説明

電子部品用熱硬化性樹脂組成物

【課題】柔軟性に優れるとともに、エポキシ樹脂との相溶性が良く、高い耐熱性を有する電子部品用熱硬化性樹脂組成物、該電子部品用熱硬化性樹脂組成物を用いた接着シート及び樹脂付銅箔を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、及び、少なくともビニルアルコール単位、アセタール単位、アセチル単位及び架橋性を有する基を含有する構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する電子部品用熱硬化性樹脂組成物、該電子部品用熱硬化性樹脂組成物を用いた接着シート及び樹脂付銅箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用熱硬化性樹脂組成物、該電子部品用熱硬化性樹脂組成物をシート状にして得られる接着シート、及び、該電子部品用熱硬化性樹脂組成物又は接着シートを用いて得られる樹脂付銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂付銅箔は、銅箔の表面にプリント配線板の絶縁層を構成する樹脂層を備えたものであり、銅箔の表面に樹脂組成物を塗工し、乾燥することで、銅箔の表面に半硬化状態の樹脂層を形成したものである。この樹脂付銅箔は、1枚のシートで絶縁層と導体層とを同時形成出来るものであり、分離した状態でのプリプレグと銅箔とを用いなくとも、プリント配線板の製造の可能な材料として、広く使用されている。
【0003】
樹脂付銅箔の樹脂層に使用される樹脂組成物としては、特許文献1に開示されているように、プリント配線板の絶縁層構成材として、一般的に使用されているエポキシ樹脂及びその硬化剤を主成分として含有するものが用いられていた。ところが、エポキシ樹脂は、総じて低分子化合物であり、プレス加工の際の加熱圧縮時に流動性が大きくなり、絶縁層の厚み精度が悪いという欠点を有していた。
この問題を解決するため、特許文献2には、エポキシ樹脂よりも分子量が大幅に高く、エポキシ樹脂との相溶性にも優れるポリビニルアセタール樹脂を添加して樹脂付銅箔の樹脂層の流動性を制御する方法が提案されている。ポリビニルアセタール樹脂は、上記の樹脂流動性を制御する働きに加えて柔軟性に優れているので、樹脂付銅箔の樹脂層に生じる割れや樹脂層剥離を防止する効果が高い点でも優れている。
【0004】
ところが、ポリビニルアセタール樹脂にも耐熱性が低いという欠点があった。従って、ポリビニルアセタール樹脂を主成分として含んだ樹脂組成物を用いて樹脂層を構成した樹脂付銅箔を使用して、プリント配線板を製造すると、プリント配線板の製造過程に存在するハンダ付け等の熱処理に対する耐久性が低下するという問題が生じていた。
【0005】
このような問題に対して、特許文献3には、ウレタン樹脂をポリビニルアセタール樹脂の架橋剤として使用することが提案されている。
また、特許文献4には、ポリビニルアセタール樹脂の分子内に、カルボキシル基等のエポキシ樹脂との反応性を有する官能基を導入することで、エポキシ樹脂を架橋させて、より耐熱性を向上させる方法も提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献4に記載のポリビニルアセタール樹脂は、エポキシ樹脂との相溶性が充分ではないため、エポキシ樹脂との間にミクロな層分離が生じてしまい、厚み精度が悪化したり、電気特性が悪化したりする等の不具合が生じていた。特に、耐熱性を向上させるために、エポキシ樹脂としてノボラック型エポキシ樹脂を用いた場合に相溶性の問題が顕著となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−304360号公報
【特許文献2】特開平9−246730号公報
【特許文献3】特開平8−204343号公報
【特許文献4】特開平11−5828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、柔軟性に優れるとともに、エポキシ樹脂との相溶性が良く、高い耐熱性を有する電子部品用熱硬化性樹脂組成物、該電子部品用熱硬化性樹脂組成物を用いた接着シート及び樹脂付銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする電子部品用熱硬化性樹脂組成物である。
【0010】
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは下記一般式(5)、及び/又は(6)で表される官能基を有する基を表す。
【0011】
【化2】

以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明者は、鋭意検討の結果、所定の構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂をエポキシ樹脂と併用することにより、ポリビニルアセタール樹脂が有する優れた柔軟性を実現しつつ、耐熱性及びエポキシ樹脂との相溶性の問題も大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含有する。
【0014】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されないが、一分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。また、上記エポキシ樹脂は、例えば、シリコーン骨格、ウレタン骨格、ポリイミド骨格、ポリアミド骨格等を有していてもよく、また、臭素原子、リン原子、硫黄原子、窒素原子等を含んでいてもよい。
【0015】
上記エポキシ樹脂としては、一分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を使用することができ、具体的には例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、及び、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等のグリシジエルエーテル型エポキシ樹脂や、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート及びテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記硬化剤としては、室温で活性が低く、かつ、加熱により硬化する硬化剤が好ましい。また、硬化剤のなかでは潜在性硬化剤がより好ましい。このような硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0017】
また、本発明では、上記エポキシ樹脂及び硬化剤との反応を促進するため、硬化促進剤が含まれていてもよい。上記硬化促進剤としては、例えば、3級アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。
【0018】
本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物は、変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する。
【0019】
【化3】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは下記一般式(5)及び/又は(6)で表される官能基を有する基を表す。
【0020】
【化4】

【0021】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記一般式(4)で表される構造単位を有することで、加熱により硬化剤を介して他の分子中の官能基やエポキシ樹脂の官能基と架橋構造を形成する。これにより、本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物を樹脂付銅箔の樹脂層に使用した場合、樹脂層は耐熱性を有しつつ、適度な柔軟性を有するものとなる。
更に、上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂が本来有する性能を損ねることがないことから、エポキシ樹脂との相溶性や流動性にも優れるものとなる。
【0022】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量の好ましい下限は17モル%、好ましい上限は40モル%である。上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量が17モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に対する溶解性が低下することがある。上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量が40モル%を超えると、吸湿しやすくなるため、保存安定性が悪くなることがある。
【0023】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は80モル%である。上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量が40モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に不溶となることがある。上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量が80モル%を超えると、残存水酸基量が少なくなって得られる架橋ポリビニルアセタール樹脂の強度が低下することがある。また、上記一般式(2)で表されるアセタールの構造単位において、Rはメチル基及び/又はプロパノール基であることが好ましく、なかでもRがメチル基であることがより好ましい。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0024】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるアセチル単位の含有量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は25モル%である。上記範囲を超えると、原料のポリビニルアルコールの溶解性が低下し、アセタール化反応が困難となる。
【0025】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位は、架橋性を有しており、加熱を行うことで、他の分子中の官能基と架橋構造を形成する。これにより、本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物は、形状保持性及び耐熱性を有しつつ、適度な柔軟性を有するものとなる。
【0026】
上記一般式(4)で表される構造単位において、Rは、下記一般式(5)及び/又は(6)で表される官能基を有する基である。
【0027】
【化5】

【0028】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位の含有量の好ましい下限は0.01モル%、好ましい上限は30モル%である。上記一般式(4)で表される構造単位の含有量が0.01モル%未満であると、架橋構造が形成されることによる効果が充分に得られないことがあり、30モル%を超えると、室温での安定性に劣ることがある。
【0029】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。より好ましい下限は1500、より好ましい上限は4000である。重合度を上記範囲内とすることにより、得られる架橋体が形状保持性、耐熱性等に優れるものとなる。
【0030】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては、例えば、上記Rが一般式(5)で表される基である変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する場合、β−ジカルボニル基を有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法、未変性のポリビニルアルコールをアセタール化した後、β−ジカルボニル基を付加させる方法等が挙げられる。好ましくは、β−ジカルボニル基を有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法である。
上記β−ジカルボニル基の付加方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に4−メチレン−2−オキセタノン等を添加する方法等が挙げられる。
【0031】
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下で変性ポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0032】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒドを単独で用いるか、又は、アセトアルデヒドとブチルアルデヒド等の他のアルデヒドとを併用することが好ましい。
【0033】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。
【0034】
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
【0035】
本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物中の上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量は特に限定されないが、電子部品用熱硬化性樹脂組成物の総量100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量が0.5重量部未満であると、柔軟性が不充分となることがあり、50重量部を超えると、耐熱性に劣るおそれがある。
【0036】
本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物では、必要に応じて、難燃助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤のような添加剤を添加してもよい。
【0037】
本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、上記エポキシ樹脂、硬化剤、変性ポリビニルアセタール樹脂及び必要に応じて添加する硬化促進剤、有機溶剤、各種添加剤をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0038】
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機溶剤の使用量は特に限定されず、従来から使用されている量とすることができる。
【0039】
本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物は、銅や金、銀等の金属と接する電子部品の用途に好適に用いることができる。このような電子部品としては、例えば、樹脂付銅箔、銅張積層板、異方性導電材料、フレキシブルプリント基板(FPC)等が挙げられる。
なかでも、本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物は、樹脂付銅箔の樹脂層に特に好適に使用することができる。また、このような本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物を、ワニスにして銅箔の表面に塗工し、乾燥炉等で乾燥し、樹脂層を形成することで樹脂付銅箔を製造することができる。このような樹脂付銅箔もまた本発明の1つである。
本発明の樹脂付銅箔では、上記変性ポリビニルアセタール樹脂が架橋状態となり、エポキシ樹脂は半硬化状態となる。
本発明の樹脂付銅箔を、通常の銅箔と同様にして用いて銅張積層板を製造し、この銅張積層板を用いてエッチング加工等を施すことによりプリント配線板が得られる。具体的には例えば、本発明の樹脂付銅箔を、所定の内層コア材と積層し、熱間成形プレス加工し、回路形成、レーザーによるバイアホールの形成等の工程を経て、多層プリント配線板が得られる。また、本発明の樹脂付銅箔は、多層配線板、半導体チップ搭載基板、半導体パッケージ基板等の材料として用いることができる。
【0040】
本発明の電子部品用熱硬化性樹脂組成物を、銅箔の表面に塗工する方法としては特に限定されず、例えば、エッジコータ、グラビアコータ、スピンコータ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、柔軟性に優れるとともに、エポキシ樹脂との相溶性が良く、高い耐熱性を有する電子部品用熱硬化性樹脂組成物、該電子部品用熱硬化性樹脂組成物を用いた接着シート及び樹脂付銅箔を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度1700、ケン化度99モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位含有量が2モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸10重量部を加え、更にアセトアルデヒド26重量部を添加した。次に、10℃まで冷却し、アセトアルデヒド40重量部を加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸60重量部を加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0044】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量(上記一般式(1)で表される構造単位含有量)は30モル%、アセタール単位含有量(上記一般式(2)で表される構造単位含有量)は67モル%、アセチル単位含有量(上記一般式(3)で表される構造単位含有量)は1モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)は2モル%であった。
【0045】
(樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂15重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、ジャパンエポキシレジン社製)65重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−220、東都化成社製)20重量部、硬化剤としてジアミン化合物(MXDA、三菱ガス化学製)1重量部をメチルエチルケトン:トルエン=1:1溶媒に添加して溶解させ樹脂組成物を得た。
【0046】
(実施例2)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度1700、ケン化度99モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量が4モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸10重量部を加え、更にアセトアルデヒド26重量部を添加した。次に、10℃まで冷却し、アセトアルデヒド40重量部を加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸60重量部を加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0047】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は22モル%、アセタール単位含有量は73モル%、アセチル単位含有量は1モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)は4モル%であった。
【0048】
(樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0049】
(実施例3)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度3500、ケン化度99モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量が2モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸10重量部を加え、更にアセトアルデヒド26重量部を添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド36重量部を加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸60重量部を加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は24モル%、アセタール単位含有量は73モル%(アセトアセタール基53モル%、ブチラール基20モル%)、アセチル単位含有量は1モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)は2モル%であった。
【0050】
(樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂30重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、ジャパンエポキシレジン社製)50重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−220、東都化成社製)20重量部、硬化剤としてジアミン化合物(MXDA、三菱ガス化学製)1重量部をメチルエチルケトン:トルエン=1:1溶媒に添加して溶解させ樹脂組成物を得た。
【0051】
(実施例4)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度2000、ケン化度85モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量が3モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸10重量部を加え、更にアセトアルデヒド26重量部を添加した。次に、10℃まで冷却し、アセトアルデヒド33重量部を加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸60重量部を加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0052】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は30モル%、アセタール単位含有量は52モル%、アセチル単位含有量は15モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)は3モル%であった。
【0053】
(樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0054】
(実施例5)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度2000、ケン化度99モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位含有量が5モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸10重量部を加え、更にアセトアルデヒド30重量部を添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド15重量部を加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸60重量部を加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0055】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は25モル%、アセタール単位含有量は69モル%(アセトアセタール基54モル%、ブチラール基15モル%)、アセチル単位含有量は1モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)は5モル%であった。
【0056】
(樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0057】
(比較例1)
(ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度2000、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸10重量部を加え、更にアセトアルデヒド26重量部を添加した。次に、10℃まで冷却し、アセトアルデヒド40重量部を加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸60重量部を加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂は、残存水酸基量が23モル%、アセタール単位含有量が76モル%、アセチル単位含有量が1モル%であった。
【0058】
(樹脂組成物の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0059】
(比較例2)
(樹脂組成物の作製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、ジャパンエポキシレジン社製)65重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−220、東都化成社製)20重量部、硬化剤としてイミダゾール化合物(キュアゾールC17Z、四国化成工業製)1重量部をメチルエチルケトン:トルエン=1:1溶媒に添加して溶解させ樹脂組成物を得た。
【0060】
(比較例3)
(ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度500、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸10重量部を加え、更にアセトアルデヒド30重量部を添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド25重量部を加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸60重量部を加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂は、残存水酸基量が35モル%、アセタール単位含有量が64モル%(アセトアセタール基:20モル%、ブチラール基:44モル%)、アセチル単位含有量が1モル%であった。
【0061】
(樹脂組成物の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0062】
(比較例4)
(ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度2000、ケン化度99モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸10重量部を加え、更にアセトアルデヒド26重量部を添加した。次に、10℃まで冷却し、アセトアルデヒド40重量部を加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸60重量部を加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂は、残存水酸基量が25モル%、アセタール単位含有量が73モル%、アセチル単位含有量が1モル%、カルボン酸変性官能基が1モル%であった。
【0063】
(樹脂組成物の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いたことと、乾燥温度を120℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0064】
(評価)
(プリプレグおよび銅張積層板の作製)
実施例1〜5、比較例1〜4で作製した樹脂組成物を厚さ0.028mmのガラスクロスに含浸後、140℃で10分間加熱、乾燥させてプリプレグを得た。得られたプリプレグの両側に厚さ12μmの電解銅箔を接着面がプリプレグと合わさるようにして重ね、180℃、60分、3MPaのプレス条件で銅張積層板を作製した。得られたプリプレグ又は銅張積層板を用い、以下に示す評価を行った。
【0065】
(1)可とう性(柔軟性)
得られた銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去した後、銅張積層板を90°曲げて戻した後の状態を確認することにより、以下の基準で可とう性(柔軟性)を評価した。
○:破断なし
×:クラック、破断あり
【0066】
(2)耐熱性
得られた銅張積層板を260℃のはんだ浴に1分間浸した後、異常(ふくれ又は剥がれ)の発生を以下の基準で評価した。
○:異常なし
×:異常あり
【0067】
(3)相溶性
得られたプリプレグが透明か否かを目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○:透明
×:白濁、半透明
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、柔軟性に優れるとともに、エポキシ樹脂との相溶性が良く、高い耐熱性を有する電子部品用熱硬化性樹脂組成物、該電子部品用熱硬化性樹脂組成物を用いた接着シート及び樹脂付銅箔を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、及び、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする電子部品用熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは下記一般式(5)、及び/又は(6)で表される官能基を有する基を表す。
【化2】

【請求項2】
樹脂付銅箔の樹脂層に用いられることを特徴とする請求項1記載の電子部品用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2記載の電子部品用熱硬化性樹脂組成物をシート状にすることにより得られることを特徴とする接着シート。
【請求項4】
請求項2記載の電子部品用熱硬化性樹脂組成物又は請求項3記載の接着シートと、銅箔とを用いて得られることを特徴とする樹脂付銅箔。


【公開番号】特開2011−195805(P2011−195805A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170790(P2010−170790)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】