説明

電子部品移送装置および電子部品移送方法

【課題】電子部品どうしの付着を防止することで、電子部品を円滑に所定の場所に移送することのできる電子部品移送装置および電子部品移送方法の提供。
【解決手段】略直方体形状の電子部品を搬送する搬送面を備えた振動フィーダと、前記搬送面の下流端である移送領域に到達した電子部品を吸着して通信用アンテナが形成されたアンテナフィルムに移送するための移送機構と、前記搬送面上の電子部品の姿勢を検知する検知部と、搬送面上の電子部品の姿勢を変更するための姿勢変更部と、前記検知部からの電子部品の姿勢信号に基づいて、前記通信用アンテナに電気的に接続され得る状態で前記移送機構に吸着される適正姿勢の電子部品と該適正姿勢とは表裏逆姿勢である不適正姿勢の電子部品とが前記搬送面上で搬送方向に交互に並ぶように、前記姿勢変更部の駆動を制御する制御部と、前記不適正姿勢の電子部品を前記移送領域において排除する排除部とを備える電子部品移送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばICチップ等の電子部品を通信用アンテナが形成されたアンテナフィルムに移送する(供給する)電子部品移送装置および電子部品移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ICチップ等の電子部品を通信用アンテナが形成されたアンテナフィルムに実装した電子部品実装体を製造するための実装体製造装置が種々提案されており(特許文献1)、該実装体製造装置は、ICチップをアンテナフィルムに向けて移送するための電子部品移送装置を備えている。
【0003】
該電子部品移送装置は、ICチップを載せて搬送する搬送面を有する振動フィーダと、該振動フィーダにより搬送されてきたICチップを1個ずつ吸着してアンテナフィルムに向けて移送する移送機構とを備えている。
【0004】
振動フィーダでは、適正な姿勢にあるICチップは、そのままの姿勢で搬送面の下流側の移送領域に至るよう搬送され、不適正な姿勢にあるICチップは、適正な姿勢に変更されて前記移送領域に至るよう搬送される。そして移送機構では、搬送面の移送領域に到着したICチップが順に一個ずつ吸着されて、アンテナフィルムに移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−309541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般にICチップ等の、少なくとも一面に回路が形成された略直方体形状の電子部品は、ウエハの回路面の反対側面を接着剤により支持シート上に保持してこれをダイシングし、ダイシング済のウエハに対して紫外線を照射することにより前記接着剤の接着力を弱めて個々に支持シートから剥離することで得られる。
【0007】
しかしながら、支持シートから剥離したICチップには、前記反対側面(特に、該反対側面の稜部分)に接着剤が付着していることが多く、この接着剤の接着力は紫外線によっても完全には失われることなく残留していることが分っている。また、ICチップはウエハの回路面の反対側面を接着剤により支持シート上に保持して形成されるので、支持シートから個々に剥離した各ICチップに付着している接着剤は同一面側(つまり、前記反対側面)に付着している。
【0008】
ところで上記した通り、電子部品移送装置の振動フィーダは、ICチップを適正な姿勢、すなわち同一姿勢で移送領域に至るよう搬送する。しかし、接着剤は各ICチップにおいて同一面側に残るよう付着しているから、前記同一姿勢で隣り合うICチップどうしの残留した接着剤も隣り合うこととなり、該接着剤の接着力により、当該ICチップどうしが付着してしまう場合が生じる。特に、振動フィーダの移送領域やその上流側近傍では、上流側のICチップが下流側のICチップを下流側へ押し遣ろうと密着した状態にあるから、かかる押し遣る力によって、ICチップどうしがいっそう付着し易くなる。
【0009】
そして、複数付着してしまったICチップは、搬送面の移送領域にあっても移送機構で吸着することができず、そうなるとICチップをアンテナフィルムに移送することができなくなってしまう。
【0010】
なお、かかる課題は、電子部品がICチップである場合に限らず、半導体などの電子部品(微小な電子部品では特に付着し易い)を搬送して移送機構で吸着することで所定の場所に対して移送するようにした移送装置全般の課題である。
【0011】
本発明は上記課題に鑑み、電子部品どうしの付着を防止することで、電子部品を円滑に所定の場所に移送することのできる電子部品移送装置および電子部品移送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、略直方体形状の電子部品を搬送する搬送面を備えた振動フィーダと、前記搬送面の下流端である移送領域に到達した電子部品を吸着して通信用アンテナが形成されたアンテナフィルムに移送するための移送機構と、前記搬送面上の電子部品の姿勢を検知する検知部と、搬送面上の電子部品の姿勢を変更するための姿勢変更部と、前記検知部からの電子部品の姿勢信号に基づいて、前記通信用アンテナに電気的に接続され得る状態で前記移送機構に吸着される適正姿勢の電子部品と該適正姿勢とは表裏逆姿勢である不適正姿勢の電子部品とが前記搬送面上で搬送方向に交互に並ぶように、前記姿勢変更部の駆動を制御する制御部と、前記不適正姿勢の電子部品を前記移送領域において排除する排除部とを備えることを特徴としている。
【0013】
上記構成において、制御部が、検知部からの電子部品の姿勢信号に基づいて、前記通信用アンテナに電気的に接続され得る状態で前記移送機構に吸着される適正姿勢の電子部品と該適正姿勢とは表裏逆姿勢である不適正姿勢の電子部品とが前記搬送面上で搬送方向に交互に並ぶように、前記姿勢変更部の駆動を制御するから、搬送面上で隣り合う電子部品の同一面どうしが隣り合わず、したがって電子部品の反対面に接着剤が残留していても電子部品どうしは付着することなく移送領域に向けて搬送され、移送領域に適正姿勢で到着した電子部品は移送機構により吸着されてアンテナフィルムに移送されて通信用アンテナに電気的に接続され、不適正姿勢の電子部品は排除部により排除されるよう捌かれる。
【0014】
また、本発明は、略直方体形状の電子部品を振動フィーダの搬送面の下流端部の移送領域まで搬送し、該移送領域に到達した電子部品を吸着して通信用アンテナが形成されたアンテナフィルムに移送する電子部品移送方法であって、前記搬送面上を搬送されている電子部品の姿勢を検知し、検知した姿勢信号に基づいて、所定の電子部品の姿勢を該電子部品の一つ下流側の電子部品の姿勢と表裏逆の姿勢にすることで、前記通信用アンテナに電気的に接続され得る状態で吸着される適正姿勢の電子部品と適正姿勢とは表裏逆姿勢である不適正姿勢の電子部品とを前記搬送面上の搬送方向に交互に並べ、前記移送領域まで搬送されてきた前記不適正姿勢の電子部品を該移送領域において排除することを特徴としている。
【0015】
本発明の電子部品移送方法によれば、前記搬送面上を搬送されている電子部品の姿勢を検知して得られる姿勢信号に基づいて、所定の電子部品の姿勢を該電子部品の一つ下流側の電子部品の姿勢と表裏逆の姿勢にすることで、前記通信用アンテナに電気的に接続され得る状態で吸着される適正姿勢の電子部品と適正姿勢とは表裏逆姿勢である不適正姿勢の電子部品とを前記搬送面上の搬送方向に交互に並べるから、搬送面上で隣り合う電子部品の同一面どうしが隣り合わず、したがって電子部品の反対面に接着剤が残留していても電子部品どうしを付着させることなく移送領域に向けて搬送することができ、移送領域に適正姿勢で到着した電子部品を吸着してアンテナフィルムに移送して電気的に接続させ、移送領域まで搬送されてきた不適正姿勢の電子部品を該移送領域において排除する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子部品移送装置および電子部品移送方法によれば、適正姿勢の電子部品と不適正姿勢の電子部品とを搬送方向に隣り合うように交互に並べて搬送するから、隣り合う電子部品の同一面に接着剤が残留していても電子部品どうしを付着させることなく移送領域に向けて搬送することができ、移送領域に適正姿勢で到着した電子部品を吸着してアンテナフィルムに移送し、不適正姿勢の電子部品を移送領域において排除することで、電子部品を滞らせることなく円滑に、通信用アンテナが形成されたアンテナフィルムに移送することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るICチップ実装体の製造装置の全体概略構成を表す斜視図である。
【図2】同パーツフィーダの側面図である。
【図3】同パーツフィーダの平面図である。
【図4】同ICチップ実装体の製造装置の移送装置における同期ローラと搬送溝の関係を表した側面図である。
【図5】同移送装置における同期ローラと、クロックローラの関係を表した正面図である。
【図6】同移送装置における搬送部の平面図である。
【図7】同図6におけるA−A線断面図矢視図である。
【図8】同図6におけるB−B線断面図矢視図で、(a)はB1−B1線断面矢視図、(b)はB2−B2線断面矢視図、(c)はB3−B3線断面矢視図である。
【図9】同図6におけるC−C線断面矢視図で、(a)はC1―C1線断面矢視図、(b)はC2−C2線断面矢視図である。
【図10】同移送装置における制御ブロック図である。
【図11】同移送装置における制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る電子部品移送装置および電子部品移送方法を、図面に基づいて説明する。電子部品移送装置(以下単に「移送装置」と称する)1について説明する。移送装置1は、電子部品実装体の製造装置2に組み込まれて用いられる。
【0019】
まず、図1および図2に基づいて、製造装置2の全体概略構成を説明する。製造装置2はICチップ実装体3を製造する装置である。ICチップ実装体3は、通信用アンテナ4aが表面に形成されたアンテナフィルム4にICチップWが実装されてなる。ICチップWは微小な略直方体形状であり、その片面である裏面は、回路パターンとバンプWaが形成されたバンプ面Wbであり、反対側の表面Wcは単純な平面に形成されている(図5参照)。
【0020】
製造装置2は、アンテナフィルム供給部5と、移送装置1と、保護紙供給部6と、接着剤キュア部7と、保護紙巻取部8と、製品テスト部9と、製品巻取部10とを備えている。
【0021】
アンテナフィルム供給部5は、通信用アンテナ4aが形成されたアンテナフィルム4を巻取ったロール11からアンテナフィルム4を供給する部分である。移送装置1は、アンテナフィルム4に、ICチップWを移送(供給)して接着剤Sにより設置する部分である。
【0022】
保護紙供給部6は、ICチップWが設置されたフィルム体を被覆する保護紙12を供給してアンテナフィルム4に重ねる部分である。接着剤キュア部7は、加熱により、アンテナフィルム4にICチップWを接着する接着剤Sを硬化させる部分である。保護紙巻取部8は、アンテナフィルム4に重ねた保護紙12を剥がして巻取る部分である。製品テスト部9は、ICチップWが実装されたアンテナフィルム4に必要な回路が構成されているかどうかを検査する部分である。製品巻取部10は、ICチップWが実装されたアンテナフィルム4をロール状に巻取る部分である。
【0023】
次に、移送装置1の構成について詳述する。図1及び2に示すように、移送装置1は、パーツフィーダ(振動フィーダに相当する)13と、撮像部(CCDカメラ)14と、同期ローラ15および同期ローラ駆動部16からなる移送機構17とから構成されている。
【0024】
パーツフィーダ13は、ICチップを収容するボウルフィーダ18と、ボウルフィーダ18から供給されてくるICチップWを一定速度で一定方向に搬送するリニアフィーダ19とから構成されている。ボウルフィーダ18はICチップWをリニアフィーダ19に向けて搬送するための螺旋状のトラック面(図示せず)を有している。
【0025】
図2および図3に示すように、リニアフィーダ19は、ステージ20上に設置される防振台21と、防振台21上に設置される搬送供給用振動部22と、搬送供給用振動部22から与えられる振動によって、ボウルフィーダ18から送り出されたICチップWを姿勢調整しつつ搬送方向に整列させて搬送する搬送部(トラフ)23とを備える。
【0026】
パーツフィーダ13は、同期ローラ15で吸着される適正姿勢に姿勢調整されない不適正姿勢のICチップWを、同期ローラ15で吸着しないよう(吸着されるまでに)ボウルフィーダ18に戻す戻し部(排除部に相当する)24に形成された戻し溝25において、ボウルフィーダ18に戻すことができるよう構成されている。
【0027】
次に、搬送部23について説明する。図6に示すように、搬送部23は、受部41と、初期姿勢調整部42と、第一整列部43と、整列後姿勢調整部44と、第二整列部45と、保持部46とを一体化して構成されている。
【0028】
受部41では、ボウルフィーダ18から送り出されたICチップWを受け取る。初期姿勢調整部42では、受部41により受け取られて搬送されたICチップWの姿勢を整えつつ搬送する。第一整列部43では、初期姿勢調整部42により姿勢調整されて搬送されたICチップWを、搬送方向に沿って整列させつつ搬送する。整列後姿勢調整部44では、第一整列部43で整列されたICチップWの姿勢を整えつつ搬送する。第二整列部45では、整列後姿勢調整部44により姿勢調整されて搬送されたICチップWを、搬送方向に沿って整列させつつ搬送する。保持部46では、第二整列部45にて整列されたICチップWの姿勢を保持しつつ搬送する。
【0029】
搬送部23には、ボウルフィーダ18から送り出されたICチップWを、所定の姿勢になるよう整える(誘導する)とともに、搬送方向に整列させた状態で保持しつつ同期ローラ15まで搬送するための搬送溝60が形成されている。ボウルフィーダ18から送出されたICチップWは、搬送部23に形成されている搬送溝60内に収容され、搬送供給用振動部22からの振動によって搬送溝60に沿って搬送部23の一端部側(上流側)から他端部側(下流側)へ搬送され、搬送途中で姿勢調整されるとともに搬送方向に整列させられ、その姿勢が保持される。
【0030】
搬送溝60は、ICチップWの搬送を円滑に行い得るように滑面に形成され、搬送部23に上方開口となるように形成されており、搬送部23の一端部から他端部全域に亘って形成されている。尚、この搬送溝60を形成する滑面と前記ボウルフィーダ18のトラック面とで、ICチップWを搬送する搬送面が構成されている。図6に示すように、搬送溝60は、受溝61と、初期姿勢調整溝62と、第一整列溝63と、整列後姿勢調整溝64と、第二整列溝65と、保持溝66と、下流端部を移送領域69Aとした移送溝69から構成されている。
【0031】
受溝61は受部41に形成され、ボウルフィーダ18に形成された送出溝18A(図3参照)から送出されたICチップWを受け取って搬送する。受溝61は、搬送方向上流側が上方開口した断面略U字状が下流側になるにつれて徐々に上方開口した断面略V字状となるように構成されている。すなわち受溝61は、上方開口したU受溝(図示せず)の下流側に連続して上方開口した断面略V字状のV受溝612を備えてなる(図7参照)。
【0032】
初期姿勢調整溝62は受溝61の下流側に連続して初期姿勢調整部42に形成され、受溝61により受け取られて搬送されたICチップWの姿勢を整えつつ搬送するV型溝である(図8(a),(b)参照)。
【0033】
初期姿勢調整溝62は、その基準線62CとV受溝612の基準線612C(図7参照)とが一致し、且つ互いの支持点612P,62Pが一致した状態で、V受溝612の下流側に連続している。V受溝612の第一受斜面6121及び第一初期斜面621と、第二受斜面6122及び第二初期斜面622とは、それぞれ同一面となっている。初期姿勢調整溝62は、その断面形状がV受溝612の断面形状と同じ形状であり、図8(a)に示すように、断面形状が上方開口した略V字状である。そして、水平方向に対して所定角度傾斜した第一初期斜面621と、第一初期斜面621の下端部に接続され、水平方向に対して第一初期斜面621の傾斜方向とは反対方向に傾斜して第一初期斜面621と共にV字形状をなす第二初期斜面622とを備えてなる。
【0034】
第一整列溝63は第一整列部43に形成され、初期姿勢調整溝62により姿勢調整されて搬送されたICチップWを搬送方向に沿って整列させつつ搬送するためのU型溝である(図8(c)参照)。第一整列溝63は、その断面形状が上方開口した略U字状であり、U形状の底面である第一整列面630が湾曲した曲面で構成されている。
【0035】
整列後姿勢調整溝64は整列後姿勢調整部44に形成され、第一整列溝63で整列されたICチップWの姿勢を整えつつ搬送するためのV型溝である(図9(a)(b)参照)。整列後姿勢調整溝64は、断面形状が上方開口した略V字状であり、水平方向に対して所定角度傾斜した第一斜面としての第一整列後斜面641と、第一整列後斜面641の下端部に接続され、水平方向に対して第一整列後斜面641の傾斜方向とは反対方向に傾斜して第一整列後斜面641と共にV字形状をなす第二斜面としての第二整列後斜面642とを備えてなる。
【0036】
第二整列溝65は第二整列部45に形成され、整列後姿勢調整溝64により姿勢調整されて搬送されたICチップWを搬送方向に沿って整列させつつ搬送するためのU型溝である。保持溝66は保持部46に形成され、第二整列溝65にて整列されたICチップWの姿勢を保持しつつ搬送するためのV型溝である。初期姿勢調整溝62と整列後姿勢調整溝64と保持溝66は、ICチップWの一稜線Aを支持可能な上方開口した断面略V字状の溝である(図8(a)(b)、図9参照)。第一整列溝63と第二整列溝65は、ICチップWの隣り合う平行な稜線A,Aを支持可能な上方開口した断面略U字状の溝である(図8(c)参照)。
【0037】
保持溝66のさらに下流側には、ICチップWが移送機構17によって吸着される前記移送領域69A(図4参照)を備えた移送部69Bが、連結されている。なお、移送溝69を除く搬送溝60を構成する各溝は、搬送方向上流側から下流側へ順に並んで連続して搬送部23の一端部から他端部に亘る一体の溝である。
【0038】
初期姿勢調整溝62及び第一整列溝63と、整列後姿勢調整溝64及び第二整列溝65は、それぞれ、搬送方向上流側から下流側へ向けて断面略V字状の溝から断面略U字状の溝へ徐々に切換るVU切換部67を介して連続している。第一整列溝63及び整列後姿勢調整溝64と、第二整列溝65及び保持溝66は、それぞれ、搬送方向上流側から下流側へ向けて断面略U字状の溝(U型溝)から断面略V字状の溝(V型溝)へ徐々に切換るUV切換部68を介して連続している。
【0039】
移送領域69Aは、ICチップWの長手方向(搬送方向)の距離よりもわずかに長い距離に設定されている。そして、移送領域69Aにおける下流側端部には、ICチップWの搬送を阻止する阻止壁体220が設けられ、阻止壁体220の阻止面220aは、移送領域69Aから垂直方向に立ち上がる平面とされている。搬送溝60の上側に対向するよう、搬送溝60から所定距離だけ離間した壁部材221が配置されている。この場合の所定距離は、ICチップWの厚み以上であり、1列・1段に整列したICチップWが通過(搬送)するのに充分な距離である。換言すれば、ICチップWが2段は重なることのできない距離である。壁部材221は、移送領域69Aの上流側近傍に配置されている。
【0040】
移送装置1は、ICチップWの姿勢を変更するための姿勢変更部70を備えている。そして姿勢変更部70は、エアを噴出するためのエア噴出部であり、エア噴出部は、搬送部23に形成された噴出孔23aを有する。このような姿勢変更部70は、搬送方向に離間して複数設けられている。すなわち姿勢変更部70は、初期姿勢調整溝62、整列後姿勢調整溝64、及び保持溝66に対応した位置に設けられている。
【0041】
具体的に、初期姿勢調整溝62に対応した姿勢変更部70では、図8(a)に示すように、初期姿勢調整溝62の搬送領域内で搬送部23に噴出孔23aが形成され、噴出孔23aを通して下方側から上方側へ向けてエアを噴出する。
【0042】
そして、水平方向に対して所定角度傾斜した第一初期斜面621の傾斜方向に幅方向を沿わせて搬送されているICチップWに噴出孔23aからエアを噴きつけると、ICチップWは、支持点62Pを支点として表裏反転して第二初期斜面622に移り、図8(a)の実線の姿勢から、仮想線で示すように姿勢変更される。整列後姿勢調整溝64、及び保持溝66に対応して設けた姿勢変更部70も同様の構成であり、上記と同様にICチップWを表裏反転させることが可能である。
【0043】
そして、ICチップWの表裏方向の姿勢は、検知部としての撮像部14で撮像して検知することができる。即ち、エア噴出部は、撮像部14の検知結果である画像姿勢信号に基づく制御部80からの指令に基づき、噴出孔23aから搬送面上の所定のICチップWにエアを噴出する。したがって、撮像部14はエア噴出部ごとに、搬送部23に配置されている。
【0044】
移送装置1は、撮像部14からのICチップWの姿勢信号に応じて姿勢変更部70の駆動を制御する前記制御部80を備えている。図10に示すように、制御部80の入力側に撮像部14が電気的に接続され、制御部80の出力側に姿勢変更部70が電気的に接続されている。そして制御部80は、撮像部14で撮像された所定のICチップWの姿勢と、そのICチップWの一つ下流側のICチップWの姿勢とを比較して、同一・不同一を判断する判断手段81と、同一であると判断すると姿勢変更部70を駆動させるよう出力する変更指令手段82とを備えている。
【0045】
図1に示すように、製造装置2は、同期ローラ15の下方にクロックローラ72を備える。クロックローラ72は、保護紙供給部6のロールと平行な横軸回りに回転自在に設けられており、アンテナフィルム4の搬送中はクロックローラ駆動部の駆動によって横軸回りに連続的に回転するよう構成されている。クロックローラ72には、その外周面にアンテナフィルム4が搬送途中で略半周ほど巻かれるようになっている。
【0046】
図4および図5に示すように、同期ローラ15は、クロックローラ72の回転と同期を図りながら横軸回りに回転するよう構成されている。同期ローラ15はその外周面がクロックローラ72の外周面と対向するよう配置されている。すなわち、クロックローラ72と同期ローラ15とは、円筒面どうしで対向配置されている。
【0047】
同期ローラ15の外周面には、軸方向に一列で周方向一定間隔置きに、ICチップWを保持する吸着ノズル150が設けられている。この場合、吸着ノズル150は、同期ローラ15の外周面からわずかに進退(突出)する突起状に形成されている。各吸着ノズル150の中心にはICチップWを吸着保持するための空気通路150aが形成されている。同期ローラ15は、同期ローラ駆動部16の駆動による回転に伴って、各吸着ノズル150が、リニアフィーダ19によって搬送されてきたICチップWを1個ずつ吸着して、その吸着力によって保持するよう構成されている。
【0048】
同期ローラ15は、吸着ノズル150が、アンテナフィルム4上のICチップWの実装位置(通信用アンテナ4aに接続される位置)に対応する位置まで回転すると、空気通路150a内が大気圧となって、それまで吸着力(負圧)によって保持していたICチップWの吸着力が解放される構成となっている。そしてICチップWの実装位置に対応する位置を、所定の吸着ノズル150が最下位置に到着した瞬間の位置としており、空気通路150a内が大気圧となるのはそのわずかに手前(反回転方向側)となるよう構成されている。
【0049】
上記構成において、ボウルフィーダ18に投入されたICチップWは、ボウルフィーダ18の振動によって整列させられながら、送出溝18A上を搬送され、送出溝18Aから1つずつ搬送部23の搬送溝60へ送出される。
【0050】
送出溝18Aから送り出されたICチップWは、リニアフィーダ19の振動により、受溝61、初期姿勢調整溝62、第一整列溝63、整列後姿勢調整溝64、第二整列溝65、保持溝66の順に搬送され、移送領域69Aに適正姿勢で至ったICチップWは、移送機構17によって吸着され、アンテナフィルム4に順次移送される。一方で、移送領域69Aに不適正姿勢で至ったICチップWには、特別に設けたエア噴出部からエアを噴出することで、戻し部24の戻し溝25からボウルフィーダ18に戻される。
【0051】
アンテナフィルム4は、ロール11からアンテナフィルム供給部5の駆動により供給されており、ICチップWが移送機構17によりアンテナフィルム4に順次移送されると、ICチップWはアンテナフィルム4に接着剤Sにより接着されることで実装される(図5参照)。そして、ICチップWが実装されたアンテナフィルム4に、保護紙供給部6によって保護紙12を巻出して重ねるよう被覆され、接着剤キュア部7によりアンテナフィルム4が加熱されて接着剤Sが硬化し、保護紙巻取部8でアンテナフィルム4に重ねた保護紙12を巻取ることでこれが外され、製品テスト部9でICチップWが実装されたアンテナフィルム4がアンテナとして機能するかどうかが検査される。その後、製品巻取部10でICチップ実装体3(ICチップを実装した原反)がロール状に巻取られる。そしてICチップ実装体3は切断されて、例えばこれをインレットとして内蔵したIDタグ製品として使用される。
【0052】
ところで、この実施形態における移送装置1では、搬送方向に隣り合うICチップWが移送領域69Aに至るまでに、搬送溝60において適正姿勢のICチップWと不適正姿勢のICチップWが搬送方向に交互に並べられるように制御される。
【0053】
搬送溝60において適正姿勢のICチップWと不適正姿勢のICチップWが搬送方向に交互に並べる方法(ICチップの移送方法)を、図11の制御部80の制御フローチャートを用いて説明する。なお、移送領域69Aに至るまでのICチップWの姿勢では、表面Wcを上側にした姿勢を表姿勢とし、バンプ面Wbを上にした姿勢を裏姿勢として説明する。また、バンプ面Wbと反対側の表面Wcとでは、主としてバンプWaの有無により、撮像部14での画像データが不同一となる。
【0054】
制御部80は、最初のICチップWの画像を検出すると〔S1〕、これが表姿勢であるかを判断し〔S2〕、表姿勢であれば次のICチップWの画像を検出する〔S3〕。ここで、最初のICチップWが表姿勢でなければ(裏姿勢であれば)、姿勢変更部70に駆動信号を出力する〔S4〕。すなわち、最初のICチップWが表姿勢となる。
【0055】
〔S3〕で、次のICチップWの画像を検出すると、最初のICチップW(一つ下流側のICチップW)の姿勢が表姿勢であるか確認する〔S5〕。なお〔S3〕で、次のICチップWの画像が検出されなければ、制御を終了する〔S6〕。
【0056】
〔S5〕で、最初のICチップW(一つ下流側のICチップW)の姿勢を確認して表姿勢であると判断された場合、対象ICチップW(表姿勢とするか裏姿勢とするかを判断する対象となる次のICチップW)の現在の姿勢が裏姿勢であるかを判断する〔S7〕。〔S7〕で、対象ICチップWが裏姿勢でなければ(表姿勢であれば)、姿勢変更部70に駆動信号を出力する〔S8〕。すなわち、対象ICチップWが裏姿勢となる。その後〔S3〕へ戻る。〔S7〕で、対象ICチップWが裏姿勢であれば〔S3〕へ戻り、次の処理を行う。
【0057】
〔S5〕で、最初のICチップW(一つ下流側のICチップW)の姿勢が表姿勢となっておらず裏姿勢であれば、対象ICチップWの現在の姿勢が表姿勢であるかを判断する〔S9〕。そして対象ICチップWが裏姿勢であれば、姿勢変更部70に駆動信号を出力する〔S10〕。すなわち、対象ICチップWが表姿勢に変更される。その後〔S3〕へ戻る。〔S9〕で対象ICチップWが表姿勢であれば〔S3〕へ戻り、次の処理を行う。
【0058】
要するに、制御部80は、特定のICチップWの姿勢が、そのICチップWの1つ下流側のICチップの姿勢と表裏反対の姿勢となるよう、撮像部14からの画像信号に基づき判断手段81でICチップWの姿勢を判断し、必要に応じて変更指令手段82から、姿勢変更部70であるエア噴出部に駆動信号を出力する。
【0059】
具体的には、ICチップWは、ボウルフィーダ18側から、その振動とリニアフィーダ19の振動により初期姿勢調整溝62に搬送され、撮像部14(初期姿勢調整溝62に対応する撮像部14)で順次撮像される。撮像部14によって、最初のICチップWが撮像されると、制御部80の判断手段81が撮像部14かの画像信号に基づいて、該ICチップWの姿勢が表姿勢であるか裏姿勢であるかを判断する。続いて、次のICチップWが撮像され、最初のICチップWが表姿勢であり、次のICチップWが表姿勢であると、制御部80の変更指令手段82が、エア噴出部(初期姿勢調整溝62に対応するエア噴出部)に駆動信号を出力する。これにより、次のICチップWにエアが噴出されて裏姿勢となる。
【0060】
なお、図11の制御では、最初のICチップWの撮像結果の画像が判断手段81で裏姿勢であると判断された場合は、制御部80の変更指令手段82がエア噴出部に駆動信号を出力するようにしている。つまり、最初のICチップWは常に表姿勢とするように制御している。
【0061】
以後は、ボウルフィーダ18の振動とリニアフィーダ19の振動により初期姿勢調整溝62に順次搬送されてくるICチップWの姿勢を撮像部14が順次撮像し、制御部80は表姿勢とするか裏姿勢とするかを判断する対象となる対象ICチップWの姿勢を判断手段
81で判断し、これを一つ下流側のICチップWの姿勢と比較し、搬送方向に隣り合って並ぶICチップWの姿勢が表裏反対の姿勢となるよう、必要に応じて変更指令手段82に駆動信号を出力する。これにより対象ICチップWが一つ下流側のICチップWと表裏反対の姿勢となる。
【0062】
この実施形態における移送装置1では、撮像部14はエア噴出部ごとに、搬送部23に配置されているから複数個設けられている。初期姿勢調整溝62に対応する撮像部14以外の撮像部14(下流側の撮像部14)においてもそれぞれICチップWを順次撮像して、対象ICチップWが一つ下流側のICチップWと表裏反対の姿勢となっているかどうかを確認するよう用いることができる。姿勢変更部70もまた、搬送方向に離間して複数設けられている。下流側の撮像部14でICチップWの姿勢を確認して、その結果、搬送方向に並ぶICチップWの姿勢が表裏反対の姿勢でなければ、制御部80は、変更指令手段82から下流側の姿勢変更部70(エア噴出部)に駆動信号を出力して、搬送方向に並ぶICチップWの姿勢が表裏反対の姿勢となるようにする。
【0063】
本発明の実施形態によれば、搬送溝60において、移送領域69Aで適正姿勢となっているICチップWと不適正姿勢となっているICチップWが、搬送方向に交互に並べられる。したがって、ICチップWが、回路が書き込まれたウエハをダイシングすることで得たことにより、接着剤が各ICチップWにおいて同一面(この場合、バンプ面Wbの反対側の表面Wc)、あるいは表面Wcの側部に残るよう付着していたとしても、表面Wcどうしが隣り合わない。このため、ICチップWの接着剤どうしが接触しないから、結果的にICチップWどうしが付着しない。
【0064】
特に、ICチップWが移送領域69Aやその上流側近傍に並ぶと、下流側のICチップWに対して上流側のICチップWが密着して搬送方向に停滞する状態にあるから、下流側のICチップWをさらに下流側へ押し遣ろうとする力が働き、適正姿勢のICチップWではいっそう付着し易くなっていた。しかしながら、適正姿勢と不適正姿勢のICチップWが搬送方向に交互に並ぶことで、接着剤もまた上下反対の面にあることになり、移送領域69Aやその上流側近傍に並ぶICチップWどうしの接着剤による付着を防止することができるから、ICチップWを次工程へ移送する処理が滞らない。
【0065】
そして、移送領域69Aでは、適正姿勢にあるICチップWのみを吸着し、不適正姿勢にあるICチップWは移送領域69Aにおいてボウルフィーダ18に戻される(排除される)。すなわち、移送領域69AにあるICチップWは、移送機構17により1つ置きに吸着されることになる。移送領域69AにあるICチップWを1つ置きに吸着してアンテナフィルム4に移送することでICチップWの処理効率の低下が懸念されるのであれば、パーツフィーダ13の搬送能力を増加させ、移送機構17の移送能力を増加させることで解消することが可能である。
【0066】
複数のICチップWどうしが付着した状態で移送領域69Aに到達すると、移送機構17がICチップWを吸着することができず、次工程に移送できなくなるのであるから、このような場合に比べれば、移送領域69AにあるICチップWを1つ置きに吸着してアンテナフィルム4に移送することのほうが、ICチップWの処理効率面ではるかに優れ、歩留まりが良好になる。
【0067】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても同様である。
【0068】
上記実施形態では、ICチップWが移送領域69Aに到着するまでに、アンテナフィルム4の通信用アンテナ4aに電気的に接続され得る状態で移送機構17に吸着される姿勢を適正姿勢と特定し、具体的には、ICチップWは、バンプ面Wbの反対側の表面Wcが上にある姿勢を適正姿勢とした。しかしこれは、ICチップを吸着する移送機構17の動きやアンテナフィルム4の構成等に基づくのであって、ICチップWの構成や、その他の構成部分の構造によって、適正姿勢と不適正姿勢は臨機応変に設定することができる。
【0069】
上記実施形態では、排除部をボウルフィーダ18に戻す戻し部24とし、戻し部24に戻し溝25を形成し、戻し部24は移送領域69Aに接続した。しかしながら、排除部は、移送領域69Aに至るまでの搬送溝60に接続するよう構成することもできる。但し、裏姿勢のICチップWを戻すタイミングは、搬送溝60上に表姿勢と裏姿勢のICチップWが交互に並んだ後とすることができる搬送溝60の部位とする。
【0070】
上記実施形態では、搬送溝60(例えば、第一初期斜面621)は、ICチップWの搬送を円滑に行い得るように滑面に形成したが、表面に、搬送方向に沿う溝を複数条形成して、いっそうICチップWを円滑に搬送することができるように構成することも好ましい。
【符号の説明】
【0071】
1…移送装置、2…製造装置、3…ICチップ実装体、4…アンテナフィルム、4a…通信用アンテナ、5…アンテナフィルム供給部、13…パーツフィーダ、14…撮像部、15…同期ローラ、17…移送機構、18…ボウルフィーダ、19…リニアフィーダ、23…搬送部、23a…噴出孔、24…戻し部、25…戻し溝、60…搬送溝、69…移送溝、69A…移送領域、70…姿勢変更部、80…制御部、81…判断手段、82…変更指令手段、W…ICチップ、Wa…バンプ、Wb…バンプ面、Wc…表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状の電子部品を搬送する搬送面を備えた振動フィーダと、
前記搬送面の下流端である移送領域に到達した電子部品を吸着して通信用アンテナが形成されたアンテナフィルムに移送するための移送機構と、
前記搬送面上の電子部品の姿勢を検知する検知部と、
搬送面上の電子部品の姿勢を変更するための姿勢変更部と、
前記検知部からの電子部品の姿勢信号に基づいて、前記通信用アンテナに電気的に接続され得る状態で前記移送機構に吸着される適正姿勢の電子部品と該適正姿勢とは表裏逆姿勢である不適正姿勢の電子部品とが前記搬送面上で搬送方向に交互に並ぶように、前記姿勢変更部の駆動を制御する制御部と、
前記不適正姿勢の電子部品を前記移送領域において排除する排除部とを備えることを特徴とする電子部品移送装置。
【請求項2】
略直方体形状の電子部品を振動フィーダの搬送面の下流端部の移送領域まで搬送し、該移送領域に到達した電子部品を吸着して通信用アンテナが形成されたアンテナフィルムに移送する電子部品移送方法であって、
前記搬送面上を搬送されている電子部品の姿勢を検知し、
検知した姿勢信号に基づいて、所定の電子部品の姿勢を該電子部品の一つ下流側の電子部品の姿勢と表裏逆の姿勢にすることで、前記通信用アンテナに電気的に接続され得る状態で吸着される適正姿勢の電子部品と適正姿勢とは表裏逆姿勢である不適正姿勢の電子部品とを前記搬送面上の搬送方向に交互に並べ、
前記移送領域まで搬送されてきた前記不適正姿勢の電子部品を該移送領域において排除することを特徴とする電子部品移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−75758(P2013−75758A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218007(P2011−218007)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】