO)H、Rh224、HaRhb(En)cCld、またはRh[O(CO)R]3-n(OH)nで表されるロジウム系触媒(式中、Xは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yはメチル基、エチル基等のアルキル基、CO、C814、または0.5C812を示し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を示し、R2はアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、またはアリールオキシ基を示し、Enはオレフィンを示し、aは0または1を示し、bは1または2を示し、cは1〜4の整数を示し、dは2、3、または4を示し、nは0または1を示す。);式:Ir(OOCCH33、Ir(C5723、[Ir(Z)(En)22、または[Ir(Z)(Dien)]2で表されるイリジウム系触媒(式中、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはアルコキシ基を示し、Enはオレフィンを示し、Dienはシクロオクタジエンを示す。)等を挙げることができる。
【0061】
シリコーンゴム組成物におけるヒドロシリル化反応用硬化促進剤の含有量は、シリコーンゴム組成物の硬化を促進するに十分な量であれば特に限定されないが、ジオルガノポリシロキサン1,000,000質量部に対してヒドロシリル化反応用硬化促進剤中の金属原子が0.01〜1,000質量部の範囲内となる量が好ましく、0.1〜500質量部の範囲内となる量がより好ましい。
【0062】
シリコーンゴム組成物は、通常、ジオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応用硬化促進剤を含有する主剤成分と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有する硬化剤成分とを別々に保存し、使用時にこれらを混合する2液型のものとして調製される。なお、硬化剤成分にはオルガノハイドロジェンポリシロキサンに加えてジオルガノポリシロキサンが含有されてもよい。
【0063】
シリコーンゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、有機溶媒等を挙げることができる。
【0064】
シリコーンゴム組成物の上記各成分は、公知の方法により製造することができる。またシリコーンゴム組成物は、室温硬化型(RTV)の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物として市販されているものを用いることができる。
【0065】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物に配合されるヒドロシリル化反応生成物は、主剤成分と硬化剤成分とを混合してシリコーンゴム組成物とし、ヒドロシリル化反応を進行させて得られるものである。
【0066】
ヒドロシリル化反応による硬化は、80〜200℃で行うことが好ましく、80〜150℃で行うことがより好ましい。反応時間は、0.1〜4時間が好ましい。
【0067】
また主剤成分と硬化剤成分との配合比は、質量比で100:70〜100:150の範囲内が好ましい。配合比をこのような範囲内にすることで、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐薬品性を高めることができる。
【0068】
電子部品用液状エポキシ樹脂組成物におけるヒドロシリル化反応生成物の含有量は、常温で液状のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤との合計量に対して30〜60質量%が好ましい。含有量をこの範囲内にすると、保存安定性を高めることができ、かつ硬化収縮を特に抑制することができる。また硬化物の耐熱性や密着性も良好なものとすることができる。
【0069】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、さらに他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、例えば、充填剤、着色剤、シランカップリング剤、消泡剤等を用いることができる。
【0070】
充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミ、ボロンナイトライド、窒化珪素、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム等を用いることができる。最大粒径が1〜40μmである球状非晶質シリカを用いると、粘度を著しく高めてしまうことなく電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を狭い隙間に毛細管現象を利用して充填させることができる。
【0071】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等を用いることができる。
【0072】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、ビニルシラン等を用いることができる。
【0073】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物は、上記の各成分を配合し、必要に応じて加熱処理や冷却処理を行いながら、撹拌、溶解、混合、分散を行い、必要に応じて脱泡することにより調製することができる。なお、攪拌、溶解、混合、分散等の工程でディスパーやプラネタリーミキサー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等を組み合わせて用いることができる。
【0074】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物は、保存安定性が良く1液型で用いることができる。そして硬化物がメタノール、IPA(イソプロパノール)、MEK(メチルエチルケトン)、NMP(N−メチルピロリドン)、塩酸、硫酸等に対する耐薬品性を有していることから、耐薬品性が要求される用途に好適である。また、室温硬化型の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のヒドロシリル化反応生成物を配合したことにより、硬化収縮による硬化層のストレスも抑制することができる。
【0075】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物は、IC、LSI等の半導体素子等の電子部品の封止、接着、保護等に用いることができる。具体的には、電子部品と、この電子部品の表面の少なくとも一部に形成された電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の硬化層とを含む半導体装置等の電子装置を構成し、この硬化層を封止材、接着層、または保護層として機能させることができる。
【0076】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物は、例えば、硬化後に反りが少ないことを必要とする用途、具体的には、ウェハー全体を封止し硬化するプロセスを含むWL(ウェハーレベル)あるいはWS(ウェハースケール)のCSP、アンダーフィルしたフリップチップ接続のCSPやBGAの半導体装置、プリンタの熱転写または感熱のためのヘッド部分(サーマルヘッド)等に好適に用いることができる。
【0077】
各種部材の表面に電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を塗布する方法としては、真空印刷のほか、大気圧スクリーン印刷、スピンコーターによる塗布、あるいはディスペンスによる方法や、金型による成形法等を用いることができる。
【0078】
ただし、スピンコート法(スピンコーターによる塗布)では粘度は溶剤の添加量を増やすなどして10Pa・s以下に抑えることが好ましく、金型による成形法では逆に溶剤を添加すると硬化物中にボイドが残る原因ともなるため溶剤を含まずに粘度を200Pa・s程度に抑えることが好ましい。
【0079】
樹脂層にボイドを内包しないための最良の方法は減圧印刷機を用いた方法であるが、この場合は溶剤の沸点を高沸点側にシフトするなどして連続印刷性を確保する必要がある。
【0080】
また、印刷を用いた方法による場合は電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の粘度は200Pa・s以下であることが好ましい。200Pa・sを超えると印刷対象への樹脂の転写が十分にされず、スキージングを繰り返す必要が生じるおそれがある。また、溶剤を添加することで200Pa・s以下に抑えることができても添加量が10質量%を超える場合は硬化後に溶剤が残存して硬化物が脆くなってしまったり、多量の溶剤の揮発により硬化物中にボイドが生じたりするおそれがある。
【0081】
硬化時の溶剤の揮発によるこのボイドを低減するには沸点の異なる溶剤を複数種添加して低沸点溶剤から順に緩やかに揮発させるのが一般的であるが特に真空印刷による方法ではこの限りではない。印刷時に低沸点溶剤が揮発して印刷中に粘度が上昇して連続して印刷する際に品質バラツキが発生しやすい。また硬化温度上限より溶剤の沸点が50〜100℃高ければ急激な揮発が抑えられ、徐々に溶剤が揮発するためボイドとなりにくく、硬化に要する時間に変更を加える必要もない。
【0082】
本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を用いてWL−CSPを製造するには、まず、CSPとなったときにバンプが形成される位置にあるウェハー上のパッド部に、樹脂層を貫通することになるポストとしての金属を形成する。
【0083】
ポストを形成する方法としては、具体的には、パッド部にフラックスを印刷し、その上にメタルマスクを利用してはんだボールを載せリフローする方法や、パッド部にはんだペーストを印刷しリフローする方法、あるいはパッド部に銅などの金属をメッキ法により成長させる方法などがある。
【0084】
次に、ポストとしての金属が形成されたウェハーに、本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を印刷し、加熱硬化させる。印刷は常圧印刷でも真空印刷でも良い。常圧印刷の場合は、印刷後に減圧下に置いて、組成物中のボイドを除く処理を行うのが好ましい。
【0085】
加熱硬化は、常圧でも加圧下でも良いが、加圧下の方が硬化物中のボイドをより少なくすることができる。また硬化条件は、80〜120℃で30分〜2時間の1段目硬化を行った後に、150〜170℃で1〜6時間の2段目硬化を行うという2ステップの硬化を適用することができる。フェノール系硬化剤を用いた場合には、このような2ステップの硬化以外にも、100〜170℃で30分〜6時間の1ステップの硬化を適用することもできる。
【0086】
次に、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の硬化後のウェハーを樹脂層側から研磨し、ポストと樹脂層の高さを揃える。必要に応じて、その後にウェハーの背面を研磨し、総厚みを小さくする工程を採ることもある。また、半導体素子の背面保護やマーキング性向上のため、ウェハーの背面に本発明の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物や他の樹脂を塗布、硬化してもよい。
【0087】
次に、はんだ等を用いてCSPのバンプの形成を行う。具体的には、樹脂層の表面に露出するポストの端面にフラックスを印刷し、その上にメタルマスクを利用してはんだボールを載せてリフローする方法や、ポストにはんだペーストを印刷してリフローする方法等を挙げることができる。
【0088】
このようにして得られたウェハーをダイシングにより個片化すると、ポストとバンプからなる金属製の電極を備えたCSPを得ることができる。このCSPは、密着性が良く、線膨張係数も適切な電子部品用液状エポキシ樹脂組成物が用いられ、また反りが小さいため内部応力が低く、温度サイクル性や耐湿信頼性に優れている。
【0089】
また本発明の電子装置として、半導体素子と、回路基板(インターポーザ)との間を電子部品用液状エポキシ樹脂組成物で封止することによりフリップチップ実装による半導体装置を製造することができる。
【0090】
例えば、回路形成されたFRグレードやセラミック基板等のインターポーザの上面部のパッド電極にバンプを介してベアチップの半導体素子を接続する。例えば、はんだバンプを有する表面実装用ICチップなどの電子部品と電子部品搭載用基板とのはんだバンプ接合を、遠赤外線を使用したリフロー装置で行う。
【0091】
次いでバンプ間の隙間に電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を塗布、充填する。例えば、ディスペンサからの吐出によるポッティング封止、アンダーフィル封止、加圧と加熱を同時に行う圧接封止、マスクやスクリーンを用いた印刷による封止等により塗布、充填を行うことができる。
【0092】
そして、充填終了後、熱風循環乾燥機やトンネル炉等により、充填した電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させて、半導体素子とインターポーザとの隙間を封止する。これによりフリップチップ実装による半導体装置を製造することができる。電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の加熱硬化の条件は、特に限定されないが、例えば、100〜170℃、0.5〜5時間とすることができる。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
表1に示す配合量(質量部)で各成分を配合し、常法に従って撹拌、溶解、混合、分散を行うことにより、実施例および比較例の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0095】
表1に示す配合成分として、以下のものを用いた。
【0096】
(エポキシ樹脂)
常温で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製「エピコート806」、エポキシ当量 165
(エポキシ樹脂の硬化剤)
フェノール系硬化剤、アリル化フェノールノボラック、明和化成工業株式会社製「MEH8000−4L」、水酸基当量 141
(エポキシ樹脂の硬化促進剤)
2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製「キュアゾール 2E4MZ」
(2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物)
室温硬化型の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、主剤成分「KE−1031A」、硬化剤成分「KE−1031B」)を用いた。80〜150℃に加熱した主剤成分100質量部に硬化剤成分50〜200質量部を添加し、90〜120分攪拌して反応させ、ヒドロシリル化反応生成物を得た。主剤成分100質量部に対してシリコーンゴム組成物aは硬化剤成分50質量部、シリコーンゴム組成物bは硬化剤成分70質量部、シリコーンゴム組成物cは硬化剤成分150質量部、シリコーンゴム組成物dは硬化剤成分200質量部を添加した。
【0097】
このようにして得られた実施例および比較例の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を用いて次の評価を行った。
【0098】
[保存安定性]
B8H型粘度計(東京計器(株)製)を用いて、電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を調製した直後の粘度(初期粘度)と、常温(25℃)で24時間放置後の粘度を測定し、
粘度上昇率を次式により算出した。
(粘度上昇率)=(24時間放置後の粘度)/(初期粘度)
【0099】
粘度上昇率に基づき保存安定性を次の基準により評価した。
○:粘度上昇率2倍未満
△:粘度上昇率2倍以上2.5倍未満
【0100】
[硬化収縮率]
電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を100℃、1時間の条件でφ50×3mmの円盤状に成形した。得られた円盤の初期質量と水中での質量を測定し、硬化収縮率を算出し、次の基準により評価した。
○:硬化収縮率2.0%未満
△:硬化収縮率2.0%以上2.5%未満
×:硬化収縮率2.5%以上
【0101】
[耐薬品性]
上記の硬化収縮率の測定と同様に円盤を成形し、これをNMPに浸漬し、常温で336時間放置した。放置後の質量変化率を算出し、次の基準により評価した。
○:質量変化率−1.0%以上1.0%未満
△:質量変化率−2.0%以上−1.0%未満または1.0%以上2.0%未満
【0102】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0103】
表1より、常温で液状のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、エポキシ樹脂の硬化促進剤、および主剤成分と硬化剤成分との2液を混合して得られる室温硬化型の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のヒドロシリル化反応生成物を配合して電子部品用液状エポキシ樹脂組成物を調製した実施例1〜10は、ヒドロシリル化反応生成物を配合しなかった比較例1に比べて硬化物の耐薬品性、保存安定性は概ね良好であり、硬化収縮も抑制された。
【0104】
特に、主剤成分と硬化剤成分との配合比を100:70〜100:150の範囲内とした実施例1〜8では電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐薬品性を高めることができた。
【0105】
さらに電子部品用液状エポキシ樹脂組成物におけるヒドロシリル化反応生成物の含有量は、常温で液状のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤との合計量に対して30〜60質量%の範囲内とした実施例1〜4では、保存安定性を高めることができ、かつ硬化収縮を特に抑制することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液状のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、エポキシ樹脂の硬化促進剤、および主剤成分と硬化剤成分との2液を混合して得られる室温硬化型の2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のヒドロシリル化反応生成物を含有することを特徴とする電子部品用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記2液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のヒドロシリル化反応生成物の含有量は、前記常温で液状のエポキシ樹脂と前記エポキシ樹脂の硬化剤との合計量に対して30〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂の硬化剤は、フェノール系硬化剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
電子部品と、この電子部品の表面の少なくとも一部に形成された請求項1ないし3いずれか一項に記載の電子部品用液状エポキシ樹脂組成物の硬化層とを含むことを特徴とする電子装置。

【公開番号】特開2012−201696(P2012−201696A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64483(P2011−64483)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】